二次創作小説(紙ほか)
- 123時間目 決勝・決着・結末は?〜お帰り我らの聖典よ〜 ( No.110 )
- 日時: 2015/09/05 22:00
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
造Side
召喚野球大会決勝もいよいよ大詰め。2点を追う自分たちの最後の攻撃で、迎えるバッターは……まるで差し合わせたかのようにゆーさんが立ちます。ここで長打を打って3点をもぎ取れば自分たちの勝ち。勿論このまま点が取れない・1点しか取れないなら教師チームの勝ち。例え同点で延長にでもなったらさっきの先生方が戻ってきて再び召喚野球での勝負となり、ほぼ間違いなく教師チームの勝ちが確定します。
そんな状況の中、保健体育の教師である大島先生が一・二・三塁にいる自分たちを見渡して、ゆっくりと投球準備を始めるます。そして緊張の第一球目が大島先生の手から離れました。
『———ト———ライッ!』
ストライクの宣告が高らかに響きます。な、なんて速い……っ!自分のところから見ても、かなりの球速なのが分かります。さっきのアキさんはフルカウントという助けがあったのでもう少しボールが見えたと思いますが、そのハンデのない今の大島先生の球はかなりのものです。なるほど、あのこーさんが咄嗟にバントに移行したのも頷けますね。
西村先生が返球し、大島先生がそれを受け取ります。それからそれぞれサインのやり取りをして、再び投球に入り……
『ボールッ』
今度は低めに外れたボールです。ゆーさんは手を出すことなく見送って、カウントは1−1となります。頑張れゆーさん……貴方はこの試合でやらなきゃならない事がありますでしょう?応えなきゃいけないのでしょう?だったらそろそろカッコよく決めてくださいよ……っ!貴方を想う、貴方が想う大事な人の為にも……!
そんなことを考えている自分も含め、この場にいる全員が固唾を呑んで見守る中、大島先生が右手をシャツに当て手の汗を拭い三球目に移行します。
「……っ!」
と、ここでゆーさんは後ろ足に体重を乗せ一気に爆発させられうように溜めを作り———
「来るか坂本……勝負っ!」
それに応えるかの如く、大島先生は大きく身体を乗り出して腕を振り抜き———
「ったい……打つ……絶対、打つっ!」
その大島先生から放たれた唸りを上げて迫る速球は、軸足に体重を移し身体全体でバットを振るゆーさんが完全に捉え———
———キィンッ!
快音がグラウンドに響き渡りました。
「「「————ッ!!」」」
その瞬間、こーさん、自分、アキさんの三人で全力で次の塁を目指して疾駆します!打球の行方は———よしっ!センター前っ!深く守っていたセンターが、バウンドするボールを追って前に出ます。三塁線上にいたこーさんがホームに帰りまずは一点。自分も後を追うように三塁を蹴ってホームに急ぎます。アキさんも全力で二塁を蹴って三塁に!
と、後ろの方で『大島先生っ!』と若い先生の声が聞こえます。どうやらボールを拾った寺井先生が、中継に入った大島先生にボールを託したみたいです。ですが———その間に自分はホームベースを踏み、2対2の同点となりました!
ホームベースを走り抜けたと同時に、急いで振り返りどんな状況か確認します。ボールは大島先生が受け取って、今まさにホームベースを守る西村先生の元に投げようとしたところで、アキさんが三塁に辿り着きます。
『吉井!止まれっ!』
三塁のコーチャーが、アキさんにそう指示してきます。確かに……それはもっともな指示で、このまま間に合うとは思いません。思いませんが———
- 123時間目 決勝・決着・結末は?〜お帰り我らの聖典よ〜 ( No.111 )
- 日時: 2015/09/05 21:52
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
『『『っ!?吉井!?』』』
アキさんはその指示を無視してその勢いのまま、三塁のベースを踏んでホームに向かいます。そのアキさんの目は……『絶対に、勝つ!』という意志が伝わってきます。ですから……
「アキさん!いっけええええええ!」
「…………走れ明久っ!」
「絶対に還るのじゃ明久っ!」
「明久君っ!」
「アキっ!」
「やれっ!明久っ!決めちまえぇえええええええっ!」
……ホームに帰った自分とこーさん、ベンチから自分らのところまで来ているヒデさんたち。そして……この勝利を誰よりも願っているゆーさんが、アキさんに全てを託します。やっちゃえ!アキさんっ!
そのアキさんは、必死にグラウンドを走りゴールを目指します。ホームベースまであと5メートルくらいです。と、そこで西村先生がボールを受け取りブロックの体勢を取ります。これは……くぅ、恐れていたクロスプレイですね。ここでアキさんが体当たりで西村先生のボールを溢させればアキさんの勝ち。完全にブロックしたら西村先生の勝ち。これで勝敗が決しますっ!
「っっっ!!」
アキさんは歯を食いしばって姿勢を低くし、前のめりになって衝突に備えます。西村先生も同じように、アキさんとの衝突に負けないように体重を前にかけようとした————まさにその時。
「————っ!」
アキさんの身体が突然横にブレたかと思いきや、まるで自分たちの、そして西村先生の目の前から姿を消すかの如く回り込みます。
「っ!?く———っ!」
衝突に備えて体重を前にしていた西村先生は、咄嗟にはアキさんの機敏な動きについていけず、その動きが遅れた一瞬の隙を突き、アキさんは身体を全力で前に投げ出して、腕をホームベースに伸ばします!
土煙が上がり、居合わせた全員が息を呑み……そして審判がこの試合の結果を高らかに告げます。その結果は……?
『—————セ————フ!』
「「「ぃよっしゃぁああああああああああああっ!!」」」
自分も、いつものメンバーも、それから勿論Fクラスベンチ全員も立ち上がって鬨の声を上げることに。青く広がる大空に、Fクラスの勝利を喜ぶクラスメイトの声が木霊します。
「勝ったっ!勝ったよ皆っ!」
「アキさん!ナイスです!」
「明久君カッコイイですよ!素敵です!」
「ホントよ!もう♪惚れ直しちゃうわね♪」
「思い切った作戦じゃったが、よくぞ決めてくれたのう」
「…………GJ」
アキさんの元に皆さんが集まり、それぞれ誉め称えます。あそこであんなに上手く回り込むとは……さては狙ってましたね♪やるじゃないですかアキさん!
「けっ!なーにが後は任せた、だ。結局最後はお前が決めやがって。だが……よくやった明久っ!」
「はっ!お前もあの剛速球を良く打った!今の今までダメダメだったくせにやるじゃないか雄二っ!」
「ふふっ、お二人とも、お見事です!自分本当に感動しましたよ!」
姫路さんや島田さんは勿論の事、これにはいつもはいがみ合っているゆーさんもアキさんもお互いを褒め称えます。あの土壇場で最高のコースに打ち込んでサヨナラタイムリーを打ったゆーさんも、冷静に西村先生と勝負を挑んで勝利したアキさんも、それぞれ素晴らしい活躍でした!もう最高ですよ!
- 123時間目 決勝・決着・結末は?〜お帰り我らの聖典よ〜 ( No.112 )
- 日時: 2015/09/05 21:57
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
「……やれやれ。やってくれたな吉井」
と、そんな中、西村先生が苦笑いを浮かべつつアキさんの元にやってきました。服についた土を落としながら西村先生はアキさんに向かってそう言います。
「あはは。まあ、行けると思ったもんで」
「ほう?行ける?この俺を相手にか?」
「いえ。西村先生が相手だったからです。だって先生、さっき言ってたじゃないですか」
そう言ってアキさんは先生をからかう様に、西村先生の口真似をします。
「———“教師は生徒を正面から受け止める”って。先生が絶対正面から受け止めるってわかってたからこそ、回り込みが成功するって思ってましたよ」
そう言われた西村先生も、聞いていた自分たちも最初は目を丸くしますが……
「はっはっはっ!まさかお前に一本取られるとはな!吉井、お前も唯のバカではないらしい!なるほど。そういうことなら、今度はお前に対しては接し方を変えたいくとしよう!」
「ふふっ♪アキさんったら、西村せんせ相手に凄い事考えてたんですね」
「ったく、バカの発想と言うか鉄人相手に怖いもの知らずというか。明久らしいと言えば明久らしいな」
「えっ!?な、何でみんな笑うの!?僕そんなにおかしなこと言ってないよね!?」
……自分も皆さんも、負けたハズの西村先生も楽しげに笑いだします。ふふふっ♪流石アキさん。本当にアキさんって面白い方ですね。
「さぁ、喜ぶのは良いがお前らもとりあえずは整列しろ。試合終了の挨拶がまだだろう?」
「「「「「「「はーい!」」」」」」」
先生に言われた通り、再び試合開始の時と同じくグラウンドに整列する事に。そして————
『二年Fクラスチーム対、教師チーム。3対2で二−Fの勝利です!』
『『『ありがとうございましたっ!!!』』』
————こうして、長きにわたる自分たちの野球大会は自分たちの大逆転勝利、そして優勝という結果で幕を閉じました。
———閉会式———
野球大会を終え、最終種目のクラス対抗リレーの後は閉会式です。他の全クラスは勿論自分たちFクラスもグラウンドに整列して、優勝クラスの表彰をじっと見守っています。
『———体育祭総合優勝、3−D。代表は前へ』
『はいっ』
ああ、そうそう。ちなみに自分たちFクラスの体育祭の順位は学年で四位で、全体では一三位となっています。本当はかなり良いところまでいってましたが、召喚野球の作戦に使った借り物競争での無得点が響いたようでこの結果になってしまいました。普段からよく体を動かしている自分たちにしては、ちょっと低い順位かもしれませんね。ですが不満を告げるFクラスの生徒さんは誰一人としていません。そう、なぜならば———
『———生徒・教師交流召喚獣野球。優勝、2−F』
自分たちにはコレがあります。クラスの皆さんも小声で嬉しそうに話していますね。あの状況で教師チームに打ち勝って優勝できたことによる達成感と、自分たちの私物が戻ってくるであろう期待感で皆さん胸が一杯みたいです。そりゃあ嬉しくないわけがありませんもの。
『———それでは、これにて文月学園体育祭を終了します』
各競技の優勝クラス発表と学園長のありがたいお話も終わり、これで体育祭の全プログラムは終了となります。他のクラスの生徒たちが帰宅の途につく中、自分たちFクラスの皆さんは早速担任の西村先生のところへと集まります。
『さぁ、俺たちのお宝を返して貰おうか!』
『俺のDVD!俺の写真集!俺の抱き枕!』
『俺の聖典《エロ本》!俺の宝物《エロ本》!俺の参考書《エロ本》!』
……え、えーっと……?そう、口々に没収品の返還を要求するクラスメイトの皆さん。周りには他のクラスの皆さんもいるので……ちょ、ちょっとだけ恥ずかしいですね。西村先生もはそんなクラスメイトの姿をジト目で見ながらも溜め息を吐きます。まあ、ですが———
「……まぁ、約束は約束だ。没収品は返還しよう」
———ルールはルール。約束は守ると、仕方なさげに呟きました。
『『『よっしゃあぁああああああああああああ!』』』
- 123時間目 決勝・決着・結末は?〜お帰り我らの聖典よ〜 ( No.113 )
- 日時: 2015/09/05 21:37
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
「では、この紙に没収された品と、名前を書いて提出しろ。一両日中には返還する」
『『『はーい!』』』
あらら……こういう時は本当に素直なんですから全く。皆さんこぞって西村先生に渡された紙に没収された物の名称と、自分の名前を書いていますね。苦笑いをしながらも自分も先生に紙を頂ます。ちょっと気になってふとゆーさんを横目で見ると———ちょっと顔をしかめながらも、真剣に何かを書いている姿が見えました。多分……ウェディング用品の一つの名前を書いているんでしょうね。霧島さんに渡す為に、ね。お疲れ様、ゆーさん。あ、ですがちゃんと霧島さんに謝るのは忘れないようにね。
それはそうと。ところで……あの、クラスメイトの皆さん?
『エロ本エロ本エロ本……』
『写真集写真集写真集……』
『抱き枕抱き枕抱き枕……』
……若さゆえの何とやら、かどうかはわかりませんが、そこら中でその……自身の欲望に素直すぎる台詞を呟くのは、ちょっと怖いのですが……?隣にいた須川くんの用紙をちらり見ると、
『Hなお姉さんが《ピ———》して《ズキュ———ン》してあげちゃう☆』
…………見てません。見えませんでした。見えたとしても、幻覚でしょう。とりあえず今は周りの皆さんは気にしない方向で、自分も一先ず没収品を書くことに。まあ、ゆーさんの件も勿論ありましたが、自分だって“コレ”をあの人に渡す為に、頑張ったわけですし。
和気藹々と勝利の味を噛みしめながら、西村先生に用紙を手渡します。先生は呆れかえりながらも、その用紙を受け取り小箱に入れると……
「……さて。それではここに書かれた没収品は、後日きちんと“郵送”する」
『『『…………ん?』』』
ここで、先生の口からそんな台詞が飛び出してきます。その瞬間、クラスメイトの皆さんが固まるような音が聞こえた気がします。え?郵送、ですか?
「更に言っておくが、宛名は勿論お前たちの“保護者”になるな。全員、到着を楽しみにしているんだな」
…………郵送、そして宛名は保護者。んーと、つまりはその———
『『『はぁあああっ!?』』』
———成人指定の本+郵送+保護者=家に帰ればお説教ですかね?ああ、そういうことですか……あはは、先生方もなかなかやりますねー
「良かったなお前ら。海外からのゲストも大満足だったようで、学園長は機嫌良く返還を快諾してくれたぞ」
と、西村先生は頷きながらそう説明してくれます。……なるほど。学園長の事ですし、恐らくですがこうなる事も計算の内だったんでしょう。だからこそゆーさんと交渉した、と。相変わらず抜け目のない方ですね。
「それと、学園長からの伝言だ。『学園としては返還してやるけど、子供として持っていて良いものかどうかの判断は、アンタらの保護者に一任する』とのことだ」
『『『あ、あのババァアアアアアアアアアアアアアアっ!!??』』』
これには皆さん先ほどまで歓喜に震えていた状況から一変し、今度は学園長への怒りで震え、同時に家に帰ってから自分たちがどんな目に遭うのか未来を想像し更に震えだします。多分恐らくいいえ間違いなく、このままではお母様方に説教されるのでしょうね。
『はぅ……まずいです……このままじゃ、お母さんたちに抱き枕が……』
『ウチも、どうしよう……な、なんて言い訳しようかしら……』
『が、学園のアイドルの抱き枕ってことで……は、言い訳になりませんよね……』
『まあ……実際……ウチらのアイドルの抱き枕だし……』
姫路さんと島田さんも、皆さん同様に沈んだ顔をしていますね。ま、まあ没収されたものがされたものだけに……ドンマイですとしか言いようがありませんが。
「それでは、HRを終了する。各自、寄り道などせずに真っ直ぐ帰るように」
『『『あっ』』』
そう言うだけ言うと、西村先生は校舎へとすたすたと向かいます。と、思ったら何故かくるりと踵を返し自分の方に近づく西村先生。
「ああ、そうだ……月野」
「あ、はいです」
「悪いが学園長がお呼びだ。恐らく今日の件で話があるんだろう。……文の件で、な?疲れているとは思うが一緒に来てくれ」
「あ、あはは……わかってますよー?では皆さん、また明日ですね」
「うむ、気を付けて帰るのじゃぞ造よ」
「はい、ヒデさんも気を付けて!」
そうでしたそうでした。今から文さんの反省会の始まりですね。お昼自分が叱ったので、あまり怒られないようにフォローしなくてはね。……霧島さんの件は文さんに助けられましたし。とりあえずヒデさんや他の皆さんに挨拶をしつつ、西村先生に付いていきます。
文さんの件も含め色々とありましたが……どうあれ素晴らしい生徒と先生方の交流大会だったのではないでしょうかね。良い思い出でがたくさん作れましたものね。
『皆、やっぱりまた職員室を襲おう。僕らの生きる道は、それしかない。あの卑怯で卑劣な教師どもを正義の名のもと痛めつけ、僕らの本当の力で戦友を取り戻すんだ』
『いいことを言ったな吉井。流石は今日のヒーローだぜ。俺もたった今、そう考えていたところだ』
『実は俺もだ。何だ、やっぱり俺ら気が合うな。とりあえず全員で作戦を練ろう』
『『『合言葉は———Get back ERO-BOOK!!!』』』
…………い、良い交流できたんですよね……?別れ際の皆さんの会話がちょっとだけ———いいえ、ものすごく気になるのですが……?