二次創作小説(紙ほか)
- Re: イナGO 銀色の悪魔 ( No.22 )
- 日時: 2015/03/28 10:59
- 名前: マイタケ (ID: iv9jnC9n)
9話 宣戦布告
「うわ!!」
突然抱きつかれ、剣城はバランスを崩し転倒する。
「!!!」
天馬達はハッと身構えた。
先程の声、昨日会ったばかりの少女のもの。
「っ、ゆず・・・・・!?」
剣城は自身の上にいる少女を見た。なぜかゴスロリを着ている。ついでに傘も揃えていた。
「やっほー!!昨日ぶり!!」
「・・・・・・下りろ」
剣城は静かにそう言った。柚樹は「はーい」と素直に下りる。
「あれが銀色の悪魔・・・・・ですか?」
「ああ・・・・お前、何しに来た!!」
後半は柚樹に対してだ。神童は警戒心をはらんだ、剣呑な声で尋ねる。雷門イレブンも、剣城と夕葉以外の面々は敵意を隠さない。円堂は、銀色の悪魔という者がこんなにも小さな少女であることにとても驚いていた。
「なにしに来た・・・・・あれ、なんでだっけ?」
「おい!!」
このツッコミは狩屋だ。本気で首をかしげる柚樹からするに、本当に忘れているっぽい。狩屋につっこまれた柚樹は「むぅっ」と膨れた。
「だってここから15㌔離れてるんだよ!?そりゃ忘れるよ!!」
「普通忘れないからね!?」
柚樹と狩屋の漫才ともとれる応酬に全員が呆れる。さすがの円堂も止めようとした時だった。
「はぁ、やっぱりか〜」
どこからともなく一人の少年が現れた。
ボサボサの紺色の髪。目は黄色で目つきが悪い。背は剣城よりも高い。
昨日、デーモン・エンジェルにいた少年だ。
「おいおい柚樹、勝手に抜け出したら駄目だろ〜」
「あっ、刹にぃ!!」
柚樹はとたとたと彼に歩み寄る。剣城は緊張した面持ちで彼を見た。
「椎之・・・・」
「久しぶりだな、剣城」
椎之と呼ばれた少年は能天気に笑う。まるで敵陣に乗り込んだという感じがしていないかのように。
「君は・・・・」
天馬の呟きが聞こえたらしく、椎之は彼の方を見た。
「んー?オレか?オレは椎之刹。宜しくな!!」
「それで、なんか用か」
倉間の底冷えする声に椎之は軽く肩をすくめる。柚樹は剣城にじゃれていた。
「まあまあそんなカッカすんなよ。もーちょい気楽にいこうぜ?」
「おまんらが襲撃してきたからぜよ!!」
「襲撃っつっても動いてたの柚樹だけだからな〜。オレに言われても困るんだけど」
さらりと放たれた事実に錦は言葉を詰まらせる。椎之は柚樹の方を見た。
「そろそろ思い出した?————————御前の言葉」
御前、という言葉に全員が眉を顰めた。御前という人物がすべての元凶か。
柚樹はフッと嗤う。そこに無邪気な彼女はいない。冷たく、どこまでも残酷で、慈悲の欠片もない瞳で嗤う。
ゴスロリのスカートの部分を翻し、全員を見た。
「我等、元フィフスセクターSSシードのチーム・デーモン・エンジェルはもう一度お前達との試合を申し込む!!」
堂々とした、絶対的な力を持つもの特有の声音。雷門一同は怯んだ。マネージャー達も怯え、身を寄せ合っている。
「どうして・・・・」
「お前達は絶望しない。お前達の絶望こそが、我等が麗しき御前の望み・・・・」
「ゆず・・・」
柚樹は剣城に向かって優しく微笑んだ。だがそこにはなにもない。喜びも、悲しみも、怒りも。
「それにね、もしあなたたちを潰して、絶望させて、闇に突き落としたら、御前は私の欲しい物をくれるの。いっぱいいっぱいくれるの」
柚樹は嗤う。冷酷に嗜虐的に。
「だからね・・・・あなたたちの大事な人たち、人質に捕らせてもらうね」
「まあ簡単にいうと、この地域全域の人間を人質にするってこと」
あっさりと、どうでもいいかのような声音で吐かれた内容に全員が愕然とする。
「もし私達に勝てたら、皆解放する。でも負けたら・・・・」
次の瞬間、柚樹と椎之の間に黒い影が生じる。
黒い、獣だ。闇を纏い、幾人もの命を奪ったのだろう、鋭い牙が口から覗く。
「この子、ステルベンがあなた達と人質を食い殺す」
ねえ、ステルベン?
そういって、禍々しい獣の頭を優しく撫でる。ステルベンは嬉しそうに彼女に擦り寄った。
「なにっ!?」
「そんな・・・・」
「この試合を放棄することは不可能———さあ、存分に絶望すればいいわ」
その言葉とともに、柚樹達は消えた。
新たなる戦いの火蓋は切って落とされた。