二次創作小説(紙ほか)
- 番外編:寒い日は鍋が一番!〜闇鍋?病み鍋?暗黒鍋デス〜その③ ( No.209 )
- 日時: 2015/12/23 21:17
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
造Side
「(で?状況はどんな感じかしら)」
来るはずのない島田さんまでも自主参戦した姫路さん&玲さんによる死の宴。最後に来た島田さんが自分たちにアイコンタクトで状況を聞いてきました。
「(圧力鍋、破裂したってさ……)」
「(オッケー、つまりいつも通りね。さて、どうしたものかしら)」
普段が普段なだけにあまり驚くことがなくなってきましたが、このアキさんの説明を聞いてもそこまで取り乱さずに分析できるのは相当なものですよね島田さん。
「コホン。あー、瑞希?ちなみに何作っているのかしら?」
「あ、はい。ブイヤベースを作っていたんですけど……」
「けど?」
「ちょっと失敗しちゃって、作り直しになっちゃいました」
鍋の破裂と言う名のちょっとの失敗。ならば大失敗になるとどうなるのか……考えたくないので置いておくとしましょうか。
「(作り直し……これね!)あらら、それは残念だったわね。失敗は誰にでもあるし気にしちゃダメよ。でも———今から作り直すんじゃあんまり時間無いんじゃないかしら」
「そうなんですよ。今からじゃ手の込んだお料理が……」
「そうよね、そうよね。手の込んだ料理は時間がかかっちゃうし出来ないわよね。だから今日はあまり手の込んでいない簡単なもの(=殺傷能力が低いもの)を作るのはどうかしら」
なるほど確かに……鍋が破裂した事ばかりに気を取られていましたが、これはかえって好都合。これから作り直すのなら恐れている死に至るほどの化学と料理のコラボレーションを行う時間はないはず。軽めのものなら耐性のある自分たちが死ぬ気で食せばあるいは———
「それでは、闇鍋なんてどうでしょう」
「「「「「「はい?闇鍋?」」」」」」
———と、姫路さんとキッチンに立っていた玲さんがそんな提案を。や、やみなべ……?闇鍋って、あの闇鍋ですか?
「作るのに時間もかからずに、人数が多くても美味しく食べられる鍋なら良いのではと思いまして」
「いえ、あの玲さん?鍋は良い案だとは思いますが、何故に闇鍋を……?」
「鍋料理ではメジャーなものと先輩から聞きましたが?」
……サクヤさん、何を教えているんですか貴女は。多分ですがお酒の席でそういう冗談を言ってそれを玲さんが真に受けたと言うことでしょう。全くサクヤさんったら闇鍋なんてそんな———待った。ちょっと待った、闇鍋……?被害者の会全員、瞬時にアイコンタクト開始。
「(ねえ皆さん。これって、意外と良い案なのでは?)」
「(僕もそう思う。このまま僕ら全員が短時間で何か作るよって言っても、瑞希のことだし恐縮して結局何かしら手伝うと思う)」
「(そうね、きっと瑞希はそうするわ。つまりどんな料理にしようとも、物凄いアレなものが生成されることは確実よ)」
「(だが、こと闇鍋だけは違うってことだな。アレはその場で鍋に具材入れるモノだ)」
「(…………手伝いも何も関係ない)」
「(うむ。そもそも調理の腕は関係ないのじゃから、危険なものなぞ出来上がるはずもないのう)」
全員の意見が一致。ここはメインディッシュを闇鍋へ変更させようという意思が見て取れます。そうと決まれば即実行、そのように誘導しなければ。
「いやぁ、闇鍋ですか!実は自分一度やってみたかったんですよねっ!」
「ウチもこう言う闇鍋みたいな日本の文化、体験してみたかったのよ!やってみたいわ!」
「そうじゃな!闇鍋とは実に面白い提案じゃな!」
「闇鍋って言えば鍋の中の鍋だぜ!やったことない連中のためにもここはやってみっか!」
「…………闇鍋最高」
「流石姉さん!良い提案してくれるじゃないか!闇鍋にしよう闇鍋!」
他の方から否定される前に、一斉に闇鍋を推します。そのお陰か事情を知らないAクラスの皆さんまでも……
「闇鍋ってボクもちょっと興味あるかも。パーティゲームみたいなものでしょ?」
「……私も、やってみたいかも」
「面白そうね。皆がそれでいいならアタシも賛成よ」
よっし!三人の了承も得ました。これで少しは状況がマシになるはず。
「あ、でもしまった……うちにはカセットコンロがないや」
「それでしたら明久君。私の家なら近いですし、持ってきますよ」
「え、いいの?僕も行こうか?」
「いえ、そんなに大きいものでもないので。それに他にも色々持ってきたいものもありましたので気にしないでください」
「(チャンスっ!)あら、だったら瑞希が戻ってくるまで簡単な前菜をウチが作るわ。瑞希の好きそうなものも作っといてあげる♪アキ、あれ使っていいかしら」
「うん、勿論さ!」
しめたとばかりに、海の幸セットを使おうとする島田さん。なるほど、前菜で使ってしまえば闇鍋に使わずに済みますものね。折角アキさんが当ててくれたものを無駄にせずにできますし。それにこちらが本命ですが———こう言っておけば唯一島田さんがキッチンに立てることになり状況確認と危なげなものを回収&処分も可能……流石島田さんっ!
- 番外編:寒い日は鍋が一番!〜闇鍋?病み鍋?暗黒鍋デス〜その③ ( No.210 )
- 日時: 2015/12/23 21:11
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
「ありがとうございます。あ、美波ちゃん。何か作るのでしたら私はもしかしたら時間がかかるかもしれませんから、良かったら先に始めちゃっていてくださいね」
「オッケー、まあなるべく急いでね。ウチだって瑞希にも食べてもらいたいしさ。でも急ぎ過ぎて道に迷ったり転んだりしちゃダメよ?」
「も、もう!子どもじゃないですからね?では行ってきます」
そう言って姫路さんは小走りで一旦お家にお戻りに。まあ殺人料理に目を瞑れば、こんなにも気が利くとても素直で優しい人ですからね姫路さん。……どうして料理になるとああなるのか非常にわかりませんが。ま、まあそれはともかく一時的でも安全が確保されました。ほっと息をついて一旦緊張を解くとしましょ———
「それでは、私はお鍋の出汁作りでも———」
「ね、姉さんっ!それは僕らがやるからっ!姉さんはとりあえずこっちでゆっくりしてなよ!」
「あ、玲さんっ!霧島さんから頂いたワインはいかがですか!?自分、お酌しますよっ!」
———例え一瞬たりとも緊張を解いてはいけないことを悟る自分たち。料理は島田さんや手伝うと申し出てくれた霧島さん工藤さん優姉さんたちに任せ、自分たち男子はキッチンに向かう玲さんを全力で止め、玲さんのお酌をすることとなりました。
〜女性陣料理中〜
「はいお待たせ。オードブルが出来たわよ」
「……お待たせ」
アキさんと二人、酔わせる勢いで玲さんにお酌をしキッチンから遠ざけている間に女性陣が料理を作ってくれました。最初に島田さんと霧島さんが大皿を持ってやってきます。
「玲さんワイン飲んでるし、合いそうなカルパッチョにしてみたけどどうかしら」
「あ、助かるよ———おおっ!?す、すごいよ美波!めちゃくちゃおいしそうじゃないか!」
大皿には鮮魚とそれを彩る野菜類が見事に盛り付けられ、更にソースで美しい紋様が描かれています。料理は味もですが盛り付けも大事ですからね。また、盛り付けられている魚もお店の売ってある切り身と遜色ないほど綺麗におろされています。これはお見事。
「ふふっ、褒めてくれてありがとアキ。ウチがソースと盛り付け担当ね。あと、魚をおろしたのは、」
「……私」
「そゆこと。翔子凄いのよ、使う魚を全部こんなに綺麗にさばいてくれてね。とても調理しやすかったわ」
「……花嫁修業の成果」
そうはにかみながら答える霧島さん。そんな霧島さんの腕前に、その愛しの旦那様(おい待て造、誰が旦那だ by雄二)はと言うと、ぶっきらぼうな態度でちらりと霧島さんをちらりと見てこう一言。
「ふん……ま、悪くないか」
「むー……ゆーさんは恥ずかしがらずにもっと霧島さんを褒めるべきだと思いまーす」
「ばっ!?違っ!……造っ!?」
「……大丈夫、造。お父さん(ゆうじ)がちゃんとお母さん(わたし)を褒めてくれてるのわかってるから」
「誰が父だ!?つーかなんだそのルビとお前らのその反応は!?」
ゆーさんと霧島さんの発言はともかく、小さなころから一生懸命ゆーさんのお嫁さんになると言う夢に向かって頑張って修行してきた霧島さんの腕に感心する自分。本当に霧島さんって一途な努力家なんですねー
「それで、こっちが牡蠣の酒蒸しと海鮮サラダだよ〜♪多分ワインにも合うんじゃないかな」
「お待たせしました玲さん、良ければこっちもどうぞ」
遅れて工藤さんと優姉さんがテーブルに器を持ってきます。これは……殻つきで蒸し上げられた牡蠣に、エビとかタコが入ったサラダのようですね。色合いが鮮やかで見るだけで食欲を誘います。こちらもとても美味しそうな出来栄えです。
「うむ、これもまた見事じゃ。姉上も中々やるではないか」
「どーよ秀吉、見直した?……と言っても、ゴメンうそ。アタシはただ野菜を洗って盛り付けただけだけよ。愛子と美波の手伝いをしただけだし」
「いえいえ、それだけでも十分ですよ優姉さん。少しずつ料理も覚えていけばいいですし」
「ボクも実を言うとほとんど代表とナミーに手伝ってもらった感じ。まだまだ修行不足カナ」
「…………いや、ちゃんとよく出来てる。もっと胸を張れ工藤」
「あっ……そ、そう?ありがとこーたくん♪えへへ、褒められちゃった」
そんな感じでテーブルの上に美味しそうな料理が所狭しと並べられます。全て運び終えた島田さんたちはエプロンを外してカーペットの上に座り始めます。
- 番外編:寒い日は鍋が一番!〜闇鍋?病み鍋?暗黒鍋デス〜その③ ( No.211 )
- 日時: 2015/12/23 21:36
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
「さてと。じゃあ瑞希には悪いけど先に食べ始めちゃいましょうか。折角のカルパッチョとかも温くなっちゃ美味しくなくなるし」
「……瑞希、待たないでいい?」
「うーん……霧島さんの言う通り待ってもいいけど、瑞希はかえって待たせちゃったと思って気に病むと思うし、食べてた方がいいと思うよ」
アキさんの言うことも一理あり、ですね。彼女も先に始めちゃってくださいと仰ってましたし、姫路さんはこういう時は待たせてしまったと気にするタイプです。姫路さんの分も残しつつ、少しだけ先に頂きましょう。
「そんじゃ、まずは乾杯だよね、皆何か飲み物持って———」
「待ったアキ。飲み物なら任せて、愛子が持ってきてくれた果物でフレッシュジュース作ってみたの。それでいいかしら?」
「いいねいいね!———よし、瑞希が戻ってきたらもう一回やるとして。まずは一回目だね、皆じゃあいくよ。かんぱいっ!」
「「「「「「「「かんぱーい!」」」」」」」」
島田さんが特製のフレッシュジュースを皆さんのグラスに注ぎ、これで準備万端。グラスを片手にアキさんの一声に合わせ全員で乾杯の声をあげて飲み干します。……わぁ!口いっぱいに広がるフルーツの甘酸っぱく美味しいミックスジュースがたまらなく美味しいっ!
「ジュース美味しいなぁ、これ後で美波にレシピ教えて貰おっかな。それはさておき、そろそろお腹もペコペコだし食べよっか」
「ですね、では早速いただき———」
「………………えい」
ぐいっ
「「ん?」」
箸を手に取りどれから食べようかと吟味しようとした矢先。急に自分の、いえ自分とアキさんの袖を引く感覚が。何事かと振り返るとそこには……
「アキくんも造くんも姉さんにかまってくれないのですね……」
「「え……?」」
少しムスッとした、まるで構えと言いたげな表情の玲さんが。あ……しまった、忘れてた……出てきた料理に気を取られて玲さんにお酌をする手をアキさん共々完全に止めちゃっていましたね。
「ちょっと、ここに座りなさい」
「ご、ゴメン姉さん。ホラ姉さんも何か食べたいものあったら取るから言ってよ」
「では自分はまたお酌を」
言われた通り玲さんの隣に座って食事とワインを勧める自分たち。ですが、玲さんはまだ何か不満なのか首を横に振ると……ぐいっとアキさんと自分を引っ張って———
「アキくんはここ。造くんはここ、です」
———アキさんは玲さんの膝の上に座らせられ、自分は玲さんの自慢の豊満なその胸の中に…………って、ちょっとぉ!?
「あ、あわわ!?あき、玲さん!?なな、何をっ!?」
「そ、そうだよ!?何をふざけているのさ姉さん!?高校生にもなってこんな抱っこなんてはふぅ」
「よしよし、良い子良い子」
玲さんに二人まとめて抱きしめられ、自分は混乱の極に。アキさんはふわっと力が抜けて現在お姉さんに甘える小さな弟モードに。なにこれ、なにこれぇ!?
「あ、アキ……(や、ヤバいわこれ……アキなんか可愛い……写真撮りたい……)」
「つ、造くん……(玲さん羨ましい……やっぱり胸なの……姉キャラに必要なのは胸だと言うの……?)」
島田さんや優姉さんをはじめとして、皆さんが何とも言えない表情でそんな自分たちを見つめます。あ、あのぉ!?見てないで助けていただけないでしょうかね!?そんな皆さんの視線を全く気にすることなく、玲さんはワインや食べ物を口に運びます。あ。あれ?そう言えば知らない間に随分とワインが減ってませんかコレ?一瞬でアキさんとアイコンタクトして状況確認することに。
「お料理もワインも、とても美味しいですね」
「あの、玲さん。つかぬ事をお聞きしますが」
「ねえ姉さん。もしかして大分酔ってない?」
「そう言えば、少し酔ってるかもしれません」
顔色も普通ですしパッと見ではわかりませんがこれだけワインを飲んでいて、おまけに素面でのこの行動は確実に酔っているはず。先ほどは玲さんに料理をさせないために酔わせる勢いでお酌をしていましたが、ここに来てこんな裏目に……ここは何としても酔い覚まさせねば。
「酔っているなら、僕水持ってくるね。ちょっと待ってて姉さん」
「玲さん、ワインは少し休憩しましょうね。キッチンにボトルを置いてきます」
「そうですか、それは助かります」
と言うわけで一旦玲さんから抜け出してキッチンに向かいます。ボトルをアキさん指定の棚の中に入れ、アキさんが水をグラスに注ぎ再びリビングへ。
「はい、姉さん」
「どうぞです玲さん」
「ありがとうございます」
玲さんにグラスを手渡し、アキさんと自分は敢えて玲さんから一番離れた場所に座りなおします。これで玲さんに絡まれる心配はなくなりますね。
スタッ (玲さんが立ち上がる音)
スタスタスタ (玲さんが何故かこちらに歩いてくる音)
ぎゅむっ×2 (玲さんが自分とアキさんを抱きしめる音)
「「玲さん羨ましい……」」
「造はともかく……やはり明久はシスコンか。いや、元々その気はあると思ってたがなシス久。後日FFF団に報告しとくからなシス久」
「…………羨ま死ね明久もといシスコン。出来れば後でその胸の感想教えてくれ造」
「……玲さん、大胆」
「あ、あはは♪いい姉弟関係ってことじゃないカナー?」
「つ、造?お主ちゃんと息できておるか?玲殿の胸の中で動かないように見えるのじゃが!?だ、大丈夫なのかの!?」
皆さんの観察するような冷静な視線が辛い。そして自分はそろそろまともに息が出来そうになくてつらい……
「お待たせしました!すいません、遅くなっちゃいま———明久……君……」
「ゴメン瑞希、色々言いたいことはあると思うけど、今はスルーしてくれると助かるかな……あと一応言っとくけど僕シスコンじゃないからはふぅ」
「は、はい……?っ!?(明久君なんだかちっちゃな弟みたいで可愛いですっ!———じゃなくて、玲さん羨ましいっ!———でもなくて、明久君に月野君どうしたんです!?何ですかこの状況!?)」
「むぐぅ……(息が……だれか……たすけ……)」
カセットコンロを持って戻ってきた姫路さんが、玲さんに抱きかかえられたアキさん(と窒息寸前の自分)を見て目を丸くします。まあ、そりゃ戻ってきて初めに見た光景がコレなら誰だってこうなりますよねー……
その後何とか無事に解放されたものの、皆さんの色々な感情が含まれているちょっぴり痛々しい視線は玲さんがそのまま眠ってしまう間自分とアキさんに降り注ぐこととなりました。