二次創作小説(紙ほか)
- Re: イナGO 銀色の悪魔【オリキャラ募集中!!】 ( No.79 )
- 日時: 2015/06/03 07:44
- 名前: マイタケ (ID: pRmfYtjO)
25話 白姫御前への恐怖
場所は変わってデーモンエンジェル本拠地。
黎は京都の内裏並みに無駄に広い渡殿を黙々と歩いていた。
黎とあと2人の3人に御前から召集がかかってきたのだ。大方、彼女が外に出るための護衛だろう。そんなことを考えていた。
御前が常にいる広間に入る。他とは違う豪華絢爛な佇まいが視界に広がると同時に、毒々しいほど甘ったるい花の香りが鼻に突き刺さった。
「…っ」
黎は一瞬顔をしかめた。人の感覚を麻痺させるこの香りは嫌いだ。
「流星、もう来てたのか」
影と同化しそうなほど気配を完全に気配を消していた少年にそう聞いた。
水色のセミショート。少しヨレヨレの服を着た少年…塩入流星は面倒くさげに此方を見た。
「御前からの召集がかかってらかきや」
やはり面倒くさげにそう言った。
「麗夢は?」
「サボり」
「いつものごとくだなおい」
黎が溜め息をついた時だった。
御簾の向こうの、香りが動いた。黎の顔に緊張が走った。
「…御前」
黎はいつの間にか敷いてあった座布団の上に座った。
「…わだちを召集したのは…」
「流星よ、急かすでない」
甘ったるいくらい優しく、聞く者を凍り付かせるほどの恐ろしさを持った声音に、流星は黙った。黎の顔も強ばっている。
御簾越でかろうじて見える影は開いた扇で目から下あたりを隠した。
「雷門、面白い童子達よのう」
唄うように言う御前は、黎にとって信用できない部類だった。
常に御簾越で、顔をまともに見せない。そんな人物を、簡単に信用できなかった。
「…雷門との試合どういたしますか?」
慣れない敬語を使いながらそう聞いた。
「そうよのう……流星」
御簾越でもわかるほど鋭い視線に、流星は背筋を伸ばした。
「『月が血に染まる時を楽しみにしている』と」
あまりにもおぞましい宣告に、自分に向けられたものではないと分かっていても、黎の背筋に寒気が走った。流星もピクリと眉を動かす。
「御意」
しかし彼は即答すると、フッと消えた。
流星は東北の忍者の末裔だ。彼が行けば、かなりの時間短縮となるだろう。つまるところ、このくらい朝飯前と言うわけだ。
「……」
「…黎よ」
「はい」
流星が消えた所を見ていた黎は真正面を向いた。が、その顔は緊張で強ばっている。黎にとって御前と1対1で対話するのはこれが初めてなのだ。
他者を凍らせるような目のまま、扇の下で御前が鬱蒼と笑う気配がした。
「妾が呼んでいると、麗夢に伝えて参れ」