二次創作小説(紙ほか)
- Re: イナGO 銀色の悪魔【オリキャラ募集中!!】 ( No.91 )
- 日時: 2015/06/15 19:34
- 名前: マイタケ (ID: lcGOSbxj)
29話 黄泉の少女
「えっ、なっ、ええっ!?」
混乱しパニックの声を上げる者達を見て、少女は怯えたように葵の後ろに隠れてしまった。
暫くして落ち着いた雷門イレブンはマジマジと少女を見下ろした。
年は10歳前後、薄紫色のふわふわした髪は腰までだ。白い肌は絹のようになめらかで、クリッとした大きな目はなんと銀色である。背丈は倉間の肩ほどまでしかない。服装は薄ピンクのワンピースで肌寒い印象を他者に与える。
「ねぇ、どこからき…、!?」
少女の貌を覗き込んだ葵は凍りついた。
「葵、どうした?」
「水鳥さん、この子の目…」
「目ぇ?」
怪訝な顔をする水鳥の横にいた茜はカメラのレンズをズームして息を呑んだ。
「この子、虹彩ない…」
『!?』
茜の言葉に、全員が瞠目した。
少女の瞳には人間が持つべき虹彩が無く、曇りのない鏡のようで、非人間的の印象を強くさせた。
そもそも、彼女は一体どこから現れたのだろうか。この部室には自動ドア以外の出入り口は無い。ここにいる全員に気づかれずに侵入するなど今までに…
そこまで考えて神童は気づいた。
「月影と時と同じだ…」
初めて柚樹と会った時、神童達は彼女の侵入に全く気づかなかった。
「まさか、デーモン・エンジェルの仲間…!?」
神童の呟きに、雷門イレブンは臨戦態勢をとった。柊のみ、面倒くさげに欠伸をしている。
全員の鋭い視線に、少女は怯えた顔をする。それを見た葵は彼女を庇うように前に出た。少し遅れて、天馬も葵の隣に並ぶ。
「待ってください!もしかしたら違うかもしれないじゃないですか!!」
「葵の言う通りですよ!!それだけのことで疑うなんて…」
「でも天馬、こいつは月影と同じように現れたぞ」
倉間の言葉に天馬は一瞬戸惑った。
突然現れた、虹彩を持たぬ少女。彼女が人外であるのは明白だった。
しかし葵はすぐさま反論した。
「こんな小さな女の子相手にそれはないんじゃないですか?」
現にこの少女から敵意も何もない。ただただ、自分よりも大きな人間達に怯えているのだ。
黙っていた円堂は、少女の前にしゃがんだ。
「どこから来たのか、教えてくれるか?」
「……」
少女は不安そうに長い睫毛を震わせた。それを見た葵が、少女の薄紫色の髪を撫でる。
「話してみて、大丈夫だから」
ね?と、優しく声をかけられた少女は小さく口を開いた。
「あの、なにから…」
驚くほど澄んだ声で葵に聞いた。
「じゃあ…名前は?なんていうの?」
- Re: イナGO 銀色の悪魔【オリキャラ募集中!!】 ( No.92 )
- 日時: 2015/06/15 23:28
- 名前: マイタケ (ID: uLZUHjzo)
「ミラ…です」
「ミラちゃんって言うんだ。可愛い名前だね」
ミラと名乗った少女は、ぎこちなく微笑んだ。
「マスターが…つけてくれたんです」
「マスター?」
その言葉に目を丸くした。
「なぁ、もしかして君も…」
神童が声をかけた瞬間、ミラは葵の後ろに引っ込んでしまった。
「……」
「も、もしかして『黄昏の流星』の子?」
沈黙した神童を見て、慌てた天馬が代わりに聞いたが、ミラの反応はない。
「ミラちゃん、教えてくれる?」
ショックを受けた天馬を横目に、葵が聞くと、コクリと頷いた。
「この子…葵ちゃんの言うことだけ聞くのでしょうか?」
ミラの様子を見ていた夕葉がポツリと呟いた時だった。
「その通りだよ」
突然生じた気配に驚いて振り返る。
「ミーちゃんはちょっと特殊でね、最初に自分を見ることが出来た人間の言うことだけを聞くのさ」
薫はそう言うと、ミラに「おいで」と言った。ミラはトタトタと歩いて薫の前に出た。
「ミーちゃん、ごめんねー。急に呼び出して」
小さな頭を撫でながら謝罪を口にした。ミラは微かに首を横に振っただけだ。
「…そういえば、1番最初にこいつに気づいたのは、空野だったな」
三国は思い出したように呟いた。他の面子も、ハッとした。
「でも、なんでこいつを?」
「ミーちゃんは色々と役に立つんで」
倉間の問いに、薫は明確な答えを出さず、微笑する。
「あ、明後日帝国との試合ですよね?」
「ああ」
円堂は頷いた。話を聞いていないのに知っていることは敢えて触れない。
薫だから。それで全て納得する。
「この子を連れてって下さいね」
「は…?」
誰もが怪訝な顔をする。
「もしデーモン・エンジェルが来てもミーちゃんが入れば撃退出来るし」
それに、と薫は続けた。
「月影柚樹達が洗脳状態かどうかっていう問題もありますし。ミーちゃんなら初見でそれを見破ることが出来ます」
「なに?」
柚樹の事に関係するからか、剣城が反応した。鋭い目でミラを見つめる。
「…だけど、結局この子は何なんだい?」
秋空の質問に薫は一瞬沈黙した。ミラは不安そうに彼女を見つめる。
「……まぁ、強力な助っ人とだけ言っておきます」
じゃあボク見回りあるんで。
そう言い残し、薫は部室から出て行った。ミラはまた葵の元へ戻る。
「ミラちゃん、よろしくね」
葵がそう言うと、ミラは貌に似合わぬ希薄感のある微笑を湛え、
「…よろしく…お願いします…」
小さくお辞儀をしたのだった。