二次創作小説(紙ほか)

Re: イナGO 銀色の悪魔【オリキャラ募集中!!】 ( No.26 )
日時: 2015/03/28 19:54
名前: マイタケ (ID: iv9jnC9n)

13話 ホムルンクスと洗脳
雷門イレブンは朝から練習を続けていた。だがこのままいつもと同じ練習方法ではおそらくデーモン・エンジェル、月影柚樹には勝てない。
「ねえ、剣城、SSランクシードってそんなにすごいの?」
天馬の突然の質問に剣城はドリンクを飲むのをピタリとやめた。他の面々も彼のほうを向く。
「・・・・・詳しくは知らない。俺がSSランクを知ったのはたまたまに近いからな」
「でも、知っていることはあるんじゃないか?」
神童の問いに剣城はかすかに頷いた。
「SSランクは普通のシードとは違い過酷な特訓をしていなかったようです。元がかなり突出した者が選抜されている、シードの中では真のシードとも言われています」
特に柚樹はそのトップに君臨する。つまり、ゴッドエデンでは影の最強シードということ。初めて会ったときには、ツートップであった剣城と白竜をも遥かに凌ぐ、とんでもない力の持ち主だった。
「でも、ゆずはシードでありながら、サッカーが好きな奴だったんです」
「えっ?」
天馬達は声をあげた。誰もが驚き、何人かは口をあんぐりと開けている。
それもそうだろう。柚樹の言動はサッカーが嫌いといっているようなものだったのだから。
「それにあんな生き物、一緒にいなかった。・・・・・あいつの趣味とは違う」
一度ゴッドエデンにある柚樹の部屋に入ったことがある。それはいかにも柚樹らしい、ピンクと黒がメインの部屋だった。実際、彼女のゴスロリコレクションもピンクか白、または赤のラインが入ったものが多いのだ。あんな禍々しい生き物を相棒にするような趣味はない。断言できる。
「でも・・・・・」
「おーい、みーなさーん」
天馬の声と薫の声がダブる。薫は今回、この任務で指揮をとらなければならない。よって練習には参加できなかったのだ。全員が彼女の方を見て・・・驚愕した。
そこには頬に浅い切り傷のある薫がいた。
「どうしたの!?その傷!!」
一同の思いを代表するかのように影山が声をあげる。薫は「ああ」とたいしたことがなさそうに軽く触れた。
「標的にちょっとてこずってね。まあ捕まえられたけど・・・・・」
薫は顔を険しくさせた。こんな彼女を見るのは珍しい。
「あれ、黄昏の流星未特定のホムルンクスじゃん。ヤバイって」
ホムルンクス、その意味を知っているものはごく少数で、殆どの者が知らなかった。それを察し、薫が説明する。
「ホムルンクス、日本語で訳すと人工生命体。人間が様々な生物の遺伝子を改良し造りだす生き物のことです。小説とかだったら人間の人工生命体が多いけど・・・・あれは・・・・・」
薫は一度口を閉ざす。ここまで歯切れ悪く、そして険しい顔に一同は戸惑うばかりだ。
「・・・・・まあいいや。とりあえず雷門中全体に結界を張ってるし、襲撃的なものは特に来ないと思います。即席だからそこまで強くないけど大丈夫だと思います」
そう言うと、薫は踵を返した。だがふと思い出したかのように一度とまり、振り返る。その目は真っ直ぐと剣城に注がれていた。
「あのさあ剣城。月影柚樹ってゴッドエデンにいたとき、どんな感じだった?」
「・・・・・外の世界を知らないこと以外は普通の女子だったが・・・・?」
「・・・・」
薫は考え込んだまま微動だにしない。秀麗な面差しは更に険しさを増した。そこに、ルチャードが現れる。何かをボソボソと薫に言うと、会釈して去っていった。
「・・・・・・なるほど」
そう呟く彼女の不穏な雰囲気に神童は怪訝そうに尋ねた。
「何かあったのか?」
薫は一瞬躊躇するも、決意したように口を開いた。
「おそらく・・・・そのホムルンクスが今の月影柚樹を創り出した。いわば洗脳したという可能性があるんです」
「!?」
一同に驚愕が走る。緊迫した雰囲気が辺りに漂った。
「その御前って言う奴はホムルンクスを創り出し、月影柚樹を洗脳した。そうすることで、月影柚樹の持つ力を自分の物にし、自らの権力を握るってことですよ」
ここで狩屋が口を開いた。
「でもその人工生命体作んなくても自分で洗脳すればいいじゃん」
この言葉に薫はフッと笑う。
「んなことしたらこっちに自分のことが探知されやすくなるからね。ホムルンクスには膨大な力が必要だけど、死ぬと同時に力を払拭する。力の持ち主の特定を遅らせることができるんだよ」
薫は浅葱色の髪を翻した。
「まあ簡潔に言うと、月影柚樹は何者かに洗脳されている。それは本人かもしれないし、そうではないかもしれない。だから気をつけたほうがいいよ」
後半は剣城に向かって放たれたものだった。彼は雷門イレブンの中で、柚樹に最も近い存在だ。それはつまり、最も危険に遭いやすいということ。
薫は今度こそ、その場を去った。