二次創作小説(紙ほか)
- 番外編:ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜その⑩ ( No.176 )
- 日時: 2015/11/03 20:52
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
眠り姫の造が舞台に現れた瞬間、その場にいた王子も鬼の親分もカカシたちも観客の全員でさえこの時は皆、心は一つであったと後に語られる。
『『『『眠り姫が……勝手に起きた!?』』』』
まあ、全員そう思うのも無理はなく。そもそも眠り姫が勝手に起きてその上鬼の一撃を受け止めるなど、原作の眠り姫も驚いて目を覚ますレベルのビックリシチュエーションである。
《そんなっ ドウシテ 起きてるの!? ワタシが 眠り姫に かけた 呪いは カンペキの ハズ!? ソレ 以上に フツウ 素手で 剣を トメル!?》
「ね、眠り姫?えっと……これはその、一体どう言う事ですか?」
《ふふっ、申し訳ございません王子さま。その話は後ほど。———それよりそこの鬼。聞こえませんでしたか?早く剣を収めなさい》
【そんな鬼の親分や王子さまの疑問もお構いなしに、眠り姫は今目覚めた事が信じられないほど凛とした態度でそう告げます。その眠り姫の雰囲気に呑まれたのか、先程まであれだけ大暴れしていた鬼の親分も睨まれただけで怯んでしまう有様です】
と、そんなナレーションが入る通り実際この眠り姫、いや造自身も相当覇気や怒気が在るように見える。それもそのはず、一応は文のやりたいようにやらせてはいる造であるがあれだけ好き勝手暴れた文に怒っていないはずもなく、
《(エット … … … ツクル 何か チョット ホントに 怖い ヨー? もしかして ホントに 本気デ 怒って ナーイ?)》
《(……ふふっ、そんなことないですよ?これは演技デス♪自分が文さんに怒っているワケないじゃナイデスカ?ちょっと暴れ過ぎだなって思って折檻しようカナ♪って思っているくらいデスヨ?)》
《(… … … アレー? ヒョット して 文 ヤバイ?)》
そんな会話が一瞬造と文の間で行われたとか行われなかったとか?小声での会話だった為二人以外はどう言う内容だったかはわからないそうだが。
《エット … … … ソ ソンナに 睨んでも コワクない ヨー! そもそも 武器も ナイノニ どーする ノー?》
《ほう……?中々良い根性ですね。あくまで剣は引かないって事ですか》
《コウ なったら もう一度 眠り姫には 眠って モラウ ヨー! カクゴー!》
「っ!眠り姫、危ないっ!」
【再び鬼の親分はその大剣を振りかぶって王子さまと眠り姫を狙います。慌てて王子さまが立ちあがって眠り姫を庇おうとしますが、時すでに遅く———】
《ッセイッ!》
「……え?」
《… … … アレ?》
パキン!
「《…………折った!?》」
【———王子さまと眠り姫を襲うはずの鬼の親分の大剣は、何と眠り姫がまるで爪楊枝を折るかの如く片手で簡単に折ってしまいました。これは王子さまや鬼の親分とて予想していなかったようで目を丸くしてしまいます】
『さ、最近のお姫様は随分強いんだな』
『待て。ありゃそう言うレベルじゃねぇだろ』
『鬼より強い姫さんか。胸が熱くなるな』
『もう姫一人でいいんじゃないのこれ?』
王子や鬼の親分どころか観客の皆さま方も全く同じ反応のようである。そもそも何処の世界にそんな芸当のできる眠り姫がいるのであろうか?
『あ、あれ?剣が……簡単に折れちゃった』
『スゲー!眠り姫さまつえー!?』
『姫さまカッコいい!』
『姫さまー!頑張れ—!』
そして安心のこのブレない小学生ズである。この町の子供たちは今日も色んな意味で逞しい。
【武器を失ってしまった鬼の親分は、もうなすすべが無くただただ後を引きずるのみです。そんな鬼の親分に眠り姫はゆっくりと近づきます】
《……人を勝手に眠らせたあげく、各地の村々を襲い人々を苦しめたその悪行。私が貴女を罰します。では改めて———覚悟は良いですね(良いですよね、文さん♪)》
「ね、眠り姫……?正直鬼より怖いのですが」
《ひぅ!? … … … コホン で、デモ キミも 武器が ないのに どうする ノー?》
《だったら……愛の一撃(物理)を叩きこむまでdeath(デス)☆大丈夫です、痛いのはちょっとだけですからね〜》
そんな一言を放ちつつ観客の皆様方にこめかみに青筋を立てているのを見せないように後ろを向いたまま、眠り姫の造は右手を力強く握りしめて……
《い い 加 減 反 省 し な さ い っ!》
《(ゴンッ!)きゃう!?》
【眠り姫の(中の人の心情も含まれた)怒りの拳骨一撃が、鬼の親分の頭に直撃しその自慢の角を叩き折ってしまいました。するとどうしたことでしょう。角が折れた瞬間、鬼の親分の姿が人間の姿へと変わっていきます。それどころか先程カカシ達が倒した鬼たちも人間へと変わっていくではありませんか!】
- 番外編:ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜その⑩ ( No.177 )
- 日時: 2015/11/03 20:53
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
それと同時に禍々しい鬼ヶ島の背景が徐々に変わってゆき、緑豊かな平和そうな島へと元に戻っていく。もう何が何だかわからない王子も復活したカカシ達もポカンとした様子でこれをただ眺めるほかないようだ。
「鬼たちが……人間に変わった?」
「しかも鬼ヶ島まで何か変わってない!?」
「…………どう言うことだ?」
「こりゃ何か事情がありそうだな。そうだろ、居眠り嬢ちゃん?」
そう言ってこれがどう言う事なのか説明して貰うように眠り姫に詰め寄る王子たち一行。
《……はい。それはですね———》
「申し訳ございません。王女———王子さま。その説明は、」
「私たちにもさせてください!」
「「「「え?」」」」
【と、そこにすかさず眠り姫を庇うかのように現れたのは……王子さまを旅に出るように促したお城の女騎士と王子さまたちを眠り姫共々鬼ヶ島まで送りだした良き魔法使いの二人でした】
〜舞台暗転:次の場面〜
———舞台:お城———
久々に暗転し、鬼ヶ島の背景が書き変えられ映り出されたのは一番初めの王子さまのいた国の城。
【説明を女騎士たちに聞くため、再び良き魔法使いの特製きび団子(自家製)の力によりデ●ルーラー———もといテレポートした王子さまたち。ここは旅の始まりの場所、王子さまの住んでいた国のお城です】
「って、あら?皆さんどうしてぐったりしているんですか?」
「「「「「《……何でも、ないデス》」」」」」
ちなみに例の如くきび団子(殺)でフラフラな召喚獣たち(+明久&造)。一応演劇に差し支えは無さそうなので、気合でそのまま演技する。
「そ、それで?一体どういう事なの。何で眠り姫が自分から起きたり女騎士や良き魔法使いまで現れるの?」
「それにあの鬼や鬼ヶ島ってどうなってたのさ?」
《その事ですが……先に謝らせて下さい。申し訳ございませんでした皆さん》
「今まで黙っていて、本当にすみません王女———じゃなくて王子」
「カカシさんたちもゴメンなさいです」
【そう言って眠り姫と女騎士、良き魔法使いの3人は事の顛末を順を追って話し始めます。彼女たちが言うにはあの島は元々平和な島だったのですが、突然悪い魔法使いの呪いを島ごと受けて以来島の住人は鬼へと変わり果ててしまったとの事です】
ちなみに造演じる眠り姫は女騎士や良き魔法使いの友人で実は戦姫という設定らしい。実力の程はあの鬼との闘い(一方的な殴り合いとも言う)から分かる通り、王子さまの国一番の腕を持つ女騎士とも渡り合える唯一の存在だとか。道理で強いはずである。
《その悪い魔法使い自体は私が退治したのですが……私も悪い魔法使いとの闘いである呪いをかけられたのです》
「ある呪い?それって一体?」
「眠り姫の呪いと言えば、言葉通りの意味ですよ。悪い魔法使いの呪いが解けるまでずっと眠ったままになる呪いです」
そう女騎士が説明すると王子は少し考えた後、首を傾げてこう尋ねる。
「ならどうやってその呪いを解いたのですか?鬼を倒してもいないのに途中から眠り姫の呪いは解けてたようでしたが?」
《それは簡単です。この呪いの解き方は“私を連れて呪われた場所へと赴き、真の勇気を示す事”でしたから。王子さまが私を鬼ヶ島まで連れていってくれなければ、あの島も鬼となった人々も救われなかったでしょうね。勿論私もあのままずっと眠ったままでしたし》
「眠り姫ちゃんは待っていたんですよ。王子さまのような立派な方が自分を目覚めさせてくれる時を」
「私は王子さまにならきっとそれが出来ると信じていました。強くなられましたね王子」
そう言って改めて王子に頭を下げてお礼を言う眠り姫たち。そんな3人を不満げに睨みながらライオンが口を開く。
「ちょっと待て……って事は何か?ひょっとして鬼ヶ島にいけば望みのもんを何でも手に入れられるって言う話はアンタらの嘘か?王女のお供に俺たちを使う為に」
「ええ。その嘘は私がね。この話を聞いたら貴方たちなら絶対に王子さまについていくでしょ?」
【そんな女騎士の話しを聞くと、王子さまもカカシ達もがっかりとした表情を浮かべます。そう、何せ旅の目的の一つである4人の求めていたものは手に入らないと知ってしまったからです】
「そんなぁ……それじゃあ、ひょっとしてボクが欲しい知恵は手に入らないって事?」
「…………騙された」
「くたびれ儲けか……」
「それに……僕も結局鬼を倒せなかったし。王子さま失格かなぁ、情けないよ」
【そんな不貞腐れた彼らに、眠り姫たちはふふっと笑ってこんな事を語ってきました】
《そうですね。確かに鬼ヶ島にはそんなものはありませんでした。ですが王子さまたち。貴方たちはこの旅路の果てにすでに“それ”を手に入れているんですよ?》
「「「「……え?」」」」
「そうね。例えばカカシは知恵を欲していたようだけど、貴方はこの旅の途中で様々な知識を得て自ら考えて動いていたのでしょう?」
「え?……そ、そうなのかな?(あれ?そんな事あったっけ?)」
「ロボットさんとライオンさんもです。ロボットさんはこの旅で相手を思いやる心が芽生えませんでしたか?ライオンさんはあのお姫様に告白するくらいの勇気を持って鬼と闘いませんでしたか?」
「「…………あ、ああ。(別にそう言うのは無かったような?)」」
「「ありましたよね?……ね?」」←特製きび団子をチラリと見せながら
「「「ありましたっ!」」」
【そう、この鬼ヶ島までの旅の途中で、すでにカカシ達は自分たちが望んでいたものを手に入れていたのでした。その事に気がついた三人は嬉しさのあまり歓喜の涙を流します】
涙を流す本当の理由はきび団子の恐怖でだが。
- 番外編:ワシと自分と演劇と〜演目はバカテス童話!?〜その⑩ ( No.178 )
- 日時: 2015/11/03 21:57
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
《えっと、コホン。そして最後に王子さま。貴方のお陰で私は永い眠りから目を覚ます事が出来ました》
「え……?で、でも僕は結局鬼も倒せずに貴女に助けられたんですよ?そんな僕は王子にふさわしくは———」
と、眠り姫はそれ以上の言葉を王子に言わせないように首を振って続ける。
《貴方は立派な王子さまです。貴方は鬼に敵わないとわかっても勇敢に立ち向かって来てくれましたよね?眠り続ける私を庇ってくれましたよね?》
「それはそうですが……」
《鬼を倒す事自体は問題ではないのですよ。貴方のその勇気は何より貴方が王子足る器である証拠なのです。でなければ私が目覚めることは無かったわけですし♪胸を張ってください王子さま》
「眠り姫……は、はい!」
【……こうして、カカシは(悪)知恵を。ロボットは(自重する)心を。ライオンは(告白する)勇気を。そして王子さまは王子さまである証明を無事に得ることが出来ました。それからと言うもの———】
「それじゃあライオンさんはあのお姫さまに告白して来て下さいねー♪」
「え!?ちょ、ちょっと待て魔法使い!?お前何勝手に……」
「あ、安心してくださいっ♪また私の素敵な魔法(きび団子)ですぐにお姫さまの国へ飛ばしてあげますから!」
「なにするやめ———ぎゃあああああああああ!?」
【あのヘタレだったライオンはお姫さまに告白すべく一人また旅立ったそうです。風の噂では無事に結婚までしたとか】
「ほーらカカシ。知恵をもっと付けたいならちゃんと勉強しないと、ね♪」
「えっ、女騎士何言ってんの?そんなことよりボク、ゲームとかしたいんだけど」
「遠慮しないでください!ホラ!参考書いっぱい買ってきましたし、ちゃんとやりましょうねー!」
「よ、良き魔法使いまで!?」
「安心しなさいカカシ、私たち二人がちゃーんと女心のわかる賢くてカッコイイカカシに育ててあげるわ」
「文武両道の素敵なカカシさんにしてあげるので頑張りましょうね!」
「こ、ここは地獄なの!?い、嫌だ!遊ばせてよぅ!?」
【脳がなかったカカシはもっと勉強すべく女騎士や良き魔法使いの元、王子さまのお城で日々参考書と闘う毎日だとか】
「ああ、それからそこのロボット。アンタ自重する心を覚えたのよね?」
「…………は?」
「だったらこのカメラいりませんよねー?没収ですね」
「…………っ!?(ブンブンブン)」
「それとアンタって行く当て無いんでしょ?お城で働かせてあげるから感謝しなさいな」
「まずはお城のお掃除をお願いしますねー」
「…………それ唯のパシリ……!?」
【ついに自重する心を身につけたロボットは、その愛用のカメラを預けて真っ当なロボットとしてお城でパシリ———お手伝いするようになったとか。三人の王子さまの従者は今日も幸せそうです】
「「「待った!?こ、これなら旅したり鬼どもと戦っている方がまだマシじゃないか!?」」」
「……ねえ、眠り姫?幸せって何だろうね?カカシくん達大変だなぁ」
《あ、あはは……まあ、楽しそうですしこれもこれで良いのではないでしょうか?》
「あーうん。そうだよね?」
《ええ。きっとそうですよ♪》
【そして……王子さまと眠り姫の二人は時々眠り姫が王子さまに稽古をつけながら、ずっと仲良く暮らしていったとか?これも一つのめでたしめでたし】
ナレーションが終わると同時に、ゆっくりと舞台からスポットライトの光も立体映像の背景も、そして召喚獣たちも消えてゆく。これで長かったバカテス童話も何とか終幕となる。さてさて、観客の反応はと言うと———
造Side
……さて、あのハチャメチャな演劇(?)のその後の事を少しだけ語っておきましょう。
『けっこうおもしろかったねー』
『動きまくってたし、なんかしんせんだったよね』
『あの動いてた人形さん可愛かったしね♪』
『眠り姫さまかわいくてかっこよかったー!』
結果的に言えばあのトンデモ脚本の演劇は睦月小の子供たちや観客の皆さんを奇跡的に……そう、本当に奇跡的に大いに楽しませ、葉月さんの小学校の創立記念セレモニーは大成功となったそうです。ちなみにどなた知りませんが、この演劇を録画していた方々がダビングして睦月小学校の各家庭に無料で提供した、なんて噂も流れたのですが……さ、流石にただの噂話ですよね?
『くくくっ!いやはやイイもん撮れたな優子っち———もとい弟子一号!』←主犯
『ええ師匠!秀吉———もとい我が弟の晴れ舞台ってことでこっそりスタンバっていましたが……まさか造くんまで出演した上にこんなにイイ絵が取れるなんて最高ですね!』←共犯
———何でしょう?何かすっごい嫌な悪寒がしたような……?こ、コホン。それはともかく今考えても、よくあのシナリオで何とかなったなって思いますよ。一歩間違えれば絶対抗議されるレベルでしたし。特に文さんのラストのアドリブと言う名の暴走は……何といいますかホントにノリと勢いオンリーで乗り切ったと言いますか……
「文……アンタはとりあえず今回の諸々の件を本当に反省するまでは月野と面会禁止、ついでにネットも禁止だよ!」
《えぇ!? ばーちゃん ヒドイ! イジワル!》
「やかましい!もう少しでとんでもない事に成りかけたってわかってんのかい!?」
《楽しかったし イイ ジャナイ ばーちゃんの ワカラズ ヤー!》
「分からず屋ぁ!?それをアンタに言われたくないよ!とにかくさっさと召喚獣の演劇仕様を元に戻しな!」
《… … … 戻したら ユルシテ くれるー?》
「良いからさっさとやりな!と言うか、まだ説教は終わってないよ!」
《むー! ケチー!》
案の定演劇終了後、文さんは学園長にこってり絞られたとか。まあ、今回は(今回も?)しっかり反省して貰いましょうかね。何事もやり過ぎはいけません。あ、一応無事に召喚獣の設定は元に戻ったそうです。良かった良かった。
「つーかこれで設定戻らずにもう一回やれ。なんて言われたらマジでババァぶちのめすからな……」
「…………疲れた」
「だよね……普通の演劇ならともかくこの召喚獣の人形劇はこりごりだよ……」
「そう?ウチは結構楽しかったわ。感想聞いたけど葉月も喜んでたみたいだし」
「そうですね。初めての大舞台でしたけど私も良い経験が出来たと思います」
あ、それと本来行うはずだった『美女と野獣』の改変版の演劇は、演劇部の皆さんが回復した後日、再び睦月小で講演したとのこと。この演劇も大盛況であったことをお伝えしておきましょう。ああ、そうそう。演技・演技指導・脚本再編集・シナリオ設定・舞台監督———その全てをこなした今回のMVPのヒデさんですが……
「君は本当にセンスが良いね。一度私たちの舞台に遊びにおいでよ。色々と勉強になると思うよ」
「ほ、本当かの!?そ、それはありがたいのじゃ!」
「ふふっ、歓迎するよ」
同じく睦月小学校の生誕祭にいらしていた、とある有名な劇団のメンバーに気にいられたそうでそこから色々と縁が出来たとか。おまけにその方から週に一回文月に来て演劇の指導をやってくれると約束してくれたとかも。ヒデさんとても嬉しそうでしたね、ヒデさんが頑張った甲斐があったと言うもので何よりですよ。
ふふっ♪…………その劇団の有名な俳優に“木下秀吉”の名が加わるのは、ちょっとだけ未来(さき)のお話です。
……それから最後に。これは自分の事なんですが———
『あー!眠り姫さまだー!』
『姫さまー!きょうもごきげんうるわしく♪』
『姫ってさ、いつもきれいだよな……』
『うん……きれいだよね』
『姫さま笑ってー!』
「……“また”ですか」
「つ、造よ。そう気を落すでないぞ」
「うぅ、あれから一応自分は男だって説明したハズなんですが……」
…………あの演劇以来、近所を歩けば小学生の皆さんから眠り姫さまと呼ばれるようになりました。葉月さんから聞いた話だと、自分が睦月小のお姫さま兼皆のお姉さまになり始めたとか。ホントにどういうことなの……
「しかもどうして最後にちょっとだけ出た自分の役が、こんなにウケが良いんでしょうね……ヒデさんとかアキさんたちのほうがどう考えても頑張っていたでしょうに」
「いやいや、それは仕方あるまい。こういうのは最後のインパクトが大きいものの方が印象に残るからの。こやつらがお主をヒーローのように見るのは無理もない。しばらくは耐えるほか無いじゃろう。実際……その、中々にカッコよかったぞ造よ!」
「そう言っていただけると嬉しいんですが……と言っても役は眠り姫なんですよね自分……」
それでも慕ってくれるのは悪い事ではないと思いますし、ここは(引き攣った)笑顔で皆さんに応えます。ハァ……さてと、今日もまた大きな誤解とちょっぴり(?)過激な告白に対応する日々の始まりですかね。
『あ、あの!どうかオレのこの手紙受け取ってくださいっ!』
『ぼ、僕の手紙も受け取ってください!』
『あー!ぬけがけ禁止っ!眠り姫さま、むしろあたしを受け取ってくださいっ!』
『姫さま———いえ、姫姉さま……わたしのお姉さまになってくださいっ!』
『あたし……姫さま飼いたい』
「…………あ、あのね皆さん。何度も言いますが、あれは演技で自分は男の子なんですよ。だから———」
『『『『『姫さま!お願いします!』』』』』
「———だからせめて、せめて人前で姫さまって呼ぶのだけは勘弁してくださいぃ!?」