二次創作小説(紙ほか)
- 番外編:酔いと造と幼児返り!?〜お酒は大人になってから〜前編 ( No.120 )
- 日時: 2015/09/11 21:21
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
———突然ですが“酒は飲んでも飲まれるな”とはよく言ったものですよね。ほろ酔い気分になるならまだしも飲んでいるうちに酒に飲まれるようでは話になりません。お酒で自分がわからなくなってはどうにもなりませんし……
とある休日の月野家にサクヤさんに呼ばれていた優子さんと玲さんの姿が。楽しそうにお酒を飲みながら(勿論優子さんのはただのジュースですが)和気藹々と楽しくお喋りをしています。何でも連休お泊りをしているとのこと。
ちなみに優子さんに捕獲されて一緒に泊っている秀吉は、この三人と一緒にいると(色んな意味で)危険だと判断したらしく、造と共に二人で仲良く造の部屋に立てこもっているそうな。
「それにしても……師匠も玲さんも本当に良い飲みっぷりですね」
「そうですか?私はそこまで飲めるってほどではないのですがね。そろそろキテますし」
「はははっ!アタシはまだまだいけるぜぃ?ザル越えてワクだからねぇ」
と言いつつ、ぐいっと酒を飲み乾すサクヤさん。その姿たるや———酒豪、ウワバミと表現するにふさわしい。
「ホント師匠ってイケる口なんですね。あ、でも飲んでばかりじゃなくてちゃんと何か食べてくださいね、身体に悪いですし」
「はははっ!わーってるって!まあ、アタシはちょっとやそっとじゃ崩れんから心配しなさんな!」
「ふふっ、それにしても今日は随分お飲みになるんですね先輩。いつもより多くありませんか?」
と、持ってきた酒が空になっているのを見ながら、玲さんが不思議そうに尋ねます。大量に転がった空の酒瓶から、どれだけ飲んだか考えなくてもわかりますね。
「まあ、この家で飲めんのはアタシだけだかんねぇ……蒼たちも執事やメイドたちも飲めるちゃ飲めるがみーんな下戸だしなぁ。つまりは最近あんまり飲んでいないのさ。正直一人で飲んでもつまんないからねぇ」
「ああなるほど。確かにそうですね」
「……へぇ?そんなもの何ですか?」
「「そんなものだよ(ですよ)♪」」
優子さんが不思議そうに尋ねると、二人はニコッと笑って応えます。その辺は飲める大人と飲めない子供の違いってところのようですね。
「あーあ……優子っちも飲めたら良かったんだがね。もう少ししたら優子っちも飲めるだろうし、その時は付き合いなよー?造はほんっとにダメだからねぇ……」
「ふふっ♪勿論です。その時は宜しくお願いします師匠。———って、師匠?造くんはダメってどう言う事ですか?」
「?そうですね。もしかして造くんってお酒に弱いってことですか?」
と、サクヤさんの台詞に不思議に思った二人が尋ねると……サクヤさんは、突然先ほどまでとは明らかに顔色を変えてきます。
「…………」
「師匠?どうしたんですか?」
「先輩?顔色が悪いですが?」
「……一つだけ、忠告しておくよ。いいかい?」
「「……?」」
「……絶対に、造に酒を飲ませんじゃないよ。もし飲ませたら———」
「「……飲ませたら?」」
と、サクヤさんは冷や汗をかきながら一言、
「———アタシもどう止めればいいかわからん上に、下手すりゃ……命刈られるよ……」
「「!?」」
サクヤさんの一言に、思わず固まる玲さんと優子さん。さてさて……今回はそんな“お酒”に関するお話です。
- 番外編:酔いと造と幼児返り!?〜お酒は大人になってから〜前編 ( No.121 )
- 日時: 2015/09/21 22:33
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
———とある日の文月学園———
〜文月新聞〜 【事件】欄より抜粋
『今度は半裸!流石に犯罪か!?〜Fクラスバカコンビの醜態に迫る〜』
文月新聞に載らない話題が無いと言わんばかりに、紙面を飾る事に定評のある2−Fクラス。そのFクラスきっての名物(迷物?)コンビがまたもや事件を起こしたとのこと。何とこの二人、何をトチ狂ったのか昨日の放課後に男二人で半裸になったまま廊下を全力疾走していたことが我々の調べで分かった。我々はその裏付けとして、その第一発見者の目撃証言を得る事に成功した。
〜2−D玉野美紀さんの目撃証言〜
『はい。そうです。放課後に廊下を歩いていたら、ほとんど裸のアキちゃ———吉井君と坂本君が出てきて、西村先生に凄い勢いで迫って……私、本当にビックリしちゃって、思わず写メを……』
彼女の提供してくれた写真が右図の通りである。これについて専門家は『公然わいせつ罪等の罪に当たるのではないだろうか』『と言うか、見るものを不幸せにする写真を見せないで欲しい』『どうせ半裸ならアキちゃんとして写って欲しかった』などの厳しい声が聞こえる一方で、『Y井君のこの写真は僕にとっては眼福かな。ありがとう』『やっぱりY井君たちはデキていたんじゃないのか』『祝福してあげるべきなのかもね』と、彼らを応援する者たちもいたとか。
どちらにせよ彼らの奇妙な行動に一体どんな真実が隠されているのかがわからない以上、早期の事実の解明が求められるだろう。
———とある日の放課後の事でした。今日は(今日も?)掲示板に……何やら凄い新聞記事が掲載されていますね……具体的に言うと、自分の横で冷や汗をダラダラと流しているアキさん・ゆーさんの姿が掲示板に張られた新聞に載っているのですが……コレって一体?
「「「「「…………」」」」」
何とも形容しがたいのですが、上半身裸のアキさんとゆーさんが西村先生に迫っている図が鮮明に、バッチリ掲載されています……こんな時、自分は何とアキさんたちに反応すればいいのでしょうか……?コレはアキさんたちに聞いてみるしかないですね……
「……えっと、アキさんとゆーさん?コレは一体……?」
「「造!失望しないでくれ!と言うか、失望する前にせめて説明させてくださいお願いします!」」
涙目で自分に訴えてくるアキさんたち。い、いや……別に失望なんかしませんが……?
「せ、説明してくださるのなら、どうぞ……?」
「「じ、実はだな(だね)————」」
〜明久・雄二説明中〜
「———なるほど。つまり昨日の放課後皆さん4人でダウトで遊んでいたはずが、どう言うわけか酔った姫路さんと霧島さんに襲われて(?)半裸で逃げるしか方法がなくてこんな事になったのですか。……そ、それはまた大変でしたね」
お二人の話を要約すると———昨日は職員会議で授業が早めに切り上げられ、時間があったアキさんとゆーさん、ヒデさんとこーさんの4人で遊んでいたら色々あってウイスキーボンボンを食べ酔って暴走した姫路さん達に襲われて、逃げ出し追い詰められて泣く泣く半裸姿で西村先生に助けを乞うたとのこと。そうか、そんなことが……昨日は自分、学園長に呼ばれて定期検査されていましたので、そんな大変な事になっているなんて思いもしませんでしたよ。
「……造の理解が早くて助かるよ」
「……だな。正直お前に見捨てられるのは耐えられんぞ」
いや、だから見捨てませんってば……それにしてもなるほど、それならこの新聞の記事にも納得でき————ますか?い、いやちょっと待ってください?それで納得できる時点で自分だんだん常識から離れていってる気が……?い、今更な疑問かもしれませんがね。
「それにしても……確かに恐ろしかったのう。ワシも気がつけば眠らされておったし」
「…………俺もだ。ウイスキーボンボン、恐るべし」
「い、いや……それはウイスキーボンボンが恐ろしいんじゃなくて、姫路さんたちが恐ろしいのでは?」
「「「「……確かに」」」」
まあそれも今更感がありますが……最近の姫路さんたちは、サクヤさんや優姉さんたちと似た方向で危ないですし。主にアキさんを見る目がその……肉食獣の目になっているような気がしますもの。
「にしても、ウイスキーボンボンですか。美味しそうですよねー……食べたことないですけど。と言うか、最近はあまり見かけませんよね」
「え、うそ?造が食べたことないって……意外だね。どんなに珍しいものでも、お菓子系は大抵食べていると思ってたのにさ」
……ん?あれ?自分ってアキさんから見てどんな風に見られているのでしょうか?まるで(?)甘いものに目がないように聞こえるような……?
「ええ、実は食べたことないんです。“お酒は大人になってから”って教えられてから、子供のころから食べちゃいけないものって思いこんでいたわけでして。別にウイスキーボンボンを食べちゃいけないって言われていたわけでもないのですがねー」
と、笑いながらアキさんに答えた瞬間———
「え?ウイスキーボンボン……ですか?それなら持ってますよ?」
「……私も。皆で食べようと思って持ってきた」
「ちょうど良かったじゃない。アンタたちも食べなさいよ」
「「「「「……っ!?」」」」」
- 番外編:酔いと造と幼児返り!?〜お酒は大人になってから〜前編 ( No.122 )
- 日時: 2015/09/18 20:12
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
———なんということでしょう。話題の姫路さん&霧島さんと島田さんの姿が。しかも……何ということでしょう。アキさんたち曰く、昨日の事件の起爆剤となったブツ:『ウイスキーボンボン』までご丁寧に持っているじゃありませんか……ってどうして!?
「ななな、何でそんな危ないものを持っているのかな、瑞希?」
「え?危ないもの……ですか?」
「そそそ、そうだぞ翔子。危険だからそれを今すぐ捨てるんだっ!?」
「……危険って?」
昨日の事があってか、大慌てでそのブツから姫路さんと霧島さんを遠ざけようとするアキさんたち。自分は実際に見ていないのでわかりませんが、この脅えようからすると……それほどまでに恐ろしいんでしょう。
「あはは♪さてはアキ、お腹空いてて自分のが無くならないか心配なのね?大丈夫よ、いっぱいあるから」
「ちょっ!?み、美波!?美波もとりあえず、その危険物から手を離すんだ!じゃないと(美波も)暴走してしまう!」
「暴走?アキったら、暴走しちゃうほどお腹空いてるの?」
と、関係ないはずの島田さんにもそう言うアキさん。あれ?ひょっとして島田さんも……?
「(ねえ、アキさん?もしかして島田さんもお酒弱いんですか?)」
「(そ、そうなんだよ!清涼祭の時ベロンベロンに酔って絡んできた前科があってさ!?)」
「(ああ……そう言えばそうじゃったの。と言うことは、この場にいる女子全員酒に弱いと言うことじゃな)」
「(ま、まあ全員お酒が飲める歳じゃないので仕方ない事でしょうが……)」
……OK、これでここにいる女子三人にお酒を飲ませちゃいけないってことは把握出来ました。ま、まあ……本来飲んじゃいけないので、酔う事自体が無いハズなんですがね……
「と、と言うか、皆何でそんなもの持っているの……?ウイスキーボンボンなんて珍しいものをさ」
「ああ、昨日お手伝いした先生がですね、また『貰いものだけど、一人じゃ食べきれないし皆さんで食べてください』って下さったんですよ」
「「「「「(ボソッ)余計な事を……」」」」」
「え?」
「「「「「いや、何も?」」」」」
間近で見ていないので想像できませんが、アキさん達のこの慌てぶりをみるにウイスキーボンボンを食べさせるのはかなり危険の様子……こうなれば、ここは女性陣の皆さんに食べられる前に処理するしかないですね。男子陣全員にそう瞬時にアイコンタクトする自分。皆さんもすぐさま静かに頷き作戦開始。
「ああ、そう言えば頭使ってすっごく今甘いもの食べたかったんだ!美波、瑞希!今すぐ食べてもいいかなっ!?」
「俺もだ翔子!腹減って死にそうなんだ!てか、問答無用で食わせて貰うぞ!」
「ワシも悪いが、小腹が空いておっての!遠慮なくいただくぞい!」
「…………俺も!」
「じ、自分ホントにコレ食べるの楽しみだったんですよ!いただきますねっ!」
「「「???ど、どうぞ……?」」」
とりあえず勢いのまま、男子全員でその『ウイスキーボンボン』を処理————もとい、食べる事に。そう……女性陣が一口も食べられないように!
「「「「「では、イタダキマスっ!」」」」」
そうして、姫路さん・島田さん・霧島さんが手に持っていたソレを、各々が一瞬で口の中に入れて頬張ります。よし、これで女性陣に食べられることはありませんね!悪いと思いつつもそのままモグモグと完食する自分たち。これで……彼女たちが、暴走する……ことは……ない……?
「って!アンタたちもう全部食べちゃったの!?そこまでお腹空いてたの!?」
「(モグモグ……ゴクン!)うんゴメンっ!いやぁ、美味しかったよご馳走さま!」
「あ、あはは……皆さんよっぽどお腹空いてたんですね」
「ああ、すまんなお前ら。つい美味そうで、全部食っちまった」
「……雄二ったら、食いしん坊さん。いいよ、許してあげる」
それにしても……おお?結構、甘くて熱くて大人の、味でおいしい……です、ね!ホント……あま……熱く……て……?んにゅ……?あらん……?からだ、あちゅ……い?……おー?
「…………中々独特な味」
「ホントじゃのう。確かに美味いが、あまり食べた事のない味じゃな。これが大人の味と言うべきなのじゃろうか……のう造よ?」
「…………おとなー?」
「……ん?造?どうかしたのかの?」
「…………おー?つくるは、まだこどもだよー?」
「「「「「「「…………ん?」」」」」」」
優子Side
「———ウイスキーボンボン?それはまた珍しいわね」
「だよねっ!それをさ、姫ちゃん達が先生に貰ったらしくて一緒に皆で食べようってさ。ボクも甘いもの好きだし、楽しみだなぁ〜♪」
昨日に続き、今日も先生方が会議があると言う事で授業も早めに終わり、またいつものメンバーで放課後遊ぼうかと誘いを受けて、先に行った代表を追いアタシと愛子は2−Fに向かうことに。
「ああ……だからさっきから愛子、そわそわしてたのね。それじゃ急ぎましょうか」
「そだね〜♪下手したらもう皆に食べられちゃうかもだし、急ごう!」
そう言って小走りに2−Fの教室に向かう愛子。ふふっ、ホント愛子って甘いもの好きよね。造くんといい勝負だわ。……それにしても、ウイスキーボンボンねぇ……?なにか引っかかるけど、一体何かしら?何かめちゃくちゃ重要な事を忘れているような……?
「優子?どうかしたの?ボーっとしてさ。早く行こうよー?」
「あ、ゴメンゴメン。今行くわ」
首を傾げても、頭を捻っても何が引っかかるのかさっぱりね。とりあえずアタシも急かす愛子に続いて2−Fへと向かう事に。まあ、その内何か思い出すかもしれないしいっか。
〜優子&愛子移動中〜
愛子と(ちょっと小走りになりつつも)話ながら2−F教室に辿り着く。にしても最近改装されただけあって、以前に比べると本当に綺麗な教室になったわよね……いいえ、以前が劣悪すぎただけとも言うけど。
「さて、着いた着いた♪おおっ?何だか甘い匂いがするね。さてはもう食べてるな〜」
「……よ、良くわかるわね愛子?まだ教室にも入っていないのに」
「そりゃわかるよ。多分甘いもの大好き同盟の月野君もわかると思うよ。にしても……もう!ボクに黙って先に食べちゃダメなのに!」
そう言ってガラッ!と、扉を勢いよく開ける愛子。造くんも愛子も甘いもののことになるとホント元気ね。まあ、好きなものに夢中になる気持ちはわからなくもないわ。
「こらー!皆、ボクらに黙って先に食べてたでしょ?ちゃんとボクらの分も……取ってあるん……だよね?って、どうしたのさ皆?そんなに驚いた顔しちゃって」
「あらホントね。どうしたのよ皆?造くんの方見て固まってるわよ?」
扉を開けると、どうしたことかいつもの仲良しメンバー全員が造くんの方を見て、まるで希少生物にでも遭遇したかの如く口をパクパク開けて驚きまくっている姿があった。何コレ?ホント何なのよ?
「ねえ造くん、一体これは何なの?何かあったのかしら?」
「皆固まっちゃってるね。一体何があったのカナ?」
「…………おー?」
「「…………?」」
不思議に思って事情を知ってそうな造くんに問いかけるも……こっちもこっちで反応が今一ね。と言うか、今日はいつにもまして造くんがしぽやぽやしていて可愛く見えるような……?
「えっと……いや、だから一体どうしたのかなって。あら?大丈夫造くん、顔真っ赤に見えるわ。もしかして熱あるんじゃない?」
何だか造くん、ちょっと顔も赤いし熱でも出ているのかなと熱を測ろうとその造くんに近づこうとすると———
「あー!優お姉ちゃんと愛子お姉ちゃんだー♪」
「「…………!?」」
…………そこには、最強の頬笑みを浮かべた天使が……佇んでいた。
- Re: バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 ( No.123 )
- 日時: 2015/09/17 08:44
- 名前: ユウ (ID: iQk5t9Pn)
これは…面白そうな展開だ!!
ここから、造が何処まで堕ちテイクノカ楽しみですね!!
そして明久よ、逆に考えるんだ。
前回僕が送ったシスコン系の聖典(エロ本)のお陰で、君の大切な聖典(エロ本)の隠れ蓑に出来るのだと!!
・・・それに大丈夫!原作でもすでにロリコン、シスコン、ショタコンのターキーを会得している明久なんだ、今さらシスコン系のエロ本を持っていても、みんな理解してくれるはずさ♪(黒笑)
…にしてもいやー、格安とはいえ、1つ二千円くらいで売っていたのに、FFF団の方々うちの商品(剣、槍、斧、弓、
銃、その他小道具)を気に入ったのか1人ずつ10個ほど買っていってくれたからお財布がたんまり儲かったよ。
折角だしこのあぶく銭(えっ!?byFFF団)で問題児達と東京にしゃれ込もうかね
エル「やったー!!エル、新しい服買いたいと思ってたんだ!!」
耀「私は焼肉に寿司、トルコ料理、フランス料理、インド料理、中国料理、韓国料理、ロシア料理、アメリカ料理、ドイツ料理、懐石料理、あ、後デザートも全部食べたい!!」
アベル「僕は気になる書籍が何冊かあるから、それの買出しかな」
飛鳥「私はそうね…エルさんと一緒にドレスとか装飾品とか買っていこうかしら」
十六夜「俺は箱庭で過ごす日常が既に面白いからな。今更俺の居た世界に欲しいもんなんてねえな」
取り合えず、FFF団の皆さん!!いつも有り難う!!お陰で写真の子達も喜んでくれたよ!!(但し、自分の臨時収入ということにしていて写真のことは一言も言ってないし、君らのことも伝えていないがな!!)
それじゃあ、来週も糖分さんのお話、楽しみにしてますね!!
- Re: バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 ( No.124 )
- 日時: 2015/09/18 20:52
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
>ユウさん
感想ありがとうございますです!
酔ってタガが外れた我らが造さん。さぁて色んな意味で大惨事の予感……
造「おー?つくるよってないよー♪」
うんうん、そうだね。酔っぱらいはみんなそう言うんだよねー
明「困ったことになったね……造もだけど———姉さんたちがヤバイよコレェ!?持ってた他の聖典は姉さんが“もうこんなものじゃなくて姉さんを使ってくださいね”って全部燃やしちゃったし!おまけに———」
瑞「……美波ちゃん、どうやったら明久君にお姉さんに手を出したら犯罪だって伝えられるんでしょう……」
美「地道に……そう、地道に教えていきましょう……アキだってちゃんと教えればいつの日か理解してくれるハズよ瑞希」
明「———おまけに二人にトンデモナイ誤解が出てるんだけどぉ!?助けて造!?」
造は酔ってるから役に立たんよ明久。まあ、今更感はあるし別にいいんじゃない?
明「良くないよ!?ぜ、是が非でも造を早く元に戻さなきゃマズい……」
雄「つーか何で俺らの周りには酒に弱い奴らばっかりなんだ……」
ちなみに購入した武器を片手に自身の宝物を取り返しに、そしてババァ長に恨みを晴らしに向かっていった連中はと言うと———
FFF団『『『武器はありがたい……写真も勿論ありがたい……しかし———鉄人にはまるで歯が立たなかったんだが……一文無しになった上、我らの聖典は今頃母の下へ……帰ったら地獄が待っている……』』』
宗「体育祭が終わってすぐに指導室に来るとはいい根性だ。全員覚悟は良いな。身体を動かした分、今度は頭を動かすんだ」
FFF団『『『帰らずとも地獄だった……』』』
まあ、残念ながら鉄人に返り討ちにされたそうです。武器が良くてもFFF団じゃ鉄人には勝てませんねー
それじゃあこの辺にして、そろそろ次のお話更新します。それとまた連絡ですが、連休もありますし早ければ月曜日〜火曜日にももう一話更新するかもしれません。これからも楽しんでいただければ幸いです。ではでは〜
- 番外編:酔いと造と幼児返り!?〜お酒は大人になってから〜中編 ( No.125 )
- 日時: 2015/09/18 20:54
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
明久Side
……とんでもない事になってしまった気がする。
「あはは♪雄二お兄ちゃんのからだ、おっきいねー♪つくるもはやくおっきくなりたいなぁ」
「……あー、造?お前一体……」
「んー?なーに?雄二お兄ちゃん」
「……な、何でもない……」
……僕らはただ瑞希たちがアレを、ウイスキーボンボンを口にしないようにしただけだったんだ……それなのに……
「んみゅー?へんなのー。まっ、いっか!康太お兄ちゃん、秀吉お兄ちゃんもあそぼー♪」
「…………造が壊れた」
「むー!ひどーい!つくるどこもこわれてないよー!」
「造よ……その……お主酔っておるじゃろ?」
「よってる?あはは!秀吉お兄ちゃんへんなこというねー!つくるはこどもだからお酒のめないし、よわないよー?」
「「「…………酔ってるな」」」
まるでミイラ取りがミイラになったように———造がウイスキーボンボンの力によって見た目相応に子どもと化した。どうしてまた、僕らの周りの人はこうも酒に弱いのかな……?
「(ホント今の造って完全に子供だよね。いつもがしっかりしている分、ギャップが凄いや……さて皆?造をどうしようか?)」
とりあえず、ああなった以上何とか造を戻さないとね。雄二たちにあの造は任せて、一先ず作戦を立てる事に。
「(そうですね……それにしてもビックリしました)」
「(ホントよね……まさかあれだけで酔えるなんて)」
「(……ウイスキーボンボンで酔えるって造は凄い)」
それは君たち三人が言えた事じゃないし、そもそもの原因は君たちにあるんだけど———ってツッコミたいのをグッと我慢する。その辺はもう考えないようにしておこう。
「(んー……でもまあ、月野君だし放っておいても大丈夫だとは思うケド……)」
「(あー……確かに工藤さんの言う通りかも。造に限って暴れたりはそうそうしないだろうし、酔いが覚めるまでは葉月ちゃんみたいに対応すれば———)」
「(……甘いわよ愛子、吉井君。造くんをこのままにしておくと危ないわ)」
「「「「……え?」」」」
と、さっきまで黙っていた(未だに鼻血を出している)木下さんが、深刻そうに会話に加わって来た。えーっと、とりあえず木下さん。何はともあれまずは鼻血止めようか。その出血量はホントにそろそろやばいと思うからさ。
「(どうしてさ木下さん?あんなに無邪気で可愛らしい造が危険って……?)」
「(いや、アタシもよく知らないんだけど……師匠が以前言ってたのよ。“絶対に、造に酒を飲ませんじゃない。どう止めればいいかわからん上に、下手すりゃ命刈られるよ”って……)」
「「「「!?」」」」
い、命を……!?いやいやいや!?どう言う事なの!?まさか、お酒飲んだら暴走するタイプなのか造は……!?そんなバカな、と思いつつでもこの木下さんの口ぶりからすると、このまま放っておいたら何だか大変なことになりそうな気がする。だったらさっさと何とかするしかないか。
「(なら事情はよくわからないけど、手遅れになる前にすぐにでも何とかしようか)」
「(そうね。それで吉井君、具体的にどうするの?師匠呼んでみる?)」
「(あー……確かにそれが一番良い方法だろうね)んじゃ早速———」
とりあえず造の扱いに手慣れている木下さんの意見に従うことにした、まさにその時———
「明久お兄ちゃんもお姉ちゃんたちも、どーしたのー?」
「ん?いや、別に何でもないよ造……って、うぉわ!?つ、造ぅ!?」
突然僕らが会話してしているところに、造が乱入してきた。い、いつの間に……?あ、あれ?造って確か雄二たちが面倒みているハズじゃ……?何でここにいるんだ……?
- 番外編:酔いと造と幼児返り!?〜お酒は大人になってから〜中編 ( No.126 )
- 日時: 2015/09/18 20:57
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
「んみゅ?どしたの明久お兄ちゃん?」
「い、いや……“どうしたの”はこっちの台詞なんだけど……つ、造は雄二たちと一緒じゃなかったのかなーって……?」
それにしても何故だろう……造にお兄ちゃんって言われると、無性にこっちが恥ずかしいんだけど。これなら葉月ちゃんに『バカなお兄ちゃん』って呼ばれる方がまだ恥ずかしくない気がする。ホント何でだ……?
「おー♪雄二お兄ちゃんたちが動かなくなっちゃったから、つくるはこっちきたの—♪」
「「「「「……動かなくなった?」」」」」
何のことかなって、とりあえず雄二たちのいた方向を見てみると———
「「…………(シーン)」」
「(ブツブツブツブツ……)」
ちょっ!?死屍累々……だと!?ムッツリーニは(いつもの如く)鼻血で倒れて動かないし、秀吉は限界近くまで真っ赤になっていて機能停止寸前。そして、唯一意識はありそうな雄二は……
ガスッ!ガスッ!ガスッ!
「……俺は……子供好きでも……なければ……親馬鹿にも……ならん……ぞ……」
……何だか自分自身と葛藤しながら、頭を壁に打ちつけている。どうでもいいけど新しい教室なんだし、壁を壊すなよな雄二。あとムッツリーニにも言えるけど血で床が汚れるからほどほどにするんだよ。
……にしても何だ?この三人に一体何が……?と、恐らくこの元凶であろう造(子供バージョン)は木下さんたちにトコトコと寄ってきて———
「おにーちゃんもおねーちゃんたちもあそぼー!(ニコっ♪)」
「「「「「っっっ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」」」」」
———キラースマイルを僕らにプレゼント。や、ヤバイっ……木下さんじゃないけど、意識持っていかれそうだ!?何この生き物!?か、可愛い……!?
「我が……人生……一片の……悔い……なし……(ドサッ!)」
「って!?ゆ、優子っ!アンタ血が……!?」
「ゆ、優子ちゃん!?その血の量は危ないですよ!?」
そして、当然の如く木下さんの魂を刈り取る笑顔だった。ヤバイね。ムッツリーニ以上に鼻血を出している木下さんは、とても幸せそうに逝きそうだ。ホントどうしよう……まさか10分足らずでここまでの被害が出るなんて……
「あー……確かに日高先生の“下手すりゃ命刈られる”って言葉は正しいね」
「……一先ず、今すぐにでもその日高先生をここに呼ぶべき」
「そ、そうだね。こーたくんや優子も診て貰わないといけないし、ボクすぐに呼んでくるよ!ちょっと待ってて!」
〜日高先生呼び出し中〜
「———あちゃー……そりゃ大変だったねぇ。アタシも一度だけ間違って造に酒飲ませた事があったんだが———危うく逝くとこだったよ……」
そんなわけで、造の保護者兼ヒーラーの日高先生は僕らの呼び出しにすぐさま応じ、ムッツリーニと木下さんを治して、ついでに秀吉と雄二を(斜め下チョップで)直してくれた。良かった……やっぱり日高先生は頼りになるね。
「それで日高先生。造を元に戻せませんか?」
「てか……早くどうにしないと……このままじゃ俺らの命がいくつあっても足りん気がするしな」
「そうじゃの……あの笑顔で『秀吉お兄ちゃん大すき〜♪』と、言われたら……い、いかんっ!?また意識がっ!?」
「…………破壊力があり過ぎる」
ただでさえ子供っぽい容姿の造に子供の精神状態とか……危険すぎる。主に僕らの精神的な何かが限界突破しそうで怖い。
「んー……いや、アタシも出来る事なら何とかしたいんだがね」
僕らの問いに非常に言い難そうに、日高先生は頬を掻いている。この反応……やっぱり止めるのは難しいのだろうか?
「な、何です師匠?やっぱり無理なんですか?」
「……日高先生が無理なら私たちも無理かも」
「たはは……そうだよね。ボクらじゃさっきみたいになっちゃうだろうし」
「ま、まあ日高先生もそれは同じかもだけど……」
「そ、それで日高先生?どうなんですか……?」
女性陣も緊張した面持ちで日高先生に尋ねる。すると、日高先生は重い口を開いてこう答えてくれる。
「———あー……それ以前に、その肝心の造がいねえだろ?」
「「「「「「「「「…………ゑ?」」」」」」」」」
……あ、あれ?そう言えばさっきから……造の姿が見えない?何処へ?てか何時からいないっけ……?
「えっと……ホレ。お前らとりあえず黒板見てみな」
と、日高先生が苦笑いをしながら指差した先の黒板に、大きく書かれたこんな文字。
『お兄ちゃん、お姉ちゃんたちへ
オニごっこしましょう♪お兄ちゃんたちがオニだよ♪つくるをつかまえてね!』
「あちゃー……やーっぱこうなったねぇ。今日中に捕まえられりゃ良いんだが……」
「「「「「「「「「た、大変だあああああああああああああ!?」」」」」」」」」
- 番外編:酔いと造と幼児返り!?〜お酒は大人になってから〜中編 ( No.127 )
- 日時: 2015/09/21 18:42
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
No Side
「いいかっ!恐らくまだ造はこの校舎の中にいるハズだ!だがこのまま仮に外に逃げられちゃマジでどうしようもねえ!とりあえず今すぐ部隊を組んで手分けして造を捕獲・保護するぞ!」
「「「「応っ!」」」」
「「「「「了解(ですっ)!」」」」」
急遽始まった鬼ごっこ兼造捕獲作戦。日高先生曰く『こうなった造は捕まえない限り、疲れ果てるまで暴走———もとい遊びつくす』とのこと。その言葉を聞き全員同じ考えに至る。何がなんでも捕獲しないと……更なる被害が出る、と。
「まず、日高先生・秀吉・木下姉の先行部隊!造が今どこにいるかお前らなら大体予測できるだろ。被害が拡大する前に、造の居場所を見つけて捕えてくれ!」
「「「勿論!」」」
「頼むぜ。次にムッツリーニ・工藤の情報部隊!持ち前の情報収集能力を活かし、造の逃亡に関する情報を二人で集めて来い!同時に造の確保も可能な限り行ってくれ!勿論俺らにその情報は逐一連絡する事!」
「「了解!」」
「よし。んで俺・明久は実行部隊だ!俺らなら追いかける体力は自信があるからな。酔っている状態で造が腕輪を使えるかわからんが、もしもの時は俺らの腕輪を使って何とかする!明久、お前足引っ張んなよ!」
「はっ!雄二こそヘマしないでよね!」
「テメェこそ良い根性だっ!そして翔子・姫路・島田の支援部隊。お前らはとりあえず全員のバックアップを頼む。要所要所で作戦を立て、俺らに的確に指示を出してくれ!」
「「「うん(はい)!」」」
雄二が全員に瞬時に指示を送る。1分もかからない内に、的確な部隊編成と指示を出すあたり流石は元神童と言えよう。統率力はこのメンバーの中で断トツである。
「連絡は全員ムッツリーニが用意した通信機で。造を見つけたら全員に知らせること!いいか、相手は俺たちが今までで戦った奴らとは比べ物にならんほど色んな意味で手強い造だ!気を引き締めて行動しろっ!そんじゃ造捕獲作戦始動だっ!行くぞお前らっ!」
「「「「「「「「「おーっ!」」」」」」」」」
———そして、彼ら彼女らの挑戦が始まる。
〜サクヤ・優子・秀吉の挑戦〜
秀吉Side
「さあ、行くぞ優子っちにヒデっち!最初は———職員室だ!」
「やっぱりそうですよね……木を隠すなら森の中。造くんってこう言う時は人の中に隠れるでしょうし」
「それに職員室ならば……造の味方が多いからのう」
ある意味で、造に最も(境遇や存在が)近いこの三人で瞬時に造のいる場所を特定する。恐らくじゃが酔っているとはいえ造の本質や行動パターン事態は大きく変わらぬはずとふみ、ワシらは職員室へと向かうことに。
「それにしても……造くんがあんなにお酒に弱いとは」
「ああ……何せお屠蘇を舐めただけであの子酔えるかんな〜」
「ど、どれだけ弱いのじゃ……?ま、まあとにかく急がぬとな」
まあ、確かに酒に強い造なぞ想像できぬと言えばできぬが……まさかここまで弱いとはの。そんなことを話しつつ職員室へとたどり着く。そしてそのワシらの予想通り———
「おー!すごーい!秀吉お兄ちゃんたちもうきたー♪」
「「「いたっ!……って!?せ、先生方!?」」」
ニコニコと笑い職員室の椅子にちょこんと座り足をプラプラさせながら、やって来たワシらに手を振る造の姿が。ちなみにその造の周りには、
「「「…………ホント、幸せ……(ガクッ!)」」」
魂を持っていかれ倒れ伏す高橋・遠藤・船越教諭の姿がそこにはあった。まあ、予想通りと言えば予想通りと言えるがの。ちなみに他の教諭たちは、あまりの造の変わりっぷりに処理落ちをしているようじゃ……その気持ち、ワシにはわかるぞい。
「くっ……遅かったねぇ。優子っちにヒデっち!あの子を追い込むよ!今度はさっきみたいな事にならんように気をつけなっ!」
「「はい(うむ)っ!了解です(じゃ)!」」
と、先生の指示通り、散開して座っている造を取り囲むように配置につく。なるほど下手に追い回すよりも、少しずつ距離を詰めて一斉に捕獲に入るほうが確実と言うわけじゃな。
「造っ!お遊びはここまでさね!とっととお家に帰るよ!」
「んみゅ?かえるのー?まだあそびたりないよー!」
「造くん。鬼ごっこはお終いなのよ。さあ、帰りましょう」
「やーだ!もっとあそぼーよー!あーそーぼー!」
「造よ、駄々を捏ねるでない。もう帰る時間じゃ」
「うー……あそびたいのに……」
そう宥めながら、ジリジリと造に迫る。ここで逃がせばそこに転がっておる教諭たちのような犠牲者が増えるじゃろうからの。それに造を早う戻してやらねば、今後造の学園生活がまずいことになりかねん。酔いの冷めた後造が恥ずかしさのあまり精神崩壊する恐れもあるからの。そんなことを考えつつも、あと一歩で捕まえられる距離まで迫った次の瞬間———
「グスッ……あそんでくれなきゃ……やだ……」
「「「っ!?」」」
造(子供)の目から一筋の涙が。本能的にこのままではマズいと感知し、慌ててワシら三人で宥めようとするも、時すでに遅く……
「サクヤかあさまも、優子お姉ちゃんも、秀吉お兄ちゃんも……みんなきらいっ!だいっきらいっ!」
「「「っ〜〜〜〜〜〜〜〜!?」」」
と、そんな事を言って造は職員室から全力疾走で駆けだす。そして、そう造に言い残されたワシらはと言うと、
「「「…………大っ嫌い…………」」」
ドサッ!×3
再起不能レベルの強烈な一撃を叩きこまれて……その場に倒れ伏してしまう。造……そういうつもりじゃ……なかったのじゃ……すまぬ、すまぬから……謝るから……許して……欲しいのじゃ……
「…………こちら先行部隊。すまないねぇ、もうやられちまったよ」
「…………造くん、職員室から出て今一階渡り廊下付近を逃走中よ」
「…………そう言うわけじゃ、後は任せたぞ。造を捕まえるのじゃ」
それでも何とか造を捕まえて貰う為に、必死で通信機を取り出し明久たちに連絡を入れることに。そして情報を全員に伝えると……
「「「…………大っ嫌い……はぁ……」」」
……職員室の床に倒れこんだまま、落ち込むワシら。マズいのう……今日は……立ち直れる気がせぬぞ……すまぬ、ワシらはここまでのようじゃ……頼むぞい皆の衆、造を……造を元に戻してやってくれ。そう心の中で願いつつ、意識が完全にブラックアウトしてしもうた……
〜サクヤ・優子・秀吉の挑戦:惨敗【精神崩壊×3により戦闘不能】〜
- Re: バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 ( No.128 )
- 日時: 2015/09/20 19:58
- 名前: ユウ (ID: iQk5t9Pn)
サクヤさん・優子・秀吉OUT!!
生存者残り7人
明久達は文月学園が血に染まる前に造を元に戻すことが出来るのだろうか!?
次回『文月学園全滅!!』に続く!!←まさかのタイトルバレ!?
今回も楽しませてもらいました!!やっぱり糖分さんは登場人物の内情やその周りの背景を描写されるのがとてもうまい!
自分にもそれを描写できるほどの文章力があれば…くっ!?
それはともかく、結局明久は姉萌え本以外は全部燃やされて尚且つ姫路さんと美波にトンでもない誤解をされてしまって可哀想だな…
しょうがない。そんな明久にお兄さんからプレゼントを上げよう。
・『僕と軍師と火照る夏』(同性本)
・『僕は弟に恋をする』(ブラコン本)
・『ショタコンフィーバー!!』(ショタ本)
・『ロリロリ♪は○きちゃん』(ロリ本)
うん、この内の一冊は美波が切れそうな内容の本だな。
えっ、明久を助けるところか社会的に抹殺しにいって楽しいかだって?
楽しいに決まっているじゃないか♪
ほら、雄二も言っていたじゃないか、『明久の不幸は俺の幸せだと』(黒笑)
それじゃあ、後はこの本を明久の家に送っといたから感想もとい嘆きの悲鳴を待ってるよ(悦)
それはさておき…自分も死ぬ覚悟を決めようか。
アベル「そうだね、じゃあ死のうか?」←『僕と軍師と火照る夏』のモデルにされて切れているアベル
…orz
P.S
ふと気になったので、聞きますけど、もしも造が財閥とかのパーティーでアルコール度数の高いお酒を飲んでしまった場合は一体どうなってしまうんでしょうか?
今回と同じ?…それとも
あっ、後それから、自分もお酒に酔うと天使スマイル(親友から聞いた)になるか全身ビクンビクン(痙攣+両親から聞いた)の二者択一らしいです。ちなみにビクンビクンの方は危うく救急車を呼ばれかけましたわ。
- Re: バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 ( No.129 )
- 日時: 2015/09/21 20:54
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
>ユウさん
いつも感想&読んでいただきありがとうです!いえいえ、自分まだまだ未熟者です。いつもの如く誤字脱字や文章表現・描写の拙さその他諸々改善点はいっぱいありますし、これからも精進していきたいと思います。どうかこれからもよろしくお願いします。
さて造VSメンバー一同。普段は周りの暴走を止める役の造なだけに一度暴走すると手が付けられない……?勝てるのかメンバー一同?
造「おー!つくる、ぜーったいまけないからねー♪」
明「全滅かぁ……正直シャレになってないよね……」
雄「下手しなくてもマジでやられかねん……気合い入れていくぞお前ら!」
そうだねー、頑張らないとね明久たちは。まあ……明久はもう一個頑張らないといけない案件が出来たっぽいけど。
美「…………アキ、流石のウチもアキがウチの葉月に手を出すなら———」
明「OK美波、マジで誤解なの。これは僕の意思じゃないの。OK?」
瑞「これもあれもその本も……やっぱり明久君……男の子に興味が———」
明「OK瑞希、そっちも超誤解なの。これ僕を貶める罠なの。OK?」
玲「うーん……もしやとは思っていましたが、アキくんBLに興味が———」
明「ああもう!?だからこれもそれもあれも全て誤解なんだよOK!?ええぃ造、造ヘルプ!?早くヘルプぅ!?」
だから造は酔って使い物にならないんだってヴぁ。助けてほしいならさっさと造を元に戻すしかないね。まあ、アベルがユウさんを抑制(と言うか制裁?)してくれているようだから今のうちに造を戻せ明久&雄二たち!
それと造とお酒の件ですが———本来ならサクヤさんたちに口酸っぱく飲むなと言われているので絶対に自分からは飲みませんし、仮にパーティで酒等のアルコール類が出ようものなら鼻の利くサクヤさんが一滴残さず全てのアルコール類を飲み干します。パーティ会場が大惨事になる前に。
サ「今回は……完全に油断してたけどね……ウイスキーボンボンもこれからは気を付けなきゃねぇ……」
それからユウさん、ホントお酒には気を付けて……!救急車はシャレになってませんので!?どうかくれぐれもお酒の席ではご自愛くださいマジで。酒は飲んでも飲まれるな、ですからね!
ちなみに自分はほとんど飲めません、お医者様から極力お酒とたばこは控えなさい宣言されてますし……両親も弱いですからね。乾杯の時はほんの少し舐めるだけにしてますし。まあ、いつの日か一度でいいので酔う感覚を味わってみたいなーなんて思ってますけどね。
さて、長々と書きすぎちゃいましたね。ではそろそろそのお酒に関わるお話の後編に入りたいと思います。明久たちは造を止められるのか。そもそも造を止められるような人物はいるのか。あれ、そう言えば造の天敵がいたような?では、続きをどうぞよろしくです。
- 番外編:酔いと造と幼児返り!?〜お酒は大人になってから〜後編 ( No.130 )
- 日時: 2015/09/22 14:09
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
〜康太・愛子の挑戦〜
康太Side
「…………先生たち、やられたみたいだな」
「そだね。でも優子たちがこれだけ早く月野君を見つけてくれたし、三人の為にも早く捕まえないとね」
日高先生たちが全員戦闘不能(?)になり、すぐさま動いた俺と工藤ペア。先にやられた日高先生たちの情報を元に、校内の至るところに仕掛けた監視カメラを起動させ造を行方を追うことに。
「…………いた。現在二階の渡り廊下を疾走中。もうすぐ一年の教室前に着く」
「流石こーたくん♪それじゃ先回りだね!」
「…………ああ。挟み撃ちにするぞ」
と、ノートPCをしまい、三階にいた俺は窓から一階へと飛び降り、同じく三階にいた工藤はそのまま階段を下り、次に造が現れる場所に先回りする。そして……
「…………追い詰めた」
「あはは♪月野君?いや、月野ちゃんかな?やっほー♪」
「おー!康太お兄ちゃんも愛子お姉ちゃんもオニごっこつよーい♪」
三階から階段を下りてきた工藤と、一度窓から飛び降りて一階の階段を上がってきた俺によって逃げ場が無くなった造。二階にある一年の教室前の廊下で、前は俺たちに立ち塞がれて後ろは窓と壁という状態だ。
「…………さあ、大人しく投降しろ」
「ふっふっふー!鬼ごっこはボクらの勝ちだよ月野君」
「むー!でもまだまけてないよー?いくよ……起動(アウェイクン)っ!」
「「っ!」」
キィイイイイイイイン ボンッ!
と、ここで白金の腕輪を使いフィールドを展開し召喚獣化する造。ここで腕輪を使ってくるとは……酔っていても腕輪は使えるあたりは、もう召喚獣化すること自体が習慣になっているのか……?
「…………だが、腕輪を使用することは想定済み。来るならこいっ!」
《うん♪ぜんりょくでいくよー!……ふたりとも、ふきとべー!》
と、少し気が抜けそうな掛け声で、俺らに向け突風を起こす造。俺も工藤も思わず目を瞑り踏み止まって吹き飛ばされないようにしようとするが———
「「……え?」」
———予想に反して、造の起こした風は髪を揺らす程度の勢い。慌てて造を見ると、いつもの如く箒に乗り窓から脱出しようとしていた。
「…………ちぃっ!さっきのはただのハッタリか!?」
すぐさま造を追って俺の持ち前のスピードを活かし駆け出す。2階,3階程度の高さならロープなしでも飛べる……このまま逃げられると思うな造っ……!
《———ねぇ、康太お兄ちゃん♪愛子お姉ちゃん放っておいていいのー?》
「…………っ!?」
…………だが、甘かった。幼児思考になっていても造は造。普段から緊急時に機転が利く造を甘く見ていた。造のその一言に思わず足を止め後ろを振り向いてしまう。———そう、それが俺の命取りになるとも知らずに。
ゴオッ!
「きゃっ!?……あ、あれ?」
「…………ライト……グリーンッ!?(ブシュウウウウウウウウウ!?)」
「ちょっ!?こ、こーたくん!?しっかり!?」
……造が時間差で起こした突風により、工藤のスカートがはためいた。お陰でバッチリと今の光景を網膜と脳に焼き付けてしまう。くそっ……なんてことをしてくれるんだ造は……GJ……だ……こんな素晴らしい光景は、カメラで撮れればよかっt———コホン、何でもない。そんなことを瞬時に考えながらも、俺の鼻からは……その命と共に真っ赤な赤い華が散る。
「…………つく、る……流石だ。まさか……時間差トラップを……仕掛ける……とは」
「こーたくん!しっかり!?てか、さっきよりも血の量多くない!?」
…………気のせいだ。別にやらしい気持ちになどなっていない。それにしても……
「…………工藤。お前……スパッツだった……ハズじゃ……?」
「え!?あ、いやその!?ち、違うんだよ!?別にこーたくんを意識しているってわけじゃなくて、いやでもこーたくん女の子らしい子が好きなのかもしれないとも思わなかったわけでもないけど……その……そ、そろそろボクもボーイッシュな感じから少しは女の子らしくイメチェンしようかなって思ったりして、でもいきなり変わるのはアレと言うかその……み、見えないとこから頑張ってみようかなって!?でもパンツ見られたら意味無いね!ま、まあ他の人じゃなくてこーたくんに見られるなら全然OKかな———って、な、何言ってんだろねボク!?」
…………とりあえず自爆して、焦りながらも言わなくても良いような事まで喋る真っ赤になった工藤。そうか……イメチェンか……それはとても可愛———コホン、それは少し新鮮だ。
「…………おち、つけ……一先ず、造の現在位置を……アイツらに……(ガクッ!)」
「こ、こーたくん!?わ、わかった!連絡したらすぐに保健室に運ぶからね!?」
…………すまん……迷惑かけるな……そんなことを思いつつ、俺の意識は遠のいた。
〜康太・愛子の挑戦:失敗【鼻血による大量出血により戦闘不能】〜
〜明久・雄二の挑戦〜
明久Side
《おー?明久お兄ちゃんも雄二お兄ちゃんもいつの間にー?》
戦友(とも)であるムッツリーニや秀吉たちの死は無駄にはしない。二階の窓から金の腕輪の能力である飛行能力を使って一階へ悠々と降りてきた造を待っていたのは———そう、ムッツリーニたちの知らせを受けて待機していた僕と雄二の実行部隊。ふっふっふ!観念するんだね、造!
「ふっ……造!君の逃亡ルートは完全に読んであるよ!それに雄二の言った通り、やっぱり造は召喚獣になったね」
「ああ……これならさっきよりも捕まえやすい。俺らも召喚獣を出してお前の点数さえゼロにすれば、戦死となって鉄人に問答無用で捕えられる。そうすりゃ俺らの勝ちだからな」
《おー♪お兄ちゃんたち、こんどはしょーかんじゅうでたたかうのー♪いいよーやろうやろう!》
と、僕ら三人とも臨戦態勢に入る。……それにしても、いつの間にか造を捕まえる事から本質が変わってきている気がするけど、ツッコんじゃいけないのかな?まあ、いいか!ここで倒せば造も大人しくなるんだし!とにかく僕と雄二も造に対抗すべく召喚獣を呼び出す事に。
「「行くぞ、造っ!覚悟するんだ!試獣召喚(サモン)っ!」」
《おー♪つくる、まけないよー!》
さあ、いざ尋常に勝負!二対一なら僕らは負けな———
≪Fクラス 坂本雄二 現代国語 211点≫
&
≪Fクラス 吉井明久 現代国語 107点≫
VS
≪Fクラス 月野造 現代国語 501点≫
「「…………あれ?」」
…………コレ、戦力差、ヤバくない?
- 番外編:酔いと造と幼児返り!?〜お酒は大人になってから〜後編 ( No.131 )
- 日時: 2015/09/21 21:06
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
《?どしたのー?お兄ちゃんたち、はやくやろー!》
…………ま、まあ当然の事と言えば当然の事だけど、造の現在の持ち点は造が酔う前に受けたテストの点数。さっき造がムッツリーニと工藤さんを撒くために消費した点を差し引いても、500点オーバーと言う驚異の相手。どれだけ凄いかって言うとムッツリーニに保健体育で挑む、もしくはAクラスの上位成績者や教師を相手にしているようなものって言えばわかりやすいかな?
「……ちょっと雄二。そう言えばこの作戦聞いた時から少し気になってたことがあるんだけどさ。科目指定は造しか出来ないし、今の科目は造の得意科目の現国だよ?あの点数差で僕ら勝てるの?」
「……当たり前だ。勝てるさ…………(ボソッ)多分」
「おい!?今こっそり多分って言ったな!?と言うか、それを考えてなかったなこのバカは!?」
このバカ……さてはまだ造の精神攻撃から逃れられていなかったな!?もしくはアレか!?子供に本気で攻撃するのは気が引けるとか思って、計画を適当に立てたな、この子供好きの親バカ野郎め!?どうやら雄二は異性(霧島さん&雄二のお母さん)や子供(造)に非常に弱い気がする。克服するためにも、さっさと霧島さんと所帯を持てばいいのに。
「その辺はお前に任せる!大丈夫だ!お前は根本や久保相手でも負けなかっただろうが!」
「それは相手が召喚慣れしていなかっただけだって!造は戦闘能力高いし、てか英語くらいしか造に勝てそうなものないんだけど!?」
そもそも造にもフィードバックがあり自身が召喚獣として戦える上、造本人も場馴れしているせいでこの科目———だけじゃなくて大半の科目で勝てる気が一切しない。いや、科目指定さえ出来れば造にも(英語で)勝てそうだけど……指定できるのは造だけだし、これひょっとしなくても詰んでないかなぁ!?
「そこは……俺の知略とお前の特攻で切り抜ける。まずお前が造を引きつけて———」
「雄二っ!それ今適当に考えただろっ!?おまけにキサマ僕を生贄にする気満々だな?てか、フィードバックがあるのに500点越えの攻撃何か食らったらヤバイって!?」
おそらく軽く昇天してしまうレベルだろう。あ、でも造なら手加減を———いや、酔ってる造にそんな判断力を求めるのは無理か……
「そこは気合と根性で乗り切れ、使い捨て装甲ば———明久!」
「今のその台詞で僕のこれからの末路と雄二の本音が見えた気がするんだけどっ!?———って、あれ?造は?」
そんな感じで二人で言い争っている間にいつの間にか造は僕らの視界から消えていた。ど、どこに……
《あはは♪明久お兄ちゃん、雄二お兄ちゃん!“せんししゃはほしゅー”だよー♪》
「「げっ!?上っ!?」」
再び400点オーバーから使用可能な金の腕輪を使い、こっそり僕らの死角である上空に飛び上がっていた造はそのまま———
ドゴォ!×2
≪Fクラス 坂本雄二 現代国語 DEAD≫
&
≪Fクラス 吉井明久 現代国語 DEAD≫
VS
≪Fクラス 月野造 現代国語 403点≫
———僕らが抵抗する間もなく、見事に戦死させる造。そして僕らが完全に戦死したことを確認すると、そのまま《つくるのかちー!たのしかったよお兄ちゃんたち!それじゃ、つくるまたにげるねー♪》と箒に乗ってそのままどこかへ飛んでいく。勿論やられた僕らはと言うと……
「吉井、坂本!戦死者は補習だ!」
「ま、待て鉄人!今日は見逃してくれ!造が逃げちまう!」
「ふぬぉおおおおおおおおお……地味に、痛い……あ、でも造、手加減はしてくれたっぽいかな……でも、痛い……」
何処からともなく駆けつけた鉄人に補習室行きを宣言されていた。イタタ……さ、流石に優しい子だね造は……なるべく軽めに戦死するように加減してギリギリ戦死するように調整してくれたらしい。痛いのは変わらないけど……
「月野だと?何を言っておる、どこにもおらんではないか」
「い、いやだからアイツ逃げたんだって!追わねえと大変な事になるんだって!?」
「イタタ……鉄じ———西村先生!そうなんです!造を追わないと子供で大変なんです!」
「……とりあえず、よくわからんが補習室で話を聞く。ついて来い」
くそぅ……この脳筋チンパンジー、話を聞いてくれないっ!このままじゃ造に逃げられるのに!
「「いや!だから今追わないといけないんですよ!鉄ゴリラ!」」
「……戦死は戦死だ。いいからさっさと来い。補習ついでに言葉遣いも教えてやる」
「「ちぃ!放せ鬼教師、脳筋、鉄人!(ゴンッ!)イデェ!?」」
「だから西村先生と呼べっ!」
くっ……こうなりゃ瑞希、美波、霧島さん!君らに全てがかかっている!頼んだよ三人とも!
そう祈りつつ僕と雄二はさっきの無邪気な天使の笑顔の造とは正反対の、おぞましくも暑苦しい閻魔を思わせる鬼教師の鉄人と地獄の放課後レッスンを堪能されることとなった。こんなの……こんなの理不尽だっ!?
〜明久・雄二の挑戦:補習室行き【戦死による(地獄の)補習の為戦闘不能】〜
〜瑞希・美波・翔子の挑戦〜
瑞希Side
「「「…………」」」
……えっと、どうしましょうこれ……皆さん月野君にやられちゃいましたね……
「み、皆さん失敗しちゃったみたいですね……」
「あー……確かに日高先生の言った通り、月野は暴走したら止める方法がわからないって言う事もわかるわね」
「……このままじゃ、どうにもならない。かと言って私たちが行っても」
「「「……皆の二の舞……か」」」
そう言って私たちは溜息をつきます。ちょっと困りました。何せ明久君たちを一瞬でやっつけてしまうほどの月野君が相手です。どうやって月野君の暴走を止めればいいのでしょう。とにかく残った私と美波ちゃん、翔子ちゃんの三人でどうにかするしかないと言う事で、月野君捕獲の案を出し合うことに。
「うーん……せめて、月野の弱点とかあればいいんだけど」
「でも月野君の弱点って……え、英語と日高先生たちでしょうか?」
「……その二つだけではどうしようもない。それに日高先生たちは造に倒されている」
「そうよね……他には———あっ!西村先生なんてどうかしら?」
「確かに月野君は西村先生の言う事は聞きそうですが……」
「……先生は今、雄二と吉井を補習中」
「「「……うーん……」」」
しばらく月野君の弱点や、言う事を聞きそうな人を考え込みます。誰か……そう、例え月野君が酔っていても、彼の弱点となりうる方。月野君の天敵……もしくはそう、月野君の事を私たちよりも知ってそうな————あれ?
「「「…………あ」」」
私も、美波ちゃんと翔子ちゃんも顔を見合わせて、とある人の顔を同時に思い浮かべます。そうです!あの人ならきっと……!
「そ、そっか……あの人なら月野を止められる……かも?」
「……もっと早めに気がつけばよかった」
「ちょ、ちょっと電話してみますね!まだ学園内にいらっしゃればいいのですが……」
今は放課後なだけあって、もしかしたらお帰りになっているかもしれません。ですが……この状況を何とか出来る方は、きっとあの人しかいません!
〜瑞希通話中〜
『はい、もしもし。どうしましたか瑞希さん。……え?今ですか?いえ、学園近くの喫茶店で……』
『……はい?月野君が……暴走?彼が…………酔って、幼児化……?は、はぁ……』
『……ふむ、なるほど。ああ、わかりました。後は私に任せてください』
『え?ふふふっ♪大丈夫ですよ。その辺も含めて任せてください。多分ですが……何とかなると思いますので』
『では、すぐにそちらに参ります。瑞希さんたちは新校舎屋上で待っていてくださいね』
〜瑞希通話終了〜
とりあえず、あの人は快く協力してくれるとのことです。それはとても助かるのですが……
「……え、えっと……」
「で?どうだったの瑞希?協力してくれるって?」
「あ、はい……“後は私に全て任せてください”と」
「……良かった。でも造の今の場所、わからないんじゃ?」
「あ、いえ……“月野君がどこにいるかもわからないです”って言ってはみたんですが、“その辺も含めて任せてください”ですって。自分から出てくるって言ってました」
「「え……?自分から……?」」
「はい……とにかく屋上に来てくださいだそうです———葵先輩が」
———そう、小暮葵先輩なら何とかしてくださると思って電話してみたんですが……大丈夫でしょうか……?
- 番外編:酔いと造と幼児返り!?〜お酒は大人になってから〜後編 ( No.132 )
- 日時: 2015/09/21 22:11
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
———文月学園:屋上———
「お待たせしました皆さん」
私が電話で連絡して、先輩の指示通り屋上で待つ事———十分後。何か手に持って先輩は悠々といらっしゃいました。
「ごめんなさい先輩こんなことに呼び出してしまって」
「いえいえ、緊急事態ですしお気になさらず」
「えっと……それで先輩?月野君は———」
「ああ、大丈夫です任せてくださいな。それより皆さん。お腹空きませんか?」
と、この近くの喫茶店のロゴの入った箱を掲げる先輩。えっと……月野君は良いのでしょうか?
「……え?お、お腹って……?」
「ケーキあるんですよ♪ちょうど“五つ、人数分ある”ので皆さんでわけて食べましょう♪」
……ど、どうして急にケーキ何でしょうか?それに人数分って言っても先輩入れても四つが正しいんじゃ……?同じような疑問を美波ちゃんも翔子ちゃんも感じているようで、不思議そうに首を傾げています。そんな私たちを意に介さず、小暮先輩は一度すうっと深呼吸して———
「コホン……月野君、おやつにしませんかー!月野君の大好きなシューケーキもありますよー♪」
———と、空に向けて楽しそうに呼びかける先輩。……え?も、もしかして……こ、これが先輩の作戦なのですか!?
「せ、先輩……?まさか、それだけで月野君が捕まえられると……?」
「ええ。勿論ですとも」
「あ、あはは……先輩いくらなんでもそれじゃ月野は捕まりませんよ?」
「……今の造は子供だけど、そんなのに釣られるほどアレな子じゃないと思います」
「あら、そうでしょうか?……ふふっ♪まあ、私に任せてくださいな」
そう言いつつ箱からケーキを取り出して、ご自身の分を食べ始める葵先輩。流石の私も美波ちゃんたちも、これは先輩のお茶目な冗談だろうなと思っていた次の瞬間———
「———たべるー♪葵お姉ちゃん!つくるもホントにたべていいのー?」
「あらら?“葵お姉ちゃん”とは中々珍しい呼び方ですね♪ふふっ、ええ勿論。月野君の為に買ってきましたもの。さぁ、一緒に食べましょうね」
「はーい!」
「「「…………えっ」」」
———何処からともなく……本当に先輩の言う通り月野君が現れました。えっと……?
「はい、月野君はコレが一番好きなケーキでしたよね」
「おー♪だいすきー!たべるー!」
「ふふっ♪遠慮せずにどうぞ。召し上がれ」
あまりの急展開についていけていない私たちを置いて早速食べ始める月野君と葵先輩。どうしましょう……こんなに簡単に見つかってしかも捕まえられるなんて、明久君たちの苦労って一体……?
「おいしいねー!葵お姉ちゃんもおいしい?」
「ええ、とても美味しいですし……とても楽しいですよ。色んな意味で」
「おー!つくるも美味しくて楽しー!」
そんな事を考えている間にも、流石に甘いものが大好きなだけあって月野君は出されたケーキを一瞬で食べきっちゃいました。
「あらあら♪もう食べちゃったんですか?」
「んー♪とってもおいしかったよー!葵お姉ちゃんごちそうさまです!ありがとー!」
「いえいえ……さて、月野君?」
月野君のほっぺに付いた生クリームを先輩がハンカチで拭き取りながら、先輩もケーキを食べ終わります。そして次の瞬間———
「おー?どしたの葵お姉ちゃん?」
「食べた後は———ゆっくり眠ってくださいな♪お休みなさい」
「ふえ?……あ、れ……なんだか……ねむ、い……?」
コテン!
「「「っ!?」」」
と、突然先輩に倒れこむように寄りかかり、すやすやと眠りにつく月野君。え?こ、これは一体何がどうなって……!?先輩に尋ねようとすると……
「あらあら♪月野君“疲れている”んですね〜“食べたらすぐに寝ちゃい”ましたね♪ねえ皆さん?」
「「「…………そ、そうですね」」」
……その瞬間、私たちは直感しました。先輩は宣言通り月野君を何とかしてくれたということ。そして———そのことを深く考えちゃいけないってことを。
と、未だに唖然としたままこの展開に付いて来れていない私たちを置いて、先輩は月野君を優しく横に寝かします。そしてすーすーと寝息を立てて穏やかに眠る月野君に向かって、こう呟く声が私たちの耳に届いてきました。
「全く……いつも誰かに気を遣ってばかりいるからこうなちゃうんですよ?そのくせ自分の事はずっと蔑ろにしてきて……それで今回はパンクしちゃいましたかね?———良いのですよ、たまには今日のように羽目を外してくださいね。その時は私も、貴方を大事に思ってくれる人たちも必ず何とかしますから。では、今はゆっくり眠ってください」
「「「先輩……?」」」
「……ふふっ♪月野君も無事捕まえた事ですし、私はこれで失礼しますね♪ああ、そのケーキは皆さんで食べちゃってくださいな♪」
「「「は、はい!ありがとうございます先輩!」」」
そんなことを言いつつ月野君の頭を愛おしそうに一度だけ撫でて、私たちに見せる笑顔とはまた違う優しい笑顔を月野君に見せ、屋上から立ち去ろうとする先輩。何でしょう……何だかカッコいいです……!
「いえいえ♪……ああ、それから———」
と、くるりと踵を返して私たちの方を向き、
「———“そっちには”何も入っていないので安心して食べてくださいな♪まあ、皆さんウイスキーボンボンを食べられなかった分と思ってどうぞ召し上がれ、ですよ」
「「「!?は、はい…………」」」
小悪魔的な笑顔でウィンクを残して、屋上から去っていきました。そして残った私たちはと言うと、
「「「…………食べましょうか(よっか)(よう)」」」
先輩が置いて行ったケーキをありがたく頂く事に。ケーキを食べながら私たちは三人とも、もう月野君には絶対お酒を飲ませないようにすることと……先輩にはまだまだ敵わないなってことをしみじみと感じていました。
……それにしても、ホントお酒って怖いんですね。
〜瑞希・美波・翔子(+葵)の挑戦:挑戦成功【決まり手・ケーキ(?)】〜
———翌日の朝———
造Side
『……ねえ、知ってる?昨日の月野君ってさ』
『……そうらしいわね。私も見たかったなぁ』
『……そうそう。物凄くキュートだったのよ』
『……何だかいつも以上にアイツ、子供っぽかったよな。見た目通りに』
『……やっぱ月野って“飛び級してきた小学生”って説は正しかったんだな』
……おかしいです。何やら朝から学園中自分の事で物凄く噂されている気が……ですが話されている内容に心当たりが全くありません。その上どういうわけか———
「……ねえ、皆さん?自分は一体、昨日何をしたんですか?」
「え!?い、いやー……何て言えばいいのか」
「あー、造?聞かない方が良いと思うぞ?」
「…………聞いたら恐らく」
「うむ……造の精神が持たぬじゃろう」
———そう、昨日の放課後の記憶が全くないんです……そう、ウイスキーボンボンを食べた辺りから。それを皆さんに聞いてもこんな風に言葉を濁すだけですし。ホント何なんですか……?何が合ったと言うんですか……?
「えっと、月野君。とりあえず月野君は当分お酒を飲んじゃダメですからね」
「……(私たちの)命に関わる。未成年の飲酒はダメ」
「そうね……まだまだ早いわ。と言うか月野は大人になっても飲むのは控えるべきよ」
「アタシたちの……精神衛生的にもね。いいわね造くん、お酒は絶対ダメよ」
「あはは……まあ、月野君がお酒を飲む日は、まだ遠い未来ってことカナ?」
女性陣の皆さんも、よくわからない事を言っていますし……と言うか、何でお酒の話になっているのやら……?
———それから約一週間は、結局どう言う事かわからないまま文月新聞に新たに掲載された『月野造=飛び級説』という妙な噂を払拭しなければならなくなったのはまた別のお話です。ついでに(生徒は勿論、先生方にまで)『月野ちゃん』『造ちゃん』と呼ばれる回数が増えてきた事も伝えておきます。
「……ホントどう言う事ですか!?どなたか、どなたか説明をしてくださいっ!?」
「「「「「「「「「んー、一言で説明すると———酒は飲んでも飲まれるな?」」」」」」」」」
- Re: バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 ( No.133 )
- 日時: 2015/09/21 22:51
- 名前: ユウ (ID: iQk5t9Pn)
ククク、良い具合に誤解が広がっておる…
それでは最後に用意した造と秀吉本を贈りつけ…
アベル「何をしようとしているんだい?ユウ?」(笑顔ではあるが目が笑っていない)
…るのは冗談だマジで、本当はこっち!映画「心が叫びたがっているんだ」のチケット10枚を明久の家に郵送するよ!
アベル「はあ、まったく油断も隙もないね」
エル「あはは、だよね〜。あっ、でもユウが送った映画のチケットだけど、ユウ自身も一人身で観てきたらしいけど。あまり感動系で泣かないユウが初めて泣いたって言うほどの素晴らしい映画らしいから、ぜひ皆でと観に行って欲しいな♪」
あんな・・・あんな青春を俺も送りたかったんだ!!あれこそ正に青春!!あれこそまさに…俺が欲したものなんだ…(感涙)
十六夜「とまあ、こんな感じでユウが自分自身が送れなかった青春に思いを馳せちまってるから今回は俺達が感想を言わせて貰うぜ」
飛鳥「それじゃあ、まずは私から、私から言えるのは一つだけよ…造君!酔っ払っていたとはいえ、召喚獣の力を使って乙女の、そ、その、…と、とにかく女の子を辱めるなんて、さ、最低よ!いいい以後気を付けなさい!(顔を真っ赤にしながら造を叱る、昭和代表お嬢様)」
エル「まあ、飛鳥の時代だと女性の服装ってあまり露出がなかったから、飛鳥がこういうのに馴れていないというのも有るけどね、さて次はエルなんだけど…何ていうか康太君も愛子ちゃんも保健体育の点数は高いのに、何て言うか凄い初心何だよね。何っていうかその…み、見てるこっちが恥ずかしくなるよ!ああ、もうこの話おしまい!」
十六夜「さて、それじゃあ、次は俺の番だな、取り合えず俺からは酔っ払った造の考え方は俺と同じなんだなと思ったことだ。…何でかって?はっ!んなもん、造の行動(自分よりも弱い《点数という意味で》奴でも強い(雄二と明久の身体能力は造より上)奴でも吹っ飛ばす)が俺の理念と同じだからに決まってるだろ!ヤハハ!!」
耀「…おやつ旨そう、見てたらお腹すいて来たかも」
アベル「うん、取り合えず十六夜君と春日部さんは黙っていようか、何はともあれ最終的に造君も元の状態に戻ってめでたしめでたし…という訳にもいかず、今度は造君が飛び級したのではという噂が流れる始末…。自業自得とはいえ造君が不憫で仕方ないね。…それはともかく造君?もし良かったらなんだけど坂本君とお話(坂本くんの現代的戦略に感心して、戦略談議がしたいだけ)がしたいんだけどセッションを受け持ってもらいたいんだけど大丈夫かな?」
十六夜「そういうことなら、俺も吉井明久に会ってみたいな。俺、結構あいつのこと(バカな行動や理念が)好きだからな。ヤハハ」
……ヤバイ、これ、下手に向こう側に解釈されたら、十六夜とアベルが、明久と雄二の事を好きだと言っているみたいだ、向こうの3人組が変に解釈しなければいいんだけど…。
と、取り合えず今回は明久にも、雄二にも、別ルートから二人に死が向かっていることを述べて今回の感想を終えようと思います。
最後に一つ…明久。雄二。生きろよ(悲痛な表情)
- Re: バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 ( No.134 )
- 日時: 2015/09/25 20:58
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
>ユウさん
感想いつもありがとうです
映画……おかしい、最後に行ったのいつだろうか……?
造「5年……いえ10年近く行っていないのでは?糖分元々外に行くことあまりなかったですし」
ははは、そんなバカな。最後に見たのは確か…………何だっけ?
造「それすら覚えていない程昔なんですね……」
明「と言うか10枚もチケットくれるなんて!これを———売ったらいくらくらいに……」
瑞「あ、明久君!私おすすめされたその映画見たかったんです!」
美「う、ウチも日本の映画とか見るの好きなの!」
明「ふぇ?そ、そうなの?なら二枚上げるから二人で———」
瑞・美「「明久君(アキ)も一緒が良いです(良いわ)!!」」
明「えっ?い、いや……僕邪魔にならないかな……?多分映画館で寝るよ僕……?」
瑞・美「「それでも良いんです(良いの)!!」」
もうこれ以上明久が他の人たちに好きになられまいと映画に連れていってるあの二人……さて。幸せ絶頂の明久はもう知らんと言うことでFFF団に後日伝えておくとして。造よ、最低だってさー自業自得だってさー
造「…………あの、ほんっと何一つ覚えていないのですが。その、よくわかりませんがわかりました……気を付けますね」
雄「造、お前“も”以後アルコール類禁止な」
秀「お主の精神衛生的な意味でも禁止じゃぞ」
優「そうね……ちょっと破壊力あり過ぎるわ」
愛「月野君は大人になるまでは駄目って事で」
康「…………とは言え……何が、とは言わんが造……心の底からありがとう」
造「何がですか本当に……」
ムッツリーニ&工藤さんは明久&雄二たちに比べるとスタートが遅れた分、全力でラブラブさせております。二人ともエロいけど何だかんだで初心なので全力で恥ずかしがらせて憤死させてやりますよ。
翔「……ところで雄二。雄二ってバンドでもするの?」
雄「は……?急に何だ翔子」
翔「……私だって雄二としたいし他の人に負けられない。すぐ覚えるから待ってて」
雄「おい待て何の話をしとるんだお前は……」
うーん、それはセッション違い……バンド系お嬢様って新しい……
- 番外編:週刊☆文月学園ラジオ放送 特別企画・文化の秋!前編 ( No.135 )
- 日時: 2015/09/25 21:03
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
ここは毎度おなじみ、とある文月学園のどこかにあると噂されるスタジオの中。ラジオをお聞きの皆さんから送られたお葉書を(今度はラジオかよ、とかツッコんだ人は負けですからね?)いつものメンバーに紹介して貰いましょう。それではまずはこのコーナーから!
みんなのうた♪ 〜あなたの想いを歌に乗せて〜
「はい!と言うわけで今回も僕、吉井明久と美少女秀吉&美幼女造、そして———愉快なその他たちが皆から送られてきたメールを紹介していきます」
おー!頼んだよ明久たち♪
「……おい待てやバカ久。誰が愉快だコラ。お前の頭ん中が愉快か?ん?」
「…………その他じゃなくて、本名を呼ばせろ」
「と言うか、誰が美少女&美幼女じゃ!取り消すのじゃ明久よ!」
「そうですよアキさん!自分もヒデさんも男ですってば!」
コラコラ?もうラジオ始まっているんだよ?そんなどうでもいい事はその辺に置いて、さっさと進めてよ。
「「「「どうでもよくないっ!」」」」
あーはいはい、わかったわかったから。とりあえず明久、このコーナの説明よろしく!
「オッケー。ええっと、この“みんなのうた♪”のコーナーではラジオをお聞きの皆さんの想いや想い出などを歌や詩に込めて投稿してもらい、それを僕らが紹介していくコーナーです」
ふむふむ。なるほどなるほど、これは文化の秋らしい企画だね……リスナーの皆もそれぞれに大事な想いとか想い出とかあるんだろうね。ちょっと古風だけど、そう言うのを歌で表現するって趣があって良いものだよね〜
「(アキさんには後でヒデさんと一緒に説教する事にして)そ、そうですね。ですがその想いとかを歌や詩にするのって難しくありませんか?得意な人は得意でしょうけど、中々上手く表現できないって方は多いのでは」
「ふむ……確かにそう言った形のないものを表現するのは中々に難しいかもしれぬの」
「ま、俺からしたら面倒なだけな気がするな。んなもんの何がいいのやら」
「…………興味ない」
って、造と秀吉はともかく、そこの不貞腐れ男二人?このコーナー自体を否定しないの!
「まあ、確かに造たちの言う通り、急に詩とか言われてもピンと来ないかもしれないね。でも難しく考えなくても、意外とそう言うのって意外に日常生活とかでパッと出てくるものだよ」
お?意外に詳しそうだね明久?
「まあね。僕もたまに詩を書くしさ」
「「「「…………へ?あ、明久(アキさん)が詩を!?」」」」
「そこで全員に驚かれても困るんだけど……まあいいや、そろそろ一件目のメールを読まなきゃね。———そうだね。この詩とかまさしく日常について書かれた詩だしちょうどいいからこれから読もうか。それじゃ、まず最初はこのメールを紹介するねっ!」
空色のペンを買ってこよう
今日という日を記念日にしよう
カレンダーに空色の丸をつけて、僕らの思い出を増やしていこう
理由はなんでもいい
ただ今を生きている
それだけで、僕は今日というかけがえのない一日を記念日にできるのだから
カレンダーについている空の色は、僕にとって思い出の———
『臨死体験生還記念日』 作 吉井明久
「「「「……って、これ明久(アキさん)の死———じゃなくて詩なんじゃ……」」」」
これはまた……もの凄い壮絶な詩だね。これが明久の日常生活と思うと、自然と涙腺が緩むんだけど?
「……これね、“いつものように”瑞希のお弁当を食べきって倒れて、意識が戻ってから保健室の天井をボーっと見ていた時に、フッと頭の中に思い浮かんだんだ詩なんだ……」
「「「「……明久(アキさん)」」」」
あー……明久?涙拭こうね?見ているこっちも泣きたくなっちゃうよ。
「ははっ!泣いてないよ?ちょっと目にゴミが入っただけだから。あ、それはそうとホラ皆見てよこのカレンダー♪学校がある日は全てに丸で囲ってあるし、それ以外の休日とかにも時々丸で囲ってあるでしょ?この日は決まって瑞希のお弁当を食べた日なんだよ。一目でわかるでしょ?凄いでしょ♪ホントに……凄い……でしょ……」
「「「「…………明久(アキさん)っ!」」」」
ちょっと!誰か明久に心の処方箋と胃薬をプレゼントしてあげて!?いや今更胃薬程度じゃどうにもならない気はするけど、色んな意味で明久が危ないっ……
「ヤダな〜♪皆そんな同情するような目で見なくて良いんだよ?生きている事の素晴らしさを体験できたわけだし、最近少しは耐性が付き始めたし……てか、同情するくらいなら少しは食べるの手伝ってよ……ねえ、手伝ってよ」
「「「「…………」」」」
いかん、明久の目がどんどん虚ろに……てか、このラジオ始まったばかりなのにどうしてメールの一件目からこうなるんだろうね?
「いや、と言うかそもそもこう言うのって、司会者であるアキさんが投稿して良いんですか……?」
……コホン。まあ、良いんじゃない?んじゃ、次のメール行ってみようか!おっと、その前に雄二。明久を元に戻しておいてあげて。斜め下チョップで。
「へいへい。ったくこのバカは相変わらず世話が焼ける……なっと!」
ドスッ!
〜明久回復中:しばらくお待ちください〜
- 番外編:週刊☆文月学園ラジオ放送 特別企画・文化の秋!前編 ( No.136 )
- 日時: 2015/09/25 21:23
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
「———うぅ……瑞希も頑張っているのはわかるんだけど、方向性がアレなんだよね」
「アキさんもやっぱり苦労しているんですね。あまり無理しちゃダメですよ?」
「そろそろ本格的に姫路のあの殺人料理をなんとかせねばならぬのう」
「…………俺たちにも巻き沿いが来る前に」
って言っても……今のところ彼女を止める術は無いんだけどね。
「まあ、その辺はおいおいどうするか考えとくよ……さて!気を取り直して元気に二通目のメール紹介行ってみようかっ!」
「明久、空元気が痛々しいぞ。後無駄にウザい」
「やかましいこの妻帯者め。————ふむ、そんな雄二にはこの詩を聞いて貰おう。とある女子生徒の自分の愛を綴った詩だってさ」
「誰が妻帯者だ。と言うか、いきなり何だ明ひ———」
「それじゃ、二件目のメールはこれだねっ!行くよっ!」
彼の目が好き。厳しい目つきのようで、相手を見守るような優しい目が
彼の声が好き。凛々しくて、どこにいても聞き取れるような力強い声が
彼の体が好き。逞しも勇ましき、弱きものを支え助く鍛え抜かれた体が
———でも、一番好きなのは彼の心
ぶっきらぼうで不器用で、他の人から冷たく見られるかもしれないけど
自分がどれだけ辛く苦しくとも、相手を想い行動する温もり満ちた心が
そんな彼の心が好き。彼の全てが大好き。雄二、貴方の全てが愛おしい
『私の好きな人の、好きなところ』 作 霧島翔子
「———テメェ、なんてもん読みあげてんだ畜生!?と言うか、なんてもん送りつけてんだあのバカは!?」
「「「「おお……流石霧島(さん)溢れんばかりの雄二(ゆーさん)への愛が表現されてる……」」」」
「殺せっ!もうひと思いに俺を殺せ!」
どうどう、落ち着きなよ雄二。愛されてて良かったじゃない?
「愛なんてあるかぁああああああああああああああああああ!?」
まあ、気持ちはわかる。付き合っているカップルですら他の人の前で自分の好きなところを語られたらキツイもんね。
「おまけに素直じゃない上に、まだ付き合っていない雄二じゃねぇ?」
「まあ、ある意味拷問じゃろうな」
「…………耐えられない」
「たはは……それにしてもホントに凄い詩ですね。相当気合い入れてお書きになったんでしょうね」
「くそっ……死ぬほど恥ずかしい……と言うか、こんな小っ恥ずかしいもん書ける神経が理解出来ねぇ……」
まあ、それだけ霧島さんが雄二の事を好きだからこそ書けるんじゃないの?
「知るかんなもん。ちっ……」
「そんなことを言いつつ、内心はメチャクチャ喜んでいそうだけどね、雄二は。もっと素直になりなよ、前にも言ったけど男のツンデレに需要はないよ?特に雄二みたいなムサ苦しい奴にはね」
「黙れこのハーレム男がっ!姫路の弁当食ってさっさと逝けや!そのまま三途の川で泳いでこいやっ!」
「ハッ!お前はとっとと書類揃えて結婚してこいや!そんでもって霧島さんの愛に溺れて溺死しろっ!」
「「上等だっ!表出ろこのバカがっ!」」
「「「…………えっと」」」
〜明久&雄二退場:さらにしばらくお待ちください〜
「あー、その。どうやら次が最後のメールみたいですね」
「…………そのようだな。それにしてもどうしてこうなるのやら?」
「そうじゃの。ただメールを読むだけのハズじゃったのに、明久も雄二も散々じゃからのう」
結局二人とも揚げ足取りあって口論になって、喧嘩する為にスタジオから出て行っちゃったね。全く、司会の仕事ほったらかしにして何をやっているのやら。
「まあ、次がラストですし三人でも十分でしょう。それでは最後の歌です。えっと———これもどうやらご自身の恋について語った歌みたいですね」
「…………そういうの多いな。告白の秋か?」
「何々?“告白した時に添えた自作のポエムです。どうかあの人に気持ちが届きますように”とメールに書いてあるのう。と言う事はまだその恋は成就しておらんようじゃな。まあ、とりあえず行ってみようぞ」
よし、それじゃあラストのメール宜しく三人とも!
気がつけばいつも
お前の姿を追っている。
思い出せばいつも
お前の笑顔を求めてる
木下秀吉
例えるならば俺は向日葵で
お前は俺を照らす太陽だ
お前の輝きを追い掛けて
俺は大輪の花を咲かせよう
この気持ちをうまく表す言葉を知らないが
それでもお前に伝えたい
好きだ木下お前の事が
MAJI で ZOKKON LOVEしてる
『太陽と向日葵』 作 常村勇作
「ぎゃあああああああああああああああああああああ!?」
「ちょっ!?ひ、ヒデさん!?しっかり、しっかりしてください!って、どこ行くんですかヒデさん、ヒデさーん!?」
あっ……行っちゃったね秀吉。そういえば秀吉って肝試しの時にこれ聞かされたんだっけ?
「…………これは酷い。相変わらずの破壊力だ」
「あはは……ツネ、去年からヒデさんのこと狙っていたみたいでして。ちなみにああいうポエムは暇さえあればよく書いていましたね」
「…………あの先輩、これが無ければ結構良い人なんだが」
「あー……本人の名誉のために言っておきますが、こーさんの言う通りツネって意外と気遣い上手で良い人なんですよ」
コレさえなければね。恋は人を狂わすと言うかなんというか……これある意味最終兵器になりかねないね。と言うか、“MAJI で ZOKKON LOVEしてる”ってどんだけ……ラジオを聞いている皆さんからクレーム来ないと良いけど。
「「…………」」
と、とにかく週刊☆文月学園ラジオ放送局:みんなのうた♪〜あなたの想いを歌に乗せて〜のコーナーはこれにてお終い!see you next week! ばいばーい!
「「…………クレーム、絶対来る気がする……」」
……やっぱ、来るかなクレーム……
———その後、ラジオ終了からしばらくして番組に届いたメールの数々。以下その一部。
16歳 学生 K下H吉さん
これは凄いです!読んでからずっと(同性に好かれると言う事実で悲しみと恐怖と絶望の)涙が止まりませんでした!
17歳 学生 K暮Aさん
あの人と話している時や親友たちと一緒にいる時以外は、大抵周りに合わせて作り笑いの出来る私でしたが、この詩のお陰でしばらくは作り笑いが出来なくなりました。
23歳 教師 E藤教師
この詩を読んでから、しばらくは食欲が落ちました。お陰で3kgのダイエットに成功(?)しました。
16歳 学生 K下Y子さん
演劇が大好きなアタシの双子の弟が、毎晩うなされるようになりました。怖がっている顔もなかなかキュートでした。
??歳 教師 H高教師
何かよくわかんねぇが、最近やたらと保健室を利用する生徒・教師が増えたんだがなんかあったんか?
※あくまで一部の感想です。使用効果は個人差があるようです。
皆さんのご意見・ご感想を番組内にどんどんお寄せ下さい。
- 番外編:週刊☆文月学園ラジオ放送 特別企画・文化の秋!後編 ( No.137 )
- 日時: 2015/09/25 21:12
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
さてさて、みんなのうた♪コーナーに引き続き次に行ってみましょうか!皆の悩みを鉄拳粉砕!悩める生徒・教師に大人気(?)のこのコーナー。それは———
〜特別授業!西村先生の鉄拳人生相談道場〜
「……またこの企画か」
「本当にすみません、西村せんせ……司会のアキさんとゆーさんはどこかに行っちゃいましたし、何だか正直自分だけじゃこのコーナーはやっていけそうにないですし……」
まあ、明久や雄二たちが人生相談に乗るのも考えものかもしれないけどね?そういう意味じゃ、一番の常識人且つ出来た大人な西村先生が一番適任だろうし。そういうわけで、此処は一つよろしくお願いします西村先生。
「まあ、折角頼まれたわけだし、拒否するわけにもいかんか」
「すみませんです……せんせ」
「月野が謝る必要は全くないんだが———正直言うと、以前のような質問が来たら答えられるかわからんぞ?どう言うわけか、毎度毎度珍妙な相談事ばかりで頭が痛いからな……まあいい!教師である俺が弱音を吐いては示しが付かん!諸君の質問に私こと鉄拳先生が“できる限り”答えよう!月野、お前にも手伝って貰うぞ!」
「はいです!せんせのお役に立てるよう、一生懸命頑張りますっ!アシスタントの月野です。宜しくお願いします」
それじゃあ、二人とも頼みますね。ちなみに今回の相談のテーマは———『家族』だそうです。
「ふむ、親兄弟に関する相談か。中々無視できない内容だな。よし、ではまず一件目の相談だ!」
【S本Y二さんのご相談】
鉄拳先生、俺の悩みを聞いて欲しい。俺の母親は世間の常識に疎く、生活能力に欠けている。具体的には、伊勢エビとザリガニを間違えて食卓にあげたり、コーヒーとめんつゆを間違えて来客に振る舞おうとすることがある。
挙句の果てには、学園で世話になっている友人を自分の孫扱いまでする始末。どうしたらあの母親に世間の常識というものを教えられるだろうか?今の俺にはわからないんだ……
【鉄拳先生のアドバイス】
「「……」」
「Yーさん……お母さんのY乃さんの件ですね……」
「……すまない。初めて悩みらしい悩みが寄せられたが、やはり今回もどう答えたものかと困っている」
今回はまたしょっぱなから重いものが来ましたねー。Y二のお母さんのY乃さんは存在自体がツッコミの対象ですし。
「全く……寧ろ私が常識を教える方法を教わって、一部の生徒たちに実施してやりたいほどだな。まったくあの連中と来たらいくら言って聞かせても———いや、すまん。今はそんな話は関係がないな」
「たはは……西村せんせ、いつもお疲れ様です」
「お前もな。さて、話を戻そう。君の悩みだが……母親がそういった行動を取る度に、一つ一つ根気強く説いていくのが一番だと私は思う」
「なるほど……地道な事ですが、最後はやっぱりそこに収まりますよね」
「そうだな。そもそも常識というものは社会で生活し、時間をかけて覚えていくものだ。急がば回れという言葉もある。焦って一度に押し込むより、ゆっくりと確実に教えていくのが良いだろう。大変だろうが、頑張って欲しい」
お、大人だ……めちゃくちゃ大人な意見だ……やっぱり西村先生は大人だ……!
「貴重なアドバイスをありがとうございます西村せんせ♪と言うわけでYーさん、大変でしょうが根気よくY乃さんを説得しましょう。自分も手伝いますので」
「やれやれ、最初からこんな相談か。先が思いやられるな」
「頑張りましょうせんせ。さて、そろそろ二件目に行ってみますか?」
「そうだな。さて、今度はどんな相談だ……?」
【Y井A久さんのご相談】
鉄拳先生聞いて下さい。僕には姉がいるのですが、その姉に常識が全くなくて困っています。具体的には『汗をかいたから』という理由でバスローブ姿で天下の往来を歩こうとしたり、実の弟である僕に『お嫁に行けなくなるようにチュウ』を実行しようとしたりします。
この前は友人の前で『異性として愛している』とまで言われました。ついでに僕とその友人にコスプレを強要しようとする始末。先生、僕はどうしたらあの姉に常識を教えることができますか?と言うか、姉や周りの人物の破天荒な行動のせいで、最近常識って一体何なのかわからなくなってきました……
【鉄拳先生のアドバイス】
「「…………」」
二件目も随分ハードな……流石Aさん。惚れ惚れするくらいのブラコンですね。
「……正直に言えば、どうしたら良いのかは私が教えて欲しい。なぜこのコーナーに寄せられる相談は、私の知る一般的な生徒の悩みとこうもかけ離れているのだろうか?」
「た、確かに……前回も色々と変な相談ばかりでしたもんね」
「いかんな……教師としての自信をなくしてしまいそうだ。これ以上このような質問が続くのなら、全てを投げ出してこのコーナーを打ち切りにしたいところだが———いや、すまない。このような愚痴を漏らすべきではなかったな。忘れて欲しい」
と言うか、文月学園自体が非常識がそのまま学校に成ったようなもんだからね〜
「せ、せんせ?あんまり無理しないでくださいね?あ、そういえばよく効く胃薬持っているんです、後で持ってきますね」
「感謝する月野……さて。君の相談だが、一先ずお姉さんとよく話し合ってみるというのはどうだろうか。もしかしたら、君のことを実の弟だと認識していないという可能性もある。まずは相手の考えていることを正しく知ることだ」
「……寧ろ知ろうと近づけば、Aキさんはお姉さんのAさんに美味しくお食べられちゃう気が———いえ、何でもないです、はい」
Aさんだからねー?A久はとりあえず、喰われないように気をつけながら説得すると良いんじゃないかな。検討を祈る。さてさて、鉄拳先生次のメールをどうぞ!
「……経験上、この流れは非常に嫌な予感がするんだがな。まあいい、三件目の相談だな。これは……文月学園の外からの手紙で来ているな。月野読んでくれるか?」
「はいです!えーっと、どうやらご兄弟についての相談みたいですね。では読んでみますね」
【K保Y光さんのご相談】
鉄拳先生。真面目だった兄の部屋から、とある男子生徒がプリントされている抱き枕と、とある小学生にそっくりのぬいぐるみが出てきました。助けて下さい。あの頃の凛々しくてカッコイイ兄に戻してください
【鉄拳先生のアドバイス】
「…………月野、すまん。今思い出したんだが俺もお前も学園長に呼ばれていたんだった」
「へ?ああ、そうなんですか」
「ああ。確かかなり急ぎの用だったハズだ。とりあえず早速学園長室に行くとしよう」
「そ、そうですね。え、えっと……でしたらこのコーナーはどうしましょうか?」
「“適任者”に任せるとする。なに、この学園にはきっと俺よりももっとこういう内容に適したヤツがいるだろうからな……」
「は、はいです……?」
※西村先生が相談役を辞任された為、このコーナーは今回をもって終了とされて頂きます。ここまでのご清聴真にありがとうございました。
- 番外編:週刊☆文月学園ラジオ放送 特別企画・文化の秋!後編 ( No.138 )
- 日時: 2015/09/25 21:14
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
さてさて……参ったね。明久や造たちも全員戻っちゃったし司会がいないや。仕方ないし、今回はこの辺でお開きとしましょうか———
「待つんだ!その役、僕が引き受けようじゃないかい!」
…………ん?君は久保君……?何でまたこんなところに……?
「そう僕こと、久保利み———もとい、知的眼鏡が皆の相談に答えよう。そう、愛しき吉井君と月野君の後継として立派に引き継いでみせる!」
『『(ゾクッ)……っ!?な、何か今寒気が……!?』』
…………そ、そう?なら久保君に任せようかな……?
「ああ、任せてくれ。それと“久保”ではなく、“知的眼鏡”と呼んでくれないかい?」
あいよ、それなら早速よろしく知的眼鏡先生!まずは一件目のメール行ってみよう!
〜特別企画:知的眼鏡先生の頭脳派人生相談〜
【三年生 T村Y作さんのご相談】
知的眼鏡先生、僕の悩みを聞いて下さい。実は僕には今、とても好きな人がいます。この前肝試しがあり、その時に思い切ってその人に自作のポエムを添えて告白したのですが、相手は悲鳴をあげるばかりで返事をくれませんでした。
これはやはり振られたと考えるべきなんでしょうか。三年であり受験も近いので、そろそろ気持ちを切り替えたいと思っています。こんな僕に、何か一言宜しくお願いします。
【知的眼鏡先生のアドバイス】
「ふむふむ。まずキミは、その考え方から変えるべきだろう。何事もネガティブに考えていては、決して良い結果につながらない。後ろ向きにならず、常にポジティブに物事を考えることが重要だ」
んー、まあ確かに何事もネガティブに考えすぎるのは問題かもね。……ポジティブ過ぎるのもアレだけど。
「メールを送ってくれた君が受験生なら尚更もっと物事をポジティブに考えるべきだろう。そして、キミの告白についてあくまでも僕の個人的な主観で述べさせて頂くが、悲鳴をあげられた程度では振られたうちに入らないと思う」
…………んん?そう、かな?それって本気で逃げられてるんじゃ……?
「そんなことはないさ。相手は恐らく照れているだけで、まだ充分に成就の可能性はあるはずだ。恋愛の基本は、自分の気持ちを素直に認めて、最後まで諦めずに行動すること。この程度で諦めないで、これからも頑張っていって欲しい」
……まあ、ほどほどにね?えっと、まあアドバイスをまとめると……あまり暗い気持ちじゃダメだってことかな。まあ、そこそこいいアドバイスだったってことで。そんじゃ次行ってみよう。
【二年生 S水М春さんのご相談】
知的眼鏡先生、初めまして。私には一年生の時からずっと想い続けているお姉様がいます。私はお姉様の為なら修羅にもなれると自負していますが、お姉さまは『アンタもウチだけじゃなくて他に大事な人を見つけてみたらどうかしら?見ている世界が大きく変わるわよ』とそんなことを仰るのです。
私はお姉様以外考えられないのですが……お姉さまは私に何を言いたかったんでしょうか?どうか教えてもらえませんか?
【知的眼鏡先生のアドバイス】
「さて。アドバイスの前に、キミのそのひたむきな姿勢に敬意を表したい。一途に相手を想うことは大変素晴らしいことだと思う。その姿勢をこれからも失わず君の心の中にいつまでも持ち続けておいて欲しい」
ま、誰かを想い続けたり、大事にする心ってそれがどんな形だって大切だもんね。
「それから本題のキミのお姉様が何を言いたかったかだが———これは流石に君自身が見つけなければならない事だと思う。きっとこれはキミのお姉様が出したキミへの課題なんだろう」
!?く、久保君が真面目だと!?い、いや、久保君はもともと真面目か……!?
「だから久保ではなく知的眼鏡と———コホン。ただし、キミの真摯な想いはそのお姉様にこれからも表現し続けて構わないだろう。相手を想い続けること。それこそが何よりも大事なことだと思うからね。こんなアドバイスで悪いが参考程度に考えておいて欲しい」
うんうん、中々いい感じのアドバイスじゃないか!それじゃ、その調子で最後のメール行ってみよう!
【二年生 N林H美さんのご相談】
知的眼鏡先生、聞いて下さい。私は学年次席の知性溢れる彼のことが好きなんですが、彼はとある同性のバカのことが好きみたいなんです。私は一体どうしたらいいでしょうか?
【知的眼鏡先生のアドバイス】
「諦めるんだ。以上」
…………待て。おい待てちょっと待て。さっきまでの真摯な対応はどこ行った。
「残念ながら僕では答えることが出来ない質問のようだ。いやはや、僕の力不足だね。本当にすまないと思っている」
待て待て待て!と言うか、これある意味一番久保君向けの質問だろうに!?良いからN林さんの質問にちゃんと答えてやりなよ!?
「久保ではなく知的眼鏡だ。それはともかく、これにて知的眼鏡先生の頭脳派人生相談を終了する。ではまた来週」
ちょっと!?勝手に終わらせないでよ!?ちゃんと答えてあげろってば!?
「ふむ……Y井君とT野君の魅力ならいくらでも語れるが?」
趣旨が違うでしょ!?そもそも何をしに来たんだ久保君はっ!?ええぃ、もういい!週刊☆文月学園ラジオ放送局、次回もお楽しみに!
「僕の好きな人たちはね、二人ともとても明るくて親しみが持てる。どちらも天然なところがあるが、それも愛嬌であり一緒の時間を過ごすととても癒されるんだ。そして、いざという時周囲の人間をあっと驚かせるような行動力を発揮する。そんな魅力的な人間なんだよ———“彼ら”は」
…………ホントに語りだしちゃったよ、この人。
- Re: バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 ( No.139 )
- 日時: 2015/09/30 11:58
- 名前: ユウ (ID: iQk5t9Pn)
明久、お前…っ!(同情の涙)
十六夜「そうか…お前も色々と苦労してたんだな…」
アベル「あはは、僕も戦場に出れば何回も死を覚悟したことはあったけど…これは可哀想すぎるね。」
良かったな明久、現役軍師で何回も死地を見たアベルがこれに関しては酷過ぎると言ってくれたぞ。
エル「ね、ねえ皆!アッキー(明久)を元気づけてあげない?」
飛鳥「それもそうね。流石の私も今回の彼には憐憫の情を覚えるもの」
耀「それじゃあ、私は胃もたれに効く薬草を送ってあげる」
エル「エルはアッキーにおいしいトマト料理を送ってあげるね」
アベル「僕からは自分の世界で重宝していた、この体力を全開させる秘伝の特効薬を5本送るね」
飛鳥「私からは…何を送ってあげようかしら」
十六夜「いっそ一糸まとわぬ状態のお嬢様自身がプレゼントとなって送られてみたらどうだ?明久の奴は、強気な女性が好きなはずだからな」
飛鳥「ビキッ!!(怒)…そ、そうね。折角だし一糸纏わぬ状態の十六夜君でも送り付けたらホモ疑惑のある吉井君には喜ばれるんじゃないかしら?」
十六夜「…ほう?だったらやってみたらどうだお嬢様?」
飛鳥「ええ、言われなくても今からしてあげるわね十六夜君?」
2人『…ヤハハ(フフフ)』
バチバチバチバチ!!(目から火花を散らせながら人間が1人入るほどの袋を互いに持つ)
…ヤバい、何かお互いスイッチ入っているんだけど…この2人止めなくていいの?
アベル「はあ、まったくこの二人は…」
エル「まあまあ、飛鳥は何やかんや十六夜君に対して色々と認めてもらいたいし、そんな飛鳥の事を十六夜は少なからず思ってくれてるからこそ弄っているだけだし、時間が立てば元に戻るよ」
耀「…2人は心が素直じゃない」
さいでっか。だったらあの2人は置いておくとして、感想に戻ろうかな。
さて、明久の死…もとい詩が終わっても悲鳴が止まらない『みんなの歌』!!
雄二は恋人からの詩に悶え狂い(死ねリア充!!)、秀吉は愛される同性からの詩にパニック狂う結末に!?(秀吉ーーーー!!?おのれ常村!!よくも秀吉を!!許さんぞ!!)
さらには常村の詩を聞いて保健室送りにされる人が多数!!
1つ言わせてくれ…どうしてこうなった(笑)
アベル「その後の『西村先生の鉄拳人生相談道場』は何だか知ってるかもって人たちからの悩みが重たすぎて、西村先生の胃痛が加速する結末に、と、取りあえず西村先生もこの特効薬をどうぞ」
エル「さらに話は捩れていき今度は同性愛に悩む人々(最後は違うけど)からの悩みに答える久保君…いけない、間違えちゃった。やり直しやり直し。『知的メガネ先生の頭脳派人生相談』で救われる方々が多数!流石は久保君だね!!」
耀「…救っているっていうよりかは、魔の道へと押し込んでいるようにも見えるんだけど?」
うん、耀の言うとおりだね、何せ彼、自分への異性の質問には見て見ぬフリをしていたからね。…K保Y光とN林さんには同情の念を感じ得ないよ。
今回はここまで!それでは楽しみにしてますね!
P.S
あ、後言い忘れてましたけど、ハーメルンに置いてあった自分の作品ですが、余りにも作品が拙かったので、大改稿するために一時削除してますのであしからず。
5人『『『『『…………ハア?』』』』』(初耳の問題児達)
- Re: バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 ( No.140 )
- 日時: 2015/10/02 21:03
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
>ユウさん
いつも読んでくださって嬉しいです、ありがとうございます
明久&美波の受難は……近いうちに何とかしてあげる予定です。それまでは頑張れ超がんばれ
明&美「「がんばれっていわれても……」」
造「お、お二人とも目が虚ろですよ?だ、大丈夫ですか!?」
色々回復できるもの送ってもらったし、それでしばらく凌ぐんだ二人とも。何か痴話喧嘩(?)みたいなエールをしてる別の二人がいるけど彼らの応援もあるから頑張れ!———まあ姫路さんの料理改善はもうちょっと後に書く予定ですからしばらくってレベルじゃなく待たなきゃなんないけどねー
明&美「「…………」」
んでもって常村は……ま、まあここでは彼もかなりまともになってますけどね……それでもやっぱり強烈だったあの死———もとい詩。
造「ツネ……それほどまでにヒデさんの事を好いていますからねー」
康「…………あの先輩たまに秀吉の写真買ってた」
造「あ、やっぱりツネってそうだったんですね……」
彼の秀吉好きの色々もいずれ解決してやらんとなぁ……結構良い先輩になってきましたし。そんな彼を後押しした(?)久保くんは———彼は何だかんだ原作通りだった……
造「久保くん?彼がどうかしたんですか?」
康「…………造は気にするな。こういう話はまだ早い」
宗「……全くどうしてこの学園はこうも……いや、まあ恋愛は自由ではあるんだが……自由過ぎると言うか……いかん、胃が……」
と言うわけで文月学園にいると姫路さんの殺人料理的な意味でもストレス的な意味でも胃薬はいくらあっても足りないようです。
リアルの方やこの小説の続き書きが忙しくてユウさんのところにほとんど顔出せず申し訳ありません。改稿なさったら教えてくれると嬉しいです。もう少しすればちょっと時間が取れると思いますので……その時は顔出すと思うのでどうかよろしくお願いしますね。
ではそろそろ次のお話を書きたいと思います。ではでは
- 番外編:ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜その① ( No.141 )
- 日時: 2015/10/02 21:56
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
体育祭兼召喚野球大会も無事に終わり、しばらく経ったある日の昼下がり。いつものようにFクラス仲良しメンバーの明久・雄二・ムッツリーニ・瑞希・美波の五人は、お昼を食べるべく楽しげに屋上へと向かう。
「明久君、美波ちゃん。今日もたくさん食べてくださいね!」
「「は、ははは……お手柔らかに、瑞希……」」
「…………二人とも、骨は拾ってやるぞ」
「あと、一応ヤバイ時は日高先生を呼んでやるから安心して逝って来い」
「「(安心出来ない……)」」
……ただし明久と美波の二人は、絞首台への階段を上る死刑囚のような感覚で屋上への階段を上っているが。
「?どうしたんですか、明久君に美波ちゃん?」
「あ、ううん!何でもないのよ!さっ、早く逝きましょ!(うぅ、今日もちゃんと生きて戻ってこれるかしら?現世に)」
「そ、そうだね!お腹ペコペコだし早く逝こう!(僕のはともかく、最悪の場合美波のだけでも雄二とムッツリーニに喰わせねば)」
明久も美波も若干青ざめながらも、精一杯の笑顔を瑞希に見せる。瑞希に強く言えないあたり、惚れた弱みと言うべきか……屋上へ向かう階段に足をかけながら、とにかく話を逸らそうとする明久。
「そ、それにしても造と秀吉はどうしたんだろうね?授業が終わったと思ったらいつの間にか居なくなってたし」
「そう言えばそうよね。と言うか今日だけじゃなくてさ、最近何やらあの二人いつの間にか居なくなっていること多くないかしら?」
「あ、確かにここしばらく木下君も月野君も放課後は二人でよく一緒に行動していますよね。どうかしたんでしょうか?」
———そう。今日は明久たちの言った通り、普段は絶対にこのメンバーの中にいるハズの造と秀吉の姿が見えない。その事に三人は首を傾げつつ話をする。
「言われてみればアイツら何か最近二人でバタバタとしてんな。ま、今日はアイツらも屋上にいるんだろうさ。弁当持って教室出ていってたのが見えたしな」
「あ、そうなんだ。……にしても秀吉と造かぁ。あの二人ってさ、気も波長も合うしいいコンビだよね。何だか本当の姉妹みたいだし」
「…………あの二人のツーショットは、かなり高額で売れている」
主に造と秀吉の波長が合うのは、そんな風に女の子扱いされていたり、コスプレされて写真を撮られたりいるのが原因であることは最早言うまでもないが。
「(まあ、アイツら二人とも男なんだがな)ははっ!案外アイツら付き合ってたりしてな。少なくとも秀吉は木下姉と一緒でかなり造のことを気に入っているしな」
「って、ちょっと!何言いだすのよ坂本。アイツらがいないからって勝手に変な事言うもんじゃないわよ」
「そうですよ坂本君。そんな憶測だけで話ししちゃ、変な誤解が生まれちゃいますよ」
「ん?そうか?」
「「そうなの(そうです)!それに———(ボソッ)そんなこと言ってたら、月野(君)を好きなあの人が心配しちゃうし(しちゃいますし)」」
と、頬を赤らめてそんなことを呟く瑞希と美波。何でも只今絶賛恋をしているこの二人は、お世話になった先輩の恋を応援したいとか。
「お前らが一体何の話をしてんのか知らんが……姫路に島田、落ち着け。言っとくがさっきのは冗談だ。いくらなんでもあの二人が付き合うってことはないさ」
「ま、それはともかく最近二人ってよくいなくなるし、ちょっと気になるよね〜」
「…………気になるなら、本人たちに聞けばいい」
「そうだな……ん?噂すれば造と秀吉の声が聞こえるぞ。やっぱアイツら先に屋上に来てたか」
そう言いつつ、屋上への扉を開ける雄二とそれに続く明久たち四人。そしてその五人の目に飛び込んできたのは———
ダンッ!
「どうして……どうしてなの!?」
「ゴメン、なさい。でも、自分は……自分は貴方の想いには答えられないんです……」
「「「「「…………は?」」」」」
———造の手を掴んだまま屋上の壁に造を押し付け迫る秀吉と、そんな秀吉に困惑し目に涙を浮かべる造の姿が。
「……言っておくけど、ふざけて告白をしたわけじゃないから」
「わ、わかっていますっ!貴方の気持ちは嬉しいですっ!でも、でも……こんな身体じゃ、貴方の側にはいられないんです……」
荒々しくそして力強く造に言葉を紡ぐ秀吉と、弱弱しくそして悲しげに首を振ってその秀吉の想いを拒絶する造。これには全員口を開けて呆然とその場に立ち尽くしてしまう。何せ直前に“あの二人は付き合っているんじゃないか”と話をしていただけあって、この光景は流石に取り乱さずにはいられないのだろう。
「……そんなこと関係ないっ!何をためらう必要があるんだ!いいよ……力づくにでも貴女を……」
「よ、よして下さい……ダメなんです、ダメなんですよ……」
「「「「「…………え?えぇ!?」」」」」
そんな台詞と共に、強引に秀吉の唇は造の唇へと向か———
「……って、あらら?皆さんやっと来ましたね」
「おお、お主ら遅かったのう。ならばちょうど良い時間じゃし一旦休憩しようかの造。こんな時間まで付き合って貰って悪かったのう」
「いえいえ、どういたしましてですよヒデさん。ほらほら皆さんもボーっとしてないでご飯食べましょうねー♪」
向かわずに、そのままの体勢で明久たちを見つけるといつも通りの笑顔を向ける造と秀吉。そんな二人を見た明久たちは一瞬でアイコンタクトをすると、全員流れるような動作で———
「「「「「すみませんでしたっ!」」」」」
「「……は?」」
———全員その場で土下座する事に。その光景に今度は逆に造たちが困惑してしまう。
「な、何じゃお主ら急に?……わ、ワシらが何かしたかの?」
「「「「「本当にすみませんっ!すぐに退場するので、続きをどうぞっ!?」」」」」
「……続き?あの、皆さん?ひょっとして何か物凄い勘違いをしていませんか?」
「「「「「いいえっ!“告白”の邪魔をして本当にすみませんでしたっ!」」」」」
「“告白”じゃと!?ちょ、ちょっと待つのじゃ!?やはりお主ら何やら盛大に勘違いをしておるぞ!?」
「あ、あはは……よくわかりませんがちゃんと説明しますから、皆さんとりあえず土下座するのは止めてください。何だかこっちが恥ずかしいので……」
そう言って驚き半分呆れ半分で明久たちにツッコミを入れる秀吉と、苦笑いを浮かべる造がこの状況を説明する事になった。
〜造&秀吉説明中〜
- 番外編:ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜その① ( No.142 )
- 日時: 2015/10/02 21:30
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
造Side
「「「「「な、なるほど……つまり演劇の練習だった、と」」」」」
「そう言う事なのですよ。良くわかりませんがごめんなさい、皆さんを驚かせちゃって」
とりあえずお昼ご飯を食べつつ、皆さんにさっきの状況を説明する事に。いきなり屋上に着くなり、皆さんが土下座なんかし始めて何事かと思いましたが……説明したら何とかわかってくれたみたいですね。と言いますか、何をそんなに皆さん動揺していたんでしょうかね?
「全く……お主ら取り乱し過ぎじゃぞ。ワシらは何もしておらぬのに、何故だかこっちが申し訳なるではないか」
「い、いやーゴメンゴメン二人とも。ちょっと直前の会話とさっきの状況がビックリするくらいに繋がったもんで」
「???何の話ですか……?」
「いや、気にすんな造。……それよりも演劇ねぇ?秀吉は演劇部だからわかるが、何でまた造がそんなものやってるんだ?」
と、ゆーさんが不思議そうに尋ねます。皆さんも首を傾げつつ自分たちを見ていますね。あ、そっか。皆さんにその辺の説明はしていませんでしたっけ?
「えっとですね。学園長の依頼で今度ヒデさんたち演劇部が、睦月小学校で演劇をやるそうなんです」
「睦月小?あら、葉月の通ってる学校じゃない」
「あ、僕と瑞希の母校でもあるね」
「そうですね。それにしても学園長直々に依頼されるなんて凄いですね木下君」
あらら?ここで意外な新情報が。そう言えば葉月さんにもしばらく会っていませんね。久しぶりに彼女にもお会いしたいものです。
「…………うちの学園の演劇部はレベルが高いから。オファーが来てもおかしくない」
「ほう、そうなのか?いや、それは置いておくとして、だ。何で造がその演劇をやってんだ?別に造は演劇部じゃねえだろうに」
確かに自分は帰宅部です。多少の興味はありますが、部活らしい部活に入った経験はないんですよね。と言いますか、この場で部活動に所属しているのってヒデさんだけですよね。
「あー……それなんじゃがの。まあ、依頼されたはいいものの、何を演目にするかで学園長と随分揉めてのう。ようやく演目が決まったのは良いのじゃが、今度は相方と読み合わせをする時間も無いくらい時間が差し迫っているのじゃ。各々寝る間も惜しんで稽古に励んでおるのじゃ」
「それでヒデさんも稽古の相手がいなくて困ってたみたいですし自分は暇でしたし、演劇部の皆さんとちょっとした立ち稽古に付き合っていたんですよ」
いつもお世話になっているヒデさんのお役に立てるなら、それくらい安いものですからね。それにちょっぴり演劇ってどう言うものか知りたかったって気持ちもありますし。
「なるほどね。にしてもあのババァも困ったもんだね。どうせまた妙な事を言い出したんでしょ?」
「まあまあ。学園長も悪気があったわけじゃないので……」
「どうだかな。あのババァの事だし金儲けや召喚システム関連で駄々捏ねたんだろどうせ。にしても造、お前に演技の才能があるとは驚きだぞ。さっきのなんか、本気で俺も騙されるところだったからな」
そのゆーさんの言葉に、アキさんたちもうんうんと頷いて同意します。え、えっと……?
「あ、あのぅ?別に騙す気はなかったですし……自分の演技なんか全然です。実際にやってわかったんですが、ヒデさんを始め演劇部の皆さんの演技は本当に素晴らしくて、自分はあの舞台には立てないって実感しましたもん。ね?ヒデさん」
「……いや、造は才能あると思うのじゃが。たった一、二度読んだだけで台詞を覚えて、読み合わせどころか立ち稽古までやれるなぞ、正直ワシも驚きじゃ。実を言うとの、造と舞台に立ってみたいと思っておるくらいなのじゃよ」
「ってちょっとヒデさん!?」
ま、真顔でそんな冗談言わないでくださいよ……皆さん微妙に信じているみたいじゃないですか……
「へー、ああでも確かにさっきのを見る限りだと、造も意外と演劇合うかもね」
「そうね。あのレベルならやれるかもよ」
「月野君、主役も出来そうですよね♪」
「ははっ!いっそお前もそれに参加してみろよ造!———(ボソッ)姫役で」
「…………いい絵が撮れそうだ———(ボソッ)姫役なら」
皆さんも何言っているんですか全く……餅は餅屋。上手いと言っても素人にしてはってレベルです。自分はそもそも人前に立って何か大きなことをするのは向いてなさそうですからね。……それとゆーさんにこーさん、今何かこっそり変な事言いませんでした?
「はいはい。皆さん冗談はそれくらいにして、さっさと食べちゃいましょうよ。のんびりしていると昼休みも終わりますよ」
その自分の言葉に慌ててそれぞれのお弁当を食べ始める皆さん。やれやれですね。
「ホラ、ヒデさんも早く食べちゃいましょうよ。自分お腹空きましたよ」
「むう……ワシ冗談は言っておらんのじゃが。……まあ良い。ああ、それと造。悪いのじゃが今日の放課後も———」
「ふふっ♪ええ。また立ち稽古ですよね。勿論お手伝いします」
「助かるぞい。では、早う食べてしまうかの」
そう言うわけで、ヒデさんと共に皆さん同様にお弁当を食べてしまう事に。さてさて、今日も頑張ってヒデさんたちのお手伝いしましょうか。……なんて早速放課後の演劇について考えている時点で、ちょっとは演劇楽しいなって思っていることは否定できませんね。
……あ、そうそうちなみに。
「「(ゴホッ!?)……み、瑞希?(必殺的な意味で)また腕、上げたね……(ガクッ!)」」
「そ、そうですか♪ありがとうございます!」
「「「「明久(アキさん)、島田(さん)しっかり!?」」」」
……例に洩れず、アキさんと島田さんが姫路さんのお弁当の魔力に倒れる事に。毎度毎度お疲れ様です、お二人とも……
- 番外編:ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜その① ( No.143 )
- 日時: 2015/10/11 12:55
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
———数日後———
その後もヒデさんや他の演劇部の皆さんのお手伝いをやりつつも、時は瞬く間に流れて往き。そして……
「いやはや。あっという間に演劇公演日ですね」
「そうだね。それにしても……何か凄いね、物凄く賑わっているよ」
アキさんがそう言いながら周りを見渡します。そう今日はヒデさんたち演劇部の公演当日。ここ睦月小学校には自分たちも含めてかなり大勢の人で賑わっています。
「ああ、それね。確か葉月が言ってたんだけど、この小学校の何周年かの記念の為のイベントだって」
「創立の記念の為のイベントと言うわけで、木下君たちの演劇だけではなく他にもたくさんの催しものがあるそうですよ」
島田さんと姫路さんがパンフレットを見ながら皆さんに説明してくれます。そうなんですよね。どうやら結構大規模なイベントみたいで、ヒデさんたちの他にもその道では有名な劇団の方々や芸人さんたちも出演するとのこと。さっきからそう言った有名人さんたちをちらほら見かけます。
「うげっ……そ、そんなに凄いイベントなの?僕らも来て良かったのかな……?」
「それは問題ねえだろ。島田の妹から家族用のチケットを三枚、んでもって秀吉や演劇部の連中から貰ったチケットが三枚。それを俺らはちゃんとここに入る時に出したからな」
「…………表向きは島田の妹の兄弟姉妹と言う設定で、だが」
同じくパンフレットを見ながら苦笑気味にゆーさんとこーさんが話します。まあ、折角頂いたワケですしありがたく使わないとですもんね。
「それにしても優姉さんも霧島さんも工藤さんもここに来ることが出来なくて残念でしたね。折角楽しめそうなイベントでしたのに」
「まっ、それはしゃあねえだろ。翔子は法事って言ってたからな。ほったらかしには出来ねえし」
「…………工藤もどうしても外せない用事があるそうだ」
そうそう。優姉さん(とサクヤさん)も今日は本当に忙しいそうで、一緒に行けないって言ってましたね。優姉さん、ヒデさんの演劇見るの楽しみだったでしょうに残念でしたね。
「あ、ところで造?今の今まで聞きそびれていたけど、秀吉たちがやる演劇って何なのかな?」
「ん?ヒデさんたちの演劇ですか?えっと、確か———“La(ラ) Belle(ベル) et(エ) la(ラ) Bete(ベット)” ———つまりあの『美女と野獣』の改変版だそうです」
「「「「「美女と野獣の改変版?(と言うか。らべるえらべっとって何……?)」」」」」
「ええ。あれって本来は王子が獣になっているお話ですよね。ですがヒデさんたちのやる演劇は立場が逆転して獣になる美女を愛してしまった王子のお話だそうです。これが中々に面白いストーリー何ですよ。脚本読んでいた時、思わず泣いちゃいましたもん」
あ、そうそう。ちなみに皆さんが屋上で見た自分とヒデさんは、そのクライマックスシーンを演じていた真っ最中でした。ヒデさんが主役の王子様、そして自分が獣の姿になったヒロイン役です。獣の身体では側にいられないと思い、王子を遠ざけようとするヒロインとそれでもヒロインの側にいたいと願う王子様———的な。
「「美女と野獣……素敵です(よね)♪」」
「そ、そうなんだ(美女と野獣ってどんな話?)」
「そ、そりゃ楽しみだな(正直俺も覚えてねえ)」
「…………うむ(俺はそもそも読んだことない)」
……ん?何だか姫路さんと島田さんはともかく、アキさんたちの目が泳いでますが……ひょっとして内容を覚えていないとか?あはは♪まあ、演劇見れば思い出しますよきっと。
Prrrr! Prrrr!
「……ん?おい造、お前の携帯鳴ってねぇか?」
「へ?……うわ、わわわ!?ホントに鳴ってる!?」
「?何をそんなに慌ててんだ造、早く出てやれや」
「そ、そんなこと言われましても……ゆ、ゆーさん!すみませんが出てくれませんか!?」
と、そんな中自分のバックの奥底から鳴り響く甲高い機械音。ううっ……けいたい……一応持ち歩いてはいますが……使えないもの持ち歩いてもなぁ……
「……おいおいお前、相変わらず携帯使いこなせてないのか……機械音痴早く治しておけって言っただろ。まあしゃーない、俺が出ても構わないんだな?」
「寧ろ是非お願いしますっ!自分ってどうやっても電話に出ようとすると勝手に切れちゃうんですよ!?」
「「「「造(月野)(月野君)……」」」」
み、皆さんの自分を見る目が……かわいそうな子を見るような目で非常に気になるんですが!?だってしょうがないじゃないですか!?あんなにボタンがいっぱいあると、混乱しちゃいますでしょ!?頑張って出てみてもすぐにプチ!って切れちゃいますしっ!?
「へいへい、と。(ピッ!)あーもしもし?って何だ秀吉か?ああ、悪い悪い俺だ、造が携帯の使い方わからんとか言ってな。今造と代わる———何?俺らにも聞いてほしいことがある?あーわかった。ちょっと待て、今スピーカーモードにすっから。っし、いいぞ秀吉」
『も、もしもし!聞こえるか雄二、造、それに皆の衆よ!?』
「ヒデさん……?あ、もしもしヒデさん、聞こえますよー」
と、携帯から聞こえてくるヒデさんの焦ったようなそんな声。それにしてもどうかしたんでしょうか?ヒデさんたちの出番は午後からとは言え、今の時間も準備やリハーサルなどで忙しいでしょうに……?
『いきなりで悪いが、お主ら今どこにおるのかの!?』
「ん?えっと現在進行形で、皆さんと一緒に公演がある体育館に向かって歩いていますよ」
「睦月小の体育館ならもう二、三分も経たないうちに着くと思うよ秀吉」
『それは好都合じゃ!すまぬ。いきなりで悪いが、ワシらを助けてくれまいか!?』
「へ?た、助けるって……?」
『とにかく舞台裏———体育館のステージ裏まで来て欲しいのじゃ!頼んだぞい!』
そう言ったかと思ったら、ヒデさんはすぐに慌ただしく電話を切ってしまいました。な、何やら只事ではなさそうですね……?ともかく皆さん全員電話が切れると同時に頷き合い、急ぎステージ裏に駆ける事に。
…………うーん。あのヒデさんがこともあろうに演劇に関してこんなにも取り乱すなんて……どうやら何かヒデさんですら対処困難な不測の事態があったようですね。今日はヒデさんたちの活躍を見に来ただけなのですが、ものすごーく今からトラブルな予感がしてきましたよ。
- Re: バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 ( No.144 )
- 日時: 2015/10/04 10:15
- 名前: ケー (ID: Thm8JZxN)
はじめましてケーといいます。前のにじファンあったときから読んでました。
久しぶりにみたら更新してて驚きました。今から読んでなかったところ読んでいきます。それとひとつ頼みたいことあります。いつ更新してるのかわからないしどこにあるのか探しにくいです。ここで書いててもいいのでpixivとかハーメルンとかでも書いて欲しいです。よろしくお願いします。
- Re: バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 ( No.145 )
- 日時: 2015/10/09 20:59
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
>ケーさん
始めまして、そして随分前から読んでいただいていたようで感謝です。それと大分更新が遅れてしまい申し訳ありませんでした。
さて、それでそのご依頼ですが……すみません、少し考えさせてもらってもよろしいでしょうか?今から別の場所でも書くとなると正直かなり話数があって労力的にもこちらの続きの更新的にもかなり辛く、あまり余裕もありませんので……
ただもしも書くとしたら、他の方からもアドバイスがあったハーメルンと言う場所で更新が落ち着き次第いずれこちらと並行して書くかもしれません。勿論こちらの更新を優先したいですし、正直約束は出来ないのですがその時はそちらでよろしくです。あまり期待はせずに待っていただければ幸いです。こちらの勝手な事情で申し訳ありませんがどうかご了承ください。
何度も言いますが本当にお待たせして申し訳ありませんでした。そして出来ればこれからもどうかよろしくお願いします。では失礼します。
- 番外編:ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜その② ( No.146 )
- 日時: 2015/10/09 21:32
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
造Side
突然ヒデさんから『助けてくれまいか!?』と電話を受けた自分と、Fクラス仲良しメンバーは一先ず状況を確かめる為にヒデさんのいるステージ裏へと足を運びます。そのステージ裏に駆けつけると、ヒデさんが物凄く思案顔で自分たちを待っていました。
「すまぬ、皆の衆よ……折角楽しんでもらおうと誘っておいて、急に当日にお主らを呼び出すことになって。ワシも少し取り乱しておったようじゃ」
「いえそれは全く構わないのですが、ヒデさん一体何があったんですか?」
「そうだよ。いきなり助けてなんて言われちゃビックリするよ?」
皆さんも自分とアキさんの言葉にうんうんと頷きます。と言うか、ヒデさんがあそこまで(優姉さんたち以外で)取り乱すなんて……一体何が?
「……それがの。この公演のことなのじゃが、実は———」
〜秀吉説明中〜
「———と言うわけで、ワシ以外の演劇部部員全員が、ここに来る事すらままならぬ状態だそうじゃ」
「「「「「「なるほど……このままじゃ公演が出来そうにないと」」」」」」
……どうやらヒデさんの話ですと偶然か、はたまたこういう運命なのか———今日出演のヒデさん以外の演劇部の皆さん全員が風邪などの体調不良でこの場にすら来れないと言う始末だそうです。おまけに他の出演予定の無い一年生の演劇部の皆さんも家庭の事情やその他諸々で……
「ここのところかなり過密なスケジュールで台本を覚えてもらったり稽古に励んでもらっておったからのう……ワシは慣れておるから体調管理は何とか出来ておったが、他の者は残念ながら……」
「つまり秀吉。お前以外まともに演劇を出来るヤツがいないってことか?そりゃまた何て間の悪い……」
「…………トラブルは重なって起こると言うが、これはまた」
「うーん……でもこればかりは仕方ないんじゃないの?アンタは辛いだろうけど、ここは中止して貰うしか」
「そうですね。やむを得ないですが流石に木下君だけでは、演劇は出来ないでしょうし」
確かに皆さんの言う通り、これが二、三人の欠員なら代役立てたりと出来るハズなんですが……ヒデさんただ一人で演劇をこなすのはまず無理でしょうね。残念ですが自分もここはヒデさんに中止を勧めようとすると、
「……それがのう、無理なのじゃ。中止すらも出来ないのじゃよ……」
ヒデさんは深刻そうにそう言ってきます。はい?中止すらできない?それってどう言う意味でしょうか?
「へ?中止できないってどう言う事さ秀吉?」
「別にプログラムを変更すれば済むのでは?他にも劇団の方や芸人さんたちもいらっしゃいますし、ヒデさんたちの空いた分をずらしてしまえばいいのではないでしょうか?一応その道じゃ有名な方々何でしょ?」
「……いや、それがの。“そこ”が一番厄介な点での。下手にタイムテーブルをずらせばその劇団の方々の予定が狂うのじゃよ。かなり有名な劇団の方々も来ておるし、時間には厳しいハズじゃ。ここに来る前に一つ公演を行うと聞いたのう。そしてこの公演が終わったらすぐに次の公演が控えているとか何とか。そもそもワシらの勝手でプログラム変更なぞそう簡単に出来るわけじゃないしの」
「「「「「「そ、それはまた……」」」」」」
わーお、つまりもう退路無しってことですか……確かにこれは一大事ですね。ヒデさんが取り乱すのも無理ありません。さてさて、どうしたものやら……
「それで、これからどうするかじゃが……お主らには迷惑ばかりかけておるが、少し知恵を貸してくれぬか?もうワシ一人ではどうしようもないのじゃよ」
そう言って自分たちに頭を下げるヒデさん。やれやれ……ヒデさんったら水臭いですね。ここに来た時点で自分も、それから皆さんも何か手伝えないかとそれぞれ思ってこの場に来ていますのに。
「ヒデさん、頭下げる必要なんかないですよ。勿論お手伝いできることなら何でもしますので」
「そうだよ秀吉。僕が何が出来るかはわかんないけどさ」
「まあ、このバカは役に立たんかもしれんが、俺らに出来る事があれば言ってくれ」
「…………微力ながら俺も手を貸す」
「ウチもやってやろうじゃないの。ね、瑞希」
「はいっ!木下君、何でも言ってください!」
そう言ってヒデさんに温かく声をかける皆さん。ふふっ、やっぱり皆さんお優しいですね。
「……本当にありがとうなのじゃ皆の衆。恩に着るぞい」
「まあ、まだ何か出来るって決まったわけじゃねえがな。———それで秀吉、お前にいくつか聞きたいんだが」
と、いつものようにゆーさんが真剣な顔で頭をフル回転させて、思考を凝らしつつヒデさんに状況を尋ねます。流石ゆーさん……冷静にどう動けばいいか、即座に分析して次の手を考え出す手腕は今まで会った方々の中でもトップクラスですね。普段もですが、特にこう言う時の統率力と指揮能力、トラブル対処術はゆーさん本当に頼りになりますね。
「まず、お前らがもともとやる予定の演劇はいつ開演だ?今すぐなら流石の俺もギブアップしかないと思うんだが」
「うむ。確か午後イチで行われるハズじゃな。現在時刻10時前で13時30分開演じゃから、タイムリミットまで三時間半と言ったところか」
「そうか。まあ、準備もあるだろうし時間的には多く見積もって三時間くらいしか無いだろうがな。それじゃあ秀吉、それに造。一つ目の案だが、お前らが稽古していた演劇———美女と野獣だったか?もしそれを俺らが代役として出るとして、三時間でものにできると思うか?正直に聞かせろ」
「「無理じゃな(ですね)」」
「「「「そ、即答……?」」」」
ゆーさん以外の皆さんが自分たちがそのようにあっさりと答えた事に唖然としていますが、まあこればかりは三時間程度じゃ無理でしょうね……練習に付き合ったからこそそれは痛いほど分かります。そんな自分とヒデさんの返答にゆーさんは大して気にした様子もなく会話を続けます。
「そうか。ちなみにそのお前らが無理だと思う理由は?」
「そもそも皆さん、美女と野獣のストーリーをほとんど覚えていないでしょ。今回はそれのアレンジの台本です。皆さんの熱意を削ぐようで申し訳ないのですが、とても三時間で覚えきるとは思えません」
「そうじゃの。それに例えお主らが三時間で台詞を覚えられたとして、それだけでは演技できぬ。何処でどう動くのか、どんな演技を見せるのか。そう考えると———」
「ふむ、三時間程度では全然足りん……そう言う事だな?」
「言っちゃ悪いが、お主らでは———三週間あっても足りんじゃろうな」
「「「「なるほど……」」」」
ヒデさんの経験者ゆえの重みある言葉に、皆さんも頷きます。ヒデさんも長く演劇をしてきただけありますね。こんな時に思うのは悪いのですが、演劇関連のヒデさんは本当に輝いて見えますね。
- 番外編:ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜その② ( No.147 )
- 日時: 2015/10/09 21:57
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
「まあ、その案はそもそも当てにはしてねえがな。じゃあ次の案だが、秀吉と造二人でその演劇をするってのはどうだ?俺も詳しくはないんだが、芝居には一人芝居とか二人芝居とかもあるんだろ?」
「あ!それならいいんじゃないの?二人ともあれだけ練習してて演技も凄かったし、二人だけでも相当迫力あるんじゃないかな!」
……なるほど、二人芝居ですか……まあ、それも悪くは無いんですが……
「「うーん……」」
「…………やっぱり難しい?」
「えっと、自分ってヒデさんと一緒に練習した役と要所要所のシーンしか覚えていないので。それに自分ではヒデさんの演技に釣り合うほどの経験が不足しているんですよ。正直言うと自分では力不足です」
これは謙遜とかではなく、100パーセント本当のこと。正直言いますと一、二週間程度稽古に付き合っただけの自分では足手纏いもいい所。それが二人芝居にもなればヒデさんとの実力の差が誰の目にも見えて、劇が台無しになるでしょうね。加えて本物の舞台に上がったことのない自分では……本当に力不足です。
「まあ、造とならいい線いけるやもしれぬが……そうなると今度は照明やセットの移動、その他諸々をどう動かせばよいかお主らではわからぬじゃろうからな」
「ああ、そうか……二人芝居となりゃ演劇の間中秀吉と造が完全に抜ける事になるから、随時俺らにどう動けばいいかって事の指示が出来ねえ上に、もし何かトラブルがあっても秀吉が対応する事は困難ってことだな」
「一応三時間あれば何とかお主らにも教えられるじゃろうが、そうなるとワシらの演技の打ち合わせが出来ぬようになるし……正直ギリギリじゃな」
そうなんですよね。舞台の設置や大道具など、そう言うきめ細かな指示を自分ら素人では出来ないんですよね。それに二人芝居にでもなれば、今までやって来た芝居からまた違うものに代わってしましますから、そういう経験が全くない自分ではやり遂げられません。本当に困りましたね……
「う、うーん……考えれば考えるだけ頭が痛くなるわね。ウチらが出てもどうしようもない。木下や月野が出ると、今度は舞台を動かせない。どうすればいいのよ全く……」
「そうですね……せめて私たちも台本を読みながらでも出来る劇があれば———」
「あん?アンタらバカかい?もう少し無い頭を使いな。台本読みながらでも出来る芝居ならあるじゃないかい」
「「「「「ううーん…………」」」」」
全員で頭を捻っても、唸っても……すぐには良い案は浮かんできませんね。どうしましょ———ん?あれ?今何か……?
「……えっと、今どなたか“台本読みながらでも出来る芝居ならある”って言いませんでした?」
「……奇遇だね造。僕もそう聞こえた気がする。しかも何だか聞きなれた忌々しき声で再生された気がするよ?」
「……俺もだな。忌々しくも腹立たしい、常に俺らをバカにしている朽ち果てている老婆の声で再生された気がするぞ」
そう言って自分を含め皆さんが、声のした方向を恐る恐る振り向くと———
「何だい?まーたアンタらお困りのようだね、このクソジャリガキ共」
「「「「「「「って!やっぱり学園長(ババァ長)!?」」」」」」」
———ステージ裏の入り口で、ニッと笑いかける学園長の姿が。な、何でまたこのタイミングでこの場所に……!?
「え、えーと……何だかすっごく昔に同じようなこと言った記憶があるんですが、何でここに学園長がいるんですか?」
「はっ!決まってるだろうさ。アタシはこれでもアンタらの学園長だよ?」
そう言いつつ、最高に良い笑顔で学園長は自分らを見回すと、
「何でも演劇部がピンチだって学園に連絡が来てねぇ。アンタらが困っているだろうから、このアタシ直々にこのトラブルを何とかしてやろうと思って来たのさ。ありがたく思いなクソガキ共!」
「「「ありがた迷惑だ、帰れババァ」」」
「やかましいよ三バカトリオ。良いから聞きな!アンタらと違ってアタシにはこのトラブルを一掃できる画期的な案があるのさ!」
アキさん・ゆーさん・こーさんの帰れコールを無視しつつ、いつも通り突発的に語り始める学園長。その学園長はとんでもない案を自分たちに示してくれました。
〜学園長説明中〜
その案はとても……とても学園長らしい提案でした。そう“文月学園の学園長らしい”と言う意味で。
「「「「「「はぁ!?しょ、召喚獣を使った人形劇を行う!?」」」」」」
「そうさね。仕組みはこうさ。アンタらは裏で召喚獣を操りつつ、台本を読み召喚獣が喋っているように見せる。普通の人形劇と違って召喚獣なら色々自由に動かせるし、何より演技が出来ないアンタらでも何とかなるだろう?そう思わないかい?」
あー……確かに。それに召喚獣を使う事は、劇を見てくれている小学生にとってもそっちの方が面白いって思うかもしれませんね。こ、これ本当に素晴らしい案なのでは……!?
「ふむふむ、なるほど。で、どう思う?雄二」
「どうもこうもねぇぞ明久。怪しすぎだろ。なぁムッツリーニ」
「…………絶対裏がある」
「何言ってるんだい。可愛い生徒の為に特別に召喚システムの使用を認めてやろうって言ってるんだよ。裏なんてあるわけないさね。と言うか、寧ろ感謝してほしいさね」
「「「それでババァ長、召喚システムを演劇に使う本音は?」」」
「そんなもの———普段見せられない召喚獣のお披露目が出来る、良い広告機会になると思ったからに決まってるじゃないかい」
「「「思った通り、あくどいなババァ」」」
あ、あはは……そしてその本音もいかにも学園長らしいですね———と、そんな中唯一人苦々しい顔をしているヒデさんが口を開きます。
- 番外編:ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜その② ( No.148 )
- 日時: 2015/10/09 21:06
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
「……学園長よ、またその話かの?」
「ん?またってどう言う事ですかヒデさん?」
「……ホレ、前に言ったじゃろう?“学園長から依頼されてから何を演目にするかで学園長と揉めてのう”と」
……あ、そう言えばそうでしたね?もしかして、その演目が“アレ”なのでしょうか……?
「ワシも召喚獣を使った人形劇は……まあ、中々画期的だとは思うのじゃ。しかしのう」
「「「「「「……しかし?」」」」」」
「……学園長よ。学園長が持ってきた台本をこやつらに見せてやってくれまいかの?」
ヒデさんに頼まれて学園長が持っていた台本を自分たちに見せてくださります。何々……?タイトルは———っ!?
———バカテス童話———
〜召喚獣は見た!?赤く染まったウェディングドレス!みちのく湯けむり密室の悲劇!!孤島の狭小物件黒髪の匠の技〜
「「「「「…………」」」」」
…………これ、は一体……!?
「え、えーっと?何だか火曜日にあるサスペンス的な劇場と、劇的でビフォー・アフター的な番組が合体事故をしていそうなタイトルですね……」
「と言うか、これを本当にやるの?絶対に小学生向きじゃないよね」
「やっぱババァの作った脚本は当てにならんな。こんなもん、小学生に聞かせたら教育に悪いぞ。秀吉が嫌がるのも無理はねえな」
「…………嫌な予感しかしない」
「す、凄い画期的(?)なタイトルね……?」
「こ、これならお客さんにインパクトは与えられますね」
寧ろインパクトしか与えなさそうですが……ま、まあタイトルはともかく。
「それで?この童話ってどう言うお話だったんですか?」
「……一言で言うと、あらゆる童謡や昔話のごった煮じゃな。赤ずきんにいばら姫。オズに桃太郎と……ワシも色んな演劇をやって来たが、いくら読んでもどう言う話かちっともわからんかったのう」
「「「「「「…………」」」」」」
それは……小学生に見せる劇としてはどうなんでしょうかね?何となくヒデさんが嫌がるのもわかるような気もしなくもないかもです……
「やっぱ、このババァの考えなんざロクなもんがねえな。他の案を考えるか」
「そもそもさ。こんなババァに頼っちゃいけないよね。人として」
「…………ババァだしな」
「はっ!言ってくれるじゃないか?アタシは別にいいんだよ?このままアンタらが何も出来ずにステージの上でボーっと突っ立っているのを観客席で面白おかしく笑い飛ばすだけさね」
「「「こんのクソババァ……っ!」」」
ゆーさんたちと学園長が睨みあう中、ヒデさんは顎に手を当てて何か考えているようです。やはりここは……ヒデさんに決めて貰うしかないでしょうね。
「ヒデさん……どうしますか?最終的にどうするかは、ヒデさんにお任せするしかないかと」
「……そうじゃのう。学園長よ。いくつか聞いていいかの?」
「ん?何だいジャリガキ?」
と、今まで何か考えていたであろうヒデさんは、真剣な顔で学園長に問いかけます。
「その演目をやると仮定して———舞台を今から設置するのは無理なのではないかの?」
「ああ、それかい?安心しな。召喚フィールドを展開する際に、立体映像を使ってその背景も出してやるよ。ついでにアンタが指定さえすれば効果音や演出もやってやろうじゃないか」
「……そこまで出来るなら、当然召喚獣にそれぞれに合った衣装を着させることも出来るのじゃろうな?すでに三時間程度しかないのじゃが」
「当り前さね。それくらい朝飯前だよ。背景の立体映像に効果・演出用のプログラムも含めて30分もありゃ何とかなるね」
学園長もこう言う事は本当に有能ですよね……流石は召喚システムの創案、開発者ですね。
「それならば最後に一つ。……この脚本をワシがいくらか手を加えても、その設定で演劇が出来るかの?かなり無茶な設定にするやもしれぬぞ?」
そうヒデさんが尋ねると、学園長はやれやれと言った顔で肩をすくめると飄々とした面持ちで答えます。
「はっ!誰に聞いてんだい?嘗めんじゃないよ、それも含めて全部任せておきな」
「そう……か。むぅ……」
「お、おいおい秀吉?まさかお前……?」
「ちょ、ちょっと秀吉?このババァの言う事聞く気なの!?」
と、ゆーさんとアキさんが心配そうにヒデさんに問いかけます。まあ、二人が不安になるのも無理のない事でしょうが……ヒデさんは溜息をつきながら、それでも何か決意したような目で自分たちを見ます。
「……正直、コレしか手はないのう。ワシだってこれまで稽古してきた演劇が出来んのは辛いのじゃが……我儘言ってはおれぬ。学園長のその脚本は置いておくとしても、召喚獣の人形劇自体は客受けも良さげじゃろうて。何よりこれなら多少の演技の経験不足も補えるじゃろう」
「ヒデさん……」
「「「秀吉……」」」
「「木下(君)……」」
ヒデさんのその言葉には若干の不満と自分の演劇が出来ない悔しさが籠められているようでした。あれだけ稽古してその演技ができないのはヒデさんもお辛いのでしょうね……
「……三十分ワシに時間をくれい。学園長の持ってきたその脚本をある程度形になるように書き直してくる。ついでに配役と背景をどうするかもな。その後は皆、悪いがワシの言う通りに動いてほしいのじゃ。演技・台詞の指導を通しでする。時間も無く、ぶっつけ本番になりかねんが———後は成るようになれじゃ!」
そう言ってヒデさんは学園長の持ってきた台本を、物凄い勢いで書き直し始めます。凄い……ヒデさん切り替えが早いですね。そう言うわけで、急遽やる事が決定した召喚獣を使った人形劇。正直不安だらけですが、はてさて一体どうなる事やら?
———ってあれ、ちょっと待って下さい?ヒデさんを手伝うってことは勿論良いのですが、自分ってこのままじゃ召喚獣として一人舞台に立つってことなるのでは……?い、いかん何だか今から嫌な予感が……
- 番外編:ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜その③ ( No.149 )
- 日時: 2015/10/10 20:56
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
造Side
どう言うわけか、急遽行う事になったぶっつけ本番の召喚獣を使った人形劇。現在ヒデさんが“三十分で学園長が持ってきた脚本をある程度形になるように書き直してくる”と言って全力で執筆していらっしゃるので、邪魔しないようにと学園長の演劇召喚フィールドを設置するお手伝いをやっている最中です。
「それにしても……学園長?あの脚本って本当に学園長がお書きになったんですか?」
「あん?いきなり何さね?」
他の皆さんは別の場所で作業を行っていますし、今なら他の方々に聞かれることもないだろうと考え学園長が設置している中々の重量の機器を自分も運ぶのを手伝いながら、少し気になっていたことを学園長に尋ねることに。
「いや、ハッキリ言っては申し訳ないと思うのですが、学園長ってあんまりこう言う演劇とかって興味無いでしょう」
「ホントハッキリ言ってくれるねぇ……まあ事実だから否定できんが」
「すみません。ですが学園長の性格からして、ただ宣伝の為だけで興味のない演劇の脚本作ってまで召喚獣の人形劇を推すなんて……ちょっと違和感がありまして。と言うか、あの脚本自体学園長が書いたにしては———少し幼稚と言いますか?」
正直言ってわざわざ演劇部と演目について揉めてまで実行するほどの脚本ってわけでも無い気がするんですよね。まあ、と言ってもあくまで自分の勘なのですが。
「とは言え気に障るような発言でしたね。すみません、ちょっとふと気になっただけなので気にしなくても———」
「……アンタ普段はぽやぽやしているようで、やっぱ何気に勘は良いみたいさね」
……ぽ、ぽやぽや?どう言う意味ですかそれは……?
「……まあ、アンタには話しておこうと思っていたから、ちょうど良いさね。———《文》、出ておいで」
「…………は?」
そう言って学園長が、何故か先程まで自分が持っていた機器に向かってそう言うと———
《はーい♪ ツクル! 文は お手伝いに キタヨー♪》
その機器の中(?)から、どう考えてもここにいるハズが無い文月学園召喚システムの頭脳、《文》さんが出て来ると同時に、自分に抱きついてきました。……ってちょっと!?
「ふ、文さん!?どうしてここに!?と言いますか、どうやってここに!?」
《えへへ 来ちゃったー♪》
自分に抱きついたまま、楽しそうにそんなことを言う文さん。いやいやいや!?“来ちゃった”っていつの間にそんな簡単にこの子はこんな場所まで来れるように!?確か文さんは学園外へ出る事は無理だった気が……?どう言う事ですホントに?
「落ち着きなチビジャリ。理屈はアンタとアンタの持ってる腕輪と同じようなもんさ。持ってきたフィールド形成装置の中に文の意識の一部を入れただけさね」
「は、はぁ……なるほど。いや、それにしてもどうしてまたそんなことを?」
「そこで話が戻るわけだが……あの脚本、この子が書いたんだよ」
…………ん?あの脚本って———
「え、えっと?まさかあの『〜召喚獣は見た!?赤く染まったウェディングドレス!みちのく湯けむり密室の悲劇!!孤島の狭小物件黒髪の匠の技〜』って言う脚本をですか?」
「よ、良くそんな長くどうでも良さそうなタイトルを覚えてたね……?まあそれは良いとして。そうさね、それはこの子が書いたのさ。そもそもこの子が余計な事をしたせいで……」
と、学園長はギロリと文さんを睨みつけます。……ん?ひょっとしてまた何か文さんがトラブルを……?
《ムー! ばーちゃん ヒドイ! 文の サイコウ 傑作なのにー!》
「ったく“最高に最低”なトンデモ脚本だろうが……文、少し月野と話があるから、吉井たちのところに行っておいで。ハッキリ言って邪魔さね」
《文 ジャマじゃ ないよー! ばーちゃんの イジワル!》
「誰が“ばーちゃん”だい!?ええぃ!良いから行っといで!言う事聞かなきゃ、すぐに帰すよ!?」
《あーい じゃあ ツクル♪ 後で 遊んで ネー!》
そう言って文さんはヒデさんが台本を修正し終わるまで待機しているアキさんたちのところへと特攻しに行きました。あらあら……文さん元気ですね〜
「あんのじゃじゃ馬娘が……これ以上暴れるなら一度分解(バラ)そうかねぇ?」
「ちょっと!?だからそんなこと言っちゃダメですってば!?……こ、コホン。それで学園長?その様子だと、やっぱり文さんが何かやっちゃったんですかね?」
「察しが良くて助かるよ……実はね———」
そうして学園長が苦々しげに話した内容は……
〜学園長説明中〜
ふむふむ。順を追って説明すると……何でも学園長、度重なる文さんの暴走に業を煮やし『この子には少しは常識ってもんをちゃんと学ばせないと』と思い至り、文さんの精神年齢を考慮して近頃は彼女に絵本や童話を読ませるようにし始めたとか。
- 番外編:ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜その③ ( No.150 )
- 日時: 2015/10/10 21:16
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
それに関しては全く問題無く、文さんも暇を潰せて学園長も文さんに学習させられてと一石二鳥の良い話だったんですが———ここからが問題だそうで。
「それがねぇ……あの子は一体何を思ったのか、一通りの本を読み終わったかと思ったら《文も 何か 書いて みるー♪》って言い出してねぇ」
「?えっと……それはつまり、童謡や昔話のようなお話を自分で書いてみたくなったってことですか?」
「その通りさね。その時はアタシも『どうせ適当に言っているだけだろう。すぐに飽きるだろう』と思って放置してたんだが……」
その学園長の予想に反し、出来上がったのが先程の脚本『〜召喚獣は見た!?赤く染まった(ry〜』だそうです。てか、あのタイトルも文さんが付けたって事ですか。自分が言うのも何ですが、流石は自分を元にして誕生した文さん。その凄いネーミングセンスは確かに自分とよく似ていますね……
「ふむふむなるほど。ですが、それは別に問題ないのでは?寧ろ文さんがそう言う事に興味を持つ事は良い事だと思うのですが」
「……まあ“書くだけ”で済むならね。まだ話は終わっていないのさね」
と、学園長はさらに続けます。頭が痛くなる話はその次から。その物語が出来上がると、今度は文さんその物語が“テレビみたいに実際に動いているところを見れたらな”と欲が出てきてさぁ大変。いつものようにネットの世界に潜って調べてみると……世の中にはあるではありませんか。そう“演劇”と言うものが。
「な、なるほど……今度は文さん演劇に興味を持った……と」
「そうさね。そんでもって『それを召喚獣でやってみたい。文の脚本が動いているところが見たい』って言い出してね。そのせいで、現在進行形で召喚システムが“演劇召喚獣仕様”何だよ……」
「……はい?召喚システムが“演劇召喚獣仕様”ですと?どう言うものなんですか、それ?」
「あー……ちょいと説明しにくいんだが……」
えっと……?どうやら今現在自分も含めて皆さんの召喚獣は、“普段の状態”で無ければ“初期設定”でもなく、ましては“オカルト召喚獣仕様”でもない新たな状態———“演劇召喚獣仕様”になっているとか。
簡単に説明すると文さんが設定した配役の召喚者の召喚獣がフィールドに現れると、その召喚獣は配役に合った服装や装備が出て来るそうです。ちなみに召喚フィールドもその背景に合ったものが立体映像として出されるそうでして。
「へぇ、それはまさに演劇の為だけの召喚獣仕様になっているんですね」
「ああ。その通りさ。そしてこの設定の一番厄介なところは……文の指定した解除法以外で、設定を元に戻す事が出来ないところにあるんだよ」
…………んん?文さんの指定した解除法以外で、元に戻せない?それってつまり……?
「あ゛!?……ま、まさかとは思いますがそれって……!?」
「———そうさね、多分アンタの予想通りだよ。“あのじゃじゃ馬システムの脚本を使った召喚獣の劇をやり遂げないと”……」
「し、システムが元に戻らないように……文さんが設定しちゃったって事ですか?」
「……その通りさね。アタシも必死で元に戻そうとやってみたんだが———あのバカ娘、無意識に複雑且つ普通じゃ解除出来ない妙なプロテクト掛けやがったんだよ。解除するには天文学的な計算をしなきゃならないわけさ。このままじゃ、二学期の試召戦争はお遊戯大会になっちまうだろうね」
「「…………」」
な、なるほど……つまり召喚獣で文さんの演劇を行わないと、このままでは試召戦争すら出来ないようになるってことですね。なるほどそれで合点がいきます。だからこそ学園長はこの状態を解除するためにも“演劇部と時間ギリギリまで揉める”ほどこの文さんの脚本を推したんですか……
「で、ですが何でまたこんな大舞台で?普通に学園で劇をするだけじゃダメなんですか?」
「それも解除の一つの条件のようでね。文の意識に“皆に見て欲しい”って気持ちが解除キーになっているらしく、どうやら大勢の前でやらんと解けないようになっているのさ。一度試しに先生方だけでやった時は解除できなかったよ」
「そ、それはまた……何て念入りで厄介な……」
手が込んでいると言いますか、とにかく厄介ですね。とりあえず文さんにはまたお説教しないといけないのでしょうか……ん?あれ?ですが、それでしたらどうして……?
「ねえ学園長?ならなおの事、どうしてご自身が不利になるような説明を皆さんにしたんですか?」
「あ?何の事さね?」
「いや、だって……文さんの事を少し誤魔化して『召喚システムが異常で、こう言う演技をしないと元に戻らない』って初めから説明しておけば、皆さんも少しは理解してくれたのではないでしょうか」
そう、学園長の“あの”説明に違和感が。主にゆーさんにとっては試召戦争の開始期間をこれ以上延ばされては困るはず。文さんのことをぼかして説明さえすれば、渋々でも協力してくれたはずではないでしょうか……?
「……さて、どうだろうね」
「と言うかですね。わざわざアキさんたちの前で『アタシが考えた脚本通りに動きな』とか『これは宣伝の為さね』とか———そう説明する必要はなかったですよね?何でアキさんたちを挑発するような言い方をしたんですか?」
これではまるで、学園長が大元の原因だって思われちゃいますよね。何でまたあんな風に自分が不利になるような説明をしたんでしょうか?ちゃんと説明すれば試召戦争を望んでいるゆーさんたちの事、わかってくれると思うんですが。そう尋ねると、学園長は拗ねたような顔をします。
- 番外編:ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜その③ ( No.151 )
- 日時: 2015/10/11 00:48
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
「……特に理由なんてないさね。宣伝にもってこいだって思ったのは事実だからね」
「むー……本当にそれだけですか?まだ何かあるんじゃないですか?」
「…………ちっ、ホントアンタは無駄に勘は良いようだねぇ。まあ、《文》が折角アンタ以外のものに興味を持ったことは良い傾向だと思って、ギリギリまでやらせてやろうとも思っただけさ。ただの気まぐれだよ」
「……ふむふむなるほど、それで学園長の本音は?」
「…………まあ、アレだ。アタシは《文》を創った張本人だからね。言うなれば年取ったあの子の親なのさ」
そう渋い顔で言いながら、何やら気恥ずかしさを隠すかのようにノートPCのキーボードを力強くカタカタと叩く学園長。そして———
「……親はね、子の尻拭いをするものさ。あの子———文の責任はアタシの責任。ってことはこの問題はアタシに責任があるのさね」
「…………あ」
「そもそも、今回演劇部の連中に無理言って悪いことしちまったのはわかっているからね。アタシを悪者扱いして気が済むなら、それで良いのさ」
……なるほど。何だか妙なくらいあの脚本に拘るのも、わざわざアキさんたちを挑発するように説明したのも……文さんを庇ってたってっことですか。口では“じゃじゃ馬娘”とか“イカレシステム”とか言っているわりに、学園長って文さんの事を何だかんだで可愛がっているんですね。普段の言動がちょっぴりアレな分、少しホッとしました。
「……学園長はホントに不器用ですねー♪文さんが怒られないように自分が罪を被るんですか?」
「はっ!やかましいよ。どうせ他の連中には文に関する話を出来るわけないだろうが。だから文にはその分、アタシがこれでもかって言うくらい説教させてやるからね……てか、アイツらにこの事絶対に喋んじゃないよ月野。調子に乗るだろうからね」
そう言って作業に戻る学園長。……ふふっ♪本当に不器用ですよね。“アタシがこれでもかって言うくらい説教する”って事は、“アンタは文に説教しなくていい”って事の裏返しじゃないですか。本当に……不器用な方です。
「ほら、何をニヤニヤ笑っているのかしらんが、さっさと手伝いな。時間が無いんだろうが」
「ふふっ♪はいです学園長。…………(ボソッ)文さんを庇ってくださって、ありがとうございます」
「…………ふん」
———三十分後———
「何とか、やってみたぞい……」
「「「「「「ほ、本当に三十分で何とかなった……!?」」」」」」
「ほー?やはり流石と言うべきかねぇ?」
若干疲れた顔をしつつも、ヒデさんは宣言通り三十分で脚本を書き直してくれました。先程のちょっとごちゃごちゃし過ぎててどう言う内容かすらわからなかった物語が———正式な脚本として生まれ変わっています。
「とりあえず、元の脚本をワシの解釈で書き代えさせて貰った。ついでにワシの独断でお主らの配役・効果・背景その他を決めておる。今からお主らにそれぞれの台本を渡す。誰がどの配役かはそれに載っておるからの」
そう言いつつ、いつの間に用意していたのか各自の台本を全員に配るヒデさん。三十分でここまで出来るとは、ヒデさんってホント凄いですね……
「これから一時間はこの物語の流れと台詞の確認じゃ。いくら台本を使ってよい劇とは言え、多少は台詞を覚えてもらわぬと困るからの。その後一度召喚獣を出して演技を実際にやりつつ動きや効果の調整を一時間で行い、最後に仕上げを一時間で終わらせるからの」
かなり厳しい状況なのに……いえ、この厳しい状況だからこそですか?ホントにヒデさん輝いています。優姉さんがこの場にいたら、きっと双子の弟の成長を喜んでくれるでしょうね。
そんなヒデさんに感心しつつ台本を開きます。さてさて、自分はどの役何でしょうかね?カッコイイ役やれたらいいなと淡い期待を抱きつつ台本に目を落とすと…………あれ?
———キャスト———
王子 :木下秀吉
ライオン:坂本雄二
カカシ :吉井明久
ロボット:ムッツリーニ(土屋康太)
眠り姫 :月野造
良き魔法使い+ナレーション(前半部):姫路瑞希
お城の女騎士+ナレーション(後半部):島田美波
…………姫?自分の役は……眠り……姫?えっと、これツッコんでいいのでしょうか?
「……え、えっとヒデさん?お聞きしたいことがあるのですが」
「……造が言いたい事は物凄くわかる。“何で自分が姫なのか?”じゃろう?ワシも悪いと思って配役を変えたかったのじゃが———学園長曰く、それだけは譲れんらしくての」
「学園長が……?」
気になってちらっと学園長の方を見ると、無言で顎をしゃくって文さんの方を指します。指を指された文さんは……何かを期待したような目で自分を見つめています。そう、具体的には———
《ツクルの お姫様 見てみたい!》
と、言わんばかりの目でね……な、なるほど?文さんの希望で……そうなったんです、か……何でまた自分、姫の役なんかを……
「まあ、じゃがワシはこれで良いと思っておるぞい」
「……へ?な、何でですかヒデさんっ!?」
そんなっ!?ま、まさかヒデさんまで自分の事を女の子か何かと……!?
「これこれ、勘違いするでない。造は明久たちと違って召喚獣として出なくてはならぬじゃろうが」
「は、はい。そうなりますね」
「そうなると台本無しで演技せねばならぬじゃろうて。その点その役なら動きや台詞も少なくて良いし、出てくるのは後半じゃ。その間に台詞を覚えられるじゃろう?」
「あ、あぁ……なるほど、そう言う事ですか」
そう、皆さんと違い自分だけは自身が召喚獣に成るせいで台本を本番では読めない、ある意味普通の(?)お芝居をしなければなりません。そうか、ヒデさんちゃんと自分の事を気にかけてくれてたんですね。カッコイイ役を貰えなかったのはちょっぴり残念ですが正直助かりますよ。
「皆もある程度、それぞれ合った役柄をワシの一存で選ばせて貰ったのじゃが……他に異論はないかの?今の内になるべく意見を聞かせて欲しいのじゃが」
「「「「「「だ、大丈夫っ(ですよっ)!(……と言うか、これ以上反論する余地も付け足す事も何も無いし)」」」」」」
……本当に、よくもまあこんな短時間で脚本を書き直し、配役を決めて、演出を仕上げられましたねよね……ヒデさんの頼もしすぎる姿に、自分も皆さんも思わず恐縮してしまいます。
その皆さんの反応にヒデさんは頷いて、大きく息を吸い込み———
「よしっ!動きや演技でわからぬ事はワシが答える。遠慮せずに言うて欲しい。……本来部員でないお主らにここまでやらせるのは忍びないが———ワシにどうか力を貸してくれっ!では、お主ら!頼んだぞい!」
「「「「「「おうよ(です)っ!」」」」」」
ヒデさんの鼓舞で全員力が入ります。まずはそれぞれがどう演技すればよいかを考えながら台本を読み始めました。さてさて、演劇開始まで三時間を切っていますが、一体どんな劇になるのやら?期待半分、不安半分ですかね。
「……ま、頑張りな」
《文 劇見れて 嬉しい♪ ミンナ 頑張って ネー!》
……ある意味原因の二人は、楽しそうで何よりですが……
- Re: バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 ( No.152 )
- 日時: 2015/10/11 18:37
- 名前: ケー (ID: Thm8JZxN)
忙しくて書けないなら私がかわりに書いていいですよ。ハーメルンで書くつもりならやっときましょうか
- Re: バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 ( No.153 )
- 日時: 2015/10/11 21:10
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
>ケーさん
お気遣いありがとうございます。ですがすみませんお手を煩わせるのも申し訳ありませんし、実を言うと誤字脱字多々あり展開的にも書き直したい場所もまだまだあるので書くときは自分が書かせていただきます。
多分書く時は報告しますので気長に待ってくれると幸いです。わざわざありがとうございます。ではでは。
- 番外編:ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜その④ ( No.154 )
- 日時: 2015/10/11 21:30
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
文と学園長の(主に文の行き当たりばったりで破天荒な)行動が原因で、急遽葉月の通う小学校で召喚獣を使った人形劇を行う事となった造たちFクラス仲良しメンバー。ステージで他の演劇や芸人のちょっとしたコントが行われる間も、秀吉が中心となっての演劇の稽古及びに調整が行われていた。
そして———あっという間に三時間が経ち……
『それでは、只今より睦月小学校創立祭:午後の部を始めたいと思います』
お昼を過ぎて舞台裏で忙しさがピークに達している中、午後の部のスタートを告げる司会の声が観客たちのいる体育館に、そしてギリギリまで稽古をしていた造たちの元に響き渡る。
『さてさて、午後の最初の出し物は……皆さんも良くご存じの、あの“試験召喚システム”で有名な文月学園からお兄さんお姉さんたちがみんなの為に来てくれました!』
午後一番の出し物だと言うのに、体育館はすでに人という人で溢れ返る事に。今話題の試験校“文月学園”の生徒による演劇だけあって、睦月小学校の生徒たちだけではなく保護者・学校関係者が午後からのひと時を今か今かと楽しみに待っている。
『そしてドッキリサプライズ!本来プログラムになかったのですが、何と今回はその試験召喚システムにより生みだされる試験召喚獣を使った人形劇を披露してくれるそうです。話題の召喚獣たちが動きまわる姿をどうかみんなで楽しんでいってね♪』
『しょーかんじゅう?ねえ、それってなーに?』
『えっと、ホラ。あれだよ!よく葉月ちゃんが話してくれる……ね!』
『そうです!葉月のお姉ちゃんとバカなお兄ちゃんたちが通っている学校のマスコットさんです!』
『へぇ〜召喚獣を使った人形劇ねぇ、それは結構面白そうね。噂には聞くけど試験召喚獣を見るのは初めてだし』
『そうですね。噂は聞きますが、実際は中々見る機会はないですからね』
『これはまた、粋なサプライズですね。流石話題に事欠かない文月学園と言ったところでしょうか?』
さり気なくプログラム変更を伝える司会の言葉に賑わう観客席。この観客の中に、まさか本来は普通に演劇を行うはずだったとか、今から始まるのは実は三時間半前に急遽やる事になったぶっつけ本番な演劇であると言う事を知る人はいないだろう。
「やれやれ……実際はサプライズでも何でもない、ただのババァの横暴のせいなんだけどね。僕らの方がサプライズだよ……」
「だよな。ったく……後であのババァに払うもん払って貰わにゃワリに合わんぞ」
《ま、まあまあ。その辺は終わってからにしましょう》
そう言って愚痴を言う明久たちとそれを宥める召喚獣化した造。まあ、明久の言う通り真の意味でビックリドッキリなサプライズは演技する彼ら本人であるため、愚痴がついつい出てしまうのは仕方のない事である。
「もうあっという間に出番じゃな……ワシは舞台にも緊張にもある程度慣れておるつもりじゃったが、今回のような緊張感はまた新鮮じゃな……」
と、先ほどまで必死になって演技指導していた秀吉がポツリと呟く。
「やはりワシの本音としては、練習時間がもっと欲しかったのう……危惧しておった通り、やはりほとんどぶっつけ本番になってしもうたしの。と言っても今更じゃな」
「そうね……でもこの三時間で少しはマシになったんじゃないかしら木下」
「ですね、限られた時間の中で私たちは私たちのやれることはやったわけですし」
「…………後やれる事と言えば、本番で自分の演技をしっかりするだけ」
多少のぎこちなさ・経験不足、そして本来の演劇部たちの演技に比べてのレベルの差はあれど、この三時間で全員秀吉を中心にかなり頑張って何とか見せられるレベルに至ったとのこと。秀吉の指導の巧さと、それぞれの頑張りの賜物だろう。
「まあ、お主らはこの短時間で良く頑張ってくれたからの。ワシはこれ以上の贅沢を言う資格はないじゃろう———さて最後に一つだけ言わせて貰いたい」
- 番外編:ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜その④ ( No.155 )
- 日時: 2015/10/11 22:16
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
そう言って全員を集める秀吉。全員の視線が秀吉に集まると、秀吉はゆっくりと見まわしてこう告げる。
「確かにお主らは半強制的にこの演劇に参加することとなったわけじゃが……これだけは心に留めておいて欲しい。どうか、失敗を恐れずに演劇を楽しんでくれ」
「「「「「「演劇を、楽しむ……?」」」」」」
「うむ。この状況で楽しめだの言われてもピンとこんかもしれぬが、演劇は本当に素晴らしいものなのじゃよ。見ている客にとっても、そして———演劇をする者にとっても楽しいものなのじゃ。だからどうか存分に楽しんでくれ。どれだけ間違えても良い。その時はワシがちゃんとフォローする。じゃから……ワシと共に演劇を楽しんてくれ。ワシからは以上じゃっ!」
秀吉の言葉に、メンバー全員は頷いて笑い合う。それと同時にステージに上がっていた司会の説明が終わり、いよいよ全員の出番が来る事に。
「さて、アンタたち。準備は良いかねぇ?良いならとっとと行っちまいな」
《ミンナ 頑張れ ガンバレ〜♪》
ついでに舞台をセッティングしていた元凶の学園長と文がステージ裏に来て能天気に激励(?)する。これにはメンバー全員苦笑い。
「では……行くかの!」
「はいっ!皆さん、ヒデさんの言う通り楽しみましょ♪」
そして———
『それではお待たせいたしました!只今より、文月学園生徒有志による創作人形劇“バカテス童話”を上映致します。どうかごゆっくりお楽しみくださいませ!』
———舞台:お城———
観客の拍手が鳴り終わると同時に、舞台にライトが当てられると学園長と文が創った立体映像が浮かび上がる。背景はどこか中世をイメージしたような城が浮かび上がり、あまりのリアルさと迫力に小学生たちだけでなくその保護者たちの『おぉ……』と言うどよめきが聞こえる。
そこへ一体の召喚獣、そう主役の秀吉の召喚獣がトコトコ舞台の中央まで歩く。ちなみにいつもの秀吉の召喚獣の装備の袴と薙刀ではなく、文の設定どおり王女———コホン、王子様の恰好をしている。その王子が中央まで辿り着くと、瑞希のタイトルコールで劇のスタートだ。
【バカテス童話〜王子さまと三バカトリオに告ぐ!眠れる姫の残したダイイングメッセージ“犯人はきび団子”の意味とは!?鬼ヶ島に眠る財宝の謎を追え!〜】
……序盤から何か変だが、とりあえず召喚獣版人形劇の始まり始まり。
「「「「《……って!?何このタイトル!?秀吉(木下)(ヒデさん)!?》」」」」
「……言っておくが、ワシが考えたワケではないからの。学園長がまた……」
勿論、このタイトルにしたのは文の強い要望だそうだ。流石造を元に誕生しただけあって、何とも残念なネーミングセンスである。そうそうちなみに……
『あはは!変なの〜!』
『そんな童話聞いたこともないよ〜』
『えー?いいじゃん!普通のより面白そうだし!』
……意外にも客受けは良いようだ。そんな造や明久たちの反応と、観客の反応に若干苦笑しつつも、瑞希は早速ナレーションに戻る事に。
【むかーし、むかしのお話です。とある国のとあるお城に、それはそれは可愛らしい———“王子さま”が住んでいました】
「睦月小学校のみんな、こんにちは!僕はこの国の王子さまです。よろしくね♪」
『『『かわいい〜♪』』』
『よろしく〜王子さま!』
『王子さまなのにかわいいね!』
『ホントに動いてる!すご〜い!』
瑞希のナレーションに合わせて、秀吉は裏で声を当てつつ、召喚獣に飛んで跳ねさせたり手を振らせたりする。そのように召喚獣が動き喋る事に小学生たちはキャッキャッとはしゃいでいる。
【この王子さまは国のどの女の人よりも可愛く、何処へ行っても“可愛い可愛い”と言われ国中から愛されていました。道を歩けば“今日も可愛いですね、王子さま”と声をかけられ、パーティに参加すれば男の人に“躍って頂けませんか王子さま?”と誘われます】
……どう考えても中の人(秀吉)の事のを言っているように聞こえるのは気のせいだろうか?
- 番外編:ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜その④ ( No.156 )
- 日時: 2015/10/11 21:24
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
【ですがいつでもどこでもどこの誰からも“可愛い”と言われる王子様は、とうとう怒ってしまいます】
「うぅ……みんなみんな、僕を可愛いって言うなんてヒドイよ!僕は立派な王子さまなのに!最近はお父さまもお母さまも僕に女ものの服を着せようとするし、“王女さまになってもらうのもいいな”って言ってたし!」
そう言ってプンプンと腰に手を当てて怒っている演技をする秀吉の召喚獣。妙に力が入っている演技は、中の人(秀吉)の心の声に聞こえるのは気のせいではない気がする。
【そう、何と王さまと王妃さまにまで“可愛い王女”と言われるようになった王子さま。このままではいけないと思った王子さまは、お城で一番強くてカッコいい女騎士のところに行って相談をすることにしました】
瑞希がそう言うと同時に舞台は一旦暗転して、立体映像で映していた城が消え今度は立派な部屋が背景として映される。その背景と共に美波の召喚獣、女騎士が現れる事に。
『あ、あれ……?もしかして……お姉ちゃんの召喚獣?』
『ん?どうしたの葉月ちゃん?』
『い、いえ!何でもないです!』
美波の召喚獣は女騎士と言う設定だが、元々彼女の召喚獣は軍服にサーベルと言う設定である為ほとんど外見は変わっていないようだ。と、美波の召喚獣が本を読んでいる(ように演技をしている)と、王子さまを扮する秀吉の召喚獣が部屋に駆けこんでくる。
「女騎士、女騎士!」
「あら?どうしましたか王女———コホン、王子さま?」
「女騎士!?ねぇキミ今僕の事を“王女さま”って言いかけなかった!?」
「おほほ♪気のせいですよ、王子さま♪」
ちなみにこれは余談だが、この時美波は素で秀吉の事を王女様と呼んでしまっていたらしい。呼ばれた秀吉は『アドリブとは、島田も中々やるのう』と考えていたそうだが。知らぬが仏というものだろう。
「ま、まあいいや!それより僕の悩みを聞いてくれよ女騎士!」
「おや?ウチ———じゃなくて、私に何の用でしょうか王子さま」
「それがね、みんな僕のことを“可愛い”だの“王女さま”だの言いたい放題なんだよ。どうすればいいと思う?どうやったら君みたいにカッコよくなれるかな?」
「えっ?えーっと……」
【そう言って女騎士に尋ねる王子さま。ですが、誰がどう見ても可愛い王子さまをカッコよくする方法なんて女騎士にはわかりません。困った女騎士はしばらくの間考えて、こう言います】
「そうですね……私は王子さまをカッコよくする方法はわからないのですが、私の故郷に“鬼ヶ島”と言うとても強くて恐ろしい鬼が住んでいる島があるんです」
「オニガシマ?強くて恐ろしいオニ?」
女騎士(美波)の言葉にポカンとする王子さま(秀吉)。ちなみに、急に桃太郎の話になったことに観客席にいる子供たちや保護者たちも同じようにポカンとした顔をする。
「おい……今更だがこれ、客はこのトンデモ話の流れについていけんのか?」
「そだね……改めて思ったんだけど、この脚本ってホントに色んな物語がミックスされすぎてるよね?」
《ま、まあその辺は、ヒデさんが巧い具合に脚本を書き換えているので大丈夫なのではないでしょうか?ホラ、現にお客さんも反応は上々ですし》
『ねーねー?鬼ヶ島はももたろうのお話じゃないの?』
『別にいーじゃん!普通のももたろうより、こっちの方が面白そうだし!』
『そうだね!……ってあれ?葉月ちゃんどうしたの?』
『うーん?……あの声って、やっぱりお姉ちゃんですよね……?』
『葉月ちゃん?さっきからどうしたのさ?』
『え?……あ、何でもないですよ』
造の言う通り観客席では“普通”の劇ではない事にちょっと戸惑いつつも、これからどうなるのかワクワクしている子供たちの声が聞こえてくる。ちなみに島田さん家の葉月ちゃんは、劇の内容よりも自分の姉がどう言うわけかこの劇に参加している事に戸惑っているようだった。
「鬼とは強くて悪い妖怪の事です。その鬼はとてもとても欲張りで、色んなものを奪い取ってしまうそうなのですが……その鬼が奪った物の中になら、もしかしたら王子さまの望むものがあるかもしれませんね」
「おお!それは良い事を聞いたよ!ありがとう、女騎士!」
【それを聞いた王子さまは、女騎士にお礼を言うと部屋から飛び出して早速鬼ヶ島へ行く準備を始めます】
「……と言ったものの、“そこ”に王子さまの望むものがあるワケでは無いんですがね。王子さまは果たして“それ”に気が付いてくれるのかしら?」
と、美波が操る召喚獣が溜息と吐きつつ、そんな意味深な台詞を喋ると同時に舞台は暗転する。さてさて、とりあえず序章は中々順調な立ち上がりを見せるこの召喚獣の人形劇。このまま無事に進むのやら?それとも……?
- 番外編:ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜その⑤ ( No.157 )
- 日時: 2015/10/12 21:04
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
観客の反応も立ち上がりも上々の召喚獣版人形劇。さてさて場面は変わり、再び背景に城が浮かび上がる。
【お城の女騎士に、カッコよくなれる方法が鬼ヶ島にあるかもしれないと聞いた可愛い王子さま。王子さまは王さまや王妃さまに反対される前に一人で鬼ヶ島へ向かう事にしました】
瑞希のナレーションと共に、秀吉と美波の召喚獣の扮する王子と女騎士が再び現れる。
「よし!それじゃあ、後は色々と頼んだよ女騎士!行ってくるね」
「ふむそれは構わないのですが……本当にお一人で向かわれるのですか?王女———じゃなかった、王子さま」
「ああ、勿論さ!それじゃあ女騎士は僕が戻るまで、お父さまとお母さまを上手く誤魔化してね!」
そんなことを言う王女———ではなく王子を前に、女騎士は溜息を吐き……
「はいはい。わかりましたよ王子さま。ですが王子さま、どうか気を付けてください。何でも鬼ヶ島へ行く途中には“一本足の妖怪”と“冷酷な機械人形”と“暴れる百獣の王”が行く手を阻むと聞きます。危なくなったらすぐに帰ってくるのですよ?」
「ふむふむ。“一本足の妖怪”と“冷酷な機械人形”と“暴れる百獣の王”だね?ありがとう女騎士、気をつけるね!それじゃあ、行ってきます!」
【そう言って王子さまは一人、鬼ヶ島があるとされる女騎士の故郷へと向かう事にしました】
瑞希がナレーションを終えると同時に、美波の召喚獣である女騎士が退場し背景が城からまた別の背景へと変わっていく。絶えず動きまわる召喚獣やコロコロと変わる背景に子供たちや保護者、観客一同は知らず知らずにこのハチャメチャなお話を堪能しているようである。
———舞台裏———
———そうそう、ちなみに一芝居終えた美波は舞台裏で明久たちに誉められていた。
「美波お疲れ。物凄く良い感じだったよ!」
「そ、そうかしら?……あれでホントに良かった?木下よりも断然台詞とか動きとかも少ないハズなのに、ウチ結構疲れちゃったわ。こんなにも緊張するものなのね」
と、てのひらで顔を仰ぎながらそんなことを言う美波。いくら人形劇とはいえ、流石にぶっつけ本番の劇を大勢の観客に魅せなければならなかった分は緊張したようだ。……まあとは言え、
「いやいや、僕はかなり良かったと思うよ。ね、皆!」
《そうですね。とても良い演技でした、お客さんの反応も良いみたいですよ》
「だな。しっかり演技してたし、秀吉もかなり演技しやすいみたいだったぞ」
「…………お疲れ」
「そう?まあ、楽しかったからウチも良いんだけどね。あ、そろそろアキたちの出番でしょ?ふふっ、アンタらも頑張ってね!」
「「「《おうっ!》」」」
こんな具合に多少の緊張はあるものの、何だかんだでこの状況を楽しんでいるFクラス仲良しメンバー。こういう不測の事態にも割とスムーズに対処できるこのメンバーは、案外大物なのかもしれない。……まあ、日々非現実的な毎日を送っている結果がこれだろうが。
———舞台:トウモロコシ畑———
さて、再び演劇に戻ることにしよう。舞台は夜のトウモロコシ畑。鬼ヶ島へ向かう道中そのひと気のないトウモロコシ畑を、秀吉が演じる王子は一人トコトコ進んでいく。
【と、ずっと歩きっぱなしで疲れた王子さまは道の端の柵にちょこんと座り休憩する事にしました。月明かりに照らされている王子さまとその周りは、一面のトウモロコシ畑と一本足で立っている奇妙な人形のようなものが立っているだけでした】
瑞希がそうナレーションし終わると、秀吉の召喚獣の前に今度は明久の操る召喚獣が現れる。と、同時に劇を見ていたとある一人の小学生が声を上げる。
『ば、バカなお兄ちゃんの召喚獣さんですっ!』
『『『へ?……バカなお兄ちゃん?』』』
「…………はい?」
『はい♪そうですっ!葉月のお婿さんですっ!バカなお兄ちゃーん♪』
『『『お婿さん……?(小学生の婿……ロリコン……っ!犯罪!?)』』』
「え……?ちょ、ちょっと?」
『『(ムッ!)……アキ(明久君)はウチら(私たちの)嫁よ(ですっ)!』』
『『『よ、嫁……!?(男なのに……嫁っ!?……変態!?)』』』
そのたった一言から、一人の生徒の社会的立場が一気に危ういものとなったことは、おそらく容易にわかることであろう。
「って!?ちょっと待った!?僕はまだ誰かの婿にもなっていないし、嫁とかでもないからね!?てか、今の発言って一体誰が!?違うからね!?」
「これ明久!気持ちはわからんでもないが、ちゃんと演技せい!」
「ぐっ……で、でもこのままじゃ僕の社会的立場がヤバイことになるような気がするんだけど!?」
「元々お前にんなもんねーだろ。いいからさっさと演技しろや明久」
《そ、それは言い過ぎかもしれませんが……とにかく今は気にせず演技を続けましょうアキさん》
「…………客を待たせるな」
「その通り、本番中の観客のヤジ(?)をいちいち気にしてるようでは先に進めぬ。ホレ、今は演技じゃ演技」
「うぅ……ゴメン……でも納得いかない……あと雄二は後でぶちのめす」
その小学生の発言とナレーター&舞台裏の女騎士の発言に少々(?)一部の出演者と観客席に動揺が走ったが、とりあえず明久は気を取り直して演技を続ける事に。
- 番外編:ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜その⑤ ( No.158 )
- 日時: 2015/10/12 21:07
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
「(コホン)お、お嬢さんこんにちは。キミはこんな所で何をしているんだい?」
と、明久の召喚獣が王子である秀吉の召喚獣に話しかける。急に話しかけられた王子は驚きつつも、持っていた剣をサッと抜き構える。
「何者だっ!その面妖な成り形……さては鬼ヶ島に立ち塞がると言われるものの一つ、“一本足の妖怪”だな?だったら成敗してやるっ!と言うか、誰がお嬢さんだ!?」
「へ?立ち塞がる?それに一本足の妖怪って……ぼ、ボクの事かい?お嬢さん、別にボクはそんなんじゃないよ」
「だから誰がお嬢さんだっ!いいから覚悟しろ妖怪めっ!」
「いや、ボクの話を聞いてよお嬢さんっ!」
【このようにまるで噛み合わずに話が一向に進まない王子さまと奇妙な人形の二人。しばらくこんな感じでお互い不毛な言い争いを続けます。そして三十分後———】
「えーっと、それじゃあキミはお城の王子さまって事なんだね?全然そうは見えないけど」
「そ、そうなんだよ……やっとわかってくれた?ところでそう言う君は何者なんだい?」
「ボクかい?そりゃあボクは見ての通りのただのカカシさ。ただしちょっとお喋りが出来るカカシだけどね」
【ようやくお互いに誤解(?)が解けて、自己紹介をする一人の王子さまと一体のカカシ。そう、奇妙な人形の正体はカラスたちからこのトウモロコシ畑を守るお喋りなカカシだったのです】
今回の明久の役は、王子について行く三人のお供の内の一人(?)であるカカシの役だそうだ。恰好は藁のとんがり帽子にボロの服。そして背中に竿が挿してある典型的なカカシの格好である。
「それにしてもカカシ君?君はどうして喋られるんだい?」
「それはね王女———ゴホン、王子さま。ボクは本当ならある人形技師に意思のある人形として創られたんだけど、失敗しちゃったみたいでね。意思はあるけど、見ての通り藁でできたカカシになったんだ」
【そう言って哀しそうに王子さまに話をするカカシ。このカカシはそのせいでこんな誰も来ないようなトウモロコシ畑に一人でポツンと立っている事しか出来ないと言います】
「頭の中も藁でできているから、脳みそが無くて皆からバカにされるんだ。最近じゃカラスにまでバカにされる始末さ。ボクにも王子さまみたいに脳みそがあればなぁ……」
「それはそれは気の毒だね……」
……どうでもいいが、劇の中でもバカな配役にされる明久も気の毒と言えば気の毒かもしれない。ちなみにこの配役は学園長が“吉井にはこの役をやらせな”と強い要望があった為だとか。
「くくくっ!にしても明久にピッタリの役だよな。“バカで脳無し”のカカシってのはな。この前のオカルト召喚獣の時と言い、“頭が無い”ってシステムにまでバカにされるなんて流石はキング・オブ・バカの明久だ!」
《ゆ、ゆーさん、それも言い過ぎでは……?それとアキさんも落ち着いて。ね?》
「くぅ……こんのヤロ、マジで後で覚えてろよ雄二ィ……」
舞台裏では本番中にも関わらず、全力で明久を弄る雄二と、その雄二を殴りたがる明久と、その明久を一生懸命宥める造の姿があったそうだ。
【王子さまはこのカカシがとてもかわいそうに思い、自分が旅をしているワケをカカシに話す事にします】
「ねえ、カカシ君。僕はこれから鬼ヶ島に行くつもりなんだ。そこに行けばカッコよくなれる方法があるかもしれないって言われててね。そこで君も一緒に来ないかい?そこに住む鬼は何でも持っているらしいんだけど、もしかしたら君が欲しいものもそこにあるかもしれないよ」
「おお!それは本当かい?脳みそを手に入れる方法があるかもしれないね!だったらボクも王子さまと一緒に行こうかな。ああ、でもその前に王子さま。一つお願いがあるんだ」
そう苦笑いをする明久の召喚獣であるカカシ。そんな様子に秀吉の召喚獣の王子は不思議そうに首を傾げる。
「お願いだって?一体何かな、カカシ君?」
「決まっているだろう、背中に挿してある竿を抜いてくれないかな?このままじゃ動けないんだよ」
【こうして王子さまは動けなかったトウモロコシ畑のカカシを助け、今度は二人で鬼ヶ島へ向かう事になりました】
〜舞台暗転:次の場面へ〜
- 番外編:ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜その⑤ ( No.159 )
- 日時: 2015/10/12 21:17
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
———舞台:森———
【トウモロコシ畑を抜けると、今度は森が見えてきました。王子さまとカカシは夜も遅いので今日はどこかで休む事にしたようです】
瑞希のナレーションと共に、今度はトウモロコシ畑から森へと背景が変わっていく。それに合わせてBGMや効果音も変わるので、まるで映画を見ているかの如く観客は見入っているようだ。
「今日は疲れたし、休みことにしようかカカシ君」
「そうだね王子さま。と言っても、身体が藁でできているカカシのボクは休む必要はないんだけどね。疲れることは無いんだよ」
「へぇ?カカシって便利なんだね」
「まあ、その分脳みそは無いけどね」
【そんなことを言い合う二人の耳に、急に森の中から大きな呻き声のような音が聞こえてきます。驚いた二人は慌ててその音が聞こえる方向を向くと、そこには一体の鉄の機械がジィっと王子さまとカカシを見ているではありませんか!】
キィイ……と何かが軋むような音と共に、今度は康太の召喚獣の登場である。王子とカカシは驚きつつも王子は剣を、カカシは自分の背中に挿してあった竿を構える。
「…………おい、そこのお譲さんとカカシ」
「何者だっ!その鉄の身体……さては鬼ヶ島に立ち塞がると言われるものの一つ、“冷酷な機械人形”だな?と言うか、だから誰がお嬢さんだっ!?」
「あ、やっぱりキミも王子さまってお嬢さんに見えるよね」
「…………そんな事よりオレの話を聞け」
「そんな事とはどういう意味だ!いいかい、僕はだね———」
【またまた始まったこの言い争い。やっぱりどう見ても可愛らしい女の子にしか見えない王子さまは、自分の事を王子さまと説明するのも一苦労のようです】
『王子さまカワイイもんね〜』
『もう王子さまじゃなくて王女さまになっちゃえばいいんじゃないの?』
『えー?それじゃ、王子さまかわいそうじゃん』
物語だけでなく、観客の小学生たちにまでそんな事を言われる秀吉———もとい王子さま。だんだん王子が王女として見られてきている気がするのは気のせいではないだろう。
【さて、それでも何とか説明できた王子さまとカカシの二人は、今度は機械人形に何をしているのか尋ねる事に】
「それで?君はそんなところで一体何をしているんだい?」
「と言うか、キミって何者なんだい?」
「…………オレか?オレは見ての通りただのロボットだ。そしてこれまた見ての通り動けないんだ」
そんなことを言う康太の召喚獣は、見た目通り鉄の身体を持つ機械のロボット。頭にアンテナが付いており、電波を受信しそうなところ以外はそのまま何の特徴もないロボットそのもののようだ。ちなみにアンテナは地デジ非対応なので今はもう映像が映らないとかなんとか。
「動けない?そりゃまたどうしてだい?」
「…………ゼンマイが切れて、ずっと動けない。悪いが巻いてくれないか。背中にネジがあるはずだ」
「どれどれ……あ、ホントだね。それじゃボクらが巻き直してあげるよ」
「…………頼む」
【そう言ってカカシと王子さまがロボットの背中のネジを巻き直してあげる事に。一回、二回、三回としっかり巻き直してあげると———】
ウイィイイイイインと音を立てて動き出す康太の召喚獣。それにしても、どうでもいいが今時ゼンマイ式のロボットとは……これ如何に?
「…………助かった。あのままじゃ、動けずに朽ち果ててしまうところだった。お礼がしたい」
頭を下げて礼を言う康太の召喚獣もといロボット。余談ではあるが元々康太が無口で淡々と喋るところがあり雰囲気も十分出ている為、この役は彼にかなり合っているようだ。
「別にいいよ。気にしないでくれ」
「そうだね。困った時はお互い様だよ!」
「…………そうか?ところで二人はこんな所に?」
【そう尋ねるロボットに、王子さまとカカシの二人は顔を見合わせてお互いの目的を話します】
「…………カッコよくなる方法と、脳みそを捜しにか。だったらオレも手伝う」
「え?いいのかいロボット君?鬼と戦わなきゃいけないかもしれないんだよ?」
「…………助けてもらったお礼。それに———」
「ん?それに何さロボット?」
「…………オレも欲しいものがある。オレは心が欲しい」
【何でもこのロボットの話では、機械であるため心が無いと言います。元はカメラ屋のロボットだったのですが自重する心が無い為、カメラ屋で働いていた時に色々な危ない写真を撮りまくってしまい店長やお客さんに怒られてこの森に捨てられたとの事です】
「「《これ……ムッツリーニ(こーさん)の事じゃ……》」」
「…………っ!?(ブンブンブン)」
「いや、今更隠さなくても。まあ、確かにムッツリーニは自重すべきかもしれないけどさ」
「って言ってもムッツリーニだぜ?自重なんて言葉は辞書にねえだろうな」
《とりあえず前々から言っていますが自分らをこっそり写真に撮るのは止めましょうね、こーさん。あまつさえそれを許可を取らずに商品にしないでくださいね》
「…………なんのことかさっぱり」
「「《…………へー(棒)》」」
「…………(プイッ)」
瑞希のナレーションが流れる間、舞台裏ではそんな会話が繰り広げられていたとかいなかったとか。
「(ゴホン)それなら一緒に行こうじゃないかロボット。いいだろう王子さま?」
「そうだね。これからよろしくロボット君」
「…………よろしく。それじゃあ記念に二人の写真を撮らせてもらう」
「……一応聞くけど、それは何に使うのロボット君?」
「…………高値で売りさばく」
「「自重しろっ!」」
【そんなわけで、王子さまの鬼ヶ島までの旅にまた新しい仲間が加わりました。王子さまにカカシにロボットと、何だかとってもおかしな一行には果たしてどんな困難が待っているのでしょうか?】
そのナレーションが終わると、舞台はまたもや暗転する。さてさて、色々な意味で先が見えないのは出演している造や明久たちも同じ。演劇自体もこの後の展開も文と秀吉が創作したこの物語も———これから一体何処へ向かうのやら?
- Re: バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 ( No.160 )
- 日時: 2015/10/12 21:44
- 名前: モンブラン博士 (ID: 7KvZCID9)
バカな自分は召喚獣一学期編からゆっくり読ませていただいています。
原作そのままとしか思えないほど卓越した再現度に加えオリキャラの造くんも魅力的で本当に素晴らしいです。今年の冬にバカテスを刊行している出版社が小説投稿サイトを立ち上げるそうで、そこではバカテスの二次創作もOKだそうです。これほど素晴らしい作品をもっと広めてみるのもいいかもしれません。毎話に糖分さんの深いバカテス愛を感じることができる、最高の作品だと思います!
- Re: バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 ( No.161 )
- 日時: 2015/10/14 12:00
- 名前: ケー (ID: Thm8JZxN)
上の人が書いてる通りKADOKAWAとはてなが冬にサイト立ち上げるそうなのでそこならもっといいと思います。検討しておいてください。
- Re: バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 ( No.162 )
- 日時: 2015/10/14 22:51
- 名前: ユウ (ID: iQk5t9Pn)
お久です糖分さん!!
いや〜感想を送るのが遅れてしまって申し訳ありませんでした。
此処最近、残業(というよりも徹夜?)が続いていましていや〜面目ない!
あ、そのことでなんですけど実は最近職場で新しい友達が出来たんですよ!
自分が疲れているときは励ましてくれて、この間なんか僕に元気を出すよう応援してくれたんですよ。
いや〜本当に良い友達だな〜…『眠○打破』わ!!(疲れがピークで狂い始めている)
十六夜・飛鳥・耀「「「……ガンバレ」」」
アベル「うん、本当、ユウの世界の『眠眠○破』は素晴らしい栄養ドリンクだね。僕も10ケース程買いたいぐらいだよ」(元いた世界で内政や外交に追われて1ヶ月徹夜した経験があるアベル)
エル「あはは…」
ハハ、ソレジャアサッソクカンソウニウツロウジャナイカ!!
十六夜「その前にお前は少し仮眠しrrrrrrrrrrrrrrrrrr」
ーーーーーー役3時間経過ーーーーーー(ガチで寝てました、ハイ)
はい、面目ありません。少し…いやマジで疲れが溜まっていたのでこの感想も20時くらいから書いていたのに、気がついたらこんな時間になっていました。やっぱり無理をすべきではありませんね。
さて、疲れも少しは取れましたからここからは真面目に感想に移ろうと思います!!
秀吉を除く演劇部のメンバー達が強制離脱することによって始まったバカテス童話!!(改稿済み)
明久の『へのものへ』みたいな顔の案山子(の召喚獣、ってかこれ明久読めるかな?)とムッツリーニのポンコツロボット(の召喚獣)も良かったですがやっぱり一番は皇女…ゲフンゲフン、王子役(の召喚獣)が輝いていた秀吉!!
彼には是非、想い人(の召喚獣)を救うことが出来るのか←ネタ
いやー、それにしても…明久の女難の相は今日も大変そうですね、葉月ちゃんの発言と『婿』二人の発言で、社会的に抹殺されそうになってますからね。
ほら、明久このハンカチ『ハバネロの原液付き』でその目から流れる涙を拭えよ。…な(ゲスい笑み)
さて、以上で感想も終わりですが少し私情を、
…モンブラン博士の感想でも書かれている通り、糖分さんの作品には原作の『バカとテストと召喚獣』への深い愛を感じるだけではなく、この作品にはオリジナルキャラクターの造への深い愛情(それこそ親が子に向ける愛情)を感じることが出来ます。
もし糖分さんが自分のオリジナルキャラクターが好きでなければ、天真爛漫な造が生まれることはなかったし、そもそもこの作品自体が生まれていなかったかも知れません。
だからこそ、糖分さんと造に感謝の言葉を。
いつも、素晴らしいお話を書いてくださり有り難うございます。
…うーん、さすがにくさすぎましたかね(照れ)
とにかく、造にはいつものお礼として『業務用のお菓子』を渡しとくね。
そんなに高価じゃないけど一杯あるから、是非大切なFクラスメンバーの皆で食べてくれるとお兄さんとしては幸いです♪
それでは、少し、変な発言も多かったけどこれで失礼します。
- Re: バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 ( No.163 )
- 日時: 2015/10/16 21:14
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
>モンブラン博士さん
読んでいただき本当にありがとうです。正直話数的にかなり長いものですが、のんびり時間のある時に読んでいただければ嬉しいです。
拙い展開や文章能力、誤字脱字を減らすなど課題も多くありますが、これからも精進していきたいと思っています。バカテスを好きな皆さんに楽しんでいただけるようこれからも頑張っていきますね。
それと情報ありがとうございます。ちょっと興味深いので確認しておきますね。
>ケーさん
モンブラン博士さん同様貴重な情報を教えて頂きありがとうございます。どうやらバカテスOKと言うことですしもう少しちゃんと確認しておきたいと思います。
>ユウさん
お仕事お疲れ様です。こちらこそ感想の返信がかなり遅めで申し訳ありません……
と言うか……す、睡眠時間大事に!?ホントお身体は大事に!こちらはゆっくり時間のある時でいいんですよ!?前にも言いましたがどうかご自愛ください。
さて急遽始まった召喚獣版人形劇。ちなみに元ネタはバカテス童話ですね。はちゃめちゃなお話ですが……頑張れ秀吉、そしてその他!
秀「責任重大じゃな……」
造「頑張ってヒデさん!自分も力いっぱい演技しますね!」
明「その他って……と言うか貰ったこれハバネロじゃないか!?どうしろと!?さらに泣けと!?」
造「ま、まあまあアキさん。これが終われば頂いたお菓子皆で食べましょう♪そのためには———この演劇は絶対成功させませんとね」
明「ついでに誤解も何とか解いておきたいんだけどね……」
それは置いておくとして(明「どういう意味さ!?」)———な、なんかすっごく褒められてますが……寧ろこちらこそ、ですよ。
まだまだ未熟ですし、バカテス好きでただの趣味で書いているわけですので褒められるのはホント恐縮です。読んでくださっている方々がいるからこそ書いているので、感謝しなければならないのは寧ろ自分の方です。
これからも日々努力して皆さんが楽しんでいただけるように頑張ってみたいと思います。ですからどうかこれからもゆっくりのんびりと時間があれば読んでいただければ幸いです。本当にありがとうございます。
- 番外編:ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜その⑥ ( No.164 )
- 日時: 2015/10/16 21:22
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
〜舞台暗転:次の場面〜
———舞台:深い森———
【カッコよくなりたい王子さまは、脳みそが欲しいカカシと心が欲しいロボットと共に鬼ヶ島へ向かい、深い深い森の奥を元気に歩きます】
瑞希のナレーションと共に、秀吉の召喚獣:王子と明久の召喚獣:カカシ、そして康太の召喚獣:ロボットが現れる。舞台は先程同様森の中。ただし先ほどよりもかなり暗めな森を演出してある。
「ところでカカシ君にロボット君?この森は一体いつまで続くんだい?」
「さあ、どうだろうね。ボクは生まれてすぐにあのトウモロコシ畑に立てられたからよくわからないよ。ロボットなら知っているんじゃないかい?」
「…………オレもよくは知らん。いつの間にかあそこに捨てられていたからな」
【と、三人がそんなことを言ったその時です。突然森が震えるくらいの恐ろしい吠え声と共に、王子さまたちに向かってくる一つの黒影が現れるではありませんか!】
瑞希のナレーションが終わると同時に、ガサッ!と草むらの影から物凄い剣幕で現れるのは———そう、王子のお供になる予定の最後に一人(?)である雄二の召喚獣だ。
「う、うぉおおおおおお!?ちょ、ちょうどいい!そこの嬢ちゃんに“バカ”なカカシにロボット!スマンが助けてくれねえかっ!?」
「ちょっと待て!何で出会い頭にボクだけ罵倒されるんだよ!?」
【王子さまたちの前に現れたのは、百獣の王と名高い鋭い牙と爪を持つライオンでした。これにはカカシもロボットもビックリして動く事が出来ません。そんな中、王子さまは怖がりつつも勇気を振り絞って剣を構えます】
「で、出たな猛獣めっ!“暴れる百獣の王”とはお前の事だな?成敗してやる!……と言うか、どうして君たちはいちいち僕の事を“嬢ちゃん”って呼ぶんだよぅ!?僕は王子なんだよ!?」
「いや、何の話かわからんが、そんな事よりとにかく助けてくれっ!追われているんだ!どうか匿ってくれ、頼むっ!」
「だからそんな事ってどう言う意味だ———って、あれれ?何だか本当に困っているみたいだね」
【相変わらずみんなから女の子扱いの王子さま。それはこの百獣の王と謳われるライオンも例外では無いようです。一刻も早く自分の事を王子であるとアピールしたいところではありましたが、ここは本当に困った顔をしているライオンを助けてあげる事にしました】
そう言って雄二の召喚獣———ライオンを匿う王子一行。しばらくライオンを物陰に隠す事にする。森には喧騒が(勿論これも学園長たちが効果音を付けてやっているとの事)聞こえるが、しばらくするとその喧騒も遠ざかり追手の気配も消える。追手がいなくなった事に一安心しホッと息をつくライオンに王子たちは話しかける事に。
「……ハァ、行ったか……すまんな嬢ちゃんにその他二人。助かったぜ」
「こらこら!僕は王子だよ。“嬢ちゃん”なんて言わないでくれよ。それにしてもライオン君。それにしても君はどうして追われているんだい?」
「ん?全然そう見えないがお前さん王子なのか。ならすまんな王子よ。それから何で追われていたかだが、実はな———俺はある国の姫に追われているんだ。アレはその追手さ」
「…………姫に追われる?」
「何言ってるんだろうね、この“野蛮でブサイク”な獣は?王子さま。こんなおかしなヤツは無視して先を急ごう。ブサイクが移るよ」
「黙ってろ、脳無しカカシ……ゴホン、まあ少し省略して話すが———」
【そうして自分の事を話し始めるこのライオン。何でもこのライオンはこの近くのお城に住むお姫さまに一目惚れされたらしく、そのお姫さまは日々このライオンにアタックしているそうです。ですがまだまだ自由に遊んでいたいライオンは、このお姫さまのお誘いを断っていつも逃げ回っているとの事】
「「「《……これ、まんま雄二(坂本)(ゆーさん)の事じゃ……》」」」
「ちょっと待てや!どう言う意味だコラ!?」
「いやいや。どう言う意味って……そりゃあ、ねえ?」
「…………霧島と雄二、そのもの」
「そうね。坂本、アンタも少しはあんなにアンタのことを好きな翔子に素直になりなさいよね」
「何で俺は劇の最中に、んなことを言われにゃならんのだ!?」
《あ、あはは……》
瑞希のナレーションに、メンバー全員が舞台裏で雄二をジッと見てそんな事を言い合っていたそうだ。そうそう、これはまたちょっとした余談なのだが———
『えー!ライオン酷いよ!』
『そうだよねーお姫さまかわいそうだよねー』
『ライオンのバカっ!』
『『『(ボソッ)……きっとまだ人生の墓場に行きたくないんだな……遊んでいたいその気持ち……わかる、わかるぞライオンよ……』』』
『『『ちょっと、それってどう言う意味ですかアナタ?』』』
『『『な、何でもありませんっ!?』』』
———このように観客席の小学生はライオンに対して手厳しい発言を飛ばし、その保護者であるお父さん方はライオンへ同情すると同時に、隣に座って何か黒いオーラを出していらっしゃる奥さま方を宥めるという奇妙な光景が見られたとか何とか。
- 番外編:ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜その⑥ ( No.165 )
- 日時: 2015/10/16 21:19
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
「(ゴホン)そんなわけで俺はあの姫の追手から逃げ回っていたってわけさ。ところで王子たちはどこへ行くつもりだったんだ?」
「ああ、僕らかい?僕らはね、鬼ヶ島へ行く途中だったんだ。あそこに行けばカッコ良くなれる方法があるかもしれないと聞いてね」
「ボクは脳みそが手に入ると聞いて」
「…………(自重する)心が欲しくて」
【王子さまとカカシとロボットはそれぞれ、自分たちの目的をライオンに話します。するとそのライオンはしばらく考えて———】
「そうか。だったら俺も一緒に行く事にしよう。助けてもらった礼もあるしな」
「おや?いいのかいライオン君。鬼ヶ島に行くって事は、鬼と戦う事になるかもしれないんだよ?」
「別にいいさ。鬼程度じゃ俺の相手にならん。追われるよりもずっといいからな」
「…………百獣の王が仲間なら心強い」
「ふーん?それでそこのライオン。本音は何さ?」
「まあ、俺も欲しいものがあるからな。……俺はな、勇気が欲しい」
「「「勇気を……?」」」
【何でもこのライオンは、別に一目惚れされたお姫さまの事が嫌いと言うわけでもないそうです。……ですが実はライオンは百獣の王と呼ばれるくらい強いのに、お姫さまに告白する勇気は無いというヘタレなライオンだったのです】
これはどう考えても中の人(雄二)に対する最大限の皮肉だろう。ちなみに言うまでもなく、これは学園長が配役を強く推薦したとか。『あの背も態度もデカいバカにはこの役がピッタリだろうさ』との事。
「はっ!まさに雄二の事だよね。いい加減霧島さんに告っちゃえばいいのに無駄にヘタレなところとかさ!」
「どう言う意味だっ!?クソッ……だから何で劇の中までんなこと言われなきゃならねえんだよ」
「雄二が素直じゃないからでしょ、にしてもホントにこの役雄二に合っているよね。見た目は野蛮な猛獣の癖に、中身はとんだヘタレなライオンの役なんてさ!」
「システムにまでバカにされるバカ久よりかは数倍マシだがなっ!」
「うるさいこのヘタレ!さっさと霧島さんと入籍して人生の墓場に逝ってこいや!」
「黙ってろバカが!テメェその藁でできたスカスカな脳をバラされたいのか?ん?」
ガスガスガス! ×2
「…………五十歩百歩」
《お、お二人とも本番中ですし落ち着いて下さい!?》
「こやつらはホントに仲が良いのやら悪いのやら……まあ、これで演技はちゃんとやっておるから文句は言えぬが」
「それにしてもアキも坂本も喧嘩しながらよく召喚獣を演技させられるわよね。ふふっ♪流石アキね」
舞台裏で召喚獣を操りつつも、仲良く喧嘩するバカとヘタレ———もとい明久と雄二の二人。ちゃんと演技をしつつお互いに喧嘩し合うこの二人は何だかんだで仲が良いのかも知れない。
「そ、そう言うわけで俺もその鬼ヶ島へ行こうじゃないか。よろしく頼むぞ王子、それにロボットに“バカで間抜けで脳無しで見るに堪えない”カカシよ」
「ああ、君が来てくれるなら頼もしい限りだよ!よろしくライオン君!」
「…………よろ」
「そうだね!よろしく頼むよ“ヘタレで根性無しの癖に野蛮でブサイクな”ライオン」
ガスガスガス! ×2
ちなみに召喚獣も召喚者に合わせるかのように仲良く喧嘩する。当たり前ではあるが明久と雄二のこの喧嘩や余計な罵倒は脚本には無いのだが、秀吉曰く『客受けは良いようじゃし、好きにやらせればいいじゃろう』だとか。つまりはアドリブでやりたい放題やっているとのこと。
【こうして脳が無いバカなカカシ、自重しないロボット、そして新たにヘタレなライオンを仲間に加えた王子さまは、鬼ヶ島を目指して再び歩き出します。そうそう、ちょっぴりカカシとライオンの仲が悪いようですが、しばらくするととても仲良しな二人になったそうです】
「「ちょっと待った!誰がこんな奴と仲良しなんかになるか!!」」
「…………息ぴったり」
「本当ににカカシ(明久)とライオン(雄二)は仲が良いね〜」
「「仲なんて良くない!!」」
〜舞台暗転:次の場面〜
- 番外編:ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜その⑥ ( No.166 )
- 日時: 2015/10/16 21:37
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
【さて、深い深い森を抜けた王子さまたち一行。仲間が増えて楽しい旅にはなりましたが、鬼ヶ島を目指す彼らのその旅は決して楽しいばかりではありません】
次の出番の関係上、瑞希から美波へとナレーションが変わりこのトンデモ物語は新しい章へと移行する。背景もそれに従いまた別の物へと変わっていく。
【彼らの行く手を阻むものはたくさんありました。そう例えば———】
———漫画・ゲームの国———
「新作のゲームソフトだってさ!ねえ皆、ちょっとだけ見ていかないかい?」
「またかこのバカカシ!何度店に立ち寄れば気が済むんだ!?」
「そうだよ!そんなのダメに決まっているじゃないかカカシ君!」
「…………先を急ぐべき」
「えぇ!?そんなぁ……じゃ、じゃあ我慢して、ここは新しい漫画を……」
「「「それもダメだっ!と言うか、全く我慢できてないじゃないか!?」」」
「うぅ……わかったよ。仕方ないなぁ」
「と言うかカカシ。お前はそんなゲームを買える金なんて持ってねえだろ。どうする気だったんだ」
「は?そんなのライオンに払わせるに決まってんじゃん。何わかりきったこと聞いてんの?」
「表出ろ、今すぐ藁くずにしてやっから」
【漫画・ゲームの国ではカカシが娯楽の誘惑についつい惑わされてしまったり、】
———綺麗なお姉さんたちがいっぱいいる国———
「…………(チャキ)」
「こらっ!ロボット君!君は一体何を撮ろうとしているんだ!」
「な、なんて速さなんだ……いつカメラを構えたのかわからなかったよ」
「流れるようにカメラを取り出して、ピンポイントにシャッターチャンスを狙うとはな。その末恐ろしい素早さは賞賛に値する。だが、自重しろエロボット」
「…………ハッ!む、無意識でつい。すまない(パシャパシャ)」
「「「って待て!?言ってる傍から写真を撮るなっ!」」」
「…………すまん」
「全くもう……って待ってそこのお姉さんたち!?110番はしないで!?」
「やめて!?も、もう二度とこのエロボットには写真は撮らせないので、お巡りさんだけは勘弁してくださいっ!?」
「お、おい!?警察(サツ)もう来てんぞ!?ま、待つんだポリス!?悪いのはこのエロボットで———いない!?」
「…………退散」
「「「待てぇ!そこのエロボットっ!?真っ先に逃げるなぁ!?」」」
【綺麗なお姉さんたちがいっぱいいる国では、ロボットが相変わらず自重しなかったり、】
———ライオンを追っているお姫さまの住む国———
「嫌だっ!放せっ!この国だけは絶対に入りたくないっ!捕まったら最後なんだぞ!?」
「で、でもさライオン君。この国を通らなければ鬼ヶ島へは行けないよ?」
「そうだよ。いい加減に覚悟を決めなよヘタレオン」
「…………往生際が悪い」
「知るかっ!いいから放せっ!放せえええええええええええええええ!?」
『…………雄じ———もとい、ライオン。ミツケタ……』
「っ〜〜〜〜〜〜!?は、放せっ!?き、来てる!ヤツが来てるぅ!?」
【ライオンを追っているお姫さまの住む国では、ライオンが必死の抵抗を見せたりと———何か事があるごとに立ち止まってしまう王子さまたち】
この劇の約9割は、実際の明久たちの日常なので相当リアルな劇となっている事は言うまでもないだろう。お陰で観客の全員が楽しそうに笑いながら鑑賞している。まあ、当の本人たちは、釈然としなさそうではあるが。
———舞台:いばらのお城———
【それでも何とか知恵と勇気と優しい心を持って、王子さまたち一行は鬼ヶ島を目指します。そしてとうとうもう少しで鬼ヶ島というところまでやって来ました。最後に王子さまたちを立ち塞がったのは……何と全てがいばらで囲まれたお城でした】
美波のそのナレーションが入ると、今度は茨の城が観客の目の前に映し出される。相変わらず本物そっくりの城に、これまた本物そっくりの茨の臨場感は凄まじく、秀吉たち同様に演劇や芸を披露にやって来た劇団の方々や芸人の方までもが思わず感嘆の声を上げる。
「やっとここまで来れたね。みんな、後もう一息だよ!」
「そうだね王子さま。それにしてもこのお城は一体どうなっているんだろうね?」
「…………いばらだらけ」
「こりゃ通るのに一苦労だな」
【そう言って四人はいばらで囲まれたお城を見上げます。ですがこのお城を通らなければ鬼ヶ島まで行けないので、四人はそれぞれ力を合わせていばらを取り去る事にします】
そうして王子は剣で茨を切り裂き、カカシは持っていた竿で茨を根っこから引き抜き、ロボットは自慢の鉄の腕でそのまま茨の棘を物ともせずに引きちぎり、ライオンは鋭い爪と牙で茨を引き裂く。……明久の装備だけ微妙なのは、お約束と言えばお約束なのだろう。
———まあ、そんな事をしなくても迂回するなりして茨の城を横切ればいいのでは?と思ったら負けである。それはともかく、茨を取り去ると今度は城の内部の背景が浮かび上がり、そして———
【こうして力を合わせていばらを取り去った王子さまたち。そのままお城に入ってみると、そこには……そこには———】
「「「「おぉ……なんて人形のように小さくて愛らしいお姫さま何だろう!」」」」
《(ぐぅ……誰が小さい姫ですかっ!?てか、可愛いって言われても嬉しくないですよ!?)す、スヤスヤ〜……》
【———そこにはまるで天使が舞い降りたのではないかと錯覚してしまうほどに可愛らしい、小さな小さなとても小さな一人のお姫さまがスヤスヤと眠っていました】
《(可愛い可愛いって言われてもだから嬉しくないんですってば!?てか小さいを何で3回も言うんですかっ!?)す、スヤスヤ……うぅ……》
物語もようやく後半を迎えて本人にとっては最大限の鬱要素満載の前口上と共に、ここでようやく眠れる小さな可愛いお姫さま———造の登場である。
さてさて、今のところ無事に劇は進む中、ある意味一番の適役を任されている造はどんな活躍(?)を魅せ、そしてこの物語はどんな展開を見せるのか。答えはこの脚本を仕上げた秀吉にも、そしてシステムを動かす学園長でさえもわからない。
《… … … んー やっぱり サプライズ あった方が オモシロイ かなー?》
…………そして極めつけは、何やら不穏当な発言をする誰かさん。本当に無事に幕は下りるのやら?
- 番外編:ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜その⑦ ( No.167 )
- 日時: 2015/10/23 21:06
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
———舞台:いばらのお城———
【それぞれ望んでいるものを手に入れる為に鬼ヶ島まで向かう王子さまたちは、いばらに囲まれたお城でそれはそれは可愛らしい寝顔で眠っている小さな小さなお姫さまと出会います】
《すー……すー……》
「「「「おぉ……なんて人形のように小さくて愛らしいお姫さま何だろう!」」」」
【この眠り姫の可愛らしさに一目で惚れてしまいそんな事を言う四人。カカシやロボットやライオン、そして王子さままでもがまるで中の人のようにハァハァと息を荒くしてそんな事を言う始末です】
「「「「《(……中の人って……?)》」」」」
造はともかく中に人などいないのだが……それは置いておくとして、舞台はいばらの城の中の部屋。その部屋の中央に大きなフカフカのベットの上で、綺麗なドレスを身に纏いスヤスヤと眠る姫———もとい今回のキーキャラクターである造の姿が。確かに見た目はかなり可愛らしいようで観客の反応も上々のようだ。
『お姫さまカワイイ!王子さまと同じくらい!』
『ホントだ!お姫さまキレーでかわいいー♪』
『……ペットにしたい』
『あれれ?あれって召喚獣のお姉ちゃんですよね……?……うーん、この前は“自分は男ですからね?”って言ってましたけど———やっぱりお姉ちゃんで合ってたんですね!』
『『『…………(ボソッ)ホント、可愛いな……』』』
『『『ふふっ♪ええ、ホントに可愛いですね。ですが……アナタ?今日帰ったら少しお話があります』』』
『『『何でもございませんです、はいっ!?』』』
……と言うより———造が登場した事に観客の反応が上々過ぎて、ちょっとばかり観客席が荒れた(?)と言った方が正しいのかもしれない。この観客たちに演じている造と秀吉が男であると話をしたとして、一体何人に信じて貰えるのやら?まあそれはさておき、演劇に戻る事にしよう。
【さて、そんな可愛らしいお姫さまですが……このお姫さまは王子さまたちの呼びかけにもちっとも気づかずにぐっすりと眠っています】
「このお姫さま、全然起きないね。大丈夫なのかな?」
「うーん、どうだろう?……病気じゃないよね?」
「いや、一応息はしているし単に眠っているだけなんじゃねえのか?」
「…………調べてみる?(カシャカシャ)」
「「「とりあえず、カメラを置いてから喋ろうかエロボット」」」
「…………すまん」
【お姫さまを案じた四人は何とか起こそうとしますが、カカシが藁でくすぐっても———】
こちょこちょこちょ ←明久もといカカシが造をくすぐる音
《(く、くすぐったいっ……で、でも我慢ガマン……っ!)》
【ロボットがお姫さまを一生懸命揺すっても———】
ガクンガクンガクン ←康太もといロボットが造を揺する音
《(あわわわわ……こ、こーさん揺すり過ぎです、目が回る……頭揺れる……)》
【ライオンが耳元で力強く吠えても———】
ウゥオオオオオオン ←雄二もといライオンの造の耳元で発する遠吠え
《(耳が、耳がああああああああああ!?)》
……おわかりであるとは思うが、舞台の上で眠っているだけに見える造も実はあの舞台の中では一番に頑張って演技をしていた。何しろ本人が召喚獣になっている為それはそれは色んな意味でボロボロである。つまり———
明久のくすぐりも康太の揺さぶりも、そして雄二の遠吠えもダメージが直接本人に来るためそれはもう散々なわけで。それでも顔に出さずに“眠っている演技”をしつつ、必死で耐えているところは見事と言えば見事であるだろうが。
【それでもやっぱりお姫さまは全く動じずに、安らかな寝顔でぐっすりと眠っています。鬼ヶ島を目の前にして眠り姫を起こす方法が見つからず、王子さまたちは困り果ててしまいました】
「ダメだ……全然起きないね」
「…………オレたちじゃ力不足」
「こりゃ普通の方法じゃ無理そうだな。どうすんだ王子?」
「うーん……困ったね。このお姫さまが眠っている理由が分かれば起こす方法も分かるかもしれないんだけどなぁ……」
と、腕を組んで考え込む王子。するとどうした事か観客席のとある小学生が王子である秀吉の召喚獣に向かって、
『えー!ここはやっぱり王子さまのキスでしょ!』
「「「「《…………は?》」」」」
- 番外編:ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜その⑦ ( No.168 )
- 日時: 2015/10/23 20:55
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
とんでもない爆弾発言を投下したからさあ大変。その発言はみるみるうちに広がって———
『そうだよね!眠り姫って確か王子さまのキスで目を覚ますんだよね!』
『白雪姫もそんな感じだったし……王子さまがいるならやっぱりキスじゃない?』
『キース!キース!キース♪』
と、まあこんな具合に、気が付けば観客席の小学生が王子である秀吉の召喚獣に向かって全員キスコール。明久に美波に瑞希、康太に雄二に造はそんな小学生たちのこの反応に、
「「「「《(……さ、最近の小学生って強い……)》」」」」
物凄く慄き戸惑いながら冷や汗を掻く始末。次の展開はキスなんて入っていない為、舞台に上がっている明久たちやナレーターの美波もこの状況をどうするのかチラリと秀吉を見る。が、そんな秀吉はと言うと一人冷静に———
「いやいや。睦月小学校のみんな、僕は絶対にそんな事はしないよ」
『『『えー!どうしてー!』』』
「それはね……眠っている女の子に無理やりキスするなんて、王子さま失格だからだよ。男の子のみんな、間違ってもそんな大人にはなっちゃダメだからねー!王子さまとの約束だよー!いいねー?」
「「「《(か、返しが上手い……!)》」」」
『そっかー!無理やりはいけないんだねー』
『んー?でもうちのおとーさんって、時々夜寝ているおかーさんにチューするよー?』
『あ、それぼくのうちもそうだよ?』
『うちもうちもー!』
『『『ちょっと!?なんて事言うんだい!?』』』
『『『……あ、アナタ?』』』
『『『え!?い、いや……そのぅ……』』』
「……コホン。それはね、みんなのお父さんとお母さんが仲が良いって証拠だからだよ。それも色んな意味で大人になればわかると思うからねー」
———こんな具合に見事に大人な対応を。観客席の保護者の皆さまへのフォローも忘れないあたり、演劇中の秀吉には誰も敵わないのかもしれない。
【え、えっと……と、とにかく姫を起こす方法がわからずに、困り果てた王子さまたち。と、そんな時誰かがいばらのお城に入ってくる音が聞こえてくるではありませんか!】
何とか気を取り直した美波のナレーションと共に、眠り姫が眠る部屋の扉をバンッ!と開ける人影が。慌てて王子たちはそれぞれの武器を構える事に。
「むむむ、この城に入ってくるとは……一体何者だ!」
「それはこっちの台詞です!あなたたち、一体何者ですかっ!私の大事なお友達の眠り姫ちゃんに何をする気ですか!?」
「「「「……え?」」」」
「私が折角悪い人たちから眠り姫ちゃんを守ろうといばらさんでお城を囲っていたのに、何でそのいばらさんを根こそぎやっつけちゃうんですか!?悪い人たちなら容赦しませんよ!」
そう言って颯爽と現れたのは、薄紫色のローブを身に纏い杖を構える魔法使い———瑞希の召喚獣だ。これでようやくメンバー全員が登場した事になる。
【ここで現れたのは素晴らしい力を持つとても良き魔法使いでした。何でもこの良き魔法使いは呪いにより眠り続ける眠り姫のお友達で、眠り姫を悪い人たちから守る為にお城にいばらを囲ったと言います】
- 番外編:ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜その⑦ ( No.169 )
- 日時: 2015/10/23 21:09
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
「なるほど……それは悪かったね。実は僕らは鬼ヶ島へ行く途中だったんだよ」
「え!?お、鬼ヶ島にですか!?それはまたどうして……?」
「僕らは欲しいものがあるからね。それで最後にここに辿り着いたんだけど」
「このいばらがボクたちを通さなかったから、とりあえず取っ払う事にしたんだよ」
「…………そうしたらこの城で」
「この眠りっぱなしのお姫さんに会ったってわけだな」
王子たちが魔法使いにそうやって説明すると、その魔法使いはしばらく考え込むように手を顎に当ててから、何か決意したように王子たちを見据える。そして———
「いばらさんたちを軽々とやっつけたあなたたちの力を見込んで頼みがあります。鬼ヶ島へ向かわれるのでしたら……どうかこの眠り姫ちゃんも連れて行ってあげてくれませんか?」
「「「「……眠り姫も?それまたどうして?」」」」
「実はこの子……悪い鬼に呪われて、眠り続けていると聞きます。皆さんが鬼ヶ島へ行くならば、この子も連れて行ってどうかこの子の呪いを解いてはくれませんか?お願いします」
【そう言って頭を下げてお願いする良き魔法使い。そして勿論、そんな魔法使いの一生懸命なお願いを聞かないような四人ではありません】
「勿論だとも!この眠り姫の呪い、僕らが必ず解いてみせるよ!」
「「「おうっ!」」」
【その頼もしい言葉を聞いた良き魔法使いは、花が咲いたような笑顔を浮かべて———】
「ありがとうございます!それでは……折角なので私がみなさんをレベルアップさせる魔法のきび団子(自家製)を差し上げましょうっ!」
「「「「《…………What?》」」」」
「いきますよー!ラブリーピンキープルル——ン♪」
【そう言って良き魔法使いが杖を持ち呪文を唱えると……魔法のきび団子がポンッ!と何処からともなく現れます】
「さぁ、これさえ食べれば皆さんたちまちレベルアップ!ついでに鬼ヶ島までひとっ飛びです。えへへ♪」
「「「「《(……あの世までひとっ飛びってオチじゃないよね?)》」」」」
瑞希の召喚獣から誕生したきび団子なだけあって、いつもの姫路瑞希の殺人料理被害者の会のメンバー全員少々引いている模様。特にフィードバックがあり、更に常日頃から瑞希の殺人料理を食べている明久はこの後の展開を予測しているかのように捨てられた子犬のように震えている始末。
「「「「わー!なんておいしそうなんだろうー(棒)」」」」
【(アキに皆……だ、大丈夫よね?流石に召喚獣が作ったもの食べるわけだし……?)えっと、王子さまとライオンとカカシとロボットはそれはそれはおいしそうにきび団子を頬張りました】
とりあえず、次の演目もある以上さっさと食べなければならない四人は、意を決してソレを食べる事に。
《(み、皆さん大丈夫ですよね……?姫路さんの召喚獣から生まれた惨物———もとい産物とは言え、流石に命を刈られるなんてことは……)》
「あ、それから眠り姫ちゃんも食べましょうねー♪」
《……っ!?(何故に!?)》
そしてどう言うわけか眠り姫である造にも、その魔法のきび団子を食べさせようとする魔法使い。眠り姫に無理やり———コホン、優しく口を開けさせて魔法使いはきび団子を一つほおりこむ。そして……
「「「「《(パクッ! ゴクン)…………っ!?ぎゃあああああああああああああああ!?》」」」」
…………何故か演出には無かったが舞台に夜空が浮かび上がり、星が五つばかり流れる。それはまるで五つの尊くも儚い命が流れるかの如く。
〜舞台暗転:次の場面〜
———舞台:鬼ヶ島———
【こ、こうして魔法使いの力でレベルアップしたライオンとカカシとロボット、それに王子さまに眠り姫は……全員魔法使いの言った通り鬼ヶ島までひとっ飛びで辿り着きました】
そう、美波の言った通り現在背景は禍々しい鬼ヶ島へと変わっている。そして瑞希の召喚獣の特製きび団子を食べた五人はと言うと———
「…………ゴホッ」
ライオンは魂が抜けかけ、白目になって泡を吹いて気絶して、
「…………ウグゥ」
カカシは魂が抜けかけ、身体を支えていた竿も無残に折れてうつ伏せに倒れており、
「…………グググ」
ロボットは魂が抜けかけ、ネジや中の部品が飛び出てショート寸前になり、
「《…………キュゥ》」
そして王子と眠り姫は魂が抜けかけ、お互いに寄り添うように安らかに眠るように倒れていた。そうそう、ついでに恐らく皆様予想通りであるだろうが、
「《…………(チーン)》」
「お、おい!?明久しっかりしろ!?目ぇ開けやがれこのバカ!?オイィ!?」
「あ、アキっ!?ま、まさかこれって……瑞希の召喚獣が生成したきび団子を食べた事によるフィードバック!?」
「…………おい、あれ造もリアルに倒れてないか!?」
「な、なんて威力なのじゃ!?造、気をしっかり持つのじゃぞ……!」
明久と造はフィードバックにより、二人で召喚獣共々本当に魂が抜けかけていたそうな。流石は瑞希が召喚した召喚獣の創ったきび団子。召喚者に似て対召喚獣用の最凶最悪の化学兵器を創りだしてしまったようだ。
【と、とりあえずようやく念願の鬼ヶ島へと辿り着いた王子さま一行。四人は眠っている眠り姫を連れて、鬼ヶ島の中へと入っていきます】
現在約二名が生死の境を彷徨ってはいるが、こうしてようやく物語も終盤を迎える事に。さてさて、これから一体何が待っているのか。と言うより、造&明久は色んな意味で大丈夫なのやら……?
「《…………あ、迎えに来た天使が見える……》」
「「「「ちょっと!?本当に二人とも大丈夫なの!?」」」」
「???明久君に月野君、どうかしたんですか?」
- 番外編:ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜その⑧ ( No.170 )
- 日時: 2015/10/30 21:03
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
———舞台:鬼ヶ島———
【魔法使いの(ある意味最凶の)魔法のきび団子の力によって、鬼ヶ島まで辿り着いた王子さまたち一行は眠り姫を連れて鬼ヶ島の中を進みます】
王子とカカシたち三人(人ではないが)のお供、そして眠り姫は鬼ヶ島の中をずんずん進んでいく。ちなみに眠っている姫役であるため、動けない造は王子である秀吉の召喚獣が背負う形で移動しているとか。
「へぇ〜?ここが鬼ヶ島かー……思った以上に暗くてどんよりした場所だね。こんな所に籠って、鬼は何が楽しいんだろうね」
「…………引きこもり共の考えはよくわからない」
「まあ、こんな薄汚れた島にいるわけだし、きっと趣味が悪くて気持ち悪い奴らだろうさ」
「えーっと……カカシ君たち。いつどこから鬼が出てくるかわからないしそろそろ静かにしようか。と言うか鬼相手に随分余裕というか言いたい放題と言うか……君たち痛い目見ても知らないよ?」
《すー……すー……》
そうそう、話は変わるが瑞希のきび団子でリアルにノックアウトされかけていた明久と造は(多少造にまだダメージが残っているようだが)何とか自力で回復したとの事。日々食べ続けている明久と、そんな明久を気に病んで食べるのを手伝うことが多い造だからこその超回復なのだろう。瑞希の料理を食べて生き残りたいなら、慣れや耐性は必須だそうだ。
「(……慣れるって言っても、本気で危ないところまで飛ばされることもあるんだけどね)」
「(……そうね。それに何だか最近、瑞希も瑞希で料理の威力(?)上がってきてるし)」
《(……確かにそうですよね。耐性が出来たと思ったら新たに強力な料理が生み出させるワケですし)》
余談だが……瑞希の手料理(殺)を食べる回数が一番多いのは勿論明久で、次いで明久の負担を減らす為に食べる美波と造。そして最後に明久によって無理やり食べさせられる雄二たちであるそうな。まあ、その辺は今はどうでもいい為一旦置いておくとして、
「「《(ちょっと!?どうでもいいって何!?と言うか置いていかないで!?)》」」
———それは置いておくとして、とにかくこの演劇に戻ろう。鬼ヶ島の中を慎重に進んでいく王子たちは、やがて鬼ヶ島の最奥の大きな門の前まで辿り着く。四人は眠り姫を安全な場所に降ろして武器を構えつつ、その門に耳を当てて様子を窺う。
「……いるな。まだこっちには気が付いていないようだが」
「…………(コクン)複数の鬼の気配」
「……何の話かわからないけど、話に夢中になっているね」」
「……そうだね。だったら油断している今が絶好のチャンスかな?」
【そうして四人はそれぞれの武器を握りしめて、勢いよく門を破り中へと入っていきます。そんな四人が見たものとは———】
「「「「…………何だ、コレ……?」」」」
———舞台裏———
……ところ変わって安全な場所に置いて行かれた眠り姫役の造はと言うと、本来なら王子たちが鬼を退治して目を覚ますという脚本故に、出番らしい出番がラストシーンだけとなっているハズだったのだが———
《ネー ツクル♪ ツクルは もっと 活躍 したいよ ネー! ツクルの 出番 アレダケ なんて 勿体 ナイヨ ねー!》
《…………はい?》
《文は ねー! ツクルの 綺麗で カッコイイ ところ ミタイー!》
《…………えっと、文さん?》
———舞台裏で何やらキラキラと目を輝かせてそんな事を言う文に遭遇した造。この時造は、この文の満面の笑みを見て直感したそうな。『最終章に来て、何かとてつもなく妙な事になりそうな気がします』……と。
- 番外編:ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜その⑧ ( No.171 )
- 日時: 2015/10/30 21:05
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
———舞台:鬼ヶ島内部———
「「「「…………何だ、コレ……?」」」」
門を破り中へ侵入した王子たちの……いや、その召喚者である秀吉や明久たちの目に映ったものは———
《諸君、異端審問会とは……?》
《《《最後の審判を下す法廷であります!》》》
《異端者には……?》
《《《死の鉄槌を!!》》》
《男とは……?》
《《《愛を捨て、哀に生きるものであります!!!》》》
「「「「(何で……FFF団が……?)」」」」
「「(Fクラスの召喚獣……?)」」
———四人や瑞希や美波の、そして観客の目に映ったものは……一応鬼の姿をしてはいるが、それは紛れもなく異端審問会用の黒い覆面を被ったFFF団の召喚獣であり、そしてその召喚主たちのいつものFクラスの日常を見事に再現している光景であった。
「……おいババァ、何だこれ?何でまたFクラスの連中の召喚獣がいやがる?」
「あん?……ああ、これかい。どうせ鬼の配役が足んないだろうから、自動操縦で動かせる召喚獣をこしらえたまでさね」
そう、学園長の言う通り鬼の配役が足りなかった為、学園長と文がFクラス男子諸君の召喚獣のデータを使ったノンプレイヤーキャラクターを創りだしたそうな。ちなみに自動操縦である為、あの会話や行動は召喚者の日常を映し出しているとの事。まあ、ただ今回が召喚獣自体が演劇仕様に変わっている為、ある程度演劇に合った会話に変換されているそうではあるが。
「いやそれはわかりますけど、何でまたFクラスの皆の召喚獣を使ったんですかババァ長?」
「決まってんだろ。点数が低い連中の召喚獣なら暴走しないと思ってね」
「「「「あー……なるほど。でも学園長(ババァ長)———」」」」
《諸君らの言う通り、それが異端審問会の鉄の掟だ……が、この鬼Aは罪を犯した。自分一人だけ他の島の女の子に告白した疑いがある》
《ち、違っ———》
《残念だがすでに裏が取れている。どうやら事実に相違ないようだ。被告鬼、言い残す事は?》
《ま、待て!落ち着いて話し合おうじゃないか!》
《聞く気になれんなァ!有罪に決まっておろうがッ!》
《《《会長……刑は?》》》》
《そうだな……鬼だけに火あぶり地獄に》
《《《了解であります!!!》》》
《ぎゃあああああああああああああああああああああああああ!》
「「「「———別の意味で暴走しているように見えるけど……」」」」
「……まあアタシもこんな事なら、Eクラスくらいの召喚獣にしておけばよかったって後悔してるけどね」
そう言って暴走以上に酷い光景を見せるFFF団の召喚獣に、苦々しい顔で頭を抱える学園長。流石の明久たちも“学園長(ババァ長)も多少は苦労しているのか……?”と思ったとか。
《なんか変なオニだねー?》
《知ってるよー!アレってシットっていうんだよね!》
《ねたみとも言うらしいよ!》
《オニもシットしたりねたんだりするのかな?》
《するんじゃないの?うちのお兄ちゃんもあんな感じだし》
《《《あーそう言えばうちもー!》》》
ちなみに、そんな召喚獣版のFFF団でさえも観客の小学生たちには受け入れられているとの事。この町の住人はつくづく順応性が高いものである。その分常識に欠けるところも多々あるが……
【え、えっと……王子さまたちの目に映ったものは、鬼同士で喧嘩(仲間割れ?)をしている光景でした。あまりに熱中し過ぎてか、鬼たちは門が破られて王子さまたちが入って来たことに全員全く気が付いていないようです】
《他に異端鬼はいないだろうな?裏切り鬼は粛正せねばならん》
《会長、それが……残念な事に他にも鬼B、鬼Cも善からぬ噂が……》
《ふむ。疑わしきは罰せよだ。その鬼たちも焼いてこい》
《《なっ!り、理不尽なっ!?お、俺たちはちょっと女の子と話をしただけ———》》
《《《———罪を認めたな?会長、焼いてきます!》》》
《うむ、ご苦労。上手に焼いてこい》
「「「「…………」」」」
ある意味いつもの光景とは言え、流石の明久や秀吉たちも若干引きながらその召喚獣たちの様子を見る。まあコレがいつもの光景になっている時点で何かおかしいのだが、それは一旦置いておくとして……
「あー……本当に気が付いてないね?どうしようカカシ君たち?」
「そりゃ決まっているじゃないか王子さま」
「…………これはチャンス」
「だな。油断している間にやっちまうか」
「「「「そうと決まれば……行くぞっ!」」」」
《《《んなっ!?な、何ごとだ……!?ま、まさか侵入者だとっ!?》》》
- 番外編:ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜その⑧ ( No.172 )
- 日時: 2015/10/30 21:08
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
【そう言って気を取り直した王子さまたちは一気に攻め込みます。自分たちの事で夢中になっていた鬼たちも、ようやく侵入者である王子さまたちに気が付きましたがすでに遅く———】
と、ここからはちょっとした戦闘シーンを魅せる王子たち。ちなみにこの戦闘シーンは試験召喚獣を使った人形劇が舞台である為、観客にちょっとした試召戦争を見て貰えると言うある意味一石二鳥の戦闘シーンだとか。
【———ライオンは“百獣の王”の名に恥じないその鋭い爪と牙を悠々と使い鬼たちを噛み付き切り裂き、ロボットは自慢のその鋼鉄の身体を武器に鬼をまとめて投げ飛ばします】
「オラオラどうした!鬼ってもんはこんなもんか!えぇ?まだあの国の姫の方が何千倍も恐ろしかったぜぇ?」
「…………雑魚が。まるで話にならん」
《《ち、ちくしょう、なんて容赦ないんだ……てか、いきなり襲うなんて鬼かアンタら!?》》
「「お前らが鬼だろうが。それに……油断してた方が悪い」」
《《外道っ!悪魔っ!鬼ィ!》》
「「だからそれを鬼が言うな(っての)」」
【そしてカカシは……えっと、持っていた自分を支える竿を使って巧みに鬼たちを翻弄しなぎ倒します】
「いやいや“竿”って……最初から気になってたんだけど、他の皆と違って何かボクだけ武器がしょぼい気がするんだけどどういう事さ?」
《クソッ……見た目が雑魚でバカなカカシなのにコイツ強いぞ!?》
《バカなカカシの癖にチョロチョロ動きまわって……的が絞りにくい》
《あのライオンやロボットにやられるならともかく、何でこんな雑魚に……》
「まあ、逃げ脚だけは一丁前なバカなカカシだからな」
「そしてどうして雄———じゃなくてライオンもキミたちも必ずって言っていいほど、ボクを侮辱するのかな!?」
《《《「そりゃ……お前がバカだからだろ?」》》》
「どう言う意味さ!?ええぃ怒ったぞ!とりあえずバカって言った奴は覚悟しろっ!ライオンも後で覚悟しておけよ!」
【勿論王子さまだってお供の三人に負けていません。見事なまでの剣捌きで鬼を次々に切り倒していきます】
《《《お嬢さん!是非俺から切ってくださいっ!》》》
「……君たちは一体何を言っているの?後、一応言っておくけど———僕は男だっ!」
《《《グハッ……お、お譲さん、ありがとうございますっ!》》》
「何で切られて喜ぶの!?それと僕はだから男で王子何だってばっ!?」
そうそう、お分かりだとは思うが明久や秀吉たち以外のFクラスの召喚獣は自動で動いている為、演技ではなくリアルに点数を削り合う召喚獣同士の闘いが勃発している。正直召喚元が召喚元だけに何だか物凄くカオスでシュールな殺陣となっているが、実際の試召戦争に近いだけあって観客席から『おぉ……』と感嘆の声がもれる。
〜王子&三バカお供戦闘中〜
【ただでさえ強いうえに魔法使いの特製きび団子を食べてパワーアップした四人に、鬼たちは手も足も出ません。そしてあっという間に鬼たちは追い詰められました】
しばらく殺戮シーン———コホン、戦闘シーンが展開させたが二,三分後ボコボコにされてお互いに身を寄せ合い震える鬼たちを見下ろす王子たち一行の図が出来上がっていた。これは誰がどう見ても王子たちが悪役です、本当にありがとうございました。
「さあ、どうするのさ?もうこれで後がないよね?」
「…………大人しく武器を捨てて降参しろ」
「まあ、お前らが俺らの要求を呑むんならトドメは待ってやっても良いぞ?」
「……えっと、ライオン君たち?何だか物凄くこっちが悪役っぽく聞こえるんだけど、絶対気のせいじゃないよねコレ?」
【そう言って王子さまたちは優しく優しく鬼たちに交渉を持ちかけます。鬼たちは強い上にちゃんと交渉を持ちかけてくれる王子さまたちに感動して改心します】
《《《(ボソッ)お嬢さんはともかくあの三バカ———いや、あの三鬼め……》》》
「「「あぁ?何か言ったか鬼共?」」」
《《《な、何でもないッス!!!》》》
これは交渉と言うよりも……どう考えても恐喝である。確かにこれではどちらが鬼なのかわからない。ある意味鬼たちには同情せざるを得ないだろう。
「ともかく君たちには奪ったお宝を返して眠り姫の呪いを解いて貰うよ」
「そう言うこった。ホレ、お前ら出すもんさっさと出しな」
「あ!雄———じゃなくてライオンっ!キサマお宝を一人占めしようとか考えてないよね!?」
「…………抜け駆けは許さない」
「ったく、やかましいな。んなことするわけねーだろ」
「えーっと……まあとりあえずお願いね」
《《《は、はい……》》》
【さて、王子さまたちの交渉に応じた鬼たちは奪った宝を王子さまたちに渡して、あの眠り姫の呪いを解くと約束してくれました。こうしてめでたく王子さまたちは———】
《ちょっと マッタ! そうは いかない よー!》
「「「「「「…………え?」」」」」」
———本来なら秀吉が書き換えた台本ではここで王道に沿って“王子さまたちはお宝を手に入れて、眠り姫の呪いも解けめでたしめでたし”になり幕が降りる……ハズだった舞台に、突如響き渡る少々間の抜けた声。
《まだまだ 終わらない よー♪ お姫さまは いただいた ヨー!》
「「「「「「…………え?えぇ!?」」」」」」
その声と共に、背景の鬼ヶ島は不気味に暗雲が立ち籠る。コレには出演している明久たちもナレーターをやっている美波&瑞希も、そして舞台に慣れている秀吉でさえも台本にも無ければ何の予告も無い謎の演出に固まってしまう。
そう、そこには生粋のトラブルメイカー《文》自身が、鬼の親分役として造———いや、眠り姫を抱きかかえてどこぞの魔王のように佇んでいた……唯でさえトンデモ台本に加えて、やはり黙っていなかった文の乱入。この劇は何処へ向かって行くのやら?と言うか本当に幕を降ろせるのであろうか?
《(…………文さん、後で本気で説教ですからね……)》
- 番外編:ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜その⑨ ( No.173 )
- 日時: 2015/11/01 20:48
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
———文の舞台乱入より数分前:舞台裏———
《ネー ツクル♪ ツクルは もっと 活躍 したいよ ネー! アレダケ なんて 勿体 ナイヨ ねー!》
《…………はい?》
《文は ねー! ツクルの 綺麗で カッコイイ ところ ミタイー!》
《…………えっと、文さん?正直嫌な予感しかしないんですが、何をする気ですか?》
ラストシーンを目の前にして、突如そんなことを言いだすトラブルメイカー文。経験上この後間違いなく大惨事が待ち構えていると言うことを悟ってしまった造は、かなり引き攣った笑顔を浮かべて対応する。そんな造の心の中など知ったことではない文は、屈託のない満面の笑みでこう答える。
《フッフッフ! それは ネー! … … … かくめー ナノ!》
《は?かくめー?……“革命”の事ですか?》
《ソウ だよ♪ かくめー ダヨー!》
《あの、文さん?今日は一段と文さんの仰っている事の理解が難しいのですが……?》
《あのねー 文が 読んだ 本って お姫さまって 守られて バッカリナ ヒトしか いないの!》
《??? “守られてばかり”———ですか?ごめんなさい、もう少し具体的にどういう意味か教えて貰えませんか……?》
その造の質問に文は様々な絵本や物語をどこからともなく取り出して、さらにこう続ける。
《あのねー! 文の 持ってる ドノ本も ねー! 王子さまが お姫さま タスケテ めでたし メデタシ お終い … … … だってさ! それって 何か オモシロク ないよ ネー?》
《……?あっ、あー……何となくですけれど、文さんの言いたい事がわかってきた気がします。それで?》
《ソレデ ねー! ツクルが お姫さまなら キット カッコイイ そう 思うん ダー♪》
《は、はぁ……》
《ダカラ 文とツクルは かくめーを オコス のー! 演劇も モノガタリも 大かくめー なのー♪》
《(…………コレ、どうしましょうか)》
———舞台:鬼ヶ島内部———
設定はメチャクチャ&当日ギリギリぶっつけ本番&出演者は素人だらけの仲良しメンバー……と言うスーパー無茶振り的な三重苦にもめげずに、主に秀吉の頑張りのお陰で何とか無事に(?)舞台に幕が降ろされる———かに見えた召喚獣版人形劇。
《ちょっと マッタ! そうは いかない よー!》
「「「「「「…………え?」」」」」」
それも舞台に響き渡る一つの高笑いにより、案の定いつものような急展開へとシフトして往く。……まあ、そもそもこのいつものメンバーに限って言えばこんなイベントで平穏無事に終わるなんて絶対にないだろうが。(それどう言う意味!? by Fクラスの愉快なメンバーズ)
《ハッハッハ! ツクル … … … ジャナカッタ お姫さまは いただいた ヨー! 油断したね 王女さま! … … … ト その他!》
「「「「「「…………え?えぇ!?」」」」」」
どこぞの魔王かラスボスちっくな台詞と共に、このイベントを立ちあげ人形劇の舞台を創り上げた張本人である文が、眠り姫役の造を抱えて人形劇の舞台に颯爽と現れる。
補足しておくが召喚獣版人形劇である為か、一応文も召喚獣として舞台に現れている。その姿は勿論元になった造の召喚獣をベースにしてあり、恰好はいかにも強そうな大剣を担ぎ甲冑を纏っている鬼の親分。額の角さえなければ、どっちかと言えば主人公よりの恰好である。そんな突然の文の乱入に観客席の子供たちはと言うと———
《ラスボスきたー!クライマックスだー♪カッケー!》
《あれ?なんか王子さまとかカカシとかよりもあのラスボスの方がカッコよくない?なんか強そうだし!》
《うん。最初の女騎士と同じくらいカッコいいねー》
《(えっと、女騎士ってお姉ちゃんの事ですよね?カッコいいって……お姉ちゃん複雑だろうな……)》
まぁ、ともかく文の乱入自体は物凄く受けは良いようで盛り上がっている様子。……どうでもいいがカカシやライオン役で出ている明久たちはともかく王子役で出ている秀吉よりも、最初しか出ていない女剣士役の美波の方がカッコいいと言われるのはどうだろうか?相変わらず、秀吉も美波も生まれる性別を間違えている模様。(だからそれどういう意味!? by美波&秀吉)
- 番外編:ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜その⑨ ( No.174 )
- 日時: 2015/11/01 21:02
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
さて、この展開は当然台本にも無ければ事前の打ち合わせも無い。そんな状況では明久たちがいる裏方はと言うと———
「ちょ、ちょっとどうなってんのさ!?“めでたしめでたし”どころかここに来てラスボス出現!?」
「…………台本はここまでのハズ」
『えっ!?えっ!?ちょ、待って?聞いてないわよ!?と言うか、ウチこの後どうナレーションすればいいのよ!?』
『わ、私もこの後良き魔法使いの役で目が覚めた月野君と出てくるはずだったんですが……』
これまたこの通り、当然の如く現在進行形でこの展開に付いて行けずに放置されている。特にこれから話に入るはずだった瑞希とナレーション役の美波は涙目でパニックを起こしている。
ただし、そんなパニックを起こしかけている明久たちを尻目に雄二と秀吉は———
「(チッ、マズイな。明久もムッツリーニも、おまけにナレーション役の島田も、次入る予定だった姫路もどう進行すればいいか分からず混乱してやがる。だがこのままボーっと突っ立ってるだけじゃどうしようもねぇしな。さて、どうしたもんか……)」
「(何がどうなっておるのか、造が一体何を考えておるのかは分からぬが……このままでは幕を降ろせぬ。それに無茶振りではあるが、これくらいのハプニングを越えられぬようでは役者を目指す身としてはやはり———)」
危機管理能力に定評がある雄二と役者としての高い技量と度胸がある秀吉は冷静なようで、多少驚きはしたもののやはりと言うべきか数秒で持ち直しこれからどうすべきか頭をフル回転させて模索中。
「(って言っても演技云々は俺にはさっぱりだしな。こりゃ秀吉に頼る他道はねぇか)おい、これどうする秀吉?」
「…………よし」
「秀吉?聞いてるのか———」
「お前は何者だっ!お姫さまを頂くだと?ふざけた事を言っていないで眠り姫を離せっ!そして僕は王女じゃなくて王子だぞっ!?」
「……おお?」
「「(って!?秀吉ぃ!?)」」
そんな台詞と共に臆することなく召喚獣を動かして再び舞台に、そしてこの奇妙な演劇に足を踏み入れる秀吉。乗ってくれた秀吉を前に若干嬉しそうな反応をしつつ文は応える。
《ハイ? キミが 王子さま? ンー? そのジョウダンは キツイ ヨー? ソレは ともかく 文 … … … コホン ワタシは ここの 鬼たちの オヤブン だぞ!》
「待って、冗談じゃないから!色んな意味で冗談じゃないからっ!ぐぬぬ……カカシ君、ロボット君、それにライオン君も何とか言ってやってよ!」
そう言って呆けている明久たちに向かってそのように問いかける秀吉。
「「(ちょ!?こんなところで僕(俺)らに投げる!?)」」
「(秀吉も造に乗ったか……。ふむ。造がこんな突拍子もねぇ事を俺らに無茶振りでさせるとは思えねぇ。っとなると、こりゃシステム———と言うか恐らくだが文関係で何かあったな?なら、ここは俺もこの茶番に付き合ってやるか)……ああそうだな、王子———王女の言うとおり冗談じゃない。人質をとるなんざ最低な鬼だな、オイ!」
《エェ!? 王女さまは ともかく あれだけ 暴れたり ワタシの 子分の オニを 脅してた ライオンに サイテー なんて 言われたく ナイヨー!》
「やれやれ何を言う……勝てば正義で正しいんだぞ。そして俺らが正義だ。そう思うだろ王女?」
《キミには ドウ考えても セイギって 言葉は 似合わないよ!? ソウダヨネ 王女さま?》
「いや待とう、鬼の親分にライオンくん。そもそもライオンくんは最初は王子で合ってるのに何で言い換えたの?いい加減泣いていいかな?」
と、三人が再び演技(と言う名のコント)を舞台の上で繰り広げ始めたのと同時に、文の陰に隠れ観客の死角にいる造がこっそりと舞台裏の未だパニック気味な明久たちにアイコンタクトで何やら会話し始める。
———以下、全てアイコンタクトによる超圧縮会話———
《(アキさんたちもヒデさんとゆーさんに話を合わせてください!演技もアドリブでお願いします!)》
『(え?い、いや造……アドリブ?てか何がどうなっているのコレ?ドッキリ?)』
『(…………造。何でラストに来て演出を変えた?)』
《(説明は後で!何でもいいのでお願いしますっ!)》
『(いやいやいや?って言ったってどうすんのさ?こっから先台本が一切無いんだけど……)』
ちなみにここまでのアイコンタクトにかかった時間、驚きの2秒。
『(ホレ!いいからお主らも適当に何か取り繕うのじゃ!)』
『(…………これはまた無茶振りだな)』
『(明久、ムッツリーニ。いいからさっさと俺たちに続け)』
『(ハァ!?何言ってんのさ雄二!?)』
『(ここはウダウダ言っても仕方ねぇだろうが。どうするもこうするもねえさ)』
『(幸いにも客はこの展開にテンションが最高潮に上がっておる。このままノリと勢いに任せ走り抜けるのじゃ。多少の妙な展開でも誤魔化せるからの)』
『(そう言うこった。下手にここで終わるわけにもいかねえしな。造と秀吉に続くぞ)』
ここで一息入れた秀吉&雄二も明久たちにアイコンタクトを飛ばす。この間3秒のアイコンタクト。
『(う、うーん……でもなぁ)』
《(大丈夫ですっ!もうここまで暴走したシナリオなら、ヒデさんの言う通り多少の事は元々の脚本だって思われますから!)》
『(…………島田と姫路はどうする?)』
『(姫路たちにはこんな急なアドリブ任すのは、ちと荷が重いじゃろう。一応待機させておいて、ワシが隙を見てあやつらに指示を出す。それまでワシらでこの場を持たせるのじゃ。ワシがナレーションもその間引き受けようぞ)」
『(まあって言っても、俺らも流石にロクに動けねぇだろうが……少なくとも秀吉のアシストくらいはしてやんねえとな。面倒だがやるしかねえ。それによく考えてみろ、明久にムッツリーニ。いつものあのババァの無茶振りに比べりゃ———こんなもの可愛いもんだろが)』
『『(…………確かに)』』
《(そ、それで納得されるのも何だか学園長に申し訳ないのですが……これさえ乗り切れば(多分)大団円です!行きますよ皆さんっ!)》
『『『『(応っ!)』』』』
———アイコンタクト終了・アイコンタクト通信にかかった時間=約7秒———
- 番外編:ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜その⑨ ( No.175 )
- 日時: 2015/11/01 21:08
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
……深くはツッコまないが、これだけの会話を10秒以内に———しかもアイコンタクトで通信するこのメンバーの無駄に高度なコミュニケーション能力にはつくづく感心せざるを得ない。
そんなこんなで再び舞台に上がった明久たちは、各々台本も何もない状態で演技を再開することに。
「あー、そこの鬼!君は完全に包囲されている!眠り姫ちゃんを今すぐ解放して、大人しくボクらに渡すもの渡すならこのヘタレオンを煮るなり焼くなり食うなりボコるなり好きにしていい!」
「ほう?良い根性してるなそこのバカカシ?おい、そこの鬼。人質と奪った宝をこのバカカシ一体と交換するって事でこの場を治めることにしようや。まあ、その居眠り嬢ちゃんとは比べ物にならんだろうがカカシを焼くなりサンドバックに使うなり藁人形にするなり好きに使うと良い」
「…………今ならそこのバカとヘタレをセットにしていい。ついでにここまでの旅で撮った王女様と眠り姫の秘蔵の写真集も格安で取引してもいい」
「「ついでにこのエロボットもタダで持って行っていいよ(いいぞ)」」
「ちょ、ちょっと!?君たちは何を互いに足引っ張ってんのさ!?てかそこのロボット君は今まで何してたの!?……うぅ、今更だけど仲間にする人(?)間違えた気がしてきたよ」
《キミたち やっぱり アクトウか トウゾク でしょ? 平気で ナカマ 売って イイノ? ソモソモ バカも ヘタレも エロも いらない ヨー? 眠り姫ノ 写真集は 奪って イクケド ネー》
「「「なにぃ!?」」」
《イヤ そこで 驚かれても コマル けど 君タチ いらない ヨー? ぶっちゃけ 眠り姫 以外 キョーミ ナイシー?》
【鬼の親分を名乗る鬼がそう言うと、王子さまとカカシたちは足の引っ張り合いを一旦止め、鬼の方を向き直します。どうやら話し合いは上手くいかなかったようです。五人の間に緊張が走ります】
ちなみにこのナレーションは秀吉によるもの。さっきまでのナレーションの違和感が無いようにちゃっかり美波の声帯模写をしているところは最早プロもビックリの演劇根性である。
「くっ……交渉決裂か。こんなにも譲歩したはずなんだが。やはりバカなカカシを生贄に出すのは無理があったな。役に立たん」
「こうなったら力づくでも眠り姫ちゃんを取り戻すしかないね。ヘタレなライオンにはそんな勇気かもしれないけど」
「…………バカとヘタレはこれだから」
「君もね、エロボット君……いっそカカシ君たち置いていって、眠り姫だけ助けようかな。何度言っても僕を王女扱いするし」
最早一体何がどうなっているのか、そもそもどこからどこまでが演劇なのか?色々とカオスな舞台を上に鬼の文も王子の秀吉も明久たちカカシ達も、それぞれの視線に火花が散り今物語はラストシーンへと(ようやく)移行する。
《王女さま ソレデ いいの? マァ どっちでも イイケド ネー♪ てなわけで 眠り姫ヲ 返して ホシイ なら … … … コイヨ 王女さま ト その他! 武器なんか 捨てて かかって コイ!》
「誰が王女だ!?こうなったら実力行使!何がなんでも僕が王子だってわからせてやる!」
「「「うぉおおおおおおおおお!いくぞおおおお!」」」
【こうして鬼の親分と王子さまたちの最後の闘いが始まりました。王子さまは剣で、ライオンは牙と爪で、ロボットは鋼鉄の腕で、そしてカカシは竿で鬼の親分に挑みます】
〜文もとい鬼の親分大暴れ中〜
【勇敢にも眠り姫を助けるため、必死に戦う王子さまたち。しかし今まで圧勝していた王子さまたちも鬼の親分の猛攻にだんだん押され始め……】
「な、なんて強さなんだ……」
「…………無念」
「クソッ……ここまでか」
バタリ×3
【遂には頼りになる(?)お供の三人が倒れてしまいました。そして王子さまも限界のようで苦々しい面持ちで鬼の親分を睨みます】
《ふっふっふっ! コレデ 残りは 王女さま だけ ダヨー♪ コーサン するなら 今の ウチに ネー》
「ま、まだ……だよ。まだ僕はやれ、る!」
《ごーじょー ダネー? まあ これで トドメ ダヨー》
【そう言って勝利を確信した鬼の親分が、持っていた大剣で王子さまに止めを刺そうと振りかぶります!王子さまも覚悟を決めたその時です!】
パシィ!
「《っ!?》」
【王子さまを庇うかのように、割って入る謎の人影が見えるではありませんか!】
《……もう、お止めなさい》
《何者 ダー! イイところ だった ノニー!》
《これ以上はお止めなさいと言っているのです》
【そんな綺麗な声の持ち主が鬼の親分と王子さまの間を割って入り、何と鬼の親分の大剣を素手で受けとめます!勿論受け止めたのは王子さまでもなければカカシたち3人の従者でもありません】
そのナレーションが流れた直後、謎の人物をスポットライトが照らし出す。その人物が照らし出された瞬間———鬼の親分も、王子も、従者のカカシたちも、更には観客さえも目を疑った。
《そこの鬼、怪我をしたくなければ今すぐ剣を収めなさい》
「《って……!?えぇ!?貴女がどうして!?》」
【鬼の親分や王子さまが驚くのも無理はありません。そう、大剣を受け止めた人物はあろうことか、長い黒髪をなびかせ綺麗なドレスを身に纏い、永い眠りについていたハズの———】
《貴女の非道、これ以上は見逃せません。ここからは……私、眠り姫(スリーピングビューティ)がお相手いたします。覚悟はよろしいですね?鬼の親分(文)さん》
「《ね、眠り姫が……起きた!?》」
【———人質となっていた眠り姫だったのです!】
美波(cv:秀吉)のナレーション通り……文の大剣を受け止め秀吉の召喚獣が演じる王子の危機を救うために現れたのは、どういうわけか眠っていたハズの造———もとい眠り姫。物語の根底自体がとんでもない方向へ進んでいるこの状況で、果たして収集はつくのだろうか。
- 番外編:ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜その⑩ ( No.176 )
- 日時: 2015/11/03 20:52
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
眠り姫の造が舞台に現れた瞬間、その場にいた王子も鬼の親分もカカシたちも観客の全員でさえこの時は皆、心は一つであったと後に語られる。
『『『『眠り姫が……勝手に起きた!?』』』』
まあ、全員そう思うのも無理はなく。そもそも眠り姫が勝手に起きてその上鬼の一撃を受け止めるなど、原作の眠り姫も驚いて目を覚ますレベルのビックリシチュエーションである。
《そんなっ ドウシテ 起きてるの!? ワタシが 眠り姫に かけた 呪いは カンペキの ハズ!? ソレ 以上に フツウ 素手で 剣を トメル!?》
「ね、眠り姫?えっと……これはその、一体どう言う事ですか?」
《ふふっ、申し訳ございません王子さま。その話は後ほど。———それよりそこの鬼。聞こえませんでしたか?早く剣を収めなさい》
【そんな鬼の親分や王子さまの疑問もお構いなしに、眠り姫は今目覚めた事が信じられないほど凛とした態度でそう告げます。その眠り姫の雰囲気に呑まれたのか、先程まであれだけ大暴れしていた鬼の親分も睨まれただけで怯んでしまう有様です】
と、そんなナレーションが入る通り実際この眠り姫、いや造自身も相当覇気や怒気が在るように見える。それもそのはず、一応は文のやりたいようにやらせてはいる造であるがあれだけ好き勝手暴れた文に怒っていないはずもなく、
《(エット … … … ツクル 何か チョット ホントに 怖い ヨー? もしかして ホントに 本気デ 怒って ナーイ?)》
《(……ふふっ、そんなことないですよ?これは演技デス♪自分が文さんに怒っているワケないじゃナイデスカ?ちょっと暴れ過ぎだなって思って折檻しようカナ♪って思っているくらいデスヨ?)》
《(… … … アレー? ヒョット して 文 ヤバイ?)》
そんな会話が一瞬造と文の間で行われたとか行われなかったとか?小声での会話だった為二人以外はどう言う内容だったかはわからないそうだが。
《エット … … … ソ ソンナに 睨んでも コワクない ヨー! そもそも 武器も ナイノニ どーする ノー?》
《ほう……?中々良い根性ですね。あくまで剣は引かないって事ですか》
《コウ なったら もう一度 眠り姫には 眠って モラウ ヨー! カクゴー!》
「っ!眠り姫、危ないっ!」
【再び鬼の親分はその大剣を振りかぶって王子さまと眠り姫を狙います。慌てて王子さまが立ちあがって眠り姫を庇おうとしますが、時すでに遅く———】
《ッセイッ!》
「……え?」
《… … … アレ?》
パキン!
「《…………折った!?》」
【———王子さまと眠り姫を襲うはずの鬼の親分の大剣は、何と眠り姫がまるで爪楊枝を折るかの如く片手で簡単に折ってしまいました。これは王子さまや鬼の親分とて予想していなかったようで目を丸くしてしまいます】
『さ、最近のお姫様は随分強いんだな』
『待て。ありゃそう言うレベルじゃねぇだろ』
『鬼より強い姫さんか。胸が熱くなるな』
『もう姫一人でいいんじゃないのこれ?』
王子や鬼の親分どころか観客の皆さま方も全く同じ反応のようである。そもそも何処の世界にそんな芸当のできる眠り姫がいるのであろうか?
『あ、あれ?剣が……簡単に折れちゃった』
『スゲー!眠り姫さまつえー!?』
『姫さまカッコいい!』
『姫さまー!頑張れ—!』
そして安心のこのブレない小学生ズである。この町の子供たちは今日も色んな意味で逞しい。
【武器を失ってしまった鬼の親分は、もうなすすべが無くただただ後を引きずるのみです。そんな鬼の親分に眠り姫はゆっくりと近づきます】
《……人を勝手に眠らせたあげく、各地の村々を襲い人々を苦しめたその悪行。私が貴女を罰します。では改めて———覚悟は良いですね(良いですよね、文さん♪)》
「ね、眠り姫……?正直鬼より怖いのですが」
《ひぅ!? … … … コホン で、デモ キミも 武器が ないのに どうする ノー?》
《だったら……愛の一撃(物理)を叩きこむまでdeath(デス)☆大丈夫です、痛いのはちょっとだけですからね〜》
そんな一言を放ちつつ観客の皆様方にこめかみに青筋を立てているのを見せないように後ろを向いたまま、眠り姫の造は右手を力強く握りしめて……
《い い 加 減 反 省 し な さ い っ!》
《(ゴンッ!)きゃう!?》
【眠り姫の(中の人の心情も含まれた)怒りの拳骨一撃が、鬼の親分の頭に直撃しその自慢の角を叩き折ってしまいました。するとどうしたことでしょう。角が折れた瞬間、鬼の親分の姿が人間の姿へと変わっていきます。それどころか先程カカシ達が倒した鬼たちも人間へと変わっていくではありませんか!】
- 番外編:ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜その⑩ ( No.177 )
- 日時: 2015/11/03 20:53
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
それと同時に禍々しい鬼ヶ島の背景が徐々に変わってゆき、緑豊かな平和そうな島へと元に戻っていく。もう何が何だかわからない王子も復活したカカシ達もポカンとした様子でこれをただ眺めるほかないようだ。
「鬼たちが……人間に変わった?」
「しかも鬼ヶ島まで何か変わってない!?」
「…………どう言うことだ?」
「こりゃ何か事情がありそうだな。そうだろ、居眠り嬢ちゃん?」
そう言ってこれがどう言う事なのか説明して貰うように眠り姫に詰め寄る王子たち一行。
《……はい。それはですね———》
「申し訳ございません。王女———王子さま。その説明は、」
「私たちにもさせてください!」
「「「「え?」」」」
【と、そこにすかさず眠り姫を庇うかのように現れたのは……王子さまを旅に出るように促したお城の女騎士と王子さまたちを眠り姫共々鬼ヶ島まで送りだした良き魔法使いの二人でした】
〜舞台暗転:次の場面〜
———舞台:お城———
久々に暗転し、鬼ヶ島の背景が書き変えられ映り出されたのは一番初めの王子さまのいた国の城。
【説明を女騎士たちに聞くため、再び良き魔法使いの特製きび団子(自家製)の力によりデ●ルーラー———もといテレポートした王子さまたち。ここは旅の始まりの場所、王子さまの住んでいた国のお城です】
「って、あら?皆さんどうしてぐったりしているんですか?」
「「「「「《……何でも、ないデス》」」」」」
ちなみに例の如くきび団子(殺)でフラフラな召喚獣たち(+明久&造)。一応演劇に差し支えは無さそうなので、気合でそのまま演技する。
「そ、それで?一体どういう事なの。何で眠り姫が自分から起きたり女騎士や良き魔法使いまで現れるの?」
「それにあの鬼や鬼ヶ島ってどうなってたのさ?」
《その事ですが……先に謝らせて下さい。申し訳ございませんでした皆さん》
「今まで黙っていて、本当にすみません王女———じゃなくて王子」
「カカシさんたちもゴメンなさいです」
【そう言って眠り姫と女騎士、良き魔法使いの3人は事の顛末を順を追って話し始めます。彼女たちが言うにはあの島は元々平和な島だったのですが、突然悪い魔法使いの呪いを島ごと受けて以来島の住人は鬼へと変わり果ててしまったとの事です】
ちなみに造演じる眠り姫は女騎士や良き魔法使いの友人で実は戦姫という設定らしい。実力の程はあの鬼との闘い(一方的な殴り合いとも言う)から分かる通り、王子さまの国一番の腕を持つ女騎士とも渡り合える唯一の存在だとか。道理で強いはずである。
《その悪い魔法使い自体は私が退治したのですが……私も悪い魔法使いとの闘いである呪いをかけられたのです》
「ある呪い?それって一体?」
「眠り姫の呪いと言えば、言葉通りの意味ですよ。悪い魔法使いの呪いが解けるまでずっと眠ったままになる呪いです」
そう女騎士が説明すると王子は少し考えた後、首を傾げてこう尋ねる。
「ならどうやってその呪いを解いたのですか?鬼を倒してもいないのに途中から眠り姫の呪いは解けてたようでしたが?」
《それは簡単です。この呪いの解き方は“私を連れて呪われた場所へと赴き、真の勇気を示す事”でしたから。王子さまが私を鬼ヶ島まで連れていってくれなければ、あの島も鬼となった人々も救われなかったでしょうね。勿論私もあのままずっと眠ったままでしたし》
「眠り姫ちゃんは待っていたんですよ。王子さまのような立派な方が自分を目覚めさせてくれる時を」
「私は王子さまにならきっとそれが出来ると信じていました。強くなられましたね王子」
そう言って改めて王子に頭を下げてお礼を言う眠り姫たち。そんな3人を不満げに睨みながらライオンが口を開く。
「ちょっと待て……って事は何か?ひょっとして鬼ヶ島にいけば望みのもんを何でも手に入れられるって言う話はアンタらの嘘か?王女のお供に俺たちを使う為に」
「ええ。その嘘は私がね。この話を聞いたら貴方たちなら絶対に王子さまについていくでしょ?」
【そんな女騎士の話しを聞くと、王子さまもカカシ達もがっかりとした表情を浮かべます。そう、何せ旅の目的の一つである4人の求めていたものは手に入らないと知ってしまったからです】
「そんなぁ……それじゃあ、ひょっとしてボクが欲しい知恵は手に入らないって事?」
「…………騙された」
「くたびれ儲けか……」
「それに……僕も結局鬼を倒せなかったし。王子さま失格かなぁ、情けないよ」
【そんな不貞腐れた彼らに、眠り姫たちはふふっと笑ってこんな事を語ってきました】
《そうですね。確かに鬼ヶ島にはそんなものはありませんでした。ですが王子さまたち。貴方たちはこの旅路の果てにすでに“それ”を手に入れているんですよ?》
「「「「……え?」」」」
「そうね。例えばカカシは知恵を欲していたようだけど、貴方はこの旅の途中で様々な知識を得て自ら考えて動いていたのでしょう?」
「え?……そ、そうなのかな?(あれ?そんな事あったっけ?)」
「ロボットさんとライオンさんもです。ロボットさんはこの旅で相手を思いやる心が芽生えませんでしたか?ライオンさんはあのお姫様に告白するくらいの勇気を持って鬼と闘いませんでしたか?」
「「…………あ、ああ。(別にそう言うのは無かったような?)」」
「「ありましたよね?……ね?」」←特製きび団子をチラリと見せながら
「「「ありましたっ!」」」
【そう、この鬼ヶ島までの旅の途中で、すでにカカシ達は自分たちが望んでいたものを手に入れていたのでした。その事に気がついた三人は嬉しさのあまり歓喜の涙を流します】
涙を流す本当の理由はきび団子の恐怖でだが。
- 番外編:ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜その⑩ ( No.178 )
- 日時: 2015/11/03 21:57
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
《えっと、コホン。そして最後に王子さま。貴方のお陰で私は永い眠りから目を覚ます事が出来ました》
「え……?で、でも僕は結局鬼も倒せずに貴女に助けられたんですよ?そんな僕は王子にふさわしくは———」
と、眠り姫はそれ以上の言葉を王子に言わせないように首を振って続ける。
《貴方は立派な王子さまです。貴方は鬼に敵わないとわかっても勇敢に立ち向かって来てくれましたよね?眠り続ける私を庇ってくれましたよね?》
「それはそうですが……」
《鬼を倒す事自体は問題ではないのですよ。貴方のその勇気は何より貴方が王子足る器である証拠なのです。でなければ私が目覚めることは無かったわけですし♪胸を張ってください王子さま》
「眠り姫……は、はい!」
【……こうして、カカシは(悪)知恵を。ロボットは(自重する)心を。ライオンは(告白する)勇気を。そして王子さまは王子さまである証明を無事に得ることが出来ました。それからと言うもの———】
「それじゃあライオンさんはあのお姫さまに告白して来て下さいねー♪」
「え!?ちょ、ちょっと待て魔法使い!?お前何勝手に……」
「あ、安心してくださいっ♪また私の素敵な魔法(きび団子)ですぐにお姫さまの国へ飛ばしてあげますから!」
「なにするやめ———ぎゃあああああああああ!?」
【あのヘタレだったライオンはお姫さまに告白すべく一人また旅立ったそうです。風の噂では無事に結婚までしたとか】
「ほーらカカシ。知恵をもっと付けたいならちゃんと勉強しないと、ね♪」
「えっ、女騎士何言ってんの?そんなことよりボク、ゲームとかしたいんだけど」
「遠慮しないでください!ホラ!参考書いっぱい買ってきましたし、ちゃんとやりましょうねー!」
「よ、良き魔法使いまで!?」
「安心しなさいカカシ、私たち二人がちゃーんと女心のわかる賢くてカッコイイカカシに育ててあげるわ」
「文武両道の素敵なカカシさんにしてあげるので頑張りましょうね!」
「こ、ここは地獄なの!?い、嫌だ!遊ばせてよぅ!?」
【脳がなかったカカシはもっと勉強すべく女騎士や良き魔法使いの元、王子さまのお城で日々参考書と闘う毎日だとか】
「ああ、それからそこのロボット。アンタ自重する心を覚えたのよね?」
「…………は?」
「だったらこのカメラいりませんよねー?没収ですね」
「…………っ!?(ブンブンブン)」
「それとアンタって行く当て無いんでしょ?お城で働かせてあげるから感謝しなさいな」
「まずはお城のお掃除をお願いしますねー」
「…………それ唯のパシリ……!?」
【ついに自重する心を身につけたロボットは、その愛用のカメラを預けて真っ当なロボットとしてお城でパシリ———お手伝いするようになったとか。三人の王子さまの従者は今日も幸せそうです】
「「「待った!?こ、これなら旅したり鬼どもと戦っている方がまだマシじゃないか!?」」」
「……ねえ、眠り姫?幸せって何だろうね?カカシくん達大変だなぁ」
《あ、あはは……まあ、楽しそうですしこれもこれで良いのではないでしょうか?》
「あーうん。そうだよね?」
《ええ。きっとそうですよ♪》
【そして……王子さまと眠り姫の二人は時々眠り姫が王子さまに稽古をつけながら、ずっと仲良く暮らしていったとか?これも一つのめでたしめでたし】
ナレーションが終わると同時に、ゆっくりと舞台からスポットライトの光も立体映像の背景も、そして召喚獣たちも消えてゆく。これで長かったバカテス童話も何とか終幕となる。さてさて、観客の反応はと言うと———
造Side
……さて、あのハチャメチャな演劇(?)のその後の事を少しだけ語っておきましょう。
『けっこうおもしろかったねー』
『動きまくってたし、なんかしんせんだったよね』
『あの動いてた人形さん可愛かったしね♪』
『眠り姫さまかわいくてかっこよかったー!』
結果的に言えばあのトンデモ脚本の演劇は睦月小の子供たちや観客の皆さんを奇跡的に……そう、本当に奇跡的に大いに楽しませ、葉月さんの小学校の創立記念セレモニーは大成功となったそうです。ちなみにどなた知りませんが、この演劇を録画していた方々がダビングして睦月小学校の各家庭に無料で提供した、なんて噂も流れたのですが……さ、流石にただの噂話ですよね?
『くくくっ!いやはやイイもん撮れたな優子っち———もとい弟子一号!』←主犯
『ええ師匠!秀吉———もとい我が弟の晴れ舞台ってことでこっそりスタンバっていましたが……まさか造くんまで出演した上にこんなにイイ絵が取れるなんて最高ですね!』←共犯
———何でしょう?何かすっごい嫌な悪寒がしたような……?こ、コホン。それはともかく今考えても、よくあのシナリオで何とかなったなって思いますよ。一歩間違えれば絶対抗議されるレベルでしたし。特に文さんのラストのアドリブと言う名の暴走は……何といいますかホントにノリと勢いオンリーで乗り切ったと言いますか……
「文……アンタはとりあえず今回の諸々の件を本当に反省するまでは月野と面会禁止、ついでにネットも禁止だよ!」
《えぇ!? ばーちゃん ヒドイ! イジワル!》
「やかましい!もう少しでとんでもない事に成りかけたってわかってんのかい!?」
《楽しかったし イイ ジャナイ ばーちゃんの ワカラズ ヤー!》
「分からず屋ぁ!?それをアンタに言われたくないよ!とにかくさっさと召喚獣の演劇仕様を元に戻しな!」
《… … … 戻したら ユルシテ くれるー?》
「良いからさっさとやりな!と言うか、まだ説教は終わってないよ!」
《むー! ケチー!》
案の定演劇終了後、文さんは学園長にこってり絞られたとか。まあ、今回は(今回も?)しっかり反省して貰いましょうかね。何事もやり過ぎはいけません。あ、一応無事に召喚獣の設定は元に戻ったそうです。良かった良かった。
「つーかこれで設定戻らずにもう一回やれ。なんて言われたらマジでババァぶちのめすからな……」
「…………疲れた」
「だよね……普通の演劇ならともかくこの召喚獣の人形劇はこりごりだよ……」
「そう?ウチは結構楽しかったわ。感想聞いたけど葉月も喜んでたみたいだし」
「そうですね。初めての大舞台でしたけど私も良い経験が出来たと思います」
あ、それと本来行うはずだった『美女と野獣』の改変版の演劇は、演劇部の皆さんが回復した後日、再び睦月小で講演したとのこと。この演劇も大盛況であったことをお伝えしておきましょう。ああ、そうそう。演技・演技指導・脚本再編集・シナリオ設定・舞台監督———その全てをこなした今回のMVPのヒデさんですが……
「君は本当にセンスが良いね。一度私たちの舞台に遊びにおいでよ。色々と勉強になると思うよ」
「ほ、本当かの!?そ、それはありがたいのじゃ!」
「ふふっ、歓迎するよ」
同じく睦月小学校の生誕祭にいらしていた、とある有名な劇団のメンバーに気にいられたそうでそこから色々と縁が出来たとか。おまけにその方から週に一回文月に来て演劇の指導をやってくれると約束してくれたとかも。ヒデさんとても嬉しそうでしたね、ヒデさんが頑張った甲斐があったと言うもので何よりですよ。
ふふっ♪…………その劇団の有名な俳優に“木下秀吉”の名が加わるのは、ちょっとだけ未来(さき)のお話です。
……それから最後に。これは自分の事なんですが———
『あー!眠り姫さまだー!』
『姫さまー!きょうもごきげんうるわしく♪』
『姫ってさ、いつもきれいだよな……』
『うん……きれいだよね』
『姫さま笑ってー!』
「……“また”ですか」
「つ、造よ。そう気を落すでないぞ」
「うぅ、あれから一応自分は男だって説明したハズなんですが……」
…………あの演劇以来、近所を歩けば小学生の皆さんから眠り姫さまと呼ばれるようになりました。葉月さんから聞いた話だと、自分が睦月小のお姫さま兼皆のお姉さまになり始めたとか。ホントにどういうことなの……
「しかもどうして最後にちょっとだけ出た自分の役が、こんなにウケが良いんでしょうね……ヒデさんとかアキさんたちのほうがどう考えても頑張っていたでしょうに」
「いやいや、それは仕方あるまい。こういうのは最後のインパクトが大きいものの方が印象に残るからの。こやつらがお主をヒーローのように見るのは無理もない。しばらくは耐えるほか無いじゃろう。実際……その、中々にカッコよかったぞ造よ!」
「そう言っていただけると嬉しいんですが……と言っても役は眠り姫なんですよね自分……」
それでも慕ってくれるのは悪い事ではないと思いますし、ここは(引き攣った)笑顔で皆さんに応えます。ハァ……さてと、今日もまた大きな誤解とちょっぴり(?)過激な告白に対応する日々の始まりですかね。
『あ、あの!どうかオレのこの手紙受け取ってくださいっ!』
『ぼ、僕の手紙も受け取ってください!』
『あー!ぬけがけ禁止っ!眠り姫さま、むしろあたしを受け取ってくださいっ!』
『姫さま———いえ、姫姉さま……わたしのお姉さまになってくださいっ!』
『あたし……姫さま飼いたい』
「…………あ、あのね皆さん。何度も言いますが、あれは演技で自分は男の子なんですよ。だから———」
『『『『『姫さま!お願いします!』』』』』
「———だからせめて、せめて人前で姫さまって呼ぶのだけは勘弁してくださいぃ!?」
- 番外編:召喚実験シリーズ〜自分と本音と暴露大会〜その① ( No.179 )
- 日時: 2015/11/06 20:54
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
「……ふむ。これはまた……」
「学園長?どうかなさいましたか?」
ここは文月学園の長、藤堂カヲル学園長のいる学園長室。学園の運営や召喚システムの管理等を行う意外と(何が意外とだい!? By学園長)重要な場所である。
「ん?ああ西村先生。いやね……ちょいと試験召喚システムの操作系統を調整してたら、妙な事になってねぇ」
「……またですか。それで?妙なことと仰いますと?」
流石に西村先生はシステムの暴走に慣れているだけあって、半分呆れつつも冷静に学園長に尋ねる。
「ま、またとはどういう意味さね!?……コホン。いや、どう言うわけかシステムと《文》の意識と連動してしまってね」
「文……ああ、あの子の。それで?」
「召喚獣が半自動化しちまってるのさ。今までの設定がはっきりとした意識のみを読み取っていてとしたら、今回のはその一歩先の意識と無意識の間辺りも読み取って、ある程度自立的に行動出来るようになったってことだねぇ」
「意識と無意識の間……つまり前意識を読み取るということですか?それは確かに妙なことになってますね」
ちなみに前意識とは精神分析の用語のことで、その時は意識していないが思い出そうと思えば思い出すことのできる心の領域。意識と無意識の中間にあると言われている。
「まあ、フロイトの言う前意識とは少し意味合いが変わってくるけどね、だいたいそんな感じさ」
「そうですか。———それで?今度はどんな悪だくみをしているのですか?」
と、西村先生は持っていた資料をまとめつつ、学園長をジトっと睨む。
「……ひ、人聞きが悪いねぇ?別にアタシは実際に召喚獣を喚び出してデータを採りたいなんて思っちゃいないよ」
「(思っているな……)まあ、データ採取なら協力しましょうか」
「あー……いや。アンタの点数だと、試運転に使うには召喚獣が強すぎるからね。何かあったら困るんだよ。暴走的な意味でね」
何せ1桁の点数ですらゴリラ並みのパワーがあると言われる召喚獣。高得点の召喚獣が下手して暴走でもすればどれだけの被害が出るかは容易に想像できるだろう。
「ふむ……でしたら故意に一度低い点数を取りましょうか?」
「それでもいいんだけどねぇ。一度低い点を取って、後でまた点数を戻すためにもう一度試験を受け直すとなると、流石に面倒だろう?」
「そうでもないですが。まあ、効率が悪いと言う意味では確かに。それでしたら———」
『西村先生!大変です!またFクラスの連中が職員室で暴れています!』
『よ、吉井君に坂本君!?何で職員室に逃げ込むんですかっ!?』
『すみませんっ!こうでもしないとあの暴走戦士達から逃げられないんです!行くぞ雄二!』
『わかってる明久!そう言う事で悪いが職員室を通させて貰うぞ!』
『『『異端者共に死の鉄槌を!貴様ら、大人しく審問を受けろッ!』』』
「———すみません。ちょっと指導してきます」
ガチャ!パタン
『貴様らっ!何を暴れておるのだっ!全員とっ捕まえてやるから、覚悟しろ!』
『『『げっ!鉄人!?』』』
『『ちょ、ちょっと待て鉄人!僕(俺)らは被害者で———』』
『それは職員室で暴れておるお前らが言う台詞か!?いいから全員補習室行き決定だ!』
『『『嫌だぁあああああああああああああああああああああ!!!』』』
「———ふむ、そうさね。こういうのは最初から点数の低いバカ共にやらせた方が効率いいねぇ。それに……あのジャリガキの本音が聞けるのは、ちょうど良い機会かもしれないね」
造Side
「「「召喚獣の試運転?」」」
「ああ。そいつをアンタらにやってもらいたいのさ。今ちょいと面白いことになっていてねぇ」
あの体育祭兼召喚野球大会も無事に終わり、しばらく経ったある日の休日の出来事です。Fクラス特別補習(ああ、ちなみに霧島さんと優姉さんは自主登校ですが)が終わってから、体育祭の写真(いつ誰がどこで撮っていたのやら?)を皆さんで鑑賞していると、学園長が現れてそんなことを仰いました。それにしても……試運転ですか。
「(あの、学園長?もしかして文さんがまた何かしちゃいました……?)」
「(ん?ああ、今回は違うよ。文は何もしちゃいないさ。“文がシステムに”———と言うよりも、どちらかと言うと“システムが文に”影響されたようでね。どうも今回の召喚獣は無意識領域の一部を読み取っているようなんだが……コレはアタシが設定したわけじゃないんだよ。つまりシステム自体が文を通じて独自に進歩している証拠さね。だからこそホントの意味でデータを集めたくてねぇ)」
ちょっと小声で学園長に確認。良かった、取り越し苦労でしたね。まあ、体育祭や演劇の時にあれだけ叱ったんですし、そうそう文さんもトラブルを起こすわけではないですね。基本的にとても良い子ですし。
- 番外編:召喚実験シリーズ〜自分と本音と暴露大会〜その① ( No.180 )
- 日時: 2015/12/21 23:03
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
「えっと……どうしてウチら何ですか?」
と、島田さんが持っていた写真を片づけつつ学園長に尋ねます。言われてみれば確かにどうして自分たちに……?
「どうしてもなにもアンタらが適任だからさ。アンタらなら点数が高すぎず、召喚獣の扱いにも慣れているだろう?それに——」
「それに?」
「———職員室で暴れていた、どこぞのバカ共への罰になるからねぇ」
「「ちょっ!?待てババァ!だから僕(俺)らは被害者だ!」」
「あれだけ暴れておいて、被害者ズラすんじゃないよ!このバカコンビがっ!」
あはは……そう言えばアキさんとゆーさん、いつものようにFクラスの皆さんに追いかけられて職員室に駆け込んだって言ってましたっけ。毎度のことながらお疲れ様です。
「あの。試運転って、具体的にはどのような事をするんですか?」
と、脱線しかかったところ姫路さんがうまいこと話を戻します。ナイスフォロー姫路さん。
「ん?ああ、特にこれと言ったテスト項目はないさね。呼び出して、適当に動き回らせるだけで良いさ。なんの動きもさせないのはテストにならないから困るけどね」
「あ、それだけでいいんですか。それなら私でも出来そうです」
姫路さんが安心したように胸の前で手を合わせます。何だ、結構簡単な事なんですね。試運転なんて聞きましたから、自分もちょっぴり不安に思ってたところでしたもの。
「それなら私、手伝いますね。学園長先生」
「……私も」
「アタシも大丈夫ですよ」
「いや、アンタら三人はダメさね。点数が高すぎる。何かあったら困るからねぇ。気持ちはありがたく受け取っておくよ」
姫路さん・霧島さん・優姉さんの三人も手伝いを名乗り出ますが、やんわりと断る学園長。ああ、そうですよね……確かに下手に高い点数の召喚獣が暴走でもしたら、とんでもないことになりますし。
「そう言う訳で試運転は月野・吉井・坂本・土屋・木下弟・島田に頼むよ。教科は地理でね」
「「「「……名指し指定って……暗に地理の成績が悪いって言われているんじゃ……」」」」
「自覚はあるようだねぇ。まあ、そう思うんならちゃんと成績上げる事さね」
あはは……まあ、誰にでも向き不向きがありますもんね。自分も未だに英語が最下層ですし……
「……ちょっと待てババァ。このメンツはともかく、俺と造はそれなりに点数が高かったはずだが?」
「あれ?そう言えばそうですね。大丈夫なんですか?学園長?」
「ああ。月野は強制的に召喚獣になるからこの試運転も強制参加は仕方ないさね。とは言え月野自身が召喚獣になるわけだし、自身の行動をコントロールできるはずだから今回は特に心配はいらないさ。んで、坂本。アンタには———」
「俺には?」
「———アンタには何が起こっても構わないからね」
「それが教育者の言葉かっ!?」
ゆーさんに堂々とそんなことを言う学園長。学園長……えっと、それはゆーさんを信じているからこそ、ですよね?
「とにかく、そういう事だよ。試験時間は今から一時間。召喚フィールドは一応試運転用に学校全体に広げておくけど、一応この教室から出ないように。データが採りにくくなるからね。うまくやってくれたら……そうさね。図書券や学食の食券を贈呈しようかね。ただでやらせるのもなんだしね」
「「「おおー!」」」
学園長随分景気いいですね〜♪これならアキさんたちも喜んで———
「「…………」」
……あれ?何だかこういった報酬に一番喜びそうなアキさんとゆーさんが思案顔。どうしたんでしょうか?
「じゃあ、頼んだからね。報酬を出すんだから———絶対に、途中で投げ出すんじゃないよ。ああ、そうそう月野」
「はい?」
「一時間ある事だし、アンタの腕輪の調整もしとくよ。ホレ、出しな」
「あ、それは助かります。よろしくお願いしますね」
と、自分の白金の腕輪である代理召喚用の腕輪を受け取ると、そのまま学園長は教室を後にしました。
「ご褒美を用意してくれるなんて、学園長も太っ腹ね〜♪ちょうど欲しい本もあったし助かるわ」
「…………図書券はいくらあっても困らない」
「学食の食券でもありがたいのう」
「良かったですね皆さん」
「……ちょっと羨ましい」
「ホントよね。まあ、今回は仕方ないかしら?」
皆さんが嬉しそうに話をしている中、やっぱりアキさんとゆーさんは何か考えているようですね。気になりますし、ちょっと聞いておきますか。
「(アキさん、ゆーさん?どうしました?ひょっとして何か不都合でも?)」
「(……なあ造。お前今のババァの説明聞いて、何とも思わないか?変だと思わなかったのか?)」
「(……へ?何がですか?)」
「(造は本当に変だと思わないの?君はあのババァ長がわざわざ簡単な操作をさせるだけでお礼なんて出すと思う?)」
「(…………あれ?まあ、言われてみれば確かに……?)」
簡単な操作だけなら学校全体にまで召喚フィールドを張る必要はないですし、アキさんの言う通りお礼を出されるほどの事でもないのもまた事実。
- 番外編:召喚実験シリーズ〜自分と本音と暴露大会〜その① ( No.181 )
- 日時: 2015/11/06 21:00
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
「(仮にお礼を出すなら出すで、いつもならもう少し色々と難癖つけてくるはずだよ。あのババァ長って超あくどいもん)」
「(明久の言う通りだ。おまけに……何でこのタイミングでお前の腕輪を回収する必要がある。単に調整が目的なら明久の腕輪も一緒に持っていくべきだろが。まるであのババァ、造がフィールド干渉を起こしてこの実験を止めないように持って行ったとしか思えねぇぞ)」
「(あ……そういえば腕輪……学園長が……あれ?)」
た、確かに……何だかアキさんたちの言う通り雲行きが怪しくなってきたような……?自分も何か嫌な予感がし始めました。そんなことを考えていると———
ボンッ!
「「《あっ!》」」
———突然自分の姿が馴染みある召喚音と共に召喚獣へと変化しました。どうやら学園長が校舎全域に召喚フィールドを張ったようですね。
「あら?月野が召喚獣になったってことは、フィールドが張られたってことね」
「ならばワシらも始めるとするかの」
「…………了解」
「「《あっ!三人とも待っ———》」」
「「「試獣召喚(サモン)っ!」」」
ボンッ!×3
三人を止めようにもすでに、先ほどの自分と同じくヒデさんたちの足元に幾何学模様が浮かび上がり、召喚獣が姿を現します。あちゃー……大丈夫でしょうか?
《……ちょっと皆さんを止めるの遅かったみたいですね》
「みたいだな。で?どうだ造。何か異常はないか?」
《えっと……今のところ特に異常は感じられません。以前のようなオカルト仕様でもなさそうですし》
「そうみたいね。やっぱりこのサイズが一番よね!」
「確かにしっくりくるのう」
「…………耳も尻尾もいつも通り」
そう、自分も含めて皆さんの召喚獣の見た目はいつもの召喚獣です。いつもと違うところと言えば、
【うーん?変わった点を強いて挙げるなら服装でしょうか?】
「そうですね。月野君の言う通り、服装もいつものじゃなくて学校の制服ですね」
「……武器も持っていない」
「ああ、そう言えば二学期に入って装備もリセットされるんでしょ?だから今は初期設定のまま何じゃないのかしら」
《ふむ……今のところ何も問題無さそうですね。考えすぎでしたかね?…………って、あれ?》
姫路さん……今“月野君の言う通り”って言いました……?自分声出てましたっけ……あれ?気のせい……?
「そだね。今のところおかしな部分は見当たらないね」
「いや、安心するのは早いぞ。さっきのババァの話だと、変更したのは操作性の部分らしいからな。動かしてみるまでわからんだろうし」
「ふむ。ならば、早速動かしてみようかの」
と、ヒデさんが自身の召喚獣を動かそうとします。その時———
【では、造に飛びついて驚かせてみるのじゃ】
「「「へ?」」」
急に聞き覚えのない子供の様な高い声が教室に響き渡ります。
《あれ?今どなたか喋りました?》
「いいえ?と言うか、アタシたちの誰の声でもないと思うわよ?」
「(ガシッ!)じゃ……じゃあ、今の声は何よ……?」
「(ガシッ!)ち、小さな子の声が聞こえましたよ……?」
「うおっ!?ふ、二人とも落ち着いて」
教室や廊下などあたりを見回しても、子供どころか周囲は自分たち以外誰もいません。他のFクラスの皆さんはすでに下校していますし、先生方も勿論いらっしゃいません。その事実に怯えたのか、姫路さんと島田さんはアキさんにしがみつきます。
「そう言えば以前召喚獣が妖怪になっておったし、そのせいで今度は心霊現象でも起きたのかの?」
「「えぇええええええっ!?(ギュウッ!!)」」
「いっ!?イダ、イダダダッ!?お、落ち着いて二人とも!?大丈夫だからっ!?」
と、ヒデさんの言葉に更に恐怖する姫路さんと島田さん。自然とアキさんの腕を掴む手に力が入っていますね。
《心霊現象……?いやいや……流石にそれは無いと思いますよ》
「そだね。それだと操作性の変更とは関係なさそうだし。てか、今の口調ってどこかで……?」
【今の声はどこから聞こえてきたんじゃろうか?】
…………あれ、この翁言葉。少し甲高いですが、この声……何だか自分の真横にいる親友さんの声のような……?
「“じゃろうか”だと?もしかして秀吉かコレ?」
「…………確かに口調は秀吉そっくり」
「む?じゃがワシは何もしゃべっておらんぞ?」
と、ヒデさんが首を傾げつつそう言った直後、
【な、何……?お化け?うぅ……怖いぃ……!】
【…………この声、変声期前の児童のもの】
他にもどこかで———と言いますか、ほぼ毎日聞いている友人たちの声に似た子供の声がします。とりあえずよくわからないので声が何処から聞こえるのか皆さんで見回すと———
「……召喚獣が喋ってる」
冷静に召喚獣を眺めていた、霧島さんがポツリとそう呟きました。ん?召喚獣が喋ってるですって……?
【それにしても、困ったのじゃ。今朝のことはどうしたら良いじゃろうか】
【怖いっ怖い〜っ!お化けとか、ウチ本当に嫌なのにっ!?】
【…………この視点の低さ。悪くない】
慌てて自分もヒデさんたちの召喚獣をよく見ると、皆さんの召喚獣が口を動かしているのに合わせてさっきの声を発します。
「ホ、ホントだ!召喚獣が喋ってる!」
「へぇー?こりゃ面白いな」
《おおぅ……自分以外の召喚獣が喋るのは結構新鮮ですね》
とりあえず皆さんの召喚獣を観察します。召喚獣は腕を組んだり、その場に頭を抱え込んだり、低い体勢から頭上を見上げてみたりと、それぞれ思い思いの行動を取っていますね。
「と、とりあえず、心霊現象とかじゃないみたいね」
「はぁ……良かったです……」
「あらあら。そう言えば瑞希も美波もそう言うのダメだったわね」
「しかしまぁなんつーか、操作性の向上というよりは、自動化って感じだよな。これ、お前らが指示してるわけじゃないだろ?」
「…………特に何もやらせてない」
「ワシもあのような動作をさせてはおらんの」
召喚獣はさっきから溜め息をつく仕草をしてみたり、胸に手を当てたり、仰向けに寝転がったりしていますね。ですがこれは……
【うーん……これって、ゆーさんの言った通り自動化なら、やはり文さんと同じような理屈……?確か学園長も今回は文さんに影響されたって言ってましたし】
「は?いや造、どうして急に文ちゃんの話になるのさ?別に今日は文ちゃん来てないでしょ?」
《【へ?い、いや……アキさん?自分はそんなこと別に喋ってなんかいませn———って、あれ?何で思った事まで声に出て……?ん?あれ?】》
と、自分が先ほどと同じ違和感を再び感じ始めたその時です———
【お化けとかじゃなくて良かったぁ……危うく前の肝試しのときみたいに、また眠れなくなって葉月と一緒に寝なきゃいけなくなるところだったわ……】
【まさかまた近所の男子中学生に告白されるとは……こんな話が明久たちにバレてしまえば、ワシは更に女扱いされてしまう。なんとか秘密裏に断らねば……】
【…………この視点の低さなら、いつでもアイツのスカートの中を見られる……!】
「「「「「「「「《……え?》」」」」」」」」
———ヒデさんたちの召喚獣たちが口々にそんなことを言い始めました。
《【……こ、これって一体?】》
- 番外編:召喚実験シリーズ〜自分と本音と暴露大会〜その② ( No.182 )
- 日時: 2015/11/13 23:43
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
雄二Side
【お化けとかじゃなくて良かったぁ……危うく前の肝試しのときみたいに、また眠れなくなって葉月と一緒に寝なきゃいけなくなるところだったわ……】
【まさかまた近所の男子中学生に告白されるとは……こんな話が明久たちにバレてしまえば、ワシは更に女扱いされてしまう。なんとか秘密裏に断らねば……ここはやはり、造に相談するしか……】
【…………この視点の低さなら、いつでもアイツのスカートの中を見られる……!】
「「「「「「「「《……え?》」」」」」」」」
あのお騒がせババァの提案で、急遽半強制的に始まった召喚獣の試運転。そんな中秀吉たちの召喚獣が喋り出し、しかも何やら妙な事を口に出している。……おいおい、何だこりゃ?
「え、えっと、美波……?今召喚獣が言っていた肝試し以来お化けが怖くて葉月ちゃんと一緒に寝ているって話は……」
「ほ、本当ですか美波ちゃん……?」
「そう言えば秀吉、最近家に帰るたびに何やら溜息ばかりついてたけど……なるほどそう言う事だったのね」
《ひ、ヒデさん……それはまた大変でしたね———【自分も最近告白される回数が増えて】って、また思った事が!?》
「ムッツリーニは……まあ、いつも通りか。ちなみにアイツって誰なんだ。ん?」
そんな感じで三人に問いかけると、それぞれ否定の姿勢で返事をする。
「ち、違うのよ、アキに瑞希!?こ、これは召喚獣が勝手に全く思ってもいない事を喋っているだけなの!いくらなんでもこの歳で葉月と一緒に寝るなんて!」【寝るときだけじゃなくて、最近はお風呂も一緒かな。だって、髪洗う時怖いんだもん】
「島田の言う通りじゃ。いくらなんでも、男のワシが近所の男子中学生に告白されるなぞ、嘘にも程があるぞい。と言うわけで造に姉上よ。真に受ける必要はないぞい」【今月はこれで3人目じゃ……】
「…………別に」【…………工藤の事に決まっているだろう。アイツ、最近イメチェンとか言い出してスパッツ卒業したからな。気にならないワケないだろう。あのスカートの中にどれだけのロマンや夢、そして希望があり興味は尽きないからな】
ふむふむ……語るに落ちるとはまさにこの事だな。と、そんなことを考えていると突然島田の召喚獣が明久と姫路に跳び付く。……ん?
「あ、あれ?美波の召喚獣に触れるんだけど……?」
「ほ、ホントですね。明久君の召喚獣みたいです」
そう、本来召喚獣はホログラムの様な存在である為に、造や明久のような観察処分者用の召喚獣の特性である物理干渉でもない限り召喚獣は物や人には触れない。が、島田の召喚獣はしっかりと明久たちの足にしがみついていた。てことは……
「あのババァの事だ。どーせ細かい設定に失敗したんだろうさ」
《【あー……みたいですね。流石にフィードバックは付いていないようですが】》
「どうもそんな感じだね。案の定何か隠していやがったねあのババァ」
……ちっ。あのババァめ。やっぱ裏があったな。こりゃまた面倒な事になりそうだ。
「そ、そんなことよりアキに瑞希!その子こっちに渡してちょうだい!と言うか、いつまでくっついているのよウチの召喚獣は!?」
【やっ!ウチはアキと瑞希の所に居るっ!】
更には召喚者の意思にも逆らっていやがる。ふむ、こりゃひょっとすると……?恐らく一番この現象について理解しているであろう造にアイコンタクト。
「(造、今のうちに)」
《(はい、わかってます)》
島田の召喚獣が駄々を捏ねて連中が混乱している間に、こっそりと造と教室の端に移動してこの現象について話合う事に。
「さてとだ。造、お前はこれをどう見る。あのババァは一体何をしやがったと思う?」
《【んー……そうですね……学園長の話では、今回のこの召喚獣は無意識領域の一部を読み取るとか何とか。加えてこれは《文さん》に影響を受けたプログラムとも言っていましたね】》
文か……一応あのババァから話は聞いていたが、そういやこの前の体育祭で初めて本人(?)を見たな。あの後こっそりと造に文の事を正式に話を聞いたんだが……ふむ。あの人工知能持ちの文に影響されたプログラムってことは———
「つまり、今の召喚獣は体面より欲求に従った行動をとるってことか。自動化の為に自己を形成された結果が、幼児程度の人格を持つ召喚獣として確立されちまったって感じだろうな」
《【そのようですね。この召喚獣の状態は文さんが生まれた経緯と酷似しているのでまずゆーさんの推測に間違いはないでしょう。文さんも自分の幼児程度の人格をコピーして誕生しましたし。……ご存じの事だと思いますが、召喚獣の本質は召喚者の意思を読み取りその意思に従って行動すると言うものです】》
「だが普段はリアルタイムで受け取っている召喚獣が行動するためのその召喚者の意思を、ババァが自動化にしちまってるせいでこの召喚獣たちは召喚者の意思を今は読み取らない。ならそれ以外に何かしらの行動原理が必要ってことだな」
ババァの作り出したシステムの詳しい理屈はよく知らんが、要するにロボットが自動的に動くには結局最初は命令・信号が設定されてなきゃならんってイメージか?
- 番外編:召喚実験シリーズ〜自分と本音と暴露大会〜その② ( No.183 )
- 日時: 2015/11/13 21:01
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
《【その通り。自動化と言っても結局何かしらの……行動するための行動原理は必要みたいですね。今回の召喚獣の行動原理となったものは召喚者の“無意識に近い意識”と言うことでしょう。それに従って行動している結果が———】》
「召喚獣がその召喚者の本音を喋っちまう上に本音に従った行動をするってことだな。ん?ってことはまさか造もか?」
そう聞くと、造は苦笑いをしながら頷く。
【たはは……ええ。自分の場合は自身が召喚獣ですから、自分の行動自体のコントロールはできます。どんな理屈はわかりませんが、多分普通なら外の召喚獣に送る信号が、自分自身の中に発信されている為でしょうね。そのお陰で別に意識が幼児化するわけではありませんが……その代わり無意識に近い意識が“声”となって現れているようです。現に今も口に出していないのに、自分の考えが“声”となって自然に聞こえるでしょう?】
「……そりゃまた厄介そうだな。まあ、とりあえずそのことをアイツらに説明しておくか」
《【ですね……ああ、そうだった。すみませんゆーさん、自分が説明すると下手をしたら余計なことまで説明しちゃいそうなので説明はゆーさんに任せても良いですか?】》
ん?……なるほどそうか。造だと文の事まで喋っちまう恐れがあるからな。
「ああ。その辺は任せとけ。……おい、お前ら!大体の事情がわかったぞ」
「「「え?」」」
〜雄二説明中〜
「……なるほど。つまりこの子たちは、幼児程度の行動原理を持ち、自我があると言うこと」
「ああ。翔子の言う通りだ、要するに本音を喋っちまう自分自身の子供の姿ってとこだな」
とりあえず翔子たちにこの事を説明すると(一応、文とシステムの影響って話は少し省略しておいたが)、全員が納得したように頷く。まあ、説明しなくてもコイツらの召喚獣の様子を見りゃ一目瞭然だろうからな。
「そう言う事ね。だから美波たちの召喚獣があんな感じなのね」
《【たはは……アキさんたち大変そうですね】》
木下姉と造が苦笑い混じりに呟く。俺もつられて明久たちを見ると———
【アキ、瑞希。抱っこしてー♪】
「ちょ!?だ、抱っこじゃないでしょうが!何甘ったれてるのよ!いいから離れなさいっ!」
【やーっ】
島田が明久と姫路の足にしがみついている召喚獣を引きはがそうと苦労している光景が。こりゃまた面白いな。……待てよ、召喚獣が本能のまま行動しているってワケだったな。つまりは島田の今の召喚獣の行動は———ほーう?こりゃ良いネタになりそうだな。
「ま、気にしなくても大丈夫だよ美波。こういうの、慣れてるから」
「そうですね。私も気になりませんし大丈夫ですよ美波ちゃん♪」
「え?瑞希は何となくわかるけど……アキ?慣れてるってどういうことなの?」
「んー……どうしてか知らないけど、僕って昔から小さな子に好かれるんだよね。葉月ちゃんもそうだしさ」
「そりゃ知能レベルが近いからだろ」
「黙れ雄二」
はっ!事実だろうに。と言うか下手すりゃ、いいや下手しなくても明久は島田の妹のチビッ子より知能レベルがアレだからな。まあ、それはともかく明久と姫路は島田の召喚獣の頭を撫でる。まあ、微笑ましいと言えば微笑ましいかもしれんが———
「ちょ、ちょっとアキに瑞希?ふ、二人とも、止めてって……な、何だかウチも撫でられているみたいで……その、は、恥ずかしいんだけど」
【もっと撫でてー♪】
「あ、アンタは黙ってなさいっ!?てか、いい加減離れなさいってばっ!?」
———召喚者である島田は物凄く恥ずかしくて死にたいといった表情をしているな。そしてそんな島田の様子を明久たちは更に微笑ましそうに笑っていやがる。まあ、気持ちはわからんでもないが……明久に姫路。お前ら調子に乗っていると後でどうなっても知らんぞ?
【参ったのじゃ、あの少年、いくらワシが男じゃと言っても聞いてくれんのじゃ】
【アイツとスカートの魅力はたくさんある。が、その中でも特筆すべきはそこに内包される可能性つまり見えるかもしれない、見せてくれるかもしれないと言う希望を提供してくれると言ういわば優しさにも似た———】
「むぅ……この召喚獣、なんとかして消したいのじゃが……」
「…………召喚フィールドが広すぎて範囲外に出られない」
秀吉とムッツリーニも自由に話し続ける召喚獣に参っているようだな。てか、あのババァ、やっぱり思った通り下手に召喚獣を戻せないようにしてやがるな。召喚フィールドを学園全体に広げた上、造の腕輪の干渉を懸念して先に腕輪を回収したのも想像通りこのためか。召喚獣は自由に行動するから下手に召喚獣を消すために学園の外に出ようとも、その間に召喚獣が余計なことをしないとも限らない。つまりは迂闊に目も離せないってわけか。
「にしてもこりゃ凄い。ムッツリーニはともかく、秀吉が隠そうとしていることまでわかるなんて、なかなかできることじゃないぞ」
《【あー確かにそですね。ヒデさんポーカーフェイスが上手ですし】》
「いやいや何を言うのじゃ造に雄二よ。ワシは常に自然体じゃと」【造に演技を褒められたのじゃ。嬉しいのじゃ♪】「…………ぐっ」
《【あらあら、ヒデさんったら】》
造の前でピョコピョコ跳ねて喜ぶ秀吉の召喚獣。そしてそんな秀吉の召喚獣をよしよしと撫でる造。ホント傍から見ている分には面白いなこれは。
- 番外編:召喚実験シリーズ〜自分と本音と暴露大会〜その② ( No.184 )
- 日時: 2015/11/13 22:23
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
「…………うふふ♪」
……と、この様子にニヤリと笑って反応する木下姉。おおぅ……やべぇぞ造に秀吉。お前ら完全に目を付けられたようだぜ。
「ふふふっ♪ねぇ、秀吉♪」
「な、なんじゃ姉上よ?」
目をキラキラと輝かせて迫る木下姉に警戒してか、一瞬口籠る秀吉。さて、どうなる事やら?
「秀吉はさぁ……男子に告白されたことってある?」
「HAHAHA!ワシは男子じゃ、そんなことあるわけなかろう」【ここのところはほぼ毎日じゃ】
「「「毎日!?」」」
「ななななんてことを言うのじゃ!あ、姉上よ!今のはこやつの嘘じゃからな!?本当はワシは」【金曜日と月曜日は特に多いのじゃ】「違うのじゃ!ワシは男に告白などされておらんのじゃ!?」
なるほど。そういや秀吉は週末と週始めによく居なくなる事があるが……“ソレ”が原因か。
【ああ、ヒデさんもですか……実は自分も小学校の子供たちから、最近よく初々しいラブレターを】《お、思った事がああああああああああああああ!?》
「「「しょ、小学生に!?」」」
ついでに秀吉の巻き沿いに造が自爆していた。そうか……コイツも、か。
「あ、あれはその、きっと姉上と間違えられておるだけなのじゃ!」【宛名を何度確認してもワシの名前が書いてあったのじゃ】「だから違うのじゃ!」
《じ、自分のもきっと子供特有の悪戯ですよ!自分が小学生に告白されるなんてありえませんもの!》【あの子たち……“ごめんなさい、付き合えません”って断ったら泣いちゃったんですよね……悪いことしちゃいましたかね】《うぎゃあああああああああああああああ!?》
「ふふふっ♪ホントに秀吉も造くんも面白いわね〜」
慌てて召喚獣の言葉を誤魔化そうとする秀吉と、半パニックになりつつある造。面白い具合に木下姉の良いネタになっているな。にしてもコイツらはホントに息ぴったりだな、おい。
「んじゃ、今度はムッツリーニに何か聞いてみっか。ムッツリーニ、お前は———」
【…………話しかけるな。今、アイツとスカートの中の因果関係について考えるのに忙しい】
「………………すまん、邪魔したなムッツリーニ」
「…………っ!(ブンブンブン)」
まあ、ムッツリーニはいつも通りか。ここに工藤がいれば面白かっただろうが。さて……
「じゃあ、最後は……」
「……美波?」
「「……(じー)」」
「ちょっ!?な、何よアンタら」
俺と翔子、更に未だに島田の召喚獣を撫でている明久と姫路の視線が一斉に島田へと降り注がれる。そして、気を取り直すように咳払いをして———
「い、言っとくけどね!ウチに隠し事なんてなにもなんだからね!アンタたちがいくら質問しても【実は昨日、下級生の女の子に告白されて】嫌ぁあああああああああっ!?」
「「「「…………」」」」
盛大に自爆する島田。俺らはまだ何も聞いていないんだがな。どうやら島田は無意識下でも嘘が苦手のようだ。
「ひ、卑怯よアンタら!?そうやってウチの恥ずかしいヒミツを聞き出すなんて!」
「あー……いや。今のは美波の自爆のような……」
「問答無用よ!いいからアンタ全員、召喚獣を出して本音を喋りなさいっ!」
【本音?本音って、好きな人のこと?ウチの好きな人はね、】
「アンタが喋ってどうすんのよ!?いいからアンタは黙ってなさい!」
と、島田が混乱しながらもそんなことを言ってくる。いやいや。冗談じゃねえ。島田の頼みとはいえ、明久ですら応えられんだろうしな。何せこの状況で召喚獣を出せば、暴露大会に参加させられるようなもの。あのババァを警戒して折角危険を逃れられたと言うのに、誰が好き好んでこんなイベントに参加するか?否だな。
「……本音を喋っちゃう、召喚獣ですか……」
と。横では姫路がそんなことを呟きながら、紙とペンを取り出して漢字と書いていた。何やってんだ姫路は———って、こりゃひょっとすると……
「あの、明久君」
「ん?なに瑞希」
「突然ですが問題です。これ、なんて読みますか?」
「え、えーっと……格“差問(サモン)”題かな?」
「はい。正解です」
……ふっ、バカめ明久。お前は地獄の暴露大会参加決定だ、ざまぁ見ろ。
ポンッ! ←明久の召喚獣登場
「しまったぁああああああああああああああっ!?」
「ごめんなさい明久君っ。でも、どうしても本音で聞きたいことがあるんですっ」
「ははっ!相変わらずバカだな明“久”」
「……雄二。法の精神を書いた人は?」
「“モン”テスキューだろ。お前はいきなり何を言って———あ」
ポンッ! ←俺の召喚獣登場
「しまったぁああああああああああああああっ!?」
喚び出される俺と明久の召喚獣。ちぃ!?ゆ、油断したっ!?
「ナイスよ二人とも!さぁアキ、答えなさい!アンタの本音を包み隠さず!」
【あのねあのね、ウチのヒミツはねー!】
「アンタは言わなくていいの!さぁアキ、答えなさい!」
「あ、明久君っ!私も色々と知りたいですっ!」
「……雄二。私のことをどう思っているのか、聞かせて欲しい」
女子共の視線が明久と俺の召喚獣に集まる。その視線を受けて、俺たちの召喚獣は———
【バカ明久!お前の名前のせいで召喚しちまっただろうが!】
【アホ雄二!人の不幸を笑うからそんな目に遭うんだ!】
取っ組み合いの喧嘩をしていた。ふむ……なるほど、確かにこりゃまごうことなき俺の本音だな。
「明久!テメェの名前のせいで召喚されちまったじゃねぇか!」
「何を言ってるのさ雄二!元はと言えば雄二が鉄人から逃げられなかったせいだろ!」
「んだとコラ!先に捕まったバカにだけは言われたくないわボケェ!」
「雄二の方が早く捕まっただろうが!このマヌケがぁ!」
ちなみに言うまでもないが本体同士でも喧嘩中。やってくれやがってこのバカがっ……!
「あの、明久君っ。坂本君のことじゃなくて、私たちのことも考えて見て下さいっ」
「そうよアキ!人の本音を聞いておいて、自分は逃げようなんて許さないだから!」
「……雄二。雄二の本当の気持ち、聞きたい」
【ムキー!雄二のアホー!】
【うぎー!明久のボケー!】
「くたばれ雄二!責任を取れ!」
「死ぬのはお前だ明久!地獄に落ちろ!」
「明久君っ」
「アキっ!」
「……雄二……!」
なんてことをやっていると……
「皆お待たせー!———って、なになにー?なにか面白そうなことやってるねっ!ボクも混ぜてよっ!」
どうやら部活を終えたらしい工藤がニコニコしながら合流してきた。
ヤベェな……すでに嫌な予感しかしねえぞ……
- 番外編:召喚実験シリーズ〜自分と本音と暴露大会〜その③ ( No.185 )
- 日時: 2015/11/20 22:57
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
康太Side
「へぇ〜。本音を喋る召喚獣か。それは面白そうだねっ!」
「「「全然面白くないっ!」」」
あの妖怪学園長の悪巧みのせいで、またもや妙な事に巻き込まれた俺たち。現在部活を終え、事情を聞いた工藤も参加と言う事で、俺の中ですでにエマージェンシーコールが鳴りまくっている。マズイ……何やら工藤がしきりに俺の方を見てニヤリと笑っているのがわかる。これはホントにマズい……!
「じゃあ本当に本音を喋るのか、確かめてみようかな〜」
「「「…………っ(ササッ)」」」
俺を含めた全員がターゲットにされまいと、咄嗟に目を伏せる。……が、この本音を喋る召喚獣の話を聞いた時に工藤が見せたあの期待を込めた目を見れば、どう考えても真っ先に俺が狙われそうなんだが……
と、工藤は緊張している俺に向かってウインクしたかと思うと、明久と雄二の方を向きにんまりと笑う。そして———
「ふっふっふ♪ねえ、姫ちゃん、ナミー、代表。ちょっと来て♪」
……?俺の予想に反して姫路・島田・霧島を呼ぶ工藤。何だ?助かった、のか?工藤の事だから俺に何か仕掛けてくると思ったんだが……?俺の困惑をよそに工藤は呼んだ三人に耳打ちをする。
「(ゴニョゴニョ)……って感じはどうカナ三人とも♪本音を喋っちゃうっていうその召喚獣の話が本当なら、きっと素直に応えてくれると思うよ〜♪」
「「「な、なるほど……ありがとう(ございます)愛子(ちゃん)!」」」
話が終わったのか工藤から離れる姫路たち。そして姫路・島田は明久の、霧島は雄二の側まで若干顔を赤くしたまま移動すると———
「「ね、ねえアキ(明久君)……」」
「な、何かな美波、瑞希……?」【どうしよう雄二、とっても嫌な予感がするよ】
「……雄二」
「な、何だ翔子……?」【奇遇だな、俺も物凄く嫌な予感しかしねえぞ明久】
明久たちの不安そうな顔を尻目に、女子陣はスゥッと息を吸い込んで———
「「「———ウチら(私たち)のスカート……めくってみる?」」」
スカートの裾をピラピラと上げ下げして、思い思いにとんでもない事を言い出した。コレには流石の明久と雄二も一瞬固まるが、すぐにハハッ!と笑いながらそれぞれに返答する。
「いやいや。何を言ってるのさ美波に瑞希。僕がそんな【い、いいのっ!是非めくらせて下さい!】……い、いやらしい人間だとでも?」
「そうだな。翔子よ、俺をからかっているんだろうが【あ、後で“やっぱり無し”って言うんじゃねえぞ!?】……んなもんは、む、無駄だからな?」
「「…………」」
「「「…………(ポッ)」」」
「「…………すんませんでした」」
隠す事が出来ない本音を召喚獣にペラペラと喋られたバカ二人は、はしゃいでいる召喚獣をよそに額に床を擦り付けて土下座する。
「あ、明久君大丈夫ですよ!え、えっと……その、いやらしいことは年頃だから仕方ないですもんね!」
「あ、アキのエッチ……【でも……ウチで良いならいつでも———】ちょっと!?何変なこと喋ってるのよウチの召喚獣は!?」
「……雄二、私もいつでも大丈夫」
まあ、女子陣は満更でもないようだが。それにしても全く、本音も隠せないとは明久も雄二もまだまだ【…………俺も工藤のを(バシィ!)痛い】……コイツは全く、面倒な召喚獣だ。
「おぉ♪本当に本音を喋るんだね、面白いや!んじゃ姫ちゃんたち、次はね……(ゴニョゴニョ)」
「「「ふむふむ……」」」
「「ちょっ!?また何か吹き込まれてる!?」」
面白がって再び姫路たちに何やら耳打ちする工藤。ああ……なるほど。さっきの姫路たちの過激な発言はやはり工藤の入れ知恵か。どうやら完全に工藤は明久と雄二を弄りのターゲットに絞ったようだ。
……そうそう、ちなみにここに加わっていない造と秀吉はと言うと———
『———で?他にどんな風に告白されたのかしら?ねぇ二人とも、お姉ちゃんに包み隠さず全て教えなさいな♪』
『も、もう勘弁しては貰えぬか姉上よ!?』
《優姉さん、そろそろお開きしましょう!?ね!自分たちの話なんか面白くもなんともないですよ!?》
【そうじゃの。そう言えばあのポエム先輩よろしく、自ら作詩したであろう詩を朗読し始めた中学生がおったの。“貴女を幸せに出来るのはこの僕だけです。さあ共に新たな世界へ往きましょう”とか言われた時は、こっちが恥ずかしくなって次の日学校を休もうかと思ったぞい……】
【実を言うと自分、男の子だけじゃなくて小学生の女の子からも告白されたんですが……その女の子たちに“わたしのお姉様になってください”とか、何を思ったのか“妹になってくれない?”“あなたを飼いたいです”とか言われましたね。とりあえずあの子たちは色んな意味で盛大に勘違いしていましたよ。鬱ですよ……】
『《もう嫌あああああああああああああああああああああああ!?》』
『ふふっ♪造くん、秀吉。どんどん行くわよ〜♪』
———木下姉の恰好の獲物と化していた。まあ、木下姉に造たちが弄られるのはある意味いつもと変わらない気もするが。
- 番外編:召喚実験シリーズ〜自分と本音と暴露大会〜その③ ( No.186 )
- 日時: 2015/11/20 21:13
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
「———って感じのことをやってみたら面白いと思うよ三人とも」
「「「…………(ゴクリ)」」」
と、工藤から色々と聞き終わった姫路たち女子三人は、またそれぞれ明久と雄二のところへ行き、モジモジと話しかける。
「「えっと、アキ(明久君)……実はウチら(私たち)———今日寝坊しちゃってブラをつける時間が無くて」」
「……雄二、私今日雄二の為にブラ付け忘れてた」
「「だ、騙されないっ!これどう考えても工藤(さん)の差し金だろ(でしょ)!?その程度で俺(僕)らを釣ろうなんて【【で!ブラが一体どうしたって!?】】釣られたあああああああああああああああっ!」
最早、言い逃れできないほどに暴走する召喚獣。やれやれ。それにしてもいくら本音が出てきてしまうとは言え、明久たちはエロは自重すべきだと【…………工藤のブラは一体どんなものだろうか(バシバシッ!)叩かないで欲しい】……この召喚獣は、本当に油断も隙もないな。
「あ、明久君?その……や、やっぱり気になりますか?」
「ま、まあアキも男の子ってことかしらね【アキ、ウチのでも喜んでくれるかな?】だからアンタは黙りなさいよ!?お願いだから!」
「……雄二が望むなら、私はいつだってブラなんて付けてこない」
「あははははっ!凄いね、ホントに面白いくらいに色々喋っちゃうんだ〜♪」
「く、工藤さん……もう止めてくれないかな?限界なんだけど」
「そ、その通りだぞ工藤……ちっとは自重してくれ。赤っ恥だ」
姫路、島田、霧島は(島田は多少、自身の召喚獣に手を焼いているようだが)明久たちの本音が聞けて至極ご満悦。茶化す工藤も同じようだな。弄られている明久たちは、召喚獣を止めようと必死だがな。
「ん?ああ、そっか。二人とも嫌だった?ゴメンね吉井君に坂本君」
「「あ、いや。反省してくれるなら別にいい———」」
「そうだよね……もっと面白くしなきゃいけないよね☆姫ちゃんたち、次行ってみよ〜♪」
「「工藤(さん)!もう勘弁してください!?」」
追い打ちをかけるが如く、工藤は三度姫路たちに耳打ちをする。哀れ明久・雄二たちよ。同情はする。…………巻き込まれたくないから、別に助けはしないがな。
明久たちが迫りくる精神攻撃の恐怖に脅える中、工藤に唆された三人が先ほど以上に顔を赤らめて明久たちに歩み寄る。今度は一体何をする気だろうか……?
「「あ、アキ(明久君)!」」
「はいっ!わかっています!謝ります、ゴメンなさい二人とも!怒っているよね!?やらしいこと考えていた事に怒っているんだよねっ!?どうかおバカな僕をお許しくださいっ!」
「……雄二」
「ま、待て翔子!これはだな、男としては仕方のない反応何だ!だからお仕置きはだな———」
まるで頭を床に打ちつける勢いでペコペコ土下座する明久と、手をバタバタと振りながら後退り無駄な弁解を始める雄二。そんな中姫路たちは更に一歩近づいて、
「「「えいっ!」」」
「「んぉっ!?」」
いきなり姫路と島田は明久の、そして霧島は雄二の頭を胸の中に抱える。ほぅ……?コレはまた大胆だな。【…………羨ま死ね明久に雄二】
「明久君……その、どうですか?」
「え、えっと……アキ?どうかな?」
「ど、どうもこうも無いよ!?一体何をして【瑞希の胸ふかふか♪美波の胸もちゃんと柔らかくて気持ち良いね♪】いぎゃぁあああああああああっ!」
「……雄二、嬉しい?」
「ば、バカ言え!こんなのが嬉しいわけが【イィィヤッホォォオオ!サイコォォオオオオオオオオオオ!】あるかぁあああああああああああああっ!」
力の限りに叫び声をあげて召喚獣の声を打ち消そうとする明久と雄二。それを聞くと女子陣は少し恥ずかしそうに、そして嬉しそうに頬を赤く染めてニコっと笑みを浮かべ、さらにそれぞれの頭を抱いた。
「ふふっ♪明久君さえ良ければこのままでいますね」
「そ、そうね。アキも喜んでくれているしだったらウチも【ウチのちっちゃな胸でも喜んでくれるなんて嬉しい♪】だからっ!アンタは少し黙ってて!?」
「よ、良くないよ!?主に僕の精神衛生上良くな【ホント!だったらもう少し堪能させて】放してぇえええええええっ!」
「……安心して雄二。今日はずっとこうしててあげるから」
「安心できるかっ!一体何を言ってやが【ホントか!良い気持ちだぜ!キャッホォォー!】放せぇえええええええっ!」
そしてあまりの女子陣の突拍子もない行動と、自身の召喚獣の問題発言に耐えきれなくなった明久と雄二はそれぞれを包み込んでいた胸の中から抜け出して———
「雄二っ!こうなりゃこの忌々しい召喚獣の口を噤んでしまおうっ!主に物理的に消し去る事によって!死人に口無しだよ!」
「おおっ!気が合うじゃねえか明久っ!俺もちょうどこの妙にお喋りな召喚獣を滅そうと思っていたところだ!殺るぞ明久!」
【【もっと胸の感触を味わいたかった】】
「「黙ってろ僕(俺)のクソ生意気な召喚獣がっ!滅してやるから覚悟しろっ!」」
———何故か自分自身の召喚獣と戦闘を始めた。やれやれ……アイツらは随分と捻くれているようだな。素直に喜べないのやら。
【…………俺がもし工藤にあんなことされたら(バシバシバシッ!)何度も叩かないで欲しい】
「…………っ!」
本当に厄介な召喚獣だ……まあ、今回俺は誰の標的にもなっていないのが救いか。そう思っていると背後からトントン、と肩を叩かれる感覚が。
- 番外編:召喚実験シリーズ〜自分と本音と暴露大会〜その③ ( No.187 )
- 日時: 2015/11/20 21:04
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
「…………?何だ?」
「やっほー♪こーたくん?ふふふっ、ねえ、まさかとは思うけど“自分は標的にされてない”とか思っているんじゃないカナ〜?甘々だよ〜?シューケーキより甘々だよ〜?」
「…………っ!?工藤っ!?」
いつの間にか俺の背後に立っていたのは……工藤だと!?ば、バカなっ!?俺に気づかれずにいつ背後に……!?い、いや。それより今、物凄く嫌な台詞を言わなかったか?冷や汗を掻きながら、とりあえず工藤に尋ねてみる事に。
「…………どう言う、ことだ……?」
「ふっふっふ!美味しいものはさ、最後に食べるのが良いんだよね〜♪それに、他の人にこーたくんを弄られるの面白くないでしょう?他の皆が混乱しているうちに、こーたくんの本音はボクが聞きたいなーって思ってさ♪さーて、どうしてくれようカナ」
そう言って満面の笑みを浮かべる工藤。……ちぃ、やはり最初に感じた嫌な予感は的中していたのかっ……!?【どうする?やはりここは逃げ出すしかないか?幸い今は明久たちは自分たちの召喚獣と戦闘中。姫路たちはそれを止めようとしている。この混乱に乗じて厄介な俺の召喚獣もつれてどこかに身を隠せば———】
「こーたくんこーたくん。キミの本音丸わかりだよ。ふふん♪ボクがそう簡単に逃がすと思う?」
「…………っ!本当に厄介な召喚獣だ!?」
すでに逃げ場はなし。こうなれば明久たちのようにこの余計なことしか言わない召喚獣を滅するほかないのだろうか……?
「あはは!面白いよね♪———まあ、安心してよ。こーたくんが本気で困るような事とか、大事そうな事は聞かないから、ね?一つだけこーたくんの本音を聞きたいって思ってさ。ダメ……かな?」
「…………工藤?」
と、さっきまでの意地の悪そうな顔から一変して、急に真面目そうな顔をする工藤。見るからにコレはどうやら真剣な話のようだが……何だ急に?一体何を聞きたいんだ?
「…………質問の内容にも、よるな」
「んーまあ、そりゃそだね。えっと、その……さ。ボク、こーたくんに……さ」
強気で明久たちを弄っていた先ほどまでとは打って変わって、少し弱気になっているように見える工藤。だが、それでもしっかりと俺に目を向けて俺に問いかける。
「こーたくんはさ、ボクを鬱陶しいって思っていないかなって……思ってね?」
「…………は?」
???一体どんな質問をしてくるかと思えば……何だその妙な質問は?
「…………正直意味がわからん。何が言いたいんだ?」
「えっと……ホラ、夏の海の時とかお料理教えて貰ったりとか。ボクさ、何かとこーたくんに助けて貰っているじゃない?ちょっと気になってたんだ」
【…………海、人工呼吸、その後のキス(バシバシバシバシッ!)痛い……】
「あ、あはは♪そう言えばボク、こーたくんの唇貰ったよね……その、改めてあの時はありがとう、そしてキスごちそうさまでした♪」
顔を赤めて頭を下げる工藤。何が気になっているのかよくわからんが……それよりも、いかん鼻が熱い……血液パック用意しておかねば。
「…………コホン。それで?」
「あー、うん。それでね……いつもボクが困った時にこーたくんは助けてくれているけど、こーたくんはそれが迷惑何じゃないかなって思ってたんだ。そうでなくても何かとライバルってことで張り合ったり、ボクこう言う性格だし……だから鬱陶しいんじゃないかなって……こんな形で聞くのはズルイかもだけど、どう……かな?」
そこまで言うと、工藤は口を噤んで俺の返答を待つかのように真剣に俺をジッと見つめる。……やれやれ、随分不安そうに話すから何事かと思ったが。フゥッ!と深呼吸して心配そうな工藤に俺なりの答えを突きつける事に。
「【…………工藤。それは本気で聞いているのか?】」
「ふえ?」
「【…………俺がいつお前の事を“迷惑だ”何て言った?】」
「……こーたくん?」
普段は底なしに明るく、(性に対しても)自由奔放。工藤の言う通り保健体育関係で俺に絡んでくることも多々あるが……それは迷惑だとは思えない。好敵手であり……友人でもあるこいつといると———
「【…………俺はお前といると“楽しい”と思ってる。それなのに勝手に迷惑だって決めつけられる方が……困る】」
これが俺の本音。寧ろ俺は工藤が俺の事を一体どう思っているのかがわからんが……まあ、その辺はいつか本人に直接聞けばいいしな。
「っ!そ、そっか……ゴメンね?」
「【…………謝るな。それも困る】」
「あはは、それもそうだね。それじゃ……そう思ってくれて“ありがとう”カナ♪」
そう言うと、さっきの不安げな顔を払拭していつもの笑顔に戻る工藤。やれやれ全く……正直さっきの明久や雄二にやったような、妙な事をされるんじゃないかと冷や冷やしていたが心配して損したな。まあ、こんなもので工藤の気も晴れたなら安いものか。
「…………聞きたいこと、それだけか?」
「うん、ありがとねこーたくん!———さて!シリアスモードは終わり♪さあ、こーたくん!お待ちかねのスキンシップタイムだよ〜♪」
「…………っ!?散っ!」
ガシィ!
「こらこら逃げないの♪まあ、安心してよ?———ちゃーんと吉井君や坂本君たちがされてた事を割増しでこーたくんにも試してア・ゲ・ル♪」
「…………(ブンブンブン!)放せっ!」
【…………期待大!よろしく頼む!】
ええい……逃げられないし、この召喚獣は余計なことを言うし……!なんて面倒な……!
「ふふふっ♪こっちのこーたくんは素直だね。まあ、姫ちゃんとか代表みたいに胸大きいわけじゃないけど———えいっ(ギュッ!)」
「【…………っ!(ブシュウウウウウウウウウウウウウ)】」
「って、わわっ!?ま、また鼻血?……あ、相変わらず凄いよね?」
「…………い、いいから放せ!(ダラダラダラ)」
【…………放さないで欲しい!(ダラダラダラ)】
「あはは……本音を喋っちゃう召喚獣と真逆のこと言われてもねぇ♪ホラ、止血するからジッとしててよ♪」
俺の頭を自分の胸に寄せたまま、手慣れた手つきで止血、輸血をする工藤。ありがたいが、はっきり言おう。そのままじゃ血液パックがいくつあっても足りないぞ工藤……
「鼻血、ホントよく出るよね〜?そろそろこーたくんもこういうこと慣れないとダメだよ、命に関わっちゃうもん」
「…………そう思うなら、まず俺を放せっ!」
【…………今なら天国にも逝けそう(バシッ!)痛い。叩かないで欲しい】
クソッ……本当に、本当にこの召喚獣は嫌になるほど厄介だっ!妙な事ばかり言って!この妙な召喚獣の試運転はまだまだ始まったばかり。これからが激しく不安だ……
【…………でも工藤に抱かれるのはうれし(バシバシバシッ!)痛い……】
- 番外編:召喚実験シリーズ〜自分と本音と暴露大会〜その④ ( No.188 )
- 日時: 2015/11/27 21:07
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
明久Side
これは毎度毎度の事だけど、あの忌々しい妖怪ババァの陰湿な企みにより、とんでもない状況に巻き込まれてしまった僕たち。恥ずかしい秘密や本音を喋ってしまう生意気な召喚獣を黙らせる為に僕や雄二たちは各々の召喚獣を抹殺しようと頑張っているんだけど———
「ぜぇ……ぜぇ……ふぃ、フィードバックが、地味にキツイ……」
———まあ、当たり前だけど僕(と造)の場合は召喚獣を傷つければ、そのフィードバックがもれなく付いてくるわけで……召喚獣を黙らせるたびに、身体の節々に痛みが走っている。ちぃ、ホントに面倒な召喚獣だよ!一先ずは僕の召喚獣が伸びている隙に、また暴走した時に備えて寝転んで僕自身の体力を回復していると……、
「あ、あのぅ……明久君?あんまり無理しない方が良いのでは?」
と、若干心配そうに寝転んでいる僕の顔を覗き込む【いつもの綺麗な(ゴスッ!)】瑞希の顔が見える。そうそう、さっきまで美波も瑞希と一緒にいたんだけど美波は———
【アキが喜んでくれて嬉しい♪ウチ、アキになら何でも———】
『アンタはホントに何てこと言おうとしてるのよ!?止めてっ!?お願いだからっ!?』
————とか何とか言って、【可愛らしく(ゴスッ!)】顔を真っ赤にして自分の召喚獣を連れて離れてしまった。美波の召喚獣が何を言う気だったのかは詳しくはわからないけど、美波もあの厄介な召喚獣には苦労しているみたいだね。
「あー……一応は大丈夫だよ?って言うか瑞希、そう思ってくれるなら何でまた僕に召喚獣を出させたのさ……?」
ちょっと疑問に思ってまだ体力が回復しきれていないから寝転んだまま瑞希にそう尋ねる事に。てか……今更僕に聞きたい事って何だろうか?瑞希に隠している事なんて全然【瑞希の料理以外(ゴスッ!ゴンッ!)】ほ、ほとんど無いハズだと思うんだけど……
「え、えっと……そのですね。ちょ、ちょっとだけ、明久君の意見を聞きたくてですね……」
「へ?僕の意見を?どゆこと?」
「その、明久君は……わ、私を……その」
「???何かな?」
と、モジモジとしながら何か言いたげに、でもまるでそれを言うのが恥ずかしいみたいに口籠る瑞希。……?何だろ一体?よくわからないけど瑞希の反応を見ると、何か恥ずかしいことを聞きたいようだ……?僕に聞きたくて、それでいて恥ずかしいことって言えば———ハッ!?
【もしかして僕が瑞希と美波に抱きつかれてからずっと、やらしいことを考えまくっていた事が実はバレてたとか?瑞希はそれを僕に確かめようとしているのかな?マズイっ!現在進行形であんな事とかこんな事とか考えまくっているから、もしここで瑞希に“明久君は変なこと考えていませんか?”とでも聞かれたりしたら———】
「飛んで逝け僕の召喚獣!お星様になって消えるんだっ!」
微妙に顔を綻ばせ、間抜け面でとんでもないことを語り出す僕の召喚獣。ええぃ!やっぱりコレは完全に消さないとどうにもならないっ!てか、こんなこと聞いたらきっと瑞希も流石に怒って———
「へ?あっ!だ、大丈夫ですよ!明久君がちゃんとそう言う事に関心があるのは———い、良い事です!だってそれくらい誰もが考えますよ!(ボソッ)そ、それを言うなら私も……」
「へ?そ、そう……?」
と、やたら身を乗り出して力説する瑞希。よくわからないけどそっか、あー良かった……てっきり呆れられたかと思ったよ。……ん?てか、聞きたい事ってそれじゃなかったのか。
「それじゃ瑞希、瑞希が僕に聞きたい事って結局何なのかな?」
「あっ……そ、そうでしたね。わ、笑わないで聞いてくれますか?」
「【???はぇ?よくわからないけど、それは大丈夫なんじゃないかな?てか、寧ろさっきから僕が笑いもの何だけどね……】」
笑いものになっている主な原因は、こんな風に変なところでシンクロしたり変なところで余計な事を喋ってしまうこの召喚獣と元凶のババァだけど。
「あ、あはは……そ、そうですか?では———」
深呼吸しながらも、瑞希は物凄く緊張した面持ちで少し声を震わせて、恐る恐る僕に尋ねる。
「明久君!わ、私———重くないですかっ?」
「【…………はい?】」
……瑞希にそう言われて、一時思考が停止する。オモイ?想い?思い?重い?どう言う事?考えられる話としては———
【———それはつまり、瑞希のその一般水準に比べて、かなり発育の良いミラクルな胸のメロンが重いと言う意味————】
「さぁ、僕と一緒に焼却炉の中へ逝くぞ僕の召喚獣っ!フィードバックが何のそのだっ!」
ああもう!真面目そうな話をしている時にまた余計な事をっ!ここまで来るとそろそろ瑞希にセクハラで訴えられてもいいレベルな気がするよ!?マジですんません!抑えきれない欲望の塊でホントゴメンなさい瑞希っ!大人しく焼かれてきます!
- 番外編:召喚実験シリーズ〜自分と本音と暴露大会〜その④ ( No.189 )
- 日時: 2015/11/27 21:10
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
「お、落ち着いて下さい明久君!?その……か、身体の事じゃなく———もないんですが、いえ、その……確かに体重もちょっとだけアレかもしれませんが……」
と、お腹に手を当てて呟く瑞希。あ、何だそっちの事なのか。それにしても不思議だ。
「【……女の子ってどうしてそんなに体重の事気にするんだろう?痩せすぎよりもよっぽど健康的で良いと思うんだけどな?瑞希はちょうど良いと思うし?】」
「え!?そ、そうなんですか!?あ、ありがとうございま———ってそっちじゃなくて!違うんです!その、私の考えや気持ちが重くないかなって意味ですっ!」
「……ん?気持ちが?」
と、突然体重から別の話題に変えられた。…………あれ?いや待った、もしかして重い重いって、最初から気持ちが重くないかって意味だったのかな?これはしまった。どうやらちょっと(?)早とちりしてたみたいだね。女の子に重いって単語はNGワードトップスリーに入ると姉さんも言ってたし悪いことしちゃったかも。ゴメンゴメン瑞希。
「んー……別にそんなこと無いんじゃない?と言うか、どうしてそんなこと聞くのさ?」
「だって……例えばですが、私以前明久君と美波ちゃんに“距離を置かれている”って話をしましたよね」
「あー、うん。肝試しの時だっけ?」
思い返せば確かあの時から“姫路さん”から“瑞希”と呼び直すことになったんだよね。まあ、あれもある意味良い想い出だね。
「それなんですけど……後で冷静になったら、明久君たちを困らせたんじゃないかなって思ったんです」
「へ?」
「明久君も美波ちゃんも……私の事、大事にしてくれているのに、私は結局二人に甘えて、子供みたいに駄々を捏ねて何だか困らせちゃうことばっかり言っている気がするんです」
そう、かなぁ?瑞希甘えてたっけ……?正直そんな記憶ないんだけど……?
「いや、別にそんなこと———」
「いいえ。やっぱりそんなことあるんです。“距離を置かないで欲しい”って言っておきながら、まるで自分からお二人に距離を作ってしまっていたり、いつもお二人に支えられっぱなしだったり。そんなことを考えている時点で何だか私って、重い人間なんだなって思うんです……」
……んー?そうだろうか?まあ、確かに瑞希はちょっと考え過ぎなところがある気はする。今この瞬間だってそうなんだよね。普通ならそんなこと気にしなくていいと思うのに。
「自分でも直さなきゃって思っているんです。もっと明久君と美波ちゃんともっと親しく仲良くなる為にも、考えを柔らかくしなきゃって。そうじゃなきゃ私は、このまま二人とも押し潰すんじゃないかなって。でも……正直どうしていいか私ではわかりません。そもそもお二人がその事をどう思っているかも、わかりませんし」
「それで……僕の本音が聞きたくなったってこと?」
「はい……ちょっと卑怯だとは思ったんですけど、これからも明久君や美波ちゃんと一緒に居られる為にも———それで明久君、私重くないですか?こんな面倒な私は、嫌じゃないですか?」
そう言って物凄く緊張した面持ちで僕に問いかける瑞希。ふーむ、これはまたまた難題だね。まあ、瑞希らしいと言えば瑞希らしいかな?“こんな事”の為にわざわざ回りくどい事をする———とても可愛らしいところとかホント瑞希らしい。
「【まあ……そりゃ、重たくないって言ったら嘘になるかもね。瑞希が色んな事を考え過ぎなところは前々から知ってたしさ】」
「……あ、あはは、そうですよね……」
「【おっと!でも勘違いしないでね?】」
「え?」
どうせ本音も喋っちゃうんだし、僕が言う事は決まっている。思っている事瑞希に伝わるように思い切って喋る事にしよう。さあ、今の今まで余計なことばかり言ってた分、ちゃんと僕の言いたいことを伝えてくれよ僕の召喚獣。
「【誰もその事が苦になっているって言ってないでしょ?僕はね?瑞希の言う“重たい”って気持ちも想いも全部ひっくるめて瑞希の事を大事だって思っているんだ】」
「……明久、君」
「【迷惑?困らせる?瑞希わかってないね。寧ろドンと来いだよ。と言うか、今更気にしないし、もっと瑞希は甘えても良いんじゃないかな】」
「で、でも……私は甘え過ぎで———」
「【そうね。それに瑞希?アンタはウチとアキを嘗めてないかしら?】」
「……え?み、美波ちゃん!?」
と、ちょっと反論しようとした瑞希を遮るように、いつの間にか傍に来ていた美波がニッと笑いながら話に加わった。おお、グッドタイミング美波。
「【悪いけど、アンタ程度の重さを支えるくらいワケないのよ。と言うか、ウチらって支え支えられの関係でしょ?何を今更“自分は重たい”って言い出すのよ?今度そんな事言ったらその重そうな胸をウチが貰うわよ!と言うか今すぐその重そうな胸ウチに寄こしなさいな!】
「【み、美波?……話逸れてる、何だか話逸れてるよ?———コホン、まぁ瑞希には僕らが瑞希を支えているように見えるかもだけど、逆に僕も美波も瑞希に支えられていることだってたくさんあるんだ。それはきっと瑞希が気が付いていないだけでさ】」
「美波ちゃん……明久君……」
そう言って僕と美波が笑うと、瑞希はフッと肩の荷が下りたような顔で僕らに続き笑う。……うん、良かった。もう大丈夫みたいだね。これならもう心配いらなさそうだ。やれやれ、何だからしくない会話の反動か、ちょっと気が抜けたかも。
- 番外編:召喚実験シリーズ〜自分と本音と暴露大会〜その④ ( No.190 )
- 日時: 2015/11/27 21:23
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
「あ、あはは♪ありがとうございます二人とも。聞きたいことはもう聞けました」
「そっか。まあ、瑞希が満足できたなら良かったよ。ね、美波」
「そうね。全く……アキに何を聞きたかったのかなって思ったら、そんなことだったの瑞希?ウチはてっきりあんな感じの事を聞きたいのかと思っていたわよ」
そう言って、美波が向こうで何やら騒いでいる連中を指差す。ん?あんな感じって何だろ?
『……雄二。私は雄二が大好き。雄二はどう?私の事、どう思ってる?』
『ふん。くだらねえ。そんな質問に答える義務は』
【俺か?そりゃあ俺は勿論———】
「唸れ俺のハリケーンシュート!」
【みぎゃぁあああああああああ!】
『……雄二、召喚獣虐めちゃ可哀想』
『こーたくん、今度ボクが着る下着、一緒に買いに行かない?こーたくんに選んで貰うってことで♪』
『…………興味ない』
【…………すべての予定をキャンセルして死んでも行く(ゴスッ!)叩くな】
『…………黙っていろ俺の召喚獣っ!』
『にしし♪ホントに召喚獣は素直だね〜♪なら次の日曜にでも行こうか♪』
『ホラホラ、他にもあるんでしょ造くんに秀吉、言ってみなさいな』
《『黙秘権を使わせて貰います(貰うぞい)!』》
【多い月には、学園内の過半数以上の男子からの告白、中学男子100人以上のからのラブレターが———】
【この前たまたま会った葉月さんから聞いた話によると、葉月さんの通う小学校で知らない間に自分が伝説のお姫様扱いになっているとか———】
『ふむふむ、なるほどね〜♪』
《『…………』》
うわぁ……向こうは向こうで皆めちゃくちゃ苦労しているみたいだね。まあ、お疲れさんとしか言いようがないけど。この本音召喚獣は本気で頭を痛めるなぁ……ババァは絶対後で滅することにしよう。
「み、皆さんも大変そうですね。私召喚しなくて良かったです……」
と、苦笑い気味にそう言う瑞希。くっ……あの時“サモン”とさえ言わなければ僕もさっきみたいな赤っ恥は……ん?と言うか、そう言えば僕、瑞希の策に引っかかって召喚させられたんだよね?何かちょっと理不尽だ……あ、そうだ!なら折角だし———
「まあ、そうだね瑞希。……ああ、ところで大変で思い出したけど、瑞希も大変だよね。———Gクラスにいる“左門さん”の件は大丈夫なの?」
「左門さん?……あっ!そうそう!そうだったわね!瑞希、“左門さん”との件アンタ忘れてないでしょうね?」
僕の召喚獣に考えを読まれる前に瑞希にちゃっかり話しかけることに。美波にもアイコンタクトで僕の考えを教えたらすぐに乗ってくれた。ふふん、瑞希?今完全に自分は被害が無いだろうって思っているでしょう?甘いってことを今すぐ教えてあげるね☆
「へ?何の事ですっけ?Gクラスの“左門(サモン)”さん?誰です?そんな人、聞いた事も……それに、Gクラスなんてうちの学校には———あっ!」
ポンッ! ←瑞希の召喚獣登場
「「ウェルカム瑞希!さぁ、存分に本音で語り合おうじゃないか(語り合いましょう)!」」
「なっ!?だ、騙しましたね二人とも!?い、イジワルですよぅ!」
いやいや?僕らはただ、瑞希もやっぱり仲良く同じステージに立って貰いたかっただけだよ?嬉しい事に、瑞希も僕らの(地獄の)暴露大会参加決定♪いやぁ、本音で語れる仲間が増えるって喜ばしいよね!
「だ、大丈夫ですっ。私には隠し事なんて」
【実は、さっきから明久君がHなことを考えていた時、私もたまにヘンなことを考えちゃってて明久君と美波ちゃんをまともに見られないっていう———】
「いやぁああああああああああああああっ!?」
瑞希は大慌てで自分の召喚獣の口を塞ごうとしていた。ふふふっ……こっち側にようこそ瑞希!愉しい愉しいゲームの始まりだよ!
「甘いわね瑞希。隠し事のことなんて考えるから逆に召喚獣が口にしちゃうのよ」
【ウチね、毎晩アキと瑞希が夢に出て来て貰えるように、枕の下にアキと瑞希の写真を———】
「こんな風にぃいいいいいいいいいいいっ!?」
美波も瑞希と同じように飛びかかる。ふっ……二人とも、まだまだ未熟のようだね。隠し事について考えるからそんなことに、
【隠し事?隠し事って僕が夜寝る時と朝起きた時、決まって瑞希と美波の写真に話しかける———】
「でぇやぁあああっ!クタバレ僕の召喚獣よ!」
【ふぎゃぁあああああああああああああっ!!】
この忌々しい召喚獣を、全力でゴミ箱へダンク。フィードバック?心の痛みに比べれば何てことないさ!
瑞希の参加により、いつもの僕たちFクラスメンバー全員の召喚獣が召喚されたことに。この暴露大会から解放されるまで、まだまだ時間があるようだね。これからどうなるんだろうか……何と言うか、もう不安しかないんだけど……?
———同時刻———
『あ、あの!久保君っ!』
『ん……?おや、君は確かEクラス代表の……』
『う、うん!Eクラス代表の中林です!』
『ああ、中林さんか。こんにちは。それで、僕に何か用かな?』
『え、えっと……その!き、聞きたいこと……あって“さ。問”題なければ聞きたいことがあるんだけど……じ、時間大丈夫?』
『時間?ああ、大丈夫“さ。問”題演習をさっき解き終わって後は帰るだけだったからね』
ポンッ! ×2 ←中林さん&久保君の召喚獣登場
【い、いきなり久保君ってどんな人がタイプなのか、なんて聞いたら引かれるよね……こ、ここは遠回しに質問して少しづつ尋ねていくべき———】
【好きなタイプ?うん、吉井君の全てかな。あんなにも無防備で愛らしくて素晴らしい。あのバカな行動にあのバカな発言。あのバカな仕草、どれをとっても愛おしいよ】
『『…………』』
『え、えっと……こ、これは……?』
『…………何だろうね?召喚獣の暴走かな。ちょっと気になるから職員室に行って先生方に尋ねてくるよ。と言うわけで中林さん、すまないが失礼するね』
『え、あ……うん……おつかれさま……』
『…………よ、吉井ィ!あ、あんたいつか覚悟しておきなさいよねぇ!!』
……そうそうちなみにこれは余談だけど、僕が全く知らないところで僕は全く関与していないと言うのに再び中林さんを僕が原因で怒らせることになったのはまた別の話だね。うん、やっぱこの召喚実験って誰も幸せになれないロクでもない実験だよねホント……
- 番外編:召喚実験シリーズ〜自分と本音と暴露大会〜その⑤ ( No.191 )
- 日時: 2015/12/04 21:12
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
秀吉Side
「「「「どりゃあああああ!!」」」」
【【【【ぎにゃあああああ!!】】】】
ワシ・明久・雄二・ムッツリーニの四人がハモるようにそれぞれの召喚獣をゴミ箱に蹴り込む。この作業は、本音を喋ってしまう召喚獣の試運転が始まってから、一体何度目じゃろうな……?
「くぅ……どうしてワシらがこんな目に……もう身体が持たぬぞ」
「まったく、だ……実体化した召喚獣がここまで厄介だとは……」
「…………今日はいつになく、ハードだ……」
「はぁ、はぁ、はぁ……秀吉と雄二とムッツリーニはまだいいよ。僕なんて、フィードバックまで付いてくるから」
四人で何とか息を整えながらこの状況を嘆く。まあ、そんなことをしてもどうにかなると言うわけではないのじゃがの……
《うぅ……それでもアキさんたちは召喚獣を止められるからまだいいじゃないですか。自分は本音や秘密を全く抑えようがないんですよ……?》
【秘密と言えばこの前デパートに買い物をしに行った時、迷子と勘違いされて———】
《あぁもう!?ホントに抑えようがないんですからっ!?》
そしてある意味一番厄介そうな造が涙目でワシらに語りかけてくる。そうか……造の場合は止めようにも自身が召喚獣じゃからの。止める媒体がない故に、どうしようもないようじゃな。
【それにしても、涙目な造は中々に保護欲を掻き立てられ———】
「口を噤むのじゃワシの召喚獣よ!?」
……本当に厄介じゃの。油断するとすぐコレじゃ。そうそう、ちなみにワシらと同じく召喚獣を出してしもうた姫路・島田はと言うと……
『うぅ……止めようとすればするだけ、この子たち、勝手に喋っちゃいますよね』
『どうしたらコイツら喋らなく出来るかしら……?隠そうとすればするほど隠したい秘密を喋っちゃうし』
【明久君の抱き枕……結局お母さんに見つかったんですよね。一応“最近の流行”って言い訳してみたんですが】
【ウチもバレたのよね……おまけにいつの間にか葉月に何枚か持っていかれたし、そのとこで家族会議に発展しかけたし】
少し離れたところで自分たちの召喚獣が話す本音を聞かれないよう必死でガードしておる。あの二人も手を焼かされておるようじゃの。……話している内容に若干ツッコミを入れたいが、それは今は置いておくとしよう。
「てか……何でこんなにも攻撃しているのに召喚獣が消えないのさ……?」
「…………俺たちの召喚獣の点数なら、もうとっくに戦死してもいいハズ」
と、明久とムッツリーニが息を整えつつ疑問を口に出す。むぅ、確かにおかしいのう……
《あー……多分ですが、これは試運転用に設定されているフィールド内の召喚獣だからだと思います。試運転中に消えてしまっては実験にならないので、滅多な事では召喚獣が消えないように設定されているはずなんですよ》
「だろうな……くそっ!あんのババァ、初めからこうなるってわかって仕組んだな……覚えていやがれ……」
と、造と雄二が同じく息を整えつつ応える。なるほどの、これでは対策が取れぬの。
「……雄二、もっと雄二の本当の気持ちを聞きたい」
「そうだね〜♪それと折角だし、普段聞けない皆の気持ちも聞いてみたいね〜♪」
「そうね。アンタたちのヒミツ、アタシも興味深いもの」
と、召喚獣を出していない姉上たちAクラス三人娘が余裕の表情でワシらに話しかける。まあ、この三人なら召喚獣を喚び出しても余裕な気もするがの。と言うか、姉上の本音を聞くのはかえって恐ろしいことになる気がする。ワシらについて普段何を考えているのやら?
「ん?どうしたの秀吉?アタシを熱っぽく見つめて♪惚れ直したのかしら?」
「改めて、姉上が何を考えているのかわからぬようになったぞい……」
……まあワシらの事以外、何も考えていなさそうじゃな。さて、どうしたものじゃろうか。ん?待つのじゃ———“何も考えていない”じゃと?これは……イケるやもしれん!
「のうお主ら。いっそ何も考えずに、瞑想……してみるのはどうじゃろうか?」
「「「《……瞑想?》」」」
と、男子メンバー全員が首を傾げつつ聞き返す。まあ、上手くいくかはワシにもわからぬが、
「妙な事を口走られるのは、ワシらが取り乱しておるからじゃろう?だったら修行僧になった気持ちで邪念を祓い、何も考えずに瞑想して気分を落ち着かせておればあるいは……」
《あ……なるほど、召喚者の無意識の中の意識を読み取って本音を喋るワケですからね》
「根底にある意識を空にすればあるいは……そうか、それならいける!ナイスアイデアだ秀吉!」
「そうすれば召喚獣も大人しくなるの!?や、やってみる価値あるよそれ!」
「…………良い案だ」
ワシの提案に全員が希望を持った目で頷く。と、その時。
「……雄二と吉井の召喚獣連れてきた」
「あはは♪こーたくんの召喚獣もつっかまえた〜♪」
「秀吉、アンタの召喚獣もちゃんといるわよ」
「「「「え゛?」」」」
と、霧島、工藤、姉上の三人がワシらの召喚獣を胸に抱えてやってきおった。い、いつの間に……っ!?マズイ、こうなれば一か八かさっきのワシの案を決行するしか……
「「「さぁ……皆の本音、聞かせて♪」」」
【【【【【本音?それは……】】】】】
満を持してワシらに質問してくる姉上たち。召喚獣が余計な事を喋る前に男子メンバー全員にアイコンタクト。そう、『瞑想をするのじゃ!』と。それに従い、大急ぎで座禅を組むワシら。頼むのじゃ……これで何とかなってくれいっ!
【【【【【…………】】】】】
と、ワシらの召喚獣は口をつぐみ、黙ってその場で座禅を組み始める。よしよし、思った通り効果ありじゃな。
「あれ?こーたくん?それに皆?」
「……雄二?返事は?」
「秀吉に造くん、どうしたのよ?」
【【【【【…………】】】】】
召喚獣は沈黙を守っておる。うむっ!これならいけるぞい!
- 番外編:召喚実験シリーズ〜自分と本音と暴露大会〜その⑤ ( No.192 )
- 日時: 2015/12/04 20:55
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
『見てください美波ちゃん。瞑想したら大丈夫みたいですよ』
『ホント!? じゃあウチらも真似しましょ!』
【って瑞希と美波、スカートで座禅してんの!?見たい見たい!】
「しまったぁああああああああああっ!邪念がぁああああああああああっ!!」
「《あ、アキさん(明久)……?》」
……あ、明久の奴はこんな時なのにどれだけ欲望に忠実なのじゃ……?まああやつらしいと言えばらしいが……いかんいかん瞑想せねば。
【スカートで座禅……俺は翔子の———】
【…………俺は工藤のが———】
「「邪念がぁあああああああああっ!!」」
……め、瞑想瞑想。あやつらに気を取られてはならぬの。
「「あ、アキ(明久君)……」」
「ち、違うんだ!誤解だよ!そうじゃなくて僕は【なんだー。二人とも座禅じゃなくて正座じゃないかー】ごめんなさい!いやらしい事を考えてました!」
「……雄二、いつでも来て♪」
「ち、違うぞ翔子!俺は別に【そうか!いやぁースカートで座禅なんて言われたら反応するのが男の本能だからなー】ぐおぉおおっ!明久ぁああっ!テメェが余計な事を言うから連想しちまっただろうがぁああっ!!」
「あはは!こーたくん面白いね〜♪」
「…………違っ【…………あの時工藤はライトグリーンだった。今日は一体どんな】…………違っ!」
なんとも恐ろしい状況じゃな。一瞬の邪念が命取りになっておるの。そうそうちなみに、
【ツ、ツッコミたい……この状況でもそう言う想像が出来るアキさんたちにも……女性陣の皆さんの反応に対しても、いえ、寧ろこの状況そのものをツッコミたいっ……!】
《うぅ……瞑想に集中できません……》
……根っからのツッコミ役の造は、別の意味で苦悩しておった。更に、
【んっと、今日の私の下着はピンクだったよね?】
【ウチはみずいろだよ〜】
「「いやぁああああああああああああああっ!!」」
女性陣もこの通りじゃな。とにかく改めてこのまま瞑想を続ける事に。
『ねぇねぇ、こーたくん。それに皆』
『……雄二』
『秀吉に造くん?他にはないのかしら?』
「「「「《…………》」」」」」
目を閉じている中女性陣が呼びかけるが、ワシら迷走状態を崩さずにジッと座禅を組み続ける。外界の情報を遮断せれば後は何とかなりそうじゃからの。
『ん〜、なんだか静かになっちゃったね』
『……困る。雄二にまだ色々と聞きたいのに』
『そうね……まあ、流石に対策取られたかしらね?』
安全地帯の三人の呟きが聞こえる。何やら面白そうな事を期待しておるようじゃが、ここから先はただひたすらタイムアップを目指し瞑想するだけじゃ。
『あ。そう言えばボク、さっきこの教室に入る前、学園長先生に会ったんだけど』
『……うん』
『その時、全員の動きが無くなったら使うようにって渡されたものがあったんだよね』
『ん?渡されたもの?何よそれ』
『えっと、この箱なんだけど、なんかここから1枚ずつ取り出して、ソレを読み上げなさいって』
……?少し気になり薄眼を開けてみると、工藤がいくつかの箱を取り出した。何じゃアレは———おっと、いかんいかん。瞑想を続けねば。
『箱の中に三枚のカードが入っているわね』
『……もしかして連想ゲーム?』
『よくわかんないけど、そういうことかなぁ。まぁとりあえずやってみよっか。えっと、まず一枚目。はい』
『……“しましま”?』
『はい、二枚目』
『えっと、“ピンク”ね』
『はい、三枚目』
『……“みずいろ“』
『この三つから連想される物か〜なんだろうね?』
『……難しい』
『んー……アレかしら?多分———』
【【【パンツ!!!】】】
【アキさん、ゆーさん、こーさん……】
【お主ら……随分想像力が逞しいのう】
三人の召喚獣が力強く答える。お主らはホント懲りんのう……と言うか、今のでよく“それ”と想像できるのう……?気を取り直して再び無心状態を保てるように心がける事に。
『じゃあ、次行くね。一枚目はこれだよ』
『“浴衣”ね』
『二枚目はこれだね』
『……“メイド服”』
『それで三枚目』
『“セーラー服”♪』
【姫路瑞希と島田美波!】
【霧島翔子!】
【工藤愛子!】
【【吉井明久!!】】
【【姉上(優姉さん)と先生たちの私物!!】】
「って待った!?ちょっと!?何で僕だけ女装になるの!?瑞希に美波、説明してよ!?」
「「…………」」
「ここで瞑想しないでっ!?と言うか、二人とも色んな意味で迷走しないで!?」
明久は災難じゃのう……ちなみにワシと造は同じ答えじゃな。と、ソレを聞いた姉上は心底不思議そうな顔で———
「何言ってんのよ秀吉、造くん?さっきのラインナップはアタシの私物じゃないわ。アレは———アンタたちの二人の正装でしょ?立派に吉乃ちゃんと月乃ちゃんになる時用の♪」
「《【【姉上(優姉さん)?それは本音ではないじゃろ(ないでしょ)?本音じゃないって言ってくれまいか(言ってください)!?】】》」
くぅ……姉上には後でじっくりと今後のことについて話をせねばならぬようじゃが、ここは一旦置いておくとしよう。
『更にもう一回。はい』
『……“いやらしい事”』
『二枚目ね』
「“囁きかける”って』
『三枚目っと』
『……“月野と吉井に”?』
「《どうして僕(自分)らなの(なんですか)!?》」
不憫な……学園長も人が悪いのう。やはり明久たちの言う通り実験ではなくワシらで遊ぶことが目的だったのじゃろうか……?
『うーん、吉井君と月野君にねぇ?どうする優子、代表?』
『そうね、それじゃアタシは造くんと秀吉に囁くわ。愛子は吉井君にやってみたら?』
『……雄二にするんじゃじゃないから、それは任せる』
『オッケー♪んじゃ優子は二人をお願いね』
『ええ♪とりあえず二人はあっちでやってくるわね』
「何故じゃ姉上!?」
ま、待つのじゃ!?何故か名指しられておらぬワシまで標的にされたのじゃが!?何をする気じゃ姉上は!?抵抗する間もなくワシと造は姉上に引きずられて教室の端まで移動される。
「さて……秀吉、造くん?」
「《……はい(ガクガクブルブル)》」
くぅ……姉上の事じゃ。何かとんでもないことを言ってワシらを弄るに違いない。衝撃に備えて造と肩を寄せ合い震えておると———
「ああ、安心なさい。アタシは別にアンタらにやらしいことなんて囁かないから」
「《……へ?》」
むぅ?と、ワシらの予想に反して妙な事を言い出す姉上。何じゃ急に?
「だってさ、アンタたちにそう言う事聞いても大して面白い反応は期待できないでしょ?ほら、あんな感じの反応とか、絶対しなさそうだし」
姉上がワシらがさっきまでいた明久たちの方向に指差す。つられて見てみると、
『ひぁああああああああっ!?!?!?ちょっ!工藤さん!?今もしかして僕の耳に息を』
【うー……なんか、耳や背中が変な感じ】
『さー?なんだろね〜♪』
『あ、愛子ちゃん!ダメですよっ!明久君にそう言う事をするのは【さっきの明久君の声、可愛かったです!また聞きたいです!】きゃぁあああああああああっ!』
『そうよっ!アキにそういうのは【アキって耳や首が弱いのかな?今度試してみたいわ】いやぁあああああああああああっ!』
- 番外編:召喚実験シリーズ〜自分と本音と暴露大会〜その⑤ ( No.193 )
- 日時: 2015/12/04 21:08
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
「———ね?アンタたち、あれだけのリアクション取れる?無理でしょ」
「《……あー、確かに》」
何をどうしたのかわからぬが、工藤が明久を弄りつつ間接的に島田と姫路も弄るという器用で高度な事をやっておった。まあ、あんな反応はワシらは出来ぬじゃろうし、冷静になって考えてみればワシも造もそもそもやらしいことと言っても興味があまりないからのう。
《あれ?それじゃ何の用ですか優姉さん?》
「ワシらはあまり興味がないから意味ない事じゃし、やらしいことを聞く為にワシらをここまで連れてきたわけじゃないのじゃろう?一体何をする気じゃ姉上」
「んー、まあ聞きたい事って“そこ”なのよね。前々から聞きたかった事があるんだけど……二人ってさ?」
「《……?》」
「二人って———異性に興味ないのかしら?」
「《…………は?》」
あ、姉上のヤツ、随分と妙な事を言い出したのう……?な、何と答えればいいのやら……非常に答え難い質問じゃな。
「あ、一応言っておくけどBL的な意味じゃないのよ?勿論ソッチの話してくれるなら大歓迎だけど」
《【何の話ですか優姉さん……?】》
「造、今のは空耳じゃ、気にせんで良いぞ」
「まあ、ソッチは置いておくとして。で、どうなのよ二人とも。異性については」
「い、いや……ワシはその———【興味がないわけでもないが、今は異性として興味を引かれる人物はおらぬの。昔から姉上の素行を見ておったせいか、女性像がやや屈折しておるし】…………あ、姉上?今のは、その。召喚獣の小粋な冗談じゃからの?」
「ふふっ秀吉♪今日は徹夜のコスプレ大会決定ね」
「理不尽じゃ!?」
ホントにこの召喚獣は余計な事ばかり言いおってっ!と、ワシが落ち込んでいる間に造が姉上の質問に少し考えて答えを出そうとする。
《……自分は、どうでしょう。正直よくわかりません。(ボソッ)ちょっぴり気になる方がいないわけでもな———いえ、やはりよくわかりません》
「ん?わからないってどういうこと?」
《まあ、色々と……その、自分に問題が山ほどありますので。これからどうなるかとかわかりませんし……それに———【自分もヒデさんと一緒で傍若無人なサクヤさんや母さんをずっと見てきたせいで、女性像が歪んでいるので興味を持てるかわからないですし】……い、今の聞かなかったことにしてくれませんかね優姉さん?》
「おっけー、ちゃーんと師匠に懇切丁寧に説明しておくわね♪」
《勘弁してくださいお願いしますっ!?》
と、造もワシと同じように答え、同じように自爆してしまう。確かに造は“あの”日高先生に育てられただけあって、色んな意味でトラウマがあるんじゃろうな……
「そっかそっか。つまり二人ともまだまだ恋するには早いってことかしらね」
【それは姉上だって言える事じゃろうに】
「……ふふふっ、今日はすっごくハードなコスプレさせるから覚悟なさい秀吉」
「もうこんなのは嫌じゃぁあああああああああ!?」
《ひ、ヒデさん落ち着いて。取り乱せば更に厄介なことになりますよ》
「ついでに造くんも来なさい。師匠と先生方呼んでおくから」
《【自分何も言っていないのにですか!?】》
横暴じゃ……理不尽じゃ……何故にワシらがこんな目に……
「ま、とにかくほっとしたような不安になるような、そんな気分ね」
「……ほっとした?不安……?何の話じゃ姉上よ」
《寧ろ今日の夜何をされるのか非常に不安なのですが……何のことですか?》
「ん?いや、ほら。美波とか瑞希とか代表とか愛子とか、アタシたちの周りって結構恋してる子たち多いじゃない?造くんも秀吉もひょっとして———って、思ってたんだけどね。取り越し苦労だったってわけ」
ああ、だから姉上はこんなことを聞いてきたというわけじゃな……確かにいつものメンバーの中で今のところそう言う恋愛関係の話が無いのはワシと姉上、造くらいじゃしの。気になるのも無理はないのかもしれぬ。
「恋愛……まあ明久たちを見ておると、悪くはないとは思うがの」
《ですね……ただ、こういうのはあまり焦っても急いでも必ずしも上手くいったりするものではないので。アキさんたちのように一生懸命頑張って恋愛をやるのも素敵ですし、逆にゆっくり時間をかけて“愛”や“恋”を見つけていくのも……それはそれで良いものではないでしょうか》
「あら♪なかなか素敵なこと言うわね造くん。やっぱりロマンチストなのかしら」
姉上がそう茶化すと、造は少し恥ずかしそうに頬をかく。
《ま、まあそんな偉そうなことを言っていながら、恋愛とか付き合うこととかやったことが無いので恥ずかしくはありますね》
「む?造は恋愛をしてみたいのかの?」
《んー……憧れてはいますが、その……色々な意味で早いですからね。(ボソッ)問題も山積みですし———コホン、それに……》
「「?それに?」」
そこまで言うと造はワシと姉上に最高の笑顔を魅せて……
《今は……ヒデさんも優姉さんもいますからね【二人といると本当の兄弟が出来たみたいですっごく楽しいですもの。優お姉ちゃんとヒデ兄さん的な♪素直に甘えられますからね〜】って!?だからそこまで言わないでください!?》
「「…………っ!?」」
……何の前触れもなく、とんでもない一撃をワシらに喰らわす造……ヒデ兄さんじゃと……ひ、卑怯じゃぞ……そんな急に……て、照れるではないか!
《あ、あはは……今のは気にしないでくださいね?まあ、お二人ともお嫌かもしれませんが、その———ふ、二人といると楽しいってことですよ!》
「……そ、そうか!い、いや別に嫌というわけではないのじゃぞ【“ヒデ兄さん”か♪造にあんなこと言われて嬉しくないわけなかろう———】こ、これ!?何を言っておるのじゃワシの召喚獣よ!?」
「ふ、ふふふ……ふふふっ!そう、そうだったのね!そんなこと考えていたのね造くんは!」
と、そんな造の【物凄く嬉しい(バシッ!)】言葉に浮かれた姉上【ワシも浮かれておるが(バシバシッ!)】が目を血走らせて造とついでにワシに迫る。な、何事じゃ……?
《ゆ、優姉さん……目がちょっと怖いですよ?》
「姉上……正直見てて身の危険を感じるのじゃが?」
「ふふふっ!いいわよっ!優お姉ちゃんはずっと造くんのお姉ちゃんだから安心してねっ!そしてドンドン甘えて良いのよっ!勿論秀吉もねっ!」
そう言って精神がどこかにトリップさせる姉上。【ワシと同じように(バシィ!)】何やら姉上に妙なスイッチが入ったようじゃな……
《【ううぅ……赤っ恥です。ヒデさんと優姉さんよりも自分の方が年上なのに……お姉さんとかお兄さんって……ヒデさん、恥ずかしい思いさせてゴメンなさいです……】》
「い、いや……造が謝る事ではないぞい【ワシは造のお兄ちゃんなのじゃ!】だああああああああああああああああ!」
《ちょ!?ひ、ヒデさん?どうしました急に?だ、大丈夫ですか!?》
造に余計な事を聞かれる前に思わず召喚獣をゴミ箱の中に叩き入れる。もうこんなのは嫌じゃ……恥ずかしくて死にそうじゃ……
少し居たたまれなくなり、ふと明久たちの方を見ると———
『『『『『どぉりゃぁああああああああああああっっ!!』』』』』
明久たちだけでなく、姫路と島田までもが自身の召喚獣を別のゴミ箱に叩き込む光景が見られた。あやつらも大変じゃな……
試運転は一時間程度のハズじゃったが、ワシは今までこんなに一時間が長いとは思わなかったのう……解放されるまで、まだ三〇分以上残っておる。ここは地獄かなにかなのかの……
「……と言うか、ワシらの異性との交友関係を聞いて姉上は何がしたかったのじゃ……?」
「ん?いや、姉なら弟の交友関係をしっかりと把握しなきゃならない義務があるでしょ?もしも変なことしてた場合はお嫁に行けなくなるチュウをしないといけないって———」
《い、いやいやいや!?それがさも当然みたいに言われましても困るのですが……?》
「え、だって———吉井君のお姉さんの玲さんからそう教えてもらったんだけど」
【【…………アキさん(明久)もやっぱり苦労しているんですね(のじゃな)……】】
- 番外編:召喚実験シリーズ〜自分と本音と暴露大会〜その⑥ ( No.194 )
- 日時: 2015/12/11 21:11
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
造Side
「「「「「「ぜぇ……ぜぇ……ぜぇ……」」」」」」
《あー……皆さん、大丈夫ですか……?》
「はは……もうダメかもしんないよ造……フィードバックで体中が痛いよ……それ以上に精神が持たないんだ……」
「俺も、こんなに疲れたのは久々だぜ畜生め……」
「…………キツい……」
「流石にワシも疲れたぞい……」
「はぅ……このままだと、いずれ変な勢いで告白する羽目になっちゃいます……」
「ウチも、こんな事で告白するなんて、絶対に嫌なのに……折角ならもっといいシチュエーションがいい……」
《皆さんの場合って召喚獣とのいたちごっこですからね……こりゃ埒が明きませんよね……》
本音を喋ってしまう召喚獣の試運転を開始してから約二十分。解放されるまでまだ三十分以上残っているにも拘らずいつものFクラスメンバー全員が疲労困ぱいで弱音を吐いてしまう始末です。
「たはは、皆お疲れだね〜」
「……雄二大丈夫?」
「流石に見てられないほど疲れているみたいね」
《【と言うか、そう思うのでしたら優姉さんたちはもう少し早く弄るのを止めてくれると嬉しかったのですがね……】》
まあ、そう言う自分も結構辛いのですが……皆さんのように召喚獣を止める必要がない———と言うよりも止める媒体がないので……強制的に黙らせることなんてできずに常時本音や隠している事がダダ漏れです。先ほどから止めようのない本音暴露状態に心の傷が深まるばかり。【心の傷と言えばこの前学校帰りにまた補導されかけ、学生証も運転免許証も見せたと言うのに最後まで信じて貰えなかったという】———ええぃ、またぁ!?……もうやむを得ませんっ!?
《……仕方ないですね。皆さん、ちょっと行ってきます》
「え?何処に、行くの造……?」
《学園長のところです。これ以上はもう限界ですって伝えてきます。ちゃんと話せばわかってくれると思いますし。と言うわけで皆さんはここで待っててください》
自分たちを弄っていた召喚獣を召喚していない優姉さんたちを除けば、一番体力的には自分が疲れていないハズ。皆さんには教室で休んで貰う事にして、急ぎ学園長室に行く事に。
「すまん、助かる造……頼んだ……」
《はい了解ですゆーさん。では、皆さん少し待っててくださいね……》
「「「「「「宜しく(お願いします)……」」」」」」
ガラッ! ダッ!
疲労でぐったりしている皆さんを背に、教室を後に学園長室へと駆けます。学園長も流石にこの状況を伝えればわかってくれるハズ。一秒でも早くこの実験を終わらせなければ……これ以上は精神的にも肉体的にも皆さん限界突破しちゃいますものね。
〜造が教室を出てしばらくして〜
『……造、悪いが頼んだぜ。何とかしてあの妖怪ババァを説得して———ん?いや、ちょっと待て……?おい、お前ら。本当にこれでいいのか?』
『何さ雄二……』
『今更言うのも何だが、よく考えてもみろよお前ら。俺たちが何でまたこんな目に遭わにゃならんのだ』
『まあ、理不尽にも程があるのう』
『だろう?理不尽だよな?そんじゃ、この原因って誰のせいかをお前らよく思い出してみろ』
『へ?僕らがこんな酷い目に遭う原因?』
『あら?そういえば、何が原因かしら?』
『…………この試運転が原因。そして、』
『えっと、そしてこの試運転を頼んだ張本人と言えば———』
『『『『『『……』』』』』』
『お前ら全員理解したな?そう———白髪で口の悪い、こういう事になるとわかっておきながら退路を断ち、俺たちに召喚をさせた諸悪の根源である忌々しきあの老婆の事を……』
【【【【【【……】】】】】】
ガラッ! ザッザッザッ!×6
『ふむ。やはりお前たちも同じ結論に思い立ったようだな』
『まあね。てか、人を実験台にしておいて、自分だけ無事で居ようなんて言うのが甘いよね』
『そうじゃな。因果応報じゃろう』
『…………当然の報い』
『ま、そう簡単に許せる事じゃないわよね』
『あ、あはは……』
『『『……どういうこと?』』』
- 番外編:召喚実験シリーズ〜自分と本音と暴露大会〜その⑥ ( No.195 )
- 日時: 2015/12/11 21:18
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
———学園長室———
《———と言うわけで学園長。もう自分も皆さんも限界なんですよ。この辺で勘弁してもらえませんか?今回ばかりは勝手に出てくる本音や隠し事で自分も【隠し事と言えば、この前デパートで迷子と間違えられて迷子センターに強制的に連れていかれ———】こんな具合に勝手に隠し事が駄々漏れで限界なんですぅ!?》
「やれやれ。ったく、もうギブアップかい?若い癖に根性がないねぇ、アタシとしてはもう少しあのバカたちで遊んでみたかっ———コホン、データが欲しかったんだがね。まあ、多少なりにもデータが取れたみたいだから問題はないかね。いいだろう、もう上がっていいよ」
学園長室に辿り着くと同時に、学園長に試運転の停止を求めます。若干不満そうではありますが、学園長は納得してくれたようです。と言いますか、今“もう少しあのバカたちで遊んでみたかった”とか聞こえたような気がしたんですが……?き、気のせいですよね?
「ま、上がっていいって言っても、試運転用のフィールドは一時間で自動的に消滅させられるように設定してあるからすぐには消せないよ。今すぐにでも消したいならアンタの腕輪使って2−Fに張ってある召喚フィールドを干渉させて消してきな。ホレ、ちゃんと腕輪は調整し終わってるよ」
そう言って、一旦回収していた自分のフィールド形成用の白金の腕輪を返してくれる学園長。ふぅ、これで何とかなりますかね。
《ありがとうございます。それでは、自分はすぐに皆さんのところに戻ってフィールドを———》
「おっと、ちょいとお待ち月野。その前にアタシからお前さんにいくつか聞きたい事がある」
《……へ?学園長?》
と、学園長室の扉のノブに手をかけ、退室しようとする前に学園長に呼び止められる自分。聞きたいこと……?
《えと、何ですか聞きたい事って?》
「ま、アンタの本音を聞けるのは良い機会だからね。ちょいとアンタの本心が聞きたいのさ。質問その①、お前さんは《文》の事をどう思う?」
と、問答無用の質問タイム開始……それにして何で文さんの話に?まあ学園長の質問ですし、一応はちゃんと答えますが。
《文さんは良い子ですよ。たまに暴走はしますが、本当に優しい子ですし【難を言えば、少しだけ世間知らずですし、もう少し外の世界を見て欲しいって気持ちはあります。閉鎖的な世界しか触れていない子ですし、自分以外に大事な物を作って欲しいって気持ちが】あっ……!?》
そ、そうか……しまったそうでした。学園内全域にフィールドが張られてあると言うことはここも当然フィールドが張られています。ついさっきも本音や隠し事が出てたのに油断しましたね……
「ふむ。なるほどね。“それ”が《文》に対するアンタの本音かい。……正直参考になる意見だね。アタシもそれは少し前々から思ってたからねぇ。あの小生意気な召喚システムには、他者とのコミュニケーションが不足してるからねぇ」
《あー……まあ、文さんは生まれたばかりの赤ん坊のような存在ですからね》
【自分がいつかこの学園を離れる時までに、彼女も一人立ちできるようになって欲しいです】
「ほーう?アンタ、それはまるで文の親みたいな心境だねぇ。若いのに随分悟っているじゃないかい?」
《なっ!?……コホン。か、からかわないでくださいよ!そ、そりゃあ半人前な自分がいう台詞じゃないってわかっていますよ!?》
くぅ……やっぱり勝手に思っている事が出てきますね……出来ればもう勘弁して欲しいですが。
「ま、文の事はもういいさね。良い意見が聞けたからね。それじゃ質問その②、アンタには……その、今後の不安はないのかい?」
《HAHAHA!いやいや、自分に不安なんて微塵も【サクヤさんと優姉さんと先生方にコスプレされられるのが非常に不安です。今夜は一体どんなもの着せられるのか———】な、ないですよっ!?》
「……アンタは普段一体全体どんな生活を送ってるんだい?あー、いや。そっちじゃなくてだね。これはアタシの恥だが、まだアンタの“その体質の件———つまり元に戻れるのか”は未だに解明されていない。そのことはお前さんが一番よく知ってんだろ。それは不安じゃないのかい?」
と、真面目そうな顔で問いかける学園長。えっと、つまり今の自分の状況に対して不安は無いのか……って意味ですか?え、何ですそれ?
《んー、そこは別に不安でもなんでもないですよ》
【と言いますか、別に不安になる要素なんて何一つないですよね?何も問題ないですし心配事もありませんから】
「そう、かい…………(ボソッ)“何も問題ない”……ねぇ」
……?今何か小声で学園長が何か言ったような?気のせいでしょうか、学園長の顔色が悪いと言いますか、暗いような気が……?
《それで?他には何かないんですか?》
「……ん?あ、ああ。なら最後に一つ———いや、もういいか。質問は終わりだよ。悪かったね手間取らせて。ホレ、アンタはさっさと戻ってあのクソガキ共の召喚獣を戻さないといけないんだろ。とっとと行きな」
そう言うと学園長はシッシッと手で払う仕草を見せます。おっと、そうでした。皆さんが待っていますよね。
《それでは、学園長。自分はこの辺で失礼しますね》
「はいはいとっとと帰りな。ああ、それから途中で中止したから礼は無しってあのガキ共に伝えておきな月野」
《あらら……それは皆さん怒るかもしれませんね……まあ、一応説得しときます。それでは失礼しました》
とりあえずあの地獄の暴露大会から解放されるなら皆さんそれくらい何ともないでしょうがね。さてさて、待ちくたびれているでしょうし早く皆さんのところに行ってフィールドを戻さねばね。
- 番外編:召喚実験シリーズ〜自分と本音と暴露大会〜その⑥ ( No.196 )
- 日時: 2015/12/11 21:07
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
〜造移動中〜
学園長の了承も得ましたし、皆さん召喚獣の解除を今か今かと首を長くして待っているでしょう。そう思いながら駆け足で教室に戻ってきた自分でしたが———
《ただいまです皆さん!お待たせしました、学園長が“もう上がっていい”って———あれ?》
「あ、お帰り造。そろそろ帰ろうか」
「おう、ご苦労さん造。わざわざ行って貰って悪かったな」
「ホレ造、姉上たちはAクラスに戻って下校準備をしておるぞい。皆で一緒に帰ろうぞ」
教室に辿り着くと……皆さんもうすでに鞄を持ち、下校準備が出来ているんですが———妙な事にすでに皆さんのあの本音を喋る召喚獣の姿が見当たりません。あれ?これってどう言う事……?
《あ、あのぅ……?皆さんの召喚獣は?》
「…………“勝手に”どこかへ行った。まあ、心配しなくていい」
「私たちの召喚獣は月野君が出て行った後、しばらくして教室を出て行ったんです」
「そう言う事。勝手に出て行ったんだし気にしなくていいでしょ。さあ月野。アンタも帰る準備しなさいな」
《え?は、はぁ……?そ、そうですか》
勝手にどこかへ行ったって……それ勝手に本音を喋る召喚獣が校内を跋扈しているってことですよね?い、いいのですかそれ……?ま、まあ皆さんは大丈夫と言っているなら良いんですが……
《あ、そうそう。皆さんすみません。学園長曰く“試運転を中断したからお礼は出せないよ”って仰ってまして……》
「「「「「「ああ大丈夫(ですよ)お礼はちゃんとやったから(やりましたから)」」」」」」
《…………ん?お礼?》
「さあ、さっさと帰ろう造」
「腹減ったしちょいとどっかで買い食いするのも良いかもな。造、お前も食うか?」
《え、あー……はい》
どう言う事かいまいちよくわかりませんが、皆さんが更に念を押して大丈夫と力説します。そんなニコニコと笑っている皆さんにそのまま促されるがままに自分も学園を後にすることに。ところで———
『ぎゃあぁあああああああああああああああああああ!?』
———下校途中に何故か学園長の悲鳴が聞こえた気がするのは……気のせい、でしょうか?
〜数分前〜
NO Side
「……やれやれ。今回の試運転は良いデータが取れて良かったよ」
造が退出してからしばらく経った学園長室で、学園長は先ほどの本音召喚獣もとい、半自動化召喚獣のデータをまとめつつ一人呟く。
「今回は……あの半自動召喚獣の性能を試すと同時に、あのクソ生意気なジャリガキ共の弱音を握———コホン。アタシのストレスを解しょ———ゴホン。吉井たちが職員室で暴れた事に対する反省の為の試運転だったんだがねぇ」
そう言って意地の悪そうにニヤニヤしている学園長。どう考えても私用と私怨が半分以上含まれているのはご愛嬌。やはり学園長と雄二&明久は犬猿の仲なのかもしれない。
「だがやはり———あのガキの本心を聞き出せたのが一番の収穫さね。《文》をこのままにしておくことも月野の言う通りかなり問題だが、それ以上に放っておけない問題は……月野自身かもしれないねぇ」
と、急に先ほどまでの意地の悪そうな顔から一変して、深刻そうに溜息を吐く学園長。
「“何も問題ない”だって?やはりあのチビジャリは《文》以上に放っておくと危険だよ。本当に月野は自身に対する危機管理能力が無さすぎる。今度また何かのトラブルがあって、再び肉体と精神が離れたらと思うと———危なっかしくて見てられないさね」
普段は全くそうは見えないが———事故とは言え造を“召喚獣として変えてしまった”研究者としての責任と、造を“進むべき道へ導きたい”と言う一教師としての思いからくる葛藤が、やはりこの学園長の中にも確かにあるのだろう。何だかんだで人一倍責任感が強い人である。
「本来なら最後にもう一つ、“アタシや文を恨んでいるかい?”って聞こうと思ったが、この分じゃあの能天気なジャリガキのこった。どうせ“意味がわかりません”って返すんだろうね。ハァ……とにかくこの事は西村先生と保護者である日高先生にもちゃんと話を通しておかないとねぇ。まあ、あの二人ならその辺はもう言われなくてもわかっているだろうがその辺は要相談って感じかね」
そう言って学園長は半自動化召喚獣と《文》、そして造に関しての資料をまとめて大きく伸びをする。そして———
「それにしても……はははっ!やはりさっきのは傑作だったねぇ!面白いもんが見れたよ!」
———暗い顔から一転して、急に再び先ほど同様に意地の悪そうな顔に戻る学園長。
「さっきの質問をする為に、あの箱をAクラスの———工藤だったかねぇ?あの子に渡して場を混乱させて、月野にアタシのところに来て貰うよう見越して仕組んだんだが……くくくっ!ホントに良い実験になったねぇ。吉井や坂本の弱みも握れたし。さてさて、今度はどうしてくれようかねぇ?」
本人は否定するが、責任感が強く研究者としては一流とは言え何だかんだでやはり子供っぽいのかもしれない。と、学園長がそうやってニヤニヤと笑っていると、
ガチャ! ザッザッザ!×6
「……は?一体何さね、この召喚獣たちは———と言うか吉井たちの召喚獣じゃないかい。何でこんな所に……?ん?確か月野が消しに行ったハズじゃなかったかねぇ……」
———学園長室に現れる明久たちの本音召喚獣六体。学園長を視認すると六体はそのまま飛びかかり、そして……
「って、な、何さね!?アンタら一体なにをするやめくぁwせdrFtgyふじこlp……ぎゃあぁあああああああああああああああああああ!?」
……放課後の学園に響き渡る学園長の悲鳴。こればかりは自業自得とも言えるだろう。この件からしばらくの間半自動化召喚獣の試運転は行われる事はなかったとのこと。
「今回の件は召喚獣の暴走だから、僕らには一切関係ないよね!」
「そうだな明久、システムの暴走なら俺らに責任はないからな!」
「「「「うんうん」」」」
「アキさんにゆーさん、それに皆さんまで……一体何の話ですか?」
- 番外編:寒い日は鍋が一番!〜闇鍋?病み鍋?暗黒鍋デス〜その① ( No.197 )
- 日時: 2015/12/18 21:03
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
造Side
ガランガランッ!
『大当たり!大当たりが出ましたー!』
「……うそぉ……」
「あ、あはは……流石造くんね。運良い……のよね、コレ」
「う、うむ……造は相変わらず運が良い……といえば運が良いのかのう?」
「い、いや。これどう考えても運悪い方じゃないですかねヒデさん、優姉さん……」
あの体育祭と召喚野球大会も何とか無事に終わり数日経ったとある日。その日はとてもうららかな陽光が暖かき休日だったのですが、自分こと月野造は自身の運の悪さ……いいえ、より正確にいうと自身の“運の良さ”を呪っていました。
『大当たり!大当たりですっ!これは本当にすごいっ!』
ええ、確かに凄いですね。自分が一番驚いてますもの。あ、ちなみにここはとあるお店のレジカウンター近くの福引コーナー。オープン七周年記念とかなんとかで、一定額以上の買い物をした方に貰える福引券のサービスを行っていたらしいこのお店に、とある理由で一緒にお買いものをしていた自分とヒデさんと優姉さんの三人。
そんな中お二人に折角だから引いておいで、と福引券2枚分を頂いてガラガラの前に立った自分。いえ、その時までは確かに何かいいのが当たれば嬉しいな、お二人の喜ぶものが当たったらいいな、と欲深くも考えてはいました。…………いましたが。
『おめでとうございます!なんとこのお嬢ちゃん、一等と特賞の両方を大当たりです!』
手元の鐘を全力で鳴らして、景気のいい声でそう高らかに自分におめでとうと言ってくれる法被を着た店員さん。ええ、ホントおめでたいですよ……何せその当たった一等と特賞の景品はと言うと———
『おめでとうお嬢ちゃん!一等“鉄パイプ十万円分”と特賞“鉄パイプ五十万円分”です!大切に使ってね!』
「一体何をどう使えと!?申し訳ないですけど全力で辞退させてもらいますよ!?と言いますか、誰がお嬢ちゃんですか誰が!?」
———恐らく世間一般で言う大外れである鉄パイプの山山山ですからね。もっと早くから景品のラインナップを見ておかしいと思うべきでした……とまあ、こんな感じで一つでもアレなのに両方の大外れを引いてしまい、全力で辞退しつつツッコむこととなった土曜日の午後でした。
「……大体何ですかアレ……賞品五等から上のラインナップが全て鉄パイプって。顧客のニーズを何一つわかっていませんよねアレ……ごめんなさいお二人とも、折角お二人から券を頂いたと言うのに」
「どう考えても五等以下が大当りじゃったからの。まあそう気を落とすでない造、ある意味珍しいものが見れたしの。それだけで満足じゃ」
「それほど造くんの運が良かったと言うことで。アタシも気にしてないわ。寧ろホラ、こんなこと滅多にないしいい話のタネにできると思うわ」
お二人に励まされつつ、買い物メモを片手にそう愚痴りながら店を出る自分。鉄パイプって……何をどうしてあんなものを賞品にしてたのやら……?特賞及び一等から四等賞までが鉄パイプ。そのくせ五等から温泉ペア宿泊券やら海の幸セットやら買い物券はあると言うね。何故それを上の賞に設定しないのか、わけがわかりませんよ全く。
「外れのはずのティシュの方が使い道あったと思うのですがね……もういいですが。優姉さんの言う通りネタにはなるでしょうし。気を取り直してそろそろ夕食の買い物に行きましょうか。お二人とも、何か食べたいものありますか?」
「うん、そうね。アタシは造くん食べたいわ」
「……はい?」
「造よ、姉上の戯言は気にするでないぞ。そうじゃな、ワシは少し寒くなってきたし温かいものが食べたいのう」
「温かいもの……そうですね。何か旬のものがあればそれを使って温かいもの作りましょうね。他に何か食べたいものを思いついたらスーパーに着く前に教えてください」
「だから、造くんと秀吉を食べたいんだって」
「姉上、天下の往来でそれ以上の発言はアウトじゃ」
と、今夜の食べたいものを言い合いながら(若干優姉さんがトンデモナイことを口走っていましたが)、三人で品ぞろえ豊富なスーパーへと足を運ぶことに。……え?何故自分と木下さんちの優子さん&秀吉くんがそんなお話をしつつお買いものをしているのか、ですか?それはですね———
〜造回想中〜
- 番外編:寒い日は鍋が一番!〜闇鍋?病み鍋?暗黒鍋デス〜その① ( No.198 )
- 日時: 2015/12/18 21:15
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
———前日の夜:月野家———
『つーちゃんつーちゃん!なんか寒いわ!』
『え、そうですか?まだそこまで寒いとは……母さん、そんな真夏のような恰好じゃそりゃ寒いでしょう。寒いならちゃんと衣替えしてください』
『やーよ、面倒だもの。なら服着せてよつーちゃん』
『ワガママすぎる!?』
『つーちゃんの“我が”“ママ”なだけにね!…………うぅ、余計寒くなってきたわ。助けてつーちゃん』
『母なのに親父ギャグ……と言うか自爆しといてそれですか……いいからさっさと暖かい服自分で着てくださいね母さん』
『むー……つーちゃん何か冷たーい……いいわ、わかった。つーちゃんが冷たい分、暖かいとこ行く』
『はいはい、早く暖かい服着て暖かいところで休んでくださいね。風邪をひいても知りませんよ』
『うん、そうする。と、言うわけで———つーちゃんはお留守番よろしくね!シンガポールとかペルーとかがいいかしら〜♪あの辺はきっとまだあったかいわよね〜』
『…………は?』
『いや、その……申し訳ありません造さん。奥様のいつもの思い付きでして。一週間もすれば飽きて戻ると思いますので』
『うぅ……造っ!寂しくなったらすぐ電話しろぉ!アタシはすでに寂しいっ!困ったことあったらすぐ戻るかんな!?あ、あと造が一人で辛いと思って我が弟子優子っちに連絡しといたからなっ!』
『は、はぁ…………はぁ!?』
〜回想終了〜
———と、まあ“いつもの”母さんの突拍子もない思い付きで、今朝早くに何だか寒いからと言う理由で暖かいところ……つまり暖かい“国”に飛んでいきましたとさ。サクヤさんと蒼兄さん、その他たくさんの執事さんやお手伝いさんも連れてね。数人の信頼のおける執事さんとメイドさんを残してくれたのはせめてもの情けだと思いたいです……あの母さんはホントに……
で、サクヤさんがアタシがいないと寂しいだろうとヒデさんと優姉さんに連絡した結果、土日だけでも木下家に泊まらないかと提案されたと言うわけでして。
「本当に申し訳ないです……サクヤさんが、と言うかうちの母がご迷惑を」
「いいってそれは。寧ろ嬉しいわ、初めてよね造くんがアタシ達の家に泊まるなんて」
「ワシらの家も今日明日は姉上と二人だけじゃったからの。造が泊まってくれるなら大歓迎じゃ」
と、快く自分を迎え入れてくれたお二人。朝と昼はサクヤさんが作り置きをしていたご飯を三人で仲良く食べ、夕食の材料調達兼各々のお買いものをすることに。あ、一応料理は自分が担当。あまり上手に作れるわけではありませんが……人並には作れると思いますので。
ちなみに先ほどのあの店ではヒデさんは演劇用の小道具を、優姉さんは裁縫用の品々(何に使うのかものすごく気になりますが)を購入したとか。自分は特に買うものが無かったので荷物持ちとゆっくりウィンドウショッピングを楽しんでいたのですが、それだけでは面白くないだろうと気を遣ってくれたお二人に福引券を頂いた……結果がさっきの鉄パイプでしたが。
「ありがとです、お二人とも。さて……温かいものですか。何が良いでしょうね。鍋焼きうどんとか麻婆豆腐とか……うーん」
「あまり凝ったものでなくてよいぞ造」
「そうね、何ならいっそ外食でもいいわ」
「何も思いつかなかったらたまにはそれもいいかもですね。うーむ、こういう時アキさんたちならパッとメニューを思いつくんでしょうけどねー」
いつもはサクヤさんが作るので、こういう時普段から料理を作り慣れているアキさんたちのようにすぐには何を作るべきか思いつかないんですよね。デザート関連なら自信がありますしすぐに思いつくのですがね。と、アキさんの名を口にしたその瞬間。
『ななな、何を言っているの瑞希!?おおおお客さんにそんなことさせられないじゃないか!?』
『でも、それじゃあ私の気が済まなくて』
「「「ん?」」」
前方から、アキさんそっくりな声が聞こえてきます。いいえ、と言いますかそっくりではなく———
「あら、噂をすればなんとやら。アキさんじゃないですか」
「おお、姫路もおるの」
「玲さん、お久しぶりです」
「へ……?ああっ!造!」
「こんにちは木下君」
「ああ、優子さんも。こちらこそお久しぶりです」
何やら荷物を載せた台車を押しているアキさん玲さんの吉井姉弟とクラスメイトの姫路さんがそこにはいました。
「何やらいっぱいありますけど、アキさんたちもお買い物でしたか?」
「そ、そうなんだ!この通りね」
何故か若干焦りながらもアキさんがそう言って台車に載ったオーブンや生活雑貨、そして海の幸詰め合わせセットと書かれた発泡スチロールの箱を見せてくれます。何だか随分量がありますね。
「何じゃ明久。お主何やらごちそうでも作るのかの?」
「たくさん買ってますね。パーティか何かするんですか玲さん」
「いいえ、オーブンはともかくそれはアキくんが運よく福引で当ててくれたんですよ」
え?……福引……?福引、かぁ……
「……はぁ」
「って、どしたの造。溜息なんかついちゃって」
「いえ、福引……いいえ、鉄パイプ思い出しまして。すっごく損した気分の鉄パイプ福引を思い出しまして」
「鉄パイプ福引……?———まさか、造それって五等以上の?」
「っ!?ど、どうしてそれを———って、この海の幸詰め合わせセットってもしかしてあの福引の賞品ですか!?」
「う、うん。六等賞でこれだった……で、何等賞だった?」
「…………一等と特賞でした」
「……うん、ゴメン。聞いた僕が悪かった」
何やら自分のその言葉だけで多くを察してくれたアキさん。なるほど、アキさんたちもあのお店の福引を引いたんですね。ちなみにアキさんも地味に外れのティッシュと4等の“鉄パイプ三千円分”(勿論アキさんも辞退したとか)を何度か引いたとか。ティッシュの方が使えるけどねと、アキさんも同じことを考えていたようです。
- 番外編:寒い日は鍋が一番!〜闇鍋?病み鍋?暗黒鍋デス〜その① ( No.199 )
- 日時: 2015/12/18 21:09
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
「それで、姫路はどうしたのじゃこんなところで」
「あ、えっと。実はちょうどさっき明久君と玲さんに会いまして」
「何でも瑞希さんのご両親が遠くに行っているそうでして。それならご一緒に我が家で夕食でもと誘ったのですよ。ちょうどアキくんが良い物を当ててくれましたし、この量は流石に二人では食べきれないと思いまして」
「そ、そうなんだよ……瑞希に来てもらおうかなーって話してたんだーははは……」
ふむふむ、確かにこの量はお二人だけではさばききれないですよね。生ものですから日持ちするものではありませんし、そういう意味では確かに姫路さんに食べてもらった方がアキさんたちも助かるのでしょう。……その割には何故かさっきからアキさんが何かに怯えているご様子ですが。どしたのアキさん?
「あら瑞希も親がどこかに行ってるの?実はアタシ達や造くんもなのよ。造くん今日はアタシたちの家で泊まる予定なの」
「そう言うことじゃ。ワシらも夕食の準備をするためにスーパーにこれから行こうと思っての」
「お料理は一応自分担当です。まあ、普段から作っているわけじゃないのでアキさんみたいに上手にはいかないでしょうけどね」
ここにいるアキさん、それにゆーさんこーさんがいつもの仲良しメンバーの料理上手三人衆。普段から作り慣れているからか三人ともとっても美味しい料理を作ってくれるんですよね。自分もお菓子作りだけじゃなくて普通の料理ももう少し精進せねばね。
「あらあら。でしたらいっそ造くんも秀吉君も優子さんもご一緒に我が家で夕食でもいかがですか?」
「え、ですがいいのですか?」
「ええ。余らせるのも逆に困ってしまいますので」
「ふむ……なら折角じゃし。姉上はどうじゃ?」
「うん、玲さんや吉井君がいいならアタシもごちそうになっちゃおうかしら」
と言うわけで、急遽夕食はアキさんのお家で食べることに。ああ、ですが良かった。こういうメニューはアキさんの方がレパートリーも多くてきっと良い案を出してくれるでしょう。自分はアキさんの手伝いをするとしましょうかねー♪———なんて、甘いことを考えていた矢先。
「あっ!それで思い出しました!明久君、人数も多くなりましたしやっぱりここは———」
ゾクッ! ×3
「「「……っ!?」」」
「———私に料理を作らせてくださいっ!」
まるで脊髄に氷の刃が突き刺さるかのごとく。アキさん・ヒデさん・自分を戦慄させる姫路さんの魔法の言葉が襲います。そ、そうかわかった……!さっきから何かアキさんが震えていると思いましたが、その理由が今わかった……!
「だ、だからね瑞希!慣れない調理器具だと怪我しちゃうかもしれないじゃない!?だから僕に任せてほしいかなって!?」
「そ、そうですね!アキさんが手慣れているでしょうしここはアキさんに任せた方がいいのではないでしょうかっ!?」
アキさんとヒデさんで、即アイコンタクト。これは是が非でも止めなければ———海の幸を味わうどころか海の藻屑になりますからね、自分たちが。
「それなら私、一度お家に戻って道具を持ってきます」
「いやいや、待つのじゃ姫路よ!それは少々効率が悪いと思うのう。慣れている明久に任せるのが一番じゃと思うのじゃがなっ!?」
「いいえ。この前お邪魔した時も明久君や美波ちゃんに作ってもらっちゃいましたから。今日は順番と言うことで」
「で、でしたら今日は自分が———」
「つ、月野君はダメですっ!(女の子として、負けられませんっ!)」
ぐぬぬ……おっとりとしてはいますが、芯の強さがある姫路さんは意見を曲げる気が無いご様子。これからどう説得すべきか……
「まあまあ皆さん、そういうことでしたら———」
と、そこに自分たちの言い争いを鎮めようと玲さんが割って入ります。こ、ここは大人の玲さんに何か助言をしてもらうしか———
「———そういうことなら、間を取って私と瑞希さんでお料理をするということで」
「「「(((考え得る限り最悪の事態っ!?)))」」」
さ、サクヤさんのお陰で多少はマシになったとアキさんは言っていましたが、それでも必殺料理人の名を持つお方が一人加わってしまう事態に。いかん、状況がどんどん悪化している……!?
「玲さんと一緒にですか!それなら喜んで!」
「「「どうしてその提案は反対しないの(ですか)(じゃ)!?」」」
こちらに都合の良い提案は呑まないのに、こちらに都合が悪い提案は快く受け入れてしまうのはどういうわけです姫路さん……さ、流石に二人分の必殺料理人の攻撃に耐えられる自信はないのですがね!?
「?どうしたのよ三人とも、そんなに慌てちゃって」
事情を知らない優姉さんがよくわからないと言ったお顔で自分たちを眺めています。ええ、そうですね。優姉さん、慌てざるを得ないんですよ。下手したら貴女まで三途の川で遠泳大会しないといけなくなるんですから。
「ではそういうことで。よろしくお願いしますね瑞希さん」
「はいっ!よろしくお願いします玲さんっ!」
「ま、待つんだ瑞希!姉さんも!全然よろしくないよ話を聞いて———待った!?ホント待って!?君たちのその足はどこに向かっているのさ!?」
「ちょ、ちょっと待つのじゃ!?何故姫路はその店に入ろうとするのじゃ!?」
「あ、玲さんっ!?そっちにスーパーはありませんけど!?そこに食料は売っていないんですけど!?」
哀しいことに、自分たちの心からの叫びは全くもって届かずに材料調達へと向かうお二人。…………そして恐ろしいことに、姫路さんは大急ぎで薬局へ。玲さんはその反対側にある雑貨屋へと駆けていきます。何故?どうして?お二人は料理の基本中の基本の“食べられるもの”を根底から覆すのでしょうねホント。
「あら?あっちにスーパーあったかしら?……ん、三人ともどうしたのよそんなに呆然としちゃって」
「「「…………」」」
事情を全くもって知らない優姉さんに見守られる中、自分たち三人は道端で呆然と立ち尽くすのみ。敵は姫路さんと玲さんの最強戦力。自分たちの胃袋が勝てる確率は……あるわけないじゃないですかそんなもの……
「「(ぶわっ)…………っ!」」
「ちょっ!?ど、どうしたのよ二人とも!?な、泣かないでよ!?は、ハンカチあげるから、ね?何か辛いの?ほら、お姉ちゃんに話してみなさい」
お二人が去ってすぐ、自分とヒデさんの目からぽろぽろと涙がこぼれ落ち始めます。そんな突如泣き出した自分たちを優姉さんが慰め、そしてただ一人あらゆる意味で覚悟を決めたアキさんはと言うと。
「えーっと、電話電話っと———あ、もしもし雄二?うん、実はさ、福引で良い物当たったんだけど僕と姉さんだけじゃ食べきれなくてね。うん、造や秀吉も今ここにいるよ。ムッツリーニにもこの後連絡する。うん———是非来てほしい」
覚悟を決めた目で、自分たちの生存率を高めるために運命共同体(まきぞえ)を増やすことを専念し始めました。
- Re: バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 ( No.200 )
- 日時: 2015/12/19 00:15
- 名前: ユウ (ID: CsX7ElZd)
明久…お前はないても良い…泣いても良いんだぞ。
(そういって、特効薬(Fクラスの人数分)と医療費1万円を渡すユウ)
十六夜「まあ、あれだ、生きてたらまた会おうや」
アベル「そんな殺生な…」
耀「アベルは話ちゃ駄目」
アベル「何で!?」
飛鳥「…貴方もそろそろ姫路さん達と同類の必殺料理人だと自覚するべきよね」
エル「エル、この間試食して、死に掛けたもん…しかもゆで卵で!!」
アベル「…ごめんなさい」
…まあ、折角だから造もこの際皆でパーティーするんだったら、自分所の執事とメイドも呼んであげたらどうだい?きっと皆造からのご招待に歓喜すると思うよ(そして、生贄が増えることによって、生存確率も増える…やったね造!一石二鳥だね!)
そうだ、久保君にも明久の家でパーティがあるってことを知らせないと!!
(そう言って、明久×雄二の同姓本を脇に抱え久保君の家に突撃しに行くユウ)
アベル「…ただでさえ、混沌としそうなのに更に業が深まりそうだね…」
耀「私も…造達とお鍋したい」
飛鳥「…本当は海の幸が一杯食べたいだけじゃないのかしら春日部さん。」
耀「そうとも言う(ジュルリ)」
エル「あはは!それじゃあ今から牡蠣鍋を作るから皆で食べよっか!」
耀「いただきます!」(そう言ってこたつを用意しに行く耀)
飛鳥「ちょっ!?春日部さん!?行動に移すのが早すぎるわよ!?」(耀の後を追う飛鳥)
十六夜「やれやれ、相も変わらずお嬢様と春日部は元気だな」
エル「十六夜はこれからどうするの?」
十六夜「…(ニッ)、折角だしうちのコミュニティ一番のシェフの料理を手伝いながら技術を盗まさせてもらうぜ」
エル「フッフーン。そう簡単に盗めるかな。楽しみだよ」(そう言って胸を前に押し出すように自信を表すエル)
アベル「それじゃあ、僕も料理の手伝いを…」
二人『おまえ(アベル)はそこから動くな(動かないで)!ゲテモノ料理ができるから!!』
アベル「…ショボン(´・ω・`)」
- Re: バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 ( No.201 )
- 日時: 2015/12/20 21:14
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
>ユウさん
感想ありがとうです。
姫路さん&玲さんVS殺人料理被害者の会オールスターズ。勝てるのか明久に造たち、と言うか生き残るすべはあるのか……?
明「涙を流す暇すらないんだよね……薬とお金ありがと頑張るよ……」
造「死ぬ気で生き残らねばなりませんよね……自分、生き残ったらエルさんの美味しいご飯食べるんだ……」
秀「造よ、それは死亡フラグじゃぞ……まあワシももうすでに生きた心地がせぬし気持ちはわかるが……」
優「ねえ、三人とも何でそんなに取り乱してるのよ?」
知らずに巻き込まれた優子さんたちを護りつつ、なんとしても生き残れ三人+雄二&ムッツリーニ。と言うか生贄———コホン、みんな来たがってるけどどうするの造?生き残る確率上がるよやったね!
造「いのち、だいじに———と言うわけで絶対に来ちゃダメですからね皆さん!?死の晩餐会ですからねコレ!?」
明「てかなんで久保君も呼ぼうと……?」
秀「(そんな本を見せられたら、久保は暴走するじゃろうな……鍋どころではなくなるぞい)」
必殺料理人たちに作らせなかったら呼べたんだろうけどねー……耐性ないとえらいことになるわーこわいわー……ねぇアベル聞いてる?
さてここからはちょっとしたお知らせです。23日と31日。それから一月の1日は時間がとれそうなのでいつものように金曜日の21時更新に加えて今言った日の21時ごろに一話ずつ更新したいと思います。と言うわけで23、25、31、1日が次の更新予定日になります。
この鍋回を一気に消化したら次はいよいよ7章に入る予定です。以前はこの章の途中でこちらに移動することになったので糖分にとっても未知の領域。更新ペースもなるべく一定に保ちたいと思いますが、構成等で時間がかかって遅くなったらごめんなさいです。
少し気が早いですが、今年一年も皆さん読んでいただき本当にありがとうございました。かなり長い期間更新できなかったり、未だに誤字脱字等あり申し訳ありません。日々精進しますのでこれからもよろしくお願いしますです。長々とすみません。ではそろそろ一話更新しますね。
- 番外編:寒い日は鍋が一番!〜闇鍋?病み鍋?暗黒鍋デス〜その② ( No.202 )
- 日時: 2015/12/20 21:16
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
———吉井家———
造Side
『おーっす、ご馳走貰いに来たぞ明久』
『…………お邪魔する』
『いやぁ待ってたよ二人とも。良く来てくれたね』
ヒデさんと二人、絞首台に立たされる死刑囚の気持ちを味わいながら、すでに頬を伝う涙も枯れ果て始めた頃、何も知らない友人のお二人の声が玄関から聞こえてきました。
『どうせお前じゃなくて玲さんが提案したんだろうが、何にせよ感謝はするぜ。今日は遠慮なく食わせてもらうぞ』
『…………メシ抜いてきた』
『そっかそっか、そんなにも食べたいんだ二人とも。じゃあ是非とも今日は楽しんで逝ってね!』
ガチャッ! ジャララ……
『あ?何だ明久鍵なんかかけて』
『…………チェーンまで必要か?』
『ん?ああ、最近物騒だからちゃんと戸締りするようにって管理人さんから言われててさ。造“たち”も待ってるし、先行っててよ』
そんなことを言いつつ、しっかりとゆーさんこーさんの脱出経路を塞ぐアキさん。
『……お、おう。先行っとく……か』
『…………どうした雄二』
『……いや、何か嫌な予感がしてきたんだが。お前は何か感じないかムッツリーニ?』
『…………特には。嫌な予感って海の幸が?フグとかはないらしいし別に毒はない———』
いえ、毒以上かと。流石に勘の良いゆーさんは何かしらの違和感を感じ始めたようですが……申し訳ありません、もう遅いかと。こーさんがそう言いながらリビングの扉を開けると。
「……すまぬお主ら」
「……ごめんなさいですお二人とも」
「あ、坂本君に土屋君。こんばんは」
沈んだ顔の自分とヒデさん、そして必殺料理人である姫路さんがエプロン姿でお出迎え。
「「———っ!!」」
「逃がすかぁ!」
「「———っ!?」」
その瞬間すべてを悟ったお二人は咄嗟に踵を返して撤退しますが、その行く手を廊下の壁にダンッ!と力強く叩きつけたアキさんの足が遮ります。
「ハッ……遅いよ、腑抜けたようだね二人とも。ここから先は地獄への一方通行。逃げられるとでも?」
「て、テメェ!?やけに気前がいいと思ったら“そういうこと”か!?」
「…………死ぬなら独りで死ね……!巻き込むな……!」
「いやぁ、思い出しちゃってさ。最近雄二もムッツリーニも瑞希の料理を食べる機会がめっきり減ったじゃない?僕か美波、そして気を遣ってくれる造に任せっきりだったじゃない?……君たちにも瑞希の愛情たっぷりの料理の味を思い出してもらおうと思ってね☆」
「「自分の嫁の料理くらい、自分で処理しろ……!」」
隠しても隠しきれない明久殺すと言いたげな視線をアキさんにぶつけるゆーさんとこーさん。
「いやぁ仲間って良いよね!二人とも僕や造や秀吉のピンチを見捨てられるのが心苦しんでしょ?ここは皆仲良く切り抜ける方法を探そうよ!」
「「…………(じー)」」
「や、止めろ造に秀吉!?そこのバカがどうなるのかは知ったことじゃないが、そんな捨てられた子犬の目をすんなっ!?」
「…………み、見るな……そんな目で見るな二人とも……」
頼りになる友人たちの襲来に、アイコンタクトでたすけてと訴える自分とヒデさん。これでも多少は姫路さんの料理に耐性が付き始めている自分ですが、玲さんまで緊急参戦した料理を食べるのは流石に厳しいものです。誰だって死ぬのは嫌ですし、出来ることなら全員で知恵を出し合い、全員で生き残りたいハズ。
「こ、こうなりゃ明久を今ここで滅し造たちも連れて脱出するしか……」
「…………雄二、暗殺は任せろ」
「ははっ!ナイスジョーク二人とも」
「「冗談が一生言えないように今ここで消してやる明久……!」」
そんな自分の気持ちとは裏腹に、早速アキさん抹殺計画を立て始める友人たち。ただその抹殺計画を間近で聞いても切り札を持っているアキさんは余裕な様子。そうですね、どの道ゆーさんとこーさんはここに残るしかないですものね。だって———
「……まあまあ落ち着いてよ二人とも。これを聞いた後でも、君たちはここを降りるとでも言うの?僕はある意味で“君たちのためにも”二人を呼んだと言うのに」
「やかましいバカ久、テメェの戯言なんざ聞かねぇよ……!」
「…………今すぐ塵となれ」
「この言葉を聞けば、きっと二人も考えを改めるよ。何せ———」
そう言って、一度大きく息を吸い込んで、アキさんは次の言葉を紡ぎます。
「……悲しいことに瑞希がすでに“霧島さんと工藤さん”も呼んじゃったんだよ……っ!そういうわけで君たちもこの地獄から降れないのさ……っ!」
「「…………っ!(ぶわっ)」」
———アキさん必殺の切り札に、最早引けないことを悟ってしまいただただ涙を流すしかないゆーさんとこーさん。そう、本来自分もゆーさんたちを巻き込むことは不本意でしたが……耐性のない優姉さん、そして霧島さんと工藤さんが下手に食べてしまえば命にかかわってしまうため、死ぬ気で自分たちで処理する他に道はないこの状況。
「一応誤解無いように言っておくけど、霧島さんと工藤さんの二人を死なすわけにもいかないから止めたんだよ僕らは。それも全力でね」
「ただその……折角ですから皆さんに食べてほしいですっ!と姫路さんが聞かなくてですね……」
「玲殿もそれはいいですね、と賛同し姫路は満面の笑みを浮かべたままあっという間に全員に連絡しての」
「姫路はホント、行動早くて偉いなぁ……!」
「…………工藤を死なすわけにはいかない……」
こうして姫路さんの料理被害者の会男子メンバーは、自分たちの身を守るため、そしてそれ以上に他の大切な友人や家族、大事な人を守るため泣く泣く作戦を練ることになりました。……今日は楽しい楽しい土曜日だったはずなのですがね……何がどうしてこうなったのやら。
〜男子諸君作戦立案中〜
- 番外編:寒い日は鍋が一番!〜闇鍋?病み鍋?暗黒鍋デス〜その② ( No.203 )
- 日時: 2015/12/25 21:44
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
「で、どうするんだ明久」
「どうするって言われてもこっちが聞きたいくらいだよ」
「せめてキッチンに入れればいいのですがね」
まずはオーソドックスに何かおかしなものを入れないように監視すべく、キッチンを見張ろうとしたのですが“キッチンは女の戦場なんです”と姫路さんと玲さんに追い出されてしまった自分たち。いえ、確かに死人が量産されると言う意味では“戦場なんです”と言う言葉も間違っていませんがね。それにしてもいつもは女の子扱いなのに、こういう時だけ何故だか自分やヒデさんも男性組にカウントされて追い出されると言うこの謎理論を説明してくれる方いませんか?
『玲さん、瑞希。大体こんな感じでいいかしら?』
『ええ、優子さん。ありがとうございます』
『すみません優子ちゃん、そっちは一人で任せちゃって』
『気にしないで。料理は瑞希と玲さんに任せちゃってるわけだし。アタシ料理は……うん、まだまだ修行が必要だからね』
あ、ちなみにそんな姫路さんと玲さんの腕前を知らない優姉さんですが、料理に慣れていないからとテーブルクロスを敷いたり食器を並べたりしてくれています。正直慣れていないとはいえ優姉さんは体育祭で美味しいお弁当を作ってきてくれた経験もあるので、寧ろ優姉さんが作ってくれた方がおいしさ的にも生命的にも非常に助かるのですが、と大きな声で言えない自分が情けない……
「あの、明久君」
「ん?な、何かな瑞希?」
「ちょっと道具を探しているんですけど」
と、何か突破口がないかと全員で考えていると姫路さんがひょこっとキッチンから顔を出してアキさんにそう聞いてきます。なるほど人の家のキッチンは何がどこにあるのかわかりませんよね。そういう意味でもここはアキさんに作ってもらえばいいのにと思いますが……
「オッケー、何が必要?せいろとか寸胴とかなら棚の上に———」
「いえ、探しているのは瞬間接着剤です」
「「「「「…………」」」」」
…………思わず全員が絶句。今、この場にいる男子全員の料理の根底が覆された気分です。ああ、絶対死ぬ、今日絶対この場で死んじゃう……
「みみみ、瑞希ぃ?わかっているとは思うけど、料理に接着剤なんて入れたらとても危険が危ないんだょ……?」
「?何言ってるんですか明久君。お料理に接着剤入れたら大変ですよ」
その姫路さんの言葉に、全員がほっと安堵します。さ、流石にそこまでアレじゃなかったですよね……良かった、本当に良かった……
「だ、だよね!ハハハジョークだよジョーク!…………あれ?じゃあ何で接着剤いるの?」
「えっと、ごめんなさい。ブイヤベースを作っていたら圧力鍋が真ん中から破裂しちゃって。玲さんがすぐにくっつければ大丈夫だって———」
圧力鍋が、真ん中から、破裂……かぁ……
「(もうダメじゃ……ワシらはここで死ぬんじゃ……)」
「(さぁて、皆さん今のうちに遺書でも書いておきますかね……)」
「(来世でも僕らみんなで一緒にバカやれたらいいよね……)」
「(くそっ……俺にはまだ現世でやり残したことがたくさんあるのに……)」
「(…………生きたい。もっと……)」
微かな希望を見た直後の絶望って、こんなにも辛い物なのですね……やっぱり駄目です。今日この場で殺られる運命なんです自分たちは……
「造くん、吉井君。代表と愛子来たわよー……って、ホントに今日はどうしたのよ。みんなして泣いて」
「……どうしたの雄二に造、泣いてるの?」
「こーたくんに吉井君に木下君も、何かあったのカナ?」
と、絶望に打ちひしがれている自分たちを目の当たりにしながらも、何も知らずに死の晩餐会に参加させられた霧島さんと工藤さんのお二人が到着したようです。
「いらっしゃい霧島さんに工藤さん。今日はその、ゴメンね」
「……何が?よくわからないけど、家からこれお土産。玲さんに」
「ボクはこれね、はいどうぞ」
「お土産まで……ほんっと、ゴメンね……」
お土産に工藤さんはオレンジやグレープフルーツなどの果物を、霧島さんはワインをアキさんに手渡します。お二人とも気遣ってくれているだけに、これから起きることに付きあわせてしまう申し訳なさで胸いっぱいになる自分たち。
「翔子……お前、今日体調悪くないか?何なら今すぐ帰るべきだと思うんだがな(寧ろはよ帰れ、死ぬぞ……!)」
「……?元気だけど」
「…………工藤、用事あったり都合が悪いなら帰っていいと思う(工藤、いのちだいじに)」
「特に何にもないから大丈夫だよー?」
せめて最後の足掻きをと、ゆーさんにこーさんがそれぞれの大事な人にそれとなく帰るように促そうとしますが、事情を全く持って理解していないお二人にはゆーさん&こーさんの想いは届くはずもなく。唇を強く噛んで己の無力に打ちひしがれるゆーさんたち。
「ボクら玲さんに挨拶してくるね」
「……また後で」
何故打ちひしがれているのかわからずに、そのまま玲さんたちに挨拶に行く霧島さんと工藤さん、そして彼女たちに着いていく優姉さん。三人を見送ると、再び作戦会議開始です。
「どうすんだコラバカ久……テメェがしっかり自分の嫁の一人を管理しねぇから……!」
「…………最悪明久に(工藤の分だけでも)食わせてやる」
「こうなったらもう一蓮托生だよ、女性陣に食べさせず且つ僕たちが生き残る方法を考えようよ」
「腕っぷしは強くとも、姉上も姫路と玲殿の殺人料理のコンボには耐えられるはずないからの……」
「この場から女性陣を帰すことは実質無理そうですし、他の策を練りませんとね」
こうなれば力ずくにでも自分たちが料理を———いえ、駄目ですね。先ほどもあれだけ自分たちが作りますと言っても聞かなかった姫路さんと玲さんです。キッチンから梃子でも動かないのは目に見えています。
- 番外編:寒い日は鍋が一番!〜闇鍋?病み鍋?暗黒鍋デス〜その② ( No.204 )
- 日時: 2015/12/20 21:40
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
「翔子たちが姫路や玲さんの殺人料理に気付けばいいんだがな……」
「いや、多分それ無理だと思うよ雄二……霧島さん達が何か指摘しても悪化する恐れもあるし」
「…………今以上に悪化するとでも言うのか……!?」
料理上手な霧島さんや最近こーさんに習っている工藤さんなら姫路さんと玲さんの料理(?)の異常性に気付いて注意してくれるかもしれませんが……アキさんや島田さんが何度もそれとなく注意しても治らなかった姫路さんのキラークッキングの腕前です、どうにかなるとは思えません。
「そもそも霧島さん達でさえ作り終えるまでキッチンに入れて貰えないかもですよね……」
「姫路も玲殿も随分気合入っておったからのう……」
そう、そもそも今日は二人で作る番と言ってましたし霧島さんたちですらキッチンに上げて貰えない可能性だって否めません。このようにいくつか策を考え出しても、すぐさま無理だと悟る自分たち。ただ死刑執行までの時間が刻々と過ぎ去っていきます。
「あ?そういや気になってたんだがよ。お前のもう一人の嫁の島田はどうした明久」
「……何その美波の変なあだ名は。まあそれはともかく……美波がどうしただって?はぁ?何?雄二はバカなの?そりゃ瑞希が一番に呼んだけど、来るはずないじゃない。美波は唯一女性陣の中で瑞希の腕前知ってるのにさ。きっと用事があるって言って来ないはずだよ」
と、ゆーさんのそんな疑問に心底呆れたようにアキさんが返答します。ああ、言われてみれば確かに。
「テメェにバカ呼ばわりは心外だが……そりゃそうか。事情知ってるなら好き好んで地獄の晩餐会に参加する必要なんてねーしな」
「…………まあ、そうだろうな」
「うむ、島田は逃げ切れたようじゃな。葉月ちゃんを残して逝くわけにはいかんじゃろうしの」
「これ以上の犠牲者は作りたくないですからね」
「つーか寧ろ一人でも事情を知っている奴が外にいる方が安心だな。島田の事だ、頃合いを見て救急車でも呼んでくれるだろうな」
「その通り。だから最悪女性陣に食べさせる前に死ぬ気で処理して、後は美波が呼んでくれるであろう救急車が来るまで三途の川の手前で踏ん張れば良いんじゃないかな」
「「「「つまりは……いつも通りか……」」」」
この時間になってもいないと言うことはそう言うことなのでしょう。きっと色々と理解している島田さんの事、ゆーさんの言う通りしばらくしてから救急車を呼んでくれるはずですしそこは安心していいでしょうね。アキさんも島田さんが食べずに済むことには非常に安堵しているご様子。そりゃあ大事な一人が死ぬ思いをしなくて済むんですもの、安堵もしますよねー
ガチャ!
『お邪魔するわ。ゴメンね遅くなっちゃった。こんばんは瑞希』
『あ、お待ちしてました!何かあったのかと思って心配しましたよ———“美波ちゃん”!』
「………………は?」
……なんて、そう気楽に考えていた矢先。玄関から何故か、その話題の彼女の声が木霊しました。その声にアキさんは文字通り目が点になり固まってしまいます。え、うそ……?ど、どうして……?声の持ち主は姫路さんに連れられて自分たちのいるリビングへ。そうその人は、絶対にここに来ないと信じていた———
「うん、みんな居るわね。こんばんは、そして———お待たせ。さあ“逝き”ましょうか」
「…………なん、で……ここに……美波っ!?」
「「「「し、島田(さん)!?」」」」
そう、アキさんの大事な人の一人。我らがFクラスの数少ない女子にしてFクラス仲良しメンバー兼姫路さんの料理被害者の会メンバー紅一点の———島田美波さんでした。
「はいアキお土産よ。ゴメンね、これ買うのと葉月寝かしてから来たから遅くなっちゃったわ。今日は両親がちょっと出かけてたから葉月が寝るまで家から出られなくてね」
「え……あ、りがと……じゃなくて!?みみみ、美波!?なんで、どして!?」
彼女の出現に混乱しまくるアキさんと、そう言って薬局のレジ袋をアキさんに手渡す島田さん。中に入っていたのは———とても良く効く自分たちも愛用している胃薬の山です……ありがたいと思う反面、アキさんと同じく何故彼女がこの場にいるのか疑問が尽きません。
「(ど、どうして!?み、美波どうしてここに来たのっ!?)」
「(……どうしてってアキ、ウチは瑞希に呼んでもらったから———)」
「(ち、違うっ!?わかってたはずでしょ!?瑞希と姉さんが料理するんだよ!?用事があるとか言って回避できたはずなのに、そもそもご両親がいないなら葉月ちゃんの面倒見なきゃいけないってだけでここに来れない理由にできるでしょ!?それなのに何で……!?)」
姫路さんが近くにいる手前、下手な話は出来ないとアイコンタクトで島田さんにそう尋ねるアキさん。ちなみにアキさんだけでなく、自分たち被害者の会メンバーも島田さんの行動に驚いています。あの破壊力を知っている島田さんなら、アキさんの意図を汲み絶対に来ないと思いましたのに……どうして彼女はここに……?
「(……大丈夫よ。葉月が家で待っているんだもの、絶対に生き残ってやるわ)」
「(いや、そもそもこの地獄に来ちゃダメなんだよ!?今ならまだ間に合うから逃げるんだ!美波、キミまで死にかけることなんか———)」
そのように大慌てで島田さんに考え直すようにと提案するアキさんの言葉をやんわりと否定し、島田さんは覚悟の決めたとても凛々しい目つきでこう返します。
「(……最悪でも、瑞希の分はウチが食べなきゃね。それにいいのよ、アキを独りで逝かせるわけにはいかないもの。大丈夫、死ぬときは一緒よアキ)」
「〜〜〜〜〜〜っ!っ!!」
「「「「…………島田(さん)」」」」
島田さんのその言葉に大粒の涙を零し「……めん、ごめん、ごめんねみなみぃ……」と呟くアキさん。そしてアキさんの涙を拭き慈愛に満ちた笑顔で寄り添いながら、この場にいる誰よりも覚悟を決めて死の晩餐会に参戦した島田さん。こう言っては非常に失礼ですが、今ここにいる誰よりも男らしい心意気を持っていらっしゃいますね。なんてかっこいいんでしょうか、このお方……
と言うわけで、いつもの姫路さんの料理被害者の会フルメンバーでこの死の晩餐会に挑むことに。心強い味方が増えたことは良いことなのか悪いことなのかはわかりませんが、役者は揃いました……こうなれば全員で生き残るまでdeath(デス)!
- Re: バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 ( No.205 )
- 日時: 2015/12/21 09:54
- 名前: ユウ (ID: CsX7ElZd)
バカだな〜秀吉は。
久保君が暴走するからこそ鍋を中止出来たんじゃないか〜。
…そう、death pots and pans(死の深い鍋)の中止をさ。
でも、残念ながら久保君が家に居なかったんだよ〜。
…という訳で諦めて暗黒鍋を満喫してくれたまえ殺人料理被害者の会の皆様?(モグモグ)
十六夜「俺達もエル特製の牡蠣鍋を満喫してるから気にしてくれなくても大丈夫だぜ(モグモグ)」
飛鳥「う〜ん、この牡蠣の濃厚さが口内に広がってとってもおいしいわ(ハムハム)」
黒ウサギ「YES!飛鳥さんの言う通りなのですよ!エルさんの料理はどれもおいしくて、黒ウサギもついつい手が伸びてしまうのですよ!(そう言って次の牡蠣に箸を伸ばす黒ウサギ)」←『原作のメインヒロイン+問題児達のツッコミ役』
エル「えへへ、そう言われるととっても嬉しいな〜/// おかわりはまだまだあるから一杯食べてね!(新鮮な牡蠣を乗せた籠を机の上に置くエル)」
耀「…!(机に置かれた牡蠣の3/5を鍋に入れる耀)」
?「おいヨウっち!?さすがに一杯いれすぎじゃねえか!?」
耀「大丈夫。当たりそうな牡蠣は全部アベルの器に入れておいたから(グッ)」
アベル「…っ!どうりでさっきから胃袋の調子が…ウグッ!(顔を青ざめて机に顔を乗せるアベル)」
十六夜「…ところでひとつ聞きたいことがあるんだが」
?「どうしたんだよイザっち?何か気になることでも」
十六夜「お前誰だ?」
エル「えっ?十六夜の知り合いじゃないの?」
?「ああ、そういえば自己紹介がまだだったかな」
天王星うずめ(以下うずめ)「俺の名前は『天王星うずめ』!まだ先は長いだろうけどユウが新しく書いているプロットに登場する新しい問題児という設定で準備中の女神様だぜ!」
黒ウサギ「め、女神様ですと!?」
エル「ていうことは、エルとアベルと同じ他作品のゲームからの召喚ってこと?」
うずめ「まあ、そういう事だな。どんなゲームかは是非調べてくれ!」
と言うわけで自分の新しいプロットで出そうと思っているうずめちゃんを最速公開なのです!
まだ、彼女の紹介兼元の世界のあらすじはまだ書ききれては居ませんが彼女のこともよろしくお願いします。
ちなみに元ネタのうずめに関してですが、控えめにいってもマジ可愛い〜なので調べることをお勧めしますよ!
…さて、長々と小話を書いていましたが感想に移ろうと思います。
明久に呼び出されたことにより、DEATH PARTYに参加することになった雄二とムッツリーニ。
…せめて祈りましょう。彼らが無事に天国にいけることを…アーメン(明久達も入っています)
という冗談はさて置き、実際問題どうすんだよ明久?
このままじゃ皆地獄行きだよ?あの世に向けて寒中水泳することになるよ?
くっ!こんな時に、造の所のサクヤさんが蒼が残っていてくれれば…!
エル「取り合えずアッキー?姫みん(姫路さんの事)の料理を食べた後の症状について教えてもらっても良いかな?それで頑張ってその症状に効く状態異常回復料理を作ってみるから!!」
と言うわけで本日はこれにて失礼します!
- Re: バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 ( No.207 )
- 日時: 2015/12/21 09:44
- 名前: ユウ (ID: CsX7ElZd)
あっ、感想とは別で、つーちゃん、つーちゃん。
造「ふえ?どうしたんですかユウさん?」
お兄さんと一緒に『カシスオレンジ』を一緒に飲まない?
造「カシスオレンジ?何の飲み物なんですかそれは?」
オレンジとカシスって言う果物を配合した、とっても甘くて飲みやすいよジュースだよ!
造「甘くて…おいしいジュースですか!是非いただきたいです」
ふふ、そう言うと思って。…はいこれ、つーちゃんの分。
造「わ〜、ありがとうございます!」
それではつーちゃんとのこれからの関係を祝って…かんぱーい!!
造「かんぱーい!!」
そう言ってユウと一緒にカシスオレンジ(アルコール3%)を飲み干す造
造の保護者が居ないのをいい事にこの男やりたい放題である。
…その後、なぜか顔が真っ赤で目がトロンとした半脱ぎ状態の造の写真がムッツリ商会で売られていたが、サクヤさんが買い占めた後、元凶のユウをドラム缶に投げ込み、その上からアスファルトを流し込み、乾いた後に海に放り投げた。
…ちなみに、その時の写真を肌身離さず持っている模様
- Re: バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 ( No.208 )
- 日時: 2015/12/23 21:06
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
>ユウさん
読んでいただきありがとうございます。
生か死か……(生命的な意味で)食うか食われるかの殺人料理被害者の会VS必殺料理人のガチンコ勝負開始。
造「色々と字面がおかしいですよねこれ……」
明「何も間違っていないのが酷いよね……と言うか状態異常系扱いの瑞希の料理って一体……き、効く回復料理をお願いね……」
一方ユウさんの方では美味しそうな牡蠣で鍋を。そうそうこういうので良いんだよこういうので。牡蠣美味しいですよね、父たちが以前当たったらしくてそれ以降食卓に並ぶことは滅多にないものでしたけど……
造「当たったら大惨事ですからね牡蠣……って言った傍からアベルさぁん!?」
雄「オイオイなにやってんだよ。……とは言えこう言っちゃ悪いが、牡蠣で当たるほうがまだマシなんだよな……」
康「…………牡蠣に当たるより辛い姫路の料理って……」
秀「これからどうすべきかのう……」
美「死ぬ気で考えるのよ。死にたくなければね」
うずめさんもよろよろです。こっちも頑張って七章に向けて頑張らねば……!
造「ところで……かしす?オレンジ?……?記憶がないんですけど何の話で———」
さて!そろそろ次行ってみよー!
- 番外編:寒い日は鍋が一番!〜闇鍋?病み鍋?暗黒鍋デス〜その③ ( No.209 )
- 日時: 2015/12/23 21:17
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
造Side
「(で?状況はどんな感じかしら)」
来るはずのない島田さんまでも自主参戦した姫路さん&玲さんによる死の宴。最後に来た島田さんが自分たちにアイコンタクトで状況を聞いてきました。
「(圧力鍋、破裂したってさ……)」
「(オッケー、つまりいつも通りね。さて、どうしたものかしら)」
普段が普段なだけにあまり驚くことがなくなってきましたが、このアキさんの説明を聞いてもそこまで取り乱さずに分析できるのは相当なものですよね島田さん。
「コホン。あー、瑞希?ちなみに何作っているのかしら?」
「あ、はい。ブイヤベースを作っていたんですけど……」
「けど?」
「ちょっと失敗しちゃって、作り直しになっちゃいました」
鍋の破裂と言う名のちょっとの失敗。ならば大失敗になるとどうなるのか……考えたくないので置いておくとしましょうか。
「(作り直し……これね!)あらら、それは残念だったわね。失敗は誰にでもあるし気にしちゃダメよ。でも———今から作り直すんじゃあんまり時間無いんじゃないかしら」
「そうなんですよ。今からじゃ手の込んだお料理が……」
「そうよね、そうよね。手の込んだ料理は時間がかかっちゃうし出来ないわよね。だから今日はあまり手の込んでいない簡単なもの(=殺傷能力が低いもの)を作るのはどうかしら」
なるほど確かに……鍋が破裂した事ばかりに気を取られていましたが、これはかえって好都合。これから作り直すのなら恐れている死に至るほどの化学と料理のコラボレーションを行う時間はないはず。軽めのものなら耐性のある自分たちが死ぬ気で食せばあるいは———
「それでは、闇鍋なんてどうでしょう」
「「「「「「はい?闇鍋?」」」」」」
———と、姫路さんとキッチンに立っていた玲さんがそんな提案を。や、やみなべ……?闇鍋って、あの闇鍋ですか?
「作るのに時間もかからずに、人数が多くても美味しく食べられる鍋なら良いのではと思いまして」
「いえ、あの玲さん?鍋は良い案だとは思いますが、何故に闇鍋を……?」
「鍋料理ではメジャーなものと先輩から聞きましたが?」
……サクヤさん、何を教えているんですか貴女は。多分ですがお酒の席でそういう冗談を言ってそれを玲さんが真に受けたと言うことでしょう。全くサクヤさんったら闇鍋なんてそんな———待った。ちょっと待った、闇鍋……?被害者の会全員、瞬時にアイコンタクト開始。
「(ねえ皆さん。これって、意外と良い案なのでは?)」
「(僕もそう思う。このまま僕ら全員が短時間で何か作るよって言っても、瑞希のことだし恐縮して結局何かしら手伝うと思う)」
「(そうね、きっと瑞希はそうするわ。つまりどんな料理にしようとも、物凄いアレなものが生成されることは確実よ)」
「(だが、こと闇鍋だけは違うってことだな。アレはその場で鍋に具材入れるモノだ)」
「(…………手伝いも何も関係ない)」
「(うむ。そもそも調理の腕は関係ないのじゃから、危険なものなぞ出来上がるはずもないのう)」
全員の意見が一致。ここはメインディッシュを闇鍋へ変更させようという意思が見て取れます。そうと決まれば即実行、そのように誘導しなければ。
「いやぁ、闇鍋ですか!実は自分一度やってみたかったんですよねっ!」
「ウチもこう言う闇鍋みたいな日本の文化、体験してみたかったのよ!やってみたいわ!」
「そうじゃな!闇鍋とは実に面白い提案じゃな!」
「闇鍋って言えば鍋の中の鍋だぜ!やったことない連中のためにもここはやってみっか!」
「…………闇鍋最高」
「流石姉さん!良い提案してくれるじゃないか!闇鍋にしよう闇鍋!」
他の方から否定される前に、一斉に闇鍋を推します。そのお陰か事情を知らないAクラスの皆さんまでも……
「闇鍋ってボクもちょっと興味あるかも。パーティゲームみたいなものでしょ?」
「……私も、やってみたいかも」
「面白そうね。皆がそれでいいならアタシも賛成よ」
よっし!三人の了承も得ました。これで少しは状況がマシになるはず。
「あ、でもしまった……うちにはカセットコンロがないや」
「それでしたら明久君。私の家なら近いですし、持ってきますよ」
「え、いいの?僕も行こうか?」
「いえ、そんなに大きいものでもないので。それに他にも色々持ってきたいものもありましたので気にしないでください」
「(チャンスっ!)あら、だったら瑞希が戻ってくるまで簡単な前菜をウチが作るわ。瑞希の好きそうなものも作っといてあげる♪アキ、あれ使っていいかしら」
「うん、勿論さ!」
しめたとばかりに、海の幸セットを使おうとする島田さん。なるほど、前菜で使ってしまえば闇鍋に使わずに済みますものね。折角アキさんが当ててくれたものを無駄にせずにできますし。それにこちらが本命ですが———こう言っておけば唯一島田さんがキッチンに立てることになり状況確認と危なげなものを回収&処分も可能……流石島田さんっ!
- 番外編:寒い日は鍋が一番!〜闇鍋?病み鍋?暗黒鍋デス〜その③ ( No.210 )
- 日時: 2015/12/23 21:11
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
「ありがとうございます。あ、美波ちゃん。何か作るのでしたら私はもしかしたら時間がかかるかもしれませんから、良かったら先に始めちゃっていてくださいね」
「オッケー、まあなるべく急いでね。ウチだって瑞希にも食べてもらいたいしさ。でも急ぎ過ぎて道に迷ったり転んだりしちゃダメよ?」
「も、もう!子どもじゃないですからね?では行ってきます」
そう言って姫路さんは小走りで一旦お家にお戻りに。まあ殺人料理に目を瞑れば、こんなにも気が利くとても素直で優しい人ですからね姫路さん。……どうして料理になるとああなるのか非常にわかりませんが。ま、まあそれはともかく一時的でも安全が確保されました。ほっと息をついて一旦緊張を解くとしましょ———
「それでは、私はお鍋の出汁作りでも———」
「ね、姉さんっ!それは僕らがやるからっ!姉さんはとりあえずこっちでゆっくりしてなよ!」
「あ、玲さんっ!霧島さんから頂いたワインはいかがですか!?自分、お酌しますよっ!」
———例え一瞬たりとも緊張を解いてはいけないことを悟る自分たち。料理は島田さんや手伝うと申し出てくれた霧島さん工藤さん優姉さんたちに任せ、自分たち男子はキッチンに向かう玲さんを全力で止め、玲さんのお酌をすることとなりました。
〜女性陣料理中〜
「はいお待たせ。オードブルが出来たわよ」
「……お待たせ」
アキさんと二人、酔わせる勢いで玲さんにお酌をしキッチンから遠ざけている間に女性陣が料理を作ってくれました。最初に島田さんと霧島さんが大皿を持ってやってきます。
「玲さんワイン飲んでるし、合いそうなカルパッチョにしてみたけどどうかしら」
「あ、助かるよ———おおっ!?す、すごいよ美波!めちゃくちゃおいしそうじゃないか!」
大皿には鮮魚とそれを彩る野菜類が見事に盛り付けられ、更にソースで美しい紋様が描かれています。料理は味もですが盛り付けも大事ですからね。また、盛り付けられている魚もお店の売ってある切り身と遜色ないほど綺麗におろされています。これはお見事。
「ふふっ、褒めてくれてありがとアキ。ウチがソースと盛り付け担当ね。あと、魚をおろしたのは、」
「……私」
「そゆこと。翔子凄いのよ、使う魚を全部こんなに綺麗にさばいてくれてね。とても調理しやすかったわ」
「……花嫁修業の成果」
そうはにかみながら答える霧島さん。そんな霧島さんの腕前に、その愛しの旦那様(おい待て造、誰が旦那だ by雄二)はと言うと、ぶっきらぼうな態度でちらりと霧島さんをちらりと見てこう一言。
「ふん……ま、悪くないか」
「むー……ゆーさんは恥ずかしがらずにもっと霧島さんを褒めるべきだと思いまーす」
「ばっ!?違っ!……造っ!?」
「……大丈夫、造。お父さん(ゆうじ)がちゃんとお母さん(わたし)を褒めてくれてるのわかってるから」
「誰が父だ!?つーかなんだそのルビとお前らのその反応は!?」
ゆーさんと霧島さんの発言はともかく、小さなころから一生懸命ゆーさんのお嫁さんになると言う夢に向かって頑張って修行してきた霧島さんの腕に感心する自分。本当に霧島さんって一途な努力家なんですねー
「それで、こっちが牡蠣の酒蒸しと海鮮サラダだよ〜♪多分ワインにも合うんじゃないかな」
「お待たせしました玲さん、良ければこっちもどうぞ」
遅れて工藤さんと優姉さんがテーブルに器を持ってきます。これは……殻つきで蒸し上げられた牡蠣に、エビとかタコが入ったサラダのようですね。色合いが鮮やかで見るだけで食欲を誘います。こちらもとても美味しそうな出来栄えです。
「うむ、これもまた見事じゃ。姉上も中々やるではないか」
「どーよ秀吉、見直した?……と言っても、ゴメンうそ。アタシはただ野菜を洗って盛り付けただけだけよ。愛子と美波の手伝いをしただけだし」
「いえいえ、それだけでも十分ですよ優姉さん。少しずつ料理も覚えていけばいいですし」
「ボクも実を言うとほとんど代表とナミーに手伝ってもらった感じ。まだまだ修行不足カナ」
「…………いや、ちゃんとよく出来てる。もっと胸を張れ工藤」
「あっ……そ、そう?ありがとこーたくん♪えへへ、褒められちゃった」
そんな感じでテーブルの上に美味しそうな料理が所狭しと並べられます。全て運び終えた島田さんたちはエプロンを外してカーペットの上に座り始めます。
- 番外編:寒い日は鍋が一番!〜闇鍋?病み鍋?暗黒鍋デス〜その③ ( No.211 )
- 日時: 2015/12/23 21:36
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
「さてと。じゃあ瑞希には悪いけど先に食べ始めちゃいましょうか。折角のカルパッチョとかも温くなっちゃ美味しくなくなるし」
「……瑞希、待たないでいい?」
「うーん……霧島さんの言う通り待ってもいいけど、瑞希はかえって待たせちゃったと思って気に病むと思うし、食べてた方がいいと思うよ」
アキさんの言うことも一理あり、ですね。彼女も先に始めちゃってくださいと仰ってましたし、姫路さんはこういう時は待たせてしまったと気にするタイプです。姫路さんの分も残しつつ、少しだけ先に頂きましょう。
「そんじゃ、まずは乾杯だよね、皆何か飲み物持って———」
「待ったアキ。飲み物なら任せて、愛子が持ってきてくれた果物でフレッシュジュース作ってみたの。それでいいかしら?」
「いいねいいね!———よし、瑞希が戻ってきたらもう一回やるとして。まずは一回目だね、皆じゃあいくよ。かんぱいっ!」
「「「「「「「「かんぱーい!」」」」」」」」
島田さんが特製のフレッシュジュースを皆さんのグラスに注ぎ、これで準備万端。グラスを片手にアキさんの一声に合わせ全員で乾杯の声をあげて飲み干します。……わぁ!口いっぱいに広がるフルーツの甘酸っぱく美味しいミックスジュースがたまらなく美味しいっ!
「ジュース美味しいなぁ、これ後で美波にレシピ教えて貰おっかな。それはさておき、そろそろお腹もペコペコだし食べよっか」
「ですね、では早速いただき———」
「………………えい」
ぐいっ
「「ん?」」
箸を手に取りどれから食べようかと吟味しようとした矢先。急に自分の、いえ自分とアキさんの袖を引く感覚が。何事かと振り返るとそこには……
「アキくんも造くんも姉さんにかまってくれないのですね……」
「「え……?」」
少しムスッとした、まるで構えと言いたげな表情の玲さんが。あ……しまった、忘れてた……出てきた料理に気を取られて玲さんにお酌をする手をアキさん共々完全に止めちゃっていましたね。
「ちょっと、ここに座りなさい」
「ご、ゴメン姉さん。ホラ姉さんも何か食べたいものあったら取るから言ってよ」
「では自分はまたお酌を」
言われた通り玲さんの隣に座って食事とワインを勧める自分たち。ですが、玲さんはまだ何か不満なのか首を横に振ると……ぐいっとアキさんと自分を引っ張って———
「アキくんはここ。造くんはここ、です」
———アキさんは玲さんの膝の上に座らせられ、自分は玲さんの自慢の豊満なその胸の中に…………って、ちょっとぉ!?
「あ、あわわ!?あき、玲さん!?なな、何をっ!?」
「そ、そうだよ!?何をふざけているのさ姉さん!?高校生にもなってこんな抱っこなんてはふぅ」
「よしよし、良い子良い子」
玲さんに二人まとめて抱きしめられ、自分は混乱の極に。アキさんはふわっと力が抜けて現在お姉さんに甘える小さな弟モードに。なにこれ、なにこれぇ!?
「あ、アキ……(や、ヤバいわこれ……アキなんか可愛い……写真撮りたい……)」
「つ、造くん……(玲さん羨ましい……やっぱり胸なの……姉キャラに必要なのは胸だと言うの……?)」
島田さんや優姉さんをはじめとして、皆さんが何とも言えない表情でそんな自分たちを見つめます。あ、あのぉ!?見てないで助けていただけないでしょうかね!?そんな皆さんの視線を全く気にすることなく、玲さんはワインや食べ物を口に運びます。あ。あれ?そう言えば知らない間に随分とワインが減ってませんかコレ?一瞬でアキさんとアイコンタクトして状況確認することに。
「お料理もワインも、とても美味しいですね」
「あの、玲さん。つかぬ事をお聞きしますが」
「ねえ姉さん。もしかして大分酔ってない?」
「そう言えば、少し酔ってるかもしれません」
顔色も普通ですしパッと見ではわかりませんがこれだけワインを飲んでいて、おまけに素面でのこの行動は確実に酔っているはず。先ほどは玲さんに料理をさせないために酔わせる勢いでお酌をしていましたが、ここに来てこんな裏目に……ここは何としても酔い覚まさせねば。
「酔っているなら、僕水持ってくるね。ちょっと待ってて姉さん」
「玲さん、ワインは少し休憩しましょうね。キッチンにボトルを置いてきます」
「そうですか、それは助かります」
と言うわけで一旦玲さんから抜け出してキッチンに向かいます。ボトルをアキさん指定の棚の中に入れ、アキさんが水をグラスに注ぎ再びリビングへ。
「はい、姉さん」
「どうぞです玲さん」
「ありがとうございます」
玲さんにグラスを手渡し、アキさんと自分は敢えて玲さんから一番離れた場所に座りなおします。これで玲さんに絡まれる心配はなくなりますね。
スタッ (玲さんが立ち上がる音)
スタスタスタ (玲さんが何故かこちらに歩いてくる音)
ぎゅむっ×2 (玲さんが自分とアキさんを抱きしめる音)
「「玲さん羨ましい……」」
「造はともかく……やはり明久はシスコンか。いや、元々その気はあると思ってたがなシス久。後日FFF団に報告しとくからなシス久」
「…………羨ま死ね明久もといシスコン。出来れば後でその胸の感想教えてくれ造」
「……玲さん、大胆」
「あ、あはは♪いい姉弟関係ってことじゃないカナー?」
「つ、造?お主ちゃんと息できておるか?玲殿の胸の中で動かないように見えるのじゃが!?だ、大丈夫なのかの!?」
皆さんの観察するような冷静な視線が辛い。そして自分はそろそろまともに息が出来そうになくてつらい……
「お待たせしました!すいません、遅くなっちゃいま———明久……君……」
「ゴメン瑞希、色々言いたいことはあると思うけど、今はスルーしてくれると助かるかな……あと一応言っとくけど僕シスコンじゃないからはふぅ」
「は、はい……?っ!?(明久君なんだかちっちゃな弟みたいで可愛いですっ!———じゃなくて、玲さん羨ましいっ!———でもなくて、明久君に月野君どうしたんです!?何ですかこの状況!?)」
「むぐぅ……(息が……だれか……たすけ……)」
カセットコンロを持って戻ってきた姫路さんが、玲さんに抱きかかえられたアキさん(と窒息寸前の自分)を見て目を丸くします。まあ、そりゃ戻ってきて初めに見た光景がコレなら誰だってこうなりますよねー……
その後何とか無事に解放されたものの、皆さんの色々な感情が含まれているちょっぴり痛々しい視線は玲さんがそのまま眠ってしまう間自分とアキさんに降り注ぐこととなりました。
- Re: バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 ( No.212 )
- 日時: 2015/12/25 17:27
- 名前: ユウ (ID: J85uaMhP)
うずめ「ううぅ、寒い…まったく、なんだって俺がユウの酒を買いに行かなくちゃいけないんだよ。 …まあ、ジャンケンで負けたから仕方ないかも知れねえけどよ。 ただいまー!」
耀「あっ、うずめお帰り。待ってたよ」(そう言いながら何か食べている耀)
…チーン(返事が無い、ただの屍のようだ)
十六夜・飛鳥・黒ウサギ・アベル・エル『『『『『…チーン』』』』』(返事が無い、ただの屍のようだ)
うずめ「って何だこれは!?十六夜達が皆死んでやがる!?一体何があったんだ!?」
耀「実はうずめがユウのお酒を買いに行った後で、荷物が届いたんだ」
うずめ「…荷物?」
耀「うん。それがこれ」
『親愛なる問題児世界の皆様へ
いつも私達と交流してくださり、ありがとうございます。少し早いですが皆様にいつもの感謝を込めて、『手作り』のクリスマスケーキとぶどうジュースを送らせていただきました。喜んで貰えると嬉しいです! 姫路瑞希より』
うずめ「…でその机に置いてあったというケーキを皆で食ったていうわけか?」
耀「うん、とても独創的でブチッとした後にくる刺激と口の中で溶けるほど酸っぱい酸味があってとってもおいしかった」
うずめ「へ、へえー。そうなんだ(口内が溶けるような酸味!?しかもブチッて何のこと!?)」
耀「けど、あまりにもおいしくて、うずめが帰ってくる前に全部食べちゃったけど、ごめんね」
うずめ「い、いや、別にいいよ、それぐらい気にしねえからさ(っていうか、そんなのヨウっちぐらいしか食えないよ!?)」(若干顔を青ざめながら気にしてない素振りをみせるうずめ)
耀「・・・それにしても、皆失礼だよね?飛鳥達は体を身震いした後、1口食べただけで倒れこむし、十六夜なんか2口食べた後、自分の分のケーキをユウに押し付けてたし、…まあ、私も皆が残したのもったいないと思ってユウに無理やり半ホール食わせたけど」
うずめ「へ、へえ…。そ、そうなんだ(ユウーーー!?)」
耀「あっ、でも、貰ったプレゼントの中に手作りの『ぶどうジュース』が残ってたから、うずめも一緒に飲もう?」
うずめか「い、いやそれは・・・(ヒィ〜!やばいよ〜!?うずめ、命の危機をかんじるよ〜!?)
」(強がってはいるが、心で悲鳴をあげるうずめ)
・・・よ、耀ちゃん、時間も押してるし、それは後で俺が飲むからうずめと一緒に感想に移って貰ってもいいかな(プルプル)
うずめ「ユウ!?生きていたのか!?」
耀「うん、分かった。それじゃあ今日は私とうずめで感想を伝えるね」
うずめ「よ、よ〜し、それじゃあ、まずは俺からな、闇鍋を提案することでなんとか危地から脱出することが出来たアキっちとツクっち達、けど本当の勝負はこれからだぜ!!絶対負けるなよな!」
耀「次は私の番、美波ちゃん達が作った海鮮料理のオードブル、おいしそうだった、私も一緒に混ざって食べたかった」
うずめ「ハハ、ヨウっちはいつも食べ物のことばかり感想で言ってるよな」
耀「…後、玲さんほどとまでは言わないけど、私ももう少し胸が欲しい」(そう言って、自分の胸元を触りながら頭を下げる耀)
うずめ「お、おいヨウっち!?大丈夫かよ!?」
あかん、耀が暗黒面に落ちかけておる。
取り合えず今日はこれにて失礼しますね!?
それじゃあ、(終える前にこれの感想伝えさせないとby耀)…フボッ!?(そういってユウの口に姫路さん特製のぶどうジュースを飲ませる耀)
うずめ「あっ…」
姫路「ふう、遅くなっちゃいました。早く明久君の所に戻らないと、あっ」
『アアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーー!!!』(空に流れ星が弧を描きながら堕ちるのを発見する姫路さん)
姫路「ふふっ、流れ星を見つけちゃいました。何だか良いこと有りそうですね」
そういって、明久の元に急ぐ姫路さんなのであった
- Re: バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 ( No.213 )
- 日時: 2015/12/25 20:53
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
>ユウさん
読んでいただきありがとうです。
あっちもこっちも死屍累々……そしてこっちもそろそろ死屍累々間近。グッバイ造、あの世でちゃんと皆にご挨拶してくるんだよ。
造「い、生き残って見せますし……と言いますか皆さんは大丈夫なんですか!?」
瑞「???あの、皆さんどうしたんですか?」
明「てかなんで向こうにまで次元突破してるのさ瑞希!?」
こっちは玲さんの暴走こそあったものの、ほんの少しのオアシスで休んだ造たち。次はいよいよVS姫路さんのキラークッキング。勝ち目は———あるの……?
雄「生き残るための策は用意した……通用するかは別問題だがな」
秀「不吉な事を言うでないぞ雄二よ……」
康「…………生きてたらまた会おう」
- 番外編:寒い日は鍋が一番!〜闇鍋?病み鍋?暗黒鍋デス〜その④ ( No.214 )
- 日時: 2015/12/26 23:02
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
造Side
「それじゃあ、そろそろお鍋の用意を始めますね」
前菜を美味しく頂いた後(ちなみに玲さんは酔ってぐっすりお休みに)、姫路さんの持ってきてくれたカセットコンロがテーブルに置かれ、いよいよ待ちに待った(正直待ってませんが)メインディッシュの闇鍋の始まり始まり。さてここで、恒例のルール説明といきましょうか。
①素材は食べられるものであること
②一度食べると決めて取り皿に取ったら、鍋に戻さないこと
③用いる食材は各自一種類のみ(ただし出汁取りの昆布は別)
以上三つが大まかなルールです。あと、本来は事前に各自で用意した材料を入れますが、今日はその時間もないと言うことでアキさんのお家にある食材のみ使用という特別ルールが適用されます。ちなみにこの特別ルールの真の狙いはこうしておけば死につながるような物を混入させないため。つまりこの特別ルールさえあれば命にかかわる危険なことは———
「そう言えば私、カセットコンロと一緒に、“特製の”お鍋の具材も持ってきちゃいました☆」
———命にかかわる危険なことは、常に目の前に存在すると思わねば。カセットコンロ一つを持ってくるのにやけに時間がかかるなーと思ったらこういうことですか姫路さんっ……!?気を抜いちゃ駄目、集中しなくては。今回は優姉さんたちの命もかかっているのですから……
「食材は一人ずつ、他の人には見られないように持ってくる。これでいいのよね?」
「……うん、見えたらつまらない」
「それじゃ、ボクから持ってくるねー」
何も知らないAクラスのお三方は楽しそうですね。知らない方が幸せなこともありますから、何も言いませんし言えませんが。一番手の工藤さんが台所に向かった瞬間、被害者の会メンバー全員で作戦内容の最終確認に入ります。
「(それでは最期の———じゃなかった、最後の打合せです。アキさんに島田さん、お二人の言うことが正しければ今冷蔵庫の中や戸棚等にある材料は以下のものですね?)」
家主のアキさん、そして前菜を作っていた島田さんにすでに冷蔵庫や戸棚の中身については確認済み。現在冷蔵庫・及び戸棚等の中にあるものは———
野菜類:人参・玉ねぎ・長ネギ・シイタケ・ブナシメジ・キャベツ・パセリ・ルッコラ・トマト
肉類:豚肉・牛肉 魚介類:海の幸詰め合わせセット
その他:豆腐・卵・こんにゃく・牛乳・お麩(ふ)・各種調味料etc.
「(うん大体そんな感じ。覚えている範囲ではこんなもんかな)」
「(ウチも料理しながらこっそりメモとってたし間違いないわ)」
「(ありがとうございます、お二人とも。では次に各自の使用する具材を確認しましょう。自分が使うのはキャベツです)」
「(ああ。そんで俺が豆腐で明久がこんにゃくだな)」
「(ワシが長ネギ、島田がお麩じゃ)」
「(…………俺は人参を)」
自分たちが、そして大事な人たちが生き残るためには具材選びも非常に重要。各々使える具材は一種類と言う縛りがあるためにどれを使うべきか非常に悩むこととなりましたが、必死で選別した結果キャベツ・豆腐・こんにゃく・長ネギ・お麩・人参を用いて勝負を挑むことになりました。
「(オッケーです。さあ、ここからが重要です。これらの具材をどう活かすか皆さん確認していきましょう)」
「(うむ、承知した。まずワシが長ネギをそのまま切らずに端と端を輪のようにして結んでおくのじゃな)」
「(秀吉がそれを作ったら、今度は僕がその円にした長ネギの内側に沿ってこんにゃくを防壁のように配置するんだね)」
「(明久の配置後に今度は俺がその防壁となったこんにゃくにもう一つ、いいやもう二つの壁になるように豆腐と“出汁取り用の昆布”を隙間なく配置させるんだな)」
つまりは長ネギを型にした外部と内部とを隔離する円状の三重防壁を形成すると言うこと。この防壁内部に姫路さんの持ってきた物体Xが入るように誘導すれば、少なくともAクラスの3人はそれを食べずに済みます。出汁取り用の昆布すらも壁にした三重に作った防壁さえあれば物体Xが出汁に溶けても3人が食べる位置に危険はないはずです。
- 番外編:寒い日は鍋が一番!〜闇鍋?病み鍋?暗黒鍋デス〜その④ ( No.215 )
- 日時: 2015/12/26 23:45
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
「(…………次は俺。出来上がった円状の防壁内部に、葉のついてた部分を切り落とし平面で立つようにした人参を4本四方に立たせる)」
「(そう、こーさんの人参はまるでコンロのゴトク———つまり受け皿の役目を果たすわけですね。そして受け皿となったそこに自分がキャベツを置いて“皿”を作ります)」
そしてこーさんと自分で人参とキャベツを用いて今度は自分たちの命を守ります。コンロをイメージしていただけるとわかると思いますが、こーさんの人参は言わば支柱。鍋を敷くための受け皿のような機能を果たします。そこに念には念を入れ何重にも重ねた自分の使う具材、キャベツの葉を乗せて姫路さんの持ってきた物体Xを受け止めてそのまま包み込む皿のように、鍋のようにして配置。仮に少し物体Xがキャベツの皿から逃れたとしても三重防壁があるので外側に影響はないでしょう。
「(ウチは坂本の豆腐が浮き上がって隙間ができないように、そして土屋の人参が安定して立つように防壁内部にたっぷり水に戻していないお麩を入れるわ。出来るだけ出汁を少なめにしてもらうけど、お麩が汁気をたっぷり吸いこんでくれるから大分水分が抜けるハズだし多分完璧よ)」
後詰めに島田さんがお麩を入れて各種の具材の働きのサポートを行います。こうして出来たいくつもの布陣で身動きの取れなくなった物体Xは、包み込んだキャベツごと闇鍋開始後すぐに回収し、後は防壁として入れた具材を食べさえすれば誰も被害が出ずに無事全員生還できると言った作戦です。
「(よしっ!これが恐らくこの場を切り抜ける唯一の道。皆さんご自身の使う具材や加工方法、投入順番などには注意してください。では———絶対生き残りましょうっ!)」
「「「「「(おうっ!)」」」」」
「お待たせ、代表と愛子とアタシは選んできたわよ。次は造くんの番ね」
そう優姉さんに促され、緊張しつつもゆらりと立ち上がりキッチンへと向かいます。
『……どんな味になるんだろう』
『うーん、いざやるとなるとちょっと怖いわね』
『そう?ボクは楽しみだけどな〜』
何も知らない女性陣の楽しげな談笑を聞きながら、キッチンへと辿り着く自分。さて、もうすでに自分はキャベツを使うことが確定しているので、迷わずにキャベツだけ持っていくのもいいですが……
「……あれ?そう言えば優姉さんたちは何を使うのでしょうね?」
姫路さんの殺人料理にばかり気を取られていましたが、よく考えると優姉さんたちが何を闇鍋の具材に使うのかも気になるところ。まだ時間もありますし……ここはちょっぴりルール違反になっちゃうかもしれませんが、アキさんと島田さんに聞いておいた状況を元に何がなくなっているのか確認しておきましょうか。
冷蔵庫は勿論の事、戸棚や流しの下、調味料入れなどを確認してみます。ふむふむ、なくなっているのは———
①タバスコ(新品)
②タバスコ(使いかけ)
③タバスコ(ピザの付属品)
「なん、っで……なんでそうなるんですか……っ!?」
優姉さんも霧島さんも工藤さんも、激辛好きなんですか!?真っ赤な出汁の鍋が食べたいとでも言うのですか!?タバスコ一択って、何が皆さんをそこまで駆り立てたのですか!?てか、工藤さん!?貴女自分と同じ甘いもの大好き同盟の同志でしょう!?まさか裏切るのですか!?
『つ、造っ!?大丈夫!?何かあったの!?』
『緊急事態発生(エマージェンシー)か!?』
『…………ヤバいならすぐにでも戻れ造!?』
『トラップでも仕掛けられておったのか!?』
『AED必要!?それとも救急車呼ぶべき!?』
「だ、大丈夫です!少し動揺しただけですのでお気になさらずっ!?」
思わず絶叫した自分に何事かとアキさんたちが慌てて声をかけてきます。い、いけませんねこれくらいで取り乱しては。真の敵はこんなものではありませんし……確かにタバスコも普通だったら闇鍋に入れられては困る大変な食材です。そもそも自分は辛い物なんて大っ嫌い———ですが、今回ばかりはまあ許しましょう。ただのタバスコを入れられたくらいでは命に別状はありませんし。
「それにしても自他ともに甘いもの好き辛いもの嫌いと認める自分が、辛いで済むならいいと思うとは思いませんでしたよ……」
この鍋がただ単に辛い(からい)だけになるのか、それとも生命的に辛い(つらい)ことになるのかは、自分たちのこれからの作戦にかかっています。そのためにも今はツッコみを一旦放置して、生き残るべく行動しなければ。冷蔵庫からキャベツを取りだし葉を一枚一枚丁寧に剥がしていきます。
「これで———よしっ!」
後は手筈通り鍋の中で調整しつつ具材を配置するだけ。最後の作戦と共に姫路さん(の殺人料理)に打ち勝つのみですね。さあ、勝負です姫路さん(の作り出した謎の物体X)!生き残りますよ……絶対に全員で生き残ってみせますよ!
〜各自準備中:しばらくお待ちください〜
- 番外編:寒い日は鍋が一番!〜闇鍋?病み鍋?暗黒鍋デス〜その④ ( No.216 )
- 日時: 2015/12/25 21:49
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
グツグツと美味しそうな音を立て鍋が煮立って来ました。テーブルの上には姫路さんの持ってきてくれたカセットコンロと大きな土鍋。ちなみに闇鍋の特性上、中身は出汁を取るための昆布以外は何も入っていませんが、今だけはこの鍋が一番おいしいのはこの瞬間だって皆さん確信しているはず。
「それでは電気を消しますね」
姫路さんのその声と同時に、カーテンも閉め切られ真っ暗になるリビング。唯一の明かりとなるものは、ゆらゆらと揺れ灯る鍋を温めているコンロの火のみ。その火も他の人が入れる具材が何かわからない程度に明るさを絞られていますね。いよいよ開戦の時のようです。
「じゃあボクから材料入れるねー」
「愛子の次はアタシね」
「……その次は私」
純粋に闇鍋を楽しんでいる三人の声と共に、トポトポと鍋の中に選んだ具材(三人の選択したものは全てタバスコですが)を投入されます。これが普通の———いえ、そもそも闇鍋自体普通と言えるか微妙ですが———普通の闇鍋なら『まさか大福とか入れたりしてないよね?』とか『嫌いなものだったらどうしよう』などと不安に駆られるでしょうが、今日はその心配は全くありません。
何故かって?決まっています全員の命がかかっているからですよ。大福程度なら大歓迎。タバスコ?今日はどれだけ入れられようと許しましょう。こちとらこの場の全員を生還させる使命がありますからね。
「よし……それではワシから行くからの」
「秀吉の次は僕が行くね」
「その次は俺だな」
霧島さんが入れ終わったら、いよいよ作戦スタート。手筈通りまずはヒデさんが長ネギの端と端を結び輪となった防壁の“型”となるものを作りそっと浮かべます。続いてアキさんがこんにゃくで円の内側に沿って防壁作りを、ゆーさんがそのこんにゃくの防壁を更に強固なものとすべく出汁に使っている大きめの昆布と豆腐を、二人とも丁寧に素手で並べ———これで三重の防壁が完成しました。
「……次、俺」
「それじゃ、土屋の次はウチも入れるわねー」
「島田さんの次は自分ですね」
作戦の第二陣がアキさんたちに続きます。こーさんが防壁内に葉のついていた部分を切り取った4本の人参を支柱として立たせます。次に防壁と支柱を安定させるため、三重障壁の内側の水分を出来る限り少なくすべく島田さんが防壁内にたっぷりと水に戻していないお麩を入れて内部の水分を飛ばします。最後に自分がこーさんの作った人参の支柱に何重にも重ねたキャベツの皿をそっと乗せて———準備は完了しました。
「最後は私ですね」
処理班である自分たちは最善を尽くしました。後は姫路さんが物体Xを投入するのみ。処理班が固唾を呑んで見守る(?)中、姫路さんの手前に配置していた防壁内に物体Xが投入されます。
ぺちゃ…… パサッ!
最初に聞こえてきた音から察するに、物体Xは液体に近い固体のゼリーのような物ですかね。その物体Xを重ねておいたキャベツがパサッ!っと受け止めてくれた音が聞こえてきます。良かった……見えないのでまだ何とも言えませんが、一応何とか作戦通り上手くいったようですね。例え多少キャベツの皿から物体Xが漏れ出しても、防壁が優姉さんたち側を隔離しているので彼女たちに害は及ばないはずです。
「それじゃ、全員入れ終わったところでもう一度火をつけて煮込むか!」
自分だけでなくゆーさんも作戦成功を確信したのか、少し嬉しそうにそう言って鍋に蓋をしてガスコンロの火を大きくします。再沸騰までの間、優姉さんたちAクラス三人と姫路さんはどこか緊張しながらも楽しそうな雰囲気が感じられ、被害者の会フルメンバーはどうかこのまま上手くいってくれと願う空気が感じられてきます。さぁ……審判の時近しです。
- Re: バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 ( No.217 )
- 日時: 2015/12/26 08:43
- 名前: ユウ (ID: GLKB1AEG)
HAHAHA!!ジゴクノフチカラ、ナントカヨジノボッテキタゾ、イマノワタシニ、コワイモノナド
十六夜「だったら今度はアベルの飯でも食ってみるか?」
…ごめんなさい、やっぱり怖いものありました。
黒ウサギ「はふ〜…それにしても酷い目に遭ったのですよ…」
飛鳥「本当にそうね。私は料理自体したことがないのだけれど、あれ以上の物は作れないと思うわ」
エル「だよね〜。アベルの料理も大概だけど、あれも凄かったよ。前に状態異常料理って評したけど、あれはどちらかと言うと即死料理って呼んだ方がいいかも…」
耀「…そう?私は姫路さんの料理、おいしかったと思うんだけど?」
アベル「いやいや、あの料理を完食できたの春日部さんだけだからね!?」
うずめ「まあ、そんな悲しい出来事は置いておこうぜ!今はそんなことよりも感想に移ろうぜ皆!」
少し気にかかるけどそれもそうだな…自分としてはまだ胃腸の調子が悪いし、取り合えず感想に移ろうか、
さて、気を取り直して感想を、
vs必殺料理人対策として、綿密な作戦を練りそれを実行に移す明久達『殺人料理被害者の会』の面々!
…まあ、原作知ってるこっちからしたら、明久達がこれから味わう地獄を思うと…まあ、イインジャナイカナ、ミンナガ、コレデイイト、オモウノナラ、ソレデ?
…生きてたら、新しい年で会おうぜ皆?(感慨深い表情明後日を見つめるユウ)
そして、辛いものが嫌いな造が知る衝撃の真実!!
…って言うか、なんでAクラスの皆はタバスコなんて辛いものを選んだんだろうか?
・・・・・・・・・闇鍋だから?
そして、投下される姫路さんが選んだ物体X!
本当、原作読んでも分からなかったけど、一体姫路さんは何を入れたんだろうか?
さて、感想とは別で、今日はリア充どもが溢れかえる、非リア充共の地獄、『苦離簾魔巣』!
糖分さんはクリスマス楽しめてますか?
自分は今から、FFF団の皆さんと一緒にリア充狩りに出かけてきますね!ハハ!!
そして、クリスマスということで、Fクラスの皆さん宛に問題児の皆さんから手作りのカップケーキを『8つ』用意いたしました!(2つ作ったのは、エルとアベル)
ちなみに問題児皆様の料理スキルはと言うと
エル…S(昇天級の美味)エル「えへへ///」
耀…A(一流クラスのおいしさ)耀「調理ぐらい、出来て当たり前だし《ブイ》」
十六夜…B(お店に出しても遜色ない位のレベル)十六夜「まあ、まずまずって所かな」
うずめ…C(一般のお嫁さんが作れるぐらいのおいしさ)「お、お嫁さん///」
飛鳥…E(焦げが目立つが食えなくはない)飛鳥「し、仕方ないじゃない…その、は、初めてだったんだもの///」
アベル・・・Y(姫路さんとどっこいどっこいな料理)アベル「ふう、今回はマシなものが出来た」
…さて、このロシアンルーレットinカップケーキ。誰が当たるかな(ゲス笑い)
さて、多分次の感想は大晦日か正月になりそうですが先に言っちゃいますね。
糖分さん!そして造ちゃん!今年もよいお年を!!
- Re: バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 ( No.218 )
- 日時: 2015/12/27 20:58
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
>ユウさん
読んでいただきありがとうございますです。
最終決戦いよいよ開幕。原作では明久たちは自身の命を優先すべく他の被害者の会メンバーを蹴落とそうとしていましたが、こちらでは協力させて挑むことになりました。
造「一人では無理でも———皆さんの力があればきっと……!」
明「一人は皆の為に、皆は一人の為に。良い言葉だよね!」
雄「何としても全員で生還しねぇとな……」
うん、それは普段から蹴落とそうとしている明久&雄二が言う台詞じゃないよね。まあ敵は姫路さんの最凶料理だからわからんでもないか。それと———くりすます?え?うち仏教徒ですしー?恋人?なにそれおいしいんです?
造「言ってて悲しくなりません糖分?」
…………喧しい!さあ、喜べプレゼント貰ったぞ皆!何としても生き残り貰ったケーキを食べるのだ!
秀「……それもそれでトラップがあるようじゃがの」
康「…………何故そんな試練を与えまくるのか……」
とは言えロシアンルーレットするとしたら……”当たり”を引くのは間違いなく明久と造でしょうね。どっちも色んな意味で運が良い二人ですしおすし。
明・造「「どっちにしても生き残れない!?と言うか運が良いって言わないよね(ですよね)!?」」
いやいや、ネタ的には大当たりでしょう。さて、こちらも少し早いですが良いお年を。いつもありがとうございますです。
あ、それと本来は今日更新する予定はありませんでしたが、時間が取れたのでまた一話更新します。……まあいつも通り予定は未定ということで、相も変わらず適当更新ですみません。それでは———闇鍋回最終話です。どうぞ。
- 番外編:寒い日は鍋が一番!〜闇鍋?病み鍋?暗黒鍋デス〜その⑤ ( No.219 )
- 日時: 2015/12/27 21:28
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
造Side
いよいよ始まった恐怖の闇鍋。最善は尽くしましたし後は無事に生還できることを祈るのみ。鍋が煮えきるまでの、静寂の時間がゆっくりと流れ数分後———
「そろそろ、ですかね。火を消しましょう」
しゅんしゅんグツグツと音を立て蓋を蒸気が持ち上げる様子をしばらく観察した後で、コンロのつまみを回してガスを絞ると三度目の暗闇が訪れます。
「いよいよね」
「……ドキドキする」
「どんな味になっているのかな〜?」
「では、開けてみますね。アキさん、鍋掴み貸してください」
「オッケー、よろしく造」
アキさんから鍋掴みを借りて、鍋の蓋をゆっくりと持ち上げます。すると、そこからツンッとしたタバスコ特有の臭気がリビングいっぱいに漂います。
「「「う……」」」
そのにおいに思わず顔をしかめるAクラス3人の気配が。あー……それに関してはちょっぴり自業自得ではないかと。こうなるってわかってたはずでしょうに、3人全員がタバスコなんて入れるから……ま、まあ本来はパーティゲームのようなものですしこれも一つの楽しみ方ではあるでしょうが。
「じゃあ、いよいよ闇鍋スタートだね!」
「はいっ!気合い入れていきましょー!」
アキさんの開始宣言と共に、最後の仕上げに自分、ヒデさん、こーさん、島田さんの4人が真っ先に姫路さんの投入した物体Xを包み込んだキャベツの回収に急ぎます。本来は真っ暗で何も見えず何を取ったかわかりませんが、4人の座っている正面にキャベツの端が来るように計算して配置しているので作戦は完璧。このまま鍋の中に箸を入れ、キャベツの四方を挟んで一気に引き上げてあらかじめ用意していたタッパーの中に入れれば、誰も傷つくことなく処理できるはず!
「「「「(———捉えた!)」」」」
箸の先に当たったキャベツを挟み込みます。4人が全く同じタイミングでキャベツを掴んだことが気配で感じると、決して落とさぬようしっかりと改めて挟み込み心の中で掛け声をあげて皆さんで一気に取り出します———せーのっ!
ざばぁ…… ←真ん中に大穴があいたキャベツの層
「「「「…………」」」」
……………………は?
い、いかん。一瞬、完全に思考が停止してしまいました。え、え?ははは、何かの間違い、ですよね?きっと暗くてよく見えなかっただけ。こんな、こんなおかしなこと、まさかね?
一度何も見なかったことにして、頭を振って目を擦ります。大きく深呼吸して再び箸で掴んでいるキャベツを見直す自分たち。
ざばぁ…… ←真ん中に大穴があいたキャベツの層
「「「「…………(ぽろぽろぽろ)」」」」
「(み、美波に造!?ど、どうしたの!?)」
「(ひ、秀吉にムッツリーニも応答しろ、何があった!?)」
ただ静かに涙を流して作戦の一つが失敗したことを知らせる自分たち。どうして……?もしものことを考えてこれでもかと言うくらいキャベツを重ねて挑んだと言うのにどうして……?少し目が慣れてきたので零れ出る涙を拭いてよく見てみると……どういうわけか未だにジュワジュワとキャベツが溶けつつあることが確認できました……もうだめだコレ……
「(あ、安心するんだ皆!まだ希望は残っているよ!)」
「(そ、その通りだ!まだ三重防壁は機能しているはずだからな!)」
そう小声で告げ、防壁が機能しているうちに物体Xを今度はお玉で回収しようと試みるアキさんとゆーさん。パパッと取り出した二人の取り皿の中には———
どろり ←溶解したこんにゃく・豆腐・出汁取り昆布・長ネギ・人参・お麩の欠片
「「だ、大事な防壁がぁあああああああああああああああああ!?」」
「ど、どうしたんですか明久君に坂本君!?」
———三重に作っておいた防壁が型である長ネギやサポート役のお麩、更には支柱にするために生のまま入れた固い人参までもがドロドロに溶けていました……なぜ?Why?何と反応してるんですかコレ?鍋物なのに化学反応が起きるって一体全体どういうことなの……っ!?
「いや……何でもない(恐ろしい奴だ姫路……俺らの小細工なんか相手じゃないってワケか)」
「ゴメンゴメン瑞希、気にしないで(……僕らは所詮小者だったようだね、色んな意味で格が違ったよ)」
まさか防壁ごと破壊してこようとは。彼女の一手は自分やゆーさんたちの知恵を総動員させて編み出した決死の小細工とはレベルが違いました。ただ純粋な圧倒的破壊力、それだけでこの幾重にも張った策を粉砕してくるとは……完敗です。
「造くんに秀吉、今日はなんか変よ?どうしたのよ」
「……雄二、もしかして具合悪い?」
「こーたくんひょっとして調子悪いのカナ?」
「明久君、美波ちゃん食べないんですか?」
何も知らない彼女たちは、絶望に駆られている自分たちを横目にそう尋ねつつ取り皿に具材を取って食べる準備します。……それがとても恐ろしい化学兵器だと知らずに。
「いえ、たべましょう……たべたくないですが」
「ああ食べる、さ……その前に、明久頼む」
「OK雄二、皆も行くよ———天にまします我らが父よ……」
ここまでやって、自分たちの無力を悟った後はもう天にお祈りするほかありません。アキさんの祈りに続き被害者の会フルメンバーで無心に祈りを捧げます。
「秀吉、アンタいつもそこまで真剣にお祈りなんてしてたっけ?それに造くんまで……」
「……雄二ってキリスト教徒だっけ?」
「わ!すっごいね、こーたくんってちゃんと食べる前にお祈りしちゃうんだ」
「私たちもやったほうが良かったでしょうか明久君、美波ちゃん」
「うん、出来ることなら皆で一緒に。本気でお祈りしよう———(ボソッ)僕らは大事な人と友人を失いたくないし」
アキさんの提案で他の4人もお祈りを。神様……どうか我らをお救いください……
「———アーメン」
「「「「「———アーメン」」」」」
十字を切って、いよいよ審判の時来たり。とりあえず敵の戦闘力を調べるため、改めて取り皿の中のものを暗闇の中で観察することに。温かな湯気と共にタバスコ特有の刺激臭がしてきます。……あれ?この湯気タバスコ入りとは言え、それ以上に目に染みて———
「つつつ、造よ!?気のせいなのかワシにはこの湯気が紫色に見えるのじゃが!?」
「き、気のせいじゃないですね……皆さん気を付けて!この湯気下手したら目を傷めかねな———」
「…………し、染みる……!?」
「ぐうぅ!?め、目が!目がぁ!?」
「や、やっぱり!?こーさん、アキさん大丈夫ですか!?」
「アキしっかり!?駄目よ慌てちゃ!」
「落ち着け明久、ムッツリーニ!暴れて鍋を引っくり返したら終わりだぞ!?」
「ゆ、ゆーさん!アキさんを押さえておいてくださいっ!自分はこーさんを!」
なんということでしょう、湯気だけでダメージを負う自分たち。これで鍋を引っくり返して人体にかかってしまったら大惨事になる気がしてなりません。耐性の無い皆さんもいますし、それだけは避けねば。
- 番外編:寒い日は鍋が一番!〜闇鍋?病み鍋?暗黒鍋デス〜その⑤ ( No.220 )
- 日時: 2015/12/27 21:21
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
「あら、何だかとっても楽しそうじゃない」
「……雄二たちはしゃいでる」
「こーたくんたちはいつも楽しそうでいいよねー」
異常事態に気付いていない女性陣。き、気を付けてください!?食べる以前ににおいや湯気だけですでに一級品の破壊力持ってますよコレ!?
「待ってください優姉さん!食べちゃダメですっ!」
「しょ、翔子!まだ食うな!ちょ、ちょっと舐めるだけだぞ!?」
「…………工藤、試すならほんの一滴だけだからな……っ!」
「大げさね、そりゃアタシもちょっと面白いもの入れたけど大丈夫よ」
「……うん、そんなに怖がることはない」
「そうそう、それじゃいただきまーす!」
無防備に口にしようとするお三方に、ひとまず一滴舐めるだけと忠告します。笑いながらも一応自分たちの言う通り、取り皿を持ち上げほんの少しだけ汁を啜ると———
『……においほど、変な味でもない』
「翔子ぉ!?おま、お前の声が何故か直接脳に響いてくるんだが、魂はちゃんと身体の中に入っているのか!?しっかりしろぉ!?」
「「きゃああああああああああああああ!?」」
「あ、姉上!?なんじゃその反応は!?食材を口にして悲鳴を上げるなぞおかしかろう!?」
「ゆ、優姉さん!?だ、大丈夫ですかホント!?何です今の断末魔的な叫びは!?」
「…………普通は“美味しい”か“不味い”の一択だろう工藤!?」
霧島さんの背中からは白いぼやっとした魂的なものが出ているのが見え、優姉さんと工藤さんは悲鳴を上げて倒れます。いやいやいや!?どの反応もおかしい!?食べ物を食べた後の反応じゃないでしょこれ!?そ、それ以前に———三人ともテーブルに突っ伏して動きません!?い、意識がない!?
「しょ、翔子ちゃん!?愛子ちゃんに優子ちゃんもしっかりしてください!?」
姫路さんが大慌てで倒れた三人に呼びかけます。ヤバイ……これで起きなければすぐに救急車を呼ばねば……
「う……な、なにあの味……」
「……食べ物とは思えない」
「ぼ、ボクもちょっとあれは……」
三人とも頭を振ってゆっくりと上半身を起こします。よ、良かった一命は取り留めたようですね……先に食べるなら少しだけと忠告しておいて本当に良かった……
「う、うぅん……酷い目に遭ったわ……」
「……臨死体験」
「ボクあんな味は初めてだったよ……」
飲み物を口にして、息を整える三人。その三人を見ながら被害者の会フルメンバーは静かにアイコンタクト。これ以上耐性の無い人は耐えられない……自分たちで処理しなければ、と。
「コホン、瑞希お願いがあるけどいいかな?」
「は、はい?明久君何でしょうか……?」
「キッチンにさ、美波が買ってきてくれた胃薬があるんだ。取ってきてくれないかな」
「あ、それと悪いけど人数分のお水も用意しておいてくれるかしら?ゴメンね瑞希」
「は、はい!今すぐ行ってきます!」
優姉さんたちやこれから処理する自分たちの胃のために、姫路さんの避難も兼ねて彼女に胃薬を取ってきてもらうことに。覚悟は決まりました……策がまるで通じなかった以上、こうなれば全力で当たって砕けるのみ。砕けるのは魂と肉体ですが。
「それでは、逝きましょうか」
「うむ……共に逝こうかの造」
「やれやれ、結局逝くしかねえのか」
「…………工藤、逝ってくる」
「アキ、瑞希がキッチンにいるうちに逝くわよ」
「オッケー、皆で逝けば怖くないもんね」
全員、“行く”の字が違う気もしますが、大体あってるので気にせずに。大きく深呼吸し眼前の敵を見つめて食すため取り皿を手に取ります。
「ちょっと待ちなさい!?これ食べる気なの!?だ、駄目よこんな……あ、アタシが余計なもの入れたから……」
「……雄二、それに造に皆も食べちゃ駄目。私が変なもの入れたせいで……」
「そうだよ!?ボクが普通は食べられないようなもの入れたせいでこうなったんだし、こーたくんたちが食べることないってば!?」
どうやらご自身の入れたタバスコが原因と勘違いしているAクラスの三人が、必死になって自分たちを止めます。いや貴女方が原因ではないので大丈夫ですよ、とは言えませんが、気遣ってくれる彼女たちがこれ以上この暗黒鍋を口にしないためにも———
「では、イタダキマス」
「「「「「イタダキマス」」」」」
———無理やり自分たちの口に鍋のスープを押し込めます。
『ほ、本当に食べた!?み、瑞希急いでお水持ってきて!?造くん、秀吉!気をしっかり保ちなさい!』
……ああ……この感覚……不味いです、ね……意識が……
『……雄二、しっかりして……!死なないで……!』
……もう、意識が……
『こ、こーたくん……なんて無茶をするの!?キミがいなくなったらボクは……ボクはどうすれば!?』
意識が……
——————なくならない……?
「あ、あれ?無事……ですと?」
「ホントだ、全然平気じゃないか」
「う、ウチも平気……実はあの世とかってオチじゃないわよね?」
「いや、現世のようだな。なんだ意外と大したことねーな」
「…………どうということはない」
「うむ、辛い(つらい)ことは辛い(つらい)が、耐えられぬレベルではないのう」
どういうわけか被害者の会全員無事に生還。意識を失うことも無ければ走馬灯が見えるわけでもないとは正直拍子抜けです。あれー?これって一体どういうことでしょうか……?
「もしかして……耐性が更に出来上がってきたのでしょうか?」
「なるほどね、そりゃ事あるごとに口にしてたからね」
「まあ、複雑な気分だがな。んじゃ何とかなるってわかったし処理———もとい食うとすっか」
タバスコと溶けた具材の混ざったスープを絡めて、人参や長ネギなどをパクパクと食べることに。耐性もそうですが、どうやら皆さんで入れた具材のお陰で普段よりも姫路さんの料理の攻撃力が弱まっているようですね。若干舌と手足は痺れますが、問題なく食べきります。
「な、なに食べてるのよ!?無理しちゃダメよ!?」
「……雄二、そこまでにしておいた方がいいと思う」
「こーたくん、その……ホントに大丈夫なのカナ?」
「お、お水とお薬持ってきました!皆さんどうぞ!」
一応念のため最後に姫路さんが持ってきたお水と胃薬を飲んで全員の無事を喜びます。平然と完食してしまう自分たちを見て、Aクラスの三人は戦慄していましたが———ともあれ一人も欠けることなく作戦終了。ご馳走(?)さまでした。
- 番外編:寒い日は鍋が一番!〜闇鍋?病み鍋?暗黒鍋デス〜その⑤ ( No.221 )
- 日時: 2015/12/27 21:05
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
〜その帰りの造&秀吉&優子〜
「———それにしてもすごい怖い闇鍋だったわね……ゴメンね、アタシがタバスコなんて入れたばっかりに。大丈夫二人とも?気持ち悪くなったりしてない?」
「あ、いえ……大丈夫ですよ。それにアレは優姉さんのせいじゃないので」
「真に怖いのは闇鍋ではないからの……」
闇鍋、いいえ暗黒鍋を乗り越え本日優姉さんとヒデさんのお家にお泊りの自分は3人で今日の感想を述べつつ木下家に向かいます。死を覚悟しましたが、結果的に無事全員生き残れましたし、何だかんだで楽しかったですよね。……正直もう二度と闇鍋なんてしたくありませんけど。
「ところで話変わるけど、瑞希と美波はまだ帰らないみたいね」
「後片付けして帰るそうですよ。お二人ともご両親が遅くに帰るらしいですし時間もあるからと。ただ島田さんは葉月さんが待っていますし片付けが終わったらすぐに帰ると言ってましたが」
「夜道を女子二人で歩かせるわけにもいかんから、明久が片付けが終わり次第まとめて家に送ってやると言っておったしの」
本来なら自分たちも残って後片付けを———と言いたいところでしたが、まあアキさん大好きなお二人の邪魔をするのもなんでしたし、片付けはお任せして別れました。送り迎えも含めてアキさんがいるなら大丈夫でしょうからね。と、そんな談笑をしていると———
PRRRRR! PRRRRR!
「———あら?アタシの携帯……師匠から?」
「え、サクヤさん……?」
「日高先生じゃと?」
突然優姉さんの携帯が鳴り響きます。しかも相手はサクヤさんときましたか。ふむ……恐らく自分は機械音痴ですし携帯がまるで使えないので、連絡が通じそうな優姉さんに電話してきたってところですかね。
「出てみるわ———お待たせしました師匠。どうかしましたか?……はい?え、えっと……ちょっと待ってくださいね。今造くんに代わります。造くん、お願い。(ボソッ)なんか師匠とても焦っているわよ」
「?ええ、ありがとうございます優姉さん———もしもしサクヤさ……」
いぶかしげな表情をしながら優姉さんが自分に携帯を渡してくれます。手に取って電話に出ると———
『造ぅ……!すまん……!ストで、動けん……!ごめんなぁ……!』
「…………は、い?あの?サクヤさんどうしました?」
『会えない……さみしいぃ……最悪……泳いで、帰るぅ……まって、待ってて……うぅ……』
何ですこれ?嗚咽交じりでよくわかりませんが、サクヤさんがえらく取り乱しているようですね。と、電話の向こうでそんなサクヤさんから誰かが電話を代わった気配が。
『サク姉さん落ち着いて。私が事情を話しますので———もしもし、造さん。蒼です、聞こえますか?』
「あ、はい。蒼兄さん聞こえますよ。それで、何があったのですか?」
『あー……それがですね。空港がスト状態になりまして』
自分専属の執事さんで、兄貴分の蒼兄さんがそう自分に電話越しで伝えます。……スト?ストって……アレですか?ストライキ的な……
「ストって、もしかしてストライキのことですか?」
『そうです。それで……そのストのせいでですね、飛行機が飛ばせないらしくて』
「あ、あー……大体わかってきました。それでサクヤさんがあれほど取り乱して……」
どうやら向こうでストライキが起きて飛行機が飛ばず、予定の日程より遅れて帰国することになったってことですね。それでサクヤさんが泣いている、と。
『はい。本来なら三日もすれば帰れると思っていましたが、この分ではいつ帰れるかわかりません。申し訳ないですがしばらくは戻れませんので』
「ええ、わかりました。心配なさらずともこちらは大丈夫です。寧ろ蒼兄さん———」
『と言うことは、まだまだ遊べるってことねー♪さあ観光行くわよー!』
『お、奥様落ち着いてくださいね!?こういう場合は空港で待機を———』
『やー!飛ばない飛行機待ってたって意味ないもの。さあ遊ぶわよー!』
『と、止めろ奥様を!?見失うなよ野郎ども!』
『…………こうなりゃ、海の上走る……造に、会いに行く……だいじょうぶ、アタシならできる……最悪の場合力を解放すれば余裕で……』
『さ、サクヤ姐さん!?姐さんならやれそうですがホントに実行しないでくださいね!?』
『蒼兄貴ッ!奥様と姐御がヤバイっ!?至急援護を!?』
「———ほんっとに、申し訳ありませんが。そこの暴れている二人の子守をどうか頼みます……」
『……気が重いですが、承りました。では、そういうわけですので……』
そう言ってバタバタと電話を切って問題児二人を止めに行った蒼兄さん。海の向こうで応援しています、蒼兄さんにお手伝いさんたち。皆さんがんばれ、超がんばれ。
「優姉さん、携帯ありがとうございました。もう大丈夫ですよ」
「そう?それで要件は何だったのよ結局」
「日高先生も蒼殿も、随分取り乱しておったようじゃが?」
「お気になさらず、いつも通りちょっと母さんとサクヤさんが暴れているだけのようです」
「「あー……なるほど」」
「さて、もう大分遅いですし急ぎましょう。自分お泊り楽しみなんですよね♪」
優姉さんとヒデさんに心配かけないようにそう返します。それにしても、ストですか……蒼兄さんやお手伝いさんたちのためにも早く解決してくれればいいのですがね。とりあえず明日にでも西村先生と学園長にサクヤさんが戻ってこれないと連絡しておくとして……
———同時刻:吉井家———
「———へ?空港で、スト?」
「そ、そうみたいです。飛行機が飛ばないとかで父も母もすぐには帰れられないらしくて」
「ストですか……アキくん。テレビを」
「うん、了解わかった」
ピッ!
『それでは中西さん。空港は当分使用可能になる目途は立たないと言うわけですね』
『はい、どうやら空港に勤務する人々の不満は大きいようで、労働条件の改善を求める動きは依然止まる気配を見せません。暴動などの不安は無いようですが———』
「あちゃー……これはまた」
「ああ、この国ですか……幸いこの国は治安は良い観光の国ですが、困りましたね」
「ええ。ですが父も母も心配ないそうです。玲さんの言う通り治安自体は良いようですし、いつになるかわかりませんがのんびり帰ってくると思いますよ」
「……瑞希も、かぁ……困ったものよね」
「あ、美波電話終わったんだ。ん?というか“瑞希も”って、何が?」
「いや、そのさ……ウチの両親もちょうど今この国に行っててさ……」
「「……ま、まさか美波(ちゃん)も……?」」
「う、うん。たった今両親から連絡あってね。しばらく帰れないって。それでさ、アキ。それに瑞希に玲さん。片付けの途中で悪いんだけど今すぐ帰るわ。葉月が完全に一人だし心配になってきちゃってね……」
「あ、うん。片付けはいいけど……美波も瑞希も今日はご両親いないってことだよね」
「まあ、そうなるわね。ウチも葉月も慣れてるけど……瑞希は大丈夫かしら?」
「はい、それくらい私は大丈夫ですよ」
「でもその間一人暮らしってことになるでしょ瑞希。最近は物騒だし、だったらちょうどいいし瑞希か美波のどっちかの家に葉月ちゃんと三人で泊まるとか……」
「待ちなさいアキくん。それよりもっといい案がありますよ」
「「「姉さん(玲さん)?」」」
「アキくんの言う通り最近は物騒です。女の子だけで留守番するのは危ないです。そこで、どうせでしたら瑞希さんも美波さんも、それに葉月さんも———ご両親が戻られるまでこの家に滞在しませんか?」
「「「…………え?」」」
……ちなみに。このストが新たなFクラスの非日常的な事件の火種になるとは、この時の自分もそしてアキさんたちも全く想像していませんでした。