二次創作小説(紙ほか)

番外編:酔いと造と幼児返り!?〜お酒は大人になってから〜後編 ( No.130 )
日時: 2015/09/22 14:09
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)

〜康太・愛子の挑戦〜


康太Side


「…………先生たち、やられたみたいだな」
「そだね。でも優子たちがこれだけ早く月野君を見つけてくれたし、三人の為にも早く捕まえないとね」

日高先生たちが全員戦闘不能(?)になり、すぐさま動いた俺と工藤ペア。先にやられた日高先生たちの情報を元に、校内の至るところに仕掛けた監視カメラを起動させ造を行方を追うことに。

「…………いた。現在二階の渡り廊下を疾走中。もうすぐ一年の教室前に着く」
「流石こーたくん♪それじゃ先回りだね!」
「…………ああ。挟み撃ちにするぞ」

と、ノートPCをしまい、三階にいた俺は窓から一階へと飛び降り、同じく三階にいた工藤はそのまま階段を下り、次に造が現れる場所に先回りする。そして……

「…………追い詰めた」
「あはは♪月野君?いや、月野ちゃんかな?やっほー♪」
「おー!康太お兄ちゃんも愛子お姉ちゃんもオニごっこつよーい♪」

三階から階段を下りてきた工藤と、一度窓から飛び降りて一階の階段を上がってきた俺によって逃げ場が無くなった造。二階にある一年の教室前の廊下で、前は俺たちに立ち塞がれて後ろは窓と壁という状態だ。

「…………さあ、大人しく投降しろ」
「ふっふっふー!鬼ごっこはボクらの勝ちだよ月野君」
「むー!でもまだまけてないよー?いくよ……起動(アウェイクン)っ!」

「「っ!」」


キィイイイイイイイン ボンッ!


と、ここで白金の腕輪を使いフィールドを展開し召喚獣化する造。ここで腕輪を使ってくるとは……酔っていても腕輪は使えるあたりは、もう召喚獣化すること自体が習慣になっているのか……?

「…………だが、腕輪を使用することは想定済み。来るならこいっ!」
《うん♪ぜんりょくでいくよー!……ふたりとも、ふきとべー!》

と、少し気が抜けそうな掛け声で、俺らに向け突風を起こす造。俺も工藤も思わず目を瞑り踏み止まって吹き飛ばされないようにしようとするが———

「「……え?」」

———予想に反して、造の起こした風は髪を揺らす程度の勢い。慌てて造を見ると、いつもの如く箒に乗り窓から脱出しようとしていた。

「…………ちぃっ!さっきのはただのハッタリか!?」

すぐさま造を追って俺の持ち前のスピードを活かし駆け出す。2階,3階程度の高さならロープなしでも飛べる……このまま逃げられると思うな造っ……!

《———ねぇ、康太お兄ちゃん♪愛子お姉ちゃん放っておいていいのー?》
「…………っ!?」

…………だが、甘かった。幼児思考になっていても造は造。普段から緊急時に機転が利く造を甘く見ていた。造のその一言に思わず足を止め後ろを振り向いてしまう。———そう、それが俺の命取りになるとも知らずに。


ゴオッ!


「きゃっ!?……あ、あれ?」
「…………ライト……グリーンッ!?(ブシュウウウウウウウウウ!?)」
「ちょっ!?こ、こーたくん!?しっかり!?」

……造が時間差で起こした突風により、工藤のスカートがはためいた。お陰でバッチリと今の光景を網膜と脳に焼き付けてしまう。くそっ……なんてことをしてくれるんだ造は……GJ……だ……こんな素晴らしい光景は、カメラで撮れればよかっt———コホン、何でもない。そんなことを瞬時に考えながらも、俺の鼻からは……その命と共に真っ赤な赤い華が散る。

「…………つく、る……流石だ。まさか……時間差トラップを……仕掛ける……とは」
「こーたくん!しっかり!?てか、さっきよりも血の量多くない!?」

…………気のせいだ。別にやらしい気持ちになどなっていない。それにしても……

「…………工藤。お前……スパッツだった……ハズじゃ……?」
「え!?あ、いやその!?ち、違うんだよ!?別にこーたくんを意識しているってわけじゃなくて、いやでもこーたくん女の子らしい子が好きなのかもしれないとも思わなかったわけでもないけど……その……そ、そろそろボクもボーイッシュな感じから少しは女の子らしくイメチェンしようかなって思ったりして、でもいきなり変わるのはアレと言うかその……み、見えないとこから頑張ってみようかなって!?でもパンツ見られたら意味無いね!ま、まあ他の人じゃなくてこーたくんに見られるなら全然OKかな———って、な、何言ってんだろねボク!?」

…………とりあえず自爆して、焦りながらも言わなくても良いような事まで喋る真っ赤になった工藤。そうか……イメチェンか……それはとても可愛———コホン、それは少し新鮮だ。

「…………おち、つけ……一先ず、造の現在位置を……アイツらに……(ガクッ!)」
「こ、こーたくん!?わ、わかった!連絡したらすぐに保健室に運ぶからね!?」

…………すまん……迷惑かけるな……そんなことを思いつつ、俺の意識は遠のいた。


〜康太・愛子の挑戦:失敗【鼻血による大量出血により戦闘不能】〜


〜明久・雄二の挑戦〜


明久Side


《おー?明久お兄ちゃんも雄二お兄ちゃんもいつの間にー?》

戦友(とも)であるムッツリーニや秀吉たちの死は無駄にはしない。二階の窓から金の腕輪の能力である飛行能力を使って一階へ悠々と降りてきた造を待っていたのは———そう、ムッツリーニたちの知らせを受けて待機していた僕と雄二の実行部隊。ふっふっふ!観念するんだね、造!

「ふっ……造!君の逃亡ルートは完全に読んであるよ!それに雄二の言った通り、やっぱり造は召喚獣になったね」
「ああ……これならさっきよりも捕まえやすい。俺らも召喚獣を出してお前の点数さえゼロにすれば、戦死となって鉄人に問答無用で捕えられる。そうすりゃ俺らの勝ちだからな」
《おー♪お兄ちゃんたち、こんどはしょーかんじゅうでたたかうのー♪いいよーやろうやろう!》

と、僕ら三人とも臨戦態勢に入る。……それにしても、いつの間にか造を捕まえる事から本質が変わってきている気がするけど、ツッコんじゃいけないのかな?まあ、いいか!ここで倒せば造も大人しくなるんだし!とにかく僕と雄二も造に対抗すべく召喚獣を呼び出す事に。

「「行くぞ、造っ!覚悟するんだ!試獣召喚(サモン)っ!」」

《おー♪つくる、まけないよー!》

さあ、いざ尋常に勝負!二対一なら僕らは負けな———


≪Fクラス 坂本雄二 現代国語 211点≫
          &
≪Fクラス 吉井明久 現代国語 107点≫
          VS
≪Fクラス 月野造  現代国語 501点≫


「「…………あれ?」」

…………コレ、戦力差、ヤバくない?

番外編:酔いと造と幼児返り!?〜お酒は大人になってから〜後編 ( No.131 )
日時: 2015/09/21 21:06
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)

《?どしたのー?お兄ちゃんたち、はやくやろー!》

…………ま、まあ当然の事と言えば当然の事だけど、造の現在の持ち点は造が酔う前に受けたテストの点数。さっき造がムッツリーニと工藤さんを撒くために消費した点を差し引いても、500点オーバーと言う驚異の相手。どれだけ凄いかって言うとムッツリーニに保健体育で挑む、もしくはAクラスの上位成績者や教師を相手にしているようなものって言えばわかりやすいかな?

「……ちょっと雄二。そう言えばこの作戦聞いた時から少し気になってたことがあるんだけどさ。科目指定は造しか出来ないし、今の科目は造の得意科目の現国だよ?あの点数差で僕ら勝てるの?」
「……当たり前だ。勝てるさ…………(ボソッ)多分」
「おい!?今こっそり多分って言ったな!?と言うか、それを考えてなかったなこのバカは!?」

このバカ……さてはまだ造の精神攻撃から逃れられていなかったな!?もしくはアレか!?子供に本気で攻撃するのは気が引けるとか思って、計画を適当に立てたな、この子供好きの親バカ野郎め!?どうやら雄二は異性(霧島さん&雄二のお母さん)や子供(造)に非常に弱い気がする。克服するためにも、さっさと霧島さんと所帯を持てばいいのに。

「その辺はお前に任せる!大丈夫だ!お前は根本や久保相手でも負けなかっただろうが!」
「それは相手が召喚慣れしていなかっただけだって!造は戦闘能力高いし、てか英語くらいしか造に勝てそうなものないんだけど!?」

そもそも造にもフィードバックがあり自身が召喚獣として戦える上、造本人も場馴れしているせいでこの科目———だけじゃなくて大半の科目で勝てる気が一切しない。いや、科目指定さえ出来れば造にも(英語で)勝てそうだけど……指定できるのは造だけだし、これひょっとしなくても詰んでないかなぁ!?

「そこは……俺の知略とお前の特攻で切り抜ける。まずお前が造を引きつけて———」
「雄二っ!それ今適当に考えただろっ!?おまけにキサマ僕を生贄にする気満々だな?てか、フィードバックがあるのに500点越えの攻撃何か食らったらヤバイって!?」

おそらく軽く昇天してしまうレベルだろう。あ、でも造なら手加減を———いや、酔ってる造にそんな判断力を求めるのは無理か……

「そこは気合と根性で乗り切れ、使い捨て装甲ば———明久!」
「今のその台詞で僕のこれからの末路と雄二の本音が見えた気がするんだけどっ!?———って、あれ?造は?」

そんな感じで二人で言い争っている間にいつの間にか造は僕らの視界から消えていた。ど、どこに……

《あはは♪明久お兄ちゃん、雄二お兄ちゃん!“せんししゃはほしゅー”だよー♪》

「「げっ!?上っ!?」」

再び400点オーバーから使用可能な金の腕輪を使い、こっそり僕らの死角である上空に飛び上がっていた造はそのまま———


ドゴォ!×2


≪Fクラス 坂本雄二 現代国語 DEAD≫
          &
≪Fクラス 吉井明久 現代国語 DEAD≫
          VS
≪Fクラス 月野造  現代国語 403点≫


———僕らが抵抗する間もなく、見事に戦死させる造。そして僕らが完全に戦死したことを確認すると、そのまま《つくるのかちー!たのしかったよお兄ちゃんたち!それじゃ、つくるまたにげるねー♪》と箒に乗ってそのままどこかへ飛んでいく。勿論やられた僕らはと言うと……

「吉井、坂本!戦死者は補習だ!」
「ま、待て鉄人!今日は見逃してくれ!造が逃げちまう!」
「ふぬぉおおおおおおおおお……地味に、痛い……あ、でも造、手加減はしてくれたっぽいかな……でも、痛い……」

何処からともなく駆けつけた鉄人に補習室行きを宣言されていた。イタタ……さ、流石に優しい子だね造は……なるべく軽めに戦死するように加減してギリギリ戦死するように調整してくれたらしい。痛いのは変わらないけど……

「月野だと?何を言っておる、どこにもおらんではないか」
「い、いやだからアイツ逃げたんだって!追わねえと大変な事になるんだって!?」
「イタタ……鉄じ———西村先生!そうなんです!造を追わないと子供で大変なんです!」
「……とりあえず、よくわからんが補習室で話を聞く。ついて来い」

くそぅ……この脳筋チンパンジー、話を聞いてくれないっ!このままじゃ造に逃げられるのに!

「「いや!だから今追わないといけないんですよ!鉄ゴリラ!」」

「……戦死は戦死だ。いいからさっさと来い。補習ついでに言葉遣いも教えてやる」

「「ちぃ!放せ鬼教師、脳筋、鉄人!(ゴンッ!)イデェ!?」」

「だから西村先生と呼べっ!」

くっ……こうなりゃ瑞希、美波、霧島さん!君らに全てがかかっている!頼んだよ三人とも!

そう祈りつつ僕と雄二はさっきの無邪気な天使の笑顔の造とは正反対の、おぞましくも暑苦しい閻魔を思わせる鬼教師の鉄人と地獄の放課後レッスンを堪能されることとなった。こんなの……こんなの理不尽だっ!?


〜明久・雄二の挑戦:補習室行き【戦死による(地獄の)補習の為戦闘不能】〜


〜瑞希・美波・翔子の挑戦〜


瑞希Side


「「「…………」」」

……えっと、どうしましょうこれ……皆さん月野君にやられちゃいましたね……

「み、皆さん失敗しちゃったみたいですね……」
「あー……確かに日高先生の言った通り、月野は暴走したら止める方法がわからないって言う事もわかるわね」
「……このままじゃ、どうにもならない。かと言って私たちが行っても」

「「「……皆の二の舞……か」」」

そう言って私たちは溜息をつきます。ちょっと困りました。何せ明久君たちを一瞬でやっつけてしまうほどの月野君が相手です。どうやって月野君の暴走を止めればいいのでしょう。とにかく残った私と美波ちゃん、翔子ちゃんの三人でどうにかするしかないと言う事で、月野君捕獲の案を出し合うことに。

「うーん……せめて、月野の弱点とかあればいいんだけど」
「でも月野君の弱点って……え、英語と日高先生たちでしょうか?」
「……その二つだけではどうしようもない。それに日高先生たちは造に倒されている」
「そうよね……他には———あっ!西村先生なんてどうかしら?」
「確かに月野君は西村先生の言う事は聞きそうですが……」
「……先生は今、雄二と吉井を補習中」

「「「……うーん……」」」

しばらく月野君の弱点や、言う事を聞きそうな人を考え込みます。誰か……そう、例え月野君が酔っていても、彼の弱点となりうる方。月野君の天敵……もしくはそう、月野君の事を私たちよりも知ってそうな————あれ?

「「「…………あ」」」

私も、美波ちゃんと翔子ちゃんも顔を見合わせて、とある人の顔を同時に思い浮かべます。そうです!あの人ならきっと……!

「そ、そっか……あの人なら月野を止められる……かも?」
「……もっと早めに気がつけばよかった」
「ちょ、ちょっと電話してみますね!まだ学園内にいらっしゃればいいのですが……」

今は放課後なだけあって、もしかしたらお帰りになっているかもしれません。ですが……この状況を何とか出来る方は、きっとあの人しかいません!


〜瑞希通話中〜


『はい、もしもし。どうしましたか瑞希さん。……え?今ですか?いえ、学園近くの喫茶店で……』
『……はい?月野君が……暴走?彼が…………酔って、幼児化……?は、はぁ……』
『……ふむ、なるほど。ああ、わかりました。後は私に任せてください』
『え?ふふふっ♪大丈夫ですよ。その辺も含めて任せてください。多分ですが……何とかなると思いますので』
『では、すぐにそちらに参ります。瑞希さんたちは新校舎屋上で待っていてくださいね』


〜瑞希通話終了〜


とりあえず、あの人は快く協力してくれるとのことです。それはとても助かるのですが……

「……え、えっと……」
「で?どうだったの瑞希?協力してくれるって?」
「あ、はい……“後は私に全て任せてください”と」
「……良かった。でも造の今の場所、わからないんじゃ?」
「あ、いえ……“月野君がどこにいるかもわからないです”って言ってはみたんですが、“その辺も含めて任せてください”ですって。自分から出てくるって言ってました」

「「え……?自分から……?」」

「はい……とにかく屋上に来てくださいだそうです———葵先輩が」

———そう、小暮葵先輩なら何とかしてくださると思って電話してみたんですが……大丈夫でしょうか……?

番外編:酔いと造と幼児返り!?〜お酒は大人になってから〜後編 ( No.132 )
日時: 2015/09/21 22:11
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)

———文月学園:屋上———


「お待たせしました皆さん」

私が電話で連絡して、先輩の指示通り屋上で待つ事———十分後。何か手に持って先輩は悠々といらっしゃいました。

「ごめんなさい先輩こんなことに呼び出してしまって」
「いえいえ、緊急事態ですしお気になさらず」
「えっと……それで先輩?月野君は———」
「ああ、大丈夫です任せてくださいな。それより皆さん。お腹空きませんか?」

と、この近くの喫茶店のロゴの入った箱を掲げる先輩。えっと……月野君は良いのでしょうか?

「……え?お、お腹って……?」
「ケーキあるんですよ♪ちょうど“五つ、人数分ある”ので皆さんでわけて食べましょう♪」

……ど、どうして急にケーキ何でしょうか?それに人数分って言っても先輩入れても四つが正しいんじゃ……?同じような疑問を美波ちゃんも翔子ちゃんも感じているようで、不思議そうに首を傾げています。そんな私たちを意に介さず、小暮先輩は一度すうっと深呼吸して———

「コホン……月野君、おやつにしませんかー!月野君の大好きなシューケーキもありますよー♪」

———と、空に向けて楽しそうに呼びかける先輩。……え?も、もしかして……こ、これが先輩の作戦なのですか!?

「せ、先輩……?まさか、それだけで月野君が捕まえられると……?」
「ええ。勿論ですとも」
「あ、あはは……先輩いくらなんでもそれじゃ月野は捕まりませんよ?」
「……今の造は子供だけど、そんなのに釣られるほどアレな子じゃないと思います」
「あら、そうでしょうか?……ふふっ♪まあ、私に任せてくださいな」

そう言いつつ箱からケーキを取り出して、ご自身の分を食べ始める葵先輩。流石の私も美波ちゃんたちも、これは先輩のお茶目な冗談だろうなと思っていた次の瞬間———

「———たべるー♪葵お姉ちゃん!つくるもホントにたべていいのー?」
「あらら?“葵お姉ちゃん”とは中々珍しい呼び方ですね♪ふふっ、ええ勿論。月野君の為に買ってきましたもの。さぁ、一緒に食べましょうね」
「はーい!」

「「「…………えっ」」」

———何処からともなく……本当に先輩の言う通り月野君が現れました。えっと……?

「はい、月野君はコレが一番好きなケーキでしたよね」
「おー♪だいすきー!たべるー!」
「ふふっ♪遠慮せずにどうぞ。召し上がれ」

あまりの急展開についていけていない私たちを置いて早速食べ始める月野君と葵先輩。どうしましょう……こんなに簡単に見つかってしかも捕まえられるなんて、明久君たちの苦労って一体……?

「おいしいねー!葵お姉ちゃんもおいしい?」
「ええ、とても美味しいですし……とても楽しいですよ。色んな意味で」
「おー!つくるも美味しくて楽しー!」

そんな事を考えている間にも、流石に甘いものが大好きなだけあって月野君は出されたケーキを一瞬で食べきっちゃいました。

「あらあら♪もう食べちゃったんですか?」
「んー♪とってもおいしかったよー!葵お姉ちゃんごちそうさまです!ありがとー!」
「いえいえ……さて、月野君?」

月野君のほっぺに付いた生クリームを先輩がハンカチで拭き取りながら、先輩もケーキを食べ終わります。そして次の瞬間———

「おー?どしたの葵お姉ちゃん?」
「食べた後は———ゆっくり眠ってくださいな♪お休みなさい」
「ふえ?……あ、れ……なんだか……ねむ、い……?」


コテン!


「「「っ!?」」」

と、突然先輩に倒れこむように寄りかかり、すやすやと眠りにつく月野君。え?こ、これは一体何がどうなって……!?先輩に尋ねようとすると……

「あらあら♪月野君“疲れている”んですね〜“食べたらすぐに寝ちゃい”ましたね♪ねえ皆さん?」

「「「…………そ、そうですね」」」

……その瞬間、私たちは直感しました。先輩は宣言通り月野君を何とかしてくれたということ。そして———そのことを深く考えちゃいけないってことを。

と、未だに唖然としたままこの展開に付いて来れていない私たちを置いて、先輩は月野君を優しく横に寝かします。そしてすーすーと寝息を立てて穏やかに眠る月野君に向かって、こう呟く声が私たちの耳に届いてきました。

「全く……いつも誰かに気を遣ってばかりいるからこうなちゃうんですよ?そのくせ自分の事はずっと蔑ろにしてきて……それで今回はパンクしちゃいましたかね?———良いのですよ、たまには今日のように羽目を外してくださいね。その時は私も、貴方を大事に思ってくれる人たちも必ず何とかしますから。では、今はゆっくり眠ってください」

「「「先輩……?」」」

「……ふふっ♪月野君も無事捕まえた事ですし、私はこれで失礼しますね♪ああ、そのケーキは皆さんで食べちゃってくださいな♪」

「「「は、はい!ありがとうございます先輩!」」」

そんなことを言いつつ月野君の頭を愛おしそうに一度だけ撫でて、私たちに見せる笑顔とはまた違う優しい笑顔を月野君に見せ、屋上から立ち去ろうとする先輩。何でしょう……何だかカッコいいです……!

「いえいえ♪……ああ、それから———」

と、くるりと踵を返して私たちの方を向き、

「———“そっちには”何も入っていないので安心して食べてくださいな♪まあ、皆さんウイスキーボンボンを食べられなかった分と思ってどうぞ召し上がれ、ですよ」

「「「!?は、はい…………」」」

小悪魔的な笑顔でウィンクを残して、屋上から去っていきました。そして残った私たちはと言うと、

「「「…………食べましょうか(よっか)(よう)」」」

先輩が置いて行ったケーキをありがたく頂く事に。ケーキを食べながら私たちは三人とも、もう月野君には絶対お酒を飲ませないようにすることと……先輩にはまだまだ敵わないなってことをしみじみと感じていました。






……それにしても、ホントお酒って怖いんですね。


〜瑞希・美波・翔子(+葵)の挑戦:挑戦成功【決まり手・ケーキ(?)】〜


———翌日の朝———


造Side


『……ねえ、知ってる?昨日の月野君ってさ』
『……そうらしいわね。私も見たかったなぁ』
『……そうそう。物凄くキュートだったのよ』
『……何だかいつも以上にアイツ、子供っぽかったよな。見た目通りに』
『……やっぱ月野って“飛び級してきた小学生”って説は正しかったんだな』

……おかしいです。何やら朝から学園中自分の事で物凄く噂されている気が……ですが話されている内容に心当たりが全くありません。その上どういうわけか———

「……ねえ、皆さん?自分は一体、昨日何をしたんですか?」
「え!?い、いやー……何て言えばいいのか」
「あー、造?聞かない方が良いと思うぞ?」
「…………聞いたら恐らく」
「うむ……造の精神が持たぬじゃろう」

———そう、昨日の放課後の記憶が全くないんです……そう、ウイスキーボンボンを食べた辺りから。それを皆さんに聞いてもこんな風に言葉を濁すだけですし。ホント何なんですか……?何が合ったと言うんですか……?

「えっと、月野君。とりあえず月野君は当分お酒を飲んじゃダメですからね」
「……(私たちの)命に関わる。未成年の飲酒はダメ」
「そうね……まだまだ早いわ。と言うか月野は大人になっても飲むのは控えるべきよ」
「アタシたちの……精神衛生的にもね。いいわね造くん、お酒は絶対ダメよ」
「あはは……まあ、月野君がお酒を飲む日は、まだ遠い未来ってことカナ?」

女性陣の皆さんも、よくわからない事を言っていますし……と言うか、何でお酒の話になっているのやら……?






———それから約一週間は、結局どう言う事かわからないまま文月新聞に新たに掲載された『月野造=飛び級説』という妙な噂を払拭しなければならなくなったのはまた別のお話です。ついでに(生徒は勿論、先生方にまで)『月野ちゃん』『造ちゃん』と呼ばれる回数が増えてきた事も伝えておきます。

「……ホントどう言う事ですか!?どなたか、どなたか説明をしてくださいっ!?」

「「「「「「「「「んー、一言で説明すると———酒は飲んでも飲まれるな?」」」」」」」」」