二次創作小説(紙ほか)

番外編:ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜その③ ( No.149 )
日時: 2015/10/10 20:56
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)

造Side


どう言うわけか、急遽行う事になったぶっつけ本番の召喚獣を使った人形劇。現在ヒデさんが“三十分で学園長が持ってきた脚本をある程度形になるように書き直してくる”と言って全力で執筆していらっしゃるので、邪魔しないようにと学園長の演劇召喚フィールドを設置するお手伝いをやっている最中です。

「それにしても……学園長?あの脚本って本当に学園長がお書きになったんですか?」
「あん?いきなり何さね?」

他の皆さんは別の場所で作業を行っていますし、今なら他の方々に聞かれることもないだろうと考え学園長が設置している中々の重量の機器を自分も運ぶのを手伝いながら、少し気になっていたことを学園長に尋ねることに。

「いや、ハッキリ言っては申し訳ないと思うのですが、学園長ってあんまりこう言う演劇とかって興味無いでしょう」
「ホントハッキリ言ってくれるねぇ……まあ事実だから否定できんが」
「すみません。ですが学園長の性格からして、ただ宣伝の為だけで興味のない演劇の脚本作ってまで召喚獣の人形劇を推すなんて……ちょっと違和感がありまして。と言うか、あの脚本自体学園長が書いたにしては———少し幼稚と言いますか?」

正直言ってわざわざ演劇部と演目について揉めてまで実行するほどの脚本ってわけでも無い気がするんですよね。まあ、と言ってもあくまで自分の勘なのですが。

「とは言え気に障るような発言でしたね。すみません、ちょっとふと気になっただけなので気にしなくても———」
「……アンタ普段はぽやぽやしているようで、やっぱ何気に勘は良いみたいさね」

……ぽ、ぽやぽや?どう言う意味ですかそれは……?

「……まあ、アンタには話しておこうと思っていたから、ちょうど良いさね。———《文》、出ておいで」
「…………は?」

そう言って学園長が、何故か先程まで自分が持っていた機器に向かってそう言うと———

《はーい♪ ツクル! 文は お手伝いに キタヨー♪》

その機器の中(?)から、どう考えてもここにいるハズが無い文月学園召喚システムの頭脳、《文》さんが出て来ると同時に、自分に抱きついてきました。……ってちょっと!?

「ふ、文さん!?どうしてここに!?と言いますか、どうやってここに!?」
《えへへ 来ちゃったー♪》

自分に抱きついたまま、楽しそうにそんなことを言う文さん。いやいやいや!?“来ちゃった”っていつの間にそんな簡単にこの子はこんな場所まで来れるように!?確か文さんは学園外へ出る事は無理だった気が……?どう言う事ですホントに?

「落ち着きなチビジャリ。理屈はアンタとアンタの持ってる腕輪と同じようなもんさ。持ってきたフィールド形成装置の中に文の意識の一部を入れただけさね」
「は、はぁ……なるほど。いや、それにしてもどうしてまたそんなことを?」
「そこで話が戻るわけだが……あの脚本、この子が書いたんだよ」

…………ん?あの脚本って———

「え、えっと?まさかあの『〜召喚獣は見た!?赤く染まったウェディングドレス!みちのく湯けむり密室の悲劇!!孤島の狭小物件黒髪の匠の技〜』って言う脚本をですか?」
「よ、良くそんな長くどうでも良さそうなタイトルを覚えてたね……?まあそれは良いとして。そうさね、それはこの子が書いたのさ。そもそもこの子が余計な事をしたせいで……」

と、学園長はギロリと文さんを睨みつけます。……ん?ひょっとしてまた何か文さんがトラブルを……?

《ムー! ばーちゃん ヒドイ! 文の サイコウ 傑作なのにー!》
「ったく“最高に最低”なトンデモ脚本だろうが……文、少し月野と話があるから、吉井たちのところに行っておいで。ハッキリ言って邪魔さね」
《文 ジャマじゃ ないよー! ばーちゃんの イジワル!》
「誰が“ばーちゃん”だい!?ええぃ!良いから行っといで!言う事聞かなきゃ、すぐに帰すよ!?」
《あーい じゃあ ツクル♪ 後で 遊んで ネー!》

そう言って文さんはヒデさんが台本を修正し終わるまで待機しているアキさんたちのところへと特攻しに行きました。あらあら……文さん元気ですね〜

「あんのじゃじゃ馬娘が……これ以上暴れるなら一度分解(バラ)そうかねぇ?」
「ちょっと!?だからそんなこと言っちゃダメですってば!?……こ、コホン。それで学園長?その様子だと、やっぱり文さんが何かやっちゃったんですかね?」
「察しが良くて助かるよ……実はね———」

そうして学園長が苦々しげに話した内容は……


〜学園長説明中〜


ふむふむ。順を追って説明すると……何でも学園長、度重なる文さんの暴走に業を煮やし『この子には少しは常識ってもんをちゃんと学ばせないと』と思い至り、文さんの精神年齢を考慮して近頃は彼女に絵本や童話を読ませるようにし始めたとか。

番外編:ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜その③ ( No.150 )
日時: 2015/10/10 21:16
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)

それに関しては全く問題無く、文さんも暇を潰せて学園長も文さんに学習させられてと一石二鳥の良い話だったんですが———ここからが問題だそうで。

「それがねぇ……あの子は一体何を思ったのか、一通りの本を読み終わったかと思ったら《文も 何か 書いて みるー♪》って言い出してねぇ」
「?えっと……それはつまり、童謡や昔話のようなお話を自分で書いてみたくなったってことですか?」
「その通りさね。その時はアタシも『どうせ適当に言っているだけだろう。すぐに飽きるだろう』と思って放置してたんだが……」

その学園長の予想に反し、出来上がったのが先程の脚本『〜召喚獣は見た!?赤く染まった(ry〜』だそうです。てか、あのタイトルも文さんが付けたって事ですか。自分が言うのも何ですが、流石は自分を元にして誕生した文さん。その凄いネーミングセンスは確かに自分とよく似ていますね……

「ふむふむなるほど。ですが、それは別に問題ないのでは?寧ろ文さんがそう言う事に興味を持つ事は良い事だと思うのですが」
「……まあ“書くだけ”で済むならね。まだ話は終わっていないのさね」

と、学園長はさらに続けます。頭が痛くなる話はその次から。その物語が出来上がると、今度は文さんその物語が“テレビみたいに実際に動いているところを見れたらな”と欲が出てきてさぁ大変。いつものようにネットの世界に潜って調べてみると……世の中にはあるではありませんか。そう“演劇”と言うものが。

「な、なるほど……今度は文さん演劇に興味を持った……と」
「そうさね。そんでもって『それを召喚獣でやってみたい。文の脚本が動いているところが見たい』って言い出してね。そのせいで、現在進行形で召喚システムが“演劇召喚獣仕様”何だよ……」
「……はい?召喚システムが“演劇召喚獣仕様”ですと?どう言うものなんですか、それ?」
「あー……ちょいと説明しにくいんだが……」

えっと……?どうやら今現在自分も含めて皆さんの召喚獣は、“普段の状態”で無ければ“初期設定”でもなく、ましては“オカルト召喚獣仕様”でもない新たな状態———“演劇召喚獣仕様”になっているとか。

簡単に説明すると文さんが設定した配役の召喚者の召喚獣がフィールドに現れると、その召喚獣は配役に合った服装や装備が出て来るそうです。ちなみに召喚フィールドもその背景に合ったものが立体映像として出されるそうでして。

「へぇ、それはまさに演劇の為だけの召喚獣仕様になっているんですね」
「ああ。その通りさ。そしてこの設定の一番厄介なところは……文の指定した解除法以外で、設定を元に戻す事が出来ないところにあるんだよ」

…………んん?文さんの指定した解除法以外で、元に戻せない?それってつまり……?

「あ゛!?……ま、まさかとは思いますがそれって……!?」
「———そうさね、多分アンタの予想通りだよ。“あのじゃじゃ馬システムの脚本を使った召喚獣の劇をやり遂げないと”……」
「し、システムが元に戻らないように……文さんが設定しちゃったって事ですか?」
「……その通りさね。アタシも必死で元に戻そうとやってみたんだが———あのバカ娘、無意識に複雑且つ普通じゃ解除出来ない妙なプロテクト掛けやがったんだよ。解除するには天文学的な計算をしなきゃならないわけさ。このままじゃ、二学期の試召戦争はお遊戯大会になっちまうだろうね」

「「…………」」

な、なるほど……つまり召喚獣で文さんの演劇を行わないと、このままでは試召戦争すら出来ないようになるってことですね。なるほどそれで合点がいきます。だからこそ学園長はこの状態を解除するためにも“演劇部と時間ギリギリまで揉める”ほどこの文さんの脚本を推したんですか……

「で、ですが何でまたこんな大舞台で?普通に学園で劇をするだけじゃダメなんですか?」
「それも解除の一つの条件のようでね。文の意識に“皆に見て欲しい”って気持ちが解除キーになっているらしく、どうやら大勢の前でやらんと解けないようになっているのさ。一度試しに先生方だけでやった時は解除できなかったよ」
「そ、それはまた……何て念入りで厄介な……」

手が込んでいると言いますか、とにかく厄介ですね。とりあえず文さんにはまたお説教しないといけないのでしょうか……ん?あれ?ですが、それでしたらどうして……?

「ねえ学園長?ならなおの事、どうしてご自身が不利になるような説明を皆さんにしたんですか?」
「あ?何の事さね?」
「いや、だって……文さんの事を少し誤魔化して『召喚システムが異常で、こう言う演技をしないと元に戻らない』って初めから説明しておけば、皆さんも少しは理解してくれたのではないでしょうか」

そう、学園長の“あの”説明に違和感が。主にゆーさんにとっては試召戦争の開始期間をこれ以上延ばされては困るはず。文さんのことをぼかして説明さえすれば、渋々でも協力してくれたはずではないでしょうか……?

「……さて、どうだろうね」
「と言うかですね。わざわざアキさんたちの前で『アタシが考えた脚本通りに動きな』とか『これは宣伝の為さね』とか———そう説明する必要はなかったですよね?何でアキさんたちを挑発するような言い方をしたんですか?」

これではまるで、学園長が大元の原因だって思われちゃいますよね。何でまたあんな風に自分が不利になるような説明をしたんでしょうか?ちゃんと説明すれば試召戦争を望んでいるゆーさんたちの事、わかってくれると思うんですが。そう尋ねると、学園長は拗ねたような顔をします。

番外編:ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜その③ ( No.151 )
日時: 2015/10/11 00:48
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)

「……特に理由なんてないさね。宣伝にもってこいだって思ったのは事実だからね」
「むー……本当にそれだけですか?まだ何かあるんじゃないですか?」
「…………ちっ、ホントアンタは無駄に勘は良いようだねぇ。まあ、《文》が折角アンタ以外のものに興味を持ったことは良い傾向だと思って、ギリギリまでやらせてやろうとも思っただけさ。ただの気まぐれだよ」
「……ふむふむなるほど、それで学園長の本音は?」
「…………まあ、アレだ。アタシは《文》を創った張本人だからね。言うなれば年取ったあの子の親なのさ」

そう渋い顔で言いながら、何やら気恥ずかしさを隠すかのようにノートPCのキーボードを力強くカタカタと叩く学園長。そして———

「……親はね、子の尻拭いをするものさ。あの子———文の責任はアタシの責任。ってことはこの問題はアタシに責任があるのさね」
「…………あ」
「そもそも、今回演劇部の連中に無理言って悪いことしちまったのはわかっているからね。アタシを悪者扱いして気が済むなら、それで良いのさ」

……なるほど。何だか妙なくらいあの脚本に拘るのも、わざわざアキさんたちを挑発するように説明したのも……文さんを庇ってたってっことですか。口では“じゃじゃ馬娘”とか“イカレシステム”とか言っているわりに、学園長って文さんの事を何だかんだで可愛がっているんですね。普段の言動がちょっぴりアレな分、少しホッとしました。

「……学園長はホントに不器用ですねー♪文さんが怒られないように自分が罪を被るんですか?」
「はっ!やかましいよ。どうせ他の連中には文に関する話を出来るわけないだろうが。だから文にはその分、アタシがこれでもかって言うくらい説教させてやるからね……てか、アイツらにこの事絶対に喋んじゃないよ月野。調子に乗るだろうからね」

そう言って作業に戻る学園長。……ふふっ♪本当に不器用ですよね。“アタシがこれでもかって言うくらい説教する”って事は、“アンタは文に説教しなくていい”って事の裏返しじゃないですか。本当に……不器用な方です。

「ほら、何をニヤニヤ笑っているのかしらんが、さっさと手伝いな。時間が無いんだろうが」
「ふふっ♪はいです学園長。…………(ボソッ)文さんを庇ってくださって、ありがとうございます」
「…………ふん」


———三十分後———


「何とか、やってみたぞい……」

「「「「「「ほ、本当に三十分で何とかなった……!?」」」」」」

「ほー?やはり流石と言うべきかねぇ?」

若干疲れた顔をしつつも、ヒデさんは宣言通り三十分で脚本を書き直してくれました。先程のちょっとごちゃごちゃし過ぎててどう言う内容かすらわからなかった物語が———正式な脚本として生まれ変わっています。

「とりあえず、元の脚本をワシの解釈で書き代えさせて貰った。ついでにワシの独断でお主らの配役・効果・背景その他を決めておる。今からお主らにそれぞれの台本を渡す。誰がどの配役かはそれに載っておるからの」

そう言いつつ、いつの間に用意していたのか各自の台本を全員に配るヒデさん。三十分でここまで出来るとは、ヒデさんってホント凄いですね……

「これから一時間はこの物語の流れと台詞の確認じゃ。いくら台本を使ってよい劇とは言え、多少は台詞を覚えてもらわぬと困るからの。その後一度召喚獣を出して演技を実際にやりつつ動きや効果の調整を一時間で行い、最後に仕上げを一時間で終わらせるからの」

かなり厳しい状況なのに……いえ、この厳しい状況だからこそですか?ホントにヒデさん輝いています。優姉さんがこの場にいたら、きっと双子の弟の成長を喜んでくれるでしょうね。

そんなヒデさんに感心しつつ台本を開きます。さてさて、自分はどの役何でしょうかね?カッコイイ役やれたらいいなと淡い期待を抱きつつ台本に目を落とすと…………あれ?



———キャスト———

王子  :木下秀吉
ライオン:坂本雄二
カカシ :吉井明久
ロボット:ムッツリーニ(土屋康太)
眠り姫 :月野造
良き魔法使い+ナレーション(前半部):姫路瑞希
お城の女騎士+ナレーション(後半部):島田美波



…………姫?自分の役は……眠り……姫?えっと、これツッコんでいいのでしょうか?

「……え、えっとヒデさん?お聞きしたいことがあるのですが」
「……造が言いたい事は物凄くわかる。“何で自分が姫なのか?”じゃろう?ワシも悪いと思って配役を変えたかったのじゃが———学園長曰く、それだけは譲れんらしくての」
「学園長が……?」

気になってちらっと学園長の方を見ると、無言で顎をしゃくって文さんの方を指します。指を指された文さんは……何かを期待したような目で自分を見つめています。そう、具体的には———

《ツクルの お姫様 見てみたい!》

と、言わんばかりの目でね……な、なるほど?文さんの希望で……そうなったんです、か……何でまた自分、姫の役なんかを……

「まあ、じゃがワシはこれで良いと思っておるぞい」
「……へ?な、何でですかヒデさんっ!?」

そんなっ!?ま、まさかヒデさんまで自分の事を女の子か何かと……!?

「これこれ、勘違いするでない。造は明久たちと違って召喚獣として出なくてはならぬじゃろうが」
「は、はい。そうなりますね」
「そうなると台本無しで演技せねばならぬじゃろうて。その点その役なら動きや台詞も少なくて良いし、出てくるのは後半じゃ。その間に台詞を覚えられるじゃろう?」
「あ、あぁ……なるほど、そう言う事ですか」

そう、皆さんと違い自分だけは自身が召喚獣に成るせいで台本を本番では読めない、ある意味普通の(?)お芝居をしなければなりません。そうか、ヒデさんちゃんと自分の事を気にかけてくれてたんですね。カッコイイ役を貰えなかったのはちょっぴり残念ですが正直助かりますよ。

「皆もある程度、それぞれ合った役柄をワシの一存で選ばせて貰ったのじゃが……他に異論はないかの?今の内になるべく意見を聞かせて欲しいのじゃが」

「「「「「「だ、大丈夫っ(ですよっ)!(……と言うか、これ以上反論する余地も付け足す事も何も無いし)」」」」」」

……本当に、よくもまあこんな短時間で脚本を書き直し、配役を決めて、演出を仕上げられましたねよね……ヒデさんの頼もしすぎる姿に、自分も皆さんも思わず恐縮してしまいます。

その皆さんの反応にヒデさんは頷いて、大きく息を吸い込み———

「よしっ!動きや演技でわからぬ事はワシが答える。遠慮せずに言うて欲しい。……本来部員でないお主らにここまでやらせるのは忍びないが———ワシにどうか力を貸してくれっ!では、お主ら!頼んだぞい!」

「「「「「「おうよ(です)っ!」」」」」」

ヒデさんの鼓舞で全員力が入ります。まずはそれぞれがどう演技すればよいかを考えながら台本を読み始めました。さてさて、演劇開始まで三時間を切っていますが、一体どんな劇になるのやら?期待半分、不安半分ですかね。

「……ま、頑張りな」
《文 劇見れて 嬉しい♪ ミンナ 頑張って ネー!》

……ある意味原因の二人は、楽しそうで何よりですが……