二次創作小説(紙ほか)

番外編:寒い日は鍋が一番!〜闇鍋?病み鍋?暗黒鍋デス〜その① ( No.197 )
日時: 2015/12/18 21:03
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)

造Side


ガランガランッ!


『大当たり!大当たりが出ましたー!』

「……うそぉ……」
「あ、あはは……流石造くんね。運良い……のよね、コレ」
「う、うむ……造は相変わらず運が良い……といえば運が良いのかのう?」
「い、いや。これどう考えても運悪い方じゃないですかねヒデさん、優姉さん……」

あの体育祭と召喚野球大会も何とか無事に終わり数日経ったとある日。その日はとてもうららかな陽光が暖かき休日だったのですが、自分こと月野造は自身の運の悪さ……いいえ、より正確にいうと自身の“運の良さ”を呪っていました。

『大当たり!大当たりですっ!これは本当にすごいっ!』

ええ、確かに凄いですね。自分が一番驚いてますもの。あ、ちなみにここはとあるお店のレジカウンター近くの福引コーナー。オープン七周年記念とかなんとかで、一定額以上の買い物をした方に貰える福引券のサービスを行っていたらしいこのお店に、とある理由で一緒にお買いものをしていた自分とヒデさんと優姉さんの三人。

そんな中お二人に折角だから引いておいで、と福引券2枚分を頂いてガラガラの前に立った自分。いえ、その時までは確かに何かいいのが当たれば嬉しいな、お二人の喜ぶものが当たったらいいな、と欲深くも考えてはいました。…………いましたが。

『おめでとうございます!なんとこのお嬢ちゃん、一等と特賞の両方を大当たりです!』

手元の鐘を全力で鳴らして、景気のいい声でそう高らかに自分におめでとうと言ってくれる法被を着た店員さん。ええ、ホントおめでたいですよ……何せその当たった一等と特賞の景品はと言うと———

『おめでとうお嬢ちゃん!一等“鉄パイプ十万円分”と特賞“鉄パイプ五十万円分”です!大切に使ってね!』
「一体何をどう使えと!?申し訳ないですけど全力で辞退させてもらいますよ!?と言いますか、誰がお嬢ちゃんですか誰が!?」

———恐らく世間一般で言う大外れである鉄パイプの山山山ですからね。もっと早くから景品のラインナップを見ておかしいと思うべきでした……とまあ、こんな感じで一つでもアレなのに両方の大外れを引いてしまい、全力で辞退しつつツッコむこととなった土曜日の午後でした。

「……大体何ですかアレ……賞品五等から上のラインナップが全て鉄パイプって。顧客のニーズを何一つわかっていませんよねアレ……ごめんなさいお二人とも、折角お二人から券を頂いたと言うのに」
「どう考えても五等以下が大当りじゃったからの。まあそう気を落とすでない造、ある意味珍しいものが見れたしの。それだけで満足じゃ」
「それほど造くんの運が良かったと言うことで。アタシも気にしてないわ。寧ろホラ、こんなこと滅多にないしいい話のタネにできると思うわ」

お二人に励まされつつ、買い物メモを片手にそう愚痴りながら店を出る自分。鉄パイプって……何をどうしてあんなものを賞品にしてたのやら……?特賞及び一等から四等賞までが鉄パイプ。そのくせ五等から温泉ペア宿泊券やら海の幸セットやら買い物券はあると言うね。何故それを上の賞に設定しないのか、わけがわかりませんよ全く。

「外れのはずのティシュの方が使い道あったと思うのですがね……もういいですが。優姉さんの言う通りネタにはなるでしょうし。気を取り直してそろそろ夕食の買い物に行きましょうか。お二人とも、何か食べたいものありますか?」
「うん、そうね。アタシは造くん食べたいわ」
「……はい?」
「造よ、姉上の戯言は気にするでないぞ。そうじゃな、ワシは少し寒くなってきたし温かいものが食べたいのう」
「温かいもの……そうですね。何か旬のものがあればそれを使って温かいもの作りましょうね。他に何か食べたいものを思いついたらスーパーに着く前に教えてください」
「だから、造くんと秀吉を食べたいんだって」
「姉上、天下の往来でそれ以上の発言はアウトじゃ」

と、今夜の食べたいものを言い合いながら(若干優姉さんがトンデモナイことを口走っていましたが)、三人で品ぞろえ豊富なスーパーへと足を運ぶことに。……え?何故自分と木下さんちの優子さん&秀吉くんがそんなお話をしつつお買いものをしているのか、ですか?それはですね———


〜造回想中〜

番外編:寒い日は鍋が一番!〜闇鍋?病み鍋?暗黒鍋デス〜その① ( No.198 )
日時: 2015/12/18 21:15
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)

———前日の夜:月野家———

『つーちゃんつーちゃん!なんか寒いわ!』
『え、そうですか?まだそこまで寒いとは……母さん、そんな真夏のような恰好じゃそりゃ寒いでしょう。寒いならちゃんと衣替えしてください』
『やーよ、面倒だもの。なら服着せてよつーちゃん』
『ワガママすぎる!?』
『つーちゃんの“我が”“ママ”なだけにね!…………うぅ、余計寒くなってきたわ。助けてつーちゃん』
『母なのに親父ギャグ……と言うか自爆しといてそれですか……いいからさっさと暖かい服自分で着てくださいね母さん』
『むー……つーちゃん何か冷たーい……いいわ、わかった。つーちゃんが冷たい分、暖かいとこ行く』
『はいはい、早く暖かい服着て暖かいところで休んでくださいね。風邪をひいても知りませんよ』
『うん、そうする。と、言うわけで———つーちゃんはお留守番よろしくね!シンガポールとかペルーとかがいいかしら〜♪あの辺はきっとまだあったかいわよね〜』
『…………は?』
『いや、その……申し訳ありません造さん。奥様のいつもの思い付きでして。一週間もすれば飽きて戻ると思いますので』
『うぅ……造っ!寂しくなったらすぐ電話しろぉ!アタシはすでに寂しいっ!困ったことあったらすぐ戻るかんな!?あ、あと造が一人で辛いと思って我が弟子優子っちに連絡しといたからなっ!』
『は、はぁ…………はぁ!?』


〜回想終了〜


———と、まあ“いつもの”母さんの突拍子もない思い付きで、今朝早くに何だか寒いからと言う理由で暖かいところ……つまり暖かい“国”に飛んでいきましたとさ。サクヤさんと蒼兄さん、その他たくさんの執事さんやお手伝いさんも連れてね。数人の信頼のおける執事さんとメイドさんを残してくれたのはせめてもの情けだと思いたいです……あの母さんはホントに……

で、サクヤさんがアタシがいないと寂しいだろうとヒデさんと優姉さんに連絡した結果、土日だけでも木下家に泊まらないかと提案されたと言うわけでして。

「本当に申し訳ないです……サクヤさんが、と言うかうちの母がご迷惑を」
「いいってそれは。寧ろ嬉しいわ、初めてよね造くんがアタシ達の家に泊まるなんて」
「ワシらの家も今日明日は姉上と二人だけじゃったからの。造が泊まってくれるなら大歓迎じゃ」

と、快く自分を迎え入れてくれたお二人。朝と昼はサクヤさんが作り置きをしていたご飯を三人で仲良く食べ、夕食の材料調達兼各々のお買いものをすることに。あ、一応料理は自分が担当。あまり上手に作れるわけではありませんが……人並には作れると思いますので。

ちなみに先ほどのあの店ではヒデさんは演劇用の小道具を、優姉さんは裁縫用の品々(何に使うのかものすごく気になりますが)を購入したとか。自分は特に買うものが無かったので荷物持ちとゆっくりウィンドウショッピングを楽しんでいたのですが、それだけでは面白くないだろうと気を遣ってくれたお二人に福引券を頂いた……結果がさっきの鉄パイプでしたが。

「ありがとです、お二人とも。さて……温かいものですか。何が良いでしょうね。鍋焼きうどんとか麻婆豆腐とか……うーん」
「あまり凝ったものでなくてよいぞ造」
「そうね、何ならいっそ外食でもいいわ」
「何も思いつかなかったらたまにはそれもいいかもですね。うーむ、こういう時アキさんたちならパッとメニューを思いつくんでしょうけどねー」

いつもはサクヤさんが作るので、こういう時普段から料理を作り慣れているアキさんたちのようにすぐには何を作るべきか思いつかないんですよね。デザート関連なら自信がありますしすぐに思いつくのですがね。と、アキさんの名を口にしたその瞬間。

『ななな、何を言っているの瑞希!?おおおお客さんにそんなことさせられないじゃないか!?』
『でも、それじゃあ私の気が済まなくて』

「「「ん?」」」

前方から、アキさんそっくりな声が聞こえてきます。いいえ、と言いますかそっくりではなく———

「あら、噂をすればなんとやら。アキさんじゃないですか」
「おお、姫路もおるの」
「玲さん、お久しぶりです」
「へ……?ああっ!造!」
「こんにちは木下君」
「ああ、優子さんも。こちらこそお久しぶりです」

何やら荷物を載せた台車を押しているアキさん玲さんの吉井姉弟とクラスメイトの姫路さんがそこにはいました。

「何やらいっぱいありますけど、アキさんたちもお買い物でしたか?」
「そ、そうなんだ!この通りね」

何故か若干焦りながらもアキさんがそう言って台車に載ったオーブンや生活雑貨、そして海の幸詰め合わせセットと書かれた発泡スチロールの箱を見せてくれます。何だか随分量がありますね。

「何じゃ明久。お主何やらごちそうでも作るのかの?」
「たくさん買ってますね。パーティか何かするんですか玲さん」
「いいえ、オーブンはともかくそれはアキくんが運よく福引で当ててくれたんですよ」

え?……福引……?福引、かぁ……

「……はぁ」
「って、どしたの造。溜息なんかついちゃって」
「いえ、福引……いいえ、鉄パイプ思い出しまして。すっごく損した気分の鉄パイプ福引を思い出しまして」
「鉄パイプ福引……?———まさか、造それって五等以上の?」
「っ!?ど、どうしてそれを———って、この海の幸詰め合わせセットってもしかしてあの福引の賞品ですか!?」
「う、うん。六等賞でこれだった……で、何等賞だった?」
「…………一等と特賞でした」
「……うん、ゴメン。聞いた僕が悪かった」

何やら自分のその言葉だけで多くを察してくれたアキさん。なるほど、アキさんたちもあのお店の福引を引いたんですね。ちなみにアキさんも地味に外れのティッシュと4等の“鉄パイプ三千円分”(勿論アキさんも辞退したとか)を何度か引いたとか。ティッシュの方が使えるけどねと、アキさんも同じことを考えていたようです。

番外編:寒い日は鍋が一番!〜闇鍋?病み鍋?暗黒鍋デス〜その① ( No.199 )
日時: 2015/12/18 21:09
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)

「それで、姫路はどうしたのじゃこんなところで」
「あ、えっと。実はちょうどさっき明久君と玲さんに会いまして」
「何でも瑞希さんのご両親が遠くに行っているそうでして。それならご一緒に我が家で夕食でもと誘ったのですよ。ちょうどアキくんが良い物を当ててくれましたし、この量は流石に二人では食べきれないと思いまして」
「そ、そうなんだよ……瑞希に来てもらおうかなーって話してたんだーははは……」

ふむふむ、確かにこの量はお二人だけではさばききれないですよね。生ものですから日持ちするものではありませんし、そういう意味では確かに姫路さんに食べてもらった方がアキさんたちも助かるのでしょう。……その割には何故かさっきからアキさんが何かに怯えているご様子ですが。どしたのアキさん?

「あら瑞希も親がどこかに行ってるの?実はアタシ達や造くんもなのよ。造くん今日はアタシたちの家で泊まる予定なの」
「そう言うことじゃ。ワシらも夕食の準備をするためにスーパーにこれから行こうと思っての」
「お料理は一応自分担当です。まあ、普段から作っているわけじゃないのでアキさんみたいに上手にはいかないでしょうけどね」

ここにいるアキさん、それにゆーさんこーさんがいつもの仲良しメンバーの料理上手三人衆。普段から作り慣れているからか三人ともとっても美味しい料理を作ってくれるんですよね。自分もお菓子作りだけじゃなくて普通の料理ももう少し精進せねばね。

「あらあら。でしたらいっそ造くんも秀吉君も優子さんもご一緒に我が家で夕食でもいかがですか?」
「え、ですがいいのですか?」
「ええ。余らせるのも逆に困ってしまいますので」
「ふむ……なら折角じゃし。姉上はどうじゃ?」
「うん、玲さんや吉井君がいいならアタシもごちそうになっちゃおうかしら」

と言うわけで、急遽夕食はアキさんのお家で食べることに。ああ、ですが良かった。こういうメニューはアキさんの方がレパートリーも多くてきっと良い案を出してくれるでしょう。自分はアキさんの手伝いをするとしましょうかねー♪———なんて、甘いことを考えていた矢先。

「あっ!それで思い出しました!明久君、人数も多くなりましたしやっぱりここは———」


ゾクッ! ×3


「「「……っ!?」」」

「———私に料理を作らせてくださいっ!」

まるで脊髄に氷の刃が突き刺さるかのごとく。アキさん・ヒデさん・自分を戦慄させる姫路さんの魔法の言葉が襲います。そ、そうかわかった……!さっきから何かアキさんが震えていると思いましたが、その理由が今わかった……!

「だ、だからね瑞希!慣れない調理器具だと怪我しちゃうかもしれないじゃない!?だから僕に任せてほしいかなって!?」
「そ、そうですね!アキさんが手慣れているでしょうしここはアキさんに任せた方がいいのではないでしょうかっ!?」

アキさんとヒデさんで、即アイコンタクト。これは是が非でも止めなければ———海の幸を味わうどころか海の藻屑になりますからね、自分たちが。

「それなら私、一度お家に戻って道具を持ってきます」
「いやいや、待つのじゃ姫路よ!それは少々効率が悪いと思うのう。慣れている明久に任せるのが一番じゃと思うのじゃがなっ!?」
「いいえ。この前お邪魔した時も明久君や美波ちゃんに作ってもらっちゃいましたから。今日は順番と言うことで」
「で、でしたら今日は自分が———」
「つ、月野君はダメですっ!(女の子として、負けられませんっ!)」

ぐぬぬ……おっとりとしてはいますが、芯の強さがある姫路さんは意見を曲げる気が無いご様子。これからどう説得すべきか……

「まあまあ皆さん、そういうことでしたら———」

と、そこに自分たちの言い争いを鎮めようと玲さんが割って入ります。こ、ここは大人の玲さんに何か助言をしてもらうしか———

「———そういうことなら、間を取って私と瑞希さんでお料理をするということで」

「「「(((考え得る限り最悪の事態っ!?)))」」」

さ、サクヤさんのお陰で多少はマシになったとアキさんは言っていましたが、それでも必殺料理人の名を持つお方が一人加わってしまう事態に。いかん、状況がどんどん悪化している……!?

「玲さんと一緒にですか!それなら喜んで!」

「「「どうしてその提案は反対しないの(ですか)(じゃ)!?」」」

こちらに都合の良い提案は呑まないのに、こちらに都合が悪い提案は快く受け入れてしまうのはどういうわけです姫路さん……さ、流石に二人分の必殺料理人の攻撃に耐えられる自信はないのですがね!?

「?どうしたのよ三人とも、そんなに慌てちゃって」

事情を知らない優姉さんがよくわからないと言ったお顔で自分たちを眺めています。ええ、そうですね。優姉さん、慌てざるを得ないんですよ。下手したら貴女まで三途の川で遠泳大会しないといけなくなるんですから。

「ではそういうことで。よろしくお願いしますね瑞希さん」
「はいっ!よろしくお願いします玲さんっ!」
「ま、待つんだ瑞希!姉さんも!全然よろしくないよ話を聞いて———待った!?ホント待って!?君たちのその足はどこに向かっているのさ!?」
「ちょ、ちょっと待つのじゃ!?何故姫路はその店に入ろうとするのじゃ!?」
「あ、玲さんっ!?そっちにスーパーはありませんけど!?そこに食料は売っていないんですけど!?」

哀しいことに、自分たちの心からの叫びは全くもって届かずに材料調達へと向かうお二人。…………そして恐ろしいことに、姫路さんは大急ぎで薬局へ。玲さんはその反対側にある雑貨屋へと駆けていきます。何故?どうして?お二人は料理の基本中の基本の“食べられるもの”を根底から覆すのでしょうねホント。

「あら?あっちにスーパーあったかしら?……ん、三人ともどうしたのよそんなに呆然としちゃって」

「「「…………」」」

事情を全くもって知らない優姉さんに見守られる中、自分たち三人は道端で呆然と立ち尽くすのみ。敵は姫路さんと玲さんの最強戦力。自分たちの胃袋が勝てる確率は……あるわけないじゃないですかそんなもの……

「「(ぶわっ)…………っ!」」

「ちょっ!?ど、どうしたのよ二人とも!?な、泣かないでよ!?は、ハンカチあげるから、ね?何か辛いの?ほら、お姉ちゃんに話してみなさい」

お二人が去ってすぐ、自分とヒデさんの目からぽろぽろと涙がこぼれ落ち始めます。そんな突如泣き出した自分たちを優姉さんが慰め、そしてただ一人あらゆる意味で覚悟を決めたアキさんはと言うと。

「えーっと、電話電話っと———あ、もしもし雄二?うん、実はさ、福引で良い物当たったんだけど僕と姉さんだけじゃ食べきれなくてね。うん、造や秀吉も今ここにいるよ。ムッツリーニにもこの後連絡する。うん———是非来てほしい」

覚悟を決めた目で、自分たちの生存率を高めるために運命共同体(まきぞえ)を増やすことを専念し始めました。