二次創作小説(紙ほか)

番外編:ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜その⑦ ( No.167 )
日時: 2015/10/23 21:06
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)

———舞台:いばらのお城———


【それぞれ望んでいるものを手に入れる為に鬼ヶ島まで向かう王子さまたちは、いばらに囲まれたお城でそれはそれは可愛らしい寝顔で眠っている小さな小さなお姫さまと出会います】

《すー……すー……》

「「「「おぉ……なんて人形のように小さくて愛らしいお姫さま何だろう!」」」」

【この眠り姫の可愛らしさに一目で惚れてしまいそんな事を言う四人。カカシやロボットやライオン、そして王子さままでもがまるで中の人のようにハァハァと息を荒くしてそんな事を言う始末です】

「「「「《(……中の人って……?)》」」」」

造はともかく中に人などいないのだが……それは置いておくとして、舞台はいばらの城の中の部屋。その部屋の中央に大きなフカフカのベットの上で、綺麗なドレスを身に纏いスヤスヤと眠る姫———もとい今回のキーキャラクターである造の姿が。確かに見た目はかなり可愛らしいようで観客の反応も上々のようだ。

『お姫さまカワイイ!王子さまと同じくらい!』
『ホントだ!お姫さまキレーでかわいいー♪』
『……ペットにしたい』
『あれれ?あれって召喚獣のお姉ちゃんですよね……?……うーん、この前は“自分は男ですからね?”って言ってましたけど———やっぱりお姉ちゃんで合ってたんですね!』

『『『…………(ボソッ)ホント、可愛いな……』』』

『『『ふふっ♪ええ、ホントに可愛いですね。ですが……アナタ?今日帰ったら少しお話があります』』』

『『『何でもございませんです、はいっ!?』』』

……と言うより———造が登場した事に観客の反応が上々過ぎて、ちょっとばかり観客席が荒れた(?)と言った方が正しいのかもしれない。この観客たちに演じている造と秀吉が男であると話をしたとして、一体何人に信じて貰えるのやら?まあそれはさておき、演劇に戻る事にしよう。

【さて、そんな可愛らしいお姫さまですが……このお姫さまは王子さまたちの呼びかけにもちっとも気づかずにぐっすりと眠っています】

「このお姫さま、全然起きないね。大丈夫なのかな?」
「うーん、どうだろう?……病気じゃないよね?」
「いや、一応息はしているし単に眠っているだけなんじゃねえのか?」
「…………調べてみる?(カシャカシャ)」

「「「とりあえず、カメラを置いてから喋ろうかエロボット」」」

「…………すまん」

【お姫さまを案じた四人は何とか起こそうとしますが、カカシが藁でくすぐっても———】


こちょこちょこちょ ←明久もといカカシが造をくすぐる音


《(く、くすぐったいっ……で、でも我慢ガマン……っ!)》

【ロボットがお姫さまを一生懸命揺すっても———】


ガクンガクンガクン ←康太もといロボットが造を揺する音


《(あわわわわ……こ、こーさん揺すり過ぎです、目が回る……頭揺れる……)》

【ライオンが耳元で力強く吠えても———】


ウゥオオオオオオン ←雄二もといライオンの造の耳元で発する遠吠え


《(耳が、耳がああああああああああ!?)》

……おわかりであるとは思うが、舞台の上で眠っているだけに見える造も実はあの舞台の中では一番に頑張って演技をしていた。何しろ本人が召喚獣になっている為それはそれは色んな意味でボロボロである。つまり———

明久のくすぐりも康太の揺さぶりも、そして雄二の遠吠えもダメージが直接本人に来るためそれはもう散々なわけで。それでも顔に出さずに“眠っている演技”をしつつ、必死で耐えているところは見事と言えば見事であるだろうが。

【それでもやっぱりお姫さまは全く動じずに、安らかな寝顔でぐっすりと眠っています。鬼ヶ島を目の前にして眠り姫を起こす方法が見つからず、王子さまたちは困り果ててしまいました】

「ダメだ……全然起きないね」
「…………オレたちじゃ力不足」
「こりゃ普通の方法じゃ無理そうだな。どうすんだ王子?」
「うーん……困ったね。このお姫さまが眠っている理由が分かれば起こす方法も分かるかもしれないんだけどなぁ……」

と、腕を組んで考え込む王子。するとどうした事か観客席のとある小学生が王子である秀吉の召喚獣に向かって、

『えー!ここはやっぱり王子さまのキスでしょ!』

「「「「《…………は?》」」」」

番外編:ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜その⑦ ( No.168 )
日時: 2015/10/23 20:55
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)

とんでもない爆弾発言を投下したからさあ大変。その発言はみるみるうちに広がって———

『そうだよね!眠り姫って確か王子さまのキスで目を覚ますんだよね!』
『白雪姫もそんな感じだったし……王子さまがいるならやっぱりキスじゃない?』
『キース!キース!キース♪』

と、まあこんな具合に、気が付けば観客席の小学生が王子である秀吉の召喚獣に向かって全員キスコール。明久に美波に瑞希、康太に雄二に造はそんな小学生たちのこの反応に、

「「「「《(……さ、最近の小学生って強い……)》」」」」

物凄く慄き戸惑いながら冷や汗を掻く始末。次の展開はキスなんて入っていない為、舞台に上がっている明久たちやナレーターの美波もこの状況をどうするのかチラリと秀吉を見る。が、そんな秀吉はと言うと一人冷静に———

「いやいや。睦月小学校のみんな、僕は絶対にそんな事はしないよ」

『『『えー!どうしてー!』』』

「それはね……眠っている女の子に無理やりキスするなんて、王子さま失格だからだよ。男の子のみんな、間違ってもそんな大人にはなっちゃダメだからねー!王子さまとの約束だよー!いいねー?」

「「「《(か、返しが上手い……!)》」」」

『そっかー!無理やりはいけないんだねー』
『んー?でもうちのおとーさんって、時々夜寝ているおかーさんにチューするよー?』
『あ、それぼくのうちもそうだよ?』
『うちもうちもー!』

『『『ちょっと!?なんて事言うんだい!?』』』

『『『……あ、アナタ?』』』

『『『え!?い、いや……そのぅ……』』』

「……コホン。それはね、みんなのお父さんとお母さんが仲が良いって証拠だからだよ。それも色んな意味で大人になればわかると思うからねー」

———こんな具合に見事に大人な対応を。観客席の保護者の皆さまへのフォローも忘れないあたり、演劇中の秀吉には誰も敵わないのかもしれない。

【え、えっと……と、とにかく姫を起こす方法がわからずに、困り果てた王子さまたち。と、そんな時誰かがいばらのお城に入ってくる音が聞こえてくるではありませんか!】

何とか気を取り直した美波のナレーションと共に、眠り姫が眠る部屋の扉をバンッ!と開ける人影が。慌てて王子たちはそれぞれの武器を構える事に。

「むむむ、この城に入ってくるとは……一体何者だ!」
「それはこっちの台詞です!あなたたち、一体何者ですかっ!私の大事なお友達の眠り姫ちゃんに何をする気ですか!?」

「「「「……え?」」」」

「私が折角悪い人たちから眠り姫ちゃんを守ろうといばらさんでお城を囲っていたのに、何でそのいばらさんを根こそぎやっつけちゃうんですか!?悪い人たちなら容赦しませんよ!」

そう言って颯爽と現れたのは、薄紫色のローブを身に纏い杖を構える魔法使い———瑞希の召喚獣だ。これでようやくメンバー全員が登場した事になる。

【ここで現れたのは素晴らしい力を持つとても良き魔法使いでした。何でもこの良き魔法使いは呪いにより眠り続ける眠り姫のお友達で、眠り姫を悪い人たちから守る為にお城にいばらを囲ったと言います】

番外編:ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜その⑦ ( No.169 )
日時: 2015/10/23 21:09
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)

「なるほど……それは悪かったね。実は僕らは鬼ヶ島へ行く途中だったんだよ」
「え!?お、鬼ヶ島にですか!?それはまたどうして……?」
「僕らは欲しいものがあるからね。それで最後にここに辿り着いたんだけど」
「このいばらがボクたちを通さなかったから、とりあえず取っ払う事にしたんだよ」
「…………そうしたらこの城で」
「この眠りっぱなしのお姫さんに会ったってわけだな」

王子たちが魔法使いにそうやって説明すると、その魔法使いはしばらく考え込むように手を顎に当ててから、何か決意したように王子たちを見据える。そして———

「いばらさんたちを軽々とやっつけたあなたたちの力を見込んで頼みがあります。鬼ヶ島へ向かわれるのでしたら……どうかこの眠り姫ちゃんも連れて行ってあげてくれませんか?」

「「「「……眠り姫も?それまたどうして?」」」」

「実はこの子……悪い鬼に呪われて、眠り続けていると聞きます。皆さんが鬼ヶ島へ行くならば、この子も連れて行ってどうかこの子の呪いを解いてはくれませんか?お願いします」

【そう言って頭を下げてお願いする良き魔法使い。そして勿論、そんな魔法使いの一生懸命なお願いを聞かないような四人ではありません】

「勿論だとも!この眠り姫の呪い、僕らが必ず解いてみせるよ!」

「「「おうっ!」」」

【その頼もしい言葉を聞いた良き魔法使いは、花が咲いたような笑顔を浮かべて———】

「ありがとうございます!それでは……折角なので私がみなさんをレベルアップさせる魔法のきび団子(自家製)を差し上げましょうっ!」

「「「「《…………What?》」」」」

「いきますよー!ラブリーピンキープルル——ン♪」

【そう言って良き魔法使いが杖を持ち呪文を唱えると……魔法のきび団子がポンッ!と何処からともなく現れます】

「さぁ、これさえ食べれば皆さんたちまちレベルアップ!ついでに鬼ヶ島までひとっ飛びです。えへへ♪」






「「「「《(……あの世までひとっ飛びってオチじゃないよね?)》」」」」

瑞希の召喚獣から誕生したきび団子なだけあって、いつもの姫路瑞希の殺人料理被害者の会のメンバー全員少々引いている模様。特にフィードバックがあり、更に常日頃から瑞希の殺人料理を食べている明久はこの後の展開を予測しているかのように捨てられた子犬のように震えている始末。

「「「「わー!なんておいしそうなんだろうー(棒)」」」」

【(アキに皆……だ、大丈夫よね?流石に召喚獣が作ったもの食べるわけだし……?)えっと、王子さまとライオンとカカシとロボットはそれはそれはおいしそうにきび団子を頬張りました】

とりあえず、次の演目もある以上さっさと食べなければならない四人は、意を決してソレを食べる事に。

《(み、皆さん大丈夫ですよね……?姫路さんの召喚獣から生まれた惨物———もとい産物とは言え、流石に命を刈られるなんてことは……)》
「あ、それから眠り姫ちゃんも食べましょうねー♪」
《……っ!?(何故に!?)》

そしてどう言うわけか眠り姫である造にも、その魔法のきび団子を食べさせようとする魔法使い。眠り姫に無理やり———コホン、優しく口を開けさせて魔法使いはきび団子を一つほおりこむ。そして……

「「「「《(パクッ! ゴクン)…………っ!?ぎゃあああああああああああああああ!?》」」」」

…………何故か演出には無かったが舞台に夜空が浮かび上がり、星が五つばかり流れる。それはまるで五つの尊くも儚い命が流れるかの如く。


〜舞台暗転:次の場面〜


———舞台:鬼ヶ島———


【こ、こうして魔法使いの力でレベルアップしたライオンとカカシとロボット、それに王子さまに眠り姫は……全員魔法使いの言った通り鬼ヶ島までひとっ飛びで辿り着きました】

そう、美波の言った通り現在背景は禍々しい鬼ヶ島へと変わっている。そして瑞希の召喚獣の特製きび団子を食べた五人はと言うと———

「…………ゴホッ」

ライオンは魂が抜けかけ、白目になって泡を吹いて気絶して、

「…………ウグゥ」

カカシは魂が抜けかけ、身体を支えていた竿も無残に折れてうつ伏せに倒れており、

「…………グググ」

ロボットは魂が抜けかけ、ネジや中の部品が飛び出てショート寸前になり、

「《…………キュゥ》」

そして王子と眠り姫は魂が抜けかけ、お互いに寄り添うように安らかに眠るように倒れていた。そうそう、ついでに恐らく皆様予想通りであるだろうが、

「《…………(チーン)》」

「お、おい!?明久しっかりしろ!?目ぇ開けやがれこのバカ!?オイィ!?」
「あ、アキっ!?ま、まさかこれって……瑞希の召喚獣が生成したきび団子を食べた事によるフィードバック!?」
「…………おい、あれ造もリアルに倒れてないか!?」
「な、なんて威力なのじゃ!?造、気をしっかり持つのじゃぞ……!」

明久と造はフィードバックにより、二人で召喚獣共々本当に魂が抜けかけていたそうな。流石は瑞希が召喚した召喚獣の創ったきび団子。召喚者に似て対召喚獣用の最凶最悪の化学兵器を創りだしてしまったようだ。

【と、とりあえずようやく念願の鬼ヶ島へと辿り着いた王子さま一行。四人は眠っている眠り姫を連れて、鬼ヶ島の中へと入っていきます】

現在約二名が生死の境を彷徨ってはいるが、こうしてようやく物語も終盤を迎える事に。さてさて、これから一体何が待っているのか。と言うより、造&明久は色んな意味で大丈夫なのやら……?

「《…………あ、迎えに来た天使が見える……》」

「「「「ちょっと!?本当に二人とも大丈夫なの!?」」」」

「???明久君に月野君、どうかしたんですか?」