二次創作小説(紙ほか)
- Re: 東京喰種 -オリジナル ( No.8 )
- 日時: 2015/08/20 11:16
- 名前: アーリア ◆IYbi.dCFgs (ID: Tf5VGYTU)
>>004
あれから一時間は経っただろうか、遊園地の外までやってきた私はため息をついた。
(まったく、とんだ災難だわ)
『例の少女』は携帯電話が壊れていたとか何とかでまた泣き出すし、自分は携帯電話なんて持っていないから貸してあげることもできない。そもそも、この遊園地にはたまたまチケットが手に入ったから寄っただけで、この通りお土産を買うお金すら——飲み物を買うお金くらいは持っているが——持ち合わせていない状態だ。つまりチケット以外は何も持っていないわけ。
だから、わざわざここ(遊園地)のサービスセンターまで彼女を引っ張ってきて、電話を借りれるよう説得までさせられる始末だ。ま、結局は彼女が何やら話をつけて借りていたみたいだけど。
あぁ、せっかくいい暇つぶしだったのに。
変にお節介なんて焼くものじゃないわね。
再びふう、とため息をつく。
と、そんな時、ふと誰かの声が自分へと飛んできた。
「おまたせ〜!」
パタパタと私の傍に駆けてきたのは、なんと『例の少女』である。
何やらお土産を引っ提げてきた彼女は、息を整えながら「ごめんね、待たせちゃった」と頭を下げてきた。
それを見て、私は本日何度目かのため息。
「待った? じゃないよ。遅すぎ」
「う、うん……本当にごめんなさい。そ、その代り! 今からちゃーんとお礼させてもらうからっ!」
そういって、馴れ馴れしく笑いかけてくる彼女。
そう、今からそんな彼女のお礼——もとい、”小都市案内”が始まろうとしていた。
(あーあ、ここに来たばかりって話するんじゃなかったなあ)
私は数十分前の失敗を反省した。
サービスセンターまで彼女を連れていった時、あまりに彼女が取り乱して泣いてるものだから、気を和らげようと世間話を投げかけたのだ。その際に自分がここに来たばかりだという事を話したがために、今のような面倒くさい状況が生まれてしまったわけだ。しかも妙に懐かれちゃうし。
何よりこの子、見た目に反してかなり強情なのだ。
お礼にここの小都市の案内をしたいって言って聞かないし、いい気になるなって怒鳴ったら逆に説教されるし。ほんと調子狂う。しかし、これも私の気まぐれで始まった事だ……いつまでここにいるか分からないとは言え、ここについて少しでも早く知っておきたいのは事実だし、彼女に付き合うのも案外悪くはない(暇つぶしにはなる)のかもしれない。
現に、”お土産だけ買って帰る”と言ってお土産を買いに離れた彼女をこうして待っていたのだから、私も案外乗り気なのかもしれない。
自分の『気まぐれ』に愛想を尽かしつつも、こんな日も悪くはないと前向きに考えることにしたのだった。
後々——この『気まぐれ』に心底後悔する時が来ることを、今の私は知らない。
*
いちほです…!