二次創作小説(紙ほか)

Re: イナGO 銀色の悪魔【オリキャラ募集中!!】 ( No.80 )
日時: 2015/12/31 15:06
名前: マイタケ (ID: BgA0tTDI)

26話 犬神の相楽
「…はぁっ、はぁっ、」
「っ……くっ」
雷門屋内グラウンドは阿鼻叫喚となっていた。
その中央には、肩で息をしながら互いを睨みつける華南と秋空。それを薫が創った結界内で見つめる雷門イレブン。
「…止めた方が、いいんじゃないでしょうか」
夕葉は控えめにそう言った。これは誰もが思っている。薫はボケッと惨状を見ながら、
「血の雨が降りそうだなぁ…」
恐ろしいことをサラッと言っていた。
得点は2対2。そこから1時間弱平行線である。
「薫、あの2人止めないのか?」
自分が原因である自覚のある霧野が恐る恐る聞いた。
「いや、止めたいんですけど面倒くさいんで」
おい!!と心の中でつっこむ。しかし薫は明後日を見ていた。

華南と秋空がまたもや衝突する。その凄まじいオーラとオーラのぶつかり合いが、そのまま衝撃波となり、結界にぶつかる。
秋空の体勢が揺らぐ。その隙を突き、華南が攻撃をしようとした時だった。




ワォォォォーー



ワォォォォー



犬の遠吠えが聞こえた。
「!?」
華南の、戦意でギラギラと輝く顔から血の気が引いた。足を止め、蒼白な唇を震わせる。
突然のことに秋空は訝り、歩みを止める。その瞬間、薫がその腕を乱暴に掴んだ。
「!?星宮くん、何を…」
「いいから結界内に入れ!!」
敬語をかなぐり捨てた凄まじい剣幕に、秋空はただ事ではないと判断し、すぐに結界に入った。
犬の吠える声が近くなる。
「全く、こんなに暴れるなんて…」
「独断にしてもやりすぎだな」
トーンからして2人とも男。前者の柔和な声音に、霧野、影山、三国はハッとした。
ザッザッと2人の人間と、何十匹もの獣の足音が近づく。
「ここまでするなんて聞いてないよ?……華南」
そこにいるのは紛れもなく、相楽尚だった。
「っ…尚」
華南は真っ青な顔をする。薫は忌々しげに彼を睨んだ。
一緒にいた雨宮正義はグラウンドの惨状を見て、眼鏡をクイッとかけ直す。
「華南、僕らの目的はあくまで雷門を倒すこと。ある程度の独断はよくても、これは度が過ぎるぞ」
しかし華南には諫める正義の声が聞こえていなかったようだった。
「華南、あまり御前の手を煩わせないでね?」
クスリと綺麗に笑うものの、冷たい激しさで煌めく瞳。それに呼応するように、犬の威嚇するうなり声がグラウンドに木霊する。
「…その子を八つ裂きにするのは構わないけどさ」
今まで黙っていた薫が恐ろしく静かに口を開いた。

Re: イナGO 銀色の悪魔【オリキャラ募集中!!】 ( No.81 )
日時: 2015/06/04 20:16
名前: マイタケ (ID: qsw8GWEd)  

「いきなり侵入してきて何?こんなに…」
薫は冷ややかな目で周囲を一瞥した。深緑の瞳には、侮蔑の色が見え隠れしている。
「こんなに大量の犬神連れ込んで、ここの連中殺したいわけ?」
彼女の言葉に全員がギョッとする。それに対して、尚は綺麗な微笑を絶やさなかった。ほんの少しだけ首を傾けただけで。
「雷門の子達には手を出すつもりはないよ。強いて言うなら…」
チラリと華南に視線を向けた。華南はビクッと震えて唇を噛み締めた。
「言うけど、その子はあくまで人間だよ。人間に手を出した犬神憑きの末路を知らないとは言わせないけど」
淡々と、しかし凄みをいれた声音に尚は困ったように肩をすくめた。見えない獣の威嚇するうなり声が薫に集中する。
「うーん、俺は説教とかする立ち位置じゃないから…どうしようか、正義」
尚から適度な距離を置いていた正義が口を開く。
「御前からの厳罰は覚悟しておいた方がいいだろう」
「あんたには関係ない…」
「華南」
「っ…、わかったわよ。雨宮の言うとおりにすればいいんでしょ!?」
ヤケになったように叫んだ華南の言葉に、天馬は瞠目した。
「雨宮…?それって太陽と同じ名字」
その呟きを聞いた正義はゆっくりと天馬を見た。感情の波が見えない青い目が雷門を射抜く。
「僕は雨宮正義。雨宮太陽の従兄だ。…が、僕は彼のように優しくはない」
淡々と名乗ると興味を失ったように、天馬達から視線を外した。
「行こうか。御前を待たせてはならない」
「わかってるわよ」
「相変わらず正義と華南は相性悪いね」
尚は呆れたように首を振った。
生真面目な正義と自由奔放な華南、この2人が相容れることはないだろう。いや、多少の差はあれど、柚樹も椿姫も麗夢も、華南と似たり寄ったりの性格ばかりだ。それを考えると、デーモン・エンジェルの女子と正義はそりがあわないのかもしれない。と言うより、デーモン・エンジェルのチームメイトに独断横行する者達が多すぎるのに原因があるように思えるのは、尚の気のせいではない気もしなくもない。
例えば、柚樹とか椿姫とか華南とか麗夢とか磐城とか黎とか…。
数え出すときりがない。
しかもそれを事細かに一々たしなめるのは、目の前にいる正義のみという体たらくでもあるのだ。これはある意味、結構由々しき事態である。
そんなことを考えると、尚は自分の所属するチームの変人率の高さに、遠い目で苦笑するしか思いつかなかった。
最も、尚もある意味変人だが。