二次創作小説(紙ほか)
- 番外編:召喚実験シリーズ〜自分と本音と暴露大会〜その① ( No.179 )
- 日時: 2015/11/06 20:54
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
「……ふむ。これはまた……」
「学園長?どうかなさいましたか?」
ここは文月学園の長、藤堂カヲル学園長のいる学園長室。学園の運営や召喚システムの管理等を行う意外と(何が意外とだい!? By学園長)重要な場所である。
「ん?ああ西村先生。いやね……ちょいと試験召喚システムの操作系統を調整してたら、妙な事になってねぇ」
「……またですか。それで?妙なことと仰いますと?」
流石に西村先生はシステムの暴走に慣れているだけあって、半分呆れつつも冷静に学園長に尋ねる。
「ま、またとはどういう意味さね!?……コホン。いや、どう言うわけかシステムと《文》の意識と連動してしまってね」
「文……ああ、あの子の。それで?」
「召喚獣が半自動化しちまってるのさ。今までの設定がはっきりとした意識のみを読み取っていてとしたら、今回のはその一歩先の意識と無意識の間辺りも読み取って、ある程度自立的に行動出来るようになったってことだねぇ」
「意識と無意識の間……つまり前意識を読み取るということですか?それは確かに妙なことになってますね」
ちなみに前意識とは精神分析の用語のことで、その時は意識していないが思い出そうと思えば思い出すことのできる心の領域。意識と無意識の中間にあると言われている。
「まあ、フロイトの言う前意識とは少し意味合いが変わってくるけどね、だいたいそんな感じさ」
「そうですか。———それで?今度はどんな悪だくみをしているのですか?」
と、西村先生は持っていた資料をまとめつつ、学園長をジトっと睨む。
「……ひ、人聞きが悪いねぇ?別にアタシは実際に召喚獣を喚び出してデータを採りたいなんて思っちゃいないよ」
「(思っているな……)まあ、データ採取なら協力しましょうか」
「あー……いや。アンタの点数だと、試運転に使うには召喚獣が強すぎるからね。何かあったら困るんだよ。暴走的な意味でね」
何せ1桁の点数ですらゴリラ並みのパワーがあると言われる召喚獣。高得点の召喚獣が下手して暴走でもすればどれだけの被害が出るかは容易に想像できるだろう。
「ふむ……でしたら故意に一度低い点数を取りましょうか?」
「それでもいいんだけどねぇ。一度低い点を取って、後でまた点数を戻すためにもう一度試験を受け直すとなると、流石に面倒だろう?」
「そうでもないですが。まあ、効率が悪いと言う意味では確かに。それでしたら———」
『西村先生!大変です!またFクラスの連中が職員室で暴れています!』
『よ、吉井君に坂本君!?何で職員室に逃げ込むんですかっ!?』
『すみませんっ!こうでもしないとあの暴走戦士達から逃げられないんです!行くぞ雄二!』
『わかってる明久!そう言う事で悪いが職員室を通させて貰うぞ!』
『『『異端者共に死の鉄槌を!貴様ら、大人しく審問を受けろッ!』』』
「———すみません。ちょっと指導してきます」
ガチャ!パタン
『貴様らっ!何を暴れておるのだっ!全員とっ捕まえてやるから、覚悟しろ!』
『『『げっ!鉄人!?』』』
『『ちょ、ちょっと待て鉄人!僕(俺)らは被害者で———』』
『それは職員室で暴れておるお前らが言う台詞か!?いいから全員補習室行き決定だ!』
『『『嫌だぁあああああああああああああああああああああ!!!』』』
「———ふむ、そうさね。こういうのは最初から点数の低いバカ共にやらせた方が効率いいねぇ。それに……あのジャリガキの本音が聞けるのは、ちょうど良い機会かもしれないね」
造Side
「「「召喚獣の試運転?」」」
「ああ。そいつをアンタらにやってもらいたいのさ。今ちょいと面白いことになっていてねぇ」
あの体育祭兼召喚野球大会も無事に終わり、しばらく経ったある日の休日の出来事です。Fクラス特別補習(ああ、ちなみに霧島さんと優姉さんは自主登校ですが)が終わってから、体育祭の写真(いつ誰がどこで撮っていたのやら?)を皆さんで鑑賞していると、学園長が現れてそんなことを仰いました。それにしても……試運転ですか。
「(あの、学園長?もしかして文さんがまた何かしちゃいました……?)」
「(ん?ああ、今回は違うよ。文は何もしちゃいないさ。“文がシステムに”———と言うよりも、どちらかと言うと“システムが文に”影響されたようでね。どうも今回の召喚獣は無意識領域の一部を読み取っているようなんだが……コレはアタシが設定したわけじゃないんだよ。つまりシステム自体が文を通じて独自に進歩している証拠さね。だからこそホントの意味でデータを集めたくてねぇ)」
ちょっと小声で学園長に確認。良かった、取り越し苦労でしたね。まあ、体育祭や演劇の時にあれだけ叱ったんですし、そうそう文さんもトラブルを起こすわけではないですね。基本的にとても良い子ですし。
- 番外編:召喚実験シリーズ〜自分と本音と暴露大会〜その① ( No.180 )
- 日時: 2015/12/21 23:03
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
「えっと……どうしてウチら何ですか?」
と、島田さんが持っていた写真を片づけつつ学園長に尋ねます。言われてみれば確かにどうして自分たちに……?
「どうしてもなにもアンタらが適任だからさ。アンタらなら点数が高すぎず、召喚獣の扱いにも慣れているだろう?それに——」
「それに?」
「———職員室で暴れていた、どこぞのバカ共への罰になるからねぇ」
「「ちょっ!?待てババァ!だから僕(俺)らは被害者だ!」」
「あれだけ暴れておいて、被害者ズラすんじゃないよ!このバカコンビがっ!」
あはは……そう言えばアキさんとゆーさん、いつものようにFクラスの皆さんに追いかけられて職員室に駆け込んだって言ってましたっけ。毎度のことながらお疲れ様です。
「あの。試運転って、具体的にはどのような事をするんですか?」
と、脱線しかかったところ姫路さんがうまいこと話を戻します。ナイスフォロー姫路さん。
「ん?ああ、特にこれと言ったテスト項目はないさね。呼び出して、適当に動き回らせるだけで良いさ。なんの動きもさせないのはテストにならないから困るけどね」
「あ、それだけでいいんですか。それなら私でも出来そうです」
姫路さんが安心したように胸の前で手を合わせます。何だ、結構簡単な事なんですね。試運転なんて聞きましたから、自分もちょっぴり不安に思ってたところでしたもの。
「それなら私、手伝いますね。学園長先生」
「……私も」
「アタシも大丈夫ですよ」
「いや、アンタら三人はダメさね。点数が高すぎる。何かあったら困るからねぇ。気持ちはありがたく受け取っておくよ」
姫路さん・霧島さん・優姉さんの三人も手伝いを名乗り出ますが、やんわりと断る学園長。ああ、そうですよね……確かに下手に高い点数の召喚獣が暴走でもしたら、とんでもないことになりますし。
「そう言う訳で試運転は月野・吉井・坂本・土屋・木下弟・島田に頼むよ。教科は地理でね」
「「「「……名指し指定って……暗に地理の成績が悪いって言われているんじゃ……」」」」
「自覚はあるようだねぇ。まあ、そう思うんならちゃんと成績上げる事さね」
あはは……まあ、誰にでも向き不向きがありますもんね。自分も未だに英語が最下層ですし……
「……ちょっと待てババァ。このメンツはともかく、俺と造はそれなりに点数が高かったはずだが?」
「あれ?そう言えばそうですね。大丈夫なんですか?学園長?」
「ああ。月野は強制的に召喚獣になるからこの試運転も強制参加は仕方ないさね。とは言え月野自身が召喚獣になるわけだし、自身の行動をコントロールできるはずだから今回は特に心配はいらないさ。んで、坂本。アンタには———」
「俺には?」
「———アンタには何が起こっても構わないからね」
「それが教育者の言葉かっ!?」
ゆーさんに堂々とそんなことを言う学園長。学園長……えっと、それはゆーさんを信じているからこそ、ですよね?
「とにかく、そういう事だよ。試験時間は今から一時間。召喚フィールドは一応試運転用に学校全体に広げておくけど、一応この教室から出ないように。データが採りにくくなるからね。うまくやってくれたら……そうさね。図書券や学食の食券を贈呈しようかね。ただでやらせるのもなんだしね」
「「「おおー!」」」
学園長随分景気いいですね〜♪これならアキさんたちも喜んで———
「「…………」」
……あれ?何だかこういった報酬に一番喜びそうなアキさんとゆーさんが思案顔。どうしたんでしょうか?
「じゃあ、頼んだからね。報酬を出すんだから———絶対に、途中で投げ出すんじゃないよ。ああ、そうそう月野」
「はい?」
「一時間ある事だし、アンタの腕輪の調整もしとくよ。ホレ、出しな」
「あ、それは助かります。よろしくお願いしますね」
と、自分の白金の腕輪である代理召喚用の腕輪を受け取ると、そのまま学園長は教室を後にしました。
「ご褒美を用意してくれるなんて、学園長も太っ腹ね〜♪ちょうど欲しい本もあったし助かるわ」
「…………図書券はいくらあっても困らない」
「学食の食券でもありがたいのう」
「良かったですね皆さん」
「……ちょっと羨ましい」
「ホントよね。まあ、今回は仕方ないかしら?」
皆さんが嬉しそうに話をしている中、やっぱりアキさんとゆーさんは何か考えているようですね。気になりますし、ちょっと聞いておきますか。
「(アキさん、ゆーさん?どうしました?ひょっとして何か不都合でも?)」
「(……なあ造。お前今のババァの説明聞いて、何とも思わないか?変だと思わなかったのか?)」
「(……へ?何がですか?)」
「(造は本当に変だと思わないの?君はあのババァ長がわざわざ簡単な操作をさせるだけでお礼なんて出すと思う?)」
「(…………あれ?まあ、言われてみれば確かに……?)」
簡単な操作だけなら学校全体にまで召喚フィールドを張る必要はないですし、アキさんの言う通りお礼を出されるほどの事でもないのもまた事実。
- 番外編:召喚実験シリーズ〜自分と本音と暴露大会〜その① ( No.181 )
- 日時: 2015/11/06 21:00
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
「(仮にお礼を出すなら出すで、いつもならもう少し色々と難癖つけてくるはずだよ。あのババァ長って超あくどいもん)」
「(明久の言う通りだ。おまけに……何でこのタイミングでお前の腕輪を回収する必要がある。単に調整が目的なら明久の腕輪も一緒に持っていくべきだろが。まるであのババァ、造がフィールド干渉を起こしてこの実験を止めないように持って行ったとしか思えねぇぞ)」
「(あ……そういえば腕輪……学園長が……あれ?)」
た、確かに……何だかアキさんたちの言う通り雲行きが怪しくなってきたような……?自分も何か嫌な予感がし始めました。そんなことを考えていると———
ボンッ!
「「《あっ!》」」
———突然自分の姿が馴染みある召喚音と共に召喚獣へと変化しました。どうやら学園長が校舎全域に召喚フィールドを張ったようですね。
「あら?月野が召喚獣になったってことは、フィールドが張られたってことね」
「ならばワシらも始めるとするかの」
「…………了解」
「「《あっ!三人とも待っ———》」」
「「「試獣召喚(サモン)っ!」」」
ボンッ!×3
三人を止めようにもすでに、先ほどの自分と同じくヒデさんたちの足元に幾何学模様が浮かび上がり、召喚獣が姿を現します。あちゃー……大丈夫でしょうか?
《……ちょっと皆さんを止めるの遅かったみたいですね》
「みたいだな。で?どうだ造。何か異常はないか?」
《えっと……今のところ特に異常は感じられません。以前のようなオカルト仕様でもなさそうですし》
「そうみたいね。やっぱりこのサイズが一番よね!」
「確かにしっくりくるのう」
「…………耳も尻尾もいつも通り」
そう、自分も含めて皆さんの召喚獣の見た目はいつもの召喚獣です。いつもと違うところと言えば、
【うーん?変わった点を強いて挙げるなら服装でしょうか?】
「そうですね。月野君の言う通り、服装もいつものじゃなくて学校の制服ですね」
「……武器も持っていない」
「ああ、そう言えば二学期に入って装備もリセットされるんでしょ?だから今は初期設定のまま何じゃないのかしら」
《ふむ……今のところ何も問題無さそうですね。考えすぎでしたかね?…………って、あれ?》
姫路さん……今“月野君の言う通り”って言いました……?自分声出てましたっけ……あれ?気のせい……?
「そだね。今のところおかしな部分は見当たらないね」
「いや、安心するのは早いぞ。さっきのババァの話だと、変更したのは操作性の部分らしいからな。動かしてみるまでわからんだろうし」
「ふむ。ならば、早速動かしてみようかの」
と、ヒデさんが自身の召喚獣を動かそうとします。その時———
【では、造に飛びついて驚かせてみるのじゃ】
「「「へ?」」」
急に聞き覚えのない子供の様な高い声が教室に響き渡ります。
《あれ?今どなたか喋りました?》
「いいえ?と言うか、アタシたちの誰の声でもないと思うわよ?」
「(ガシッ!)じゃ……じゃあ、今の声は何よ……?」
「(ガシッ!)ち、小さな子の声が聞こえましたよ……?」
「うおっ!?ふ、二人とも落ち着いて」
教室や廊下などあたりを見回しても、子供どころか周囲は自分たち以外誰もいません。他のFクラスの皆さんはすでに下校していますし、先生方も勿論いらっしゃいません。その事実に怯えたのか、姫路さんと島田さんはアキさんにしがみつきます。
「そう言えば以前召喚獣が妖怪になっておったし、そのせいで今度は心霊現象でも起きたのかの?」
「「えぇええええええっ!?(ギュウッ!!)」」
「いっ!?イダ、イダダダッ!?お、落ち着いて二人とも!?大丈夫だからっ!?」
と、ヒデさんの言葉に更に恐怖する姫路さんと島田さん。自然とアキさんの腕を掴む手に力が入っていますね。
《心霊現象……?いやいや……流石にそれは無いと思いますよ》
「そだね。それだと操作性の変更とは関係なさそうだし。てか、今の口調ってどこかで……?」
【今の声はどこから聞こえてきたんじゃろうか?】
…………あれ、この翁言葉。少し甲高いですが、この声……何だか自分の真横にいる親友さんの声のような……?
「“じゃろうか”だと?もしかして秀吉かコレ?」
「…………確かに口調は秀吉そっくり」
「む?じゃがワシは何もしゃべっておらんぞ?」
と、ヒデさんが首を傾げつつそう言った直後、
【な、何……?お化け?うぅ……怖いぃ……!】
【…………この声、変声期前の児童のもの】
他にもどこかで———と言いますか、ほぼ毎日聞いている友人たちの声に似た子供の声がします。とりあえずよくわからないので声が何処から聞こえるのか皆さんで見回すと———
「……召喚獣が喋ってる」
冷静に召喚獣を眺めていた、霧島さんがポツリとそう呟きました。ん?召喚獣が喋ってるですって……?
【それにしても、困ったのじゃ。今朝のことはどうしたら良いじゃろうか】
【怖いっ怖い〜っ!お化けとか、ウチ本当に嫌なのにっ!?】
【…………この視点の低さ。悪くない】
慌てて自分もヒデさんたちの召喚獣をよく見ると、皆さんの召喚獣が口を動かしているのに合わせてさっきの声を発します。
「ホ、ホントだ!召喚獣が喋ってる!」
「へぇー?こりゃ面白いな」
《おおぅ……自分以外の召喚獣が喋るのは結構新鮮ですね》
とりあえず皆さんの召喚獣を観察します。召喚獣は腕を組んだり、その場に頭を抱え込んだり、低い体勢から頭上を見上げてみたりと、それぞれ思い思いの行動を取っていますね。
「と、とりあえず、心霊現象とかじゃないみたいね」
「はぁ……良かったです……」
「あらあら。そう言えば瑞希も美波もそう言うのダメだったわね」
「しかしまぁなんつーか、操作性の向上というよりは、自動化って感じだよな。これ、お前らが指示してるわけじゃないだろ?」
「…………特に何もやらせてない」
「ワシもあのような動作をさせてはおらんの」
召喚獣はさっきから溜め息をつく仕草をしてみたり、胸に手を当てたり、仰向けに寝転がったりしていますね。ですがこれは……
【うーん……これって、ゆーさんの言った通り自動化なら、やはり文さんと同じような理屈……?確か学園長も今回は文さんに影響されたって言ってましたし】
「は?いや造、どうして急に文ちゃんの話になるのさ?別に今日は文ちゃん来てないでしょ?」
《【へ?い、いや……アキさん?自分はそんなこと別に喋ってなんかいませn———って、あれ?何で思った事まで声に出て……?ん?あれ?】》
と、自分が先ほどと同じ違和感を再び感じ始めたその時です———
【お化けとかじゃなくて良かったぁ……危うく前の肝試しのときみたいに、また眠れなくなって葉月と一緒に寝なきゃいけなくなるところだったわ……】
【まさかまた近所の男子中学生に告白されるとは……こんな話が明久たちにバレてしまえば、ワシは更に女扱いされてしまう。なんとか秘密裏に断らねば……】
【…………この視点の低さなら、いつでもアイツのスカートの中を見られる……!】
「「「「「「「「《……え?》」」」」」」」」
———ヒデさんたちの召喚獣たちが口々にそんなことを言い始めました。
《【……こ、これって一体?】》