二次創作小説(紙ほか)
- 番外編:寒い日は鍋が一番!〜闇鍋?病み鍋?暗黒鍋デス〜その④ ( No.214 )
- 日時: 2015/12/26 23:02
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
造Side
「それじゃあ、そろそろお鍋の用意を始めますね」
前菜を美味しく頂いた後(ちなみに玲さんは酔ってぐっすりお休みに)、姫路さんの持ってきてくれたカセットコンロがテーブルに置かれ、いよいよ待ちに待った(正直待ってませんが)メインディッシュの闇鍋の始まり始まり。さてここで、恒例のルール説明といきましょうか。
①素材は食べられるものであること
②一度食べると決めて取り皿に取ったら、鍋に戻さないこと
③用いる食材は各自一種類のみ(ただし出汁取りの昆布は別)
以上三つが大まかなルールです。あと、本来は事前に各自で用意した材料を入れますが、今日はその時間もないと言うことでアキさんのお家にある食材のみ使用という特別ルールが適用されます。ちなみにこの特別ルールの真の狙いはこうしておけば死につながるような物を混入させないため。つまりこの特別ルールさえあれば命にかかわる危険なことは———
「そう言えば私、カセットコンロと一緒に、“特製の”お鍋の具材も持ってきちゃいました☆」
———命にかかわる危険なことは、常に目の前に存在すると思わねば。カセットコンロ一つを持ってくるのにやけに時間がかかるなーと思ったらこういうことですか姫路さんっ……!?気を抜いちゃ駄目、集中しなくては。今回は優姉さんたちの命もかかっているのですから……
「食材は一人ずつ、他の人には見られないように持ってくる。これでいいのよね?」
「……うん、見えたらつまらない」
「それじゃ、ボクから持ってくるねー」
何も知らないAクラスのお三方は楽しそうですね。知らない方が幸せなこともありますから、何も言いませんし言えませんが。一番手の工藤さんが台所に向かった瞬間、被害者の会メンバー全員で作戦内容の最終確認に入ります。
「(それでは最期の———じゃなかった、最後の打合せです。アキさんに島田さん、お二人の言うことが正しければ今冷蔵庫の中や戸棚等にある材料は以下のものですね?)」
家主のアキさん、そして前菜を作っていた島田さんにすでに冷蔵庫や戸棚の中身については確認済み。現在冷蔵庫・及び戸棚等の中にあるものは———
野菜類:人参・玉ねぎ・長ネギ・シイタケ・ブナシメジ・キャベツ・パセリ・ルッコラ・トマト
肉類:豚肉・牛肉 魚介類:海の幸詰め合わせセット
その他:豆腐・卵・こんにゃく・牛乳・お麩(ふ)・各種調味料etc.
「(うん大体そんな感じ。覚えている範囲ではこんなもんかな)」
「(ウチも料理しながらこっそりメモとってたし間違いないわ)」
「(ありがとうございます、お二人とも。では次に各自の使用する具材を確認しましょう。自分が使うのはキャベツです)」
「(ああ。そんで俺が豆腐で明久がこんにゃくだな)」
「(ワシが長ネギ、島田がお麩じゃ)」
「(…………俺は人参を)」
自分たちが、そして大事な人たちが生き残るためには具材選びも非常に重要。各々使える具材は一種類と言う縛りがあるためにどれを使うべきか非常に悩むこととなりましたが、必死で選別した結果キャベツ・豆腐・こんにゃく・長ネギ・お麩・人参を用いて勝負を挑むことになりました。
「(オッケーです。さあ、ここからが重要です。これらの具材をどう活かすか皆さん確認していきましょう)」
「(うむ、承知した。まずワシが長ネギをそのまま切らずに端と端を輪のようにして結んでおくのじゃな)」
「(秀吉がそれを作ったら、今度は僕がその円にした長ネギの内側に沿ってこんにゃくを防壁のように配置するんだね)」
「(明久の配置後に今度は俺がその防壁となったこんにゃくにもう一つ、いいやもう二つの壁になるように豆腐と“出汁取り用の昆布”を隙間なく配置させるんだな)」
つまりは長ネギを型にした外部と内部とを隔離する円状の三重防壁を形成すると言うこと。この防壁内部に姫路さんの持ってきた物体Xが入るように誘導すれば、少なくともAクラスの3人はそれを食べずに済みます。出汁取り用の昆布すらも壁にした三重に作った防壁さえあれば物体Xが出汁に溶けても3人が食べる位置に危険はないはずです。
- 番外編:寒い日は鍋が一番!〜闇鍋?病み鍋?暗黒鍋デス〜その④ ( No.215 )
- 日時: 2015/12/26 23:45
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
「(…………次は俺。出来上がった円状の防壁内部に、葉のついてた部分を切り落とし平面で立つようにした人参を4本四方に立たせる)」
「(そう、こーさんの人参はまるでコンロのゴトク———つまり受け皿の役目を果たすわけですね。そして受け皿となったそこに自分がキャベツを置いて“皿”を作ります)」
そしてこーさんと自分で人参とキャベツを用いて今度は自分たちの命を守ります。コンロをイメージしていただけるとわかると思いますが、こーさんの人参は言わば支柱。鍋を敷くための受け皿のような機能を果たします。そこに念には念を入れ何重にも重ねた自分の使う具材、キャベツの葉を乗せて姫路さんの持ってきた物体Xを受け止めてそのまま包み込む皿のように、鍋のようにして配置。仮に少し物体Xがキャベツの皿から逃れたとしても三重防壁があるので外側に影響はないでしょう。
「(ウチは坂本の豆腐が浮き上がって隙間ができないように、そして土屋の人参が安定して立つように防壁内部にたっぷり水に戻していないお麩を入れるわ。出来るだけ出汁を少なめにしてもらうけど、お麩が汁気をたっぷり吸いこんでくれるから大分水分が抜けるハズだし多分完璧よ)」
後詰めに島田さんがお麩を入れて各種の具材の働きのサポートを行います。こうして出来たいくつもの布陣で身動きの取れなくなった物体Xは、包み込んだキャベツごと闇鍋開始後すぐに回収し、後は防壁として入れた具材を食べさえすれば誰も被害が出ずに無事全員生還できると言った作戦です。
「(よしっ!これが恐らくこの場を切り抜ける唯一の道。皆さんご自身の使う具材や加工方法、投入順番などには注意してください。では———絶対生き残りましょうっ!)」
「「「「「(おうっ!)」」」」」
「お待たせ、代表と愛子とアタシは選んできたわよ。次は造くんの番ね」
そう優姉さんに促され、緊張しつつもゆらりと立ち上がりキッチンへと向かいます。
『……どんな味になるんだろう』
『うーん、いざやるとなるとちょっと怖いわね』
『そう?ボクは楽しみだけどな〜』
何も知らない女性陣の楽しげな談笑を聞きながら、キッチンへと辿り着く自分。さて、もうすでに自分はキャベツを使うことが確定しているので、迷わずにキャベツだけ持っていくのもいいですが……
「……あれ?そう言えば優姉さんたちは何を使うのでしょうね?」
姫路さんの殺人料理にばかり気を取られていましたが、よく考えると優姉さんたちが何を闇鍋の具材に使うのかも気になるところ。まだ時間もありますし……ここはちょっぴりルール違反になっちゃうかもしれませんが、アキさんと島田さんに聞いておいた状況を元に何がなくなっているのか確認しておきましょうか。
冷蔵庫は勿論の事、戸棚や流しの下、調味料入れなどを確認してみます。ふむふむ、なくなっているのは———
①タバスコ(新品)
②タバスコ(使いかけ)
③タバスコ(ピザの付属品)
「なん、っで……なんでそうなるんですか……っ!?」
優姉さんも霧島さんも工藤さんも、激辛好きなんですか!?真っ赤な出汁の鍋が食べたいとでも言うのですか!?タバスコ一択って、何が皆さんをそこまで駆り立てたのですか!?てか、工藤さん!?貴女自分と同じ甘いもの大好き同盟の同志でしょう!?まさか裏切るのですか!?
『つ、造っ!?大丈夫!?何かあったの!?』
『緊急事態発生(エマージェンシー)か!?』
『…………ヤバいならすぐにでも戻れ造!?』
『トラップでも仕掛けられておったのか!?』
『AED必要!?それとも救急車呼ぶべき!?』
「だ、大丈夫です!少し動揺しただけですのでお気になさらずっ!?」
思わず絶叫した自分に何事かとアキさんたちが慌てて声をかけてきます。い、いけませんねこれくらいで取り乱しては。真の敵はこんなものではありませんし……確かにタバスコも普通だったら闇鍋に入れられては困る大変な食材です。そもそも自分は辛い物なんて大っ嫌い———ですが、今回ばかりはまあ許しましょう。ただのタバスコを入れられたくらいでは命に別状はありませんし。
「それにしても自他ともに甘いもの好き辛いもの嫌いと認める自分が、辛いで済むならいいと思うとは思いませんでしたよ……」
この鍋がただ単に辛い(からい)だけになるのか、それとも生命的に辛い(つらい)ことになるのかは、自分たちのこれからの作戦にかかっています。そのためにも今はツッコみを一旦放置して、生き残るべく行動しなければ。冷蔵庫からキャベツを取りだし葉を一枚一枚丁寧に剥がしていきます。
「これで———よしっ!」
後は手筈通り鍋の中で調整しつつ具材を配置するだけ。最後の作戦と共に姫路さん(の殺人料理)に打ち勝つのみですね。さあ、勝負です姫路さん(の作り出した謎の物体X)!生き残りますよ……絶対に全員で生き残ってみせますよ!
〜各自準備中:しばらくお待ちください〜
- 番外編:寒い日は鍋が一番!〜闇鍋?病み鍋?暗黒鍋デス〜その④ ( No.216 )
- 日時: 2015/12/25 21:49
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
グツグツと美味しそうな音を立て鍋が煮立って来ました。テーブルの上には姫路さんの持ってきてくれたカセットコンロと大きな土鍋。ちなみに闇鍋の特性上、中身は出汁を取るための昆布以外は何も入っていませんが、今だけはこの鍋が一番おいしいのはこの瞬間だって皆さん確信しているはず。
「それでは電気を消しますね」
姫路さんのその声と同時に、カーテンも閉め切られ真っ暗になるリビング。唯一の明かりとなるものは、ゆらゆらと揺れ灯る鍋を温めているコンロの火のみ。その火も他の人が入れる具材が何かわからない程度に明るさを絞られていますね。いよいよ開戦の時のようです。
「じゃあボクから材料入れるねー」
「愛子の次はアタシね」
「……その次は私」
純粋に闇鍋を楽しんでいる三人の声と共に、トポトポと鍋の中に選んだ具材(三人の選択したものは全てタバスコですが)を投入されます。これが普通の———いえ、そもそも闇鍋自体普通と言えるか微妙ですが———普通の闇鍋なら『まさか大福とか入れたりしてないよね?』とか『嫌いなものだったらどうしよう』などと不安に駆られるでしょうが、今日はその心配は全くありません。
何故かって?決まっています全員の命がかかっているからですよ。大福程度なら大歓迎。タバスコ?今日はどれだけ入れられようと許しましょう。こちとらこの場の全員を生還させる使命がありますからね。
「よし……それではワシから行くからの」
「秀吉の次は僕が行くね」
「その次は俺だな」
霧島さんが入れ終わったら、いよいよ作戦スタート。手筈通りまずはヒデさんが長ネギの端と端を結び輪となった防壁の“型”となるものを作りそっと浮かべます。続いてアキさんがこんにゃくで円の内側に沿って防壁作りを、ゆーさんがそのこんにゃくの防壁を更に強固なものとすべく出汁に使っている大きめの昆布と豆腐を、二人とも丁寧に素手で並べ———これで三重の防壁が完成しました。
「……次、俺」
「それじゃ、土屋の次はウチも入れるわねー」
「島田さんの次は自分ですね」
作戦の第二陣がアキさんたちに続きます。こーさんが防壁内に葉のついていた部分を切り取った4本の人参を支柱として立たせます。次に防壁と支柱を安定させるため、三重障壁の内側の水分を出来る限り少なくすべく島田さんが防壁内にたっぷりと水に戻していないお麩を入れて内部の水分を飛ばします。最後に自分がこーさんの作った人参の支柱に何重にも重ねたキャベツの皿をそっと乗せて———準備は完了しました。
「最後は私ですね」
処理班である自分たちは最善を尽くしました。後は姫路さんが物体Xを投入するのみ。処理班が固唾を呑んで見守る(?)中、姫路さんの手前に配置していた防壁内に物体Xが投入されます。
ぺちゃ…… パサッ!
最初に聞こえてきた音から察するに、物体Xは液体に近い固体のゼリーのような物ですかね。その物体Xを重ねておいたキャベツがパサッ!っと受け止めてくれた音が聞こえてきます。良かった……見えないのでまだ何とも言えませんが、一応何とか作戦通り上手くいったようですね。例え多少キャベツの皿から物体Xが漏れ出しても、防壁が優姉さんたち側を隔離しているので彼女たちに害は及ばないはずです。
「それじゃ、全員入れ終わったところでもう一度火をつけて煮込むか!」
自分だけでなくゆーさんも作戦成功を確信したのか、少し嬉しそうにそう言って鍋に蓋をしてガスコンロの火を大きくします。再沸騰までの間、優姉さんたちAクラス三人と姫路さんはどこか緊張しながらも楽しそうな雰囲気が感じられ、被害者の会フルメンバーはどうかこのまま上手くいってくれと願う空気が感じられてきます。さぁ……審判の時近しです。