二次創作小説(紙ほか)

Re: イナGO 銀色の悪魔【オリキャラ募集中!!】 ( No.157 )
日時: 2015/12/22 00:27
名前: マイタケ (ID: DKs/wtA1)  

56話
何かが壊れる轟音と怒声が重なった。
「流星テメェどういうつもりだ!!!」
辺りに氷が幾つも突き出ている中、黎は吼える。その後ろには龍、椿姫、磐城、麗夢がいた。中立派らしき正義、尚、刹、華南が両者の間にいたが、厳しい顔で流星を見ている。
「柚樹が敵に襲われていたんだよね」
「それは言うべきことだろう」
穏健な尚と正義がそう言った。華南は鋭い目で流星を見ている。
「……御前命令ね」
「だから何だ!!これは重大な事だろ!?んなもん関係ねぇだろうが!!」
心を読んだ彼女の言葉をはねのけるように龍が吼える。それは物理的な作用をもたらし、氷を粉砕し、流星を吹っ飛ばした。更に麗夢が容赦なく胸倉を掴み上げる。
「あっしん腕力でテメェん顔ボコボコにしたろかいいん!?」
普段の天真爛漫な言動とはかけ離れたものである。宙に浮く流星を怒りの形相で睨み上げる。
「………」
流星は何も言わない。ただ目線を下に落としていた。それを見た磐城が一発ぶん殴る。
「磐城!!」
「仲間を敵に売っといて何平然としてんだよテメェは!!!」
刹の声を無視して、磐城は怒鳴りつける。それでも流星は沈黙していた。
椿姫は必死に歯を食いしばり、両の拳を握り締める。その3ヶ所から少量の鮮血が零れ落ちた。
「………椿姫」
刹はその肩に手を置いた。しかし容赦なく払われてしまう。
彼女は整った唇から言葉を発した。
「柚樹を、取り戻す」
怒りに震えた、それでも毅然とした声で言った。椿姫は龍も息を呑むほどの妖気—————鬼の力を醸し出していた。
「柚樹は絶対取り戻す。大事な仲間を守らなきゃ」
それだけ言うと、その場を去った。
「椿姫の言うとおりだ」
刹は仲間を見渡した。
ゴッドエデンで出会い、今日まで共に戦ってきた面々を。家族とも言える存在達を。
「ゴッドエデンでの鬱屈した日々を塗り替えて、俺達に光をくれたのは紛れもなく柚樹だ。今度は俺達が柚樹を助ける番だ。こんな所で一々立ち止まる訳にはいかねぇだろ」
今までも、これからも、刹はサッカーには強さが全てだと思っている。だが柚樹達に出会ってほんの少しだけ変わった。
たった1人の小さな力ではどうともならない事がある。全員いるからこそ、シュートチェインや合体技が出来るのだ。
「俺達は雷門に勝って、更に前に進むために此処にいるんだ。こんな事で立ち止まれるか」
刹はニッと笑った。
「……そうだな」
仲間の言葉に龍はフッと笑った。

Re: イナGO 銀色の悪魔【オリキャラ募集中!!】 ( No.158 )
日時: 2015/12/22 14:52
名前: マイタケ (ID: qsw8GWEd)  

「全員で独断行動といこうか」
正義の言葉に全員の士気が高まる。バタバタと去っていく足音はあっという間に広間から遠ざかっていった。
残ったのは華南と流星のみ。
「……行かんのか?」
「貴方は行かないの?」
流星の質問に質問で返す。彼はまた沈黙した。
「貴方でしょ?この情報が私達に漏れるように仕向けたの」
華南は読心術者だ。流星がどれほどポーカーフェイスで感情を出さなくとも、華南にはバレバレだった。
「回りくどいわね。貴方も御前に不信感を持ってるってことかしら?」
「華南」
避難めいた響きを持つ制止。華南はそれを無視した。
「貴方は御前への忠誠心なんて無いんでしょう?貴方が持つのは恐れ」
御前がその気になれば此処にいる全員を簡単に裏切ることも出来る。彼女は華南達がどうなろうと知ったことではないのだ。それを確信したのは謹慎中の時だった。あれがなければ華南は今も御前に忠誠を誓っていただろうし、自分を見失っていたかもしれない。
「貴方は血筋……忍者であることに囚われている」
忍者は決して己の感情を出してはならない。ただ主のために影の暗躍者となる。
「貴方も他の連中のようにしてみれば?」
「わは…」
「力が全て。それを知らしめるのが我らデーモン・エンジェルの役目」
それ以外のことなどどうなっても構わない。華南達は自分の道を行くだけなのだ。誰がどうなろうと知ったことではない。
「私達は好きなようにすればいいだけよ」
「………」




出ていく流星の背を見て華南は苦笑した。
「全く、ここの男どもは素直じゃないんだから」
そう呟くと彼の後を追った。




「………来ます」
人ではない少女の言葉に薫はクスリと笑った。その側にはルチャードが控えている。
「まだ月蝕じゃないのにね」
そう言いながら、背中越しに彼を見た。
「後を頼むよ」
「御意」
腹心の部下の一礼を一瞥する。それから男性用の着物の上に『黄昏の流星』のマントを羽織った。
「さぁて、始まるよ」
ニィーッと嗤い始めた。





歯車は廻り始めたばかりだ。
歯車はもう止まることなど知らない。