二次創作小説(紙ほか)
- 124時間目 召喚野球編終了!〜女の子たちの裏舞台〜 ( No.114 )
- 日時: 2015/09/06 20:46
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
造Side
「それにしても……全く驚いたぞ。坂本の策や吉井の最後の勝負にしてやられただけでなく、まさか本当にお前らが勝つとはな」
「あはは……すみません西村せんせ。反則ギリギリの事してしまって」
体育祭も召喚野球大会も終わった放課後。本来ならちょっとした打ち上げでもやるところかもしれませんが、文さんの事で話があると学園長に呼ばれているため、只今西村先生と共に学園長室へ向かっている最中です。
「まあ、ルール上は一応問題ないからな。月野が謝る必要はどこにもないぞ。それにしても……」
「はい?それにしても、どうしました?」
「ふむ……いやなに、少し気になってな。普段のお前なら絶対に反対するであろう坂本の策を、月野自ら率先してやっていただろう?正直まさかお前までアイツらに加担するなんて思いもしなくてな」
と、歩きながら西村先生がそう不思議そうに尋ねます。あー……確かにいつもならそうでしょうね。
「おまけに吉井が途中妙な事を言っててな。“自分の譲れないものを他人任せにすることのやるせない”とか“ここは僕らが主役じゃない”とかなんとかな」
「あ、あははっ!そうでしたか……アキさんがそんなことを。なるほどなるほど、“アキさんも”でしたか」
「アイツは月野に聞けばわかると言っておったが……どう言う事なんだ?良ければ教えて貰えぬだろうか?」
西村先生は心底不思議そうに自分に尋ねます。まあ、自分やアキさんの行動を不思議に思うのも無理のないことでしょう。先生方には正直申し訳ないことをしてしまいましたし、ちょっとネタ晴らししちゃいますか。
「えっとですね……ちょっと掻い摘んで話をすると———」
〜造説明中〜
「———って感じなのですよ。ですから自分もアキさんも……そしてゆーさんも絶対に負けられなかったんです」
「ふむ……なるほど霧島と坂本の仲違いに没収品、か。確かにそれなら月野やあのバカ二人が真剣になるのもよくわかる」
少し端折ってゆーさんと霧島さんの件の話をしたんですが、先生は大体の事を理解してくれました。
「それにしても……はっはっは!全くお前たちは面白い奴らだ!よし!それならば、坂本の“それ”は一番先に送って貰えるよう頼んでおこう。霧島との仲を直してやる為にもな」
「ほ、ホントですか!?ありがとうございます、西村せんせ!きっとゆーさんも霧島さんも喜びますよ」
西村先生はそうニッと笑って手に持っていた箱の中からゆーさんの提出した没収品リストを取り出して、一番先に郵送できるように並び変えます。先生ってやっぱりどんな時も生徒の事を大事に想ってくれる本当に良い先生ですよね!
「まあ、アイツにはこの事を言うなよ月野。恐らくそんなことをアイツらに言えば……確実に調子に乗って冷やかすだろうからな」
「あはは、了解です。自分の胸の中にしまっておきますね」
「是非ともそうしてくれ。……そうそう。没収品で思い出したが、お前の没収品は確か————何かの種と写真立て、それから何枚かの写真だったな」
と、突然西村先生が自分にそんなことを言ってきます。あら?自分の話ですか?一体何でしょうかいきなり?
「よく覚えていらっしゃいますね?そうですよ。夏休みに皆さんで撮った写真と……その、ちょっとしたお土産と言いますかそんな感じのものです。とある友人に渡したいなって思ってまして」
「うむ、それだな。あの没収品のことだが……特に問題があるわけではないし、何なら今すぐにでも返しても良いんだぞ。こう言うと贔屓と言われるかもしれんが、本来なら没収品されるようなものではなかったしな。あれはお前が自主的に没収品の中に入れただけだっただろう?」
「あー……まあ、授業に関係ないものって考えると没収品に当たると思いましたし。あ、ですが返していただけるのであればお言葉に甘えて————いや、待てよ……?」
「む?どうした月野」
ちょっと待って下さい……折角郵送して貰えるなら……そうだ♪
「……ねえ、西村せんせ?ちょっとお願いがあるんですが」
「ほう?お前が俺にか?それはまた珍しいな。一体何だ?」
……ふふふっ♪折角です。今日のお礼と、いつもの仕返しを兼ねて……少しだけ彼女にサプライズをしてみましょうか。彼女、驚いてくれると良いのですが。
「いくつかの自分の没収品の送り先の宛名、変更して貰えませんか?勿論後日郵送代は支払いますので。あ、郵送するならついでに手紙も入れなきゃいけないかな……?後は突然すぎると困ると思うから例の件の確認を含めて先に電話もしておくとして……」
「…………は?今何と?」
「ふふふっ♪宛名変更ですよ。送り先はですね————」
- 124時間目 召喚野球編終了!〜女の子たちの裏舞台〜 ( No.115 )
- 日時: 2015/09/06 20:31
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
???Side
ここは体育祭も終えて、夕日が射し始めた文月学園2−Aクラスの中。放課後だけあって、本来ならば誰もいないハズの教室に四人分の人影があった。
「———という事なんです。翔子ちゃん」
「どうも坂本も誤解していただけみたいなのよ」
「……うん。教えてくれてありがとう瑞希、美波。それに———」
そのうちの三つの影は……瑞希と美波、それから翔子。瑞希と美波は雄二がやったことについて、翔子にこっそりと教える為にやって来たらしい。そして最後の一つの影は———
「……ありがとうございます、小暮先輩。雄二にこの事を教えてくれて」
「あらあら♪お礼を言われるようなことは、私は何もしていませんよ。坂本君本人に教えたわけでもありませんし」
———そう、造に雄二と翔子の仲違いの真実を教えてくれた小暮先輩の姿が。翔子が泣き止むまでの間ずっと翔子を慰めてくれていたらしい。ちなみにこの小暮先輩。翔子の側で泣いている翔子を慰めつつ、何があったのかを聞き出していたとのこと。
「ウチもよ。別に気にしないでよ、翔子」
「そうですよ。これくらいお安いご用です」
「……ううん。助かった。大体の事は先輩から聞いてたけど、本当の事は聞いてなかったし。それに雄二はきっと私に何も説明してくれないと思うから。先輩、瑞希、美波。本当にありがとう」
改めてきっちりお礼を言う翔子。そんな彼女の態度に瑞希たちは苦笑いをする。
「だからお礼なんて良いって。でも……確かに坂本なら説明しないかもね」
「そうですね。まあ、言い訳をしないというのは坂本君らしいと思いますけど」
「あらあら、坂本君はそんな方なのですか。なるほど男の子のプライドってやつですかね」
「……(コクン)はい。雄二はそういう事には、凄く不器用ですから」
「そうなんですよね、坂本君他の事にはあんなに気が回るのに変わっていますね」
「男はそう言う生き物だってMutter———じゃなくて、お母さん言ってたわ」
「うふふ♪確かにそうですね。そこがまた愛おしいのですが、ね」
「「「ふふふっ♪ですよねっ!」」」
と、他に誰もいない教室に四人分の笑い声が響き渡る。それはそれは姦しく楽しげな笑い声で。
「それにしても……ビックリしました。先輩だったんですね、月野君に本当の事を教えてくれた人って」
「そうよね。ちょっと意外かも?先輩と翔子の接点があるなんて思わなかったし」
「ああ、それですか?いえ、実を言うと今の今まで接点はあまりありませんでした。霧島さんと会ったのは偶然だったんですよ。月野君の妹さんの文さんと一緒に歩いていたら偶然出会いまして」
「……泣いてたら、先輩に慰めてもらった。本当にお世話になりました」
翔子は恥ずかしそうに、顔を赤くする。どうやら慰めて貰った事、相談に乗ってくれた事を今になって意識し始めたらしい。
「いえいえ、ですから私は何もしていませんって。私はただ、“ちょっとだけ”文さんと一緒に霧島さんとお話をして霧島さんの悩みをどう解決すべきかを“坂本君の友人であり、私の友人でもある月野君”に相談しただけですもの♪」
「「「…………」」」
まさにその“ちょっとだけ”の行動が今回Fクラスの勝利を導く最善の行動であったわけで。その言葉を聞いた瑞希・美波・翔子の三人は顔を見合わせて全員同じ事を考えたとのこと。そう……『この人にはまだまだ敵わない』と。
「そんなことより霧島さん。恐らく理由を説明しなくても坂本君は謝ってくれると思います。ですからその時は」
「……はい。私も雄二に謝———」
「おっと、違いますよ。霧島さんが謝るのは最後です♪」
「「「……え?どうしてですか?」」」
「うふふ♪いいですか霧島さん。最初は事情を何も知らないふりするんです。そして———」
と、小暮先輩は片目を瞑り、ニコっと笑いながら……
「「「???そして?」」」
「———そして、お詫びの印に彼にキスでもせがんじゃいましょう♪」
「「「ふえ!?」」」
……とんでもない爆弾発言を告げる。これには翔子は勿論、聞いていた瑞希と美波も顔を赤くして驚く。
「あらあら、皆さんどうかしましたか?」
「えっ!?い、いや……そのぅ……」
「せ、先輩……凄いですね……」
「……何という、策士……」
「そうでもないですよ。これは“ごく一般的な恋の駆け引き”ですもの♪まあですが———」
と、彼女は腕を組んで嘆息しながら、一度間を開けて……
「私もまだまだ頑張らないといけないのですがね。駆け引きがどうのこうのと偉そうに言っている割に、未だに“あの人”には気持ちが届かず、ですもの」
- 124時間目 召喚野球編終了!〜女の子たちの裏舞台〜 ( No.116 )
- 日時: 2015/09/06 20:34
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
そう少し苦笑気味な笑顔で話す小暮先輩。瑞希たちは一瞬ポカンとした顔だったが……
「え、えっと……と言う事は、先輩も好きな方がいらっしゃるんですか?」
「先輩ほどの美人さんの気持ちが伝わらない相手って一体……?」
「……ちょっと気になります」
すぐさま食いつく三人娘。女の子にとってこの手の話題は何よりも興味の湧くものである。この三人も、いや現在進行形で恋をしているこの三人だからこそ興味があるのは当然であろう。
「あら?そんなに気になりますか?……ふふっ♪中々大変な方なんですよね。何せとても優しくてのほほんとしていて誰もが好きになってしまうのでライバルも多いですし、彼自身は本来はとても鋭いはずなのに恋愛関係になると色々とわかっていない方ですし……まあ、だからこそ燃えると言うものですが♪」
「「「…………それってまさか!?」」」
三人が三人、とあるのんきで小さな友人の姿を思い浮かべる。そんな三人を前に小暮先輩は唇の近くに人差し指を立てて———
「———彼にはナイショですよ?私、欲しいものは自分で手に入れる主義ですので♪」
———お茶目にも楽しそうにそんなことを言う彼女。
「で、ですが先輩……その、あの人って」
「そ、そうよね……えっと、言い辛いんですけど先輩、アイツは確か……」
「ええ、わかっています。婚約者さんもいらっしゃることもちゃんと、ね。ですが言ったでしょう?だからこそ———燃えると言うものだと」
その瞬間再び三人は顔を見合わせて同じ事を考えたとのこと。そう……『この人を師匠にしよう』と。
「そんなことより……霧島さん?折角のチャンスなんですから、頑張ってくださいな」
「……はい。頑張っちぇみましゅ」
「あらあら?緊張なさってます?」
「……少し」
「ま、まあ翔子も頑張りなさいな!いっそ坂本のハートも奪っちゃえ♪」
「そうですよ翔子ちゃん!ファイトです!」
「……うん」
「そう言う姫路さんや島田さんも……機会があれば頑張ってくださいな。それこそ吉井君のハートを完全に奪っちゃうくらいにね♪」
「「っ〜〜〜〜〜〜!?」」
夕日で赤く染まった教室以上に顔が真っ赤な瑞希や美波、そして翔子。そんな彼女らを楽しくからかう小暮先輩。体育祭と召喚野球大会は、思わぬところで思わぬ友情が芽生えたそうな。
葵Side
体育祭が終わりを告げた次の日の夜。今日も充実した学園生活を過ごしたなと考えていた矢先———
Prrr! Prrr!
ガチャッ!
「はい。どちらさまでしょうか?」
『夜分遅くにすみません。小暮葵さんのお宅でしょうか?自分、彼女の学友である月野と申します』
「あらあら♪こんばんは月野君、小暮です。もしかして私に何か聞きたいことがあるんでしょうか?」
———突然月野君からのお電話が。大体の要件はわかっていますが、やはり確認にきましたね。
『はい。こんばんわです。たはは……その口ぶりだと、どう言う用件かわかっているのでしょう?』
「いえいえ♪そんなわけないでしょう?私は予知能力者ではありませんので♪」
『予知はしなくても、予想していますよね……いえ、確信しているって言った方が良いのでしょうか?———まあ、ちょっと聞きたい事が二、三点あってですね』
ふむ、やっぱりそう来ましたね。あの体育祭の件、つまり———
「ふふっ♪つまり聞きたいことは———文さんの事、ですかね?」
『……ビンゴです』
そう、月野君曰く妹さん。ですが本当はちょっぴり不思議な存在の彼女……文さんの件。月野君、霧島さんと坂本君の問題がなければすぐにでも話を聞きたかったようですからね。
「小暮さん、あの時“彼女の正体を知っている”的な事を言ってましたよね?いつ、どうやって、いえそもそも何をどう知ったんですか?』
「すみません月野君。その前に予防線を張らせていただきますね。今から話すことは私の唯の想像です。私のその勝手な想像でも良ければ聞いて貰えますか?」
『是非ともお願いしますね』
「ありがとうございます。———まあ、切っ掛けは勿論3−A対2−Fの試合の時の文さんのおかしな行動と言動です」
まあ、流石にその時までは本当に文さんは月野君の妹さんと思っていましたが。本当に彼女は“よく出来ていましたし”
「彼女、月野君がデッドボールを受けた時に言ってたんです。《試合を 公平に してくる》って。その直後に文さんがいなくなったと思ったら、あのフィードバック騒ぎ。これは文さんが何かしたな、と。最初はそんな唯の女の勘です」
『……なるほど?素晴らしい勘ですね。ですがそれだけで判断したわけではないですよね?文さんの独り言かもしれませんし、そんなことをあんな小さな子がそんなことをできるとは普通は思えませんよね』
あらあら、いいのでしょうか?文さんを小さいと言うことはつまり同じ体型のご自身も小さいと言うことに———と、思わずくすりと笑ってしまいます。言った張本人は全く気が付いていないご様子ですが。
『???小暮さん?何か可笑しなことでも?』
「ふふふっ♪何でもありませんよ。続けましょうか。えっと……その次はその後のお弁当を食べる時に違和感が。彼女確か《生まれて 初めて ゴハン 食べたー》って言ってましたよね」
『……あー、やっぱり小暮さんは騙せませんよねー……自分の誤魔化し、効きませんでしたか?』
- 124時間目 召喚野球編終了!〜女の子たちの裏舞台〜 ( No.117 )
- 日時: 2015/09/06 20:43
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
どちらかと言うと———しまった、と言いたげに文さんの発言を必死に誤魔化そうとしていた月野君がかえって印象に残ったせいで気づいた違和感ですけどね。
「しかも三年生と二年生の召喚野球の話になった時、文さんはですね———」
《うー 文 反省 しないと いけない ねー … … … ナツカワ ツネムラ あと よく知らないヒト ごめんな さいー》
『文さん大丈夫ですよ。夏川君たちはもう大丈夫だと言ってましたし。文さんが反省なさっているなら夏川君たちも月野君も許してくれるでしょうし♪』
《うん …… …… …… ナツカワと ツネムラ 大丈夫って 言ってた》
『夏川君たちがそう言っているならきっと大丈夫ですよ。今度から気をつけましょうね、文さん』
《わかったー!》
「———と、このようにあたかもあのトラブルがご自身のせいだと言いたげに話していたんです」
『と言うことは……やっぱりその時には気づいたのですね?文さんが、“人間じゃない”って』
正直未だにどういう原理なのか、そして文さんが月野君とどんな関係なのかは詳しくはわかっていませんがね。まあ、ただこれも私の唯の勘ですが……文さんは月野君の留年と身体の召喚獣化に何かしら関わりがあるのかもしれませんね。これは本人の口から聞くまでは彼に聞くつもりはありませんが。
「ええまあ。ですがそれでも流石に荒唐無稽なおとぎ話のようなお話でしたし、分からないことは分からないままにするのも癪でしたので———」
『癪でしたので?』
「正直に白状するとですね……あの後こっそり文さんを誘導尋問しちゃいました☆“文さんって、実はシステムの関係者さんなのでしょう?私は知っているので隠さなくて大丈夫ですよ”と。そう鎌をかけてみたら、素直な文さんは色々と教えてくれました♪まあ、これが真相です」
『…………』
あらあら?月野君黙っちゃいましたね?恐らく電話越しでジトっと私を見ているのでしょう♪ああ、直接彼の顔が見れないのは残念ですね♪
「と、まあそんな感じでわかったんです。文さんが“文月学園召喚システムの管理者兼システムの頭脳”ということが」
『……ま、まあ手口は置いておくとして、お見事ですよ小暮さん、全くもってその通り。文さんの正体を暴いた手腕、賞賛に値します』
と、彼は電話越しにパチパチと拍手をします。照れちゃいますね♪
『それでは本題に入らせていただきますね……小暮さんにお願いなんですが、』
「ああ、他言無用ってことでしょう?勿論ですよ。私、文さんとも友人ですもの。友人を売る気はさらさらありませんので」
天真爛漫でちょっぴりやんちゃ。ですが元になった誰かさんと一緒で優しいあの子。良い子ですし守ってあげたいと思ってしまいますからね。
『……まあ、貴女ならそう言っていただけると思ってましたよ。ですが———本当にありがとうございます。彼女を守ってくれて。彼女と友人と言ってくれて』
「お礼を言われるような事は何もしていませんよ?……あら、もしかして用件はそれだけでしょうか?」
どうやら聞きたいことはこれだけのご様子ですからね……個人的には、もう少しお話したい気持ちでいっぱいです。普段は長電話なんて好きではないのですが……そう言えば月野君が電話をかけてくれるなんて初めてでしたっけ。……いけませんね、ちょっと欲張りすぎました。
『まあ、文さんの件は終わりですが……その他にもお礼を言いたくて』
「……ああ、もしかして霧島さんの件ですか?」
『はい。教えてくれて助かりましたよ。そっちも本当にありがとうございます。助かりました。それで、ですね———小暮さんにお礼をしたいのですが』
「霧島さん本人からも言われましたし、そもそもお礼なんて要りませんよ。気にしないでくださいな」
言うならば、この電話自体がお礼そのものです———なんて、冗談交じりでも言えませんが。
『まあ、そう言わずに“お礼”貰っててくださいな。多分今日、明日中に届くらしいので』
「……は?」
……?何でしょう?ここに来て月野君によくわからない事を言われます。届く?お礼?
『ふふふっ♪流石に何の事かわかりませんよね?ヒントはですね“自分が何のために召喚野球で頑張っていたか”です。お弁当の時を思い出してみればわかるかもしれませんよー?』
「…………何のために頑張ったか……お弁当の時……ひょっとして没収品、ですか?」
『おうっ!?さ、流石小暮さん……一瞬で気づくんですね……』
ああ……そう言えば二年生は召喚野球大会に勝てば没収品が戻ってくるそうですね。霧島さんのヴェールも戻ってくるそうですし。……そう言えば月野君の没収品ってそもそも一体何なのでしょう……?
『まあ、とは言え中身まではわかりませんよね。その答えは———多分すぐにわかりますよ。では、また学園でお会いしましょう。お休みなさい小暮さん』
「え、ええ……お休みなさい月野君」
ガチャ!
「…………?」
何か意味深な台詞を残して、月野君との電話が終わります。……私とした事が、彼の言動が読めないなんて不覚……何となく悔しいので、とりあえず月野君の意図を分析しようとすると———
「葵さん、電話終わりましたか?学園から貴女宛てに届けものがありますよ」
「はい?」
———母様が何かの小包を私に渡します。学園から、ですか?一体何なのでしょうかね?
月野君の言葉に悩んだところで今は判断材料もありません。どうにもならないので、まずは母様からその学園からの小包とやらを受け取り部屋へと戻り中身を取り出してみる事に。その中には———
「……小瓶に入った向日葵の種に、向日葵の写真立て?それから……手紙?」
何とも言い難いラインナップです。そもそも誰が何のために私に……?一先ず情報が欲しいので、入っていた手紙を開いて読むと……そこには———
『小暮葵様へ
突然驚かれたでしょう?貴女の驚いている顔を直接見れないのは残念です♪
今年の夏は受験勉強であまり遊びに行けなかったって言ってましたよね?そこで、遅くなりましたが夏の想い出をプレゼントです。本当はコレ、夏休みが終わってすぐ渡そうと思ってたんですが没収されちゃいまして。一応自分だってこれを取り戻す為にも、野球を頑張ってみたんですよ?
小暮さんって確か向日葵好きでしたよね?ちなみにこれはいつぞやの小暮さんが持っていた写真に写っていた向日葵の種と、向日葵の写真立てです。夏休み中に見つけておきました。押し付けるように送ってごめんなさい。いらなければ捨てちゃってくださいな。
いつかのお礼と今回のお礼、それからいつも助けて下さっている貴女に感謝をこめて送ります。
月野造
追伸 いつもからかわれている仕返しのつもりでしたが、いかがだったでしょうか?貴女の反応がちょっと楽しみです♪ではまた学園でお会いしましょう』
「…………あの、人は……」
さっきの意味深げな台詞は、そういう事ですか。全く参りましたね、まさかここで一本取られるなんて……と言うよりも卑怯ですよ?こんなの……卑怯です。
「…………ええ。それはそれは驚きましたよ月野君。本当に……全く、私も霧島さんたちの事、全然言えませんよね」
手紙と頂いたプレゼントを抱き締めつつ、思わずため息が出てしまう私。私の気も知らないでこんなことしてくれて……本当に、私の追い求める人は……手強い方なんですから……
「…………ですが、ですが必ず貴方を……♪」