二次創作小説(紙ほか)

Re: イナGO 銀色の悪魔【オリキャラ募集中!!】 ( No.97 )
日時: 2015/06/17 18:53
名前: マイタケ (ID: /OJeLYZk)  

30話 屍鬼
「あ、ミラちゃんこれ運んでくれる?」
「は、はい」
葵の頼みにミラは頷き返した。
「…ホントに空野さんの言うことしか聞かないな」
秋空はポツリと呟いた。が、すぐに爽やかな笑みを浮かべる。
「まぁ霧野に懐かなかったからよしとしよう」
霧野はすぐさま秋空から距離をとった。いつの間にか日常化したこの風景に、誰もが苦笑いする。
「くっそ〜、何で葵なんだよ〜」
水鳥はじーっとミラを見つめた。その視線に気づいたミラは戸惑ったように銀色の瞳を彷徨わせた。
「ま、瀬戸はあんなに可愛い子供に懐かれる所か怖がれるのは目に見えて分かるぜよ」
「んだと錦—————!!」
錦と水鳥の超高速鬼ごっこに狩屋達がゲラゲラ笑う。
だが、神童、剣城、倉間は不審げにミラを見つめていた。
薫が保証したから別に問題ないはないだろうが、どこをどう見ても特異な存在には見えない。寧ろ———言い方は悪いが———足手まといにしか見えない。
「あいつ、胡散くせぇな…」
倉間が不満げにそう呟いた。
それとほぼ同時に、
「!!!」
ミラが弾かれたように顔を上げた。
「どうしたの?」
葵が優しく話しかけた。だがミラは答えない。愛らしい顔に精一杯険を含ませる。
「……誰、ですか?」
どこにもいない場所に、固い口調で———驚いたことに———自発的にそう言った。



「あーあ……見つかっちゃったか〜」



凶悪さを秘めた無邪気な声が響いた。
『!?』
全員がその方向を見やった。
「さすがに人間じゃねぇだけはあるわな」
舌打ち混じりに聞こえた声と共にその姿が露わになる。
「ゆず…!!」
「京介久しぶり〜!!」
そう言うのはゴスロリ姿の柚樹だった。もう1人は龍である。
「感動のさいかーい…って言いたいけど今回は御前命令だぞ」
「わかってるー♪」
2人の会話に、全員が身構える。それを見た龍は鼻で笑った。
「別にお前らみたいな雑魚以下の連中を相手しに来たんじゃねぇよ」
「っ、テメェ…!!」
車田が睨む。
「やる気か?生憎と俺は尚さんみたく優しくねぇぞ」
「龍にぃは容赦ないもんね〜」
のほほんと相槌を打ちながら、柚樹は一歩前に出た。
「何しに来たんだ?」
剣城は冷静に聞いた。柚樹は、自分の問いにしか答えないだろう。
案の定、柚樹はニコニコと嗤いながら答える。
「んとねー、今日は京介じゃないんだ〜」
ごめんねーと言いながら、柚樹は動き出した。



——————葵の方へ。

Re: イナGO 銀色の悪魔【オリキャラ募集中!!】 ( No.98 )
日時: 2015/06/18 19:19
名前: マイタケ (ID: /OJeLYZk)  

「葵!!」
天馬は彼女を助けようと走り出した。それを見た龍が瞬時に反応した。
「させねぇよ」
凄まじいスピードで走り出した。人間離れした動きで天馬をねじ伏せる。
「うっ…」
痛みで天馬は顔を歪めた。
『天馬!!』
「動くな!!」
次の瞬間、龍の腕が変形した。エメラルドグリーンの鱗がいくつも浮かび上がり、紫色の鋭い爪が伸びた。
「コイツは龍の爪だ。人間なんかすぐに殺せる」
「なっ…!!」
絶句する神童達の前で、龍は鋭い爪を天馬の喉元に突きつけた。一同はたたらを踏み、唇を噛んだ。
「龍にぃナイス〜」
緊迫した状況の中、柚樹は間延びした口調で賞賛しながらも、ゆっくりと葵に近づいていく。
「ごめんねー葵ちゃん、御前命令何だよね〜」
「っ……!!」
「あ、動いたら天馬君殺すから」
恐怖で動けない葵を更に言霊の“楔”で拘束する。
柚樹は可憐な嗤い声を上げながら葵に手を伸ばした。
「葵……!!」
切迫を孕んだ天馬の声が遠くに聞こえる。
人間の体温よりも低い、氷のような手が触れた。異様なほどの冷たさと、整った貌に似合わぬおぞましいほど無邪気な笑みに、葵の恐怖は最高潮に達した。

——————————誰か、助けて!!!!!

痛くなるほど目を瞑り、ただそれだけを願った。
その時、


この部屋の雰囲気が瞬く間に塗り替えられた。


柚樹と龍とは違う、しかし異質なその気配に、誰もが息を呑む。
「!!!!」
顔色を変えた柚樹は葵を突き飛ばした。龍は放逐するかのように、天馬を投げ飛ばし、柚樹の前に立つ。
「——————————!!」
鋭い叫びとともに2人の身体は吹っ飛んだ。
「いっつぅ…」
顔をしかめる柚樹に対し、龍は原因のモノを睨みつけた。
「っ…テメェか屍鬼!!」
怒鳴り声が物理的な力を宿す。
室内でありながら、容赦ない激しい風が暴走した。
その視線の先には、ミラがいた。
ミラは怯えながらも、精一杯睨みつけた。
「あ〜龍にぃ〜帰ろー」
起き上がった柚樹の言葉に龍はチッと舌打ちしながらも頷いた。
「まぁ…確認も取れたしな」
柚樹に手を貸しながら立ち上がる。剣城は眉をしかめ、龍を睨んだ。それを黙殺した彼は凄まじい眼光でミラを睨む。ミラは怯みもせず、毅然とした姿勢でその視線を受け止める。
「次は、狩ってやるよ」
吐き捨てると、変形した腕を床に叩きつけた。
暴風が荒れ狂う。それが止んだ時には、えぐれた床と、そこから吹き上がる白煙だけだった。