二次創作小説(紙ほか)

125時間目 同棲パニック編スタート〜アキさんはハーレム男〜 ( No.224 )
日時: 2015/12/31 21:22
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

造Side


スポーツの秋———召喚獣版野球(文月学園らしいイベントでしたね)

芸術の秋———召喚獣版人形劇(文さんが色んな意味で大暴れでした)

食欲の秋———闇鍋もとい姫路さん必殺の暗黒鍋(ノーコメントです)


……と、そんな秋らしい(?)秋もあっという間に前半が過ぎ去って、季節はいつの間にやら冬を迎えつつある秋後半。吐く息はもうすでに白く、これから舞い散るであろう雪の色を連想してしまいますね。

「肌寒くなりましたねヒデさん、優姉さん。夏はあんなに冬が来て欲しいって思っていましたのに、いざ冬になればまたすぐに夏が恋しくなりますし」
「そうじゃのう。ワシも近頃は早朝ランニングが辛くなってきての。流石にそろそろ寒さが身にこたえるからの」
「まあ、そう言いながらもちゃんと毎日欠かさずトレーニングしているところは秀吉らしいのかしらね。もしかしてそれが美容の秘訣だったりするわけ?」

そんな会話を木下姉弟の優姉さんとヒデさんと三人並んでやりながら、今日も元気に文月学園へと歩んでいきます。

「美容の秘訣……いや姉上よ、そこはせめて健康の秘訣と言って欲しいのじゃが」
「確かに……ま、それはそうと本当にヒデさんは凄いですね。自分は寒いのはちょっぴり苦手で。どうにも布団から出るのが辛いんですよ」
「おお、それはよくわかるぞい。冬の季節は本当に人肌恋しくなるからの」
「ふふっ♪やっぱりそうですよねー」
「(ピクッ)人肌恋しい……か」
「ん?優姉さんどうかしたんですか?」
「何じゃ姉上、ワシらをじろじろ見て?」
「ふむ……(弟たちが同じベットの中でお互い温もりを求め合いつつ、キャッキャウフフ……そこに姉であるアタシも入って———これは萌えるッ!)」

「「っ!?」」

……な、何でしょう?今何だか物凄く背筋がゾクってなった気が……おまけに優姉さんの目がすっごく怖い気がするんですが。と、とりあえずさっさと話題を変えませんとね!

「そうそう!体育祭が終わって以来イベントらしいイベントって最近ありませんねー!何か楽しい事って無いでしょうかねー!?」
「そ、そうじゃな!おお、イベントとは言えぬかもじゃがそろそろ本格的に試召戦争が始まるのではないかの!?」
「ん?試召戦争が?」

ヒデさんナイス話題変えっ!優姉さんも試召戦争の話題に興味を向けたようですね。

「そうでしたそうでした。学園長の話では色々召喚獣の調整に(主に文さんのせいで)時間がかかったそうですが、早ければ来週の頭に戦争解禁になるかもって仰ってましたよ」
「ああ……もうそんな時期だっけ。ふふっ♪やっぱりFクラスはAクラス打倒を狙っているのかしらね?」

「「それは……ナイショで」」

「あら残念。まあこれだけは言っておくわ。私たちAクラスは皆、あの時の———そう、アンタたちと引き分けに終わった試召戦争の決着をいつかつけたいって思っているから。坂本君に言っておきなさい。“うちの代表が(色んな意味で)待っているわ。いつでも来なさい”ってね」

そう楽しそうに優姉さんは言い終わるとほぼ同時に文月学園に辿り着いた自分たち三人。そのまま優姉さんとは靴箱で分かれて今度はヒデさんと一緒にFクラスに向かう事に。それにしても試召戦争ですか……

「やれやれ。姉上は随分やる気のようじゃの」
「まあ、それは自分たちもそうですがね。打倒Aクラスはゆーさんや自分たちは勿論のこと、Fクラスにとっての最大の目標ですし」

上履きに履き替えながらヒデさんとそんな話をします。まあ、Fクラスは最低クラスの意地。Aクラスは最高クラスの誇り。それぞれ負けられない理由も信念もありますからね。それに四月にあったAクラスVSFクラスの試召戦争の決着を付けたいのはお互い様でしょうし。

「そうじゃな。とは言えのんびり屋のワシとしては試召戦争だけではなくもう少しのんびりとしたイベントもあって欲しいものじゃがの」
「あ、自分もそれは思いますよ。何せ文月学園自体が色々忙しい学校ですしのんびり出来るイベントもあれば嬉しいですね♪例えばお茶会とかどうです?」
「うむ、それは中々良いのう。他にも……おお、そうじゃ!寒くなったわけじゃし校庭で焚き火でもやって焼き芋を作るのなんてのもどうじゃ?」
「わぁ!それも素敵ですね♪季節もピッタリですし温かい焼き芋なんて最高じゃないですか♪」

そんな会話をヒデさんと笑い合いながらしつつFクラスの教室の扉を開けると———


ガラッ!


『『『ヒャッハー!!!異端者共は消毒だァー!!!』』』

『『『寒くなってきただろぉ?暖めてやるぜぇ?地獄の業火でなぁ!!!』』』

『『『そぉら!焚き火だ焚き火だ、吉井&坂本焚きィ!!!』』』』

「「あっじぃ!?ちょ、ホントに火ぃ付いてる!ホントに火ぃ付いてる!?」」

「「…………おぉう」」

———もうすでにクラスメイトの皆さんが焚き火をしていました。場所は教室で。しかもアキさんとゆーさんを燃やしながら、ね。この教室はいつから世紀末の舞台に突入したんでしょうか……?まあいつものこと(?)ですし、今は急いでアキさんたちを助けて消火しませんとね。

それにしてもこういう光景に本気で慣れ始めた自分が怖いです……


〜造&秀吉消火中〜

125時間目 同棲パニック編スタート〜アキさんはハーレム男〜 ( No.225 )
日時: 2015/12/31 20:50
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3a/index.cgi?mode=view&no=10210

「えっと、大丈夫ですか?ゆーさんにアキさん。朝から見事に燃えてましたが」
「本当にお主らロクな目に遭わんのう。流石に不憫に思えるぞい」
「やれやれ、助かったぜ造に秀吉。毎度毎度サンキューな。後おはようさん」
「おはよ造に秀吉。いつもゴメンね。全く危うく上手に焼かれるところだったよ。妬かれていただけに」
「アキさん、冗談ではすまないような事になりかけていたんですしもうちょっと危機感を持って下さいね……」

とりあえず何とかアキさんとゆーさんを解放(と介抱)して朝の挨拶をする事に。と言いますかいつもの事なので今更口に出して言いませんが、朝教室に来てみたら黒装束のクラスメイトが友人たちを燃やしているって……常識さんは何処へ逝ったのでしょうかね?

あ、ちなみに他の皆さんですが……騒ぎを聞き付けた西村先生に生活指導室兼お説教部屋に連れて行って貰いました。今頃『お前ら教室で焚き火をするなど何を考えているんだ!?』って感じでお説教中でしょうね。西村先生、本当に朝からお疲れ様です。

「そもそも一体どうしてお二人とも朝からあんな事に?」
「まあ異端審問が行われておった時点で明久は姫路と島田、雄二は霧島関係で何かあったのじゃろうがな」
「ああ、それね。それは勿論———」
「ああ、それか。それは勿論———」

そう言うとアキさんとゆーさんはお互いを指差して、

「「コイツが悪いんだ、造に秀吉」」

「「……えーっと」」

うーん。これもまた毎回の事ですが、指し合わせたように息ぴったりにお互いに指差すところとか絶対お二人とも仲が良いって思うんですがどうなんでしょうね?

「(ボコッ!)いや、それがさ。聞いてよ二人とも。このバカ雄二がさ」
「(ゴスッ!)まあ、このバカ久の言う事なんか無視して聞け二人とも」
「アキさんたち。せめて殴り合いながら説明するのは止めましょうね」
「FFF団がFFF団なら、明久たちも明久たちじゃのう」


〜明久&雄二 回想スタート〜


『ふわぁああああ……眠っ。あ、おはよ雄———』
『……おい吉井バカ久。世界一バカなお前に一つ話があるんだが?』
『ってちょっと!?なんで朝の挨拶すっ飛ばして人の名前を変えて呼ぶのさ!?失礼だぞバカ雄二!』
『お前が改名した事なんざ俺にとってはどうでもいい……バカ久、キサマ姫路と島田。この二人と同棲していると聞いたんだが、それについてお前から言いたい事はあるか?』
『………………ナンノコトカナー?』
『しらばっくれんな!すでに裏は取れてんだよ畜生がっ!テメェのせいでな……テメェのせいでナァ!』
『ちょ、ちょちょちょっと待って!?な、何で!?何で雄二がその事知ってんの!?バレないように二人には後から学校に来て貰うようにしてたのに!?』
『お前の二人の女房が翔子に包み隠さず幸せそうに話しちまったんだとよ!お陰で俺の自由は風前の灯。お先真っ暗!……クタバレこのバカの帝王!』
『し、しまった……二人に口止めするのすっかり忘れて———って危な!?いきなり殴りかからないでよ!いや、てか何でその事で雄二がキレてんのさ!?』
『うるせぇ!テメェが姫路と島田と同棲なんてとんでもねぇことするから俺は……俺はっ!』
『???俺は、何さ?』
『翔子と同棲させられちまう事になっちまったじゃねぇか!今すぐにでもキサマと夏休みに余計な約束しちまった俺を殺してやりたいわ畜生めっ!』←バカな自分は召喚獣?〜夏休み編〜 それぞれの夏の過ごし方〜後編〜参照
『…………そうか、坂本雄二はとうとう霧島雄二になるんだね。おめでとう!そしてそのまま果てろ!』
『何がおめでとうだ!夢のハーレムなんか作りやがったお前の頭がおめでたいわ!』

『『『ほう…………やっぱりお前ら仲が良いな……吉井に坂本よ』』』

『『どこがだ!こんな女たらしと一緒に……げっ!?』』

『『『HAHAHA!謙遜するな。二人仲良く———まとめてあの世へ送ってやるから安心しろ異端者共』』』


〜明久&雄二 回想終了〜


「(ドゴォ!)ってわけなんだよ。つまり雄二のアホのせいで異端審問会に瑞希と美波との同棲がバレちゃったってわけなんだ」
「(ドゴォ!)ってなわけなんだ。つまり明久のバカのせいで翔子と同棲させられる上に異端審問会にとばっちりを受けたんだ」

と、そこまで(結局最後まで殴り合いながら)説明されたんですが……なるほどわからん。そもそもアキさんと姫路さんたちが同棲するって話は何処から来たんでしょうか?

「あの、それ以前にどう言う経緯でアキさんと姫路さん&島田さんの同棲生活がスタートしたんですか?初耳ですよそれ」
「そうじゃの。いくら好きあっているとはいえ流石に同棲なぞいくらなんでも早過ぎではないかの?」
「お?そういやその辺りは俺も知らんな。バカ久、説明しやがれ」
「あ、そう言えば説明するの忘れてた。てか雄二はその辺の話を知らずに仕留めようとしないでよ。実はね———」


〜明久再度説明中〜

125時間目 同棲パニック編スタート〜アキさんはハーレム男〜 ( No.226 )
日時: 2016/01/01 21:26
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

ふむふむ……アキさんのお話を聞くに同棲を始めたのはこの前の闇鍋パーティが終わったその日からだそうです。何でも姫路さんのご両親が空港のストライキに巻き込まれ海外から帰ってこれなくなったと言う電話を彼女のご両親から受けた事から始まったとのこと。

「ああ、アレですか。空港が当分の間使用できないんですよね。実はうちの母とサクヤさん、蒼兄さんもちょうど海外に行っててそのせいでまだ戻ってこれないんですよ」
「え、日高先生とか造のお母さんたちまで?それ大丈夫なの?」
「はい。サクヤさんは死ぬほど寂しがっていましたが……まあ、我慢してもらうしかないですし。母さんは蒼兄さんたちに任せておけば大丈夫ですし。家には偶に帰ってくる父とお手伝いさん&執事さんも二人ほどいますので心配ないですよ」

ちなみに母さんはまだまだ遊び足りなかったようですから、ちょうど良かったと喜んでいた模様。おとーさんによろしくねーと言ってましたね。

「そっか、なら良かったよ。それにしてもあのストってしばらく続くらしいね。———で、話を戻すけど、瑞希の電話を受けたときは瑞希は美波の家にでも泊ってもらおうかなって思ってたんだけど……」

ところがどうした事でしょう。姫路さんの電話の直後、今度は島田さんも同様に彼女のご両親から連絡があったそうで。しかもその内容はたまたま海外出張していた島田さんのご両親もそのストライキで帰れなくなってしまったとの事。

「それはまた難儀じゃのう。と言う事は島田と葉月ちゃんもご家族の方がおらんのか」
「うん。それで最近は物騒だし流石に美波と葉月ちゃんの二人もほっとけないでしょ?で、僕と瑞希と美波の三人でどうしようか話合ったんだけど」
「玲さんが“お二人ともご両親が戻られるまで、我が家に滞在しませんか?勿論葉月さんも呼んで”って提案した、と?本当かソレ?正直に言っちゃ玲さんに悪いが、お前の姉貴らしくねぇぞ」
「まあ、あんなのでも根は良い人だからね。困っている二人を見逃せなかったっぽいし」

そんな事を言いつつ、若干アキさんの顔は誇らしげ。アキさんも何だかんだで玲さんの事を尊敬していますからねー。今回は特に困っている姫路さんたちに手を差し伸べた事もあって嬉しいんでしょうし。

「って言うわけで瑞希と美波のご両親が戻るまで僕・姉さん・瑞希・美波・葉月ちゃんで同棲———と言うより共同生活って言った方が良いのかな?———をしてるって事。先に言っておくけどやましい事をやってしまったその日には僕、姉さんから利き腕以外全て折ってあげますねって宣言されてるし安心していいよ」

「「「なるほど」」」

それはまた中々の大所帯ですね。つまり一時しのぎのルームシェアみたいな感じってことでしょうかね。

「それにしても姫路に島田に島田妹。それに玲殿か……確かに雄二の言う通り、明久ハーレムと言えなくもないのう」
「ちょ、秀吉!?それどういう意味!?なんかその言い方だと僕がすっごい悪い男みたいに聞こえるんだけど!?」
「どうもこうも秀吉の言う通りじゃねえか。つーか明久は何気にシスコンでロリコンだからな。ちょうどいい機会だし姫路と島田にはその辺を矯正して貰えや。ともかくこれで翔子を止められるぜ。ったく世話掛けんな明久」
「そして雄二、キサマ勝手に話ややこしくした挙句に何で僕に不名誉なあだ名をつけようとするのかな?」
「あはは♪アキさんなら危ない事にはならないと思いますし、玲さんもいらっしゃいますから厳密に同棲ってわけではないのでしょう?安心しましたよ」
「つ、造ありがとう!君ならわかってくれると信じてたよ!造は僕の“女神”様だ!」
「……前言撤回します。まさかアキさんが自分をそんな目で見ていたとは。少し心配になってきましたよ。思わずおまわりさんにつーほしちゃうかもしれませんね」

「「二人の女房がいる上に、シスコンでロリコン、更にはショタコンか……」」

「って!?またしても不名誉なあだ名が追加された!?」

気のせいですよー気のせい♪全く、誰が誰の女神ですか。

『おはようございます……ってあれ?』
『おはよー……ってあらら?何か人少なくない?』
『おはよう姫路に島田。二人が予鈴が鳴って入ってくるとは珍しいな?ともあれそろそろHRだから席に着きなさい』

『『あ、はい!』』

そうアキさんをからかっていると、話題の姫路さんと島田さん。そしてクラス担任である西村先生もいらしたようです。さてさて、そろそろ朝礼の時間ですね。アキさんを弄るのはこの辺にして席に着きましょうかねー

「姫路さんたちもいらしたようですね」
「ついでに鉄人もね。んじゃとりあえずさっさと席に着きますか。それと雄二と秀吉はいい加減僕を変な目で見るのは止めてよね」
「……(ボソッ)お主が造を変な目で見るから悪いのじゃ」
「へいへい、っと。しかしそう言う事情なら安心だな。ったく翔子も異端審問会の連中も早とちりしやがって。ちゃんと明久の話を聞けば同棲でも何でもないってわかるだろうにな」
「そして雄二、それ話を聞かずに問答無用で僕に殴りかかったキサマが言えたことじゃないと思うんだけど」
「まあまあアキさん。さ、皆さん早く席に着きましょう。朝礼が始まるようですよ」

と言うわけで色々朝からありましたが、何とか朝の朝礼を(クラスメイトの大半が生活指導室逝きと言う結果になりましたが)迎える事が出来ました。さて、今日も一日頑張っていきましょうねー












……そう。この時は自分もゆーさんの言った通り、アキさんの先程の説明を聞けば皆さんも納得するとばかり楽観的に考えていたのですが。


———生活指導室———


『……どうして吉井や坂本のようなバカ共がモテて、このナイスガイな俺がモテんのだ』
『片やバカ共は女の子とウハウハ天国の同棲生活。片や俺たちゃムサっ苦しい鉄人と地獄の指導室逝きだと?こんな理不尽が何故許される?俺らはただ異端者を断罪していただけだと言うのに』
『……許すまじ吉井明久、坂本雄二、ついでに最近工藤と噂のあるムッツリーニ』
『ヒャッヒャッヒャッ!須川会長ォ……俺たチの誇リ高き異端審問会ノ在り方、そロソろ本気でアの腐レ外道共ニ知らシメなきゃナらなイって思いマセんかねェ?』
『……諸君、静粛に』
『っ!かっ、会長っ!?アンタまさかこのまま黙っているつもりじゃないでしょうね!?』
『いいから静粛に。落ち着いて私の言う事を聞いて欲しい……どうか安心したまえ。君たちの悔しさやアイツらへの恨み妬み憎しみ怒りそして殺意。全てを私は理解している。この際ぶっちゃけて言おう』

『『『……』』』

『…………吉井、坂本、ムッツリーニ。アイツら羨ま死ねええええええええええええええ!今度という今度はマジで堪忍袋の緒がブチ切れだぜヒャッハー!もう拷問だけじゃ物足りんッ!死刑なんて生温いッ!ここで輪廻すら絶ってやるッ!お前らも同じ気持ちだろうが同志諸君っ!?』

『『『Yahaaaaaaaaaaaaaaaa!!!』』』

『異端審問会会長・須川亮!今ここに、全リア充滅する宣言をさせて貰おうッ!手始めにまずはあの調子に乗っている三バカを葬ってやるッ!諸君———宴の準備をッ!』

『『『どこまでもついていくぜ会長ぉおおおおおおお!!!』』』

……ですが。アキさんと姫路さん&島田姉妹との同棲という一つの事実に対して、自分を含めいつものメンバー一同が甘く考えすぎていた為に今回のお話が非常に厄介なものになるなど、この時は誰も気づいていませんでした。

Re: バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 ( No.227 )
日時: 2015/12/31 22:50
名前: ユウ (ID: xlie8b7H)

…こんな1人寂しく年末を過ごしている自分に対して、明久達は同棲でキャッキャッウフフ…だと?

…フフフ、どうやら明久達にはドギツイ報復が必要なようだな…?

っという訳で!FFF団の諸君!!今回の復讐劇。我々ユウ商会も裏から援護させて貰うぞ!!

まず手始めに君らには麻痺毒を塗った刃物と麻酔針200個入りの銃器をそれぞれ42本ずつ無償で提供させて頂く!!

その他にも、金さえ出してくれれば、うちの最強問題児達も貸し出して上げよう!!

さあ、武器を取れ野郎共!!我らの聖戦は今より始まるのだ!!

FFF団『オオオオオオオーーーーー!!!』

うずめ「…なあ、アベっち?エルッち?ユウの奴は一体如何しちまったって言うんだ?」

アベル「自分の今置かれている環境と吉井君達の環境を妬んでいるだけだから、今はほっといてあげよう…けど」

うずめ「…けど?何だ?」

アベル「もしも本当に僕達が貸し出されたその時はユウを無力化した後、僕は吉井君達の援護にまわる」

エル「エルもそうするよ。だってFFF団の人達って悪役っぽいし、それよりもアッキーや造るん(造のことです)達と一緒の方が、皆が笑ってられそうだからね♪」

うずめ「…だな!よーし、だったら俺もアッキー達の援護をさせて貰うぜ!」

Re: バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 ( No.228 )
日時: 2016/01/01 21:04
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

>ユウさん
新年明けましておめでとうございます。今年もどうかよろしくお願いします。そして毎回感想ありがとうございます。

さてさて、いよいよ始まった新章ですが……甘い甘い明久たちの同棲生活が発端で、FFF団に怪しい動きアリ。と言うか……もげろ明久。いやモテ久。

明「だから厳密にいうと同棲生活じゃなくてね……」
雄「ま、あのバカ共からしてみれば羨ましいのもわからんでもないがな」

ハハハ……このモテ男共余裕じゃのう———今回手加減無しで徹底的にいじっちゃるから覚悟しなさいな……っ!新年早々リア充共をぶん殴りたくなるわ畜生……!いっそユウさんに続いていこうかな……

造「いや、話を書く糖分までそっち側に付いたら話が進まないでしょうに……」
秀「何というか……僻みとは恐ろしいのう」

……まあ、とは言えアベルやらエルやらうずめやら……敵にまわすのはちょっと無理っぽいし……しばらくは明久たちは皆さんと平和な日々に感謝すると良いさ。


さて。そんなこんなで二話目もそろそろ行きましょうかねー。今年初めての更新。皆さんどうかよろしくです。

126時間目 文月学園と言えば〜何と言っても試召戦争!〜 ( No.229 )
日時: 2016/01/01 21:25
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

———学園長室———


『悪かったね。折角の昼休みに呼び出しちまって』
『いいえ、構いませんよ。それで学園長先生、私を呼び出したのはやはり例の件でしょうか?』
『あぁそうさね。ま、それもあるがもう一つ……って、あのジャリガキはどうしたんだい?アタシはアンタと一緒に来るように言っておいたハズだろうに』
『はい?いえ、私は彼から“もうヨウジがオワッタからジユウにガクエンをケンガクしてイイ”と学園長先生から直々に許可を貰ったと聞いて来たのですが?』
『……あんのガキ、また逃げ出しやがったね。ホント喋り方といい行動といい、どっかの生意気なシステムによく似てるさね。と言うか———アンタもアンタさ髙城っ!毎度毎度簡単に騙されるんじゃないよ!これで逃げられたのは何回目だい!?』
『っ!?ま、まさか“あれも”嘘だったのですか!?』
『……このやり取りも何回目になるのかねぇ?アンタが三年の、そして学園の代表なのか時々本当に分からなくなるよ。こんな事なら髙城、アンタじゃなくて小暮か学年は違うが月野あたりに頼めばよかったのかもしれないね……』


———昼休み———


造Side


朝に起きたクラスメイト四十四名によるアキさん&ゆーさんへの放火事件以外は何事も無く時間は過ぎて、楽しいお昼休みの時間となりました。いつものようにアキさんの席を中心にこれまたいつものメンバーでお弁当を広げてランチタイムの始まりです。

「…………なるほど。姫路と島田、おまけに島田妹と同棲か。明久もげろ」

コンビニのおにぎりを片手に半分面白そうに、そして半分妬み交じりに(?)そんな事を言いつつ自分たちの下にやって来たのは土屋康太くん———こーさんです。朝の事情を知らないこーさんに諸々の説明をしておいたんですが、こーさんはアキさんとゆーさんが焼かれかけたと言う事実よりもアキさんと姫路さん&島田さんとの同棲生活の方が気になるみたいですね。

「あのさムッツリーニ、キミは人の話をちゃんと聞いてた?だからそれは———」
「…………数少ないクラスの女子二人と同棲か。異端審問会が荒れるのも無理ない。もげろ」
「だ・か・ら!厳密に言うと同棲じゃないって言ってるのに!聞いてないでしょムッツリーニ!?」
「ま、明久が何と言おうと勝手だが……この二人は同棲生活を満喫しているようだぞ」
「へ?」

ニヤニヤとそんな事を言うゆーさんが指差した先には……あらら。

「「アキ(明久君)と同棲……えへへ♪新婚さんみたいで……えへへ♪」」

そう、ゆーさんが指差した先には姫路さんと島田さんのお二人が幸せオーラを出しまくってぽわぽわしている姿が。どうやらアキさんとの同棲生活がよっぽど嬉しいようで、今日はずっとピンク色の何か(=ノロケ的な何か)を出していますね。

「ふふっ、お二人とも本当に幸せそうで何よりですね。アキさん、ご馳走さまです♪」
「こやつら今日は四六時中ピンク色のオーラを飛ばしておるしの。コーヒー(無糖)が飲みたくなるのう。これは明久にコーヒー奢ってもらわねばならぬのう」
「み、瑞希……美波……二人ともお願いだから戻ってきて!じゃなきゃ僕が恥ずかしくて死んじゃうよ!?」

「「えへへ……♪」」

「だ、ダメだ、すでに別の世界にトリップしてる……」

こんな感じでアキさんですら話しかけても聞こえていない模様。そうかと思えば休み時間中『明久君が朝食とお弁当を作ってくれたんです!エプロン姿が素敵でした!』とか『アキっていかにも家庭的な主夫って感じでカッコいいのよ♪写真撮ったし見る?』といった感じで自分たちの周りに砂糖を撒く始末。ご飯食べる前ですが、ホントご馳走さまって感じですね。

「…………これで同棲していないって言う方がおかしいが?明久もげろ」
「だぁああああああああ!もう、みんなしてからかうのは止めてって!この話はお終いっ!———と言うか、朝はムッツリーニいなかったけどどうしてたのさ?」

126時間目 文月学園と言えば〜何と言っても試召戦争!〜 ( No.230 )
日時: 2016/01/01 21:33
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

流石に居たたまれなくなったアキさんが急に話題を変える事に。ふふっ、青春ですかねー♪あ、それにしても確かにこーさんが朝いなかった事はちょっと気になりますね。

「ん?そういやムッツリーニは今回異端審問会に審問されてなかったな。明久の言う通りお前今日はどうしたんだ?工藤のトコにでも行ってたのか?それとも盗撮か?」
「何で選択肢にナチュラルに“盗撮”って項目があるんですか……?いえ、普段の行いから否定できないこーさんの悪癖だとは分かってはいますが……」
「おまけにムッツリーニも審問対象になっておる事を前提で話を進めるのもどうかと思うのじゃが……まあそれはFFF団じゃから仕方ないのかの?」
「…………その前に雄二。何故開口一番に工藤の名が出てくる。と言うか、忘れたのか?雄二の依頼を受けていたんだが」
「ん、依頼……?あ、ああ“ソレ”か!いやすまんすまん、明久たちの同棲問題のせいでうっかり忘れてたぜ」

「「「依頼?それって……?」」」

と、さっきまでのアキさんやこーさんをからかっていた時とは違い突然真剣な顔になって自分たちを見回すゆーさん。どうやら真面目なお話のようですね?あ、ちなみに姫路さんと島田さんのお二人は完全に自分の世界に入っててゆーさんの話を聞いていないようです、はい。お二人には後でアキさんから説明して貰うとして———

「そりゃ決まってるだろ、今週から解禁される試召戦争の事だ。その諸々の件でムッツリーニに色々と調査をして貰っていた」
「試召戦争の事って……もしかして雄二はムッツリーニにAクラスの事情を調査して貰ってたとか?」
「…………“半分は”な」
「やっぱり———って半分?それってどう言う意味さ?」
「最大の目標は打倒Aクラスだから、勿論Aクラスの動向を調べて貰ってはいる。———だが、それ以上に大事な事があるだろう?」
「む?Aクラスの動向より大事な事じゃと?一体なのじゃ?」
「お前ら忘れてんな。よく思い出してみろ。俺たちFクラスの立ち位置を踏まえてな」

ゆーさんの問いかけにちょっと考えてみる事に。えーっと、つまり試召戦争が解禁される事とFクラスの現在の立ち位置を思い出せってことですよね……うーん?

「あ。ああなるほど……そういう事ですか。それってつまり……Fクラスに攻めてくる可能性のあるクラスの動向を探ってたとか———でしょうか?」
「…………流石、造」
「え、Fクラスに攻めてくるクラスの動向?何でそんな事考えなきゃいけないのさ。僕ら胸を張って言える事じゃないけど最低クラスなのにそんなクラス狙う必要ないんじゃないの?」
「それはえっと……ホラ、最初のAクラス戦は引き分けでそのお陰で今Fクラスの設備ってBクラスに近いものとなっているじゃないですか」

そう、四月のAクラスとの試召戦争の結果、最低クラスのFクラスが最高クラスのAクラスと互角に渡り合い引き分けとなったことで学園長から教室設備のランクアップをやって貰った自分たちFクラス。その設備が狙われちゃうってことですね。

「うん。今はBクラス並みか下手したらそれ以上の設備かもね」
「そうですね。ですが“二年生最低クラスのFクラス”なのにですよ?これってA・F以外のクラスからしたらどう思われると思いますか?いくらAクラスと引き分けになったとはいえ普通は理不尽って思われるんじゃないでしょうか」
「ふむ、そう言われてみればそうじゃな。二学年最低クラスのワシらFクラスが最高クラスのAクラスに近い設備を持っておるとなると———他のクラスからしたら不満が出るのも不思議ではないのう」
「逆に今の今まで不満が表に出なかったのは、あのババァの突発的なイベントが満載だったせいで文句を言う暇もなかったからだな」

ヒデさんとゆーさんそう返してくれます。そう、今までは四月の試召戦争が終わった時点で清涼祭やら強化合宿やら肝試しやら体育祭。そして召喚獣の調整の為の試召戦争の一時休戦———そんな大きなイベントや調整だらけでどのクラスも攻め込む機会がほとんどありませんでした。ですから恐らく二学期からは試召戦争が荒れるでしょうね……

「そして……恐らく試召戦争解禁後は自分たちFクラスがどのクラスよりも宣戦布告を受ける可能性があると思います。下手したらAクラス戦をする暇もないかもしれませんよ」
「ほほう。なら、折角だ。造がそう思う理由を教えて貰えるか?」

と、何やら面白そうな顔で自分に考えを説明してくれと促すゆーさん。

「いや、だって普通そうでしょうゆーさん。他のクラスからしたらトップクラスの学力と実力を持つAクラスの設備を狙うより、能力にバラつきがあって穴があり過ぎる自分たちFクラスの新しくなった設備を狙った方がリスクも少なくて安全に攻め込みやすいですもの」
「む……それもそうじゃな」

と言うか、爆発力はあるもののやっぱりFクラスだけあって基礎的な学力が他のクラスと比べて低いのは事実です。それなのにBクラスに近い設備を持っているなんて鴨が葱を背負って鍋を沸かしているようなものですし。

「でしょう?確かに今のAクラスの設備よりもワンランク下がりますが、それでも自分たちの設備が欲しいクラスはいっぱいいるハズです。おまけに一学期から色々と暴れまわっていたFクラスってことで、全クラスから目の上のたん瘤のように思われているかもしれません」
「げっ……つまり最悪全クラスに狙われてもおかしくないってことか……そっか。一学期は僕らの教室って最低設備だったし攻め込むことだけ考えれば良かったけど、これからは狙われる事も視野に入れなきゃいけないんだね」

そこまで自分が説明してみると、アキさんもなるほどといった表情で納得してくれます。

126時間目 文月学園と言えば〜何と言っても試召戦争!〜 ( No.231 )
日時: 2016/01/01 21:20
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

「恐らくそうだと思うのですが……自分の考察、どうでしょうかゆーさんにこーさん?」
「ビンゴだ造。理解が早くて助かるぜ。俺も造と同じことを考えていてな、とりあえずムッツリーニには全クラスの動向や現状を調べて貰っていたわけだ。で、ムッツリーニ。その肝心の首尾はどうだったんだ?」
「…………バッチリ。今説明する」


———以下ムッツリーニによる全クラスの動向説明———


〜Aクラス(クラス代表:霧島翔子)〜
動きなし。と言うよりいつどんな時も迎え撃つ準備が整っている模様。弱点らしい弱点も無く前回の対Fクラス戦での引き分けという結果をバネに、更に実力を付けてきている様子。余談だが代表の霧島曰く『……雄二を婿に迎える準備もバッチリ』との事。雄二もげろ。

〜Bクラス(クラス代表:根本恭二)〜
Bクラス自体は勝っても負けても同じ設備、もしくは更に設備を落される可能性がある為Fクラスをどうこうしようと言う気は無い様子。ただしあの代表の根本が最近少し様子がおかしいとクラス内で噂になっているらしい。根本の動向は調査不足の為不明。

〜Cクラス(クラス代表:小山優香)〜
現状最も敵に成り易く厄介なクラスと思われる。実力的には中堅のクラスでもあり代表の小山は中々の切れ者な上、現在Bクラス上位の学力を保持している。おまけにここのところCクラス内で怪しい動きも見られるようで様々な意味で要注意クラス。

〜Dクラス(クラス代表:平賀源二)〜
前回の試召戦争でFクラスに負けた最初のクラスと言う事で、Dクラス内でライバルクラスとして見られている模様。Cクラス同様に敵に成り得る可能性がある。尤も島田や明久を交渉に使えば一番御しやすい———コホン、交渉しやすいクラスとも言える。

〜Eクラス(クラス代表:中林宏美)〜
目立った動きは特に無し。今まで通り部活に打ち込んでいる生徒が多いので、Eクラスが望んで試召戦争を仕掛ける気は今のところ無い模様。ただしこの前の召喚野球大会の件で代表の中林を含む数名は雄二&明久に一矢報いたいとは思っているらしい。


———説明終了———


「…………こんな感じ。後で個人の成績データもなるべく最新版にしてまとめて渡す」
「おう、助かったぜムッツリーニ。大体わかった」
「やっぱり今回は全クラスが敵に成り得るって事なんですよね。これまた中々厳しいですね」

これって下手をすれば……試召戦争解禁直後に全てのクラスから宣戦布告って事も視野に入れるべきかもですね。絶対忙しくなりますよコレ。

「なるほどね。設備のランクが上がった事も良い事だけじゃないってことだね」
「…………どの道遅かれ早かれこうなる運命だっただろうがな」
「上位設備を持つクラス故仕方ないのう。それで、どうする気なのじゃ雄二よ。Aクラスに宣戦布告をする準備をするか、それとも防衛の為の準備をするかで作戦も違ってくるのじゃろう」
「(根本の様子がおかしい……か。ムッツリーニには詳しい情報を調べてもらうとして)ま、何とかするさ。とりあえず弁当でも喰いながらその辺の話をするぞ。流石に腹減ったしな」
「そうですね。今すぐどうこうって話でもないでしょうし、腹が減っては何とやらです」
「んじゃ、まずは腹ごしらえだね。瑞希と美波もお昼ご飯に———って二人ともまだポーっとしてる……おーい二人ともー!ご飯食べるよー!」

と言うわけで、その辺の戦略はお昼を食べつつやる事に。さてさて、二学期からの試召戦争は一体どうなる事やら。……文月学園と言えば試召戦争。二学期が始まってしばらく経ちますが、ようやく文月らしい日々が———つまりはまた楽しくも忙しい日々が始まるってところですかね。






『くっくっくっ……そのお前らの楽しみに待っている試召戦争、敵が他クラスだけだと思うなよ。坂本・吉井・ムッツリーニ———試召戦争が始まった瞬間、キサマらの命運もそこで尽きる……』
『会長、では早速動きますか?』
『まだだ。下手に動くとムッツリーニに感づかれる。もし我らの動きがアイツらに知られれば吉井や坂本のいつもの悪知恵で対処されるだろうからな。そうなっては計画はお終いだ。慎重に動くべきだろう』
『確かに……わかりました、歯がゆいですが今は機会を待ちます』
『うむ。どちらにしても試召戦争が解禁されるまで時間がある。悔しいだろうが今は耐えるのだ。一先ずあの作戦会議を行う。作戦名———本能寺の変もとい“Fクラスの変”をな』

『『『ハッ!了解です会長!』』』

Re: バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 ( No.232 )
日時: 2016/01/01 21:55
名前: ユウ (ID: xlie8b7H)

新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

…さて、新年の挨拶はこれくらいにして、須川さん、号令をよろしくお願いします。

須川「すまないな。ではマイクをお借りして…Are you ready guys!?(いいか野郎共!?)」

FFF団員『yeaaaaaah!!!』

須川『Here we go!!(突き進むぞ!!)』

FFF団員『yeaaaaaah!!!』

異端審問会会長『Let's bloodstained Party!(血塗れの宴を始めよう!)』

FFF団員『yeaaaaaah!!!』

…フフフ、武器を与えたことによって、FFF団の皆様の士気もうなぎ登りの状態ですな?

…さて、後は彼らにグレネード為らざる、アベルのケーキを持たせるのみ(凶器であることは実験《自分を使って》を得て理解済み)

雄二とムッツリーニはまだ許容範囲内だから、今は置いておくが、明久だけはこの間の同棲してない発言を聞いて堪忍袋の緒が切れた!!

奴だけは必ずこの世から滅してくれるわ!!アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!

飛鳥「…ねえ、十六夜君。さっきからユウの調子がおかしいのだけれど」

十六夜「ほっとけ、そのうち勝手に自滅するだろ」

耀「異議なし。アムアム(姫路さんに頼んで作って貰ったKILLパッチョを食べながら返事する笑顔な耀)」

飛鳥(…春日部さんってば青酸カリウムが生成されているはずのあの料理をおいしそうに食べているわね)

十六夜(こいつの胃袋は一体どうなってやがんだ?)

ん?おいしそうなカルパッチョを食べてるな?お兄さんも一口パク

3人『あっ…』

















姫路「えへへ、明久君と同棲、明久君と同棲」

美波「もう、瑞希ってば、さっきから同棲しか言ってないじゃない」

姫路「そういう美波ちゃんもずっとニコニコした顔ですよ」

姫路・美波『『エヘヘ/////』』


《アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!》


姫路「あっ、流れ星!」

美波「こんなお昼に見られるなんて、とても幸運ね」

姫路「そうですね!まるで私達と明久君の同棲を祝福してくれているみたいです!」

美波「あっ、それウチも思った!」

姫路・美波『『・・・・・・エヘヘ////////』』

Re: バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 ( No.233 )
日時: 2016/01/08 20:56
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

>ユウさん
遅くなりましたがあけおめことよろです。

いよいよ試召戦争解禁秒読み!……何だけど、どうにもこうにも怪しげな奴らが何か企んでいて———これでいいのかFクラス。……なんて言ってみたものの、それって結局いつものFクラスですよねー

造「……それでいつも通りで済ませられる自分たちのクラスって一体……」
雄「バカばっかだからな……クラス代表としては頭が痛くなるぜ全く」

あちらの方では幸運なことに(?)必殺料理———と言うか姫路さん&耀のナイスフォロー(?)で何とかなったけど、こっちではFFF団の企みに気づいていないいつものメンバー。大事なAクラス戦前だと言うのにそれでいいのかFクラス。……うん、やっぱいつものFクラスだコレ。

明「さっきから同じことばっかり言ってるし……」
秀「まあ、いつものFクラスじゃしのう……」

真面目な話、姫路さんの料理を使えれば鎮圧は可能でしょうけど、今回の造や明久たちはのんきに構え過ぎていてFクラスのイライラに気付いてすらない状態なんですよね。それが還ってFFF団の怒りのボルテージを上げまくっているこの状況。さてさて、これから先どうなることやら?

てなわけで、そろそろそんなのんきな一時の幸せな時間を過ごしているいつものメンバーのお昼休みのお話から入っていきますね。今回もよろしくです。

127時間目 進軍?防衛?今後の計画〜作戦会議と昼休み〜 ( No.234 )
日時: 2016/01/08 21:14
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

造Side


今週末から解禁される試召戦争の件で中断していたお昼でしたが、とりあえずお腹も減りましたし食べながら戦略を練る事にした自分たちFクラス仲良しメンバー。腹が減っては何とやらですし。

「…………?明久が弁当なんて珍しい」
「へ?あ、そっか。ムッツリーニには言ってなかったっけ。瑞希たちの朝食作るついでにまとめて作って来たんだよ」

と、机で(珍しく)弁当箱を広げるアキさんを不思議そうに見つめるこーさんにアキさんが照れながらそう話します。そう言えば姫路さんたちが休み時間に『アキ(明久君)にお弁当を作ってもらった』ってノロケて———もとい言ってましたね。

「えへへ♪明久君の手作りのお弁当です。今日は本当にお昼が待ち遠しかったです」
「ふふっ♪瑞希ったらはしゃいじゃって。って言うウチも楽しみだったんだけどね」

そう言ってお弁当を大事そうに開ける姫路さんたちの方を見ると———なるほど確かにアキさんとお弁当のおかずが一緒みたいです。しかも流石は料理上手なアキさんの作ったものなだけあって、とても美味しそうですね。

「…………三人とも同じ弁当とはな。もげろ明久」
「ハハッ!このリア充め、爆発しろ明久」
「お嫁さんがいる雄二が言うな!ってか、そんなこと言っていいのかなムッツリーニに雄二?僕の次の言葉を聞いたら皆感謝せざるを得なくなるのに」

「「「「感謝?」」」」

そんな風にからかうこーさん&ゆーさんを少しジト目で急にそう言うアキさん。はて?それってどう言う意味でしょう?何故に感謝する事に———

「(ボソッ)僕が作らなきゃ瑞希が皆の分までお弁当を作ってたんだけど?」
「(ボソッ)そうそう、そうだったわ。ウチも瑞希を止めるの苦労したのよ」

「「よくやった明久に島田っ!」」

「アキさんっ!自分のお弁当のおかず、好きなの持っていってください!」
「うむ!島田もワシのも好きな物を持っていくと良い!」

ホントにナイスですアキさん島田さん!あ、危なかった……そうですね、アキさんか島田さんのお二人が作らなきゃ姫路さんが料理を作る事になるんですし、そう考えるとアキさんたちの同棲生活って色々と(命的な意味で)綱渡りな生活って事なんですよね。なんて恐ろしいのでしょう。

「?皆さんどうかしたんですか?」
「何でも無いよ瑞希!さあ、早く食べようね!」
「あ、はい。お腹空いちゃいましたもんね」
「そうしましょうねー!では……頂きます」

「「「「「「いただきます」」」」」」


〜少年少女昼食中〜


それはさておきようやくランチタイムです♪皆さんでお弁当の中身を交換したり、おかずのレシピの話で盛り上がったり、アキさんとゆーさんがおかずの取り合いをしたり、姫路さんが「バルサミコ酢って酢酸にバルサンを加えたものですか?」と不穏な発言をしたりと———あ、あれ?これ楽しいお昼ですっけ?

ともあれ色々ありましたが久しぶりに(姫路さんの手料理を食べることなく)無事に昼食を乗り切り、自分の作ったモンブランを出して皆さんに配り終えたところでゆーさんが先程の話の続きを話し始めました。

「サンキュー造。さてお前ら、それ食べながらでいいから聞いてくれ。さっきの話に戻るんだが」
「さっきのと言うと……今後の試召戦争の計画ですか?」
「ああ———っと、その前にムッツリーニ。手間かけさせて悪いがこの話が盗聴されてないか確認して貰えるか?もう情報戦は始まっているだろうからな、念には念を入れておきたい」
「…………30秒くれ」

そう言った次の瞬間、こーさんが懐からよくわからない機械(?)を取り出したかと思うとその機械を持ったまま一瞬のうちに教室の四方へ移動して———ジャスト30秒で元いた位置に戻って来ました。

「…………問題無し。盗聴盗撮の気配無し。教室内にはFクラスの連中だけ。廊下にも他クラス生徒はいない」
「よし。んじゃ早速さっきの話の続きといくか」
「確か仕掛けるか防衛するかじゃったかの?」
「ああ。で、とりあえずの俺の意見なんだが———今回は“防衛戦”を前提に準備していこうと思う」

「「えっ?防衛戦?」」

そんなゆーさんの言葉に見事にハモりつつ思わず聞き返してしまう自分とアキさん。ゆーさんが防衛戦……?何だかちょっと意外ですね。

「ん?なんだ明久に造?二人してそんな意外そうな顔して」
「いやだって……雄二が守りに徹するなんて、ねぇ?雄二らしくないじゃない?何と言うか随分消極的って言うか」
「そうですね。自分はゆーさんの事ですし、他クラスから狙われる前に先手必勝でAクラスを落とすかなって思っていました」
「むぅ。そう言われれば確かに雄二らしくないのう?」

ゆーさんのこれまでの行動から考えると、宣戦布告を受ける前に真っ先にAクラスに攻め込むかなって思っていましたからね。それはアキさんたちも同じように考えていたらしく、頭に疑問符を浮かべている模様。

「まあ待て。お前ら何か勘違いしているようだが防衛って言葉に惑わされんな。あくまで“防衛”は建前。“本来の目的”はまた別にあるからな」

そんな自分らを見つつゆーさんはニヤッと笑い返してくれます。あらら、このゆーさんの顔……ひょっとして何か悪い事考えていますかね?

「なーんか悪い顔してるけどさ雄二、もったいぶらずに教えてよ。それってどういう意味さ?」
「別にもったいぶっているわけじゃねぇが……ま、ぶっちゃけて言うとだな。Aクラスを除くほとんどの連中にクラス設備が狙われているって言うこの状況を逆に利用したいって思っている」
「利用ですか?それって一体何に対してどういう意味で利用したいんですかゆーさん?」
「決まってる。クラス設備に釣られた連中を全て返り討ちにして“対Aクラス”用の駒にする」

「「「「「「……あー」」」」」」

127時間目 進軍?防衛?今後の計画〜作戦会議と昼休み〜 ( No.235 )
日時: 2016/01/08 21:04
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

目標の為に使えるものは何でも最大限に利用し、ありとあらゆる知略戦略を用い勝利をもぎ取る———ゆーさんはやっぱりどこまでもゆーさんです。つくづくゆーさんが味方で良かったですよ。小暮さんとゆーさん、この二人が敵になったらと思うと……

「…………大体いつも通りだな。で、具体的には?」
「順を追って話すとだな、これは最初の試召戦争の時にも言った事だが———“どんな作戦でも、普通にやったら俺らの戦力じゃAクラスには勝てやしない”———これは一度Aクラス戦をやってみてよく分かっただろ?いくら策を練ろうが“Aクラス”と“Fクラス”のクラス単位の実力差を埋められるほど試召戦争は甘くはない。地力の差が歴然としてるからな」
「それは……そうですね。前回はAクラス自体が油断していた上にある程度Fクラスが有利な条件で戦って、それでもやっと引き分けに持ち込めたくらいでしたよね」

寧ろ今考えると引き分けに持って行けたことが奇跡に近かったかもしれません。もし引き分けにならずにそのまま延長戦に入っていたら間違い無くFクラスの敗北と言う結果に終わっていたはず。それに加えて現在のAクラスは油断もしていなければ学力もまさにトップクラス。メンバー全員もそれがわかっているようで、少しばかり緊張した面持ちです。

「っと、お前らそんなに気を落とすな。今のは言い方が悪かったが、俺たちは各々に見えにくいがAクラスの連中にも勝る優れた能力がちゃんとあるだろうが。そもそも学力最低クラスのFクラスがAクラス戦を引き分けに持ち込んだのは伊達じゃねぇしな。ハッキリ言って今の俺らの実力ならB〜Eクラスなんざ敵にならないぞ」
「え?そうなんですかゆーさん?流石にそれは誇張しすぎでは無いでしょうか?」
「いや、それがそうでもないんだ。現にやろうと思えばこの場にいる七人だけでもBクラスに勝てるくらいだからな」
「は……?Bクラスをこのメンバーだけで?雄二、それはいくらなんでも無理なんじゃないの?」
「そうよね。坂本、ウチらにそんな実力があるの?」
「私も正直実感があまりないんですが……」

ここで朝から自分の世界に飛んでいた島田さんと姫路さんが現実世界に帰還して会話に加わってきます。まだ若干頬が緩んでいるのは置いておくとして———確かに自分もお二人と同意見です。そんなに凄いんですかね?

「驚くのも無理はないが事実何度かシミュレートしてみた結果から言っている。多少の無理はするが普通に何とかなるレベルだったぞ」
「…………俺もそれは確認済み。条件さえ整えられれば、俺ら7人だけでBクラス上位〜Aクラス下位の戦闘力」

おおぅ……まさかそこまでとは。でもゆーさんとこーさんのシミュレーションなら信用できますし、実際姫路さんを始め皆さんがそれぞれ様々な部門で力があることはこのクラスにいて良くわかりますからね。

「ま、その辺のシミュレーションやら現段階の俺らの実力的な話は長くなるから後で説明するとして……話が大分脱線しちまったが、要するに俺らを含めた今のFクラスなら攻め込んでくるヤツらを返り討ちにするくらいは朝飯前だってこった。ここまではいいか?」

えっと、つまりさっきまでのゆーさんの話をまとめると、今のFクラスの立ち位置としては———

①現在Aクラスを除いたすべてのクラスから試召戦争を挑まれる可能性がある
②ただしB〜Eクラスをあしらえる実力をFクラスは所持しており、攻め込まれても問題なく対処できる
③その実力をもってしてもAクラスに挑んで勝利することは現時点では難しい

って事ですかね。単純な話、ゆーさん曰くAクラス>Fクラス>B〜Eクラスって力関係で成り立ってるようです。いつの間にかクラス間の戦力が面白い具合になっていますね。そう言う意味では今の教室設備に相応しいクラスって胸を張れますね。

……もしかしたら学園長もそれがわかっていた上でFクラスの教室の改装に踏み切ったんでしょうか?もしそうだったら流石は学園長ですね♪こうなると見越してわざわざ手間をかけて設備のランクアップをやってくれたんですし。(※実際は単純に面白そうだったから byカヲル)

「なるほど……雄二、とりあえず続けて」
「……明久、一応聞いておくがお前は今の話をちゃんと理解できているのか?」
「失礼な!…………ただちょっと雄二の説明は分かりにくいから、造たちに後で概要をまとめてもらうつもりではあるけど」
「これくらい自分で理解しろバカ久。ともかくこっからが本題だ。ならどうして軽くあしらえるはずの防衛戦に力を入れるのかって事だが———」
「む、そこでもしや最初に言っておった“対Aクラス戦の駒にする”という話に戻るのかのう?」
「おっ!いいぞ秀吉、良くわかったな。そう“防衛戦”の真の狙いはな、いずれ行うAクラス戦に向けての戦力と戦略を増やす事にある」

戦力と戦略を増やす、ですか……さてさてうちの策士ゆーさんは一体何を考えているのやら。ちょっとした不安とワクワクを胸に作戦内容を尋ねることに。

「それでゆーさん、具体的にどうするつもりですか?」
「決まってる。クラス設備に釣られたAクラス以外のすべてのクラスを全て返り討ちにしつつ点数の補充を行い、ついでに連中にはこっちの“駒”になって貰う。具体的には防衛戦で潰したクラスのクラス交換をしない事を取り引きに、来るべきAクラス戦で俺らの言う事を聞いて貰うってこった」
「あ、何だ。随分ともったいぶってたけど、それって結局一学期の試召戦争と一緒じゃないか」
「いいや。状況は似てるが“俺らが攻め込む”って場合と“他クラスに攻め込まれる”って場合とは本質がかなり違ってくるぞ明久。意気揚々と挑んで負けたとなりゃ負けたクラスは俺らに“多少無理な事”でも従わざるを得ないだろ?Aクラス戦では良い働きをしてもらうつもりだ」
「す、凄い事考えてますね……ゆーさん、恨まれても知りませんよ?」

と言いますか、まだ倒していないのにすでに駒として他クラスを戦力に組み込むのは皮算用のような気も。大丈夫でしょうか……?

127時間目 進軍?防衛?今後の計画〜作戦会議と昼休み〜 ( No.236 )
日時: 2016/01/08 21:09
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

「恨まれる?いやいや何を言う造。———正当防衛って言葉もあるだろ?前回見たく俺らが宣戦布告するならいざ知らず、向こうから勝手に喧嘩売って負けたとなりゃ進んで言うこと聞いてくれるハズだ。恨まれる心配はないから安心しな」
「か、カウンター前提の正当防衛って過剰防衛では……?」
「学力最低クラスに挑んでおいて負ける方が悪い」

そんなどう考えても悪役なセリフを自分に堂々と言い放つゆーさん。目的の為、使えるものは何でも最大限に利用し、ありとあらゆる知略戦略を用いて勝利を掴むその姿勢———正直に言いましょう、ちょっぴり憧れちゃうと思ってしまうのは自分もFクラスに染まっている証拠かもしれませんね。

「……うーん、ねえ雄二。ちょっと思ったんだけど何だかそれって正直まどろっこしくない?」
「ん?何だ明久。不満か?」

と、そんな中アキさんが神妙な顔でゆーさんに意見を発します。

「不満って言うか……変だなって思って。そりゃ交渉をスムーズにやりたいって気持ちはわかるけど、そもそもどのクラスとやっても勝てるなら攻め込まれるまでわざわざ待つより僕たちから宣戦布告した方が楽じゃないの?何でまた手間をかけてまでそんなことするのさ」
「そりゃ確かにお前の言う通り面倒だが確実に駒を手に入れられるに越したことは無い。つーか一学期から色々やらかした俺らがまた宣戦布告しても見ろ。後の戦後交渉でFクラスに更に反感が生まれてAクラス戦時に裏切られたら元も子もないだろうが」

確かにゆーさんの言う通り、良くも悪くもFクラスは目立っていますからね。ここで下手に大きな動きを見せれば出る釘は打たれちゃうかもですし。何よりクラス間同士の友好関係にひびが入りかねません。一応ゆーさんもその辺は気にしてるんですね。

「じゃが雄二よ。いくらワシらに実力があるとはいえ、B〜Eクラス全てとの戦争となると厳しくは無いかのう?」
「いや秀吉、B〜Eクラスに狙われてるって言っても、別段合宿の覗き騒ぎの時みたく束になって襲われるわけじゃないだろ?連戦にはなるだろうが基本はクラス毎の一対一の戦争だ。おまけに戦争終了後には点数補充の期間もちゃんと与えられるしな。そう言う意味で“防衛戦”って事が活きてくる。他クラスが宣戦布告するまでは慌てずじっくり点数補充が出来るからな。そこで対Aクラス戦用科目の補充を行う」
「…………戦力を増やすってそう言う意味もあるのか。だが、その肝心の防衛戦で折角溜めた点数を使うなら意味が無いんじゃ?」
「そうでもない。何せ俺たちには他のクラスには無いもの———白金・黒金の腕輪が揃ってるだろ?」

ゆーさんがそう言いつつ自身の【再設定】の腕輪とアキさんの【同時召喚】の腕輪、そして自分の【フィールド形成】の腕輪を指差してニィっと笑います。ああ、なるほどそう言う事ですか。腕輪を使ったゆーさんの十八番の作戦ってわけですね。

「基本的に攻める場合は高火力の姫路や造を中心とした短期決戦でいく。姫路の金の腕輪の能力や造の点数消費型の箒で多数を殲滅、穴の開いた敵陣を一気に攻め込むって寸法だ。だがそれだと二人の点数消費が激しい。Fクラスの最大の特徴は爆発力がある分持久戦に弱いって点だな。普通ならムッツリーニの言う通り折角溜めた点数を使っちまうことになる」
「うん、それだと点数を補充した意味ないよね」
「ああ。だが召喚野球大会を思い出してみろ。試合中に造の消費した点数を回復させたことがあるだろう?今回もあの時と同じことをすればいい。つまり俺、明久、造の腕輪持ちが中心となる裏ワザだな。予め使う科目を決めておき、造がフィールドを形成し俺が再設定の腕輪を使えば———簡易的な回復地点の完成ってワケだ」
「回復地点……へえ、それはゲームみたいで面白そうだね。ってことはそこさえあれば造や瑞希が腕輪の能力を使っても補充試験を毎回受けなくても回復できるってことかな?」
「お前ゲーム関連に例えると多少は呑み込みいいんだな……まあ、明久の言う通り造が点を消費したり姫路が金の腕輪を使ってもすぐに回復すればわざわざ補充試験を何度も受けずに済むってわけだ」

補充試験の回数を減らせるのは作戦上非常に大きい意味を持ちますからね。腕輪を使った良い作戦ですね。

「敵もそれを見れば俺と造を真っ先に潰しに来るだろうが、そこは召喚技術が高く小回りが利き二重召喚できる明久が俺らを守る盾として潰しに来た連中を返り討ちにすりゃいいってわけだ」
「なるほどの。久保や根本と戦って召喚技術に更に磨きのかかった明久じゃ。その盾を崩すことは相手にとっては相当骨じゃろう」
「…………明久は厄介な盾になる」
「いや、盾って……まるで僕がそれしか役に立たないように聞こえるのは気のせいかな三人とも?ま、まあいいけどさ」

ゆーさんは盾と言ったものの、アキさんの召喚獣の操作技術は先生方を除けば多分学園トップ3に入るほど。そのアキさんに守られれば怖いものはありません。手持ちの手札をすべて使い、全員の能力を最大限に活かしたゆーさんの戦略。見事と言う他ありませんね。

「ホントゆーさんよく考えてありますね。……まあ多少ルール違反ギリギリの気もしますが」
「うん、雄二らしい卑怯で卑劣な手だよね」
「悪知恵しか出来ないゲーム脳の明久に言われたくないがな。それと防衛戦に徹するもう一つの理由だが、何せ久しぶりの試召戦争だからな。Aクラス戦前に召喚獣を馴らしておきたいって気持ちもある」
「え?召喚獣を馴らすってどういうことよ坂本?結構事あるごとに召喚獣を呼び出しているウチらにそんな必要あるの?」
「そりゃ“俺らは”な。考えてもみろ島田。他のFクラスの連中は4月の試召戦争と肝試しの時だけしか召喚してねぇだろ?」

「「「「「「あっ……」」」」」」

なるほど、そう言えば確かにそうですね。自分たちは頻繁に自分の腕輪を使いまくって色々とやってましたから召喚獣の操作にも慣れていますが、他のFクラスの皆さんは本当に久しぶりの召喚と操作。そんな不安定な状態でAクラスに挑むのは流石に無謀ですよね。

「ついでにババァが言ってた通り、二学期になってから召喚獣の装備の変更を行うそうだからな。俺らも普段の装備に慣れてる分、突然装備が変わっちまったら却って扱いが上手くいかないかもしれねえだろうが」
「そう言えば学園長先生がそんな事も言っていましたね。私たちの召喚獣の装備をリセットするって」
「そっか、すっかり忘れてたけどそんな話もあったっけ。期末は僕も中々の成績だったしひょっとすると木刀からランクアップしてるかもしれないんだよね」
「そうですね。実力を蓄えられる機会を与えてくれた学園長に感謝感謝です♪」
「ま、そもそもそのババァの度重なる召喚システムの調整のせいでここまで試召戦争が延ばされたんだがな」

たはは……相変わらずゆーさんは学園長に厳しいですね。あ、これは余談何ですが召喚獣の装備のリセットはあくまで建前で、実際は自分と文さんの調整や検査の為に試召戦争が延ばされたんですがね。一応学園長からは他言しないように言われているのでゆーさんたちには言いませんが。心配されるのも嫌ですし?

「そんな感じで無事に防衛戦が済み、駒と戦略が揃い次第Aクラスを攻めに行く。一応これが俺の考えているこれからの試召戦争の計画だな。明久以外で今の作戦に質問がある奴はいるか?「雄二、何でナチュラルに僕をハブるのさ!?」よし、無いようだな!」

“防衛と言う名目で他クラスを倒せば交渉がしやすくなる”“防衛戦を利用し、対Aクラス戦に備え少しでも召喚獣の操作と試召戦争の戦闘経験値を増やす”———ですか。ゆーさんって将棋強そうですよね。取った駒を利用して敵陣に攻め込み大将を討つって将棋そのものですし。

「つーわけで当面は点数補充を行いつつ機会を待つ。しびれを切らして攻め込んできたクラスを片っ端から迎え撃てばいい。長くなったが———これから色々忙しくなるだろうが、これは全て俺らの悲願“打倒Aクラス”の為だ。お前らには無理させることになるのはわかっているが……どうか力を貸してほしい!いいか、ぜってぇ勝つぞっ!」

「「「「「「おーっ!」」」」」」

ゆーさんの掛け声に自分たちも力強く応えます。いよいよ始まる二学期試召戦争、自分たち仲良しメンバーの気合は十分。さてさて、一学期果たせなかったAクラス戦勝利を目指して……自分も頑張っていきますか!






『———先程のヤツらの会話、録音完了しました会長』
『うむ、ご苦労。ではすぐに各クラスにこの情報を渡してこい。ただしAクラスはダメだ。ヤツらは特にAクラスと親しいからな。下手をすれば我らの動きを密告される恐れがある』
『了解しました!』
『くくくっ……盗聴器を仕掛けられていないって事だけで安心したなバカ共が。楽に逝けると思わん事だな、3バカ共よ』

Re: バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 ( No.237 )
日時: 2016/01/10 06:55
名前: 名無(なむ) (ID: 59tDAuIV)

2015年度 冬の小説大会
  《二次小説部門》
    【銅賞】
 おめでとうございます

Re: バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 ( No.238 )
日時: 2016/01/15 15:16
名前: ユウ (ID: .9kWSKnJ)

---前回の死亡から一週間が経過。現在のユウの状態は…---

チ〜ン(死亡)…(ただいま、毒物浄化中…残り51%)

問題児5人『ユウ、お前(貴方)(君)って奴(人)は…』

耀「アムアム(姫路さんから貰った弁当『毒物』を笑顔で食べる耀)」

黒ウサギ「耀さんにとっては姫路さんの料理、凄くおいしいのですね…」

アベル「あっ、ユウがこんな状態だったから忘れていたけど、糖分さん《二次小説部門》【銅賞】おめでとうございます!!」

十六夜「前にも『一学期』で金賞も取ってたし、残すは銀賞だけだな」

エル「これからも応援するから頑張ってね!」

Re: バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 ( No.239 )
日時: 2016/01/15 20:58
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

皆さんこんにちは、糖分摂取魔です。

上のお二人に指摘されるまでボケっとしてて気づくのに目茶苦茶遅くなってしまい申し訳ございません……冬の小説大会にて評価してくださった皆さん。そして毎回読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。今回ありがたくも銅賞頂きました。

更新ペースがまちまちだったり大幅に遅れたり、誤字脱字が未だに目立つ糖分ですが、これからも楽しく書けたらなと思っています。ありがとうございました!


>名無(なむ)さん
初めまして名無(なむ)さん。そしてありがとうございます。

基本的にのんびりまったりと気が向くままに楽しんで書いていますが、評価して頂けるのはとても嬉しいものですね。これからも精進して面白いと感じてもらえるように頑張ります。



>ユウさん
読んでいただきありがとうございます。

一週間たってまだ約半分しか回復できないとは……げにおそろしきは姫路さんの料理……まあ、それを平然と食ってる人もいるけど……

造「あ、あの……耀さん?ホントに、本当に大丈夫なんですか……!?無理してませんか!?」
明「あれ平気に食べられるなんてどうなってるんだろうね……」

うむ、耐性出来てる明久が言えたことじゃないねそれ。

そして……評価&応援して頂き本当にありがとうございます。まだまだ力不足なところが多々ありますが、これからも読んでいただき面白いと思って頂けるように頑張っていきたいと思いますので、どうか末永くゆっくりのんびりでお付き合いください。

バカテスト集その⑧ ( No.240 )
日時: 2016/01/15 21:02
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

バカテスト 英語)
次の言葉を正しい英語に直しなさい。

『ハートフル ラブストーリー』


姫路瑞希・島田美波・霧島翔子・工藤愛子の答え
『heartful love story』

教師のコメント
正解です。映画や本の謳い文句によく見かける単語ですが、たまにheartの部分を間違える人がいます。身近にある英語なのですが、意外とわかり難いようですね。ちなみに日本語に訳すと『愛に満ちた恋物語』となります。是非そのような青春を皆で過ごしてもらいたいと思います

(※実際はheartfulは和製英語。英単語としては存在しないので注意)


月野造の答え
『hart full love story』
教師のコメント
heartとhartは同音なので誰か間違えるかなと思っていましたがやっぱりいましたね。月野君の文を訳すると『雄ジカがいっぱいの恋物語』になってしまいます。中々シュールな物語ですね。


吉井明久・坂本雄二・土屋康太の答え
『hurt full rough story』

教師のコメント
・hurt……怪我
・full……一杯の
・rough……荒っぽい
・story……物語

意図的に間違えたのではないかと思うほど綺麗に間違えていますね。そんなハートフルボッコなラブストーリーは聞いた事が———


FFF団の答え
『『『『吉井、坂本、ムッツリーニ。幸せになるならフルボッコだ』』』』

教師のコメント
————前言撤回です。あながち間違っていないかもしれませんね。




バカテスト 世界史)
以下の問いに答えなさい。

『西歴1492年、アメリカ大陸を発見した人物の名前をフルネームで答えなさい』


姫路瑞希・月野造の答え
『クリストファー・コロンブス』

教師のコメント
正解です。卵の逸話で有名な偉人ですね。コロンブスという名前は有名ですが、意外とファーストネームが知られていないことが多いです。意地悪問題のつもりでしたが、お二人には関係なかったようですね。よくできました。


島田美波の答え
『卵の人』

教師のコメント
なんてストレートな……せめてコロンブスだけでも書いてあげてください。


木下秀吉の答え
『コロン・ブス』

教師のコメント
フルネームはわかりませんでしたか。コロンブスは一語でファミリーネームであって、コロン・ブスでフルネームというわけではありません。気をつけましょう。


土屋康太の答え
『ブス』

吉井明久の答え
『雄二の女バージョン=ブス』

坂本雄二の答え
『明久の女バージョン=ブス』

教師のコメント
貴方たちは相変わらず仲が良いのか悪いのかわかりませんね。とりあえずコロンブスに謝りなさい。




バカテスト 化学)
以下の文章の(   )に入る正しい単語を答えなさい。

『分子で構成された固体や液体の状態にある物質において、分子を結集させている力のことを(         )力という』


姫路瑞希の答え
『(ファンデルワールス)力』

月野造の答え
『(   分子間   )力』

教師のコメント
どちらも正解です。分子間力(ファンデルワールス力)は、イオン結合の間に発生するクーロン力と間違え易いので注意して下さい。

さてここからは補足になります。一応授業としてはファンデルワールス力の導入された経緯により広義の意味として分子間力とファンデルワールス力をイコールとして説明しましたが、より正確に言うとファンデルワールス力は分子間力の一種であり他にも水素結合やイオン間相互作用等をまとめて分子間力と呼びます。詳しく知りたければお二人とも是非質問に来てくださいね。


土屋康太の答え
『(ワンダーフォーゲル)力』

教師のコメント
なんとなく語感で憶えていたのだということは伝わってきました。惜しむらくは、その答えが分子の間ではなく登山家の間ではたらく力だったということです。


吉井明久の答え
『(    努    )力』

教師のコメント
先生この解答は嫌いじゃありません。


須川亮の答え
『(    団結   )力』

教師のコメント
寧ろそれはFクラスに必要な力ではないでしょうか?

FFF団の返答
『『『今こそリア充殲滅の為、団結する時!』』』




バカテスト 国語)
次の熟語の正しい読みを答え、これを用いた例文を作りなさい。

【相殺】

姫路瑞希の答え
『読み:そうさい
 例文:取引の利益で借金を相殺する』

教師のコメント
そうですね。差し引いて帳消しにする、という意味なので貸し借りなどに使われる言葉です。


吉井明久の答え
『読み:そうさつ
 例文:パンチにパンチをぶつけて威力を相殺した』

教師のコメント
惜しいですが間違いです。『相殺(そうさつ)』という読みも一応ありますが、その場合の意味は『互いに殺し合うこと』というものです。この場合の吉井君の例文では互いに打ち消し合うという意味なので、読みとしては『そうさい』が正解となります。


とあるFクラス男子の答え
『読み:あいさつ
 例文:今日も吉井たちと相殺して、一日が始まった』

教師のコメント
その後西村先生に怒られて、生活指導室に連れていかれるまでがいつものFクラスの日常ですね。


月野造の解答
『読み:そうさい
 例文:Fクラスの暴走により、こつこつ積み上げてきたクラスの好評が悪評で相殺されてしまった』

教師のコメント
そんなFクラス担任の西村先生は苦労してますよね。教師として尊敬しています。




バカテスト 英語)
以下の英文の(   )に単語を入れて正しい文章を作り、訳しなさい。

『She ( ) a bus.』


姫路瑞希の答え
『She ( took ) a bus.
 訳:彼女はバスに乗りました』

坂本雄二の答え
『She ( got ) a bus.
 訳:彼女はバスに乗った』

教師のコメント
正解です。他にも get on a bus でバスに乗り込む。ride a bus でバスで移動するなどが挙げられますね。


月野造の答え
『She ( got ) a bus.
訳:彼女はバスを手に入れた』

教師のコメント
一瞬合っているかと思いましたが……恐らくバスをポンポン買えるのは月野君の家くらいかと。


吉井明久の答え
『She ( is ) a bus.』

教師のコメント
なんと訳すのでしょうか。一見文章として正しく見えそうですが、明らかに間違いです。日本語として訳せないような文章を書くようではまだまだ———


土屋康太の答え
『訳:彼女はブスです』

教師のコメント
目から鱗が落ちました。貴方たちはいい加減ブスから離れなさい。

127.5時間目 〜坂本雄二のFクラス戦力分析講座〜 ( No.241 )
日時: 2016/01/15 21:40
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

———昼休み・雄二試召戦争計画説明後———


造Side


「さてと。以上が今回の打倒Aクラスに向けての俺たちのやるべき事だが……まだ時間はあるな。さっきの作戦内容だけじゃなく、他にも何か聞きたいことがあったら聞いてくれ」

今週末に二学期試召戦争解禁と言う事で、早速昼休みの時間を使ってクラス代表兼Fクラス作戦参謀役のゆーさんにこれからの計画を説明して貰った自分たち仲良しメンバー一同。一応作戦としては大体わかりましたが———

「あ、なら雄二質問。霧島さんとどのくらい関係は進んでいるの?」
「黙れ、しばくぞ。明久の戯言以外で何か無いか?この際だから聞きたい事は全部聞いておいてくれ」
「あ、でしたらゆーさん。先程仰っていた“条件さえ整えられればこのメンバーだけでBクラスにも勝てる”って話の内容について、詳しく聞いても良いですか?どうにも実感がなくてですね」

ゆーさん曰く自分たち7人の戦力はBクラスに匹敵するらしいのですが、流石に実感がありません。この際Fクラスの戦力はどのような感じか聞いておくのもいいかもしれませんね。

「うむ、ワシも造と同じくそれを聞きたいのう。お主確かシミュレーションもしておったとか言うておったじゃろ?」
「ああそういや後で説明するって言ってたな。いいぜ、時間もあることだしまずは俺ら7人の個人データから見ていくとするか。ムッツリーニ頼む」
「…………了解」

と、ゆーさんに促されてこーさんがいつの間にやら取りだした資料を片手に説明を始めます。


———Fクラス個人データ———


○吉井明久:観察処分者&部隊長(日本史・世界史)
一言でバカ(待って!?何で最初から僕バカにされてんの!?by明久)ただし観察処分者(バカ)故に召喚獣の操作技術は間違いなく学年一位。加えて二重召喚の白金の腕輪も持っており、召喚大会優勝や強化合宿で久保を倒した実力は本物。得意科目の日本史・世界史のみB〜Cクラス並み。

○坂本雄二:クラス代表&作戦参謀
姫路・造に次いでAクラス上位と並ぶ成績保持者。クラス代表だけあって召喚する機会が一番少ないが、オカルト召喚獣版肝試しにおいて3年二人を相手に単独で勝利したことは記憶に新しい。その肝試し大会優勝の際景品として送られた点数回復の黒金の腕輪はこれからの戦争に大いに役立つだろう。

○月野造:特別観察処分者&部隊長(英語以外の総合科目)
Fクラスが誇るマスコット(マスコット!?それどういう意味ですか!?by造)ほぼ全教科がAクラス上位の成績。ごく一部の科目(=英語)が壊滅的ではあるが、それでもFクラスの主戦力には変わりない。成績とは別に特別観察処分者であるため明久と共にトップクラスの戦闘力を持つ。またフィールド形成の白金の腕輪はFクラスの最大の武器となるだろう。

○姫路瑞希:部隊長(総合科目)
言うまでも無くFクラス最高成績者であり切札的存在。本来なら学年次席になっている成績保持者だけあってFクラス戦力の三分の一は彼女一人が担っている。どの科目も万遍なく点を取っており400点オーバーの証である金の腕輪【熱線】もいくつかの科目で使え、彼女一人で戦況をひっくり返す事も可能。

○島田美波:部隊長(数学・化学・???)
Fクラスの数少ない女子の一人にして数学・化学の部隊長。理数系———特に数学はすでにAクラス中間並みの成績。女子ながら体力や攻撃力(?)は実はつわもの揃いのFクラスの中でもトップクラスであり、体力のいる試召戦争においてもその事が遺憾無く発揮されている。また裏技的にある科目では学園一位になれる可能性も秘めている。

○木下秀吉:部隊長(現国・古典)
最近成績を急上昇させている稀代の美少女(ほう、良い根性しておるのう?by秀吉)Fクラスで唯一の部活生ながら成績はC〜Dクラスに匹敵する。特に現代国語や古典は演技の幅を増やすために様々な本を読みこんでいるだけあってBクラスにも劣らない成績。また得意の声帯模写や演技力が思わぬ助けとなる時も。

○土屋康太:部隊長(保健体育)
現代に生きる忍者。言わずもがな保健体育のエキスパートでこの科目だけなら教師すらも凌駕している。金の腕輪【加速】を使えば並みの相手では姿を捕らえることすら困難。それ以外にも身体能力や俊敏性、さらに隠密活動などにも長けており情報戦が命の試召戦争に貢献していると言えよう。


———ふむふむ、なるほど。とりあえず言う事があるとすれば、

「「「途中の説明おかしいよね(でしょ)(じゃろ)!?」」」

何か非常に余計な枕詞をつけられていた感が多々あるんですが!?アキさんもヒデさんも同じ気持ちのようでこーさんにツッコミを入れる羽目に。マスコットって何ですか全く。

「…………気のせい」
「ま、大体合ってただろ。これが俺らの実力って訳だ。で、説明した通りFクラスの特徴は単教科特化型。科目を限定さえすればこのメンバーは少なくともB・Cクラスにだって引けを取らないってこともわかるだろ」

こーさんへの説教は後ですることにして、それはそうと確かにゆーさんの言った通り総合科目では姫路さんとゆーさんと自分はAクラス。各得意教科を見ればアキさんたちもA〜Cクラスってところですかね。こうして見るとこのメンバーって色々と特殊何ですよね。すっごく今更ですが。

「さて、この俺らの戦力分析を聞いてお前らはどう思った?正直な感想を言ってくれ」

「「アキ(明久君)だってウチら(私たち)のマスコットよ(ですよ)!」」

「誰がそんなどうでもいい感想言えって言った!?姫路に島田、今日のお前ら本気で壊れ過ぎだぞ!?」

そしてとんでもない事を口走るのはこーさんだけではなく、このアキさん大好きな二人も一緒のようです。今日はホント二人とも所々おかしくなってる気が……

127.5時間目 〜坂本雄二のFクラス戦力分析講座〜 ( No.242 )
日時: 2016/01/15 21:34
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

「あー、みんな。今日はもう二人ともちょっと(?)浮かれてるみたいだし、二人には後でちゃんと話し聞いて貰う事にしようそうしよう。と言うか……お願いだから聞き流してくれないかなぁ!?」
「そ、そのようですね。えーっと、それじゃあ一旦姫路さんたちは置いておくとして———気づいたことと言えば、Fクラスって各々の能力のバラツキが激しいような印象ですね」
「そうじゃな。ワシも造と同感じゃ。典型的な例を挙げればムッツリーニは保健体育は教師や学年主席以上。明久は世界史・日本史だけならBクラスや下手をすればAクラス以上の出来なのにも関わらず他で脚を引っ張り過ぎてたりするのう」
「…………その逆で、造は他は良いのに英語が明久以下」

ぐぅ……や、やっぱり英語は自分の鬼門ですからね。誰にだって苦手な科目がありますよね?

「そうだな。お前らが指摘した通り、これがFクラスの弱点でありAクラスに勝てないって理由の一つだ。以前のAクラス戦みたく単純に一人づつの単教科だけで勝負するなら未だしも、クラス単位で戦おうとするとどうしてもFクラスは各々の得意教科と不得意教科で足の引っ張り合いをしちまうんだ」
「なるほど。対してAクラスの皆さんは満遍なく点を取っていますし、そこで地力の差が出てくるって事ですね」

それこそ保健体育のフィールドではこーさんが有利にはなりますが、アキさんの得意科目の日本史に変われば今度はこーさんが動けなくなるって事ですよね。

「その通り。何度も言うがFクラスの特徴は単教科特化型。つまり特定の教科の点数が尽きると他の科目ではロクに戦えねぇから、戦闘から離脱していちいち補充しなきゃ戦力にならないって事だ。その補充のタイミングで敵に攻めこまれりゃ———間違いなく一気に戦況は崩されるだろうな」
「あ、だから雄二は一学期のAクラス戦でわざわざ交渉してまで一人一科目の試召戦争形式で挑んだんだね?」

科目指定を行って戦ったからこそ、Aクラスと引き分けることが出来ましたからね。逆に言えばそれが出来なかったら引き分けるどころか今頃は……

「ああ。それに加えFクラスのもう一つの弱点として“主戦力の息切れが早い”って事もある」
「…………主戦力の息切れ?」
「これは主に姫路と造の話になるが———造は装備自体が“常時点数消費型武器”で、姫路のFクラス最大火力を持つ金の腕輪も点数消費が激しい。さっきの俺の戦術説明で回復地点を作るって言っただろ?アレも腕輪の仕様上多用できないからな。結局戦争中はこの二人が最も多く補充試験を受けなきゃならないのは変わらん。んでもって造はともかく……姫路にはそう何度も試験を受けるとなるとちと体力的に荷が重いだろう?」

ゆーさんの言う通り補充と言っても休憩って意味とは全く別で、点数回復のための試験を受けるって事。一回の補充試験に挑むだけでも結構体力的も精神的にもそれなりにかかるハズです。補充して戦ってまた補充して———なんて繰り返してたら姫路さんじゃなくても倒れちゃいますよね。

「ま、最近は姫路も頑張って体力を付けて来てるようだし、特に心配していないがな。その辺の調節は任せてくれ。無理させない程度で頑張って貰う」
「ふむ……と言う事は二つの弱点をまとめて考えると———Fクラスの課題としては各々の点数補充をいかに効率よく済ませられるか、でしょうかね」
「その通り。Aクラス攻略の鍵の一つは補充試験にあると言っても良い」
「そっかそっか。あ、でもさ。悪知恵しか取りえの無い雄二の事だしどうせ弱点対策も考えてるんでしょ?」
「学力も甲斐性も財力すらも皆無のお前には言われたくないがな。ま、明久の言う通り対策も考えている。って言っても今詳しい作戦を話すと長くなる。もう昼も終わるし、後は今日の放課後明久の家にでも行って詳しい事を話すとしようや」

そう言ってゆーさんが持っていた資料を丸めて鞄の中に入れます。ゆーさんのFクラスの戦力分析も大体わかりましたし、お昼休みも後少しと言う事で今はお開きでしょうかね。

「ちょい待ち雄二……お前は言うに事欠いて僕の取り得は肩たたきだけって言いたいの!?そう言う雄二は悪知恵使って霧島さんってお嫁さんを貰えた事だけしか取り得ないじゃないか!あと何でナチュラルに僕の家を使う事にしてんのさ!?せめて僕に確認とってよ!」
「その歳になってもお前の取り得は肩たたきだけかよ!?つーかいい加減翔子を勝手に俺の嫁にするなバカ久!」
「ああそうか、アホ雄二が霧島さんの嫁だもんね!」
「シメんぞゴラァ!」

と、自分たちを置いていきなり始まったアキさんゆーさんの取っ組み合い。ちょっと二人とも?試召戦争が始まる前に怪我しないでくださいよね?

「「アキ(明久君)の取り得はコスプレと女装が似合うところとか、優しくてカッコいいところでしょ(ですよ)!?」」

「それと姫路と島田!お前らホント今日は暴走しすぎだろ!?」
「瑞希に美波!?最初の二つは取り得にして欲しくないんだけど!?」

そしてこの二人はやっぱり今日はちょっぴり(?)暴走気味のようです。何故か知りませんが、二人から優姉さんやサクヤさんや先生方のようなオーラを感じるんですが?

「暴走なんてしてませんよ!明久君と美波ちゃんと一緒に暮らせて嬉しくてはしゃいでるだけです!」
「それを世間一般的に暴走してるって言ってんだよ!つーかお前ら、やっぱ人の説明を全然聞いてなかったなこん畜生め!?」
「失礼ね……えーっと、確か坂本も翔子と同棲するって話だったかしら?」
「おい待てェ!?トンデモナイ事捏造すんなや!?ええぃバカ久っ!テメェが同棲生活なんか始めたせいでこの二人が壊れ始めてんじゃねぇか!貴重な戦力ダメにする気か!?」
「誰がバカだ!それに雄二だってこれから霧島さんと同棲するんだし人の事言えなくなるだろ!」
「だ・か・ら!捏造すんなゴラァッ!」

「「「…………」」」

えーっと。いつも喧嘩ばかりのアキさん&ゆーさんコンビに、絶賛色ボケ中の姫路さん&島田さんコンビ。この4人ってFクラスのトップ層のハズなんですが———

「……ねえヒデさん」
「何じゃ造?」
「Fクラスには……戦力よりも優先的にツッコミ役を取り入れるべきだと思うのは、自分だけではないハズですよね?」
「うむ、そうじゃの。もっと常識人を増やすべきじゃのう」
「やっぱりそうですよね……」
「…………全くだ」

「「いや、こーさん(ムッツリーニ)が言えたことじゃないですよ(ぞい)」」

「…………っ!?」

———そんなこんなで。とりあえずこれで本当に試召戦争に勝てるのか、ちょっぴり心配になったお昼休みとなりました。

128時間目 放課後ショッピング〜スーパーは辺境魔境〜前編 ( No.243 )
日時: 2016/01/22 21:02
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

造Side


ゆーさんによる作戦会議と今後の予定についての説明が終わったと同時にお昼休みも終わり、そして何事も無く午後の授業が淡々と進みあっという間に放課後の時間となりました。

「いやはや。なんか、こうやって平和に帰れる日って久しぶりな感じがするよなー」
「そうじゃな。雄二の言う通りここのところはずっと補習だらけじゃったしの」
「いや秀吉。補習もそうだが今の俺の言ったことは“平和に帰れる=FFF団の連中が大人しかった”って言う意味なんだがな」
「…………珍しく大人しかった」
「そ、そっちじゃったか……」
「そ、そう言えば今朝は(今朝も?)皆さん暴走してましたっけ……」

ゆーさんの言う通り、朝Fクラスでアキさんとゆーさんが上手に焼かれかけていた事や普段アキさん&ゆーさん&こーさんがFクラスの皆さんに追い立てられている事を踏まえると、本当に平和って素晴らしい事だってよくわかりますよね。

……どうして一介の高校生である自分たちが、ただ単に下校しているだけで平和の素晴らしさを痛感するのか多少疑問ではありますが。

「まあ、連中も明久の同棲生活は単なる早とちりだったって事で納得したようだからな。今後はそうそう襲われるようなことにはならんだろうさ」
「そもそも襲われている事を前提に話すのもどうかと思うんですがね……あ、次は鶏肉ですかゆーさん」
「ああ。時間が時間だし特売でもやってると財布に良いんだが」

そんな事を言いつつ、カートをゴロゴロ押しながら自分にゆーさんにヒデさんにこーさんはお肉コーナーへ向かいます。良いお肉があると良いですね〜♪

……はい?今自分たちが何処にいて一体何をしているのか、ですか?ああ、それはですね———


〜造回想スタート〜


———十五分前:2-F教室———


『よっし、退屈な授業もやっと終わりだな。んじゃさっさと帰るとするか!どっかに寄っても良いがお前たちはどうする?』
『うーん、そうですね……って、あれ?そう言えばゆーさん、聞きそびれていたんですがお昼休みに確か“後は明久の家に行って対策を説明する”って話をしていませんでした?』
『ん?……ああ、そういやそうだったな。ワリィ、造に秀吉にムッツリーニ。お前らの都合を聞かなかったが今から時間あるか?』
『あ、それなら自分は大丈夫ですよ』
『(ボソッ)造が行くなら———ワシも大丈夫じゃ。今日は部活も無いからの』
『…………俺も平気』
『おっし。んじゃ早速行くか明久の家に!』
『その前に雄二ちょい待った……だから何で当の僕らの都合を聞かないのさ!?』
『んなもん必要ねぇだろが。つーかお前と姫路と島田は今現在一緒に暮らしてんだし、お前の家で対策会議する方が何かと都合いいだろ。それにどーせ明日は休み。多少遅くなろうがゆっくり会議できて暇も潰せるってもんだろが』
『ま、まあそりゃそうだけど、せめて最初に家主の都合くらい聞いてよ……もういいけど。なら折角だしスーパーに寄ってかない?荷物持ちとお金を出してくれるなら今日は夕食をご馳走するよ』
『あらあら♪それは楽しみですね。アキさん、ご馳走になりますねー♪』


〜造回想終了〜


と、言うわけで対策会議兼夕食会をアキさんの家でやる事にした自分たちFクラス仲良しメンバー7人。現在夕食の材料を買う為に全員で最寄りのスーパーに来ています。ちなみに自分とゆーさんヒデさんこーさんの4人がお肉。アキさん姫路さん島田さんの3人がお野菜といった感じで、それぞれ分かれて分担してお買物中ってわけです。

128時間目 放課後ショッピング〜スーパーは辺境魔境〜前編 ( No.244 )
日時: 2016/01/22 20:52
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

あ、別に組み合わせに他意は無いですよ、ふふふ♪別にアキさんと姫路さんと島田さんにちょっとしたデートをして貰おうなんて考えていませんからねー(←二手に分かれて買い物する事を提案した張本人)

「それにしてもゆーさん。今更ですがどうしてアキさんの家で対策会議をする事にしたんですか?単に広いからって理由でもないんでしょうし、ひょっとして何か理由でもあるとかですか?———あ、これなんてどうです?つやも色も中々良いですし弾力も中々のものですよ」
「おっ、流石に造は察しが良いな。ま、単純に俺の家にはあのおふくろがいるからって理由もあるんだが———特売品にしては肉に厚みもあってかなり良い品だな。んじゃ鶏肉はこれで良いか」

お肉を吟味しつつちょっと気になっていたのでゆーさんに話しかけます。多分ですがゆーさんの事ですし、アキさんの家を指定したのには何か考えがあってのことだと思うんですよね。わざわざ自分らの都合を聞いていつものメンバー全員を集めたくらいですし。

「明久の家で対策会議を行う理由は主に三つの理由がある。おまけに大半が試召戦争関係でな———にしてもどうすっか。俺ら7人と玲さんにチビッ子の2人で9人だろ?何作るかにもよるがこれだけじゃ一品か二品ほどおかずが足りそうにねぇな。味気ない夕食は御免だぞ」
「あれ?そんなに理由があるんですか?自分は他のクラスの方々に聞かれたくないからかなー?って理由くらいしか思いつかなかったんですが———それだけの大人数ですし、いっそこの前みたく鍋にします?まあ、この前の闇鍋(ダークマター)が鍋料理に含まれるかは疑問ですが。例えば水炊きとか鶏肉と白菜の塩鍋とかはどうでしょう」
「あー……造に雄二よ。試召戦争の話をするか料理の話をするかのどちらかにせい。お主らの同時進行のバラバラ会話は聞いていて頭が混乱しそうじゃ」
「…………二人とも交互に別の話するなんて器用だな」

「「へ?」」

感心しているような呆れているような、そんな微妙な表情で自分たちの会話にストップをかけるヒデさんとこーさん。おっとと、これは失礼しました。一旦手を止めて一先ずゆーさんにアキさんのお家で対策会議を行う理由から聞きますかね。

「ワリィワリィ秀吉にムッツリーニ、じゃあ一旦話を元に戻すぞ。造が言った通り、一つはやっぱり盗聴に気を付けたいって事だな。ムッツリーニがいるとはいえ、学園内で話してたら少なからず何かしらの俺らの作戦の情報が洩れる恐れがある。昼の作戦会議中に大まかな概要までしか話さなかったのはその為だな」
「ああ、やっぱりそうでしたか。Fクラスの弱点対策を他のクラスに聞かれちゃ一番マズイですからね」
「…………壁に耳あり障子に目あり。こう言う事は用心するに越したことは無い」
「盗聴・盗撮に長けたムッツリーニが言うと説得力があるのう」
「…………何の事かさっぱり」

こーさん……それを今更否定するのもどうかとは思いますが。それはともかく確かに盗聴の件はもう少し気を付けた方が良いかもですね。試召戦争は情報が命ですし。

「んでもって二つ目の理由だがな、召喚獣の装備の確認を比較的広い明久の家でやっておきたいからだな。造がいれば教師共がいなくてもフィールド形成の腕輪使ってもらって召喚出来るだろう」
「へ……?それでしたらゆーさん、それこそアキさんの家よりも学園内でやった方が良いのでは?そもそも召喚獣って基本的には文月学園内でしか出しちゃいけないですし」

っと言っても、何だかんだで色んなところで召喚獣として遊んでる(?)自分が言えた事ではないのですが。

「おいおい造。ちょっと考えても見ろ。俺らが教師の誰かに召喚許可出したとして、素直に“そうですか。わかりました、なら許可しますね”って教師共に言われると思うか?」
「え?いや、それは……あれ?」

言われてみれば確かに、普段何かと召喚獣関連の問題を起こしている(と言うよりも問題に巻き込まれている?)自分たちFクラスメンバーに召喚許可を簡単に渡す教師なんてそうそう『『『私たちがいますよ造くん!』』』いないですよね……

……今脳内で自分を生贄にすれば召喚許可くらい渡せそうな先生方が反応した気もしましたが、やっぱり気のせいですね。

「な?そんな教師はいねぇだろ?俺や明久が頼んだところで“何かまた企んでいるんだろう、絶対召喚許可はやらん”って一掃されるのがオチだ。つーか現にさっき試しに明久連れて鉄人に召喚許可貰いに行ったんだが———」

128時間目 放課後ショッピング〜スーパーは辺境魔境〜前編 ( No.245 )
日時: 2016/01/22 20:51
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

〜雄二回想スタート〜


『えっと、鉄じ「西村先生と呼べ」西村先生。すいませんが召喚許可を「ダメだ」お願いできま「不許可だ」せんか?「却下だ」試召戦争「断る」も解禁されるし、「諦めろ」新しい召喚獣を「無理を言うな」———って断りすぎじゃないですか!?一つのお願いを言い切る前に六回もダメだしされたのは流石に初めてですよ!?』
『吉井、貴様が俺の話を聞かんからだろうが。そもそも前から言っているように、お前の召喚獣は簡単に喚び出してはいけないものだ。許可など誰がするか』
『けどその辺は大丈夫っスよ先生。今まで俺が問題を起こした事があるとでも?』
『良い事を教えてやろう坂本、それに吉井。お前らが一年から書いてきた反省文がこの間ちょうど500枚を突破した』

『『ならその内の499枚は明久(雄二)のだな(ですね)』』

『……ともかく召喚許可は出せん。さっさと戻って次の授業の準備でもしていろ。だいたいお前たちが俺を先生と呼ぶと大抵ロクな事にならないからな。また何か企んでいるんじゃないのか?』

『(あ。雄二、どうやら呼び方が不味かったっぽいよ)』
『(そうみてぇだな。んじゃ言い方を変えてやるか……)』

『よろしく、宗くん(パキュ)』
『頼むぜ宗一(ペキュ)』
『誰が呼び方を変えろと言った。教師をファーストネームで呼ぶな』

『『手が!?手の骨がああああああああっ!!』』


〜雄二回想終了〜


「———ってな具合で問答無用に拒否られた上に手の骨を粉砕されかけた。ったく頭ン中も筋肉もガチガチの鉄人め、無駄な怪我と手間掛けさせやがって」
「いやいや……ゆーさん。それは西村せんせが怒るのも無理ないことですよ」
「反省文500枚とはの……分厚い文庫本並じゃの」

なるほど、休み時間中にどこかへ行って戻ってきたお二人が負傷していた理由はそれですか。それ以前にゆーさんにアキさん?反省文が500枚って何をしたらそんなに書けるんですか……?

「まあ雄二や明久は召喚獣や腕輪を完全に私物化しておるからのう。鉄人に断られるのも無理は無いじゃろう。ここはやはり造あたりが許可を貰えば……いや、それこそ無理じゃな。“お前も何かまた破天荒な無茶をするんだろう、絶対召喚許可はやらん”と鉄人に一掃されるのがオチじゃな」
「えっ!?え、えっと……ヒデさん。自分そんな無茶なんてやった覚えなんてないんですが……?」
「…………召喚獣化して教頭室に花火ブチ込んだ前科あるのに?」

…………ナンノコトカナー?

「つーわけでヘタに学園で召喚したら俺ら全員仲良く鉄人にとっ捕まえられる可能性があるわけだ。その点明久の家で召喚した方がよっぽど安心安全ってこったな。おまけに他のクラスよりいち早く召喚獣の仕様変更が確認できて、召喚獣を暴れさせても明久の家だから問題無し。まさに一石三鳥だ」

そんな事を何だかとっても悪い笑顔で堂々と宣言するゆーさん。なるほど、そう言う事でした……か?ってちょっと待った。

「いやいやいや、流石に最後問題大有りでは……アキさん泣きますよそれ……」
「安心しろ造。明久だから問題ないさ。何を壊しても玲さんに叱られるのは明久だ。んでもって最後の理由は———」

「「「最後の理由は?」」」

「明久の同棲生活を見ておきたかったからだな。姫路に島田に島田妹に玲さんと同棲なんざ……何かアイツを脅す最高のネタになりそうだったしな!」
「最後の理由に至っては最早試召戦争すら関係ないんですか!?それはただ単にゆーさんがアキさん弄りをしたかっただけじゃないですか!?」

……ひょっとして試召戦争対策は建前で、アキさんの同棲生活を冷やかしたかったのが本音なんじゃないでしょうね?アカン、ゆーさんですし十分あり得る……

「んなことより説明終わったしさっさと食材調達続けるぞお前ら。腹減ったしな。さぁて次は……おお、豚肉発見。あ、だが豚肉より牛肉の方が……いや、どうせなら両方か。特売だからこっちのが———」

そう言って再びお肉を吟味し始めるゆーさん。どうやらゆーさんの中ではアキさん<今日の夕食という力関係が成り立っている模様。ああ、でもよく考えたらアキさんもアキさんでいつもゆーさんに対してはアレな対応してますし……

「い、今更口にする事ではないのかもしれませんが……アキさんとゆーさんって仲が良いのか悪いのか本気でわからなくなるんですが」
「相変わらず雄二は明久に、そして明久は雄二に容赦ないのう。もう慣れたがの」
「…………某世界一有名なネコとネズミの喧嘩と一緒だな」

ホント随分奇怪な友人関係……こんなコンビ今まで見たことありませんよ。アキさんとゆーさんには“悪友”って言葉がよく似合いますよね……まあ、何だかんだで仲は良いとは思うんですがね。

129時間目 放課後ショッピング〜スーパーは辺境魔境〜後編 ( No.246 )
日時: 2016/01/29 20:48
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

明久Side


……あれ?何だか今不細工でにくったらしい一人の友人(=バカ)からはすっごく失礼な事を言いたい放題言われて、いつも気苦労の絶えない一人の友人(=マスコット)からはそのバカと同じ扱いをされたような気がするんだけど……気のせい、かな?

「ん?どうかしたのアキ?」
「明久君?何かありましたか?」
「あ、ううん。何でもないよ。んじゃ早速選んじゃおっか」

と、美波と瑞希がどうかしたのかと、不思議そうな顔をしつつ僕の顔を覗き込む。おっと、いけないいけない。折角造に———

『効率が良いように“分かれて”お買い物しましょう。アキさんと姫路さん島田さんはお野菜をお願いしますね。……そうそう。自分は美味しいもの食べたいですし、材料もじっくり選びたいわけでして。多分“時間がかかる”と思います。アキさんたちも“ゆっくり楽しんで”選ぶと良いですよー♪』

———てな具合で、気を遣って貰って美波と瑞希の三人で買い物兼デート(?)をする事になったのにボーっとしてちゃ勿体ないよね。折角だし三人で楽しまないと!あ、ちなみに造。お礼に後でお菓子買ってあげるから楽しみにしててね!(ちょっ、アキさーん!? 何かそれ子供の扱いな気がするんですが!?……ま、まあそれはそれとして甘いものなら喜んでいただきますが……by造)

さて、買い物は買い物でちゃんとやっとかないとね。まずは籠を持って三人で今日使う野菜の調達のために野菜コーナーに立ち寄る事に。ちなみに美波と瑞希は僕の両サイドで僕の腕に抱き付いて楽しそうにしている。お陰でスーパーの中にいるお客さん(主に男性)の視線がちょっぴり痛い。経験上これって多分世の男性たちのちょっとした妬みの視線だとは思うけど、まぁいつものFFF団の妬みと殺意と物理攻撃交じりの視線に比べれば大したことないね。

さあ今日は大人数の夕食になるけど何を作ろうか。雄二や造たちにお肉を買って貰っているし、折角ならお肉に合う料理を作りたいんだけど……

「明久君美波ちゃん。今日は茄子がお買い得みたいですよ」
「へー、茄子か……うん、いいね。二人とも茄子は食べられる?」
「はいっ!大好きですよ」
「ウチも葉月も大丈夫よ♪」

そんな風に楽しそうに答える瑞希と美波。そっかそっか。だったら季節もちょうど旬で食べ頃だし、二人とも好物でおまけに安いなら是非とも茄子を買っておこう。揚げ茄子の煮浸しやピーマンとひき肉と一緒に炒めたりと、それはそれは色々と使えそうだからね。

「あ、ところで明久君に美波ちゃん。知っていますか?」
「んー?いきなりどうかしたの瑞希?」
「瑞希、何を知っているって?」

と、三人で茄子を選ぶ為に野菜コーナーの茄子が売られている所に向かっていると、突然瑞希がそんな事を言い出す。ハテ?一体何だろ?

「えっと……“秋茄子は嫁に食わすな”って諺(ことわざ)があるんですけど」
「はぁ?何よそれ?何で嫁は茄子食べちゃいけないのよ?」
「ああ、それは聞いた事があるかも」

日本の諺にはちょっと疎い美波が知らないのも無理はないけど、確かその諺はお姑さんが“秋茄子は美味しいから憎らしい嫁に食べさせるのは勿体ない”ってのが語源らしい。それにしても随分と失礼な諺だよね。ひょっとして遠慮深い瑞希の事だし『私は居候の身ですし、食べちゃいけないんじゃないでしょうか』なんて思っているんだろうか。全く、そんな事全然気にしなくていいのにね。

「瑞希、そんな諺なんて気にしなくていいって。どうせ古臭い考えなんだしさ」
「そ、そうですよね!私たちが気にする必要何て無いんですよね!私と美波ちゃんが頑張ればいいだけなんですから!」
「うん。そうだよ、気にせずに二人が頑張れば———うん?」

…………あれ?何を頑張るの?気のせいかな、話が根本的に噛み合ってないような気がするんだけど……?あ、ひょっとしてこれも瑞希の事だ。その茄子を使って何か料理を作る気なんじゃ……ヤバい。それだけは何としても阻止しておこう。何を作られるかわかったものじゃないし。

「???よくわかんないけど二人とも。茄子のコーナーに着いたわよ」

そんな茄子の話をしつつ、話題の茄子のコーナーに辿り着く僕ら。瑞希の言葉はちょっと引っかかったけど、まずは買い物から先にしなきゃね。本日お買い得品って出てるだけあって中々いい値段みたいだ。折角だし美味しそうなものを選ぼうかな。

129時間目 放課後ショッピング〜スーパーは辺境魔境〜後編 ( No.247 )
日時: 2016/01/29 20:51
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

「イラっしゃイ、イラッしゃイ!ヤスいヨ、ヤスいヨ!」

そこに店員さんがやってきて、威勢の良い呼びこみを始めた。……何かどこかで聞いたような声と訛りの外人さんな気がするけど気のせいかな? 

「今日ハ野菜がお買イ得!特にコの———」

と、急に呼び込みの声が止まる。そしてその店員さんは茄子を手に取りジッと見つめて、一瞬首を傾げたようなポーズをとってから———

「コの、なンカ、こう紫色の棒ミタイなヤツ!美味しイよー!ヨく熟シて蜜もタップリで甘くて美味しイヨ!」

「「…………」」

———そんな奇妙な呼び込みに戻る。なん……だと……?店員さんのトンデモ発言に思わず美波と二人で顔を見合わせて絶句してしまう。(ちなみに瑞希は何故か今日のお昼のように頬を染めてボーっとしている模様)あれって一応、なす……だよね?

色や形的にはアレは一応世間一般的に言うと茄子なんだとは思うけど……僕の記憶が間違ってないなら、少なくとも蜜がたっぷりで甘いものは茄子じゃないと思うんだ。どうしよう、もしかして僕の知ってる茄子と違うのかな?

「ね、ねえアキ?……もしかして日本の茄子って甘いの?」
「いや、そんなハズはない……と、思うけど。てか一応あれ茄子だよね?何故か甘くて蜜たっぷりらしいけど」
「何か新しい品種か何かかしら……?」
「オッと!ソコのモテモテのお兄サン!コノ……紫色のナニかはイかがですか!」

ゲッ、しまった。そんな風に思わずまじまじと見てしまってたせいで、呼び込みの店員さんに目をつけられてしまったみたいだ。どうしよう……普段から奇人変人に囲まれている僕だからわかるけど、この店員さんからは変人の気配を感じる。こういう時はあまり関わらないうちに早めに逃げ出さないとね。

「さァさァ!紫棒はイカがですかお兄サン!安イでスヨ!熟しテまスヨ!甘いデすヨ!」
「すいません。ちょっとは高くても良いんで、出来れば熟してなくて甘くないのをください」

何せその店員さんが勧めてきた不自然に熟してて甘い匂いで柔らかいのは、間違い無く腐っているハズだし。

「イヤイヤ、遠慮スるコトはアリマせんヨお兄サン!このパープルバーは甘い部分ガ美味しイのデスかラ!ソレに、エェト……“サンチチョクソウ”っテ書いてアリますかラ!カロリーたくサんで、栄養控エ目でス!他ニもデスね———」

僕の話など全然聞かずに、次々とツッコミどころ満載のデタラメな説明を始める店員さん。困ったなぁ……これは長くなりそうだ。仕方ない、ここは———

「(あー……美波。悪いけど瑞希を連れて先に他のもの買って来て貰える?どうにも長くなりそうだし)」
「(そうみたいね……わかったわ。先に別のを見てくるわね。アキも終わったらちゃんと来てね)ってことで瑞希、ほら先に別の食材を買いに行きましょう」
「えっ?あ、はいっ!折角ですしスタミナがつくものを買いましょうねっ!秋茄子の為にもっ!(ボソッ)赤ちゃんの為にもっ!」
「そうね———へ?赤ちゃん?」
「山芋とかニンニクとかオクラとかも良いと聞きますし……頑張らなきゃですね!」
「……さっきから何の話してるのよ瑞希?山芋とかも食べたいってこと?」

うん、一先ず二人には他の買い物をやって貰っておこう。あんまり足止めされると遅くなりそうだし、造や雄二たちもそろそろ買い物が終わってるかもしれないからね。

「———なドなド、昔かラ愛サレている食べ物なノでス!更にハ……エっト?」
「(二人とも今だよ!行って!)」
「(あ、うん。ありがとアキ!じゃあ先に行ってくるわね)」
「(じゃ、美波に瑞希、買い物頼んだよー!)」

一瞬の隙を見逃さずに、店員さんの目を盗んでこっそりと二人を逃がす。やれやれ、いつものアイコンタクト会話術と逃走技術がこんな所でも役に立つなんて全く世も末だなぁ。

『やれやれね。ああ、ところで瑞希。さっきの諺の意味って結局何なの?茄子と嫁がどうのこうのってヤツ』
『あ、それはですね美波ちゃん!茄子には種子が少ないので———』

129時間目 放課後ショッピング〜スーパーは辺境魔境〜後編 ( No.248 )
日時: 2016/01/29 21:07
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

店員さんに気付かれること無く、二人とも無事にこの場を離れて貰う。よしよし、上手くいったみたいだ。二人との買い物の時間が削られるのは少々残念だけど、二人がこの変な人に絡まれる事よりもマシだし仕方ないかな。

「———ソうデス!最初ニこノ野菜ガ作らレたのハ、八年前ノ北極でしテ———」

にしても……うぅ、まだ続くのかこの店員さんの話は……無駄に長いし色々ツッコみたくなる変な話だなぁ。とりあえず未だにペラペラと説明を続ける店員さんを前に、面倒だし適度にその話を聞き流しつつ考え事をする事に。えっと、夕飯の食材の他には何か必要な物はあったかな……?

「アー……、とコロでお兄サン……」

キッチンペーパーはまだあるし、ティッシュに歯ブラシとかも問題なし。ああ、そうだ。強いて言えば、足りないのは掃除で使って残りが少なくなってきた———

「ココだケの話、こノ野菜っテ、ナンテ名前でショウか……?」
「———トイレ用洗剤かな……」
「Oh!ソウでスか!アリがとうゴザいます!」
「ん?」

と、気がつくと店員さんが手を握ってお礼を言ってきた。よくわからないけど、どうやらようやく説明が終わったみたいだ。

「じゃあ、これ一つ貰いますね。んじゃどうもです」
「マイどアりがトうゴザイまス!」

説明が終わったなら茄子(らしきもの)を一袋手にとって、さっさとこの場を立ち去ることに。正直この人に下手に関わるとロクでもない事になりそうだからね。触らぬ神になんとやらだ。

『今日ハなんト、トイレ用洗剤ガ大安売り!ヨク熟しテ甘いトイレ用洗剤がお買イ得だヨ!今日のデザートはトイレ用洗剤デ決まリ!』

案の定僕が離れてからすぐに、さっきの店員さんがこれまた奇妙且つ不気味な呼び込みを響かせていた。何だ?新商品に食用トイレ用洗剤でも出たのだろうか?

「え、えーっと……あの店員さんって一体何を売っているのでしょうかね……?」
「何故にトイレ用洗剤の売り文句がデザート何じゃ……?」
「…………意味がわからない」
「俺もわからんが……このスーパーにはこれからはあまり利用しない方が良いかもしれんな。あの母親が何を買うかわかったもんじゃないぞ」

と、そんな僕と同じようにあの店員さんの呼び込みを聞いて戦慄している友人たちを発見。うん、君らのツッコミは正しいと思うよ。

「造に雄二たちお疲れ。そっちは買い物済んだの?」
「え、えぇ。一応こっちは買い終わりましたよ。それでアキさんたちは———って、あれ?姫路さんと島田さんの姿が見えませんけど……」
「あ、うん。ちょうどさっきまで僕ら、あの変な店員さんに絡まれてたからさ。店員さんの対応は僕が担当して、逃がした二人には別の買い物を頼んだんだ」
「ほう、明久にしちゃ利口な行動だな。んじゃ姫路たちを探してとっとと明久の家に行くとすっか。ホレ、外の天気がちょいと悪いからな」

雄二につられて外を見ると、なるほど確かに何だか今にも大雨が降ってきそうな天気だ。これはちょっと急いで帰った方が良いみたいだね。と言うわけでさっさと買い物を済ませることに。まずは二人と合流しなきゃね。

「そうじゃな。ならば早う姫路たちと合流するとしよう。して明久よ、二人はどこにおるのじゃ?」
「ん?ええっと確か……ああ、瑞希が“秋茄子の為にもスタミナのあるものを買いますね”って言ってたから、多分そう言う食材のところじゃないかな?そういや山芋とかニンニクとかオクラとかがどうとかとも言ってた気もするね」
「…………茄子?」
「うん茄子。みんな茄子は食べられるよね?」
「……?あのぅアキさん?茄子は美味しいですし好き嫌い的な意味では大丈夫なのですが、何で秋茄子の為にスタミナのあるものを買う必要があるんですか?」

瑞希たちを探していると、造がそんな事を聞いてくる。……あれ?そう言われてみればどうして瑞希はそんな事言いだしたんだろ?

「そう言えば何でだろうね。そもそも瑞希、“秋茄子は嫁に食わすな”って諺を出した時も様子がちょっと変だったんだよね」

「「…………は?」」

その僕の言葉に雄二と造は何かを察したように一瞬固まってしまう。あれ?どうしたんだろ二人とも?雄二は苦笑いをしながら僕を相変わらずバカにしたようなイヤミったらしい目で見てるし、造は造で何だか顔を赤く染めつつ口をパクパク開けている。んー?何か僕変な事言ったっけ?

「ん?どうかしたの雄二に造?」
「な、何じゃ造よ!?お主顔が限界まで真っ赤じゃぞ!?」
「あ、あー……秋茄子ってそう言う……事ですか。そして姫路さんはがんばる……スタミナのつく食材……あー……」
「…………造どうした?」
「あ、あぅ……その、アキさん。えっと、多分その意味はですね……あのぅ……ぐぅ。ゆ、ゆーさぁん、説明お願いします……」

何だかちょっぴり涙目で、真っ赤になりつつ雄二にバトンタッチする造。造が一体どうしたのかはよくわかんないけど、流石はFクラスのマスコットキャラだ。何だか無性に保護欲をかき立てられるのは、葉月ちゃんといい勝負だと思う。

「へいへい、っと。さて明久よ。お前の事だから恐らく一部の意味しか知らんかったみてぇだが“秋茄子は嫁に食わすな”って諺はな」
「ん?諺は何さ?」
「———“茄子には種子が少ないので、子種が少なくなるから嫁には食わすな”という意味もあってだな」
「へえ〜、そうなんだ。雄二は物知りなんだね」
「お前が物を知らな過ぎるだけだがな」
「そっかそっか…………what?」
「あ、あぅうう……」

……あり?今、何かとんでもない意味を聞いちゃったような?そして造が真っ赤なわけがだんだん理解出来始めた気がするような?

「だからな、“秋茄子は、種子がないので子宝に恵まれなくなる”って意味もあるってこった」
「へ、へー……そ、ソウナンダー?」
「そうだな。それにしても“何のことかはさっぱりだが”お前の話を聞く限り姫路は島田と共に秋茄子食っても大丈夫なくらい“頑張る”そうだな」
「…………ソウラシイネー」
「ちなみに山芋・ニンニク・オクラは精の付く食べ物の代表と言われているそうだな。さて明久よ、もう一度言うが“何を頑張るのか”俺には皆目見当もつかんが……くくっ、頑張れよ」

…………この雄二の笑いを押し殺した顔を今すぐにでもぶん殴りたいのは山々だけど、それよりも何よりもとりあえずは。

「み、瑞希に美波!?今どこにいるのぉ!?」

ちょっと二人に色々とお話しなきゃいけないことが出来た気がするし、急いで二人を探すことに。ま、まさかあの諺にそんな意味もあったとは……何故だか学校にいなくても、日頃の勉強不足を反省した放課後となった。

Re: バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 ( No.249 )
日時: 2016/01/29 22:18
名前: ユウ (ID: zQJPnDCy)

…漸く毒物の浄化が終わり久々に現世に戻ってきてみれば…マジで許さん。

今すぐ消し炭にしてくれr

黒ウサギ「た、大変、大変なのですよーーーー!!」

うおっ!?びっくりしたー。なんだ黒ウサギか、急に病室に入ってきてどったの?

黒ウサギ「じ、実は問題児の皆様が、問題児の皆様が…!!?」

…十六夜達?彼らがどうかしt(病室のドアを開くユウ。…そこには)

飛鳥だったもの「ドイツの科学力は世界一ーーーー!!世界一ーーーー!!世界一ーーーー!!世界一ーーーー!!」(壁に向かって世界一−−−−!!を連呼し続ける飛鳥)

耀だったもの「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!」

うずめだったもの「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!!」

(何故かラッシュの突き合いをしている耀とうずめ)

アベルだったもの「熱くなれよ!!暑くなれよ!!厚くなれよ!!篤くなれよ!!」(白目向きながら意味不明な発言を続けるアベル)

ナニコレ?

黒ウサギ「じ、実は黒ウサギにも何がどうなっているのか分からなくて…」

エル「……」

あっ、エル!お前は大丈夫だったのか!?

エル(?)「エル?違うね。私は…」

…私は?

エルだったもの「筋肉大好きモリモリマッチョマンの変態さ」(言った途端急激に筋肉達磨になるエル)

エルーーーーー!!?お前まで一体何があったんだ!?

エルだったもの「大丈夫だ、問題ない」

そっか。それならよか…って、全然大丈夫じゃないし!!

黒ウサギ「アワワワ、な、何が如何なって…そう言えば十六夜さんはどこに…」

ポンポン(ユウの肩に誰かが手を置く音)

…ちっ!?誰だこんなクソ忙しい時

十六夜だったもの「アハン」(阿部高和みたいな顔つきで上半身を脱いだ状態でユウを見つめる十六夜だったもの)

………あの〜?十六夜さん?

十六夜だったもの「(感想を)やらないか?」

あ、うん、感想はするよ?でも、なんで『ウホッ』『アッー!』で有名な人の顔付きになって

十六夜だったもの「(感想を)やらないか?」

………

あの〜?十六夜さn

十六夜だったもの「やらないか?」


…………

飛鳥だったもの「世界一ーーーー!!世界一ーーーー!!」

耀だったもの「エーリンエーリンエーリンエーリン!!!」

うずめだったもの「エーリンエーリンエーリンエーリン!!!」

アベルだったもの「熱くなれよ!!アツくなれよ!!アツクなれよ!!あつくなれよ!!」

エルだったもの「ムキ!!……マッチョ!!………二重の極み!!!」

十六夜だったもの「やらないか?」

感想に移りたいと思いまーす(晴れやかな表情でツッコミを放棄したユウ)

黒ウサギ「ユウさーーーーん!!?」











































と言う悪夢を見た。

十六夜「バルス」(物理)

目が〜!?目が〜〜!!?

飛鳥「まったく、漸く目が覚めたと聞いて、来てみれば…」

エル「まさか、あんなネタだらけのお話を聞かされるとは思わなかったよ」

耀「…結局ユウは私達に何が言いたかったの?」

アベル「この感じから行くとただ夢の話を聞いて欲しかっただけみたいだね」

うずめ「ちぇ、何だよ。聞いて損しただけじゃねえか」

…うう、問題児の皆の言葉の端々が痛い。

これは制服の半脱ぎとスク水(女子)の格好が両面で描かれた造ちゃん(酔っ払い状態)等身大枕で心を癒そう

とまあ、色々と茶番がモリモリ入っちゃいましたけど。ここからは本当に感想を始めようと思います!!

さて、まずは…明久にスッポンドリンクとバイアグラでも送って置くとしますか。

アベル「ちょっと待って!?君は吉井君に何をさせるつもりなの!?」

何おって?…決まっておる。奴に姫路さんと美波との既成事実を作らせてFFF団の憎悪の燃料にするために決まっておろうが。

うずめ「…うわ、キモ〜イ。うずめ、ユウのその行動に凄く引くわ」

ウグッ!?心に傷が…

ま、まあ、これは置いておいて、

いや〜それにしても造ちゃん?造ちゃんみたいな子でもやっぱりそういうことは想像しちゃうんだね〜?

いや〜その羞恥の感情美味ですわ〜。取り合えずご馳走様!

飛鳥「…最低」

エル「こんな『小さな女の子』にそんな危ないこと考えてたなんて…見損なったよ!」

いや、違うからね?エル?ちょっと造君をいじっただけだったからね?

そして、最後に雄二から諺のもう一つの意味を知り汗ダラダラの明久。

…二人が暴走する前に見つけられたら良いね…。

耀「ユウの言うとおり、見つけられるといいね。ハフハフ」

十六夜「…おい春日部?お前、どっから、秋茄子を出して焼いて食べてるんだ…?」

耀「秘密……ハム。モグモグ……美味!(グッ!)」

さて、それでは今回の感想は此処までにしたいと思います!!

また次回も楽しみに待ってますね!!

Re: バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 ( No.250 )
日時: 2016/02/05 21:11
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

>ユウさん
感想ありがとうです。

そりゃ明久があんなに幸せならそんな悪夢も見ますよねー……おのれ明久、ただでは済まさん。

明「なんで……!?そしてなんてもの送ってきたのさ!?ぼ、僕ら学生だしその……だ、ダメだよね……?」
康「…………FFF団に聞かれてたら羨ま死刑ものだな」

ちなみに造は見た目通りのお子ちゃまなので、何だかんだでそう言う話の耐性はありませぬ。だからこそ小暮さんにも勝てませんし、ついでに英語にばかり目を向けられがちですがこやつ保健体育も実は不得意教科なんですハイ。

造「…………あぅ」
秀「らしいと言えばらしいがの」
雄「ああ、そういや造保体が若干点低いなと思ってたがそういう事か」


130時間目 分けられる3つのタイプ〜戦闘タイプと戦術は〜 ( No.251 )
日時: 2016/02/05 21:13
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

造Side


「さ、さてさて!それでは無事に食料調達も出来たことですし、アキさん家に行きましょーっ!雨降る前に行きましょー!」
「造、その妙にハイテンションなのは照れ隠しか?顔がまだ買っておいた完熟トマト並みにアレだが」
「…………ゆーさん、放っておいてくださいよぅ」

スーパーでは……まあ、色々ありましたが何とか無事に買い物も終えて、雨も降りそうだということでアキさんのお家に足を速める自分たち仲良しメンバー。

「そ、そうだね!造の言う通りさっさと帰らないと!雨降る前に料理を取り込みたいし、洗濯物も作らないとだし!」
「明久よ、それはもしや“雨降る前に洗濯物を取り込みたいし、料理も作らないと”———と、言いたいのかの?混乱しておるのもわかるが混ざっておるぞい」
「…………落ち着け」
「わ、わかってるよ……」

あぅ……それにしても顔がまだ熱いです……アキさんのお家に着く前に精神が擦切らされた気分ですね。だって仕方ないじゃないですか……姫路さんたちが、その……あー、恥ずかしかった……

『そ、そうですよね、あと二年くらいは待たないといけませんよね』
『そ、そうよ!?こ、こういうことはちゃんと段階ってものがあるのよ瑞希……まずはホラ、玲さんやアキのご両親にきちんとした挨拶をしてから———』

……ちなみに自分やアキさんが顔を赤くしなきゃならなくなった理由のお二人は、後ろの方で何やら非常に気になるような気にしちゃいけないような話をしている気がします。正直ツッコミたいけどツッコんだら負けと思う複雑な気分ですが……ま、大変でしょうがその辺はアキさんに任せることにしましょうか。自分は馬に蹴られたくないですしー?

「それはそうと、葉月ちゃんはちゃんと帰れたかな……道に迷ったりしてなきゃいいけど」
「ん?ああ、そういや島田の妹のチビッ子も同棲してんだったな。ま、平気だろ。チビッ子は明久より頭が良いからな」
「…………明久よりしっかりしてるし心配ない」
「葉月ちゃんが頭良くてしっかりしてるのは同感だけどさ、君たちの言い方だとまるで僕が小学生より頭悪くてしっかりしていないって聞こえる気がするのはどういうことかな?」

「「気のせいじゃないから安心しろ、知能レベル小学生以下の明久」」

「よく言った。君たちとりあえず後で覚えておきなよ」
「相変わらずじゃなこやつらも」
「仲の良い証拠ですよヒデさん」

そうこうしているうちにアキさんの家のマンションに到着。ここに来るのも今ではすっかり慣れましたねー

「やれやれ、やっと着いたのう。一雨降る前で良かったがの」
「ですね。折角の買い物が濡れてはマズいですもんねー」
「そだね。んじゃ早速入ってよ。ただい———」


ダダダダダ……ダンッ!


鍵を開け自分たちを迎え入れるアキさん。そしてそんなアキさんの声を聞きつけたのか、玄関に向かって文字通り跳んでくる黒い影が一つ。それは……

「おかえりなさいですー!」
「———まグボホォッ……!?」
「あ、アキさああああああああああん!?」

アキさんが扉を開けた瞬間、人間ミサイルの如く島田さん家の妹さんの葉月さんがアキさん(の鳩尾)目がけてダイビング。直撃を喰らったアキさんはその場で悶絶します。おおぅ、急所を的確に突くなんて……あれは痛い。

「あ、明久君!?“また”ですか!?しっかりしてください!?」
「こ、こら葉月!アキが帰って来てくれて嬉しいのはわかるけど、“毎回”それやったらアキの身体が壊れちゃうでしょ!?ほら、ちょっと離れてあげなさい!」
「ま、また?毎回?……アキさん毎回あれを喰らっているんですか……?」

学園に行けばクラスメイトに暴行を受け、家に帰ればこの傍から見ていれば微笑ましい急所を突いた愛の突撃を喰らうアキさん。モテる男って辛いんですねー

「うー……ごめんなさいですバカなお兄ちゃん」
「だ、だいじょうぶ……だいじょうぶだから、ね。ただいま葉月ちゃん……」

姫路さんと島田さんに介抱されながら、ちょっぴり涙目になりつつもそう気丈に気にしないようにと葉月さんに微笑むアキさん。漢です……漢ですよアキさん……っ!

「そうだぞチビッ子。このバカなお兄ちゃんは丈夫だけが取り柄のバカだからな。寧ろ遠慮せずドンドン殺っていいからな」
「…………バカなお兄ちゃんはドMだし、寧ろ喜ぶと思う」
「雄二、ムッツリーニ。葉月ちゃんの教育に非常に悪いから余計なこと言うなら帰って、ホント今すぐ帰って」

そしてそんなアキさんを更に追い込む友人たち。さっきの買い物といい今といい自分、時々アキさんたちの関係が一体どういうものなのかわからなくなってしまいます……

「ま、まあそれはともかく。葉月さん、お久しぶりです」
「元気にしておったか?」
「はいっ!召喚獣のお姉ちゃんも演劇のお姉ちゃんも元気でしたかー?」

「「いやだからお姉ちゃんじゃなくて……」」

そして未だに解けぬ誤解。この前やった召喚獣版人形劇のお陰(?)で、どうやら葉月さんに更に自分たちが女の子であると認識されてしまった模様。出会う度に自分もヒデさんも男だと言って矯正しているつもりなんですけどね……

130時間目 分けられる3つのタイプ〜戦闘タイプと戦術は〜 ( No.252 )
日時: 2016/02/05 21:17
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

「こらアキくん。また玄関で騒いで、一体何事です———あら?皆さんこんにちは♪遊びに来てくれたのですか?」

と、そんなアキさんの声を聞きつけたのか、アキさんのお姉さんの玲さんが自分たちをエプロン姿で迎えてくれま———何あれ……?

「ああ、なんでもないよ姉さ———姉さんっ!?アンタまたなんて恰好してんの!?おかしいでしょ!?」
「?なんて恰好って……失礼ですねアキくんは。エプロン姿のどこがおかしいのですか?」
「おかしいに決まってるよ!?バカなの?その恰好でお客さんを対応するとかバカなの姉さんっ!?」
「あの、玲さん。多分世間一般的にはスクール水着の上にエプロン姿って恰好はどう控えめに見てもおかしいかと」

迎えてくれた玲さんは……相変わらずの凄い恰好。その、何と言いましょう……ある種の特殊な趣味の方が喜びそうな……うん。スクール水着だけでもアレなのに、その上にエプロンを着るなんて自分たちはどんな反応をするべきなんでしょうかね。

「いえ、裸エプロンより健全で且つ安全でしょう?裸エプロンでは油が跳ねたとき危ないですが、これなら油が跳ねても火傷することもありません」
「そもそも裸エプロン自体間違っているんだよ姉さんっ!?」
「ですが日本はこういうエプロンの使い方がオーソドックスだと先輩が」
「サクヤさぁああああああああああん!?あの人何言ってんですかっ!?」

何を教えてるんですかうちの育ての親は……思わず現在海の向こうで泣きべそかいている育ての親のサクヤさんのいるであろう方向に向かって大きな声でツッコミをしてしまう自分。サクヤさん、帰ってきたら説教です。

「姉さんっ!雄二とムッツリーニ以上に葉月ちゃんに悪い影響を与えかねないから、そんなもの今すぐ脱いでよ!?」
「あら……アキくんったら……脱げだなんてダイタンな♪良いですよ、後でゆっくり、ね♪」
「実の姉にそう言うプレイをさせるとは、明久は実に変態だな」
「…………シスコンのド変態」
「ああもう違うっ!?いいからさっさとまともな服を着てってことだよ姉さんっ!そしてそこのバカ二人はもうとっとと帰れっ!というか、ムッツリーニに変態扱いされるのは納得いかないっ!」
「……玲さん、ダイタンね」
「……やっぱりあれくらい攻めた方が、明久君も喜んでくれるのでしょうか」
「美波、瑞希っ!このバカ姉の真似だけはしちゃダメだからね!?」

アキさんのお家に入る前からこの騒ぎ。怒涛のツッコミでアキさんの精神はボロボロ。アキさん、強く生きるのですよ。

「???召喚獣のお姉ちゃんと演劇のお姉ちゃん、どうして葉月の目と耳を塞ぐのですかー?」
「あー……その、葉月さんの教育に悪いお姉さんとお兄さんの暴走がですね」
「今更じゃが、この明久たちの同棲生活……葉月ちゃんの将来に悪影響を及ぼしかねんな」

ヒデさんと二人、葉月さんにこの状況を見せない&聞かせないためガードをしつつ、未だにギャーギャーと騒いでいる皆さんを置いて先にアキさんのお家にお邪魔することに。……お隣の人に後でお茶菓子もって謝りに行かねばね……


〜しばらくお待ちください〜


「ぜぇ……ぜぇ……さ、さて。それじゃあまずは夕食でも作ろうかな……」
「全くアキくんはまた玄関先で大声を上げて。ご近所迷惑ですよ、反省なさい」
「(一体誰のせいだと……!)」

数分後、何とか玲さんに普通の服を着るよう説得したアキさん。精神的にも肉体的にもかなり疲労してますね。そんなアキさんを気遣って、アキさん大好きなこの人がこんな提案を。

「あ、でしたら明久君!是非私も夕食の手伝いを———」
「あぁっ!そうでした!?姫路さんと島田さんってお昼にまともに試召戦争の話を聞いていませんでしたよね!?アキさんやこーさんにお料理を任せて、お二人は対策会議に参加してもらうのはどうでしょう!?」
「流石造は良い事言うなっ!?つーわけで昼に話聞いてなかった姫路と島田はこっちに来て話を聞けっ!メシよりも試召戦争の話が大事だからなっ!」
「そ、そう言えばそうだったわ!大切な話はちゃんと聞かなきゃね瑞希!」
「…………料理は俺たちに任せろ!」
「そ、そう言うこと!雄二の言う通り料理より試召戦争の方が何千倍も大事だからね!」
「えっ、ですが明久君と土屋君だけでは人手が……」
「わ、ワシも手伝う!姫路たちは話を聞いてくるといい!」
「は、はあ……わかりました。では料理はまた今度と言うことで」

咄嗟に全員とアイコンタクトで話を合わせます……危なかった。そうか、傍から見れば羨ましくとも死と隣り合わせの同棲生活でしたか。姫路さん(と玲さん)をキッチンに上げたその時は、恐らくすべてのモノは息絶えるでしょうし。


〜雄二再度説明中〜


「———と言うわけだ。つまりAクラス戦の前に防衛戦にしっかり備えるってことだな」
「こうすることで戦闘経験値の上昇と戦力戦術の強化を図る寸法だそうです。ここまでで何かわからない事とかありますか姫路さんに島田さん?」
「大丈夫です、大体わかりました」
「ウチも把握したわ。それにして今更だけどよくもまあこんなこと思いつくわよね坂本」

(殺人料理を作らせないため)姫路さんと島田さんにはお昼にやった試召戦争関連の説明をしている隙に、アキさんたちにご飯を作ってもらうことに。お昼は精神がトリップしてまともに聞いていなかった二人に今後の計画を説明します。

「褒めても何も出ねえぞ。……さて、ここからはまだ話していない作戦の細部を説明すっか。その前に———おい、明久・ムッツリーニ・秀吉!今いいかー?」
「呼んだかの雄二よ」
「おう。っと、そういやメシは出来たのか?」
「うん。葉月ちゃんも、それから(一応)姉さんも手伝ってくれたし、後はご飯が炊き上がるのを待ってからちょっと仕上げるだけかな。ありがとね葉月ちゃん」
「あら、偉いじゃない葉月。お手伝いありがとね」
「えへへ〜」

そう言って料理組を呼び出すゆーさん。料理組はもう大体作り終えているようですね。葉月さんもしっかり手伝ってくれたようでアキさんとお姉さんの島田さんに褒めてもらっています。うんうん、とても微笑ましい光景ですねー

「…………で、何か用?」
「ああ、昼話しきれなかった作戦の細部の説明を始めようと思う。ここにいる七人はクラス代表及び各科目の部隊長だからな、全員“真面目に”聞いておいてほしい」

姫路さんと島田さんを一瞥しつつ“真面目に”を強調してゆーさんが作戦細部の話を始めます。

130時間目 分けられる3つのタイプ〜戦闘タイプと戦術は〜 ( No.253 )
日時: 2016/02/05 23:07
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

「まず最初に確認しておきたいことは、俺たちFクラス———と言うよりこの場にいる7人は大きく3つのタイプに得意な戦闘方法が分けられる点だ」

「「「「「「3つのタイプ?」」」」」」

そう言うと、ゆーさんは最初に姫路さんと自分を指差します。

「一つ。姫路と造の“一対多数の乱戦タイプ”。お前ら二人は勿論一対一の戦闘も強いんだが……その真価を発揮するのはやっぱ乱戦だろう」

そう言って手元のルーズリーフに『姫路・造 乱戦タイプ=金の腕輪や能力で敵陣をまとめて殲滅し士気高揚を図る』と皆さんに見えるようにしながら書き始めるゆーさん。

「やることは単純明快。姫路の金の腕輪の能力【熱線】と造の点数消費型の箒の能力でまとめて敵陣を叩く、ただそれだけだ。それだけだが敵はたまったもんじゃねえだろな、何せこの二人の攻撃は召喚フィールドにいる限り実質防御も回避も不可能な広範囲超火力。うちの主戦力兼切り札と言っていい」
「うわぁ……それってつまり引くに引けない全体攻撃ってことかぁ……瑞希と造が敵じゃなくて良かったよ」
「確かに味方なら非常に心強いが、もし敵として戦うなら初めから白旗を揚げざるを得んのう」
「…………敵も気の毒に」

召喚フィールドいっぱいに広がる一撃必殺の【熱線】と召喚獣を切り裂く吹き荒れる突風が襲ってくるのですからね。たまらずフィールドから出たら戦闘放棄とみなされ戦死と同じ扱いになるという、発動さえすればほぼ敵なしの全体攻撃と言ってもいいかもしれません。

「次。島田・ムッツリーニ・秀吉は一対一の戦い、つまり“一騎打ちタイプ”だな」

先ほどのルーズリーフに続けて『島田・ムッツリーニ・秀吉 一騎打ちタイプ=得意科目でそれぞれの部隊を引っ張り敵を各個撃破』と書き綴るゆーさん。

「昼にムッツリーニが説明してくれたが、お前らは各々の得意科目では上位クラスにも匹敵する力を持つ。各々の担当する部隊を引っ張りつつ、部隊長らしく敵と一対一の状況を作ったら必ず敵を仕留めるよう心掛けてほしい」
「こーさんの保健体育や島田さんの数学、ヒデさんの古典や現国なら一対一ではかなり有利に戦えるでしょうからね」
「三人も召喚獣を扱いなれているしな。一対一の戦いになれば必ず勝ってくれると期待してるぜ」

唯でさえ上位クラスレベルの点数を持っているうえに、普段から何かと召喚獣を使役している皆さんです。数で押し込まれるならともかく、その得意科目でなら一騎打ちすればそうそう負けることは無いとゆーさんが断言するほどですからね。

「で、最後。明久と俺……それからさっき乱戦タイプに分類した造もか。俺ら三人は“イレギュラータイプ”だな。状況に合わせて“乱戦タイプ”にもなれば“一騎打ち主体タイプ”にもなり、そのどちらでもない働きもする」

自分とアキさん、そしてご自身を指差しつつルーズリーフに『俺・明久・(造) イレギュラータイプ=手持ちの腕輪を最大限活かし、あらゆる状況に対応していく』とゆーさんは書き込みます。

「白金・黒金の腕輪を持つ俺らは少々特殊な動きをする。乱戦・一騎打ち戦に参戦するのは勿論、状況に応じて味方のサポートや昼に説明したように俺が回復地点を作ったり明久の二重召喚(ダブル)による敵のかく乱や造の代理召喚の腕輪による教師のフィールドを干渉させて場を仕切りなおすなど、とにかく場を荒らしまくって敵に予測も出来ない一手を打つ」
「そっか、アンタら三人とも特殊腕輪を持ってるもんね。他のクラスにはないウチらのクラスの強みよね」
「それに腕輪だけじゃなくて明久君も月野君も坂本君も、召喚獣の動かし方が一番上手ですからね。きっとすっごく活躍すると思います!」

試召戦争において召喚獣と召喚フィールドを自在に操ることが出来る腕輪を持つ自分たちは、とにかく相手クラスにとってはイレギュラー中のイレギュラー。出来る限り早めに討ち取りたいと思うでしょうが、自分も含めたこの三人は召喚獣の操作技術もトップクラスという理不尽さも持ちます。風の噂では色んな意味で自分たち三人は各クラスのブラックリストに載っているとか。

「以上で3つのタイプの説明終了だ。そして基本戦術は姫路と造を攻撃の起点とした短期決戦型となる。“乱戦タイプ”→“イレギュラータイプ”→“一騎打ちタイプ”→“イレギュラータイプ”→“乱戦タイプ”のローテーションで戦っていく形になるだろう。このローテーションは昼に説明した俺らのクラスの弱点を補うためのものでもある」
「ん?どういう事?」
「俺らの弱点・課題は各々の点数回復のタイミングだって説明したろ明久。そこを補うのは他でもないお前や造、それに俺のイレギュラータイプだ」

昼にゆーさんが言った弱点対策。そのカギとなるのはイレギュラータイプの自分たちだとゆーさんが説明します。それはつまり……

「あ……なるほど。姫路さんと自分が場を一掃。その後すぐに点数回復と体力温存のために姫路さんを下がらせる。姫路さんを安全に本陣に引かせるために二重召喚(ダブル)が使えて小回りの利くアキさんや干渉による仕切り直しのできる自分、回復地点を生成できるゆーさんが敵を足止めする……ってことですか」
「その通り。そして姫路と交代で今度は撃ち損じたり追加で送られた敵を討つために一騎打ちタイプの島田たちを投入。各々が各個撃破したら点数回復の為引き———」
「一騎打ちタイプの美波たちを安全に下がらせるために、また僕たちが間に入り込んで敵を足止め、ってこと?」
「そういう事だ。腕輪・体力・戦闘技術に最悪の場合にその場から逃げ出せる逃走技術。このすべてを持った俺ら三人でFクラスの弱点をカバーするってこった」

むぅ……これはまた責任重大ですね。弱点を補うための自分たちとゆーさんは言いますが、裏を返せば自分たちが———特にクラス代表のゆーさんが倒されればゲームセットの諸刃の剣的な戦術。ですが……

「上手く動くことが出来れば———課題である点数補充のタイミングもコントロール出来そうですし、面白そうですね」
「うん。まあ大変そうだけど———勝つためだもんね。やってやろうじゃないか雄二」
「良い根性だ二人とも。ヘマすんなよな?期待してんだから。てなわけでこの基本戦術と俺ら7人だけでB〜Eクラスと互角以上にやれる上、他のFクラスの連中も部隊につけていく。後はそれぞれのクラスに合わせた戦術を宣戦布告を受け次第、随時作戦を指示するからな」

そこまで説明すると最後にゆーさんはルーズリーフに———

【基本戦術】
乱戦タイプ:敵本陣に向けて腕輪や能力で全体攻撃。雑魚を一掃
  ↓
イレギュラータイプ:体力回復と点数補充の為に姫路と造を本陣に下がらせる間、敵をかく乱(造は腕輪でフィールドを変更してそのまま残ってもらう場合も)
  ↓
一騎打ちタイプ:散り散りとなった敵を一騎打ちで各個撃破
  ↓
イレギュラータイプ:次の敵陣に向い先行・偵察・かく乱・陽動
  ↓
乱戦タイプ:イレギュラータイプが引きつけた敵陣を再び全体攻撃で一掃

以下ローテーション 状況に応じて戦術変更も視野に入れ臨機応変な戦いをすること

———このように書いて、自分たちを見まわして締めに入ります。

「まあ、今書いた通りこれはあくまで基本中の基本戦術。多分他クラスも俺らがこの戦術で来ることを予想してそれぞれが対策をしてくるだろうし、この戦い方だけで勝てるほど試召戦争は甘くはない」
「一学期も良いとこまで行ったのにあと一歩の詰めが甘かったせいで引き分けた雄二が言うと説得力あっていいね」
「やかましい明久……と言いたいが、事実だから甘んじて受けてやる。俺もこんな誰でも思いつくような戦術でAクラス———翔子を倒せるなんて思っちゃいないが……ともあれ各々の基本戦術を頭の片隅に入れておけば、緊急時も自分がどう戦えばいいか自ずとわかってくると思う。後は本番に強い俺らだからな、ぜってぇ乗り切れるって信じてるぞ」
「はいはい、わかってるって。そもそもこれだけ戦力が整ってて負けるなんてありえないもんね。当たり前だけど……僕らは強いんでしょ雄二?」
「ですね、何せ自分たちは……強いんですよね、クラス代表さん?」

アキさんと二人、一学期の最初の試召戦争でゆーさんがこの場にいるメンバーに言った言葉を思い出させるよう茶化します。そうあの———

『———いいか、お前ら。ウチのクラスは……最強だ』

———自分たちを勇気づけ、試召戦争に駆り立てたあの言葉を。そして、今も同じように自分たちを奮い立たせるべく代表のゆーさんはあの時……そう一学期以上に自信に満ちた表情でこう返してくれました。

「おうよ、当たり前だ。なんせウチのクラスは……最強だからな」

Re: バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 ( No.254 )
日時: 2016/02/05 23:36
名前: ユウ (ID: dFTsrC3s)

最強…か…

確かに雄二の言うとおりの戦法でいけば負けることは無いだろう。

…けど、それは『自分達以外の仲間』…そう、Fクラスの野郎共の協力も合ってこそ出来ることであるのを計算から忘れているみたいだね?

…フフフ、安心しろ。FFF団の皆さんにはもう既に明久が姫路さんと美波と一緒に夜に激しい運動をしていると嘘の報告をして置いた。『その他にも霧島さんのお腹の中に赤ちゃん(誰のとは言っていない)が宿ったとか、ムッツリーニが大人の階段を登ったとかの嘘の報告も行った』

…その結果

須川会長「ヨシイ、サカモト、ムッツリーニニヲイカスカチナシ、カナラズコロス」

バーサーカー会員「アハハ、ブッコロスYO--!!アノ3バカノ、ハラワタヲ、カッサバイテ、チョウヲ、ドバドバッテ、ダシタアトニ、クビヲ、キリオトスYOーー!!」

逆十字会員「コノゴミクズドモメガ、キサマラニヒカリ(幸福)ナドノニアワン。カワリニオレタチノヤミ(殺意)ヲクレテヤル!!サア、ヨコセソノヒカリヲ!!!!!!!」

FFF団『アノ3バカマジコロス!オレタチノ、ゾウオデ、ニクカイニ、カエテクレルワ!!』

…ご覧の通り、全員が狂ってしまったよ。いやー、困ったことになったねハッハッハ(顔は笑顔だけど目が笑っていない)

アベル「吉井君逃げてー!早く逃げてー!!」

エル「エル達が止めてる間に遠くまで逃げてー!!」

ハッハッハ!!無駄だ!!最早この流れは変えられん!!さあ、野郎共!!その沸き立つ憎悪をあの3バカ共にくれて…

うずめ「おーい、アベッち!エルっち!それにFFF団の皆ー!!」

…?うずめか?如何したんだ急に?

うずめ「いやー実はさ。ヨウっちと一緒にプリンを作ってたんだけど、二人とも張り切りすぎちまってよ。お陰でプリンが沢山余っちまったんだ。…せっかくだからFFF団の皆にもプリンを」

FFF団『是非頂きます!!!!!!!!!!』

うずめ「ヒャイ!?」

福村「わーい!!女の子からの手作り料理だー!!」

須川「きっと俺の為に作ってくれたに違いない!!…おい、お前らどけ!!このプリンは全て俺の物だ!!」

横溝「んだとテメー!会長だからってお前みたいな不細工にうずめちゃんがプリンを作るわけねーだろ、このだアホが!これは全て俺のもんだ!つまりこの数だけうずめチャンは俺のことが好きなんだ」

福村「てめーこそ寝言は寝てから言いやがれ!!ここのプリンは俺のもんだ!!!」

会員1「いや、俺のだ!!」

会員2「いいや、俺だ!!」

会員3「ざけんなテメーら!!俺のに決まってるだろうが!!」

いいや、きっとこれは感想を書いている俺へのプレゼンt

FFF団全員『アンタは黙っとれい!!!』

んだとテメーら!上等だよ!!だったら全員掛かってこいよバーカ!!!

FFF団全員『こうなったら…戦争じゃあああアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!』

野郎ぶっ殺してやるーーーー!!!!!

《血で血を洗う大戦争を始めた男共》

うずめ「えっ、えっ、えっ!?何何々!!?うずめがプリンを持ってきた途端、皆ケンカし始めたんだけど!!?」

アベル「うずめ。口調が戻ってるよ?…何はともあれナイスアシスト!!」

うずめ「えっ?あ、うん。どういたしまして?」

エル「取り合えず此処にあるプリン(200個)は造君宛てに送ろっか。造君なら一時間で全部食べきりそうだしね〜」

うおーーーーー!!!!!!そのプリンは全部俺のもんだ!!!!!!!!!

FFF団全員『まずはテメーからぶっ殺してやる!!!!!!!!』

二人『ア、アハハハ』

うずめ「…オホン。結局、これはどういう状況なんだ?」

Re: バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 ( No.255 )
日時: 2016/02/12 21:03
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

>ユウさん
読んでいただきありがとうございますです。

色々考えて計画している雄二ですが、肝心のFFF団の兼はまだ気が付いていない模様。さて……足元を掬われかねないけどどうする気なのやら。

雄「いや……一応俺も警戒はしてるんだがな?」
造「ただ今回の場合は……ちょっとどうにもならない気もしますがね……」

とは言えFFF団……色々と単純過ぎる!?お子ちゃまな造でもプリンに釣られるようなことはないと言うのに———

造「えっ!?プリンいただけるんですか!?」

———いや、こやつも結構アレでしたね。

131時間目 やっとお披露目新生装備〜期待は裏切られるもの〜 ( No.256 )
日時: 2016/02/12 21:07
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

造Side


「さて、戦術の確認を終えたところで……もう一つの要件を済ましてからメシにするか」
「もう一つ?何だっけ雄二」
「ああ、そうでしたね。召喚獣の装備の仕様変更確認をするんでしたっけ」

いよいよ来週に控えた試召戦争解禁に伴い、一通りの今後の試召戦争の戦い方の説明を終えたゆーさんがそう切り出しました。

「仕様変更……?あ、ああ!そう言えばそんなこともあったね。何だか随分と時間がかかって忘れてたよ僕」
「あのババァが期末試験時に提案した奴だな。試召戦争再開を遅らせる代わりに召喚獣の装備のリセットを行うっていう代替案。この場にいる全員がそれぞれ期末では良い結果を残したからな。今後のことを考えても確認しておきたい。お前らも装備変更は少しは楽しみにしてただろ?」
「システムのメンテナンスはすでに終わっていると学園長から聞いていますからね。今回はオカルト召喚獣にならずに正常に召喚できると思いますよ」

以前も説明しましたが、これはシステムのメンテナンスついでの召喚獣の装備———武器・防具のレベルのリセット……つまりこの前あった期末試験で良い点数を取ればそれだけ装備が上がると言う特別措置のこと。夏休みに入る前にも確認しようとした矢先にオカルト召喚獣騒動と肝試し大会になっちゃって有耶無耶になっていましたが、いよいよ試召戦争解禁と共に新しくなった召喚獣を拝見できますね。

ちなみに自分も本来は性質上基本的な装備の変更は無いものの、それでは面白くないだろうからとデザインの変更はされていると学園長から聞いていますし結構楽しみにしていました。

「ホントはお昼に皆で召喚出来れば良かったんだけどね。雄二と一緒に鉄人に頼みに行ったのに僕ら問答無用で駄目出しされたんだ。……あの鉄ゴリラめ、真摯に頼んだのに拒否る上に馬鹿力で僕らの手を粉砕しかけるし……」
「鉄人に頼もうとした俺らがバカだったな……ぜってぇ二度とあの鉄ゴリラには頼まないようにすっぞ」
「いえ、お二人の頼み方では間違いなく西村せんせじゃなくても怒りますって」

教師をファーストネームで呼んで頼むのは未だしも、(アキさんたちにそのつもりはなかったようですが)ちょっぴりバカにしたような頼み方では誰でも召喚許可なんてしたがらないかと思いますよ。

「全く、鉄人なんかに頼むなんてまさに骨折り損だったな。そんなことしなくても俺らの陣営に教師連中より話の分かる奴がいると言うのに。———と言うわけで、造。早速代理召喚頼む」
「はーい。……とは言え、散々色んな場所で召喚獣に成っている自分が言うのも何ですが、これ先生方にバレたら説教モノですよね……大丈夫、でしょうかね?」

「「「大丈夫、バレなきゃ問題ない」」」

「清々しき助言、どうもありがとうございます皆さん」

ゆーさん、アキさん、こーさんのその言葉に推されて自分の持っている代理召喚型の白金の腕輪を準備します。これもちゃんとメンテナンスされているのでちゃんと起動出来るハズ。さてさて、久しぶりにいきますか。

「あ、あはは……ですが私もちょっと楽しみでした。どんな風に変わっているのでしょうか」
「ウチは前みたいにぬりかべが出ないことを祈るわ、切実に」
「ワシの召喚獣、カッコよくなっておると良いのじゃが」
「…………楽しみ」
「それでは念のためにちょっとテーブルとか椅子とか机を端に移動させて、スペースを開けてから召喚しましょうか」

心配はしていませんが、アキさんの召喚獣と自分には物理干渉がありますからね。壊しちゃう恐れのあるものは先に移動させて召喚してみましょうか。

「?バカなお兄ちゃんたち、どうしてテーブルとかを隅に置くですか?」
「んー?ああ、ちょっとね。お兄ちゃんたちは召喚獣を出してみようかなって思ってたところなんだ。テーブルも椅子も邪魔になるといけないし壊れちゃうのも困るからね」
「わぁ!今までは離れたところでしか見たことありませんでしたし、葉月召喚獣を見てみたいです!」
「召喚獣……姉さんは海で造くんが召喚獣に成ったところを見ただけですね。楽しそうですしアキくん造くん、それに皆さん。良ければ私にも見せてくれませんか?」

テーブル等を移動させていると、葉月さんと玲さんが期待した目でそうお願いしてきます。あはは♪確かに召喚獣を間近で見るのは面白いでしょうからね。そんな彼女たちの期待に応えてあげましょうか。

「では、科目ですが……まあ無難に総合科目でいいですかゆーさん?」
「おう。んじゃ頼んだぞ造」
「OKです。それじゃあ……いきますっ!起動(アウェイクン)科目:総合っ!」

「「「「「「そして———試獣召喚(サモン)っ!」」」」」」


キィイイイイイイイイイイイン ボンッ!


自分の代理召喚型の腕輪の発動キーである起動(アウェイクン)のキーワードを口にしたと同時に皆さんで一斉に掛け声を上げます。お馴染みの起動音と召喚音と共にそれぞれの足元からは幾何学上の紋様が現れ、自分を含めた召喚獣たちが姿を現します。さてさて……

「わぁ……綺麗な鎧です!何だか凛々しくなった気がします」
「ランスに鎧……ウチは人形劇の時みたいな騎士ってところかしら。良かったわ……盾代わりにまな板とかじゃなくて、ホントによかったわ……」
「ほら、見てよ雄二に造。学ランの裏地に龍が描いてあるよ」
「見てみろよ明久に造。俺は虎だぜ」
《いやぁ、お二人は男らしくてカッコイイじゃないですか。自分の恰好なんて見てくださいよ、いっぱいフリルが付きましたよフリル》
「刀に羽織り……まるで新撰組といった体じゃな。強そうで嬉しいのう」
「…………上忍にレベルアップといったところか」

うんうん、良いですね。皆さん中々に装備が強化(レベルアップ)しているようです———

「「《って、ちょっと待ったっ!?》」」

「「「「???」」」」

おかしい。ごく一部のメンバーの強化が何かおかしい……

「OKちょいと待とうか。瑞希に美波、キミたちは召喚獣がどう変わったか説明してくれるかな?」
「え、えっと……私のは前より鎧がしっかりして、武器も長くて大きなものになりました」
「ウチは……軍服から騎士鎧になって、サーベルからランスに変わったみたいね」
《素晴らしい。お二人とも順当に強化されてますね。ではヒデさんとこーさん、お二人はどのように変わりました?》
「ワシは長刀(なぎなた)使いから新撰組になったようじゃな」
「…………下忍から上忍に出世した」
「うっし、お前らも良い感じで強化されてて嬉しい限りだ。さて本題に移ろうか。俺と明久の強化はどうなっている」

「「「武器が鉄パイプになって、それから学ランの裏地に……刺繍が入った(みたいです)」」」

「「お か し い だ ろ !?」」

《ヒデさん、自分のはどうなってます?》
「むぅ……その、何じゃ。普段の衣装にフリルが万遍なく追加されておるのう。武器である箒も心なしか可愛らしくデザインされておるような……?」

《お か し い で し ょ !?》

精一杯の自分・ゆーさん・アキさんの悲痛な叫びが木霊します。フリル?フリルってどういうこと!?他の皆さんと明らかに強化しているところが違うっ!?アキさんたちは何だか田舎のちょっとした不良スタイルですし、自分は自分でどこぞの魔法少女に更に近づいたような恰好。戦闘に関係ない所を無駄に強化されても困るのですがね!?あ、あかん……ツッコミどころが多すぎて、頭痛くなってきた……

131時間目 やっとお披露目新生装備〜期待は裏切られるもの〜 ( No.257 )
日時: 2016/02/12 21:09
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

「ま、まあ明久に雄二は普通の品行方正な生徒に比べるならば、確かに不良のようなものじゃしな……召喚システムもそこをピックアップしてしもうたのかもな」
「…………造もその容姿には、そのカッコが一番合う(カシャカシャ)」

何気ない友人たちの一言が辛い。そしてこーさん、そのカメラは帰る時までに没収させていただきますからね。

「あ、明久君かっこいいですよ!以前よりももっともっと強そうに見えますし、私たちはちゃんとわかっていますからね!」
「そ、そうよアキ!ちゃんと武器も強度が増しているしきっと成績が上がった頑張りが出てきてる証拠よ!」
「あ、ありがと二人とも……て、鉄パイプ+刺繍入り学ランスタイルの不良の恰好だけどね……点数は上がっても人間的に成長していないって召喚システムに言われているみたいで納得いかないや……ははは……」

アキさんが想い人二人に必死に慰められている間に、こっそりゆーさんとアイコンタクト。

「(造、まさかとは思うがこれはアレか?召喚システム《文》から俺や明久は不良のように見られているってことなのか……?)」
《(……それを言うなら、自分は未だに文さんから女の子として見られているってことですか……?)》

これって……学園長が(嫌がらせ目的で)故意に設定していないのであれば———文さんの深層心理が自分を女の子として、アキさんゆーさんを不良少年またはチンピラとして認識しているってことですよねコレ……文さん、次会うときはまた色々教育しないといけないようですね……

「バカなお兄ちゃんたちの召喚獣かっこいいです!」
「これはまた凄いですね。アキくんらしいと言えばアキくんらしい恰好ですし造くんも良く似合っていますよ」

「「《…………はぁ》」」

唯一の救いはギャラリーのお二人を楽しませたことでしょうか……?ちょっぴり期待していただけに、何だか理不尽なイメージを押し付けられたような自分とアキさんとゆーさんの三人で、黄昏ながら今はただご飯が炊き上がるのをボーッと眺めることとなりました。


〜夕食中〜

「———ま、まあ考えようによっては俺も明久も装備自体はレベルアップ(?)してる……ハズだ。俺はメリケンサックから鉄パイプに変わったしな!」
「ぼ、僕だって木刀から鉄パイプだからね!強度と攻撃力は間違いなく上がったはずだよね!これで今まで仕留めきれなかった相手とも戦えて、多少の鍔迫り合いでもそう簡単に折れることはないはずだもん!」

「「…………いや、でも鉄パイプに刺繍入り学ランの不良……はぁ……」」

「お二人は一応装備のランクアップはしていますが、自分のは何一つ変わっていませんよね……変って意味で変わってはいますが……フリル増し増しの可愛さアップって……はぁ……」
「ホレ、一旦切り替えるのじゃ三人とも。下手に装備のランクが下がっておるわけでもないじゃろうて」
「…………戦う上では問題ない。学園の顧客たちの需要的な意味でも問題ない」
「こーさん、今すぐカメラを出しなさい。写真売る気ですか?絶対売る気ですよね?」

アキさんたち特製の夕食を美味しく頂きながらも、未だに納得のいっていない三人で愚痴を言い合います。まあ自分たち以外は順当にランクアップしてることを喜ぶべきだとは思うのですがね。

「?どうしてバカなお兄ちゃんたちはがっかりしてるです?バカなお兄ちゃんたちの召喚獣バカっぽくてかっこよかったです!」
「アキくんらしいおバカさがよく表現された召喚獣でしたね。造くんは可愛さが増していましたし、先輩に後でカメラで撮影して送ってあげましょう」
「は、葉月?それ以上言うとお兄ちゃんたちの心が砕けちゃうからその辺にしてあげなさい」
「あ、玲さん。明久君と月野君の目がすっごく虚ろなのでもうその辺にしてあげてください」

やめてください、これ以上自分たちの心の傷を増やさないでください。折角の美味しいご飯のはずなのに、涙でちょっぴりしょっぱく感じてしまいます。ええぃ……今日はもう忘れることにしましょう。おかわりと自分アキさんゆーさんの三人で宣言し、やけ食い開始。この理不尽さ、食べて忘れてやりましょう。

あ、そうそうちなみに今日の献立は———

豚肉と牛肉の肉巻きおにぎり
鶏肉と白菜の塩鍋
揚げ茄子とニンニクの醤油漬け
山芋とオクラの和え物
玉ねぎとアスパラガスの玉子炒め

———と、料理上手なアキさんこーさんが中心となって作ってくれた美味しい夕食です。相変わらず見事な出来栄えに感心してしまいます。自分たちだけでなく、皆さんもおかわりをしているところからもわかる通り、ホントに美味しいですねー♪






…………え?なんかやけに精の付く食べものが多めな気がするって?それはその食材を買った二人(=姫路さん&島田さん)にでも言ってください。

「ふぃ……食った食った」
「ご馳走様でした。いやはや、ホントに美味しかったですよ」
「うむ。流石料理上手な二人の料理じゃな」
「…………お粗末様」
「そう言ってもらえると作った甲斐があるね。んじゃ僕お茶淹れてくるから皆はテレビでも見ててよ」

あっという間にあれだけあった夕食を完食して、一息つく自分たち。そんなアキさんの言葉に甘えて、テレビのスイッチを入れさせてもらうことに。さて、今の時間は何が放送されてますかねー?

『それでは、次のニュースです。海外で起きている国際空港の大規模なストについて現地の中西記者がお送りします』

「あ、これって……」
「え、何かしら瑞希?……あ、このニュースもしかして」
「アキくん、音量を」
「んー?……ああ、このニュースね。わかってる、ちょい待ち———よし、これで良し」

皆さんでボーっとチャンネルをコロコロ変えながらテレビを見ているとそんなニュースキャスターの声が響いてきました。玲さんに指示されたアキさんが音量を上げ自分たちにも聞こえるようにしてくれます。自分たちも関係ない話ではないので、緩んでいた頭をシャキッとさせ静かにニュースを聞くことに。

『中西さん、ストの様子はどうですか?』
『はい、こちらは現地の中西です。先日勃発したスト騒ぎは、労働者側と経営者側の労働条件の見解に依然として大きな隔たりがあり、未だ鎮静化の気配は見られないようです』

「ふむ。さすがにまだ飛行機は飛ばないようですね。これはやはり皆さんのご両親も当分は帰ってこれないかもしれませんね」
「そうみたいですね……」
「二人とも、早く帰ってくれるといいんだけどね。ね、葉月」
「はいです……」
「大丈夫でしょうかね……正直自分不安ですよ」

ジッとテレビを見つめてそのように呟く家族がちょうどこの話題のストに巻き込まれた当事者の自分たち。

「瑞希のお父さん・お母さんに美波と葉月ちゃんのお父さん・お母さん。それから造のお母さんとか日高先生たちがまだ向こうにいるんだよね。きっと皆のご両親、絶対皆の事心配してるよね」
「でしょうね。まあ、ウチと葉月は両親がよく海外出張してるし、こういうことも偶にあるから慣れてはいる分そこまで心配されてないかもしれないけどね」
「お姉ちゃんがいつも一緒にいてくれたから平気です!今はバカなお兄ちゃんとかきれいなお姉ちゃんとか玲お姉ちゃんと一緒だからもっと平気です!心配しなくていいよって電話で話しました!」

ああそうか、島田さん姉妹は帰国子女ですしこう言ったことも体験したことがあるのでしょうね。そう言った意味では自分や姫路さんと比べるととても落ち着いています。

131時間目 やっとお披露目新生装備〜期待は裏切られるもの〜 ( No.258 )
日時: 2016/02/12 21:11
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

「じゃがやはり心配じゃな。暴動に巻き込まれる心配は今のところないとはいえ、こう何日も帰ってこれぬのは不安になるじゃろて。のう姫路に造よ」
「はい……」
「ですね……」

島田さん姉妹とは対照的に、自分と姫路さんはちょっぴり不安顔。正直心配で心配で……

「———お母さん、あっちで観光が楽しすぎて『日本に帰りたくない』とか言い出さないといいんですが」
「自分の母も、全力で観光してるでしょうしこのままずっとここにいる、なんて言わなきゃいいんですが」

「「心配するところ、そっち!?」」

ポツリと呟く自分と姫路さんにツッコミを入れるアキさんとヒデさん。いえ、普通はもっと別のところを心配すべきなのはわかっていますが……姫路さんのお母さんはともかく自分の母は、ちょっとアレな母ですから……蒼兄さんたち大丈夫かなぁ……

「ああ……そういや造のところのおふくろさんも、ちょいと元気もんのおふくろさんだったな。……(ボソッ)俺の家のおふくろといい勝負が出来るレベルの———おまけに姫路のとこも結構アレなのか」
「…………苦労してる。母親はやはりどの家も最強か」

こーさんや、自分たちと同じく母親関係で苦労しているゆーさんが複雑な表情をする自分たちをねぎらってくれます。どこの家庭も母は偉大と言うわけですねー……

「ですが、本当に治安の良い観光地で良かったですね。退屈することもないでしょうし」
「お恥ずかしい限りです……普通なら、きっと空港で待っていたりホテルでジッとしているはずですのに」
「自分の母もですよ……これ見よがしに遊ぶ口実が出来たと全力で蒼兄さんたちを振り回して遊んでいるとか電話で聞きました」

話を聞く分に、何だか姫路さんのお母さんと自分の母、気が合いそうで怖いですね……あっちで意気投合していないでしょうね……

「とはいえその逆で、過保護に心配されるのも困りますがね。その母と違って、サクヤさんはこれでもかと言うくらいメチャクチャ取り乱していましたし」
「先輩は造くんが大事ですからね。実を言うと私のところにも電話がありました。“頼む……造に何かあったら玲っちも手助けしてやってくれぇ……”と」
「……ほんっとに、申し訳ありません玲さん。サクヤさん心配しすぎでしょ……」

全く心配せずに遊んでいる母親もいる一方、育ての親のような人であるサクヤさんはかなりまいっているようでして。蒼兄さんにこれ以上待たされるなら空港をジャックし兼ねませんとシャレにならない冗談を電話で伝えられました。母以上に不安ですよ……

「ま、不安になっても仕方ないし瑞希も造ももっとポジティブに考えていいんじゃないかな」
「そうよ。ご両親帰れないのは不安でしょうけど、こう言っちゃなんだけどこのストのお陰でウチらアキのお家で過ごせるわけじゃない」
「葉月、バカなお兄ちゃんたちと一緒で嬉しいですっ!」
「うむ。造も心配せずとも、そっちには蒼殿も一緒であると言うておったじゃろ?ならば安心じゃろうて」
「…………あの逞しい執事軍団も一緒らしいしな」

そのように自分たちを励ます皆さん。そうですよね、悩んだところでこればっかりは自分たちの手で何とか出来る問題ではありませんからね。のんびり楽しく待つしかないでしょう。

「とは言え試召戦争的な意味では、これもあまり楽観的に考えられない問題かもな」

「「「「「「へ……?試召戦争……?」」」」」」

そんな中微妙な顔で、このストのニュースを睨んでいるゆーさん。え?どうして試召戦争……?

「その様子じゃ、お前ら全員考えてもいなかったようだな。今朝の出来事を思い出してみろ。明久の同棲が判明した途端、FFF団が大暴れしただろが」
「あー、あったねそんなこと。でもそれと試召戦争と何の関係があるのさ?」
「ちょいと考えればわかるだろ。いくらストが終わるまでとは言え、一つ屋根の下こんな頭悪くて甲斐性無しのバカと「何さり気に僕をバカにしてんのさ雄二!?」クラスの数少ない女子が一緒に暮らすんだぞ、普段ちょっと女子と話しただけで審問会開く連中がこの事実を見過ごせると思うか?クラス内の士気に影響がないわけないだろが」
「あっ!?そ、そう言えば確かに……つまりアレですか?下手すると試召戦争が始まっても暴れられる可能性があると……」
「下手しなくても長引けばアウトだな」

きっと今回は姫路さんと島田さんの為ですと説明すればわかってくれると思いますが、それでも納得いかないと考えちょっと暴走しちゃうのがうちのFクラスクオリティ。ストが長引くのに比例してアキさんたちの同棲生活が長引けば、不満が出る可能性も否定できません。そして大事な試召戦争の士気に影響が及ぶのだって十分に考えられますね。

「うぇ、言われてみれば確かに。当事者の僕が言うのもアレだけどFFF団の事だし絶対に審問会開催されるレベルの案件だよねこれ」
「むぅ……そう考えると、確かに今後が少し不安じゃな」
「…………嫉妬は人を醜く強くするしな」
「そう言うこった。このスト、姫路や島田たちの為には勿論、試召戦争の為にも早めに解決してもらいたい問題だな。ついでに言うなら、“……私もストの間だけでも良いから同棲したい”なんて翔子が言い出さないためにもな……」

あ、ああ……霧島さんならそう言うかもしれませんね。ですが確かにゆーさんの言う通り、出来るだけ早く解決してもらいたいものですね。そのゆーさんの言葉に、自分たちもゆーさんが見ているニュースを改めて眺めることに。

『利用客の多くは周辺のホテルに滞在し空港の機能の回復を待つようですが、一部では満室で宿を取ることが出来ず、空港で夜を明かしている人の姿も見られます』

画面の奥ではスト状態の空港内の様子が映され、関係者の皆さんや疲れた様子の観光客たちの映像が流れてきました。中には相当怒っているのかカウンターに詰め寄っている人も———






……って、アレ?なんか、どこかで見たことがあるような人がいるような……?ちょっと気になって目を凝らしてみると。

『その中には日本人の姿も見受けられました。何でも海外出張や観光で子どもたちを日本に残してしまったそうで、一刻も早く日本に帰りたいと毎日空港に詰め寄る人も———』


バンッ!


『一体、いつになったら、帰れるんだいっ!?飛ばない飛行機に、何の価値があるって言うんだいっ!?』

……………………っ!?カウンターをバンッ!と叩く音と共に割れんばかりの張りつめた声がカメラ越しから聞こえてきました。テレビの前の自分たちだけでなく、近くにいた記者さんも。そして周りの皆さんも思わず耳を塞いでしまう大音量。え、え……?うそ……こ、この声はまさかっ……!?

『———し、失礼しました。えー……ど、どうやらその日本人の利用者がちょうど今抗議に来ているようですね』

『サク姉さん落ち着いてください……ホラ、周りの皆さんもビックリされてますし』
『未だに、飛行機が飛ばないことの方が、ビックリだよ、アタシはっ!?うぅ……造ぅ……こうなりゃマジで海渡って———』
『サク姉さん、それだけはどうかご勘弁を。サク姉さんなら余裕で出来そうですが、色々問題になると思いますので』
『あはは、相変わらずサクちゃん心配性ねー?心配しなくてもつーちゃんなら多分へーきよへーき』
『そうですよ〜、きっと向こうは向こうで楽しくやっていますよ〜。うちの瑞希ちゃんも今頃は抱き枕の彼と一緒に楽しくしてると思いますし〜。と言うわけで月野ちゃん、それに島田ちゃんも。みんなで一緒にお土産買いに行きましょう。おかしな柄のパンツとか〜』
『えっ!?は、はあ……美波と葉月、そんなもので喜んでくれるのでしょうか……?』
『ええ、きっと喜んでくれますよ〜。島田ちゃんのとこは娘さんがお二人でしたっけ〜?うちは一人娘なんですけどね〜』
『待つんだ母さん、やはりどう考えても娘のお土産にパンツはどうかと思うんだが……』
『いいわねー姫路ちゃん♪島田ちゃんは何買うー?あ、サクちゃんも一緒に行くわよー』
『いや待てよ……動いていないだけで飛行機自体はあるんだよな……?なら———(ピー)してでも奪い取って一刻も早く帰国を』
『サク姉さんホント落ち着いてください……その発言はアウトすぎます。とりあえず執事隊の皆さん、今すぐサク姉さんを止めましょう』
『は、離せお前たちっ!?アタシは今すぐにでも帰国して造に会いに———』


ブチィッ! ←自分と姫路さんが、問答無用でテレビのスイッチを切る音


「……え、えっと。瑞希に造?今のは———」

「「———なにもみえませんでした。なにもきこえませんでした。いいですねみなさん?」」

「「「「「は、はい……」」」」」

何やら妙な映像が見えたように気もしましたが、間違いなく幻覚ですね。姫路さんと二人で盛大にため息を吐きつつ思います。…………出来るだけ早く、なんて甘いこと言いません。今すぐ、早急に解決してもらいたい問題ですねこりゃ……蒼兄さん、執事&お手伝いの皆さん。母さんとサクヤさんを何とか頼みます……

Re: バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 ( No.259 )
日時: 2016/02/12 22:08
名前: ユウ (ID: dAqIO9B5)

いや、違うんだよ糖分さんに造ちゃん。

だって、もうすぐ馬簾他陰でしょ?

自分もFFF団も所詮おにゃの子からチョコレートなんて貰えないんだよ。

だからこそ、自分も野郎共もうずめがプリンを持ってきてくれた時にこう思ったんだよ。

…女の子の手作りチョコレートが貰えないなら、自分のキャラからの手作りプリンを貰えば良いのだと

…言い訳してて、悲しくなって来た。

と、取り合えず今日は真面目の真面目に感想に移ろうと思います!

成績が上がったことにより上位クラスに見事にレベルアップすることが出来たFクラス主力陣!

…まあ、一部の『バカ』二人と『幼女』1人は外見が少し変わった程度でしたが…

所で明久と造は『ケルト神話』に登場する『ダグザの大釜』については知っているかな?

何でも、ケルト神話における四大秘宝の一つであって、この世全ての料理を無限に釜の中から出すことが出来るらしいのです。(ちなみに自分はつい最近これについて知りました。)

もしそんな、アイテムがあったら、明久だったら精が沢山つく料理が、造だったらこの世全てのお菓子を頼みそうですよね。

…まあ、所詮は神話の話ですけどね。

そして、海の向こう側では、絶賛暴走中の造母とサクヤさん。

その中に姫路さんの天然母と腹痛父も参加してさあ大変。

…蒼よ。がんばれ。超がんばれ。

そして、FFF団が暴走するであろうことを予見する雄二

…暴走所では済みませんよ?皆さん本気と書いてガチで3人の命を狙いに行ってるからね?(かく云う自分もロケットランチャーのメンテナンス中)

十六夜「…って云うかFFF団の連中が完全に暴走状態に入ったのはお前の嘘情報のせいなんじゃねえのか?」

飛鳥「そ、そうよ!貴方!良くもこんな健全な作品に、そ、そんな…ひ、ひひひ卑猥な言動を」(言ってて恥ずかしくなって来たのか顔を真っ赤にする飛鳥)

…飛鳥もFFF団の皆様も何か勘違いしているようだから本当の事を言うけどさ、明久達が夜中にしている激しい運動ってのは、原作でもあったリモコン型の卓球TVゲームで姫路さんと美波が一進一退の白熱なバトルを繰り広げていたって言うことだし、霧島さんのお腹に赤ちゃんが宿ったって言うのは赤いドッチボールに使うようなサイズのボールが、服の中に入っていたり、ムッツリーニが大人の階段を昇ったって言うのは巨乳のエロい本を読んでも鼻から出血過多の血は流すけど、辛うじて意識を持てるようになったことを少しぼかして言っただけだよ?

飛鳥「んな!?」

十六夜(ユウの周りから10メートル離れる)

…あれあれ〜?どうしっちゃたのかな飛鳥ちゃん?急に黙りこくっちゃって?
…もしかして〜、まだ15歳なのに彼らがほわ〜んな事でもしているとおも…







耀「飛鳥をからかったユウはその後、飛鳥のディーン(金剛石と言う硬い霊石で作られた30メートルの巨人)に押しつぶされてしまった為、今回はこれにて終わろうと思います。それじゃあ…ハフハフ(またね)」(プリンのお礼にと造君から貰ったチョコレート100個を10個食いしている耀)

Re: バカな自分は召喚獣? 〜二学期編〜 ( No.260 )
日時: 2016/02/19 20:54
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

>ユウさん
読んでいただきありがとうです!

HAHAHA!バレンタイン?何それ美味しいんです?

造「糖分毎年言ってますよねそのセリフ……あ、チョコ無事にユウさんたちのところに届いて何よりです♪」
明「そういえばこの人去年は煮干しの日がどうのこうの言ってたね」

いいもん……安くなったチョコ美味しかったもん……友チョコは貰ったもん……と言うか造さんや。自分にはくれないの……?

造「糖分は煮干しでも食べててください」

…………ケチ。さて、それは一旦置いておくとして。試召戦争前に戦力アップは出来た仲良しメンバー。強化(?)しているかちょっと微妙な連中もいますが……

雄「あのババァの嫌がらせじゃねぇだろなマジで……」
秀「流石にそれはない———と言い切れぬのう」

ダグザの大釜……明久の場合は何かの間違いで精の付く姫路さんの必殺料理が出てくるかもですよねー。よかったね明久!愛妻料理が無限に出てくるYO!

明「やめて……やめて……」
美「アキしっかり!?目が虚ろよ!?」
康「…………精はつくけど生は尽きるな」
造「誰が上手いことを言えと……そして豊穣の神様は何故そんなものを無限に出すんですか……?そういえば糖分ってケルト神話好きでしたっけ」

うん好き。神々のお話もク・ホリンとかフィンとかの英雄のお話も好き。特にク・ホリンの物語超好き。駆け抜けた英雄談かっこいいですからねー

瑞「……それにしても何やっているんでしょうねお母さん」
造「早くスト何とかなってほしいですよね……ホント蒼兄さん頑張って……」

海の向こうも楽しそうで何よりです。さて一応は元神童。FFF団の行動もある程度予想はしているようですが———見通し甘い、甘いぞ雄二よ……そして異端者二人よ……泣かす、今回泣かせてやる。ユウさんの意思はこの糖分が受け継ぐ……!

造「書き手の糖分が嫉妬で暴走しないでくださいね!?話収集つきませんよ!?」

132時間目 いよいよ再開試召戦争〜宣戦布告と優先権〜 ( No.261 )
日時: 2016/02/19 21:34
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

造Side


「……これはまた。どうしましょうかねゆーさん」
「どうもこうも……まあ、ある意味予想通りと言えば予想通りだが……いや、予想以上と言うか」
「おはよー……って造に雄二、何これ?」

ゆーさんやこーさん曰く現在同棲ハーレムの愛の巣になっているアキさんのお家でプチお食事会兼今後の試召戦争の予定と対策した日から一日休日を開けて今日は水曜日。今週の後半からいよいよ待ちに待った試召戦争解禁というところですが———

「あ、おはようですアキさん。えっとですね……何と言いましょうかねゆーさん」
「おう、相も変わらずバカっぽいな明久。ま、予想通り早速大量に釣れたってところか」
「そう言う雄二は毎日アホ面だよね。っていうか、釣りの話?雄二たち釣りなんかするの?」

「「いや、試召戦争の話だ(です)」」

前回ゆーさんが説明してくれた通り、Fクラスは他のクラスから宣戦布告される可能性が高く、こちらもその状況を逆手に取り防衛戦で戦力と戦術の強化を図る予定でした。ですからこの展開はゆーさんの言う通り予想通りと言えば予想通りですが……

「私たちが先よっ!こいつらが来る2時間前には私たちは来てたのよ!だから引っ込んでなさいよDクラスっ!」
「こっちだって随分待ってたんだぞっ!それに2時間前に来てたって、単に朝練終わったついでに待ってただけだろ!?クラスの成績評価でいうなら俺たちが上位クラス!だから上位クラスに譲れEクラスっ!」
「Fクラス如きに負けたDクラスが偉そうにするんじゃないわよ!」
「お、おまっ……!?Eクラスも得意分野の(召喚)野球でFクラスに負けたのに何言ってやがるっ!?」
「やれやれね……困りましたね先輩に坂本君」
「だな。いくら今週末から始まるからってがっつきすぎだろコレ。さて、ホントどうすっかな」

———まさかこんな早朝からこんなにも熱い宣戦布告のお誘いがあるとは流石に予想外でして。朝来てみると何やらFクラスの教室前で口論が行われていました。声の主はDクラス代表平賀くんとEクラス代表中林さんを中心としたD,E両クラスの数名の使者。どうやらどちらが先に自分たちFクラスに宣戦布告するかで揉めているそうですね。そしてCクラス代表の小山さんがそんな両クラスの様子を腕を組んで値踏みするかのごとくジッと眺めています。

「えっと……そうですね。とりあえず廊下で騒いでいると他の登校してくる生徒さんとかの邪魔になっちゃいますし、Fクラスの教室に入ってもらいますか?」
「それが良いな。一体何を騒いでいると鉄人に目を付けられて試召戦争が更に延長されるのは勘弁だしな。話は教室で聞くからとっとと全員中に入れ」
「あ、なら折角だし僕も交渉聞こうかな」

これ以上騒ぎが大きくなると他の皆さんに迷惑ですし、先生方に怒られる可能性もありますのでFクラスに入ってもらって交渉してもらうことに。

「———さて、つまり早い話アレか。お前らは俺らFクラスに試召戦争解禁後に早速勝負を挑みたい、と」
「ああそうだ。このクラス設備を是非とも頂きたい。あとはアレだな、一学期の雪辱を果たしたいと思っている」
「なるほどな。ま、Dクラスは俺らと試召戦争で最初に戦ったクラスでもあるし、ライバルクラスとして俺らを見ていたって話は聞いてるしな。その気持ちもわからんではない」

Dクラス平賀くんがそのように意気込みを語りつつ宣戦布告します。一学期最初の試召戦争にて自分たちFクラスと戦ったのがDクラス。彼らはその敗北以来、打倒Fクラスの為に今日まで戦力を上げてきていることはこーさんの調査でわかっていました。そういう意味では今すぐにでも自分たちと戦いたいのもわかりますね。

「私たちは設備は勿論のこと、吉井に坂本……アンタらから受けた屈辱を晴らしたいからよ……体育祭の件、忘れたとは言わせないわ」
「すまん、忘れた」
「今すぐ表出なさいっ!坂本に吉井っ!」
「えっ!?何で僕まで!?」
「こらこらゆーさん、そんなに挑発しないこと。話が進まないじゃないですか。すみません中林さん。うちの代表が……」
「い、いいえ……先輩はお気になさらず……(ボソッ)坂本、吉井。アンタら絶対いつかシメるわ……」

ゆーさん(と何故かアキさん)に対抗意識を持ちつつ、ゆーさんの挑発もあってか怒りの表情で宣戦布告するのはEクラス代表中林さん。Eクラス、そして体育祭と言えば忘れもしない召喚野球で成人指定本を取り返すと言うちょっとアレな動機の為に、反則ギリギリの行為でEクラスを倒したことがありましたものね。それもあってEクラスはFクラスを目の敵にしているらしいです。

「D,Eクラスの言い分は分かった。で?Cクラス代表さんも宣戦布告か?」
「あ、私は違うわ。単にFクラスの試召戦争の予定を聞きたくて来たのよ」
「へ?僕らのクラスの試召戦争の予定を?」
「そ。メンテナンスも終わったらしいし、今週後半の朝にはいよいよ試召戦争解禁でしょう?その時にFクラスがどう動くのか教えてもらおうと思って来たんだけど……」
「この二クラスが俺らに宣戦布告していて話を聞く余裕もなさそうだった、ってことか。にしてもCクラス代表さんは随分と慎重なもんだな」

132時間目 いよいよ再開試召戦争〜宣戦布告と優先権〜 ( No.262 )
日時: 2016/02/19 21:01
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

ゆーさんがそんな感じでからかう様に小山さんに言います。そんなゆーさんの言葉に、小さく笑みを浮かべて小山さんはこう返します。

「それはそうでしょ。だってFクラスは一学期の試召戦争、そしてその他でも色々と学園全体を揺るがした脅威だから。私はAクラス以上に貴方たちFクラスに脅威を感じているわ。警戒して当然よ」
「あら、それは光栄ですね小山さん」
「ふふっ、先輩謙遜なさらずに」
「ま、それは純粋に褒め言葉として受け取っておくが……いいのか?折角二学期に入って元のCクラスの設備にリセットされたのに、いきなり試召戦争のこと考えるなんてよ」

ゆーさんの言っていることは、試召戦争のルールの一つ。“戦争に負けてランクを落とされた設備は学期が変わる毎にリセットされる”というものです。上位クラスが下位クラスに負け設備を入れ替えられた場合はそのままですが、下位クラスが負けた場合設備ランクが落とされれば学期が変わったら元に戻してもらえると言うことですね。

「あ、そう言えばそっか。Cクラスは一学期のAクラス戦で負けたからDクラス程度の設備に落とされて、それがこの前元の設備に戻ったんだったっけ」
「そうね、坂本君と吉井君の言う通りようやく二学期に入って設備が戻ったわ。確かに折角戻った設備のまま二学期を過ごしたい気持ちは私たちCクラス全員一緒よ。でも、いいえだからこそ。安心できる日々を送るためにも試召戦争の中心となるであろうFクラスの動向を知りたくてここに来たってわけ。と言うわけで私たちCクラスは“まだ”宣戦布告はしないから安心していいわよ」

何もいきなり私たちから戦争を仕掛ける、なんてことは言っていないわと小山さんが続けます。なるほど、確かにFクラスは早速試召戦争の準備に取り掛かっていましたし、警戒されるのは当然でしょう。巻き込まれる可能性だってあるわけですし。———実際ゆーさんはCクラスも巻き込んで自分たちの戦力として動かす気満々でしたし。

「……ほう。“まだ”宣戦布告はしない、か。OK、良く分かった」
「まあ、そう言うことよ。それで善は急げということもあって、Fクラスの今後の予定を聞こうと来たんだけど……まあ、これは聞かなくてもわかるわ。当面はDクラス及びEクラスとの試召戦争になるんでしょうね」
「そうなるだろうな。さて、んじゃ本題に戻るとするか。D、Eクラスどっちと戦争するかだが……」
「俺らが先だっ!」
「私が先よ!」

そのゆーさんの言葉で再び口論になるDクラスとEクラスの皆さん。……それにしても不思議です。何でまたこんなに順番に拘るのでしょうかね……?急ぐ理由も特段あるわけでもなさそうですのに。と言いますか、寧ろ疲労したところを狙うために、他のクラスに先に戦ってもらうように狙うのが普通の戦術だと思いますのに……どうしてまた口論になるほど自分たちと先に戦いたがるのでしょうか?

それは置いておくとして、そんなD、Eクラスを眺めながら顎に手を当て少し考えていたゆーさんが、両クラスを宥めつつこんな提案をしてきました。

「……OK,わかった。ならルールに則って順番を決めるとすっか」

「「え、ルール?」」

「おう、試召戦争のルールだ。お前らも覚えているだろ、“上位クラスは宣戦布告を断る事は出来ない”ってやつを。俺らはお前らより上位クラスだし、このルールが適用されるわけだが……」
「上位?え、何言っての雄二。僕ら自慢じゃないけど最下層クラスじゃないか」
「バカか明久。いや、バカなのはわかっているが……やはりお前は最上級のバカか」
「よーし、朝から喧嘩売ってくれるね雄二。表出よっか?」
「まあまあ落ち着いてくださいアキさん。ゆーさんの言っていることは昔のクラス評価ではなく現段階のクラス評価の話ですよ」

一学期の試召戦争の結果、クラス間の評価が大分変更されましたからね。自分たちFクラスはB・Dクラスに勝利し(ただクラス評価並びに設備の変動が無いように交渉しましたが)Aクラスとは引き分け。AクラスはCクラスに勝利と言う勝負の結果から二学年のクラス評価はA〜F順の評価からA>F>B>C≧D>Eという具合になっています。

「つまりFクラスは一学期の立場と逆転して、Aクラス以外のクラスからは宣戦布告を受けた場合基本的には断れないようになっているわけですね」
「なるほどそう言うことか。んで雄二、そのルールと順番に何の関係があるのさ」
「現段階のクラス評価を見てみると、今はFクラスではなくEクラスが最下層に当たる。つまりはEクラスが優先的に俺らに宣戦布告できることになるな。だから今回はEクラスの宣戦布告を受けることになるってわけだ」
「よしっ!なら私たちEクラスがアンタたちFクラスに対して試召戦争解禁日の朝から宣戦布告するわ!」

なるほど……ルール的には下位クラスに宣戦布告の優先権がありますからね。その理屈だとDクラスよりEクラスの方が先に宣戦布告できるはず。ですがその提案に納得いかないのがDクラスでありまして。

「待てよ!それは納得できない!俺たちだって随分待ってたのに……」
「まあ、落ち着け平賀。お前たちの言い分もわかっている。だから———“Eクラス戦が終わったその日の午後からDクラス戦をやる”ってことで手を打ってほしい」

「「「「「…………は?」」」」」

このゆーさんの発言には抗議していた平賀くん、納得していた中林さんだけでなく一緒に話を聞いていた小山さんや仲間である自分とアキさんでさえも呆気にとられます。え、ゆーさん一体何を言っているんですか……?

132時間目 いよいよ再開試召戦争〜宣戦布告と優先権〜 ( No.263 )
日時: 2016/02/19 21:23
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

「だから試召戦争解禁日の午前中がEクラス。午後からDクラスと試召戦争をするって言ってるんだ。不満はあるかDクラス代表?」
「い、いや……それならこっちがめちゃくちゃ有利だし、Fクラスがそれでいいなら俺らは別にいいけど……」
「ふ、ふざけないでよっ!?坂本ッ!アンタ、やる前から私たちが負ける前提で話しているじゃないのっ!?それってつまり私たちEクラスとの試召戦争は前座に過ぎないってこと!?」
「事実だからな、悔しかったら俺らに勝てばいいだけだろEクラス代表」

今度は逆に中林さんがゆーさんに抗議します。ですがその猛抗議に対してゆーさんは軽くいなしながら更に挑発。ゆーさん、貴方は一体何を考えて……?

「ど、どれだけバカにすれば気が済むのよアンタに吉井は……!いいわ!その言葉絶対に後悔させてやるわっ!解禁後、すぐに挑んでやるから覚悟なさいっ!」
「いや中林さん、だから何で僕まで目の敵にされて———聞いてないしもう行っちゃった……」
「んじゃ、俺たちはその日の午後に試召戦争ってことか。……こんなこと言うのもアレだけど、俺たちの前にEクラスに負けるなよ?」
「おう、お前らDクラスごと返り討ちにしてやるから安心しな平賀」
「それじゃあ先輩、それからFクラスの皆さん。私も戻りますね。お騒がせしてすみません」
「あ、いえ。こちらこそ大したおもてなしも出来ず申し訳ないです。小山さん、お疲れ様です」

そう言って中林さん平賀くん小山さんの三人は一緒に来ていた使者を連れて、それぞれのクラスに戻っていきました。それを確認した後、念のため情報を先ほどの皆さんに聞かれないようにアイコンタクトを利用してアキさんと二人でゆーさんに詰め寄ります。

「(雄二、一体何考えてんのさ。あんな約束しちゃっていいの?)」
「(一日で二戦もするなんて……かなり無茶じゃないですか?ルール上点数補充期間を設けることは可能ですし、せめて補充の為一日だけでも間を空けるべきでは)」
「(まあ待てお前ら、確かに一見無茶そうだが考えもあるからな)」

奇抜な作戦を駆使して戦うゆーさんのこと、絶対何かしらの策があるとはわかっていても不安になるのは自分もアキさんも一緒。信頼してはいますが説明はしてほしいですからね。そんな慌てて詰め寄った自分たちの疑問は想定済みと言いたげに余裕でそう答えるゆーさん。

「(一日で二戦する理由としてはいくつかあるが……一つはあのままDクラスに納得いかんとゴネられて話がややこしくなるのを避けたかったからだ。それともう一つは実戦経験を増やしておきたいからだな)」
「(いや、確かに朝からあれだけ揉めてた人たちだし、ややこしくしたくないって雄二の言い分もわかるよ。それと実践経験がどうのこうのって話は前にも聞いてたし納得してたけどさ、それにしたって何でこんな短時間勝負みたいな流れにしちゃうのさ。造の言う通り補充期間使った方がいいじゃないの)」
「(それだ明久。それが一番の理由になる。“短時間勝負”に慣れておくために、敢えてこんなことをしているんだ)」

短時間勝負に慣れる……?あ、少しゆーさんの言いたいことがわかってきたかも。

「(それってゆーさん……もしかして敢えて厳しい条件付けをしておくことで自分たちの“特性”を飛躍的に引き延ばすためにってことでしょうか?)」
「(理解が早くて助かるぜ造。その通り、この前説明したが俺らのクラスの大きな特徴は“短期決戦型”だったろ。短時間勝負の戦い方をクラス全員で一度体験しておきたかった。そう言った意味で午前にEクラス、午後にDクラスと明言しておくことは意味が大きいもんだ。午後までに倒さなきゃならんと宣言しちまっているんだから、時間までにクラス全員必死になって戦わざるを得なくなるだろ)」

それが例え、戦力が明らかに俺らの方が上だろうとな。とはゆーさんの言葉。ただ単に試召戦争をするだけなら前に説明した通りいつものメンバー七人だけで十分やれます。ですが時間制限を設けることでクラス一丸となり必死に戦わなければならなくなり、結果それぞれの戦闘経験値がぐんっと上がると理にかなったことをゆーさんが説明します。

「(実戦に勝る訓練なしって言うしな。いくら俺らの方が戦力的に上とは言え、どのクラスとの戦いもやはり緊張感をもって試召戦争に挑むべきだ。その点でいうならこう言っちゃ身もふたもないが、こいつらD.Eクラス戦は良い実験場になる。奴らは強すぎるわけではない、だが決して油断も出来ない相手だからな。格下相手だからって気を抜けない戦いをすることで、更にレベルアップするだろう)」
「(なるほど……敢えて一日で二戦すると明言しておくことで、自分たちに時間制限を課して緊張感と時間配分を考えた戦い方を学ぶってことですか)」
「(あー、確かにそれなら雄二曰く格下の相手との試召戦争も何倍も頑張ってやらなきゃならないし戦闘経験値もかなり上がるかもね)」
「(そう言うこった。まぁあとは何だ、これ以上Aクラスとの再戦を伸ばすのは危険だと判断したからだな)」

そう言ってちらっと自分たちに各クラスの個人データが書いてあるであろう資料を見せるゆーさん。

「(昨日ムッツリーニにAクラスの個人データをもらったが、一学期以上に個々の学力が上がってやがった。一応予想の範囲内ではあるがな。これから先もまだまだAクラスの奴らの成績が上がるなら、手が付けられなくなる可能性も出てくる)」
「(ふむ……防衛戦にばかり力を入れていられない状況になりつつあるようですね)」
「(うぇ……つまり雄二、それはあんまりのんびりもしていられないってことかな?)」
「(ああ。他クラスとの防衛戦が長引けば長引くほど、成績の差が開いていくことになりますます俺らが不利になるだろう。だからこれはまだ誰にも説明していないが……そのことを踏まえると試召戦争解禁から一週間———遅くとも二週間以内にAクラスに攻め込む予定だ)」

遅くても二週間以内……そのゆーさんの言葉にアキさん共々ごくりと唾を飲みます。そうか、遅いようでその実かなり差し迫った期限ですね。確かにあまりのんびりもしていられません。気を引き締めて防衛戦並びにAクラス戦対策をしていかなければならないようです。

「(ここまで言えば俺の意図もわかったろ二人とも。本来ならじっくり時間をかけて召喚獣を慣らしたり戦力強化を行いたいが……俺らはあんまし悠長に準備している暇がねぇんだ)」

「「(だからこそ……足りない時間や経験値は、緊張感のある実戦で補う、と)」」

「(そういうこった。まあ、俺も状況に応じて色々予定変更や時間調整するつもりではあるがな。お前らもガチガチに緊張されても困るが、程よい緊張感をもっておけ。決戦の時は近いぞ。これは後で姫路たちにも説明しておく)———さて、そろそろめんどくせぇ朝礼の始まりだし鉄人が来る前にとっとと席に着いておくか」
「(了解ですゆーさん)そうですね、朝礼と授業の準備をしましょうかねー」
「(わかったよ雄二)うぇー……授業かぁ、また勉強漬けの日々が始まるね」

そこまで説明すると、アイコンタクト会話術を終えて自身の席に戻るゆーさん。自分とアキさんもその言葉を聞いて席に着くことに。……今週の後半に試召戦争解禁日。CDEクラスも動きを見せ始め、自分たちもよりしっかりと自身のなすべきことをなさねばならないと再確認。一体どうなる二学期試召戦争。さあて……不安なことは多々ありますが———面白くなってきましたね♪












『———面白くなってきたな。ちょっと情報を流しただけだがD、Eクラスはもう動いてくれたか』
『本命のクラスではないものの……奴らもきっと我々の為に良い働きをしてくれるでしょうね、会長』
『うむ。こんなに早く動いてくれたんだ、我々の出来る範囲でD、Eクラスを援助してやろうじゃないか』
『“あのお方”もその二クラスの戦いでなるべくFクラスを消費しておくようにと命じられていますからね』
『“彼女”に相談して正解だったな。さて……きたる“あのクラス”との試召戦争、そしてその日こそ———“Fクラスの変”の始まりだ。楽しみにしていろ吉井・坂本・ムッツリーニ(異端者共)よ……』

133時間目 VS Eクラス〜鬼ごっこ?いいえ試召戦争です〜 ( No.264 )
日時: 2016/02/26 20:55
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

造Side


「———さて、お前たちも当然知っていると思うが、本日から試召戦争が可能になる。一学期の学習の成果を試す良い機会になるので、積極的に参加すると良いだろう。何でも早速宣戦布告を受けているらしいしな。一教師としてはどのクラスにも肩入れするわけにもいかんが、クラス担任としてはまあエールは送っておくぞ」

D,Eクラスの宣戦布告を受け、クラスメイト全員の召喚獣の装備の変更確認や他クラスの情報収集、(先生たちには勿論内緒ですが自分の腕輪を使い)召喚獣を召喚してちょっとした模擬戦を行って———あっという間に待ちに待った試召戦争解禁日となりました。西村先生のありがたいエールを頂きつつ連絡を聞く自分たち。

「後は他の連絡だな。旧校舎の1、2階の踊り場にある水道だが、本日から配管工事を行うため周辺の手洗い場及び水飲み場は使用できない。それに伴い業者が入るのに邪魔にならないよう旧校舎の1階と2階を繋ぐ階段も使用不可だ。朝来た時のように遠回りにはなるが、渡り廊下先の新校舎の階段を使う様にしておくこと」

ふむふむ、今日から旧校舎の水道工事と1,2階間の階段がしばらく使えない……ですか。これはもしかすると———ちょっと気になってゆーさんをちらりと見ると何やら企んでいる表情です。ふふっ♪我らが策士ゆーさんは、どうやら今の状況を早速利用する気満々みたいですね。

「それと交換留学制度のお知らせが届いている。興味がある者は相談してくれ。連絡事項は以上だ。今日は試召戦争関連でバタバタして勉学に励む余裕はあまりないかもしれんが———戦死したら俺がみっちり補習室で補習してやるから楽しみにしておくように」

珍しく茶目っ気たっぷりにそう言って教室を後にする西村先生。これはきっと自分たちに頑張れという先生なりのエールなんでしょうね。自分、先生の応援はとても嬉しいです♪HRもそんな先生の言葉と共に終了し、いよいよ試召戦争の準備に取り掛かることに。

「何だか鉄人の不穏な脅迫めいた戯言があったが、気にせずいくぞ。今日は前々から説明していた通り、午前にEクラス戦。午後にはDクラス戦が控えている。正直どっちのクラスも俺たちの敵じゃねぇ!本当の敵はAクラスであることを忘れるなっ!さっさと倒して踏ん反り返っているAクラスの野郎どもを潰しにかかるぞっ!今日はその前座だ!」

その気合いの入ったゆーさんの演説と共に、作戦概要の説明に入ります。

「造・姫路・島田・秀吉。この4人が攻撃部隊として今回の攻撃のメインとなる。目標は一時間以内にEクラスの連中を全員戦死させること」
「了解ですゆーさん」
「一時間でEクラス全員……中々難しい注文をしてくるのう」
「ま、面白そうじゃない。やってやるわ」
「頑張りますねっ!」

一時間以内で、しかも全員を倒せとは思い切りましたね。ですがそれはゆーさんが自分たちを信頼しての無茶ぶりです。絶対にやれると信じてくれているゆーさんの為にも、そしてきたるAクラス戦の為にもここは応えて差し上げましょう。

「いい返事だ、期待してるぜお前ら。次、俺を守る近衛兵役は明久・ムッツリーニだ。お前ら2人はあらゆる意味で機動力も突破力も高いからな、俺の使い捨て装甲板としてキリキリ働け」
「まあ、守られてなきゃロクに戦えない雄二にどうしてもって言われるなら考えてやってもいいよ。その分試召戦争が終わったら雄二をパシリとして使ってあげるから光栄に思ってね」
「…………(霧島専用の)グッズ製作に協力してくれるなら考えてやる」


ゲシゲシゲシッ!×3


文句や不満、憎まれ口や皮肉やジョーク(?)を言いつつも、何だかんだで息ぴったりのこの三人。今はこんな風に蹴り合い殴り合う関係ですが、試召戦争が始まればすぐに切り替えて戦えるからすごいんですよねー

「残りの連中はなるべく一人でも多く攻撃部隊の足かせになるであろう残ったEクラスの雑魚を蹴散らせ。攻撃部隊を邪魔する連中にインターセプト、倒さずとも時間稼ぎくらいはしておくんだ。いいな?」

「「「……うーっす」」」

「……何だお前ら、やる気あんのか?……まあ、いい。とにかく今回の作戦はスピードが命。速攻で終わらせてDクラス戦の準備に取り掛かれ!」

……ん?その気合いの入ったゆーさんや自分たちとは対照的に、どうにも他のFクラスの皆さんはテンションが下がっている様子。……朝ですし眠くてローテンションってことでしょうかね?まあ、試召戦争が始まれば嫌でも目が覚めるでしょう。

Eクラス戦は午前9時30分に開始。それまでは予想進路や各々の動き方、Eクラスの戦力の再確認など行うことに。そして———


ピピピピピピピッ!!!


———と、ゆーさんが設定していたタイマーがけたたましく鳴り響き、いよいよEクラス戦開始となりました。

「よしっ、手筈通りに行くぞ!目標時間も忘れるなっ!」

そう自分たちに再度念を押すように言うと、ゆーさん・アキさん・こーさんの3人は教室を飛び出して旧校舎側の階段を駆け上がります。

『っ!?あ、アイツら逃げる気ね……!上等よ、全員坂本・吉井……ついでに土屋を討ち取りに行くわよっ!』

『『『応っ!』』』

そのゆーさんたちの行動に慌てて反応し、中林さんの一言で隣のクラスのEクラスも飛び出します。そしてそのまま、まだFクラスに自分たち攻撃隊の4人やFクラスの生徒がたくさんいるにも拘らず、自分たちを完全に無視してゆーさんたちを追いかけ始める中林さん率いるEクラス。……ふむ、これはこれは。

「———流石ゆーさんですね。予想通りの展開になるとは」
「うむ。相変わらずあやつはよく考えておると感心してしまうのう」
「それでは、私たちも行きましょうか」
「ええ、そうね。アキたちにばかり任せてられないものね」

ゆーさんの作戦に従い、4人で落ち着いて渡り廊下を通り新校舎へ。たどり着いたら新校舎の階段のある廊下の陰に潜んで待機をします。しばらくすると———

『流石に運動部だよねー、早い早い』
『学力を脚力に変えてる連中だしな』
『…………まあ、俺らには敵わんが』

『アイツら言いたい放題言って……っ!体育会系の恐ろしさを叩き込んでやるわ!皆、もっとスピード上げるわよ!』
『はいっ!部活にも入っていないあの連中に……目にもの見せてやりましょう代表!』
『逃がしてたまるかっ……!毎日鍛えている俺たちの脚、舐めんなよFクラス!』

———三年生のいる4階の旧校舎から渡り廊下を通って、今度は新校舎の階段を軽口をも叩ける余裕をもって駆け降りるアキさんたちと、それを全力で追うEクラスの皆さんが一斉に1階まで降りたのを確認。ヒデさんたちとコクリと頷いて、さてこちらも作戦開始です。

133時間目 VS Eクラス〜鬼ごっこ?いいえ試召戦争です〜 ( No.265 )
日時: 2016/02/26 20:46
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

中林Side


体育祭の召喚野球、それ以外にも度重なる屈辱をFクラスの連中に受けてきた私たちEクラス。特に……坂本、吉井……あの二人だけは許せない。坂本は何かと私たちをコケにしていっつも上から目線で腹が立つし、吉井は———学園一のバカの癖にあの人……頭脳明晰な学年次席でクールでカッコイイ久保君の意中の相手ですって?

バカ+女タラシ+同性という3重の致命的な欠点を抱えているのに、何をどうして久保君はあんなバカを…………考えてるだけで物凄く本気で腹が立ってきたわ……吉井、覚悟していなさい……!アンタを倒して、絶対彼を振り向かせてみせる……っ!

「皆っ!“情報によれば”今が奴らを討ち取るチャンスよ!調子に乗っているアイツらに、元最低クラスの烙印を返上させてやりましょう!」

「「「はいっ!代表!」」」

私に付いて来てくれている皆を鼓舞するように声をかけながら、前方を走る3人を追う。スタートダッシュが良かったお陰で、他のFクラスの厄介な4人———月野先輩に木下、姫路さんに島田さんはどこにも姿が見えない。どうやら私たちのスピードに追い付けていないようね。

残りのFクラスの連中は“情報通り”なら今回は私たちにとって何の脅威にならないはずだし、これならいける。例えあのバカ2人(+土屋)が多少召喚技術や点数が高くても、所詮はたったの3人。こっちは50人だし数で押していけば絶対に討ち取れる。追い付きさえすればいつでも屈辱を晴らせるわ!

…………まあ、ただ一つの問題さえ除けばいつでもね。

「それにしても……くっ、なんて速さなのよあのバカたち……!」
「ハァ……ハァ……無駄に逃げ足が速いですよね……」
「わたしたちの……クラスの方が……追いつけないなんて……どういうこと、よ……だ、代表。後方がかなり遅れているようです……」

…………そう。問題はアイツらに全然追いつけないことだけど。近衛兵の一人の言葉を聞き、追いながらちらりと後ろを確認してみる。私たちのような脚に自信のある先頭集団と後ろを必死で走っているクラスメイトとの差を比べるとかなり距離が空いているようね。ところが私たちがそれほどまでに全力で追いかけているというのに、アイツらとの距離はこの試召戦争が始まってから今に至るまで全くと言っていいほど縮められていない。

……これもまた腹が立つわ……!何でアイツら部活生が多くて部活で鍛えている私たちEクラス以上に、無駄に体力あって無駄に逃げ足が速いのよ……!?(答え:FFF団やその他諸々の事情で部活生以上に年中死ぬ気で走り回って鍛えられているから)

「と、とりあえず……私たちだけでも、アイツらに追いつくわよ……!」

「「わ、わかりました代表……」」

息を切らしながら、近衛兵の二人に告げる私。かれこれ校内を40分以上は走っているだろうか。未だに追いつけないばかりか他のEクラスの皆もかなりへばってきている。姿が見えないクラスメイトもいるし、ダウンしているのかしらね……け、けど疲れているのは向こうも一緒のはず。奴らが立ち止ったところで一気に叩くことにしましょう。

『……そろそろいいか。よし、明久にムッツリーニ!こっちだ!』
『オッケー、あそこだね!』
『…………了解』

と、今まで校舎の外やグラウンドをグルグルグルグルと回りながら逃げていた3人が、今度は新校舎に入っていく。しめた……!狭い校舎内なら逃げたり隠れたりするのは限定されるはず。私たちも急いで3人の後に続く。

『えっほ、えっほ……それにしても。瑞希たち早いね』
『…………厳しい目標時間を、余裕で時間短縮してる』
『俺にとっても嬉しい誤算だ。それじゃシメに入るぞ』

新校舎に入ると奴らは脇目も振らず階段を上がっていく。2階に上がると、今度は渡り廊下を通って旧校舎に向かう。……チャンスっ!やっぱりアイツらバカねっ!そっちは———今日は“行き止まり”よっ!

「何人かは3階、4階に上がって!挟み撃ちにしましょう!アイツらは“下には降りられない”から!」
「え?……ああっ!そうでしたね、それならあたし3階に行きます!」
「俺は4階に行っておきます!奴らが来ないようなら2階に戻ってきますね!」

そう指示を出すと、私の言いたいことがわかったのかすぐに先回りしてくれるクラスメイト達。ふふふ……っ!やっぱり吉井や坂本達ってバカばかりのようね、FクラスはちゃんとHRを聞いていなのかしら?旧校舎の1〜2階の階段は今日から使えないって連絡があったはずなのに!追いかけながら前方を見てみると、案の定行き止まりになっている階段前で立ち止まる吉井と坂本達の姿が見えた。

133時間目 VS Eクラス〜鬼ごっこ?いいえ試召戦争です〜 ( No.266 )
日時: 2016/02/26 23:36
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

「はぁ……はぁ……追い詰めたわよ、観念なさいFクラス」
「ふぃー……流石体育会系クラス。FFF団並によく走れるよね」
「…………俺から言わせるとまだまだ遅い」
「ムッツリーニ、お前の速さと比べるな。ま、ともかくよく頑張ったな、お疲れさんEクラス」

強がりか開き直りかしら……?私たちに追い詰められたと言うのにヘラヘラヘラヘラとまだ減らず口を叩くこいつら……!まあ、そんな態度をしていられるのも今だけよ。こんな逃げ場のない場所に逃げ込んでしまったこいつらは知らなかったでしょうけど、朝礼で説明が合った通り今日からしばらく旧校舎の1,2階間の階段は使えない。今私たちのクラスメイトが何人か上から回り込んでいるはずだしこれで挟み撃ちに出来る———つまり、とうとう追い詰めたわよFクラス共……!

「さあ、これでやっと勝負ができるわ……吉井に坂本、勝負よ!」
「逃げられると思うなよ。さあ、正々堂々勝負しろ」
「下にはもちろん、上にも逃げ場は無いわよFクラス」

そう言って回り込んできた皆と合流しながらじりじりと壁際に追い詰める。けれど不快にも、そんな絶体絶命のはずのこの3人は何故かニヤリと不敵な笑みを浮かべている。……何よ?何か手があるって言うの?言っておくけどどこにも逃げ場はないわよ?

「それじゃあ大分引きつけたし、もういいよね雄二?」
「…………足止め完了。それじゃあ“跳ぶ”か」
「だな、んじゃ後は“4人に”任せて俺らはとっとと教室に戻り、次のDクラス戦の為の作戦会議に入っておくか。 頼りっぱなしで悪いが“4人は”Eクラスとの戦後交渉をしてから戻ってきてくれ。本当に良く戦ってくれたな、お疲れさん」

と、そう意味不明なことを言って、自分たちの真後ろにある廊下の窓をカラカラと開けたこいつら。…………ちょ、ちょっと待ちなさい?こいつら何考えて———まさか……っ!?

「「「だらっしゃあああああああああああ!!!」」」

一瞬嫌な予感がした矢先、何の躊躇もなく外に向かって大きく跳躍するバカ三人。まさかとは思ったけど……ば、バカじゃないの!?

「ま、窓から……っ!?何考えてんのよ、ここ2階よ!?」

流石に色んな意味で心配になり慌てて奴らが飛び出した窓に駆け寄る。ダダンッ!と大きな着地音が鳴り響いた1階の様子を見ると———私の心配をよそに、余裕で三点着地して走り出しているあいつらの姿が見えた。

……よ、良かった無事で———じゃない!?に、逃げられたっ!?

「このぉ……!こうなったら私もあいつらに続いて———」
「だ、駄目です代表!?下手したら、と言いますか下手しなくても大怪我しますよ!?」
「あいつらに出来て、私に出来ないとでも言うの!?」
「あいつらが異常なんですよ!?流石に無理です、迂回して追いましょう!」

後に続こうとする私を、近衛兵たちが必死で止める。……くぅ、確かにこれで怪我でもしたら部活とかに響きかねないわね……悔しいけど、言う通りに迂回してまた奴らを追いかけるしかなさそうね。

「し、仕方ないわ!もう一度新校舎に戻って階段を降りて1階に向かうわよ!皆、付いて来て!」

急がないとまた離されてしまうわね。奴らに対する苛立ちを抱えつつ、旧校舎側の階段は使えないから慌てて新校舎の階段を目指そうと踵を返す私たち。今度こそ逃がさな———












《———そこまでです。ようこそ、Eクラスの皆さん。早速で残念ですが……ここから先は行かせませんし、ここで勝負をつけさせていただきます》
「…………は?」

———にがさな、い……?え、あれ?踵を返した私たちの目に映ったのは、召喚獣に成って私たちの前に立つ月野先輩。……え?何で月野先輩が……?そ、それに……

「す、すみません。ですが……これも明久君を追いかけて疲れさせたり危ないことさせた罰と思ってください!」
《いや姫路さん!?それなんかちょっと目的ズレてません!?そこは普通“これも勝負ですから悪く思わないでください”的なこと言うところでは!?》
「あ、それもそうですね。えっと、とりあえずFクラス姫路瑞希がEクラス代表及び残りのEクラスの皆さんに勝負を挑みます。試獣召喚(サモン)!」
《こ、コホン。お、同じくFクラス月野造がEクラス代表さん及び残りのEクラスの皆さんに勝負を挑みますね》
「…………つ、きの先輩と……姫路、さん……?は?なん、で……?」

……それに、姫路さん?え、嘘何で……?って言うか、え?私たちの後ろで走っていたハズの他のEクラスの皆はどこにいるの……?何で本来いるハズのEクラスの皆が消えて、先輩たちが召喚フィールドを張って私たちを待ち構えているの……?

《Fクラス 月野造  物理 375点》
        &
《Fクラス 姫路瑞希 物理 407点》

唖然としている私たちの前に、絶望的な点数が表示される。なん……なのよ……コレは……わ、わからない。今のこの状況全て、何がどうなっているのか私にはわからない。いいえ、一つわかるものはある。それは———

《さて、Eクラスの皆さん。わかっていると思いますが、ルール上勝負を挑まれたからには召喚に応じなければ戦闘放棄と見なされますよ》
「それと、残念ですが増援は期待しないでください。皆さん以外の……他のEクラスの皆さんは“全員すでに戦死しています”から」
「せん……し?全員、すでに戦死……?いや、でも……え?なに、これ……?」

そんな恐ろしいことを言って二人とも武器を私たちに向けつつ召喚を促してくる。先輩も姫路さんもすでにお互いが攻撃準備が完了しており、私たちが召喚獣を召喚した瞬間に攻撃してくるだろう———そう、わかっているのは一つだけ。これからどう抵抗しようとも、万に一つも私たちEクラスに勝てる可能性がないということだけは……わかってしまった……


———二学年試召戦争———
〜Eクラス対Fクラス:Fクラス勝利〜

134時間目 トンデモ奇策は〜Fクラスの華〜 ( No.267 )
日時: 2016/03/04 20:40
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

造Side


———現在時刻10時23分、攻略に要した時間は約50分と言ったところですか。何とかゆーさんの言った目標時間内にEクラスを攻略できましたね。

「瑞希、月野。二人ともお疲れ。やっぱりウチらが加勢する必要なかったわね」
「うむ、見事な勝利じゃ。雄二の声も聞こえておったがこれから戦後処理に入るのじゃろう?」
「美波ちゃんも木下君もお疲れ様です。美波ちゃんたちがちゃんと守ってくれたから上手くいきましたよ」
「その通りですね。さて、では午後の件もありますし時間も惜しいです。ヒデさんの言う通り、そろそろ戦後処理に入りましょうか中林さん」
「…………はい、先輩」

仮に中林さんに逃げられた時の為に備えて、念のために3階の踊り場で控えてもらっていたヒデさんと島田さんと合流し、お互いを称えあいつつゆーさんに頼まれた通り戦後処理に入ることに。

「……負けたんですね、私たち」
「そうなりますね。そう言えばEクラスは初めての試召戦争でしたよね。どうですか感想は」
「……最悪の気分です……何が……いけなかったんでしょうか」
「う、うーん……色んな意味で準備不足・経験不足って感じですかね」

がっくりと項垂れる中林さん。打倒Fクラス、打倒ゆーさんやアキさんを豪語していた彼女なだけに、相当落ち込んでいますね。Eクラスの戦い方を評価すると……彼女たちは召喚獣での戦い以前に、対Fクラスの対策をほとんど練れていない印象でした。ゆーさんたちがどこに向かうのか予測もせず、ゆーさんたちをただ闇雲に追っているだけ。さっきみたいに少し冷静になれば所々で回り込んだり待ち伏せしたりとできたでしょうに。

「と言うかのう。ずっと気になっておったが、お主ら教師も連れて来ずに試召戦争をどう戦うつもりだったのかの?」
「えっ……あっ……」
「……やはり気づいておらんかったのかEクラスよ」

おまけにヒデさんの言う通り、試召戦争中であるにも拘らず立会人の先生を連れてきていないと言う致命的なミスもしていた様子。仮に、ですが。ゆーさんたちに追いついた場合はどうする気だったのやら……?まあ、Eクラスの皆さんはこれが2学年最初の試召戦争ですし、やはり勝手がわかっていなかったようですしこればかりは無理もありませんかね。

「こ、この手で坂本と吉井と倒せるチャンスだったはずなのに……」
「……えっと、中林さん?試召戦争が終わったのでアドバイスしますね。(アキさんへの恨みの内容は一体何なのか分かりませんが)貴女がゆーさんを怒るのも無理はないと思います。ですが、試召戦争中は出来る限りクラス代表が前に出ちゃダメですよ。勿論私怨に囚われちゃダメ、勝てるものも勝てませんからね」
「うっ……そ、それはそうかもしれませんけど……」

中林さん自身が攻め込んできたことも良くありません。特殊な場合を除いたらやはりクラス代表はおいそれと召喚獣を召喚するべきではありませんし、それ以上に代表が表に立って突撃するなど鴨が葱を背負って来るようなもの……試召戦争のタブー中のタブーです。

「で、ですが先輩……っ!坂本はあんなに前線に立っていますよね!?おかしくないですか!?」
「……え、えっと。それはゆーさんが特別と言いますか」

…………え?中林さんの言う通り、うちのゆーさんは結構表に立って破天荒な突撃もしているって?ま、まあそこは定石通りな作戦だけで勝てるほど試召戦争は甘くないですし、思い切りの良さと奇想天外な作戦こそFクラスの華ですから。

「な、納得いきません……と言うか、何一つ何が起こっているのか分かりません……」
「そうでしょうね。うーん、少しだけなら何が起こったのか説明しましょうか」

未だに何が起きたのか、なぜ負けたのか、Eクラスの仲間たちはいつ戦死したのか———何一つ理解できずに混乱している中林さんとEクラスの皆さん。では折角ですし、肝心のゆーさんの立てたFクラスの作戦の内容説明に入りましょうか。Eクラス戦が始まる前に、我らが策士ゆーさんは自分たちにこんな作戦を授けてくれました。

134時間目 トンデモ奇策は〜Fクラスの華〜 ( No.268 )
日時: 2016/03/04 20:43
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

『———つーわけで、恐らく中林は日頃の恨みを晴らすため率先して俺らを討ち取りに来るだろう。そんで俺らが逃げ出せば釣られて奴が追って来るのもほぼ間違いない。そしてそんな奴が代表の脳筋クラスだ、守るべき代表が俺らを追うなら必然的にクラス全員で追ってくるハズだろう』
『ゆーさんの言い方は物凄く悪いですが……まあ、そうでしょうね。そこをこっそり後ろに回り込んでいた自分たちがバックアタックを仕掛けて、気づかれないように少しずつEクラスの生徒さんを討ち取っていくってことですね』

Eクラスの皆さんは立会人の先生を確保できていませんでしたが、その点こちらには立会人の先生を連れてこなくてもいつでもどこでも代理召喚出来る自分の白金の腕輪があります。この腕輪を起点とした基本的な流れはこうですね。

①ゆーさんたちが中林さんたちを挑発しつつ自身を囮に引きつける
②怒ったEクラスがゆーさんたちを討ち取ろうと全力でゆーさんたちを追いかける
③その間ゆーさんたちが通るルートに自分たちが先回りして待機
④ある程度Eクラスを分断させやれると判断すれば後方を走るEクラスの生徒に対して自分が召喚フィールドを展開
⑤姫路さんと自分の全体攻撃+討ち損じた生徒を島田さんとヒデさんが討ち取る

以下この1〜5の流れをEクラスの戦力の大半を削るまで繰り返します。ちなみに他のFクラスの皆さんにも基本3人一組で行動してもらい、Eクラスの人たちと出会い次第3人で戦ってもらい自分たちのアシストを行ってもらいます。多少点数の差があっても3対1なら十分に戦えるはずですからね。

『そうだ。今日に至るまで散々俺と明久に挑発されて『えっ!?僕中林さんに何かしたっけ!?』怒りで俺らしか見えてない中林の奴は絶対に後ろの連中の異変に気付かない。まさか俺らを追い詰めているつもりが、知らん間に追い込まれていることになっているなんざ夢にも思わんだろうさ』
『ああ、なるほどの。お主この戦争が始まる前から妙なくらいに中林をしつこく挑発しておるなと思っておったが、その挑発も一つの狙いじゃったのか』
『…………怒りで前しか見えなくなるってことか』

こうしてこっそりと勝負を挑んでEクラスの生徒の数を少しずつ減らしていった自分たち。そして大半を削り終えたら……詰めに入ります。

『おうよ。ああいうタイプは扱いやすくて助かるな。んで、お前らがある程度連中を倒したと判断したら俺らは迷わず旧校舎2階へ向かい、中林たちを誘い込んで“そこから飛び降りる”。いくら体育会系とは言えそんなデタラメな度胸と身体能力は奴らにはない。で、階段を使って下に降りようにも旧校舎の階段は今朝鉄人が連絡した通り使えないから必然的に踵を返して渡り廊下を通って新校舎の階段を使わざる負えなくなる———そしてそこが奴らの墓場になる』

……この作戦を聞いたとき、正直本気で止めようと思いましたがね。何で2階から飛び降りることが作戦の一部に組み込まれているのやら……ま、まあゆーさんたちなら2階程度の高さならどうってことないと当の本人たちから太鼓判を押されたので、渋々了承はしましたが。

あ、ちなみにゆーさんが言った“連絡”とは今朝西村先生がHRで話してくださっていたものの一つですね。


———HR:西村先生の連絡———


『後は他の連絡だな。旧校舎の1、2階の踊り場にある水道だが、本日から配管工事を行うため周辺の手洗い場及び水飲み場は使用できない。それに伴い業者が入るのに邪魔にならないよう旧校舎の1階と2階を繋ぐ階段も使用不可だ。朝来た時のように、遠回りになるが渡り廊下先の新校舎の階段を使う様にしておくこと』


旧校舎の階段が使えないと連絡を受けたとき、ゆーさんが何か企んでいると思いましたが、こういう事でしたか。場の全てを利用したゆーさんの策、お見事です。そしてゆーさんの描いた最後の詰めのシナリオは以下の通りですね。

2階窓から飛び降りて逃げだしたゆーさんたちを追いかけたい中林さんたちは、旧校舎側の階段を使えず、勿論ゆーさんたちのように飛び降りるわけにはいきませんので先ほど通った渡り廊下を通って新校舎の階段を使い1階に戻る必要があります。

ですが彼女たちが踵を返してみると、付いて来ていたはずのクラスメイト達はほとんど戦死しており、おまけに渡り廊下には召喚フィールドを張った自分と姫路さんが戦闘準備万端でお出迎え。万が一旧校舎の階段を上って3階に逃げ込もうとしても、ヒデさんと島田さんが階段の踊り場で待機していますから、逃げ場が無くなった彼女たちは勝負を挑まざるを得ません。

『中林はさぞ驚くだろうな。気づいたときには中林の周りに近衛兵以外の味方はいないことになるわけだ。そんでもって最後の止めは全体攻撃の練習を兼ねて造・姫路が渡り廊下で奴らをまとめて戦死させろ。念のため逃げられないように3階4階の階段の踊り場は秀吉と島田がお前らの得意科目の教師を連れて回り込んで封鎖しておくこと。これが俺のEクラス戦のシナリオだ。単純な策だがお前らがちゃんと試召戦争を行う上で、それぞれの役割をわかっているかが問われてくる。来たるAクラス戦の模擬戦と思って死ぬ気で戦え、以上!』

これがゆーさんの対Eクラス戦の作戦でした。正直傍から見ればかなり破天荒で無茶で無理のある作戦でしょうが、全員の能力を鑑みて練られたゆーさんらしい———そうFクラスらしい作戦でしたね。目標タイムも縮められましたし、自分や姫路さん達の働きは合格点ってところでしょうか。まあ、それはともかくとして。

134時間目 トンデモ奇策は〜Fクラスの華〜 ( No.269 )
日時: 2016/03/04 20:46
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

「さて、説明も終わったところで早速戦後交渉に行きましょうか。本来なら下位クラスが敗北した場合クラスの設備が1段階下がるわけですが……一学期のB・D戦の戦後処理の話は聞いていますよね?その時のように自分たちはEクラスに条件を聞いていただけるなら勝敗無しの決着として終了させてもいいと考えています」
「それは……やっぱりFクラスがいつか戦う予定のAクラス戦で手伝えってことですか?」

校内中で一学期のFクラスの活躍(?)が広まっていますから、Fクラスがどんな行動をするのかはEクラスの皆さんも、中林さんもわかっているようです。中林さんの言葉に自分はコクリと頷いて続けます。

「はい、端的に言えばそうなりますね。まだ詳しい条件はゆーさんからは聞いていませんが、少なくともクラスの設備のランクが下がるよりも良い条件になるはずと聞いています。それで、どうしますか?」
「悪いことは言わぬ。雄二とてそこまで非道な条件は出さぬ———と思うからの、呑んでくれるとありがたい」
「う……でも……うーん……」

ブツブツと苦々しい表情で呟いて悩む中林さん。体育祭:召喚野球から始まり先ほどまでも嫌と言うほど挑発されていた彼女の事です。きっと心の中ではゆーさんの条件に従うのは絶対に嫌だと思っているはずでしょう。

「どうかしら中林。そりゃアンタも嫌なものは嫌だろうけどさ」
「あの!……坂本君には出来るだけ無理のない条件を出してもらえるように私たちも説得しますから、受けて頂けませんか……?」
「…………」

ただ……しばらく考えていたようですが、クラス代表の立場でもある彼女は悔しそうな表情で———

「……わかりました。設備のランクが下がるよりはいいと思います。駄々捏ねて条件を呑まないなんて頑張ってくれたEクラスの皆に悪いですし……条件、呑ませていただきます」
「ありがとうございます、中林さん。条件は後日付けさせていただきます。では……Eクラスの皆さん、試召戦争ありがとうございました!」

「「「ありがとうございました!」」」

———交渉成立ですね。4人でほっと一息ついて、Eクラスの皆さんにお礼を言いつつDクラス戦も控えていますので自分たちのFクラスに戻ることに。ふぅ……何とか午前中はクリア、ですね。次も頑張らなくては。












『……でも、“情報通りなら”絶対勝てるハズだったのに……だからこそDクラスより先に……倒される前に勝負を挑んだのに……どうなってるのよあいつら……』


〜攻撃部隊(造・秀吉・瑞希・美波)帰還中〜


「案外何とかなるものですね。自分1時間でEクラス全員を戦死させろ、なんて流石に無理があるかなって思っていましたが」
「うむ。まあ雄二とて無茶な作戦は立てても、不可能な作戦は立てぬじゃろうからの。ワシらの能力を測った上で策を練っておるのじゃろう」

Fクラスに戻りつつ、4人でのんきに先ほどのEクラス戦を振り返りながら帰還します。

「それにしても瑞希、大丈夫?アキたちみたいにずっと走っていたわけじゃないけど結構走らされたじゃない?」
「そうですね……かなりハードだったと思いますが、体力的に大丈夫ですか姫路さん?」
「えへへ♪大丈夫ですよ美波ちゃん、それに月野君!秘密にしてましたが……実は私、最近体力をつけるためにジョギング始めたんです」
「えっ?そうなの?初耳よそれ」
「はい、秘密にしてましたから。朝学校に来る前に少しずつやっているんです。ね、木下君」
「うむ、最近朝によく姫路とジョギングコースで会うのじゃ。頑張っておるぞ姫路は」
「おおっ!良いですね。頑張っているじゃないですか姫路さん!ふむ、自分も何か運動始めましょうかね」
「あ、でしたら皆さんで週一にでもジョギングをしませんか?明久君や坂本君たちも誘って」

こんな感じの談笑をしていると、我らがFクラスの教室が見えてきました。中にいるゆーさんたちのことです、今頃午後からのDクラス戦の作戦会議を行っているんでしょうね。自分たちも急いで作戦会議に参加しませんとね。

「目標時間も記録更新できてたし、結構良い感じで行っているわよねウチら」
「はい!新しくなった召喚獣の武器も、かなり扱えるようになりました!次もバッチリです!」
「うむ、実に頼りになる台詞じゃな姫路よ。ワシらも負けず、精進するとしようか」
「ですね。ではこの勢いのまま午後からのDクラス戦も自分たちの勝利に向けて———」

『嘗めてんのかテメェらは!?一体何だこのマヌケなEクラス戦の結果は!?1年からやり直せやバカ者共がっ!』

「「「「…………えっ?」」」」

———そう、自分たちが意気揚々とFクラスに入ろうとした矢先。廊下まで響いてくるゆーさんの殺気に満ちた怒号が聞こえてきました。え……?な、何ですか一体……?

お知らせ ( No.270 )
日時: 2016/03/11 20:39
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

いつも読んでいただいている皆様こんにちは、糖分摂取魔です。申し訳ありません、少々お知らせと謝罪をさせてください。

長年こちらでこのバカテス二次創作『バカな自分は召喚獣?』シリーズを書かせていただいていましたが、別サイトの規約等の諸事情によりこちらで続けられるか怪しくなってしまいました。

つきましては前スレッドである『一学期編』『夏休み編』をしばらく日を置いたのち削除依頼をすることになると思います。長い間読んでいただき本当にありがとうございます。そして申し訳ありません。

そしてこの現行の『二学期編』ですが……中途半端に終わらせたくはありませんので、とりあえず今からストックしていた7章を全て更新、他にも書き貯めしていた分を更新させていただきます。こちらも『一学期編』『夏休み編』よりも少し時間を置いたのち削除することになるとは思いますが、どうか最後までよろしくお願いします。

135時間目 ( No.271 )
日時: 2016/03/11 20:41
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

造Side


『嘗めてんのかテメェらは!?一体何だこのマヌケなEクラス戦の結果は!?1年からやり直せやバカ者共がっ!』

Eクラス戦はゆーさんの作戦通り、完璧にこなしたはずの自分たち。ですがどういうわけか、戻ってみるとゆーさんが皆さんに向かって怒鳴り散らす姿が見えてしまいます。え、えっと……これは一体……?とにかくボーっとしていられません。ゆーさんの声に少しだけ怯みながらもFクラスに戻ることに。

「た、ただいまですゆーさん、それに皆さん……」
「あぁん!?…………って、おお。お前らか、スマン怒鳴っちまって」

教室に戻りゆーさんに話しかけると、怒鳴っていたゆーさんも自分たちの姿を見て荒げていた声は止み、少し落ち着いたように声を整えてくれます。

「その、坂本。Eクラスとの交渉は終わったわ」
「うむ。無事に交渉成立じゃ。条件は後日説明すると伝えておいたからの」
「……そうか。さっきの戦いも含め、ご苦労だったな」

一応ゆーさんは自分たちに労ってくれますが、はらわたが沸々と煮えくり返っているようで少し怖いです。見た感じですとどうやら他のFクラスの皆さんに腹を立てているようですし、自分たちに向けられた怒りではないとわかっていてもちょっぴり怯んでしまいます。一体何が合ったんですかゆーさん……?

「あ、あの……ごめんなさい、もしかして私たち何かミスをしましたか……?」
「ゆーさん、ひょっとして時間をもっと短縮すべきでした……?それとも交渉に時間かけすぎましたか……?」
「いや、姫路や造、それに島田に秀吉はよくやってくれた……この短時間で勝負を決めてくれたからこそ次が何とかなりそうだ。マジで感謝している。……だがそれに比べてお前らはどういうことだクソがっ!大体何だその開き直った態度はっ!?」

『仕方ねーじゃんかよ、俺らお前らと違って召喚技術無いしよ』
『誰にでもミスくらいあるだろ。なにカリカリしてんだよ坂本』
『武器も変わったしな。ま、焦らなくても次は上手くやれるさ』

「っ……ヤロ……!」

今にもクラスメイトを殴りかかりかねない程ゆーさんは腹を立てています。ど、どうしたんでしょうか……?Eクラス戦も予告通り一時間以内に終わらせ、見事に勝利したはずですのに……

「あー……4人とも、とりあえず説明するから教室出よっか」
「…………ここは雄二に任せるべきだな」
「あ……アキさん、こーさん。わかりました……皆さんも行きましょう」

激怒しているゆーさんの横にいたアキさんたちが状況を飲み込めていない自分たちに声をかけてくれます。アキさんの提案で自分たちはゆーさんの邪魔をしないように再び廊下に出ることに。

「それで明久君に土屋君。何があったんですか?」
「坂本があれほどキレるなんて、やっぱりよっぽどのことがあったのよね?」
「雄二が真面目に腹を立てること……もしや試召戦争関連かの?」
「お二人とも、申し訳ありませんが詳しく教えて貰えますか?」
「そ、それがさ……ちょっと他のみんながやらかしちゃったって言うかさ」
「…………操作ミス、らしい」

自分たちにそっと状況を教えてくれる二人。ゆーさんほどではありませんが、お二人も苦々しい面持ちで説明してくれたその内容は……それはそれはとてもバッドなニュースでした。


〜明久&ムッツリーニ説明中〜


「———えっ!?……じ、自分たち7人以外のFクラス全員戦死……!?」

アキさん、こーさん曰く先ほどのEクラス戦で戦力的にはかなり有利だったのにも関わらず、先行していた自分たち4人とEクラス戦で召喚獣を召喚していないゆーさん・アキさん・こーさん以外のFクラスのメンバーが全員戦死、それも戦死した科目以外の科目も万遍なく戦死ギリギリに消費されているとのこと。

「うん……何でも普段と武器が違ったり、久しぶりに召喚したせいで感覚が掴めなかったりで同士討ちとかして全員戦死しちゃった……らしい」
「そ、そんなっ!?私たちとあんなに模擬戦や対策しましたのに!?」
「と、言いますか同士討ちに操作ミスですって……?」

う、うそ……?そんなバカな……?姫路さんの言う通り、こういうことを防止すべく予め自分の腕輪を使って召喚獣の操作の練習や模擬戦を非公式ながら一昨日と昨日十分にやったはずなのに……同士討ちや操作ミスでクラスの大半が戦死……?これは流石に想定外過ぎです……

「…………姫路と造たちがEクラス戦を短時間で終わらせてくれたから、補習室からはすぐ出られたらしいが……」
「ちょ、ちょっと待ちなさい。この後Dクラス戦なのよね……?このままじゃ今すぐ補充試験を受けてもこいつらDクラス戦に間に合わないじゃないのコレ!?」
「確か12時きっかりに試召戦争を始めるとDクラスから宣戦布告されておるからの……約1時間30分しかないではないか」

これは確かにゆーさんが激昂するのも無理はないかもしれません。皆さんわざと……ではないと信じたいですが、これは本気でマズい。1、2科目補充できるか出来ないかのレベルですか……とにかく時間がありません。慌てて教室に戻りゆーさんを宥めて作戦会議しなくては。

135時間目 ( No.272 )
日時: 2016/03/11 20:41
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

「———大体お前らはな……っ!」
「はい、そこまでですゆーさん」
「……造?」
「アキさんとこーさんに話を聞いて状況は分かりました。ゆーさんの気持ちはわかります、ですがこう言っては悪いとわかっていますがここで怒っても今は時間の無駄です。今すぐ対策を立てましょう、説教するのは終わってからです」
「……そうだな。腹立たしいが今はこんなバカ共相手にしている暇はねぇか。こいつらの処分は後回しにするしかないな」

自分がそう宥めると、爪が食い込むほど拳を強く握りしめ、歯を食いしばり一度大きく深呼吸をしてゆーさんが頭を切り替えます。いつものメンバーも席に着き緊急作戦会議開始です。

「さて。こんなアホみたいな事が起こったんだ。まず想定していたDクラス戦の作戦は使えん。白紙に戻して考え直す必要があるな」
「と言うかさ雄二。わざわざ作戦を白紙に戻さなくてもDクラスに待ってもらうことはできないの?こんなに時間ないわけだし……せめてDクラスに1時間だけでも延期してもらう様に交渉するのはどうかな」
「ダメだ。宣戦布告を受けちまった以上、引くわけにはいかん。一学期初っ端の状況ならお前の言う通りDクラスと交渉も出来たかもしれんが……俺らは今や上位クラスに位置しているんだ。Dクラスの連中の出した条件の宣戦布告に基本文句を言えないからな。ここで延期でもしようものなら協定違反ってことで、その時点で敗北にもなりかねない」
「ならばこやつらが回復するまで先ほど同様にお主らが逃げ回るとかはどうじゃ?」
「……いや、例え俺たちがめいいっぱい時間を稼いでもこのバカ共が点数回復できるのはせいぜい1〜2科目程度だろう。何をどうバカをやったか知らんが、このバカ共は全教科ボロボロだ。回復した教科以外で勝負を挑まれたらまた戦死。そんな無駄なことをする必要はどこにもない」

延期もダメ、逃げ回るのもムダとゆーさんは答えます。となればやはり———

「でしたら……やはりここはこの場の7人でどうにかするしかないですね。戦える人数が圧倒的にこちらが不足している以上長期戦は不利。まともに戦える科目等も考えると何が何でも先手必勝、向こうに満足な準備もさせない程の超火力・超短期決戦で挑む他ないと思います」
「……それしかないな。本来ならここで造・姫路・島田・秀吉の補充試験に入る予定だったが時間がない———作戦変更だっ!辛いとは思うが科目は使っていないものを用いてさっきの特攻メンバー+俺・明久・ムッツリーニで一気に攻め込む!この際戦力温存なんて言ってられん、各々の腕輪・能力その他諸々使わざるを得ないなら存分に使い全力且つ速攻でDクラス本陣を叩くッ!」

Dクラス戦開始まで時間も無いので、即興の作戦をゆーさんが立てます。この切り替えや思い切りの良さは流石ゆーさんですね。

「今言ったメンバー以外は戦死しているし、全員今すぐ点数補充だ。お前ら、補充試験も嘗めた真似するようならぶちのめすから覚悟しておけよ……オラ、とっとと行ってこいやっ!」

「「「へいへーい」」」

「(……ちっ、こいつらは一体何だ……?今朝もだがやる気ねぇな畜生が……)———こいつらが使えん以上、俺たちで何とかするしかねぇ。増援もないものと思って7人で戦うことになると思ってくれ」
「それはわかりましたが……坂本君まで戦うんですか?攻め込むのは私たちに任せて代表の坂本君はどこか本陣を作ってそこで待機しておく方がいいのではないですか?」
「あ、それウチも思った。アンタがやられたらウチらの負けでしょ?アンタまで攻めるってめちゃくちゃ危険じゃないかしら」

戦死した皆さんを蹴り倒す勢いですぐに補充室に向かわせるゆーさん。そのゆーさんに姫路さんと島田さんが一つもっともな質問します。ですが……

「いえ、自分もゆーさんは自分たちと一緒に行動した方がいいと思います。今朝のように近衛兵を置ける状態ならお二人の言った通りにした方が絶対に安全ですし定石通りと言えるでしょう。ですが今回は近衛兵を置ける余裕は無し、ゆーさんだけ別行動したり本陣にゆーさん一人にするのは逆に危険になるかと」
「造の言う通りだな。今は近衛兵を置けるほど戦力を割く余裕もない。つまり俺一人で待機しなきゃならんことになるからな。もし出し抜かれて俺のところに攻め込まれれば俺たちの敗北決定だ」
「ならいっそ雄二も攻撃隊の戦力として入れる方が勝率も上がるってことなんだね。雄二が僕らと一緒にいるならもしもの時誰かが雄二を守ればいいからね」
「そう言うことだ、後はいちいち俺とお前たちが離れてたら情報伝達や作戦指示が遅れちまう。だったら本陣にボーっと居座るより即興で指示がとばせる分一緒に戦っていたほうがまだマシだ」

まあ、とは言え本来だったらクラス代表を前線に出すのは自殺行為。もし自分たちのフォローが間に合わなければゆーさんは敵本陣で袋叩きに遭うのと同義という危険な賭けではありますが……今はこれしかありませんね。

「とりあえず一時間弱しかないが造・姫路・島田・秀吉の4人は一番消費している科目の点数補充を頼む。開始五分前には回答途中だろうが切り上げてここに戻ってきてほしい。明久・ムッツリーニは俺と一緒に詳しい作戦会議及び情報収集だ。少しでも現在のDクラスの情報が欲しいからな」

そう自分たちに指示を飛ばしたあと、気合いを入れるためいつものメンバーで円陣を組みます。

「さて、7人での戦いとなっちまった。俺らと向こうで約7倍の人数差。だが———心配すんなっ!人数差7倍?知ったことか、戦力はこっちが圧倒的に上だっ!いいか、前にも言ったがやれないことはない!自信を持て、気合い入れろ!こんなところで立ち止まってる暇はない!あくまで目標は打倒Aクラス!とっととDクラスを潰すっ!行くぞお前らっ!」

「「「「「「応っ(はいっ)!」」」」」」

いつもの仲良しメンバーにそう告げるゆーさん。つまり今から始まるのは以前から想定はしていた、このいつもの7人とDクラス全員との戦いってことになりますね。……戦力を踏まえれば一応やれなくもないとはゆーさんとこーさんの分析でわかってはいます。ですがあくまでそれは流石に唯の机上の空論だとばかり思っていました。まさか早速実戦でやらねばならぬとはね……

ですが泣き言も言っていられません。ここまで来たからには全力で当たって敵を砕くのみ、です!いざ行きましょうDクラス戦!

136時間目 ( No.273 )
日時: 2016/03/11 20:45
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

平賀Side


「———報告します平賀代表!情報通り奴ら主力7人で攻め込んでいます!」
「現在40名の兵を渡り廊下に配置。拮抗しているようですが、奴らはEクラス戦で消費している分、こちらが有利です!」

ついに始まった試召戦争。俺らにとってはリベンジマッチである因縁のFクラス戦。前々から少しずつ準備して戦力や戦略を立てていたことに加え、午前中にEクラスとの防衛戦をやらざるを得なかったFクラスとの戦いはこちらが非常に有利な状況になっている。

『スピード勝負ってことと逃げ道を塞がれたら終わりってことで何とか速攻で渡り廊下と階段を抑えられたのは良いけどさ…………雄二ぃ!?なんかめちゃくちゃ敵の数多くない!?』
『そんな当たり前の文句言うなバカ久っ!数の上では7倍以上向こうに人数いることくらいわかってただろが!文句言う暇あるなら二重召喚でもして数増やせや!』
『こんな四方八方敵だらけの状況で集中力がいる二重召喚による二体同時使役なんて出来るわけないでしょ!?そんなこと言う暇があるなら雄二も召喚して戦えばいいじゃないか!』
『おいそれと代表が召喚できるか!もしもの時までギリギリまで召喚しないとあれほど言ってただろうに、聞いてないのかお前と言うバカは!?』

…………と、こんな感じの会話が聞こえてくるな。残念ながら奴らの言う通り新校舎の階段と渡り廊下は試召戦争開始時に機動力が抜群過ぎるあいつらに抑えられた。この二か所をこちらが先に抑えられればもっと楽に攻略できたが……そこは仕方ない。その代り、階段から先の俺がいる俺たちのクラスのあるDクラスに繋がる廊下までは攻めきれていないようだ。その理由と言うのも———

『くっ……フィールドが数学とはの……これでは明久たちに加勢できぬ……』
『この科目ウチの得意科目だって言うのにさっきのEクラス戦で使っちゃってるからあまり余裕が……』
『わ、私もEクラス戦で金の腕輪の能力使っちゃって数学の点数があまり……』
『…………保健体育以外は辛い』
《み、皆さんもう少し耐えてください!この5人を倒したらすぐにフィールドを書き換え———うわっ!?……ちぃ、接近戦はやっぱり辛いですね……》

———俺たちの作戦が効いているからだな。奴らの成績データ並びに戦闘データをクラスメイト全員に叩き込んである。それこそ奴らが得意とする科目や苦手とする科目、更にそれぞれの召喚獣や本人たちの特性、戦闘の癖や行動パターンに至るまで全てな。特に攻撃の中心となっている姫路と月野の戦い方は徹底的に研究しておいた。Fクラスと戦うシミュレーションをFクラスに負けてから今日に至るまでずっとやってきた甲斐が出てきたわけだ。

それに加えて午前のEクラス戦で奴らの使った科目は確認済み。どの科目が回復に間に合っていないのかの情報は“すでに俺たちに筒抜けだぞ”Fクラスよ。後は先にその科目の教師を確保しておいて廊下に配置しておくだけでこいつらの怒涛の進撃もそう苦も無く止められている。

「まあ、それも清水さんや玉野さんが奴らのいない間にFクラスに仕掛けてくれた盗聴器による情報あってのことだけどな」
「……ま、卑劣な手は不本意ではありますがDクラスの生徒として勝たねばなりませんので。それもこれもDクラスの為です!」
「私も一人のDクラス生徒として、卑怯だとは思うけど勝たなきゃならないからね。Dクラスの為にね!」

近衛兵として俺の横にいる清水さんと玉野さんはもっともらしいことを言う。少々ネタ晴らしをすると、この二人には奴らが午前中Eクラスと戦っている隙にFクラスに侵入し教室内に盗聴器を仕掛けてもらっている。そのお陰で現在奴らは7人で戦わざるを得ないこと、そしてかなりの科目がEクラス戦で消費されていることが判明した。

消費されているの科目は点数消費が大きい順に【数学・英語W・英語R・物理・日本史・地学】らしい。だからこそ奴らの回復が間に合っていない科目の教師を中心に立会人を確保して勝負に挑んでいる俺たち。奴らは消費した科目で勝負をしなければならないと言うわけだ。

…………どうしてこの二人が反則スレスレの行為をやってくれているかって?……このFクラス戦が始まる前に、モチベーションを上げるため“勝ったら戦後処理でFクラスの気になる相手(清水→美波 玉野→アキちゃん(決して吉井に非ず))を自由にしていい”とクラス全員に言ったら率先してやってくれた。……この勝負、勝ったらとりあえずその二人には謝っておこう。すまない島田と吉井(と言うかアキちゃん?)

「まあ、それでも40人以上導入してやっと互角とは……Fクラスはやはり強いな……」
「ですね、流石は私たちのライバルクラスです」
「人数はこちらが有利。科目も奴らが消費している科目中心に攻めているにも拘らず、7人で戦えていますからね……つくづく恐ろしい連中ですよ」
「向こうには聡明で凛々しくお強く、それでいてお美しいお姉さまがいらっしゃいますから当たり前です」
「アキちゃんも可愛いからね」

…………最後の二人の妙な発言は置いておくとして。話によれば今戦っている7人以外の他のFクラスの連中は———今回“自主的に役に立たない”ハズだから、実質Fクラスは7人で戦っているのに等しい。だと言うのにここまでやるとは流石だ。姫路さんや月野の戦力は勿論、坂本の奇策や他の連中の予想も出来ない行動が恐ろしい。だが、俺らだって負けていられない!前回負けてから今日に至るまで戦力アップを頑張って行ってきた。奴らの行動パターンも完全に把握済み。負ける要素なんてない、ここで勝って雪辱を果たすっ!

「代表!英語担当の先生も無事に確保できました!すぐに行けます!」
「よしっ!まずは姫路さんか月野を倒すんだ!あの二人が攻撃の中心。二人のうちどちらかを倒せば一気に攻め込みやすくなる!」

『っ!?雄二ヤバイっ!Dクラスが英語の先生を連れてきてるよっ!』
『ちっ、英語だと……今すぐ造を下がらせろ!造がやられたらこの均衡が崩れちまう!秀吉、島田!造を守れっ!』
『わかっておる!』
『了解よ!』

俺たちの行動にいち早く反応して、坂本が月野を下がらせると同時に木下と島田を月野の前に立たせて盾になる。だが、そうはさせんぞ坂本!

「待機部隊!坂本達と月野・木下・島田の三人を分断させろ!」

「「「了解です!」」」

『何ぃ!?……つ、造!秀吉!島田っ!』
《ゆ、ゆーさぁんっ!?》

ここでもう一つの作戦に移る。渡り廊下と階段の攻防に参加せず待機してもらっていた待機部隊を呼び出して、月野たち三人を召喚獣で鍔迫り合いをさせたまま渡り廊下の先、つまりは旧校舎側へと押し込める。よしっ!これで月野と姫路の分断に成功したな。

「待機部隊っ!そのまま科目を英語に変えてその三人を倒すんだ!その三人はもう戦う力は残っていない!倒したらこっちで坂本討伐隊に合流するんだ!」

「「「わかっています代表!」」」

そんな頼もしいことを言いつつ、科目英語の教師立会いの下で召喚獣を召喚しているであろう声が聞こえてくる。そっちは任せたぞ待機部隊……!

「こちらも攻撃の手を緩めるな!逃がすな!数で押せ!反撃させるな!攻め続けるんだ!」

『あんにゃろっ……!ひ、姫路行けるか!?』
『む、無理です!?この科目は回復していませんっ!?』
『…………数が多すぎる、逃げるべきか……?』
『こ、こうなったら二重召喚で……いや、流石にこうも囲まれちゃ二体を同時に使役するのはやっぱり無理が……』

136時間目 ( No.274 )
日時: 2016/03/11 20:46
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

俺がそんな指令を飛ばすと、案の定月野たちと分断された焦りが出てきているのか坂本たちの慌てた声が聞こえてくる。よし、ここが腕の見せ所だ!すぐに訪れるであろうその時まで、追撃部隊に檄を飛ばしていると———

『木下秀吉・月野造・島田美波、3人とも戦死!お前らは補習室行きだ!』
『……む、無念じゃ……すまぬ雄二、皆の衆……』
《そ、そんな……!?こんなところで……自分たちの負けなんて……!?》
『くっ……ここまで、なの……?』

———鉄人の大きな声と共に、月野たちが項垂れたような声が俺たちの耳に届いた。よしっ!待ちに待ったこの瞬間が来たっ!姫路さんか月野のどちらかさえ落とせば後はこの数で全力で攻め込むだけだ!

『クソッ!?造や秀吉たちがやられただと……!?さ、作戦中止!一旦引くぞお前ら!』
『ちぃ……わ、わかったよ雄二!瑞希、こっちに!』
『は、はい……』
『…………一階に逃げ込むべき』

今まで拮抗していた階段と渡り廊下内の攻防。だが今の鉄人の声を聞いて本格的に撤退を始める坂本達。姿は遠くて見えないが、待機部隊が月野たちを倒してくれたんだろう。これは……またとないチャンスだ!

「よし、畳みかけろ!姫路さんさえ動けなくすれば、後は坂本を討ち取るだけで終わる!全勢力を追撃部隊に回すんだ!」

勝てるかもしれない……いいや、絶対に勝てる!そう俺は確信して階段を降りて逃げていく奴らの息の根を止めるため、俺の側を守る近衛兵をも追撃部隊として動員して向かわせる。月野と言うFクラス二大戦力の一人にして厄介な白金の腕輪持ちを倒せたのは非常に大きい。後は主力である姫路さんを討ってゆっくり坂本を倒しにに行くか、そのまま問答無用で坂本に挑んでこの試召戦争を終わらせるもの悪くない。

万が一に備え俺はこの場に残り、俺以外のDクラスの生徒ほぼ全員に坂本達を追いかけてもらう。クラス代表として前線に出られないから、下に行った追撃部隊と渡り廊下の外へ押し込んだ待機部隊が現在どんな状況かよくわからない。わからないが———今のところ完璧に事が運んでいる上、全ての状況が俺たちに有利だと言っている。つまりほぼ間違いなく俺らの勝利と言えるだろう。勝った……あのFクラスに!宿敵Fクラスに俺たちは勝ったんだ……!勝利を確信し、思わず笑みを浮かべてしまう俺。












《———なんて。まさか勝ったとは思っていませんよね、Dクラス代表さん。……甘いですっ!Fクラス月野造、Dクラス代表平賀くんに勝負を挑みます!》
「……へ?」
「油断したのう平賀。お主、確か前回の試召戦争でも最後の最後で慢心し姫路の存在を知らずに負けたであろうに。まあ、これも勝負じゃし悪く思わぬようにの。同じくFクラス木下秀吉、平賀に勝負を挑む。試獣召喚(サモン)じゃ!」
「今回も詰めが甘かったようね、近衛兵はそう簡単に手放すものじゃないわ。まあ後悔してももう遅いけど。ウチも平賀に勝負を挑むわ。試獣召喚(サモン)!」


《Fクラス 月野造  現代社会 416点》
        &
《Fクラス 木下秀吉 現代社会 124点》
        &
《Fクラス 島田美波 現代社会 117点》


「な……なん、で……?え、お前ら全員戦死って鉄人が……?え?てか、一体どこから……!?」

…………どういう……ことだ……!?勝利を確信し笑みを浮かべた瞬間、突然俺の真後ろから声が聞こえたと思ったら“先ほど戦死したはずの”月野と木下、島田の3人が召喚獣を召喚して俺に勝負を挑んでいる。い、いや待ておかしい!?こういう展開に備え、極力後ろを取られないように常に壁を背にしていた。なのにいつ、どうやってこいつら俺の後ろを取った……!?

《どこからって……“窓から”ですよ。随分と自分たちの事を研究されていたようですが、ちょっぴり詰めが甘かったようですね。過去の戦歴・戦術データをもう少し考察しておくべきでした》
「一学期のBクラス戦の途中、そしてクラス代表の根本を倒した時と同じ戦法じゃからの」
「まあ、流石にちょっぴり危ないショートカットだったけどね。誤って3階から落ちるのはシャレにならないでしょうし」

窓……Bクラス戦……っ!?やられた……!こいつらどんな方法を使ったかわからないが、3階の旧校舎側の窓の外から新校舎側の窓へと侵入して後ろを取ったのかっ!?だ、だがそれ以前にコイツらはすでに戦死していたはず、どうしてこんなところで俺と対峙できる……!?

「それと……ウチらが戦死?何の事かしらね月野?」
《何のことでしょうねー島田さん?ねえ、ヒデさんはわかります?》
「うむ、わからぬ。わからぬが……ああ、しかし平賀よ。もしやお主この声を———『木下秀吉・月野造・島田美波、3人とも戦死!お前らは補習室行きだ!』———そう、この声を鉄人の声と勘違いしてしまったのではないかのう?」
「……っ!?て、鉄人の、声!?」

な、何だこれは……木下が鉄人の声を……ま、まさかこれって……!?

「せ、声帯模写!?や、ヤバイっ!?み、皆急いで戻ってくれ!?」

嵌められたっ!?だんだん状況がわかってきたが、これは本気でマズい……!今すぐ兵を戻して態勢を———


キィイイイイイイン———キュボッ!


『『『ぎゃあああああああああああああああああああ!?』』』

———と、俺が慌てて兵を戻すため大声で叫んだのと同時に、妙な音と共にクラスメイトの断末魔が響き渡る。お、おい……何だ今の音……?めちゃくちゃ嫌な予感しかしないんだが……

「……い、今の音は……?」
「ん、多分瑞希の召喚獣の金の腕輪の能力【熱線】ね」
「それとお主らDクラスのクラスメイトの断末魔じゃろうな」
《と言うわけでですねー、平賀くんの期待しておる増援部隊は……残念ながら引いたと見せかけて攻撃準備万端だった姫路さんに全員やられたと思います」

『Dクラス、37名戦死!戦死者は補習だ!』

……今度は本物の鉄人の声が廊下から聞こえてくる。……つ、つまりこれは……

《さて……わかっていますよね?召喚フィールド内で勝負を挑まれたら———召喚に応じて勝負しなければならないと言うことを》
「それでどうするのかしら平賀?ウチら三人相手に……勝てると思う?」
「言っておくが……ワシらは油断はせぬ。全力で仕留めに行くからの。それでは平賀よ———召喚して敗けるか、召喚せずに敗北を認めるか。どっちが良いか言ってくれぬか」

…………守ってくれる近衛兵もおらず。と言うか、俺以外のDクラス全員が戦死。校内でもトップクラスの召喚技術と絶望的な点数を持つ月野を筆頭としたこの3人対俺一人。つまり……どうやっても、俺らの……負け……なのか……


———二学年試召戦争———
〜Dクラス対Fクラス:Fクラス勝利〜

137時間目 ( No.275 )
日時: 2016/03/11 20:49
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

造Side


「流石に自分たちとの再戦を望んでこれまで頑張っていただけあって、かなり強かったですよねDクラス……疲れました……」
「Eクラス戦で消費していたとはいえ、中々にギリギリの戦いじゃったからの……」
「随分ウチらの事を研究してたらしいわね。正直不意打ちが上手く行かなかったら勝てなかったかもね」

なりふり構わない超短期決戦で決着を付けたかったのですが、Eクラス戦よりも時間もかかり点数消費も激しいですね……Eクラス戦で消費していたことや7人で戦ったことだけではなく、Dクラスの皆さんが相当自分たちとの再戦の為今日まで頑張って対策をしてきたことがよくわかりましたよ……危なかったぁ……

「……世辞は良い、結局俺らの負けだしな……くそっ、Fクラスは強いなホントに……」

心底悔しそうに唇をかむのはDクラス代表平賀くん。いいえ、お世辞ではなく本気で思っていますよ。自分たち7人の戦闘パターンや得意科目・苦手科目を把握していたように感じられました。そしてその情報を元に相手に応じて戦闘方法を変更したり立会人の先生を待機させておくなどと言った工夫もなされていて……最後の彼の油断と奥の手さえなければ負けていたかもしれません。

「流石に木下の声帯模写は作戦に考慮してなかった……完璧に騙されたぜ……あれさえなければ……」
「いいや、ワシの声帯模写はあくまで一つの罠に過ぎん。お主に気付かれぬよう他にもいくつか罠を張っておいたのじゃがな」
「えっ?」

そのヒデさんの言葉に、目が点になる平賀くん。これもまたゆーさんの奇策ですね。

「騙し討ちみたい———と言うかまんま騙し討ちになっちゃったからちょっとネタ晴らしてあげるわね。平賀、アンタってウチらの消費していた教科を中心に立会人の先生を用意していたでしょ?」
「あ、ああ……一番厄介なのは姫路さんの金の腕輪の能力とここにいる月野の全体攻撃だ。だからなるべく二人がEクラス戦で消費した科目や不得意科目の教師を用意しておいたんだが……それがなんだ?」
「でしたら不思議に思いませんか平賀くん?もしその通りに立会人を用意していたのなら———最後の詰めで姫路さんが金の腕輪を使えるハズないじゃないですか」
「…………あれ?」

自分のその言葉に、そう言われれば確かにそうだと言ったような顔の平賀くん。折角です、さっきまで忙しかったですが、今からは時間もあることですしゆーさんたちがこっちに戻ってくる間、少しネタバレしてあげましょうね。

「言われてみれば……おかしい、何でだ……?今回お前ら7人だけで戦う必要があったせいで、立会人の先生を確保出来るほどの余裕はなかったハズ……だよな?」
「そうですね。ちなみに代理召喚出来る自分がやったわけでもないですよ。その時は平賀くんを追い詰めていましたから姫路さんのいる場所にフィールド張れませんので」
「だ、だよな?だったらどうやって……?」
「何、種を明かせば簡単な事じゃ。お主らはの、姫路や造たちがEクラス戦で消費された科目について、“全て把握しておいたと思い込んでいた”だけなのじゃよ」
「お、思い込み……?な、何の話だそれ……?」
「ですから、ここにゆーさんの罠があったってことですよ。Eクラス戦で消費されていたと思って用意した立会人の先生の科目の一つに———実は金の腕輪を使えるほど点が残っていた科目があった、ただそれだけです」
「はぁ!?」

自分たちの説明に、全く納得いっていない平賀くん。まあ、“アレ”の存在があれば納得いかないのも無理はありませんが。

「そ、そんな筈ないだろ!?だ、だって……“アレ”の情報によれば間違いなく」
「アレって何のことかしら平賀?もしかして———ウチらのクラスに仕掛けられている“盗聴器”のことじゃないわよね?」
「えっ…………えっ!?ま、さかそれは……!?」
「そのまさか、です。盗聴盗撮のエキスパートのこーさんがいるのに、盗聴器が仕掛けられていることに気付かないわけないじゃないですか」

何でも教室に戻った瞬間一発で盗聴器が仕掛けられているとこーさんは気づいたとか。仕掛けられていた盗聴器は一学期の強化合宿の時のものと同じであったためか、Dクラスに———と言うか清水さんに仕掛けられたのだとこーさんが筆談で自分たちに教えてくれました。本来ならすぐにでも破壊か回収するべきでしょうが……

「そう。敢えて坂本は盗聴器に気付いていながらそれを残して、ウチらに関する嘘情報を盗聴器の前でペラペラと話したってこと。アンタらは【数学・英語W・英語R・物理・日本史・地学】が消費されているって盗聴器を通して聞いてたと思うけど、本当はEクラス戦で使ったのは【英語W・英語R・物理・日本史・地学】の5科目。数学はこの場の全員が無傷だったの。これも坂本の巧妙な罠ね」
「つまり……本当はEクラス戦で使っていない数学を……使ってしまったって俺らに勘違いさせたってこと……なのか……」
「ちなみにゆーさんはこうも予測していました。『ここまで用意周到に俺ら対策をしてくるDクラスは確実に倒せる科目で来るハズだから———造には英語で勝負を挑むハズ』だと」
「そして『姫路にはEクラス戦で数学の科目の点が戦死一歩手前、ほとんど残っていないという情報に踊らされた平賀たちなら、ほぼ間違いなく数学で勝負に来るだろう』とも雄二は言うておったの」

つくづくゆーさんが頼もしく、もし敵に回れば相当恐ろしいものだと実感できますね。平賀くんも予想だにしなかったでしょう。自分たちを有利に進めるハズの盗聴器が、逆に自分たちの首を絞めることになったんですからね。

「それでも納得いかない……どうして英語で俺たちのクラスの待機部隊が負けたんだ?罠を張られたにせよ少なくとも英語の科目はお前たち三人よりも待機部隊の方が点は高いはずなのに……」
「……んー、ちょっとした裏技ですかね。あ、ですがこれだけは流石に教えられませんからね。他のクラスにバレたら対策されかねませんし」
「うん、そうね。これは流石に秘密よ。出来ればAクラス戦に取っておくべきウチと月野の極秘の裏技だもんね」
「……と言うことは、まだ何か俺らが掴んでいない奥の手があったってことか……」

137時間目 ( No.276 )
日時: 2016/03/11 20:50
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

そう、Dクラスの待機部隊呼ばれた皆さんを相手に出来たのは、まだ明かせない島田さん(と一応自分)の裏技兼切り札のお陰。後のAクラス戦の一つの強い武器として秘密にしておきたかったとっておきなのですが……仕方ありませんね。Aクラスの皆さんにこのことがバレていないと祈りましょう。コレがなきゃ本当にDクラスの生徒さんに自分たち3人は倒されて、奇襲に失敗していたでしょうから。

「後はそちらの待機部隊さんを戦死させ、ヒデさんが西村せんせの声帯模写をすれば準備完了。召喚獣状態になってヒデさん・島田さんに自分の箒に掴まってもらい今度は自分の金の腕輪の能力【飛翔】を使って窓の外から平賀くんの後ろを取り、もしもの時を考えて他のDクラスの方々は姫路さんの取っておいた金の腕輪の能力を使って一掃———これが今回のDクラス戦の全貌ですかね」
「……くそっ、そう言うことか……俺も、まだまだ甘かった。悔しいが……完敗だよ」

ハァ、と大きくため息を吐き苦笑いをする平賀くん。その表情は悔しさは勿論あれど、何故だか清々しさをも見える表情です。

「クラス代表として言っちゃいけないことかもしれないが……ここまでやってダメだったなら、かえって清々しい気分だな。そっちの条件も甘んじて受けるよ。まあ、次に戦う時は今回のような慢心や研究不足は決してないと思ってくれFクラス」
「おおぅ、それは怖いですね……肝に銘じておきます。あ、そろそろゆーさんもここに来る頃ですかね」
「うむ、では戦後処理・今後の交渉は雄二と平賀に任せるとするかの。朝から動きっぱなしじゃしワシは少し休みたいぞい」
「よく考えたらお昼もまだよねウチら……うぅ、折角のアキのお弁当……食べるの遅れちゃったわね」
「でしたら戻ったらちょっと遅めの昼食兼今後の対策会議をしましょうか。ゆーさんが戻る前にお昼の準備を済ませておいてからね。それでは———平賀くん、試召戦争ありがとうございました!」

「「「ありがとうございました!」」」

「ああ、こちらこそありがとな。ここまで来たんだ……いずれ挑むであろうAクラス戦———必ず勝ってくれよ」

昨日の敵は今日の友……とはちょっと違いますが、戦場を離れれば同学年の生徒同士。同級生のそんな励ましの言葉を頂いて、Dクラスを後にします。…………ハプニングもありましたが、何とか本日の防衛戦はクリア。今日の事、今後の事に思いをはせつつも、今は走り回って栄養を欲している身体の要求を満たすべく他の皆さんと合流して遅めの昼食に向かいますかね。さてさて皆さん、D、Eクラス戦お疲れ様でした!












『……本当にFクラスならAクラスに勝てるかもしれないな。……まあ、“あのバカたち”さえちゃんとしていれば、の話だが。……これからどうなるのかわからんが、俺らDクラスに勝ったんだ。“色々と”頑張れよFクラス』


〜雄二戦後処理&交渉中 しばらくおまちください〜


———屋上———


「———まあ、とりあえずアレだ。お前たち6人よくこんな悪条件の中戦ってくれた。平賀・中林とも交渉成功したぞ。Aクラス戦の時には協力してくれるそうだ。それもこれもお前たちがよく働いてくれたお陰だな。礼を言わせてくれ、サンキューな」

波乱のD、Eクラス戦でしたが、被害も中々だったものの何とか乗り切り遅めの昼食会の始まり始まり。その前に代表であるゆーさんが自分たちに頭を下げてお礼を言います。

「頭を上げてくださいゆーさん。ゆーさんこそ、こんな状況でよくあんな奇策を思いついて実行してくれました。お陰で無事に乗り切れましたよ」
「そうそう。てか、雄二が素直に礼を言うなんて不気味だし気持ち悪いから頭上げてよ。調子狂っちゃうじゃないか」
「…………雄二らしくない」
「うむ、普段らしくもっとドンと構えておる方がお主らしいぞ」

そう言ってゆーさんに顔を上げるように頼む自分たち。お互いに頑張った結果、乗り切れたんですからね。ゆーさん一人が頭下げる必要ありませんもの。

「……ちっ、偶に素直に感謝したり褒めたりすればすぐこれか。ま、確かに俺らしくもねぇか。んじゃ湿っぽくなる前にメシでも食いながら反省会に入るとすっか」
「そうですね、明久君の手作りお弁当で回復しませんと♪」
「ウチもアキのお弁当今日も楽しみにしてたからね。じゃあ皆早速行くわよ。せーの、いただきます」

「「「「「「いただきます!」」」」」」

と言うわけで、手を合わせてようやくエネルギー補給に入ります。午前午後にあった戦争の緊張も解け少なくとも今日は攻め込まれない安心からか、皆さん幸せそうに召し上がっていますね。自分も今日のお弁当はメニュー的にはいつも通りのはずですが、ちょっぴりいつもより美味しく感じます。……空腹と疲労こそが最高の調味料ってところでしょうかね。

「早速反省会を始めるか。食いながらでいいから聞いてくれ」

ご自身もパクパクとご飯を食べながら、ゆーさんがいつの間にやら用意していた資料を片手に反省会を始めてくれます。

「今回のD、Eクラス戦。……まずこの場にいる俺も含めた7人の働きについては、褒めるのも癪だが上出来だった。特に特攻部隊の姫路たちは期待以上に良い働きをしてくれたと思っている。次はもっと無茶ぶり出来るってわかって軍師としては大助かりだぜ」
「け、結構今回無理してたので、これ以上の無茶は控えて頂けると嬉しいのですが……?」
「わ、私もさっきよりも頑張るのは難しいと思います……」
「雄二よ、お主は鬼か」
「もっと無茶ぶりするって……ウチらにどうしろって言うのよ坂本」
「謙遜すんなお前ら。必ずやれるって信じてるぜ」

そうニィッと不穏な笑みを見せるゆーさん。いや、本気で更に無茶ぶりされるのは無理があるのですが……ま、まあこう言っても不可能な作戦はしないとは思うので大丈夫だとは思います……多分。

「前言撤回。雄二はもう少し皆を労わるべきだね。具体的には土下座でもして“皆さん私、坂本雄二はもっと死ぬ気で頑張ります。頼りなくてブサイクで情けない代表ですがこれからもどうか付いてきてくださいお願いします”って言うくらいはしてくれないといけないよね」
「…………無償で霧島用グッズ作成に協力して貰わないと割に合わない」
「やかましい使い捨て装甲共。ちなみに明久とムッツリーニ、お前ら二人には今後も問答無用で今まで以上に無茶ぶりさせるから、せいぜい黙って俺の盾兼生贄になってろ」


ガスガスガスッ!×3


そして今朝と同じく仲良く喧嘩する3人。殴り合いながらお弁当を食べ、その上おかずの取り合いまでするなんてホント器用ですよねー。もはや日常茶飯事ですし、ツッコむ必要はないものと見なして皆さんで3人の喧嘩を観賞しつつお弁当を突っつきます。

「つーわけで、この場の全員はこれからもこの調子で頼む。勿論今日上手く行った結果に満足せず日々精進してほしい。Aクラス戦は今日以上に過酷なものになるのは目に見えているからな」
「翔子ちゃんたち、強いですからね。二学期に入ってより一層成績が上がったそうですし」
「そうね、この前も翔子“……こっちは準備万端、いつでも来て。私たちが勝ったら雄二を婿にする準備も万端だから。何ならAクラスで式挙げても良い”って言ってたもんね。Aクラスの内装を式場の様に改装もしてたっけ」
「…………じょ、上等じゃねえか翔子の奴。首洗って待ってろってんだ……」
「ゆーさん、足がめちゃくちゃ震えちゃってますが大丈夫ですか?」
「生まれたての小鹿みたいだね雄二。負けたら雄二が霧島さんに美味しく頂かれることは良くわかったよ」
「ち、ちげーし!?これは武者震いだからな!?」

霧島さん相当気合い入れてますね……勿論霧島さんだけでなく優姉さんや工藤さん、久保くんたちもとても強いですから、確かにここで慢心してはダメ。油断せずこれからも精進せねば。

137時間目 ( No.277 )
日時: 2016/03/11 20:51
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

「翔子のそんな戯言はともかくだ、当面の問題は……バカやらかした他のFクラス連中だな。まあ、今度余計な真似でもしたら唯じゃおかんと放課後にでも説教するが……ホント使えんなアイツら」
「ま、まあ久しぶりの試召戦争でしたし、感覚が掴めなかったのかもしれません……皆さん次は頑張ってくれると期待しましょう」
「見事に期待を裏切る未来しか見えんが……まあ次妙な事やったら本気でぶちのめすと公言しておいたからな。せめて壁としての機能を果たしてもらうさ」

ちなみに現在戦死してしまった皆さんはすべての科目を補充しておけとゆーさんに命じられ、罰も兼ねてお昼抜きで補充室にて補充を行っています。ここに来る前にちらっと補習室を見てみましたが、皆さん真剣に点数補充に専念していましたしきっと次は頑張ってくれるでしょう。

「で、こっからが最重要事項だ。今後の予定についてだが……この場にいる全員がかなり消費している現在の状況。この状況を利用して、恐らく……BかCクラス———いや、Bクラスはまだ大した動きはないからCクラスか。今日にでもCクラス代表の小山が宣戦布告してくると予想している。全員月曜にCクラス戦があると思っておけ」

「「「「「「え……?」」」」」」

と、アキさんから強奪したおかずを頬張りながら(ちなみにアキさんもアキさんでゆーさんのおかずを奪取しましたが)何気なくゆーさんがとんでもない爆弾発言を。げ、月曜にCクラス戦……?

「え、ちょっと待って雄二……さっき防衛戦が終わったばかりなのに月曜にCクラス戦……?ホントなの……?」
「おう、キツいがそうなるな。さっきな、ここに来る前に小山と会ったが、アイツ放課後Fクラスに話があると言ってきやがった。十中八九その時に宣戦布告に来るハズだな」

小山さんが……?あ、じゃあもしかしてこの前自分たちに今後の予定を聞きに来たのってまさか……!?

「まず月曜に仕掛けてくるのは間違いないだろう。つか奴らが仕掛けるにはこのタイミングしかない。他のバカやりやがったFクラス連中のせいで、連中も含めD、Eクラス戦で俺たちはこんなにも消耗しちまった。そこを見逃す小山じゃねぇだろ。俺だって逆の立場なら間違いなく攻め込むぞ」
「で、でも待ってよ雄二!?小山さんこの間はまだ宣戦布告しないって言って———」
「そう、明久の言う通り確かに奴は“まだ”宣戦布告はしないって言ってたな。だがな、“まだ”ってことはいずれ仕掛ける気って意味も含まれるだろうが。そもそもあいつは別に“俺たちFクラスに宣戦布告しない”とは言ってないぞ」
「ならば……つまり小山のヤツは」
「ああ。奴は待ってたんだよ、俺らが今日のD、Eクラス戦でこれだけ消費するのをな」
「なるほど……あの時は様子見してたんですね」

今更ながらいくらFクラスが脅威になるとはいえ、わざわざ様子見の為に予定を聞きに来る必要はないはずです。“まだ宣戦布告はしない”と説明することで自分たちを油断させるつもりだったのですかね……これはマズい。

「じゃが雄二よ、どうして月曜にCクラス戦と言い切れるのじゃ?」
「よく考えてみろ。普通は一つの戦争が終わったら、点数補充期間が設けられるだろ?」
「…………試召戦争の細かいルール。無いと困る」

ゆーさんの言っていることは今日の連戦のような宣戦布告を受けたこちらが補充しなくていいと宣言する特殊な場合を除き、普通の試召戦争では一つ戦争を終える度に点数を補充できる期間が設けられるという試召戦争のルールですね。このルールがなければどのクラスでも簡単にやられちゃいますし。

「だがな、ルール的に補充期間として設けられるのは一日。一日経てば補充が終了したと見なされ他クラスは宣戦布告OKになっちまう。で、間が悪いことに明日は土曜で、午前中授業だから午前中しか点数補充できないんだ。月曜にはルール通り補充に一日使ったと判断され他クラスは俺たちFクラスに宣戦布告可能となるわけだな。更に俺たちは前言った通り上位クラスに位置しているから下位クラスの宣戦布告を拒否することもできない。つまりはこんな厳しい状態だが下位クラスに位置しているCクラスの宣戦布告を受けざるを得ないってことだな」
「つまり結局普段の半分の時間しか補充できないってことですね……ひょっとしなくても小山さん、最初からそれを狙っていましたかね」
「その可能性は非常に高いな。良いタイミングで仕掛けてきやがるぜ……」

小山さんはあの小暮さんの後輩ですし、普段から鍛えられていますもんね。これから戦うのは小山さんだけでなく小山さんの陰にいる小暮さんってことになるわけですか……ああ、ヤバい。身震いしちゃいそうです自分……

「むぅ……ゆーさん、だったら今からでも自分たちも補充に行った方がいいのでは?」
「いや、今日はお前ら大分働いてくれたからな。今から補充に行ってもあまり時間がないし全員疲れもある、やってもロクに補充も出来んだろう。今日は休んで明日3科目くらいは補充してもらう」
「ですが坂本君。私たちは3科目以上消費してますしそれでは月曜には間に合いませんよ」
「そうね、あまり悠長なこと出来ないんじゃない?やっぱりウチらも今からでも補充を……」
「どうせ今ほんの少し補充してもたかが知れている。つーか下手すりゃ今より点数が減る恐れもあるだろう。疲れも出てきてる状態で補充するより今日しっかり休んで明日と月曜に全力で補充していく方がよっぽど良いさ」

ふむ、それも一理ありそうですね。今日はもう30分も時間無いですし、だったら少しでも体力を回復&温存して明日と月曜に備える方がかえって効率もいいかも。

「…………それだと月曜は主力が抜けたまま防衛戦になるがいいのか?」
「おう、だから月曜の作戦の肝は籠城戦・そして補充試験だな。明日具体的に説明する予定だが、姫路たち攻撃部隊4人は可及的速やかに明日3〜4科目程度、試召戦争中に残りの科目を補充してもらう。その間俺と明久、ムッツリーニに他のFクラスの連中でどこかの教室を使い籠城する」

籠城ですか……厳しい戦いになりそうですね。本来自分たちFクラスの戦闘の特徴は短期決戦型。爆発力がある分長期戦・持久戦は不向きのハズ。

「開始位置やそれぞれの役割については現在検討中だ。大体は決めているがCクラスの連中がどんな動きを見せるのかわからん以上そこは臨機応変にいくぞ」
「それはわかったよ。でも……Cクラス戦、今日以上に厳しい戦いになりそうだね」
「一学期はAクラスに敗北したとはいえ、もともとCクラスは成績も上位者揃いですからね。気を引き締めていかないとAクラス戦どころじゃなくなるかもしれません」

アキさんと自分の言葉に、全員ちょっぴり浮かない顔。と、そんな中我らが軍師のゆーさんはと言うと、そんなアキさんと自分に対して———

「おら、シャキッとしろやお前ら。何を弱腰になってやがる」


ビシッ!×2


「「痛っ!?」」


———デコピンをお見舞いします。ゆ、ゆーさん……?

「状況は悪いとはいえ、こうなることはそもそも予想済みだ。小山の奴が様子見に来ていた時から近いうちに攻め込まれるってことはわかってたしな。寧ろAクラス戦の前にCクラス戦を行いたかったからありがたいくらいだぜ」

あっちが攻めてこないなら、いっそこっちから宣戦布告してたくらいだぜ。とはゆーさんの言葉。ゆーさん曰くCクラスも勿論Aクラス戦の大事な駒だそうです。

「大体なお前ら———消費している?相手は今日の連中よりも格上?そんなもん関係あるか。あれを忘れたとは言わせねぇぞ」
「な、何のことだよ雄二」
「ゆーさん……?何を忘れたと……?」

自分たちのそんな疑問に、ゆーさんは立ち上がって答えてくれます。

「これから先戦う上で一番大事な事だろが。良いかお前ら、ウチのクラスは……俺たちFクラスは———」

そこまで言ってゆーさんは、自分たちを見渡しながらニィッと笑って自分たちを勇気づける頼もしいあの言葉を続けてくれます。

「———最強だろうが」

バカテスト集その⑨ ( No.278 )
日時: 2016/03/11 20:54
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

バカテスト 英語)
次の英文を読み、空欄に文脈に沿った英文を入れなさい

He is a very diligent student.
However, he submitted the answer sheet no Filling in oF the examination.
The classmates who had seen it said, ″     ″.


姫路瑞希の答え
『Why did he do such a thing?』

遠藤先生のコメント
そうですね。前の文章も含めて訳すと、『彼はとても勤勉な生徒です。しかしながら、彼はテストの解答用紙を無回答で提出しました。それを見たクラスメイトたちは「何故彼はそんなことをしたのだろう」と言いました』ということになります。


吉井明久の答え
『Yeah! Let's party!!』

遠藤先生のコメント
どうしてこの文脈で楽しげにパーティーを開くのか先生にはわかりません……


土屋康太の答え
『Oh……Let's party……』

遠藤先生のコメント
かと言って悲しげであれば良いというわけではありませんので。


月野造の答え
『What happen?』

遠藤先生のコメント
なるほど、造くんは“何が起きたの?”と書きたかったんですね。こういう場合は What happened? と書きます。また今回の文章では“どうかしたの?”と言う意味のWhat's the matter? と書く方が自然かもしれませんね。

何にせよ英語が苦手なのによく頑張りましたね♪ 今夜はLet's partyです♪

月野造の返答
そのパーティって……間違いなくコスプレパーティですよね!?絶対嫌ですよ!?




バカテスト 世界史)
四大悲劇と呼ばれるシェイクスビアの戯曲を全て挙げなさい


姫路瑞希・木下秀吉の答え
『①ハムレット ②リア王 ③オセロ ④マクベス』

教師のコメント
正解です。シェイクスビアの作品には他にも『ロミオとジュリエット』『ヴェニスの商人』などがありますが、四大悲劇と呼ばれるものはその四つになります。知名度で『ロミオとジュリエット』をくわえてしまいがちですが、間違えないで覚えましょう。


吉井明久の答え
『①ハムレット ②リア充 ③ロミオとジュリエット ④父の結婚生活』

教師のコメント
貴方のお父さんは家庭でどんな扱いを受けているのでしょうか。と言うか、よく見たらリア王じゃなくてリア充になっていませんか?

FFF団のコメント
確かに悲劇だな……と言うわけでリア充吉井は物理的に爆発させてやるから覚悟しておけ。


土屋康太の答え
『①財布の紛失 ②撮影失敗 ③決定的瞬間に目にゴミ ④ハードディスク大破』

教師のコメント
④は先生も泣くかもしれません。




バカテスト 世界史)
カースト制度においてその身分を四つに大別した場合、上から順に当てはまる身分の正しい名称をそれぞれ書きなさい


姫路瑞希・月野造の答え
①バラモン
②クシャトリア
③ヴァイシャ
④シュードラ

教師のコメント
正解です。翻訳すると上から順に『司祭』『王族・武士』『平民』『奴隷』となります。合わせて覚えておきましょう。


土屋康太の答え
①バラモンキング
②バラモンナイト
③バラモンベス
④バラモン

教師のコメント
バラモンだけでも覚えていたのでよしとします。


吉井明久の答え
①バラモン(母)
②バラモン(姉)
③バラモン(その他)
④バラモン(弟)
⑤バラモン(父)

教師のコメント
本当に貴方のお父さんはどんな扱いを受けているのですか


霧島翔子の答え
①バラモン  (お母さんとお義母さん)
②クシャトリア(お父さんとお義父さん)
③ヴァイシャ (私)
④シュードラ (旦那さま《ゆうじ》♪)

教師のコメント
やっぱり旦那さんが一番下何ですね。どの家庭も奥さんが強いのは真理でしょうか?

雄二の返答
その前に色々とツッコめよ教師!?




バカテスト 英語)
次の空欄に当てはまる英単語を記入しなさい

Bread is made from “   ”.

霧島翔子の答え
『Flour』

教師のコメント
正解です。これは『パンは   で出来ている』という文章になります。
"be made from ?"は"made A from B"の受動態となり、「AをBという材料から作る」という意味合いになります。なので、『パン焼き器』などでは、材料ではなく使用する道具となるので、不正解となります。注意しましょう。


吉井明久の答え
『happy white powder』

教師のコメント
幸せの白い粉。ダメ、絶対。


月野造の答え
『happy turn』

教師のコメント
そっちの白い粉は合法麻薬、一度食べれば病みつきですね。


姫路瑞希の答え
『Potassium carbonate』

教師のコメント
炭酸カリウムとは随分と難しい単語を知っていますね。こちらはガラスなどの原材料であり、パンの材料には適しません。姫路さんはBread(パン)とBead(ビーズ・数珠玉)を読み間違えてしまったのですね?白い粉状の物質という点では合っていますが、それでパンを作ると大変なことになってしまいますよ。

もっとも、そんなものでパンを焼く人なんているわけありませんが(笑)。

姫路瑞希の返答
え?

教師の返答
……ゑ?

殺人料理被害者の会一同の返答
…………もう勘弁してください(←土下座中)




バカテスト 国語)
次の文章を読み、問いに答えなさい

生真面目な性格をしている彼のことだから思い悩んでいるに違いない。
幸子はそう考えるといてもたってもいられず、彼の部屋の扉を叩いていた。
「平助さん。入りますよ」
返事も待たずに中に入る。すると、部屋の中では赤身(せきしん)で思い悩む平助の姿があった。
「“なんという格好をしているのですか”」
幸子の存在に気が付くことはなく、平助は考え事を続けていた。

“    ”の時の幸子の様子を答えなさい。


姫路瑞希の答え
『平助が服も着ないで考え事に没頭している姿を見て驚いている』

月野造の答え
『服も着ず返事も聞こえないほど考え事している平助の姿を見て驚くと同時に呆れかえっている』


教師のコメント
そうですね。“赤身”と書くと“あかみ”と読むことが多いですが、“せきしん”と読むこともあり、その場合の意味は“衣服をつけていないさま。裸”というものになります。なので、幸子は『平助の服を着ていない姿』に驚いたということになります。

また、“なんという格好を”という言葉からも月野君の書いた答えの通り呆れていると言う意味も含まれるでしょうね。


玉野美紀の答え
『折角スカートを穿いているのにフリルが少ないことに憤っている』

教師のコメント
先生は今予想だにしない解答に驚いています。

日高サクヤのコメント
やっぱスカートにフリルは必要だよなー?な、造♪

月野造のコメント
そこで自分に同意を求められても非常に困るのですが。


吉井明久の答え
『ネクタイが曲がっていたので呆れている』

教師のコメント
裸にネクタイの姿を見て気にするのはそこですか。

姫路瑞希・島田美波のコメント
…………ゴクッ

吉井明久のコメント
瑞希に美波?何でカメラ持って期待した目で僕を見ているのかな?




バカテスト 物理)
以下の問いに答えなさい

木の上にいる猿に向けて射手が同じ高さから銃を撃ったところ、発射を同時に猿の足下の枝が折れて猿が落下し始めた。この時、猿と弾丸はどうなるか。必要であれば以下の値を用いて説明しなさい。

猿と射手の距離をaとし、最初に猿がいた枝の高さをh、弾丸が猿のいた木に到達するまでの時間をt、その時の弾丸の高さをh(i)、その時の猿の高さをh(j)、弾丸の速度をv、重力加速度をgとする。尚、空気抵抗は存在しないものとする。


姫路瑞希・月野造の答え
h(i)=h−1/2gt2
h(j)=h−1/2gt2
よって、
h(i)=h(j)
『このことから、猿と弾丸の高さは常に一致するので、弾丸は猿に当たると言える』

教師のコメント
正解です。弾丸は速度が速く、重力の影響を受けないものと思われがちですが、実際は猿と同じ速度で地面に向かって落下しながら進んでいます。この場合、弾丸の高さh(i)と猿の高さh(j)は速度vに依存せず、重力加速度gと時間tのみが関係する値になります。

これは解答に用いない記号を含めた引っかけ問題だったのですが、さすがはFクラス最高成績者のお二人です。よくできました。


坂本雄二の答え
『球が胸部に直撃し彼岸花が咲く。それにしてもあの先輩は無事だったのだろうか? 事故とは言え悪いことしちまったな』

教師のコメント
召喚野球大会では姫路さんが(色んな意味で)大活躍だったそうですね。夏川君は日高先生の治療を受けて何の後遺症も残っていないそうなので安心してください。


吉井明久の答え
h(i)t=(i)ta(i)!!
『猿は銃で撃たれると痛がる』

教師のコメント
猿でなくとも痛いかと。そもそも痛いと言うレベルを超えていると思いますが。


須川亮の答え
『猿がかわいそうなので吉井や坂本やムッツリーニを撃つべき』

教師のコメント
その前にクラスメイトを撃とうとしないでください。

文月レポート腕輪編その② ( No.279 )
日時: 2016/03/11 20:55
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

文月学園レポート:特別仕様の腕輪について〜白金・黒金の腕輪追加機能補足〜


白金の腕輪(代理召喚型)所有者:月野 造
起動キー:『起動(アウェイクン)』 終了キー:『解除(キャンセル)』

毎度おなじみ教師の立会無しに召喚フィールドを形成することが可能な造所有の白金の腕輪(代理召喚型)。この腕輪は起動キーである起動(アウェイクン)というキーワードと共に条件付けを行うことでいくつかのパターンに分けられる。

〜三つのパターンについて〜
パターン1:『起動(アウェイクン)のみ』
起動キーである起動(アウェイクン)だけしか唱えなかった場合は、原作同様科目がランダムで選ばれフィールドが形成される。余程の事がない限りこのパターンが使われることは無く、せいぜい急いで干渉させてフィールドを消滅させたい時に使われるくらい。
例「起動(アウェイクン)!」

パターン2:『起動(アウェイクン)+科目名』 
最も多く使われるパターン。腕輪所有者(造)を中心とした召喚フィールドが形成される。前回の説明通り原作と違いここでは科目指定可能。
例「起動(アウェイクン)科目、世界史!」

パターン3:『起動(アウェイクン)+単騎召喚(シングル)(+科目名)』
こちらは召喚フィールドを張るのではなく造の身体に纏わせるパターン。これによりフィールドの距離制限なしに召喚獣状態を維持できる。パターン2と同じく科目指定も勿論可能。
例「起動(アウェイクン)単騎召喚(シングル)科目、現代国語!」


〜パターン2とパターン3のメリットデメリット〜
フィールドその場に貼るパターン2。召喚フィールドの特性を自身に纏わせ単騎召喚できるパターン3。どちらにも所有者である造にとってのメリット・デメリットが存在する。

パターン2の場合
メリット :自身だけではなく他者も召喚獣が召喚出来る
デメリット:当然のことながら召喚フィールド内でしか召喚獣状態を維持できず、所有者である造が戦死した場合フィールドは消えてしまう

パターン3の場合
メリット :移動制限なく召喚獣状態を維持できる
デメリット:フィールドが造に纏われている為に他者が召喚獣を召喚出来ない

以上の理由で主に試召戦争中や仲間の応援が必要な時はパターン2を、移動・単体行動する時はパターン3に切り替えるなどして造は使い分けている。




白金の腕輪(同時召喚型)所有者:吉井 明久
起動キー:『二重召喚(ダブル)』 終了キー:『解除(キャンセル)』

もう一体召喚獣を呼び出すことが可能な同時召喚型の白金の腕輪。原作とほとんど設定の変更はなかったが———前回も書いた通り実は明久も知らされていない隠された機能が一つ存在する。それが『多重召喚(マルチ)』である。

〜多重召喚(マルチ)について〜
所有者である明久が取った点数を二分して同時召喚を行う二重召喚(ダブル)に対して、こちらは所有者である明久の取った点数を1点にする代わりに、取った点数分召喚獣を増やす。例えば明久がある科目で100点取った場合、100体の召喚獣が召喚されることになる。……無論その100体全てが点数1点であり、観察処分者である明久の場合は勿論その100体全てにフィードバック付き。

二重召喚でさえかなりの集中力が必要なため、当然のことながらこれをまともに扱うのは学園トップクラスの召喚技術を持っている明久でさえほぼ不可能。学園長曰く現段階では試召戦争等に使う価値はほぼ無い残念機能だとか。ただし一括で単純な命令ならば行えるため、上手く利用すればあるいは……?




黒金の腕輪(召喚制御型)所有者:坂本 雄二
設定キー:『設定(セット)』 起動キー:『再設定(リセット)』

オリジナルの腕輪。『設定(セット)』で腕輪にその場の状態を覚えさせて、『再設定(リセット)』で腕輪に覚え込ませた状況にフィールドを戻す機能を持つ。例えるなら『設定(セット)』がコピー。『再設定(リセット)』がペーストのような感じ。ちなみに特殊フィールドの特性や効果を覚え込ませて通常のフィールドを一時的に特殊フィールドに変更することも可能。

召喚フィールドを貼り直さない限り、一つのフィールドに一度だけしか使えない特性上この黒金の腕輪単体ではあまり活躍は出来ないものの、上記の造と明久の腕輪と組み合わせることで非常に強力な腕輪となる。

前回説明したようにこの機能はあくまで副産物。本来は『場の安定』を促すための腕輪。召喚獣の暴走制御や特殊フィールドを通常の状態に解除したい場合は『再設定(リセット)』とだけ唱えればよい。

138時間目 ( No.280 )
日時: 2016/03/11 20:59
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

造Side


「———と言うわけで、我々CクラスはFクラスに対して試召戦争を申し込みます」

試召戦争解禁直後二クラスから宣戦布告を受けた自分たち。トラブルはあったもののゆーさんの策と皆さんの頑張りでD,Eクラス戦を何とか乗り切ったその放課後に、ゆーさんの予想通り今度はCクラス代表小山さんから宣戦布告を受けました。

「ハイエナみたいなことをして悪いとは思うけど、こんな絶好のチャンスは見逃せないから。別に不戦協定を結んでいたわけでもないし、文句は言わないでね坂本君にFクラスの皆さん」
「そりゃそうだ。つか、ここで攻めないでいつ攻めてくるんだって話だからな。俺だって逆の立場ならそうする」

今は自分たちが一応上位クラスにあたるので、Cクラスの宣戦布告は基本的に断れません。本音を言うとせめてあと一日補充期間が欲しい所ではありますが、文句を言っても仕方ありませんからね。ゆーさんの策に委ねましょう。

「でしょうね。何にせよ納得してくれて嬉しいわ。それじゃあ月曜日の……9時45分から試召戦争といきましょう」
「……?何だ、随分妙な時間から始めるんだな小山」
「そう?準備とかは勿論、遅刻してくる子たちがいるかもしれないしこの時間がちょうどいいかなって思ってたんだけど……ダメかしら?Fクラスとしてはもっと早いほうが良いの?それとも遅いほうが良いの?」
「……ふむ、まあそっちに合わせてやるさ。他に条件はあるのか?」
「うーん……ああ、そうだったわ。試召戦争って普通は自分たちのクラスをスタート地点にして開始するものでしょ?それじゃああまり面白くないし、今回は試召戦争開始前にどこにいても良いようにしない?」
「ほう、そりゃ面白い。いいぜ、試召戦争が開始したらどこに代表がいるのかを公開するっていうあのルールを守るなら乗った」

こうしてゆーさんと小山さんによってとんとん拍子に話が付けられます。決戦は月曜日の9時45分から、補充期間は明日の半日のみ。D、Eクラス以上に手強いCクラス相手……今日以上に気合いを入れていかねばね。

「———じゃあ、そんな感じでお願いね。……悪いけどここのクラス設備、絶対に頂くから覚悟しててねFクラスの皆さん」
「そら恐ろしいな。まあ肝に銘じつつ返り討ちにしてやるから安心しろCクラス」

そう言って無事(?)宣戦布告の処理を終え、Cクラス代表小山さんと使者の皆さんが自身の教室へと戻っていきました。

「さて、と言うわけで予想通り月曜にまた防衛戦となったわけだ。相手は今日の二クラスより更に成績的な意味でも悪知恵的な意味でも上位の相手だな。一学期にAクラスに負けたとはいえ、Cクラスも強敵であることは忘れるなよ」

Cクラスの皆さんが戻っていったことを確認し、更に念には念を入れDクラス戦のように盗聴器などが仕掛けられていないのをこーさんが再度確認して作戦会議の開始となります。

「さっき説明した通り、明日は全員で点数が低い科目中心に3〜4科目補充してもらう。で、問題の月曜日だが……今日の特攻部隊の姫路・造・島田・秀吉の4人は約2時間で残った回復しきれていない科目を補充だ」
「ふむ、今日とはまた違った時間との戦いじゃな」
「補充は必須。ですが補充に気にとられて時間をかけすぎると籠城戦に響く……バランスが難しいですね。なるべく迅速に補充して戦線復帰しますので、それまでは頑張ってください皆さん」
「私も頑張ってすぐに解いて戻りますね」
「急ぐつもりだけど、ウチらが戻るまで絶対にやられないでよね」
「大丈夫だよ、瑞希に美波。皆こそ大変だと思うけど頑張って」
「…………安心して補充しろ造に秀吉」

自分を含めた補充組の4人は明日と月曜にどの教科をどの程度回復するのか、どのくらい時間をかけられるのかが勝負の分かれ目になりそうですね。今日のうちに試験の復習ついでに少し考えておきますか。

「悪いな、頼んだぞ4人とも。で、その他の連中で籠城戦を行う。恐らく俺らの苦手な長期戦にならざるを得ないだろう。ちなみに今回は試召戦争開始前に準備OKの特別ルールを設けたからな、Cクラスの動向を見ながら補充室や籠城場所を選んでいくつもりだ。と言うわけで各々の配置等は明日と本番の月曜に詳しく説明する。全員死ぬ気で———いや死んでも戦い抜くこと。特に今日無様な結果しか出さなかった連中、お前たち次はないと思えよ」

『おうよっ!わかってるぜ、俺も次は無いって思ってる!Cクラス戦楽しみだな坂本!めちゃくちゃ待ってたんだぜこの時を!』
『安心しろ坂本!今日まで存分にやれなかった分、めいいっぱいやってやるよ!』
『点数補充も十分やったし、心置きなく討ち取りに行くからな!』

…………?な、何だか今朝やお昼に比べると皆さん随分やる気満々みたいです。まあ、Eクラス戦で不完全燃焼した分、頑張りたいと思っているのでしょうかね。

「ちっ……調子いいなお前ら。まあ、ちゃんと補充はしていたようだから今回は大目に見る。つーか、説教しようとした矢先に全員過去最高の点数取りやがって……やればできるのに何で今の今までやらねーんだよお前たちは……」

こーさんに貰った資料によると、今日の反省からか戦死した皆さんは補充試験で今までにないほど点数を取ってくれたとか。今朝と比べても気合い十分のようですし、うんうん。頼もしい限りですね。

「さて、俺から言うことは今日は次で最後だ。正直かなり辛い戦いになるだろう。だが全員気合いで乗り切れ。Cクラス戦さえ無事に済めば次こそ悲願だったAクラス攻略に入る。そう一学期に果たせなかった悲願———奴らがふんぞり返って座っている椅子もシステムディスクもクラス設備も奪い取り、Fクラスが最強であることを証明してやる。その下準備のCクラス戦……全力で叩き潰すぞっ!」

『『『おおぉおおおおおおおおおおお!!!』』』

ゆーさんの宣誓と共に湧き上がる歓声がFクラスを揺るがします。これだけやる気があるならきっとCクラス戦も大丈夫だって信じられます。さて……情報通りですと恐らくこれが防衛戦最後の戦い。ちょっぴり自分たちが戦況的に不利ではありますが、策略と気合いと根性で絶対に勝って見せましょうCクラス!












『———なんてな。無事に乗り切れば?笑わせてくれるな全く』
『次こそ悲願のAクラス戦?……バカめ、次なんて貴様らには無いんだよ坂本・吉井・ムッツリーニ』
『ふんぞり返ってるのは誰だ……?キサマらだ異端者共。月曜は覚悟しておけよ』
『……やれやれ、ほんっとこいつ等バカばかりね……すみません先輩。悪いわね坂本君たちも……でも、言ったわよね。“こんな絶好のチャンスは見逃せないから”って』


〜そして迎える運命の月曜日〜

138時間目 ( No.281 )
日時: 2016/03/11 21:00
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

———Fクラス———


土曜日に半日ながらいくつかの科目を回復して、迎えた月曜Cクラス戦。早めに教室に着いて今日補充予定の科目を復習するためノートと教科書をパラパラ捲っていると———しばらく経つと我らが軍師ゆーさんが神妙な顔で資料を片手に登校してきました。

「……わからん」
「おはようですゆーさん。どうしました?」
「ん?おう、おはようさん造。相変わらず早いな。———ちょうど良い、これを見てほしい……今ムッツリーニにCクラスの今日の配置情報を貰ったんだが」
「配置情報……?あ、そう言えばCクラスの動向を見ながら補充室や籠城場所を考えるって言ってましたね。えっと、どれどれ———んん?」

その手にしていた資料を自分にも見せてくれるゆーさん。そこには文月学園の校内案内が描かれており、Cクラスの現在の戦力の配置図が追加で書き込まれていますが……何これ?

「……どう思う。これ妙だろ」
「……妙ですね。もしかしてこーさんが盗聴器とか使って仕入れた特別な情報何ですか?」
「いいや、誰にでも調べられる情報だとムッツリーニは言っていた。その証拠にさっき様子を見てみたがこの通りにCクラスは配置していやがった。だからこそ……わからん」

Cクラスの戦力配置図を見て首をかしげる自分とゆーさん。いざと言う時に代表が逃げやすい新校舎一階の実習室にCクラスの本陣&補充室を設けているのは、まあわかります。ですが……わからないのはその次から。一年生の教室がある2階新校舎の廊下には古典の竹中先生を待機させ、古典の科目が得意な生徒を配置。二年生の教室のある3階新校舎の廊下には保健体育の大島先生を待機させて、保健体育の科目が得意な生徒を配置しています。え?それの何が妙かって?それはですね———

「確かに今回は試召戦争開始前にどこにいても良いようにと、俺はCクラスと特別ルールを設定したが……わざわざこんな見え見えの対策してくれって言いたげな配置は一体何だ……?」
「こんなに朝早くからわざわざ担当の先生まで待機させ、しかもその担当の先生の科目が得意な生徒を配置させるなんて……小山さんにしては分かりやす過ぎですね。いかにも私たちは2階では古典で、3階では保健体育で勝負しますよって宣言しているようなものですよね……と言うことは———」

「「———十中八九何かしらの罠……」」

どう見ても罠ですよねこれ……誰がどう見ても罠、見え見えの罠。……どうなっているのでしょうねこれ。

「見え見えのわっかりやすい罠ってことは、本命の罠は別に隠してある可能性が非常に高いなこりゃ。いや高いと言うか、絶対何かあると思ってまず間違いない……と思うんだが」
「そうでしょうね……ですが……うーん」

ゆーさんの仰る通り、絶対何か別の罠を張っていると考えて間違いないですが……罠があるだろうからって無視できない配置ですねこりゃ。

「今回の作戦の肝は籠城戦だからな……ぶっちゃけ今は罠を気にしててもどうしようも無いんだよな……」
「ですよね……今の段階ではCクラスの皆さんにどんな意図があるのかわかりませんし無視もできませんから……目に見える配置の対策だけでもしておくべきではないでしょうか?」
「結局そうなるんだよな……まあ、うだうだと悩んでもしゃーない。後手に回りかねんが奴らに合わせて籠城場所と補充室、及び各兵の配置をするとすっか。ちょうどほぼ全員揃ったみたいだしな」

そうゆーさんが教室内を見まわして自分に言います。つられて見てみると———

『ふぁ……おはよー、眠いね』
『…………同感』
『む、明久に島田に姫路か。おはようじゃ』
『うん、おはよう皆。ほらアキはしっかりしなさい。夜にちゃんと寝ないからよ。って、あららまた寝ぐせが……ふふっ♪押さえておいてあげる』
『明久君、ネクタイも曲がっちゃってますよ。じっとしててくださいね———はい、出来ました♪』
『う、うん……ありがと二人とも。な、何か照れるね』

———いつものメンバーが仲良く集まっていますね。教室内もほぼ全員Fクラスのクラスメイトの皆さんも集合しているようです。時間も時間ですし、そろそろ良い頃合いですかね。

「ではゆーさん。そろそろ行きますか」
「おうよ。よっし、お前ら作戦説明(ブリーフィング)を始めるぞ!」

もう一度だけ教室内を見回してから、皆さんに聞こえるよう大きな声を上げ立ち上がり教卓の前に歩み出るゆーさん。

「まずは各人員の配置から説明する。Cクラスの連中が新校舎1階に本陣と補充室を置いたが……俺たちは本陣を旧校舎4階の文化部部室の一室に、補充室を旧校舎1階の空いている教室に置く」
「その変な配置って、何の意味があるの雄二?」
「まず本陣を旧校舎4階のに置くのは敵本陣及び補充室からなるべく離れた場所にして出来る限り時間稼ぎをしたいからだな。籠城戦は姫路や造たちの補充の為のもの。時間を出来る限り稼いで補充の時間に当ててもらい、終わったら総攻撃をかけるつもりだ」
「ふむ、ならば補充室を旧校舎1階に置くのはどういう意図じゃ?」
「補充が終わった姫路や造たちの移動に都合が良さげと判断したからだ。Cクラスの防衛が手薄ならそのまま一気に新校舎のCクラス本陣に殴り込みに行けるし、俺たちがヤバイなら駆け上がってCクラスにバックアタックを仕掛けられるしな」

と言うわけで、まずは本陣と補充室の配置が決まりましたね。次に問題のCクラスが何か企んでいるであろう2階3階をどのように配置するかですが……

「さて、Cクラスの連中が妙な配置をしている2階3階について作戦を伝える。まず3階の保健体育で待機していやがる連中をどう相手にするかだが———ここは当然ムッツリーニを中心とした保健体育で点が取れている部隊を空き部屋にでも待機させておこう。奴らが何をたくらんでいるか知らんが……ムッツリーニがいるにも拘らず保健体育で相手しようなどとバカな考えを起こしたCクラスを後悔させてやれ」
「…………任された」

まあ、3階はこーさん待機で安定でしょう。保健体育限定ではありますが教師以上に凄まじい点数を取っているこーさん相手には生半可な罠は通用しないでしょうし。

「一番の問題は2階の古典で待機している連中を誰に当てさせるかだが……まいったな。古典で点が取れているのは姫路・造・秀吉・俺くらいか……俺が行くわけにもいかんし、3人は補充する必要があるから部隊長は任せられんし……」
「雄二、ならばその役ワシがやろう」
「え、ヒデさん?」

困った表情をしているゆーさんの前に、頼もしい声でヒデさんが手を挙げてくれます。

「秀吉がか?いや、だがお前は補充組で……」
「ですよね。大丈夫ですかヒデさん?」
「安心せい雄二に造よ。ワシは補充に関しては昨日の段階で大体終えておる。姫路や造のように多くの補充が必要であったわけではないからの」
「そうね。坂本、実言うとウチももう1,2教科補充すれば万全とは言えないけど前線に立てると思うわ。ウチと木下って瑞希と月野の撃ち漏らした敵の相手をするだけだったじゃない。だから補充も昨日大体終わったしそんなに必要ないのよ」

なるほど、確かに前回のD・Eクラス戦は全体攻撃を連発して万遍なく点数を消費してしまっている自分と姫路さんとは違い、純粋な召喚獣の戦闘で戦ったヒデさんと島田さんは大きく点数を消費しているわけではなかったですっけ。これは嬉しい計算違いですね。

「ふむ、なら悪いが秀吉。予定変更してお前は古典の部隊長として、2階で古典が多少点の取れている部隊を率いて待機しておいてくれ。全員潰せとは言わんが、一人一人確実に倒して数を減らしてほしい」
「頼みました、頑張ってくださいねヒデさん」
「うむ心得た。任せるのじゃ雄二に造よ」
「それと島田。お前は補充が済んだと判断したらすぐに4階まで上がって籠城戦に加わってほしい。Cクラスの連中は一気に攻め込んでくるだろうし、数も多いからな。一人でもCクラスの連中に対抗できる奴が防衛に加わってもらいたい」
「オッケー、出来るだけ急いで補充してそっちに合流ね」

ヒデさんはここ最近現代国語や古典で点数を伸ばしていますからね。古典の部隊長としてしっかり頑張ってくれるでしょう。島田さんも特に数学はBクラス上位陣並みの戦力があります。防衛に回ってくれるならとても心強いですね。

138時間目 ( No.282 )
日時: 2016/03/11 21:01
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

「島田が早い段階で戻ってこれるなら大分気が楽だな。さて、それで肝心の防衛の主体となるのは……明久お前だ」
「ん?僕なんだ」
「ああ、Cクラスの連中は開幕と同時に俺らの本陣に押し寄せてくる。姫路と造が補充している間は対抗しようとしたところで残念ながら勝ち目はない。だからこその籠城戦だ。戦闘区域を狭い出入口に絞って消費を抑えながら時間を稼ぐ。出入り口が一つしかない文化部部室を本陣に選んだのもそのためだな」
「ふーん?……ん?待った雄二、もしかして僕の役割って」
「そうだ、お前の役目はCクラスの連中をあしらい時間を稼ぐとこだな。多人数を相手にして被弾を最小限に抑えられるのはお前くらいなもんだからな。とりあえず島田が戻ってくるまで何とか耐え抜け」
「……それ、結局いつもの使い捨て装甲板作戦じゃないの?」
「何か問題でもあるのか?」

ゆーさんはそう軽く言いますが、信頼しているからこそですね。アキさんはこの学園の中でもトップ3に入るほど召喚獣の扱いが上手です。二重召喚の腕輪も相まって一度防御や時間稼ぎに徹すれば誰もアキさんには敵わないでしょう。期待してますねアキさん。

「そして最後に姫路と造。お前たちは全教科の回復を優先してくれ。言わずもがな二人とも攻撃の要だ。さっきも言ったが補充が終わった段階でCクラスの防衛が手薄ならそのまま一気に新校舎のCクラス本陣に殴り込みに行け。俺たちがヤバそうと判断したら悪いが加勢に来てくれ。一応どう動くべきか伝令を出すつもりではあるが、好機と判断したら迷わず各々最善手の行動を頼む」
「はいっ!任せてください!」
「了解ですよゆーさん」

今回共に行動する予定の姫路さん。ちらりと彼女を見ると強い意志の光を感じます。きっとゆーさんたちが期待している以上に活躍してくれるでしょう。自分も彼女を見習って頑張らねば。

「よし、それじゃあ全員持ち場についてくれ。Cクラス戦———絶対勝つっ!」

そうゆーさんは全員に告げて作戦説明を終えます。そのゆーさんの台詞と共に持ち場に付き始める皆さん。Cクラス戦まで多少の時間があるとはいえ、のんびりもしていられません。自分も急いで持ち場につかなければ。

「ではまずは補充に行きましょうか姫路さん、島田さん」
「そうですね。あ、その前に補充室の確保と補充試験の監督兼採点の先生も呼んでおかないといけませんね」
「そう言われればそうだったわね。じゃあ先に職員室に行って事情を説明しに行きましょう」

と言うわけで、姫路さんたちの言う通りまずは職員室に行くことに。良い教室や話が分かる先生を確保できると良いのですがね。






『……じゃあお前ら、手筈通りに』
『……了解です。合図と共に行動開始します』
『……全員健闘を祈る、行くぞ』


———旧校舎1階———


三人で事情を説明すると、補充試験の監督兼採点として手の空いていた福原先生が快く引き受けてくれました。ただ補充室の場所は———

「———すみませんね皆さん。今日は生徒たちが他の場所を使うとかでここしか空いている場所がなくて」
「いえいえ。大丈夫ですよ福原先生」
「お時間を取らせちゃってすみません先生」
「ウチらなるべく早めに終わらせますね」
「あ、いえ気にしないでください。……正直今日は暇でしたし」

先生の説明通り他の場所が空いていないとかで、唯一空き部屋だった生徒指導室に案内された自分たち三人。窓もなくちょっぴり狭いのは寂しいですが、すぐ補充も終わるでしょうし気にしていられませんよね。先生に続いて、自分たち三人も生活指導室に入ります。時間的には早いですが、試召戦争が始まる前までは持ってきたノートを読み直して復習して少しでも点を取れるようにしませんとねー……なんて、頭の中でそんなことを考えていた次の瞬間———


ガララっ……バンっ! ガチャンっ!


「「「…………えっ?」」」

———突然自分たちの背後の扉が激しい音と共に閉ざされて、まるで外からカギをかけられたような音が鳴り響いた時……今回の事件の火蓋が切られてしまいました……


———同時刻:旧校舎3階———


康太Side


「…………雄二からの預かりもの?」
『そうそう、これなんだが』
『何でもムッツリーニに是非読んで貰いたい資料だとか』
「…………わかった」

Cクラス戦の準備の最中、横溝から何かの資料を受け取る俺。資料か……このタイミングの資料言うことはCクラス戦攻略のための資料だろうな。そう考え。何の警戒もなくその資料を開くと———

「…………(ブハッ)!?」

———とてつもない、過激な……ちょっと工藤似の女優の写真集が俺の目に写るとともに、俺の鼻から大量の血が流れ出ていってしまった……


———同時刻:旧校舎2階———


秀吉Side


「な、何じゃお主らは!?何をする気じゃ!?」

もうすぐCクラスとの試召戦争だと言うのに、待機しておった旧校舎の廊下で数人のクラスメイトに取り囲まれ状態になってしまったワシ。何をやっておるのじゃこやつらは!?

『こ、怖がらなくていいよ秀吉ィ……!』
『チョーット閉じ込めるだけだからネー、イタクないからネー!』
『あ、あくまで拘束するだけ!ちょっと胸とか尻とか触っちゃうかもしれないけど拘束するだけだから!』

そう言って手をワキワキとさせながら、何故か興奮気味に気色の悪い表情でワシに迫るこやつら。ええぃ、一体何がどうなって……!?


———同時刻:旧校舎4階———


明久Side


『おいおい吉井、お前バカだな。手に何かくっついてるぞ』
『坂本、お前もだ。何だそれは』

もう少ししたらCクラスとの試召戦争が始まるって時に、突然僕と雄二にそんなことを言うクラスメイト達。ん?手?何か付いてるっけ?

「え、嘘?どこに?」
「付いてねえぞ、んなもん」

そう言われて雄二と二人自分の手に目を落とすと———


ガチャッ!×2


「「…………は?」」

…………何だか知らないけど、確かに付いてた。いや、正確に言うとたった今付けられた。

「って、ちょっと!?手錠……!?しかもワイヤーで雄二と繋がれて……何コレ!?」
「お、お前たち何していやがる!?そろそろ戦争の時間なのに遊んでいる場合じゃ———」

何故だか僕らの手首には、妙に頑丈そうな金属の輪っかが嵌められている。しかも同じく頑丈そうなワイヤーを通じて、僕の右手首と雄二の左手首を繋がれているときた。よりにもよってこんなブサイクと繋がれるなんてまっぴら御免だし試召戦争ももう始まってしまう、雄二と二人で抗議しようとクラスメイトの方を見てみると……えっ?













『『『そう……ここからが戦争の時間……遊びは終わりだバカ者共が……』』』

バールにナイフに釘バット。メリケンサックにスタンガン。その他諸々装備して、ガチで戦争準備万端な異端審問会(クラスメイト)の殺意と憎しみに満ちた姿がそこにはあった。

「「…………何ィ!?」」

『『『さあ……“Fクラスの変”の始まりだ異端者共よ……!』』』

139時間目 ( No.283 )
日時: 2016/03/11 21:04
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

———旧校舎1階:生活指導室———


造Side


「あ、あの……?皆さんどうしてこんなことを……?」
「そ、そうよ!?アンタら何やってんのよ!?」
「もうすぐCクラス戦ですけど……あの、遊んでいる暇はないと思うのですが……?」

Cクラス戦まであと数十分、そんな中補充試験室(今回は生活指導室)で待機をしようとした矢先閉じ込められてしまった自分と姫路さんと島田さん(+福原先生)。閉じ込めた相手はと言うと……まさかの彼ら。

『遊び……?いやいや、違うんだよ造ちゃん、それに姫路に島田。我々は決して遊んでなどいない』
『我々には崇高な使命があるのだよ……悪いとは思うが我々の使命の為、キミたちには少しの間そこにいてもらう』
『何、すぐに終わるさ。終わり次第すぐに解放すると約束しよう。我々の———“Fクラスの変”が終わりさえすれば……!』

「「「Fクラスの変……!?」」」

扉に外から鍵をかけられ、その唯一の窓付き扉から見えるのはどこから持ってきたのか、机や椅子やぎっしり中身の詰まった段ボールに更には古びたロッカーやハードル鉄アレイなどを積み上げて誰も入れないようにしながらよくわからないことを口に出している———自分たちFクラスのクラスメイト達の姿。な、何をやっているのですかコレ……!?

と、もうほとんど周りの様子が見えなくなるほどバリケードを作り満足したのか、ゆっくりと近づく一人のクラスメイトの姿が。

『手荒な真似をしてすまない諸君。だが諸君らに下手に動かれては困るのでね、事が済むまではそこで大人しくしていてもらう』

「え、えっと福村くん……?あの、一体コレは……?」
「Fクラスの変って何のことですか……?」
「バカをやってないで開けなさいよ!Cクラス戦もうすぐでしょ!?」

そんなことを言うのは自分たちのクラスメイト、2-F所属の福村幸平くん。そんな福村くんに意味がわからずまくしたてるように尋ねる自分たち三人。その自分たちを意に介さず福村くんはこう続けます。

『Fクラスの変が何か、か……これは須川会長の意思であり我々の悲願である。それに比べたらCクラス戦、Aクラス戦など児戯に等しいものだな』

「いえ、ですからそれはどういうモノなのですか……?Fクラスの変だなんて、まるで本能寺の変のようなネーミング———」

ふと何故かそんな例えを思いついて、福村くんに尋ねると……何だか物凄い形相になる福村くん。大きく息を吸い込んで———

『造ちゃん、良い読みだ。そう、Fクラスの変それは———須川会長が宣誓した全リア充共を滅する宣言を叶えるため、手始めに我がクラスの3名の異端者である吉井・坂本・ムッツリーニをFクラス内部から亡き者とする計画であるっ!!!』

『『『異端者共は———抹殺じゃああああああああああああああ!!!』』』

「「「…………は、い?」」」

更にワケのわからない宣言を校舎中に響き渡りそうなくらいの大声でする福村くんたち。りあ、じゅう……撲滅……?それに……アキさんたちを亡き者に……?え、えっ!?何言ってるんですか皆さんは!?

『まずは異端者筆頭吉井明久。この世界一のバカはそこにいる姫路瑞希並びに島田美波、更には綺麗なお姉さんや愛らしい小学生と同棲生活を送っているそうじゃないか———こんな横暴、神や閻魔が許しても俺たち異端審問会が許さん……火あぶり・鞭打ち・拷問だけじゃあ生温い、徹底的に痛めつけ輪廻すら絶たせなければならない』

何だか真顔でとんでもないことを言っている福村くん。これにはアキさん大好き二人組が必死になって抗議します。

「ち、違いますっ!この前言いましたけど、私たちのは同棲ではなくてですね!?」
「ウチらの両親がストライキに巻き込まれて、安全のためにアキの家に泊まらせてもらってるってちゃんと説明したでしょ!?」

その抗議に静かに首を振る福村くん。周りのクラスメイトたちもわかっていないなと言いたげに彼に続いて首を振ります。

『違う、違うのだよ……そう言う問題じゃないのだよ姫路に島田よ。良く考えてみてくれ……あの世界一のバカが美少女たちと同じ屋根の下で生活するんだぞ……?』

「?そ、それが一体どうしたんです———」

『そんなん———羨ましいんじゃボケェ!?どんな理由があろうとも納得いくわけないだろうが畜生めえええええええええええええ!!!それに、だ!忘れたとは言わせんぞ今朝の会話をっ!』

そう言って手に持っていたボイスレコーダーを怒りで手が震えながらも再生ボタンを押す福村くん。そこから聞こえてきたのは———

『ほらアキはしっかりしなさい。夜にちゃんと寝ないからよ。って、あららまた寝ぐせが……ふふっ♪押さえておいてあげる』
『明久君、ネクタイも曲がっちゃってますよ。じっとしててくださいね———はい、出来ました♪』
『う、うん……ありがと二人とも。な、何か照れるね』

「「「っ!?」」」

———今朝のアキさん・島田さん・姫路さんのとても微笑ましい初々しい、例えるなら新婚さんたちのようなあまーい会話。そ、そう言えばそんな会話あったような無かったような……その再生を聞き終わるとボイスレコーダーを床に叩きつけ般若の如き形相で粉砕する福村くん。こ、これはマズい……

『ぜぇ、ぜぇ……コホン。な?諸君らもわかっただろう?———吉井ィ!キサマなーにが“照れるね”だゴラァ!!?見せつけてんじゃねーぞバカのくせによぉ!?彼女無しの俺らに当てつけてんのかクソがぁああああああああああああああ!!!』

『『『羨ま死刑じゃ吉井イイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!』』』

福村くんを筆頭に先ほど以上に割れんばかりの悲鳴に近い絶叫と共に叫び狂うクラスメイト達。中には言葉すら失い暴走しつつあるクラスメイトの姿も。

『坂本、ムッツリーニも同罪だっ!坂本は霧島と同棲予定でありあろうことか婚姻予定もあるそうじゃないかっ!?裸ワイシャツで共に寝た、(おでこに)キスをしたとの情報も入っている……ッ!それにムッツリーニも工藤とキスまでした上に愛妻弁当まで作ってもらっているほど仲良く付き合っているとの噂になっていやがる……ッ!?両名事実でなくても噂が流れるくらい仲の良い証拠であり、事実であるなら1000回ブチ殺しても気が済むわけないわぁあああああああああああ!!!!』

『『『ブチコロ!ブチコロ!!ブチコロォ!!!』』』

どこから取り出したのか鉄パイプや木刀をもって壁をガンガン叩いて興奮している皆さん。いつも以上に世紀末に見えてしまうのは絶対に気のせいじゃないハズ。

「あの、君たち待ちなさい」
「っ!福原先生……!」

と、流石に見かねた自分たちと共に閉じ込められた補充試験監督兼採点役の福原先生が、皆さんに説教するために前に出てきてくれます。よ、よし……流石に先生に怒られるくらいなら皆さんこんなことは止めてくれるハズ。

「冗談であれ何であれ、学校内でそのような危険なことをされるのは一人の教師として見過ごせな———」

『『『あぁん!?ただの教師が俺たちに何の用だゴラァ!!!』』』

「———何でもありません。続きをどうぞ」
「先生っ!?そこはちゃんと叱るべきだと思いますよ!?」

こんな恐ろしい剣幕で声を荒げられたら仕方ないとは思いますが、どうやら福原先生では止められませんねこれ……西村先生か大島先生あたりじゃないと無理かも。

「で、ですが何でこんなタイミングで……し、試召戦争は良いのですか!?負けちゃったらクラス設備のランクが下がっちゃいますよ!?」

先生ですら止められないとは言え、このままでは本当にアキさんたちが危ないです……ボーっとしているわけにもいきません。必死に話題をアキさんたちから試召戦争へ向けようとしますが、皆さん聞く耳持たない様子でこう返します。

『別にいいのだよ造ちゃん……奴らを地獄に送れるならそれでナァ……!それにこのタイミングだからこそ、だ!打倒Aクラスとのたまっている坂本達はこれで“逃げられなくなった”のだからな……!“彼女”に従った甲斐があったものだ……!』

「……は?逃げられなくなる……彼女……?…………っ!まさか……!?」

“逃げられなくなる”“彼女”そして今の状況……自分の頭の中にある仮説が浮かび上がってしまいます。ま、まさかこれって……今日戦う“あの人”の作戦なんじゃ……!?そんなことを思いついてしまった自分や困惑している姫路さん・島田さんをよそに、福村くんは背を向けて最後にこう言い放ちます。

『と言うわけで、名残惜しいが諸君らとのおしゃべりもここまでだ。我々は今すぐ須川会長たちと合流し異端者どもを処刑しなければならない……この崇高な計画を邪魔するであろう諸君らは、一時的に監禁させてもらったワケだ。姫路、島田……君たちもある意味当事者だ。そこで反省して吉井の事は忘れることだな。そして巻き込んでしまった造ちゃんは———後でお菓子あげるから大人しく待っておくんだ。お兄さんとの約束だぞ』

139時間目 ( No.284 )
日時: 2016/03/11 21:05
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

その言葉を最後に福村くんは踵を返して去っていきます。そしてそのままダメ押しにさっきまで彼が立っていた場所にもバリケードを張り完全に出られなくなってしまいました……

「やめてください!お願いです……明久君に酷い事しないでください……!」
「アンタたち……!アキに何かあったらタダじゃ済まないんだからね……!」

そんな二人の悲痛な叫びも空しく、アキさんたちを滅するべく階段を上がっていく福村くんたち。やられた……ふと、この前のアキさんの家でのゆーさんが話していた事を思い出します。

『———これもあまり楽観的に考えられない問題かもな』

『今朝の出来事を思い出してみろ。明久の同棲が判明した途端、FFF団が大暴れしただろが』

『いくらストが終わるまでとは言え、一つ屋根の下こんな頭悪くて甲斐性無しのバカとクラスの数少ない女子が一緒に暮らすんだぞ、普段ちょっと女子と話しただけで審問会開く連中がこの事実を見過ごせると思うか?クラス内の士気に影響がないわけないだろが』

『下手しなくても長引けばアウトだな』

———確かに、ゆーさんの仰る通りストライキが長引いてアキさんたちの同棲生活も長引けば、皆さんのモチベーション的な意味で良くないとはわかっていました。わかってはいましたが……見通しが甘かった……!彼らの嫉妬心を甘く見てはいけなかったのですね。アキさんたちの同棲が始まってから、すぐにでも対応すべき問題だったなんて……!

「ど、どうしましょう美波ちゃん、月野君……このままじゃ明久君たちが……!」
「くっ……ここ生活指導室だから生徒が逃げ出さないように出入口がこの扉だけなのよね……今頃アキたちは……」
「落ち着いて二人とも。こうなれば仕方ありません。今すぐどこか脱出できる場所がないか探しましょう」

マズい、これは本当にアキさんたちが危ないです。殺気に満ち溢れた彼らの話しぶりを察するにアレは本気も本気でした。このまま放っておけばアキさんたちの命が———とは言え鍵だけでなくバリケードまでも張られたこの状況でどうすべきか。

島田さんの仰る通りこの場所は窓すらないため外へ脱出も出来ません。おまけにとても強固な作りの部屋ですし壁を壊そうとしてもちょっとやそっとじゃ壊れないでしょう。唯一の出入り口が封じ込まれた以上何か他の脱出方法を考えないと……

「どこかに……どこか……外に通じる場所さえあればアキさんたちを助けに行けますのに……」

必死に三人(+先生)で突破口を探します。扉も使えず窓も無し、ですが何か……何か残る手段が必ずあるはず。必ず———

「…………あっ!」


———旧校舎:4階———


明久Side


防衛戦であるD,Eクラスとの試召戦争も何とか乗り切り、今日が防衛戦の山場であるとされるCクラス戦。そんな重要な戦いがあと少しで始まるにもかかわらず。

『死ねええええええええ!吉井いいいいいいいいいいいいいいい!』
『クタバレ坂本おおおおおおおおおおおお!』
『大人しくFクラスの変の制裁を受けやがれや邪教徒らめがあああああああ!』

『『『地獄に墜ちろや異端者共があああああああああああああああああ!!!』』』

「「危なっ!?」」

仲間であるクラスメイト達が“Fクラスの変”なんて意味がわからない事を呟きながら、全員敵意と殺意むき出しで僕と雄二に襲い掛かってきた。

「テメェら全員落ち着きやがれ!もう時間がねぇだろが!もうちょいでCクラスが攻めてくるんだぞ!?こんなところで負けたら、もう次はないかもしれねぇんだぞ!?」

攻撃を回避しながら怒鳴る勢いでクラスメイトと言う名の暴徒に説得を試みる雄二。

『おうよっ!わかってるぜ、俺も“貴様らに”次は無いって思ってる!Cクラス戦楽しみにしてたんだぜ異端者共よ!めちゃくちゃ待ってたんだぜこの時を!』
『安心しろ坂本!今日まで存分に“殺れ”なかった分、めいいっぱい“殺って”やるよ!』
『点数補充も十分やったし、心置きなく討ち取りに行くからな!———“坂本、吉井、ムッツリーニの三人を”ナァ……!』

が、雄二の説得も虚しく、彼らが攻撃の手を緩めることはない様子だ。FFF団を率いている須川君たち曰く、この暴動の原因はまさかの僕と瑞希と美波(と葉月ちゃんと姉さん)の同棲と普段の僕らと女性陣の関係がどうしても憎くて憎くて仕方がなかったからだとか。……ぎゃ、逆の立場だったら確かに僕もそっちに付いたかもしれないけど……同棲は元々ストが原因であって僕の問題じゃないのに……!

そんなことを考えていると、中距離用に持ってきたであろう鞭を手にしたFFF団が僕らの前に立つ。ええぃ、今はとにかくこの場を切り抜けない事には始まらない。よし、ここはひとまず———

「迎え撃つぞ明久!」
「逃げるよ雄二!」


ピィンッ


「「ふぐぁっ!?」」

真逆の行動を取ってしまった僕らを、中央でワイヤーがピィンッと引き留める。ふぐぅ……!?さっきFFF団に騙されて嵌められたワイヤー付の手錠が邪魔過ぎる……!いや、それ以上に邪魔なのは———

「バカ明久!普通こんなに囲まれちゃ戦うしかねぇだろが!」
「アホ雄二!普通こんなに囲まれちゃ逃げるほかないだろ!」

———このアホ雄二の存在だ。つくづく意見が合わないし、この手錠百害あって一利なしだよこん畜生……

『吉井ィ……姫路だけでなくこっそり狙ってた島田までもがお前に惚れてるだとォ……!同棲ラブラブ生活なんて儚き夢を実現しやがって……死んで詫びろやクソ野郎……!』
『坂本ォ……キサマ如きが霧島さんと言う頭脳明晰クールビューティを手籠めにしていると言う事実……生かしておくかァ!許してほしけりゃ責任取って腹切れゴラァ……!』

「「おわぁ!?」」

大上段から一切の躊躇なく振り下ろされた釘バットを、雄二と二人で横に転がりギリギリ回避する。あ、危なかった……雄二に気を取られててもうちょっとで殺られるところだった……

「あぁもう!雄二、少しは僕の動きに合わせなよ!?」
「喧しい!お前が俺に合わせれば済む話だろうが!?」

思わず敵の前でお互いの胸倉をつかみ合い喧嘩をしてしまう僕ら。ほんっと気が利かない奴だね雄二は……と、そんな仲良く(?)喧嘩する僕らに———


ゴオッ!


殺気!?咄嗟に受け身すら考えずに必死で横に飛ぶ僕と雄二。するとどうしたことか、さっきまで僕らがつかみ合っていた場所に設置してあったロッカーが“突き刺さっていた”……何で!?床にロッカーが突き刺さるって一体どういうことなの!?

「……明久、どうやらこんなことしている余裕は無さそうだぞ」
「……そのようだね。ここはホントに協力しないとヤバそうだ」

雄二と利害は一致した。とりあえずこの場は協力しないと命の保証がないね。気を取り直して雄二と立ち上がり構えを取る。すると、この場を仕切っているFFF団会長須川君と遅れてこの部屋に入ってきた福村君が僕らの前に出てきた。

139時間目 ( No.285 )
日時: 2016/03/11 21:05
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

『会長。無事に姫路と島田、そして造ちゃんの拘束に成功しました。3人は補充試験室に閉じ込めているのでしばらくは動けません。2階にいる秀吉も同士諸君がすぐに捕獲するでしょう』

っ!?瑞希と美波、それに造たちが……!?なんてことだ……ぶ、無事だろうか?ヘタレだし一応腐っていても無理やり女子に手を出す連中ではないけど今は暴走しているし心配だ……つーか君たち、瑞希と美波の二人に手を出したらぶちのめす。

『うむ、ご苦労であった福村副会長。ムッツリーニはどうだ?』
『ここに来る前に少し様子を見てきましたが、奴は用意したトラップに見事に引っかかり、現在3階で横溝隊長率いる同士諸君に袋叩きにされています。何もかも“計画通り”に事が進んでいますよ』

僕らの頼れるムッツリ忍者、ムッツリーニまでもやられているらしい。くぅ……これじゃ増援は期待できないか……

『それは素晴らしいな。作戦を授けてくれた“彼女”もさぞお喜びであろう。さて、ならばこそ———我々は思う存分そこの異端者共を処刑に専念できると言うわけだな……っ!』

そう言ってギロリと僕らを睨みつけ末恐ろしい形相で対峙する須川君。あの眼……間違いない、今ここで僕らを沈める気満々だ……

「お、落ち着いてよ須川君たち!?そりゃ確かに羨ましいことかもしれないけど、君たちが思っているようなことはそうそう起こらな———」
『“そうそう起こらない”なら起こる可能性もあるってことだろうが吉井ィ!キサマというバカだけは一万回殺しても気が済まねぇんだよ……!』
「Cクラス戦はどうする気だお前ら!?ここで勝たなきゃAクラス戦は———」
『そのAクラス戦もどうせ霧島にイイ恰好見せつけたいんだろうが坂本ォ!キサマの口車には乗らんぞ!代わりにキサマは拷問車に乗せてやるから安心して逝けやっ!』

駄目だ、これ何を言っても逆効果になりかねない。

『本当は吉井の同棲生活が始まった時点で、すぐにでも殺りたかったところだが……貴様らの無駄に高い逃走力は悔しいが驚異的だからな……怒りを堪え機会を待ち、牙を研いできた甲斐があったぜぇ……!
『“あのお方”に頼んで抹殺計画も立てられたからナァ……もう逃げられないぞ異端者共が……!』
『普段は授業と言う名のタイムリミットがあるが今日はそうはいかねぇ……試召戦争中は厄介な教師共の邪魔もされないからな……楽しい楽しい拷問を、皆で楽しもうぜバカ共が……!』

須川君たちだけでなく、周りのクラスメイトたちも僕らを取り囲んでくる。……それにしても不思議だ。この話しぶりだと、単純明快安直直情な連中が今日と言う今日まで僕らの処刑を我慢できたと言うことになる。堪え性のない連中が我慢してまでこんな凝ったことを考えることが出来るとも思えないし、“計画”とか“彼女”とか“あのお方”って一体……?

『『『死ねぇえええええええええええ!!!』』』

「「っ!」」

———なんて、考える暇も息を整える暇もなく連中の猛攻は続く。ちぃ、とにかく今はこの場からどうにか逃げ出すことを先に考えないと……

まず逃げ道らしい逃げ道は2つ。でも一つ目の逃げ道である唯一の扉は10人以上の連中が固めてあってどう考えてもそこからは逃げられない。一応もう一つの逃げ道である———僕らの後ろにある窓は幸運なことに塞がれてはいないんだけど……

「「(ここは……高すぎる……っ!?)」」

雄二とアイコンタクトをして、流石に無理だと判断。2階までならまだしも4階から何も道具無しで飛び降りるのはムッツリーニレベルじゃないと危険すぎる。つまりは……連中の言う通り僕らに逃げ道はないようだ……

『大人しく八つ裂きにされろやバカ共が!お前らと言う名の癌のせいで俺が女子にモテねぇんだよ!死んで詫びろや今すぐに!』
『俺らにも慈悲はある、素直に罪を認めるなら貴様らの人生を終わらせるに留めてやる。認めねぇなら輪廻すらここで絶ってやるぜクソ共がァ!』

「「勝手なことを———抜かすなぁ!!」」

『『ぐふっ……!?———やってくれたな異端者が……!楽に死ねると思うなよ……!』』

「「……ッ!やっぱ効いてないか」」

逃げ道がない以上、正面突破やこの場の全員を倒していくしか今のところ道がないだろうけど———それもまたかなり無理そうだ。さっきから繋がれているワイヤー付手錠が非常にうっとおしくて上手く回避や攻撃が出来ない上、いくら鳩尾に渾身の一撃を叩き込んでも嫉妬でリミッター解除された連中はものの数秒でゾンビの如く復活して襲って来てキリがない。

「ハァ……ハァ……くそっ」
「げ、限界……かも……」

体力がある内は何とか対処してたけど、数の差や武器の差で徐々に……でも確実に追い込まれる僕と雄二。逃げ道もなく助けも来ないのが確定しているこの状況。ホントに打つ手がもう……

『どうやらここまでのようだな。ではさらばだ異端者よ』
『あの世で自分たちの行いを反省するがいいさ』
『まあ安心しろ、すぐには殺さん……たっぷり拷問して自分から死にたくなるように追い詰めてやるよド畜生共め』

それはどっちがド畜生なんだ。くぅ……ダメなのか……万事休すなのか……?こんなところで終わるなんて……!

「(ボソッ)瑞希……美波……ゴメン」
「(ボソッ)翔子……ワリィ」

雄二と二人、一瞬。そう一瞬諦めかけたその時———


バンッ!


「「……え?」」

『『『……は?』』』

と、大きな音と共に扉が開き中に入ってくる小さな影が一つ。これには僕も雄二も異端審問会の連中でさえも思わずその方向に目を向けてしまう。そんな僕らの目に映ってきたのは———

「「っ!?造!?」」

『『『な、何ィ!?造ちゃんだと!?』』』

———連中が閉じ込めたと言っていたハズの、箒に跨り召喚獣化している造の姿が。驚いて造に向かって騒ぎ立てている僕らとは対照的に、造はただただ無言で手に何か持っている。いや、口では確かに無言とは言え、目はハッキリとこう告げていた。

《(お二人とも、目を瞑ってください!)》

———普段のアイコンタクト会話術!造の意図がすぐわかり、咄嗟に雄二と僕は造の言う通り目を瞑る。その次の瞬間、造は手にしていた何かを地面に叩きつけると……


———カッ!


『『『…………っ!!?ぎゃああああああああああああ!?め、目が、目がァああああああああああ!?』』』

連中が転がり込み苦しむ音が聞こえてくる。これは……ひょっとしてムッツリーニの閃光弾……!?

《……OK、もう大丈夫です!目を開けてくださいアキさんゆーさん!逃げましょう、掴まって!》
「よ、よし!助かるぜ造!」
「わかった!頼んだよ造!」

目を開けると箒に跨ったまま、僕らに両手を伸ばしてそのまま窓を目指す造の姿が。造の言いたいことをすぐさま察した僕らは召喚獣化している造の手に掴まって———

『お、おのれ……おのれェ!……吉井ィ、坂本ォ……貴様らァ……!』

———連中の悔しがる声を聞きながら、3人で造の金の腕輪の能力【飛翔】により、4階の窓から大空を駆け悠々と大脱走することになった。

140時間目 ( No.286 )
日時: 2016/03/11 21:08
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

『か、会長!どうするんですか!?逃げられましたよ!?』
『あと……あと一歩だったのに、畜生ォ!』
『あ、慌てるな!今すぐ“彼女”の下に行き次の作戦を教えてもらいに行くぞ!』


明久Side


Cクラス戦がもう少しで始まるって時に、“Fクラスの変”と言うワケのわからないことを言っていたFFF団に造反されリンチされかけた僕と雄二。そんな僕らを助けてくれたのは……連中に捕まったと言われていた僕らの頼れる友人にしてマスコットキャラの造だった。

《ここまで来れば……よし、解除(キャンセル)!》

追手や監視の気配がないことを確認し、体育倉庫の近くで僕らを降ろして召喚獣から元の身体に戻る造。

「ハァ……ハァ……た、助かったぜ造」
「ぜぇ……ぜぇ……あ、ありがとね造」

そうお礼を言いながら息を整える僕と雄二。ホントギリギリだった……あと少し造の救援が遅れていたらと思うとゾッとする。

「いいえ、無事で何よりです。追ってもいないようですし、お二人ともこちらへ」

もう一度誰もいないことを確認して、そのまま体育倉庫の中に入ろうとする造。———って、駄目だよ造!?

「って、待て造。こんな場所じゃダメだ。すぐに奴らに見つけられちまうぞ」
「そうだよ、気を付けないとすぐに袋の鼠だよ!?」

不用心に体育倉庫の中に入ろうとする造を二人で止める。普段から逃げることに特化している僕らだから言えるけど、一見安全そうに見える場所ほど一番危ない。連中もこういう場所を重点的に探し出してくるし、逃げ場のない場所に逃げ込むのは見つかったらゲームオーバーなのだから。

「……大丈夫です。何も言わず付いて来てください。時間もありませんので」
「……何か策があるんだな?」
「わ、わかったよ。とにかく急がないと皆そろそろ追って来るかもしれないもんね」

僕らのそんな懸念をよそに、自信に満ちた表情で中に入るように促す造。そんな造を信じて体育倉庫に3人で入ることに。扉を閉めて、そのまま造は一番奥にある古くて壊れかかっている重そうな跳び箱を“軽々と”横にスライドさせる。その下に敷いてあったマットを捲ると———

「「っ!?か、隠し扉!?」」

一体どんなカラクリか、そこには下に繋がる真新しい扉が現れた。そのまま造はその扉のロックを手慣れた手つきで解除して混乱している僕と雄二を降りるように促す。先に扉を開いて下に降りて、僕らが降り終ったのを確認すると、続いて造が扉をくぐって体育倉庫を元の状態に戻しながら降りてくる。

「ここです。さあアキさんゆーさん、どうぞ中へ」

造に続いて少し警戒しながら中に入るとそこには———

「おお!無事じゃったかお主ら!」
「…………よ、かっ……た……」

「「秀吉にムッツリーニ!?」」

———そこには真上の体育倉庫と同じくらいの空き部屋が広がっていて、驚いている僕らに駆け寄ってくる秀吉とソファーに寝かされている虫の息のムッツリーニの姿があった。


造Side


疲労困憊のアキさんゆーさんの二人に、非常用に取っておいた飲料水を渡すことに。色々聞きたいこともあるでしょうが、まずは落ち着いてもらわねばね。

「———プハッ……ありがと、生き返ったよ」
「サンキューな。さて、落ち着いてきたところで色々と聞きたい。造に秀吉、ここは一体何だ?」

早速状況分析に入ったゆーさんが自分とヒデさんにこの場のことについて尋ねます。まぁ、コレは当然の質問でしょうね。

「あはは……まあ、大体察して頂けると思うのですが」
「うむ、姉上や先生方から逃走できる用に作った、緊急避難用の部屋なのじゃよ。本来ならワシと造と蒼殿たちしか知られてはならぬ場所だったのじゃが」

元々は……もう使われることはないであろう学園長から頂いたちょっとした思い出のある召喚獣の練習場所だったこの部屋。それをサクヤさんにも内緒で夏休みの間に蒼兄さんたちに手伝って貰って改修した自分とヒデさんのオアシスです。まさかこんなことに使うことになろうとは思っていなかったですが……

「出入り口は今入ってきた場所を含めて5つ。蒼兄さん曰くどの出入り口もロックを解除せずに無理やり誰か侵入すればブザーが鳴るようになっているそうです」
「流石にカメラはないのじゃが、出入り口に音を拾えるムッツリーニや清水の持っておるような盗聴器も置いてある。周囲の様子も多少は分かるはずじゃ」
「こりゃすげぇ。是非とも今後は俺にも使わせてもらいたい良い部屋だな。部屋の事は分かった。で、それともう一つ聞きたいんだが———造に秀吉、それとムッツリーニ。お前たちどうやって逃げてきたんだ?」
「あ、それ僕も気になる。須川君たちに造や秀吉は捕まったって言われたし、ムッツリーニはリンチされてるって聞いてたんだけど……」

ああ、それですか。確かに不思議に思われるでしょうね。閉じ込めたはずの福村くんたちも驚いてましたし。

「ワシは造に助けられたクチじゃ。天井裏から降りてきて間一髪ワシを取り囲んでいた連中を吹き飛ばしてくれてのう」

「「……天井裏?」」

「あ、はい。皆さんご存知の通りここ文月学園は召喚システムを学園内全域で使用するために床や天井にケーブルが張り巡らされているんです。そこには召喚獣一体分くらいの隙間がありまして。ですから召喚獣化して補充試験室の天井から逃げ出すことが出来たんです。その後は———」


〜回想:秀吉の場合〜


「な、何じゃお主らは!?何をする気じゃ!?」

もうすぐCクラスとの試召戦争だと言うのに、待機しておった旧校舎の廊下で数人のクラスメイトに取り囲まれ状態になってしまったワシ。何をやっておるのじゃこやつらは!?

『こ、怖がらなくていいよ秀吉ィ……!』
『チョーット閉じ込めるだけだからネー、イタクないからネー!』
『あ、あくまで拘束するだけ!ちょっと胸とか尻とか触っちゃうかもしれないけど拘束するだけだから!』

そう言って手をワキワキとさせながら、何故か興奮気味に気色の悪い表情でワシに迫るこやつら。ええぃ、一体何がどうなって……!?必死に後退して距離を取るも、にじり寄ってくるこやつらに追い詰められ逃げ場がなくなってしまう。

『じゃ、じゃあ俺から行かせてもらうかんな!?』
『こ、拘束するんだし……ろ、ロープ使うんだな!?』
『ひ、秀吉の亀甲縛り……か、カメラ無いかカメラ!?』

鼻血を出しながら何やら意味がわからぬことをブツブツ言いつつ、ロープを持って追い詰めるこやつら。何やら良くわからぬが逃げる方法は……周りを見ると逃げ道は窓だけ……

「(む、無理じゃな……)」

これが柔らかい地面や生け垣がある場所ならともかく、明久や雄二たちのように2階の窓から下がコンクリートで固められている1階に飛び降りるような芸当は残念ながらワシには出来ぬ。とうとう壁を背にして後退することすらできなくなってしまうワシ。

『『『じゃ、じゃあ秀吉……イタダキマス!』』』

「っ……!」

そうして某怪盗三世のようなポーズでワシに向かってダイブしてくるクラスメイトの変態共。くっ……万事休すなのか……!?

《———そんなに縛るのがお好きなら、いっそ皆さんご自身の身体を縛ってみてはどうでしょうかね》
「……!?この声……!」

と、なすすべなくやられそうになるところで、頭上からそんな声がしたかと思うと、天井の板が勢いよく外れそこから降りてくる小さな影が一つ。

《ヒデさん、伏せて!……吹き飛べぇ!》


———ゴォッ!


『『『———うぉ!?な、何だコレ!?身体が動かな……っ!?』』』

言われた通り咄嗟にその場に伏せると、その小さな影から突風が巻き起こりダイブしてきた連中を吹き飛ばしその突風がそのまま連中を包み込み拘束する。これは———風の檻!?こ、この声……それにこの姿にこの能力……!もしや———

「お、お主……!」
《お待たせヒデさん!さぁ、彼らが縛られている間に行きましょう!》
「つ、造か!助かったぞい!」

140時間目 ( No.287 )
日時: 2016/03/11 21:08
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

〜回想:康太の場合〜


「…………雄二からの預かりもの?」
『そうそう、これなんだが』
『何でもムッツリーニに是非読んで貰いたい資料だとか』
「…………わかった」

Cクラス戦の準備の最中、横溝から何かの資料を受け取る俺。資料か……このタイミングの資料言うことはCクラス戦攻略のための資料だろうな。そう考え。何の警戒も無しにその資料を開くと———

「…………(ブハッ)!?」

———とてつもない、過激な……ちょっと工藤似の女優の写真集が俺の目に写るとともに、俺の鼻から大量の血が流れ出ていってしまった……

『かかったな阿呆が!』
『さあクタバレ異端者ムッツリーニ!』
『今死ね、すぐ死ね、骨すら残さんぞ……!』

俺がその場に倒れ伏せた瞬間、どこから取り出したのか武器を手に怒りの形相で俺に暴行を加える横溝率いるこいつ等……ぐっ……な、何がどうなっている……!?

「…………ゴホッ!?ど、どういう、つもり……だ」

致命傷だけは咄嗟にガードしつつ、暴行を受けながら意味不明な行動をとり始めたこいつ等にそう尋ねる。するとこいつ等は更に顔を歪ませてこう返してくる。

『どういうつもりだと!?ふざけんな!それはこっちが言いたいことだっ!』
『ムッツリーニ、キサマ忘れたとは言わせんぞ』
『普段は写真を提供してくれていたから大目に見ていたが、今回ばかりは唯じゃ済まさん!』

「…………なん……の、こと……だ」

『『『Aクラスの工藤とキサマの関係だゴラァ!!!』』』

「…………っ!」

……こ、こいつ等……嫉妬で暴走してるのか。よりにもよってCクラス戦前だと言うのに……

『聞けば夏休みに海で工藤とキスだの、他にも体育祭ではお弁当を作ってもらうだの……羨ましいんじゃこのムッツリスケベの犯罪者めっ!』
『どうせ汚い脅迫でもして付き合うことになったんだろうが……そんな横暴神が許しても我々FFF団が許さんわ畜生が!』
『キサマと、それから同棲生活なんて始めやがった吉井に坂本だけは生かして帰さん!“Fクラスの変”の革命の元、死ぬがよい異端者!』

まず……い……こいつ等本気だ……この話しぶりから察するに、今頃明久たちも殺られているのだろう……今すぐ離脱せねばヤバイが……あのトラップのせいで(鼻)血を流し過ぎた……力が出ない。回避すら碌に出来な……

『さぁ、これで仕舞いだムッツリーニ。さらばだ』
『まあ、いつものムッツリ商会の商品の提供だけは感謝していたぜ』
『その功績をたたえ、キサマのカメラ等はそのデータを含め大事に我々が使わせてもらうから安心して逝きたまえ』

そう言って止めを刺すべく釘バット金属バット鉄パイプ木刀に金棒など撲殺グッズを手にした面々。クソッ……ここまで……なのか……?く、どう……スマン……

『『『それじゃあ……あばよムッツリーニィイイイイイイイイイ!!!』』』

倒れている俺の周りを取り囲み、まるでスイカ割りでもするかのごとくFFF団がそれぞれの武器を振り上げたその瞬間———

《———させません!》

俺たちのいる空き部屋にそんな声が響き渡ったと同時に、何かの紙袋が放り投げられた。それに俺もそれから連中も一瞬注意が向かれる。


スパッ! バフッ!


『『『んな!?———ごほっごほっ!?』』』

その紙袋はどういうわけか空中でスパッと真っ二つになり、中から真っ白な粉のようなものが飛び出してきた。それは瞬く間に空き教室全体に舞散らかって、思い切り吸い込んだ連中は咳込んでいる。

『な、何だコレ!?け、けむり玉!?煙幕!?』
『クソッ!?ま、前が見えねぇ!?』
『ムッツリーニがやったのか!?や、奴は動けないはずだったのに!?』

連中は俺がやったと思っているようだが……勿論血を流し過ぎて指一本動かせない俺の仕業じゃない。一体誰がこんな……それに舞っているこれ、チョークの……粉……?

《ヒデさん、頼みます!》
「うむ、任せるのじゃ造!———ほれ、しっかりせいムッツリーニよ」

混乱する俺に肩を貸してくれるマスクと水泳用のゴーグルを付けた女生徒。———いいや、この声は……秀吉か!ありがたい……助かった……秀吉に連れ出されそのまま空き部屋をこっそり抜けると召喚獣と成っている造が空き部屋の扉を閉めて時間を稼いでくれる。そうか、造があの煙幕で助けてくれたのか……

《これで少しは時間が稼げるはず……ヒデさん!ヒデさんはこーさんを連れて“例の場所”へ!自分は4階のアキさんとゆーさんを助けに行きます!》
「心得た!待っておるからの!」

そう言って箒に跨り4階へと急ごうとする造。間違いなく……明久たちを助けに行く気だな……ならば……

「…………ま、まて……つく、る……」
《?ど、どうしましたこーさん?》
「…………これ、持って行け……閃光弾……地面に叩きつけて……使うもの……」
《っ!助かります!ありがとうですこーさん!》

さっきは血を流し過ぎて動けずに使えなかった手持ちの閃光弾を造に託す。ま、任せたぞ造……


〜回想終了〜

140時間目 ( No.288 )
日時: 2016/03/11 21:09
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

「———と、こんな感じで一階から近い順にヒデさん、こーさんを助けて、最後にアキさんたちをこーさんから貰った閃光弾を使って助けたってワケなんです」

「「なるほど」」

ちなみにこーさんを助ける時に使ったのは、隣の教室の溜まっていたチョークの粉と紙袋。ヒデさんのアイデアだったのですが、紙袋の中にチョークの粉を入れて空き部屋に放り込んでから空中にあるその紙袋を風の刃で切り裂いてチョークをまき散らしました。簡易的な煙幕のようなものですね。

「さて、大体状況がわかったところで———本題に入るぞ」

そう言って眉間に皺を寄せ、低い声をうならせるゆーさん。ええ、わかっています。時間もありませんし急いで策を練らねばね。

「あんのバカ共……こんなタイミングで裏切りやがって……!バカの癖に統制は一丁前にとれてやがったし……くそっ!」
「……やられたよね。妬みや嫉妬の怒りが最高峰に達してたのにいつもは直情的で考え無しな連中が統率のとれた良い動きしてたね」
「…………どう、やら……ずいぶん、案が……練られてる……」

アキさん・ゆーさん・こーさんの三人を亡き者にしようとしていたFクラスの皆さん。そのこと自体はいつもの———いえ、いつもので説明するのも可笑しな話ではありますが———いつものこと。ですがいつもと違うのはその一連の行動が全て計算されているということ。造反するタイミング・人員の配置・トラップや協力者の排除まで何から何まで計算されているようです。

「先を見越してアキさんたちに協力的な自分やヒデさん、姫路さんと島田さんの動きを封じてきましたからね。相当手強いですよコレは」
「あっ!?それで思い出した!?造、瑞希と美波は無事なの!?」

と、慌てて自分に詰め寄るアキさん。そうですよね、アキさんは二人が心配ですよね。

「無事ではあります……ですが、その。補充試験室である生活指導室に監督役の福原先生と一緒に監禁されています。鍵だけでなくバリケードまで張られている上周辺に見張りもいて正面からの救出は難しいですし……さっき言った通り逃げ道は天井裏くらいしか無い上召喚獣サイズで通るのがやっとですからそこも使えません。ですから救出は当分は無理かと……」
「そんな……!」
「……褒めるつもりはないが、上手いな。戦力にもなり俺らの味方でもある4人を封じ、且つ補充試験室を封じることにより、俺らに点数補充をさせないことが狙いか……」

ゆーさんが苦虫を噛み潰したような表情で分析します。そうですね、“彼女”はよく考えていますね……ホントにやられました……

「雄二、上手いって須川たちの策の事?」
「須川たちの策?いいや違うぞ明久。確かにこの暴動の切っ掛けも首謀者も須川たちだろう。だがな、ハッキリ言って奴らにこんな策を思いつくような知能は無い。考えも無しにこんなバカな事やらかす連中だぞ」

と、そう断言するゆーさん。それは流石に言いすぎだとは思いますが……ゆーさんの言いたいことは伝わってきます。

「つまりはゆーさん、それは———この須川くんたちの言う“Fクラスの変”の作戦の立案者、そして協力者がいるってことですね」
「流石に気づいていたようだな造。その通り、十中八九連中のバックに協力者がいるハズだ。そしてその協力者と言えば———」
「……“彼女”ですかね」
「……“ヤツ”だろうな」

「「「……彼女?……ヤツ?」」」












———Cクラス———

『———で?まあこうなるのは分かっていたけど失敗したってことかしら?』
『も、申し訳ない……で、ですが姫路や島田はちゃんと拘束できています!』
『あと少し!そうあと少しで奴らを殺れたんっスよ!?』
『すぐにでも奴らの首を持ってきますからね!』
『ハァ……ならさっさと次の作戦に移りなさいよ。もう向こうは動き出しているかもしれないのよ?』

『『『了解です“小山さん”!すぐさま行ってきます!』』』

『———やれやれね。先輩や坂本君たちも大変よね、こんなバカ共に暴れられちゃって……』
『代表、まだどんな手を使ったのか不明ですが、やはり危惧していた通り月野の仕業です。補充試験室を何かしらの手段で抜け出して、坂本達を連れてどこかへ逃げ出したとのこと』
『現在坂本・月野・吉井・土屋・木下の5名の行方は不明。探しましょうか?』
『まだ大丈夫よ。どうせあのバカたちが必死になって5人を探し出してくれるでしょう。こっちは体力を温存しておきましょう。それに———例え見つからなくても、“ルール上”そろそろ出ざるを得ないでしょうし』
『わかりました。では全Cクラス生徒にそう命じてきます』
『お願いね……さて。すみません月野先輩。こんな手を使うべきでないのは分かっていますが———今回は何としても勝たなきゃならないんです。勝たせて頂きますね……』

141時間目 ( No.289 )
日時: 2016/03/11 21:11
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

造Side


Fクラスのゆーさんたちに対する“Fクラスの変”と言う名の造反劇。このシナリオは恐らく第三者に描いてもらったものだと推測した自分とゆーさん。二人の意見が一致した、その第三者であり協力者でもある人の名前は———

「「「———協力者は、小山さん?」」」

「はい。まず彼女で間違いないかと」
「一体いつからFFF団と組んでいたのかはわからんが、この状況を見ればヤツが協力者で決まりだな」

———そう、本来今日の試召戦争の相手であるCクラスの代表、小山さんが協力者で間違いないでしょう。

「思えば先週のD,Eクラスとの防衛戦。その時のFクラスの皆さんのあの不可解な戦死。あれも小山さんの作戦だったのかもしれませんね。あの段階ですでにFクラスの皆さんと小山さんが手を組んでいたのかも……」
「ああ、こうなってくるとヤツがEクラス戦でわざと戦死するよう連中に指示した可能性が非常に高いな。全ては今日のこの状況を作り出すための策ってワケか……やってくれるぜ畜生め」
「でしょうね。それと……今になって朝の妙なCクラスの戦力配置の意図がわかってきましたね。あれって要するにアキさんゆーさんやこーさん、ヒデさんに自分たちをバラバラにすることが目的だったんですね」
「だな、露骨にムッツリーニや秀吉の得意分野で誘ってきたのは俺たちを分断させて協力して逃走させないようにしたかったんだろう」

戦争を仕掛けてきたタイミング、絶妙な時間設定、自分たちメンバーを上手く分断させたCクラスの生徒の配置位置。これらの要素を踏まえると小山さん以外に協力者は考えられないでしょう。

「……時間もそろそろ危険ですね。早くこの場を出ませんと。あと13分くらいでしょうか?」
「だな。ヤロウ……昨日の妙な時間設定を提示された時点で気づくべきだったぜ……小山の奴俺たちが須川たちから逃げられることを計算した上で、俺たちに態勢を整える暇を与えないような絶妙な時間で試召戦争開始させる気だったんだろうな」
「何?ま、待つのじゃ造に雄二よ。ここから出るじゃと?何故なのじゃ?」

折角の安全地帯なのにと、ヒデさんが自分とゆーさんに尋ねます。ああ、そうかこのルールはあまり知られていないんですっけ。

「いえ、それが……試召戦争のルールにですね、試召戦争中クラス代表はどこにいるのか位置を公開しなければならないと言うルールがありまして。一応一時間に一回10分間だけトイレ休憩等の理由を使って代表の場所を公開しなくてもいいって言うその補充ルールもありますが……結局10分経ったらまた次の一時間は代表の場所を公開する必要がありますし」
「え?そんなルールあったっけ?」
「知らんのも無理はないか。クラス代表にのみ課せられた試召戦争のルールの一つだからな。代表の居場所がわからんなら決着がつかんし、その間に他の連中が補充試験をやったりでもしたら勝負の行方が左右されちまうだろ。上手く隠れられちゃ勝負の方向性が変わってしまう故、普通は代表の居場所の明確化は試召戦争の必須条件だ。ただ……」
「今回はそのルール、完全に自分たちの足かせになってますね……」

思わずゆーさんとため息一つ。このルールが無ければこの場に留まれるのですがね……

「つまり試召戦争開始時にCクラスにゆーさんの位置が知られている必要があるってことですね。と言うわけで、少なくともゆーさんはそろそろここから出なければならないんです」
「小山はこう考えていたんだろう。試召戦争開始までに須川たちが俺たちを仕留められればそれで良し。処刑されて動けない俺に勝負を挑んで召喚に応じない俺は戦死となりCクラスの勝ち。たとえ逃げられようと態勢を整える暇なんか無くタイムアップで結局Cクラスの勝ち———ってな。現にもうすぐにでも出ないとCクラスとの試召戦争、俺らの負けが確定だ」
「げっ……ってことは手錠で雄二と繋がれている僕も出ざるを得ないってこと!?」
「そう……なりますね」

そうか……だからこそワイヤー付手錠を使ってゆーさんとアキさんを繋いだのですね。こうすれば二人は強制的に共に行動しなければならず、個々の動きに制限がかかってしまいます。仮にアキさんがクラス代表であるゆーさんを守るために召喚して、それで戦死でもしたらゆーさんまで補習室まで直行。そして補習室前で逃げられないゆーさんは皆さんに袋叩きに合ってしまう———と。

これも小山さんが須川くんたちに託した策なのでしょうね。小暮さんに鍛えられているだけあって、ホントに手強い相手ですね小山さん……

「実に腹立たしいがそうなるな。……おいムッツリーニ、これ外せねぇか?」
「…………道具が……ない、と……それに……今の俺……では……」
「そうか……とにかくムッツリーニ。お前は今は少しでも回復しとけ」
「…………すまん……少し、寝る……」

(主に鼻)血を流し過ぎてふらふらのこーさんが申し訳なさそうにそう言って、目を閉じて体力回復に専念します。多分これも彼女の策の一つでしょう。こーさんを行動不能にすることで、アキさんゆーさんの手錠の開錠を出来なくしたってことですか。ここも良く考えられていますね。

「……これすっごく言い辛いのですが……つまり現在の状況を整理するとこういうことですか」

敵はCクラスと自分たちを除いたFクラス男子。代表であるゆーさんがこの場に留まればルールにより自動的にCクラスに敗北。つまりゆーさんは出ざるを得ず手錠で繋がれているアキさんも仲良く表に出ることに。ちなみにこのワイヤー付手錠はFクラスの殺気だった皆さんの攻撃の回避をするのに邪魔すると言うありがた迷惑なおまけ付き。

まずはこの手錠を何とかしたいところ。この手錠を外す方法は二つあり、鍵を須川くんたちから奪うかこーさんに開錠してもらうかですね。ですが鍵は多分……須川くんたちの事です、恐らく捨てられている可能性大ですからここはこーさんに開錠してもらうしかありません。ですがそのこーさんは道具も無い上血が足らず随分弱っているので今は指一本動かせない……

そう言うわけで結局手錠で繋がれたままFクラスの皆さんから逃げなければならず、逃げきらなければ本当に殺されかねない状況になっているアキさんとゆーさん。例えFクラスの皆さんから逃げられても、忘れちゃいけないのは今日はCクラスとの試召戦争の日だと言うこと。Cクラスの皆さんとも戦わなければなりません。

しかし試召戦争においてとても重要な働きをするはずの補充試験室は、Fクラスの皆さんによって最大戦力の姫路さんと特攻隊長の島田さんごと封じ込まれて使用不可。ですから下手に点数を削られた場合でも補充が出来ずにまともに戦えないままという最悪のお手上げ状態———

141時間目 ( No.290 )
日時: 2016/03/11 21:12
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

「———と言うことですね。これ、結局どちらに転んでもCクラスの勝利と言う図式になってますね……」
「……最悪だよね。進むも引くも地獄だなんて」
「Aクラス戦を前に、ここにきて反乱とはの。天下統一を目前に光秀に本能寺の変で討たれた信長の気分じゃ。“Fクラスの変”とはよく言ったものじゃな」
「……クソッ!あと少し……あと少しだったのに……ヤロォ……っ!」
「……ゆーさん」

打倒Aクラスはゆーさんの悲願。いいえ、ゆーさんだけではありません。この場にいる全員が同じ気持ちのハズ。だと言うのにこんなところで諦めるなんて……では自分たちは何のためにここまで戦ってきたのですか……?

「……むぅ」

負けたくない、ここまで来たからには絶対に勝ちたい。こんなところで終れません。頭の中をフル回転、持てるカードと状況全てを使って、何とか切り抜ける方法を見つけなければ———っ!戦力・特技・人間関係・手持ちの道具にその他諸々。……戦えるのは誰か……自由に動けるのは、誰か……思考のピースを組み立てて、この状況を打破できる作戦をパズルのように組み立てます。何か……何か手はあるはず、何か……

「…………一つだけ、作戦を思いつきました。皆さん、聞いてくれますか?」

「「「……造?」」」

そして、一つの抜け道を。この難題を突破できるかもしれない自分が考え得る唯一の策を、思いついてしまいました。


〜造説明中〜


「———と、こんな感じですが……どうでしょう」

「「「却下」」」

説明が終わったその後に、開口一番却下されてしまう自分の作戦。ああ、やっぱりそうなっちゃいますよね……

「……そう言われると思いましたよ。それで?却下の理由は?」
「当たり前だ、無茶にも程がある。つーかお前の負担がデカ過ぎる」
「そうじゃな、いくらなんでもそれは無いのう」
「元を正せばあいつらは僕や雄二、ムッツリーニが狙いなんだよ!?それなのに造にだけそんな無理をさせられな———」


バンッ!


「「「っ!?」」」

……備え付けていた時計を見ると、もうほとんど時間がありません。バンッ!と机を叩いて皆さんを叱責します。

「……皆さんがそんな根性無しだとは思いませんでしたよ……っ!」
「何……?」
「勝たなきゃいけないんでしょう!?勝ちたいんでしょう!?……負けられないんでしょう!?……勝つ気が無いのならさっさと帰ってくださいよっ!自分は一人でも戦いますからね!?」
「つ、造……?」
「今日まで頑張ってきたことを無駄にするんですか!?諦められるんですか!?そうじゃないでしょう……っ!勝ちましょうよ、絶対。ここで立ち止まる自分たちじゃないでしょう?試召戦争、諦めるんですか?諦められるんですか?」

そう必死になって訴える自分。これまでの皆さんの頑張りを無にはさせませんっ!こんなところで躓くなんて面白くありませんもの!そんな自分の言葉に、アキさんとゆーさんは二人顔を見合わせて嘆息します。

「……そうだったな。悪かった造、俺としたことが弱気になっちまってた」
「ゴメン造、こんなところで諦める方が辛いってこと、忘れてたよ」
「いえ……すみません声を荒げてしまって。今回の作戦、アキさんやゆーさんだって辛いのにこんな無謀な作戦を立てて……」
「ナメんな造。こうなった以上俺も全力でやってやるよ。その計画、俺は乗った!」
「そだね、僕も逃げることに関しては誰にも負けない自信があるよ。僕も乗った!」

そう言って自分に笑顔を見せるお二人。……すみません。お二人とも大変でしょうが頑張って……!

「ヒデさん、ヒデさんはどうですか?やっぱり却下ですか?」

では残るはヒデさんの説得ですね。未だに何やら納得がいっていない顔のヒデさんにそう尋ねます。今回の作戦、ヒデさんに頑張ってもらわなければならないわけですし、何とか納得してもらわなきゃならないのですが……

「ハァ……何を言っておるのじゃ造よ。お主勘違いしておるようじゃがワシは初めから“お主の案”に関しては何も却下なぞしておらぬぞ。現状それが唯一の突破方法じゃろうからの」
「えっ!?」

と、溜息と吐きながらそう自分に言うヒデさん。え、ですがさっきは却下って……?

「ワシが却下と言ったのは、その内容についてじゃ。明久と雄二はともかくワシならば自由に動けるし共に戦えよう。なのに何故ワシを戦力に入れてくれぬのじゃ?」

そう不満げに尋ねるヒデさん。あっ……!?し、しまった慌ててて完全に肝心の“本当の作戦”を説明しそびれていた……!?

「お主、ワシでは力不足と言いたいのかの?確かにお主や明久たちに比べると戦闘技術も無ければ点も取れておらぬが、ワシだって———」
「す、すみませんヒデさん!?違う、違うんです!説明し忘れてたんです!今の作戦はあくまでも“この場を切り抜ける”為の作戦なんです!」
「……む?」
「例えですね、さっきの自分の作戦通りに事が進んでCクラスに勝てたとしても、今回の“根本的な問題”は一切解決できません。そうでしょう?」
「あー、確かにこのままじゃこれから先もこういう事が度々起こりうるだろうな」
「造が言いたいことって……あのバカ共をどうするかが問題ってことだよね」

その通り、本当に大切なのは目先のCクラス戦ではなく暴走している“Fクラス”を立て直すことです。

「だからこそ今から説明する“本当の作戦”は……ヒデさん。貴方に全てがかかっています」
「…………は?」
「断言しましょう、ヒデさん。今回自分やアキさん、ゆーさんやこーさん以上に作戦の要となるのは———ヒデさん、貴方です」
「……詳しく話を聞かせてもらおうかの」

141時間目 ( No.291 )
日時: 2016/03/11 21:13
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

———同時刻:補充試験室(生活指導室)———


瑞希Side


ガンッ!ガンッ!ガンッ!


「———ちぃ、開けなさいよバカ!ええぃ……こうなったら扉をバリケードごと破壊して……アキを虐めた奴らの関節も徹底的に破壊するしか……!」
「あ、あのぅ……島田さん。一応私の、先生の前ですしそう言う過激な発言をされると困るのですが……」

『ヒィ!?……だ、大丈夫だよなコレ!?壊されないよな!?』
『ね、念のためもうちょっとバリケード強化しておこう』
『し、島田ァ!そんな脅しをしようとも無駄だからな!』
『そうだ!我々は決して理不尽な暴力には屈しない!』

「アキたちを抹殺するって言っているアンタらに暴力がどうとか言われたくないわよ!?良いからさっさとここを開けなさいっ!」

あと数分でCクラスとの試召戦争の時間。それなのに扉には鍵がかけられて、外にはバリケードが張られてしまいました。何とか月野君だけは脱出できましたが……未だに補充試験室に閉じ込められたままの私と美波ちゃん(と補充試験監督役の福原先生)。とてもじゃありませんが試召戦争どころではありません。

……ですが、美波ちゃんが外の皆さんと話をしている中、私は脱出しようとしていた時の月野君の言葉を思い出していました。


〜回想中〜


《———良かった、ここならば!》
『どう、月野?天井裏からなら行けそう?』
《はい。ですがこの狭さ……やはり残念ながら召喚獣サイズでなければ通り抜け出来そうにありません。お二人の脱出は……》
『わ、私たちに構わずに行ってください!明久君たちをお願いします!』
『アキたちを頼んだわよ月野!』
《わかっていますっ!では———あ、そうだ……その前に。お二人とも!》

『『え?』』

《……なるべくは急ぎますが、このとんでもない状況です。お二人の救助には時間がかかるかもしれません。ですから———お二人にはお二人の、出来ることを頑張ってください!ではっ!》


〜回想終了〜


そう言って天井裏の何本ものケーブルがぎっしりと張り巡らされている隙間を召喚獣と成って必死に駆けて行った月野君。出来ることを頑張って……ですか。もし今のこの状況で私と美波ちゃんに出来ることがあるとしたらそれは———

「……じれったいわね。月野も戻ってこないし一体どうしたら……」
「———受けましょう、美波ちゃん」
「……えっ?な、何瑞希?受けるって何のこと?」

突然の私の発言に、ポカンとした表情で反応する美波ちゃん。

「決まっています、補充試験を受けましょう。月野君も言ってましたよね、私たちに今できることをやるべきです」
「補充試験を?でも何で……?」

これは私の唯の推測ですけど、このタイミングでのFクラスの皆さんの暴動から察するにこの補充試験室を私たちごと封じ込めて明久君たちに補充試験を行わせないようにしたCクラスの皆さんの作戦のはず。さっきの福村君の会話から考えて、Fクラスの皆さんと手を組んでいる可能性が非常に高いです。つまりCクラス戦の間はここが解放されない限り明久君たちは補充できないことになってしまいます。

……ですが逆に言えば、ここに閉じ込められた私たちは何の邪魔もされずに点数を補充できることにもなります。そうです、“明久君たちが解放してくれるまで”点数を補充し続けることが出来るんです……!

「ここで立ち止まっちゃダメだと思うんです。きっと明久君たちはまだ諦めてなんかいません。明久君たちは私たちの為に今まで一生懸命頑張ってAクラスに勝とうとしてくれました。私もそんな明久君たちに応えたいんですっ!」
「瑞希……アンタ……!」

そう大きな声で必死に訴える私。そんな私の頭をポンポンと、優しい笑顔で撫でる美波ちゃん。

「うん、そうね。その通りだわ瑞希。ウチらに出来ることはアキたちを信じてここから出た後———いいえ、この先のAクラス戦に繋がるように頑張ることよね」
「は、はい!」
「ありがと瑞希。ウチも落ち着いたわ。———先生!試召戦争は始まったらすぐに補充試験を受けさせてください!」
「へ?……あ、はい。わかりました。では机の上には筆記用具以外は出さずにそれ以外の物はしまって———」

私の言いたいことをちゃんとわかってくれた美波ちゃん。先生にそう促すと補充試験の為に席に着きます。私も美波ちゃんに続いて席に着くことに。

「それにしても……今の瑞希って———良いわね」
「へ?良いって……何がですか?」
「うん、良いわ瑞希。さっきのウチへの啖呵。カッコ良かったわ超良いわ!ウチ思わず瑞希にも惚れちゃうかと思ったわよ♪」

緊張を解すように美波ちゃんが爽やかに私に向かってそう言います———って!?

「ほ、惚れるって!?も、もう!?茶化さないで下さい美波ちゃん!」
「あら?ちょっと本気だったのに残念♪ま、そう肩に力を入れずに頑張りましょ瑞希」
「うぅ……カッコイイって言われたのは嬉しいのに、何だかちょっと複雑ですよ美波ちゃん……」
「———あ、あのぅ……確かに今更こんな説明はいらないとは思いますが、形式ですし先生の試験の説明はちゃんと聞いてくださいねー……」

そう先生に注意されて、頭を切り替えて補充試験の準備に取り掛かることに。……明久君、それに皆さん。私たちも私たちの戦いを頑張ります。ですから……どうか負けないで……!

142時間目 ( No.292 )
日時: 2016/03/11 21:15
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

造Side


「———そろそろ時間ですね」
「ああ、始まるな」
「いつもとは別の緊張感があるよね」

作戦は決まりました。あとは何とかこの無茶な作戦を実行に移すのみ。息をひそめつつ、隠し部屋から外へと出るタイミングを伺う自分とアキさんとゆーさんの三人。

「自分たちがC・Fクラスの皆さんを引きつけますので、ヒデさんは別の出口からお願いますね」
「出来る限り引きつけるが、見つからないように頼むぞ秀吉」
「殺気立ってるし野性的な勘も鋭くなっているぽいし気を付けてね秀吉」
「わかっておる。お主らも無理をせざるを得ないじゃろうが……健闘を祈っておるぞ」
「…………お前、たち……手持ち、これ……だけだ、が……持って……いけ……」

作戦の為、ヒデさんとは別行動。回復しきっていないこーさんはこの場で待機をすることになりました。

「ありがとうこーさん、困ったときは使わせていただきます。もう少し休んでいてくださいね。それとヒデさん、大変でしょうが後は色々と頼みます」
「任された。ではまた一時間後にの」
「はい……では行きましょうアキさんゆーさん!」

「「応っ!!」」


———キーン コーン カーン コーン……


チャイムが鳴ると同時に、Cクラス戦開始です。そのチャイムの音に合わせて勢いよく隠し部屋から飛び出す自分とアキさんとゆーさん。敵はCクラスと味方のハズのFクラス。とてもじゃありませんが状況は芳しくありません。ですが……ここにいる全員のやる気は十分です!さあ、かかってきなさい皆さんっ!











『———いたぞっ!奴らだ!全員で殺っちまえっ!武器はちゃんと持ったか!?』
『もちろんだ、叩きのめすぞ!この世のありとあらゆる苦痛を与えてやるんだ!図書館にあったこの世界の拷問についての本を参考にしてなぁ!』
『ソレいいアイデアネー、人類の思いつくありとあらゆる手段を用いてあの異端者クンたち殺っちゃおうネー!』

『『『ヒャッハーッ!!!殺せぇええええええええええええええええええ!!!』』』

「「「……………………これはやばい」」」

———ごめんなさい、嘘です。かかってこないでください。……こっちのやる気は十分でしたが、あちらの殺る気はそれ以上。外に出てみると修羅と化したクラスメイトの熱烈なお出迎えをされる自分たち三人。呪怨を放ちながらどす黒いオーラを漂わせ全速力で追いかけてくる様は下手なホラー映画よりも恐ろしいです。やだこれほんとこわい……

アキさんとゆーさんに向けられているはずなのに自分にまで伝わってくる冷たい殺気を背中で受けながら、とにかく追いつかれないように走りつつCクラスの皆さんを探すと———いたっ!先生を引き連れてゆーさんを討ち取るべく三人のCクラスの生徒さんが自分たちの前に立ちはだかります。さぁ……勝負です!

「見つけたわ!」
「坂本、覚悟!」
「先生っ!召喚フィールドをお願いしま———「させませんっ!起動(アウェイクン)科目:物理!」———えっ?」


キィイイイイイイイン! ボンッ!


《Fクラス 月野造 物理 278点》


《よしっ!ゆーさんお願いします!》
「任せろ!設定(セット)!———OKだぞ造!」
《ありがとうございますゆーさん!さて———Fクラス月野造!そちらのCクラスの3人に勝負を挑みますっ!》
「Cクラスの連中は任せた!じゃあ俺らはこいつら相手にするぞ明久!」
「わかってるって!さあこいFFF団っ!」

これで準備は完了ですね。さて、ではここで今回の自分、及びアキさんゆーさんの役割についてご説明しましょう。と言ってもそれは至ってシンプル。アキさんとゆーさんは手錠でお互いを繋がれて行動に制限がかけられ、こーさんは出血多量で輸血をしなければまともに動けず、姫路さんと島田さんは捕えられ補充試験室も使用不能。こんなまともに戦えない状況でCクラスとの試召戦争をどう乗り切るのか。———簡単です、自由に動ける自分が戦えばいいのです。

まずCクラスの皆さんが用意した先生にフィールドを張られる前に、自分の白金の腕輪で自分に有利なフィールドを展開。展開後はゆーさんの黒金の腕輪の設定(セット)を使えば準備完了となります。出会ったCクラスの生徒さんにゆーさんに勝負を挑まれるよりも早く、こちらが先に勝負を挑むただそれだけのこと。

こうすれば試召戦争のルールの一つ———召喚獣を喚びだしたにもかかわらず召喚を行わなかった場合は戦闘放棄とみなし、戦死者同様に補習室にて戦争終了まで補習を受ける———が適用され、ゆーさんを討ち取りたい皆さんも自分と強制的に戦わねばならなくなります。これで少なくとも自分を倒さねばCクラスはFクラスに勝利することはできません。

勝負を行いその場のCクラスの皆さんを戦死させたらゆーさんの黒金の腕輪の能力再設定(リセット)を使って消費した点数を元に戻してフィールドを解除。これで補充試験室が使えない状況をカバーします。点数さえ戻れば再びCクラスの皆さんを探しつつFクラスの皆さんの猛攻を避け一時間校内を駆け巡ります。

自分とCクラスの皆さんが戦っている間は、アキさんとゆーさんには暴徒と化したFクラスの皆さんの対処をしていただきます。勿論ゆーさんの召喚獣が倒されればFクラスの敗北ですから一緒に繋がれているアキさんも含めお二人には絶対に召喚獣を召喚しないように念を押しています。

———長々と説明しましたが、Cクラスの皆さんの相手は自分が、Fクラスの皆さんの相手はアキさんとゆーさんが……と言った役割分担をするわけですね。つまりはこのCクラスとの試召戦争、実質自分こと月野造一人VS Cクラス全員というサドンデスマッチ。作戦を提案した際アキさんゆーさんが即却下したのも頷ける無茶で無謀なバカみたいな作戦。ですがこれが……唯一の突破口のハズ!

142時間目 ( No.293 )
日時: 2016/03/11 21:16
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

《さあ、勝負を挑まれた以上、貴方方は自分を倒さなければ自分たちの代表であるゆーさんを討ち取れませんよ!勝負ですCクラスの皆さんっ!》
「ちぃ……!?し、仕方ないか。先にこの子を片付けよう!さ、試獣召喚(サモン)っ!」

「「試獣召喚(サモン)!」」

《いっけぇ!》

不意打ちではありますが、召喚獣である自分の武器の特性が特性ですし現在の状況も芳しくありません、悪いとは思いつつも躊躇うことなく召喚されたら有無を言わさず速攻で仕留めに入ります。召喚者の足元に幾何学模様が浮かび上がった瞬間、次に現れるであろう召喚獣の出現場所である幾何学模様付近に狙いを定めて箒を一線。自身の点数を消費して生まれた風の刃がたった今召喚された召喚獣を襲います。


ザシュッ!


《Fクラス 月野造  物理 278点 → Fクラス 月野造  物理 169点》
                 VS
《Cクラス 遠山平太 物理 115点 → Cクラス 遠山平太 物理  0点》


《よし……狙い通り……っ!》
「ちょっ!?そ、そんな!?まだ何もしてないのに戦死だと!?」
「き、気を付けて!?この子やっぱり代表の言う通り一番厄介———」
《遅いっ!》
「っきゃあっ!?」


ザンッ!


《Fクラス 月野造  物理 169点 → Fクラス 月野造  物理 72点》
                 VS
《Cクラス 山下清美 物理 104点 → Cクラス 山下清美 物理  0点》


味方が一撃で倒されて自分を危険と判断したのでしょう。慌てて召喚獣を戦闘態勢に持っていこうとする残りの二人。ですが武器を構える前にもう一度箒を一線させもう一人撃破。自分のその身の特性上点数が消費されるたびに、身体に疲労が溜まり悲鳴を上げ始めますがこれで残りは一人……っ!

《ハァ……ハァ……次で、最後……!》
「よくも二人をやりやがったな!ここで戦闘不能にしてやるよ!」
《っ!》

と、仲間が戦死したこともあり自分の一瞬の隙をついて接近してくる最後の一人。息を整える暇はないようですね……また箒を構えると同時に相手も武器を自分に構えて戦死覚悟で突っ込んできました。その意気やよし……いざ勝負で———

「———再設定(リセット)!」

「《えっ!?》」


《Fクラス 月野造  物理 72点 → Fクラス 月野造  物理 278点》


———勝負しようとした矢先、何故かFクラスの皆さんの相手をしていたゆーさんが黒金の腕輪で突然点数回復を行います。ちょ、ちょっと待ってください!?まだもう一人残っているのに何で……!?

《ゆ、ゆーさん!?ま、まだ再設定(リセット)するのは早いです!この方を倒してからじゃないと———》
「明久!」
「了解!」


ピィンっ!


「《ぅわっ!?》」

自分の話を聞いていないかの如く完全に無視して、どういうわけかゆーさんとアキさんはお二人が繋がれているワイヤー付手錠を引っ張ってピンっとワイヤーを張ります。お互いがお互いを向かえ討とうと全力疾走していた自分とCクラスの生徒さんは突然のことで減速も出来ず、そのままその張られたワイヤーに足をひっかけてしまい転んでしまいます。勢いが付きすぎていた自分たちはどちらも転がりながら召喚フィールド外に飛び出てしまい———


ポンッ!


あちらの生徒さんはフィールドから出たことにより召喚獣は消滅し、自分も召喚獣化が解け元の身体へと戻ってしまいました。一体どうして、ゆーさんは何を狙って……!?

「(よし上手く行ったね!)先生っ!今のは二人とも転んでしまってフィールドの外に出ただけですから敵前逃亡じゃないですよね!」
「えっ?あー……そ、そうなりますね確かに」
「よっしゃっ!明久、そのまま造を!」
「うん!じゃあ行くよ造!」
「ま、待ってください!?ですからもう一人残っていますよ!?」
「痛てて……って!?ま、待てコラ逃げるな坂本!?」

『『『貴様らァ……!造ちゃんになに気安く触ってんだゴラァ……っ!』』』

討ち取り損ねたCクラスの生徒さんとFクラスの皆さんのそんな声を背に受けつつ、アキさんに抱えられて逃走する自分たち。しばらく走って皆さんを撒いた後、体育館裏まで来たところで自分を降ろしてくれて息を整えるアキさんとゆーさん。

「ふぃー……いい感じかなこれ」
「おう、いい感じだ。この調子でいけば計画通りにいけるだろうさ。良くやったぞ造」
「あ、あの!?ですからゆーさん、さっきの最後のCクラスの人とどうして戦わなかったんですか!?倒せるときに一人でも多く倒しておくべきでは———」

やれると判断して対峙したにもかかわらず、最後の一人との勝負を仕切りなおさせすぐさま自分を連れて離脱したゆーさん。一体どうしてあんなことを……?息を整えつつゆーさんに尋ねると。

「———二人だ、造」
「へ?ふたり……?」
「ああ、これから先戦闘を行うに当たって、最初の一時間……いや少なくとも30分は二人までなら戦っていい。だが三人以上は相手にするな」

そう自分にアドバイスするゆーさん。それは一体どういうことですか……?

「喧嘩と一緒だ。余程実力がこっちの方が上じゃないなら、三人を相手にするのは普通は骨だ。こういう三人以上相手にする場合、ちとコツがいる。普通は逃げたり距離を離したりして一対一の状況を無理やり作り一人ずつボコるのが基本なんだが……」
「は、はあ……」

と、そんな感じで何故か急にゆーさんの喧嘩持論の講義の始まり始まり。さ、流石ゆーさん、場数を踏んでらっしゃるようですね。

「今回は残念ながらこの基本が使えない。召喚フィールド内での攻防が肝の試召戦争では限られたエリア内でしか動けないから逃げたり距離を離したりが不可だからな。だからこそ三人以上は相手にするな。大体人間処理できることは限られているんだ。二人までならともかく三人以上を相手にする必要はないさ」
「喧嘩慣れしてる不良の雄二が言うんだからこれに間違いはないよ造」
「誰が不良だ誰が。まあいい。それと三人以上相手にしてはならない理由がもう一つあってだな。造、お前に聞きたいんだが……お前の感覚的に“何点消費すれば”相手を一撃で戦死させられるのか言ってみてくれ」
「えっ……?えっと、良くわかりませんが……100点前後使えばほぼ確実に倒せると思います」
「だろうな。俺もお前の戦闘データ見てて大体そんな感じだろうって思っていたところだ。で、問題はさっきの最後の勝負だが、お前はあの時何点残っていたか覚えているか?」

さっきの最後の勝負で何点残っていたのか……?え、えっと……あっ……!?

142時間目 ( No.294 )
日時: 2016/03/11 21:17
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

「……その、70点代……でしたね。あのまま戦っても最悪倒しきれなかったかも……しれません」
「だろ?お前の武器である常時点数消費型の箒の能力はいわば“銃”のようなもんだ。そしてその“銃弾”は勿論試験で取った点数にあたると言っていい。それは確かに強力な能力だが……点数を使い切ったら何もできずに終わってしまう」

そう、普段でさえとても燃費が悪いこの能力。今日は補充室を封鎖され使えないこともあり、いくらゆーさんの点数回復の腕輪があろうとより一層慎重に能力を使う必要があるわけですね。

「その能力、使うなら一撃で確実に相手を倒すべきだ。そしてさっきお前が言った通り、お前の能力で相手を確実に仕留められるのは90〜110点消費した場合だな。お前の現在の戦闘で使える科目は大体300点前後のものばかりだったろ。つまり余裕を見て二回点数消費の能力を使ったら、すぐに撤退すべきだ」
「つまり……これから先は消費するなら約100点単位で一人ずつ倒すべきで、さっきのように残り100点を切っていたなら即撤退すべきってことですね。それとゆーさんの言う通り三人以上と戦ってもダメ、と」
「わかってくれて助かる。確かに人数が人数だけに、いずれどうしても三人以上と戦わなきゃならない状況にもなるだろう。ただし焦る気持ちもわかるが今はまだそう焦らなくていい。これから先は長期戦になるからな。一人二人を相手にしたらすぐに回復して移動するぞ」
「そうだね。造、欲張らなくていいよ。Cクラスの人たちに構いすぎて今度はFクラスの連中に囲まれちゃったら終わりだからね。さっきもあれ以上あの場所に留まっちゃったらFFF団に増援を呼ばれて大変だったと思うしさ」

一対多数という状況で日々逃げることに慣れている二人にそんなアドバイスを頂ます。……確かに自分は焦っていましたね。それと多分過信と慢心も少々。さっきの最後の三人目、自分の残りの点数ですと、ギリギリ倒しきれなかった可能性が高いです。仮に倒しきれなかった場合カウンターを貰って戦死していた可能性も否定できません。そのまま戦死してしまったらと思うとゾッとしますね……それにアキさんの言う通り、これは本来ゆーさんを護りながらの戦いです。そのゆーさんたちが不利になるような戦いをしちゃダメですし。

「……ありがとうございます、ゆーさんアキさん。少々頭に血が上って絶対やれると過信していました。ごめんなさい、これから気を付けて戦いますね」
「謝るな造。つか焦ったり多少頭に血が上るのも無理もないさ。何せお前は気持ち的にはCクラス全員と戦わなきゃならねぇんだ。まあ、慣れてきたら少しずつ倒す人数増やしていこうや」
「プレッシャーも少なからずあるのが当たり前だからね。寧ろ早速二人戦死させてたじゃない。良い調子だよ」

少し調子に乗っていた自分を反省。そんな自分をゆーさんとアキさんは慰めてくれます。……そうですね、今回の作戦焦ってもしょうがないですし長期戦になります。焦らず確実に地道に倒していくことにしましょう。

「そう言って頂けると嬉しいですお二人とも。……それとゆーさん。今のように点数を戻すタイミングや撤退のタイミング、ゆーさんに任せても良いですか?どの道ゆーさんしか再設定(リセット)は出来ませんし、ゆーさんなら絶妙のタイミングで点数回復してくれますよね」
「おうよ、任されたぜ」
「雄二が点数回復させているときは、Fクラスの連中の相手は僕がするね」

『いたっ!体育館裏だ!全員でシメるぞ』
『吉井ィ……坂本ォ……!今度こそテメェら生かして帰さんからなぁ……!』
『皆こっちに来て!坂本君がいるわ!代表さえ倒せば私たちの勝利だし、早速勝負を挑みましょう!』
『気を付けろ!もう二人戦死したって報告もあるし、慎重にいくぞ!』

そんなプチ反省会も数分で終わり、C・Fの皆さんに見つかってしまいます。さて、折角のお二人のアドバイスです。有効に活かしていかねばね。

「それじゃ、次行くか」
「次はグラウンド辺りでやるよ造」
「了解です、しばらく目立つように暴れて皆さんの注意を引きつける必要もありますからね」

そう三人で頷きつつ、一斉に飛び出して今度はグラウンドへと向かいます。これでしっかり皆さんを引きつけておけば、ヒデさんも上手くあの隠し部屋から出られるはずです。少しでも自分たちが目立ってヒデさんが動きやすくしなければね。……ヒデさん。自分も頑張ります、ですから今回もっとも大変な役割を押し付けてしまった自分が言うのも何ですが———ヒデさんもどうか頑張ってくださいね。


秀吉Side


「———ふぅ、何とか無事に辿り着いたの」

造たちが十分に引きつけてくれたお陰で、CクラスからもFクラスの須川たちからも見つからずに隠し部屋から抜け出して作戦の第一段階を攻略すべくこの場所にやってこれたワシ。一応細心の注意を行い変装もしておいて正解じゃったな。

それにしても……今回のワシの役割、正直言って全うできるかは今一つ自信は無い。ワシにこの策を託してくれた造も言うておったが、かなりの難易度じゃ。しかし……

『さあ、俺たちはここだぞC・Fのバカ共が!』
『かかってきなよ!僕ら三人を倒せる自信があるならね!』
『自分たちは絶対負けませんからねっ!では行きますよ皆さん!起動(アウェイクン)!科目:現代社会!』

……新校舎三階の窓からそんな声が聞こえてくる。ちらりと声のする方を窓から覗いてみると、造・明久・雄二の三人が必死になってあの連合軍と対峙しているのが見えてきよった。

……そうじゃな。あやつらも勝つために、必死になっておる。こんなワシにこのような重大な役割を託したうえで、それをワシがやってのけると信じて戦ってくれておる。……ワシだってFクラスの、そしてあやつらの仲間じゃ。その期待に応えたい。そしてその負けないと思う気持ち、決して無にはさせてなるものか……!

決意を新たにワシの頬をパチンと自分で叩く。うむ、気合いは入った。あまりのんびりもしておれぬし、早速最初の関門であるこの教室におる二人に会って話をせねばな。


コンコンコン


『はーい?どちらさま———んん?あ、あれ?キミもしかして……?』
「突然の訪問済まぬ。じゃが緊急事態じゃ。悪いがこの教室のとある二人に話をさせてほしいのじゃが」

変装を一旦解きつつ教室にお邪魔させてもらう。さて……下で戦っておる造たちに今のような戦いがあるように、ワシにはワシの戦いがある。では、全力で挑ませてもらおうかの。

143時間目 ( No.295 )
日時: 2016/03/11 21:20
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

造Side


Cクラスとの試召戦争———だけでなくFクラスの皆さんの暴動を対処するべくいよいよ始まった自分のとある作戦。今のところ第一段階は悪くないペースで事が進んでいると言っていい感じです。

《———フィールドに入ったらこっちのものです!Fクラス月野造!そちらのCクラスの生徒さんに勝負を挑みます!》
「うっ……し、Cクラス野口、勝負に応じます。試獣召喚(サモン)!」
《そこですっ!喰らいなさいっ!》


ブンッ!———ザンッ!


《Fクラス 月野造  数学 378点 → Fクラス 月野造  数学 251点》
                 VS
《Cクラス 野口一心 数学 142点 → Cクラス 野口一心 数学  0点》


「んな!?い、一撃で戦死……!?」
《よし……!》

とにかく何が何でも先手必勝。相手が試獣召喚(サモン)と唱えられたら、すぐさま次に現れる召喚獣の出現場所———つまりは召喚者の足元を狙い風の刃を撃ちこみます。倒れるのを確認すると今度は……

「よしよし、良いぞ造!明久、腕輪使うからこのバカ三人任せた!」
「わかっているって!ほら、来なよ皆!」
「それじゃ……再設定(リセット)!」


《Fクラス 月野造  数学 251点 → Fクラス 月野造  数学 378点》


「回復出来たぞ造!そんじゃ次行くぜ!」
《助かりますゆーさん。では……解除(キャンセル)!》

———Fクラスの皆さん3人相手に大立ち回りをしていたゆーさんが、すぐさま黒金の腕輪を使い点数を回復します。その間はアキさんがFクラスの皆さんの面倒を見てくれます。回復したらフィールドを解除して周りを囲まれる前に別の場所へと向かって走る自分たち。こんな感じで3人で役割分担をしながら一人倒してはすぐ移動、また一人倒してはすぐ移動と言う具合に“時間”までゆっくり、ですが確実にCクラスの皆さんを倒していきます。

「雄二、例の時間まであと何分?」
「10分ちょいだな。もう少しの辛抱だ」
「では……あとちょっとだけCクラスの皆さんを倒しておきましょうね」
「そうしてくれ。それじゃ次はまた引き返してグラウンドに行くぞ。隠し扉も5つある内の一つがあの辺にあるんだよな」
「はい。時間になったらそこに迷わず飛び込みましょうね……それにしても……うーん」

「「ん?どうした(のさ)造?」」

…………それにしても、これは直接は試召戦争に関係のないですし本人たち曰くどうでもいいことらしいのですが。自分には3人と戦うのは大変だし危険だと仰っている割に、ゆーさんも勿論アキさんも手錠で繋がれていると言うハンデ付きでよくもまあそんな武器を持った複数人のFクラスの戦闘集団と戦えますね……さっきなんかゆーさん、5人以上と相手してたような気が。アキさんもアキさんで手錠でゆーさんと繋がれているのが嘘と思えるくらい身軽に相手を翻弄していましたし。

「……いえ、その二人ともよく鍛えてあるなって思っただけです。(ある意味)尊敬します」

お二人とも先ほどからまさにちぎっては投げちぎっては投げと武器らしい武器は何も持っていないにも関わらず、全く彼らを苦にせずに相手をしています。……こう言っては二人とも落ち込むでしょうから言いませんが、こういうことが出来るからこそ文さんはアキさんとゆーさんを不良だと判断しているのでは……?ま、まあとても男らしいですし自分(+お二人の事を大好きな女性陣)はちゃんとお二人の事とてもカッコイイと思っていますからね。

「ん、そうかな。へへへっ、まあ褒められても照れちゃうかな」
「まあ、これくらいは朝飯前だからな」
「……やっぱり流石ですね、色んな意味で。ま、まあそれはともかくそろそろグラウンドに着きますし気を引き締めていきましょう。ここさえ乗り切れば第一ラウンドは制せますからね」

そう言っている間にグランドに辿り着き、グラウンド中央で立ち止まる自分たち三人。さあ、残り10分はここで迎え撃つとしましょうか。

「さて……次は逃走する必要がありますし、なるべく今現在の点数が高い科目でいきますね」
「そうだな。なら地学辺りでいくと良い。確かCクラスの連中あまり地学は取れてなかったはずだ」
「地学ですね。わかりましたゆーさん」
「雄二、僕らも気を引き締めよう。奴らが来るよ。造がフィールドを張ったら黒金の腕輪使うんでしょ?召喚野球の時みたいに忘れるようなマヌケはしないでよね」
「お?お前にしてはちゃんとわかってやがるな明久。わかってる、んじゃ設定(セット)する間は奴らを頼む。さてじゃあ———」

『『『いたぞ!Fクラス代表、我々Cクラスのために倒させてもらう!』』』

『『『いたぞ!異端者共代表、我々Fクラスのために殺させてもらう!』』』

「———いくぞ、明久・造っ!」
「応よ雄二!さあ来い異端審問会!」
「了解ですゆーさん!起動(アウェイクン)!科目:地学!」


キィイイイイイイイン! ボンッ!


《Fクラス 月野造 地学 387点》


《よし、ゆーさんっ!》
「設定(セット)!———これでいいな。時間まで粘ってくれ造!」

『会長っ!坂本もこっちに来やがりました!』
『飛んで火にいる夏の虫とはこのことだ!総員、全力でぶちのめせぇ!』

そう言ってアキさんが面倒を見ていたFクラスの皆さんと対峙しにいくゆーさん。そんなゆーさんを見送りながら自分は自分でCクラスの皆さん6人と対峙します。

「……今度は地学で来たのね。しかも中々の高得点、金の腕輪がないことが唯一の救いかしら」
「怯むな!どうせ坂本を倒すにはあの子先に倒さないとならないんだ!囲みながら接近戦で挑むぞ!」
「いいか、さっきの代表の説明通り召喚したら間髪いれずに接近戦に持ち込む!攻撃の隙を与えたらすぐに戦死させられると思え!いくぞっ!試獣召喚(サモン)!」

「「「了解!試獣召喚(サモン)!」」」

《では……Fクラス月野造!そちらの6名のCクラスの皆さんに勝負を挑みますっ!》

忘れないように勝負を挑んで、このフィールド内にいる皆さんと対峙する自分。10分後に姿を消す予定ではありますが、ただ時間稼ぎするのは勿体ないです。出来る限りCクラスの皆さんの戦力を削らなければ。

「ハァッ!喰らえっ!」
《っ、早い……!》

召喚と同時に自分の懐に入り込もうとするCクラスの皆さん。まだ空中に点数が表示されていないにもかかわらず、攻撃に転じてくる召喚獣たちの攻撃を避けながら距離を空けます。

「なるべく固まっちゃダメよ!まとめて攻撃されかねないわ!」
「一定の距離を空けられる前にすぐにこの子を囲もう!確か代表曰くこの子の武器は距離を離さなければ使えないそうだしな!」
《……なるほど、見抜かれてますかね》

距離を取って攻撃に転じようとした矢先、四方八方を6体の召喚獣に囲まれる自分。……弱点なので味方以外にはとても言えないことですが、本来は3〜4メートルくらい離れていないと自分まで攻撃に巻き込まれてしまうのですよね……こんな作戦を出すとは、小山さんに弱点が見抜かれているかもしれませんね。

《———ですが、弱音は吐けませんよね。いっけぇ!》

囲まれているので後ろにも注意をしながら、牽制交じりに一番遠くの召喚獣に向かって点数を少しだけ消費して風の刃を放ちます。そうダメージは与えられませんが一瞬の隙はつけるハズ。その攻撃を皮切りに、このグランドが戦場へと変わっていきました。

143時間目 ( No.296 )
日時: 2016/03/11 21:24
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

雄二Side


『『『死ねぇ!坂本に吉井ィ!』』』

「ハッ!良い度胸だ———テメェらがまずクタバレや」
「色々と勝手に言ってくれて———君らに殺されるほどお人よしじゃないよ」

Cクラスの連中を造に任せ、俺と明久は大事な試召戦争中に暴動なんてバカをやらかしてやがるこの暴徒を相手にする。明久とワイヤー付手錠で繋がれていると言うハンデがある中、この暴徒たちは武器を持って容赦なく攻め込んでくるが……

「っしゃあ!」
『ゴフッ……!?』

こっちも大事な試召戦争の予定が狂わされたんだ。懐に入り込みアイツら以上に情け容赦なく鳩尾に拳を叩き込む。まあどうせしばらくしたら復活してくるだろうが、復活したらしたでストレス解消にまたぶちのめすだけだしな。こりゃ良いストレス解消のサンドバッグだ。

「ついでに———明久!」
「OK!」

明久に合図をして手錠で繋がれている方の手を思いっきり引っ張る。

『お、うぉおお!?』

すると、俺と明久の中央にいた敵の一人がワイヤーに引っ掛かって体勢を崩す。

「くらえやボケェ!」
『ぐぼほっ……!?』

そこにすかさず俺が左拳を叩き込む。そのままコイツはもんどり打って倒れ、地に沈んでいく。ハッ!他愛もない。……と、まあこんな具合に、ハンデであった明久とこの邪魔な手錠の扱いにも慣れてきたところだ。普段はただの世界一のバカだが、こういう時は地味に役に立ちやがる俺と繋がれているバカ。死んでも言うつもりはないが、まあ良くも悪くも息は合うからな。

『ええぃ、相手はたったの二人だぞ!ビビることはねぇ!』
『その通りだ!こっちは三人もいるんだからな!』
『そうとも!俺たちが負けるわけがない!正義は勝つのだからな!』

必死で戦う俺らの前で、相手の三人が口々にそんなことをのたまう。おいおい、それはなんて———

『『『ぎゃあああああああああああ!?』』』

———なんて見事な死亡フラグだ、おい。明久と共に一撃でぶちのめし、グラウンドに沈んでもらう。ま、ごく一部の頭と体のリミッターが外れている連中がいないならこんなもんか。

「何だったんだあいつら、異様に手応え無かったぞ」
「まあ、戦う前から勝負はついてたんじゃないかな」

明久の言う通り、戦う前から死亡フラグ立ててやがったしな。それにしても正義は勝つ?笑わせてくれる。当たり前だ、勝った方が正義だからな。つまりは俺らが正義だ。そう思いつつ、別の連中と対峙する。次は———武藤と君島か。

「さぁて……次はお前らか武藤に君島」
「殺す気で来たんだし、やられる覚悟は勿論あるんだよね二人とも?」
『っ!こ、こうなったら見てろよ……試獣召喚(サモン)!』
『俺も行くぞ、試獣召喚(サモン)!』

と、そんな中何を思ったのか突然召喚獣を召喚するこの二人。造が張っているフィールド内にいるから、普通に召喚は出来る。出来るが……何だ?何をする気だこいつらは?確かに召喚獣はゴリラ並のパワーがある恐ろしい存在だ。だが明久や造のように物理干渉のない召喚獣では俺たちに触れることはできないハズ。そんな召喚獣をこんな時に出すのは、一体どんな策が———

『Fクラス武藤啓太!Fクラス異端者の坂本に召喚獣の勝負を挑む!』
『同じくFクラス君島博!異端者代表の坂本に召喚獣の勝負を挑む!』

「「…………は?」」

…………何をやっているんだこの二人のバカは?

『どうした!ホラさっさと召喚しやがれ!お前を討ち取ればCクラスの勝利で目的の半分は果たせるぜ!』
『造ちゃんもやってただろ!召喚に応じないならお前の負けだぞ坂本ォ!』

…………その言葉に思わず明久と顔を見合わせてしまう。こいつらまさか“召喚に応じなければ戦死”のルールを使っているつもりなのか……?バカだ、ここにバカが二人ほどいるぞ。

「ハァ……あのなぁ。あのルールはあくまで試召戦争中の相手クラスの生徒に対して適用されるルールだぞ」
「まあ確かに今は君たちが造反してるけど、形の上では僕らってFクラスの仲間だしそのルールは全く意味ないんじゃないかな……?」
「そういうこった。明久でもわかることをわかっていないとは……悲しくなるバカだなお前ら」

『『あっ』』

「「隙ありぃ!」」

俺たちのその説明に呆けたこいつらに一撃を喰らわせる俺と明久。ちなみにこの二人FFF団からも———

『えぇい何バカやってんだそこの二人は!』
『邪魔だお前ら!遊ぶんなら別のとこでやりやがれっ!』
『もうあっち行け!召喚獣出してんなら造ちゃんを戦死させて戦いやすくするくらいお前らバカでもできるだろ!』

———そう厳しめのコメントを受けている。その温かい(?)仲間の声援(?)を受け、その二人は少し目に涙を浮かべつつ造とCクラスの連中が対峙している場所に移動してしまった。……何しに来たんだあの二人?

———さて、それは一旦置いておくとしてだ。この造が考え出したこの作戦、改めて当事者である俺たちはともかく関係ないはずの造と秀吉の負担が非常にデカいと感じる。一応納得はしているものの正直言うと、巻き込んでしまったのは悪いと思っているし出来ることなら代わってやりたい気持ちではある。明久たちの同棲生活が一つの切っ掛けではあっても、代表としてクラスをまとめられなかったのは……代表失格って言われてもおかしくないしな。

……まあ、代わろうにも代われない立場だが。どうあっても俺は俺だし、造は造だし秀吉は秀吉だ。立場を悔もうとも出来ることはそれぞれ違って来る。だからこそ出来ることを完璧にやり遂げなければならない。ちなみに俺に今出来ることはただ一つ。代表として死んでも戦死しない事。これがこの無謀な作戦を提案した造や実行している秀吉たちに対する礼儀だ。

「———さぁ、次はどいつだ!さっさとかかってこいや!」

……いかんな。こんな時に妙な感傷に浸っちまった。そんな感傷を吹き飛ばすように大声で叫びつつ拳を固める。とにかく今は明久と共に時間が来るまでこのバカ共の相手をするとしようか。


造Side


《はあっ!》
「うおっ!?」

現在Cクラスの皆さんを一人倒して5人と戦闘中の自分。皆さんが地学であまり点数が取れていなかったこともあって、厳しいですが何とか対処できています。

「なんで……なんでこうも倒されるのよ……!?」
「ダメージはほとんどないのに鬱陶しいな畜生……!」

牽制に1〜2点という少ない点数で生み出した風の刃を、相手の召喚獣の関節目がけて放ちます。それではほぼダメージは与えられませんが、関節に攻撃を受けた召喚獣はコテンとその場に倒れ込んでしまいます。要はちょっとした膝カックンの原理ですね。これなら時間稼ぎにはなりますし攻撃のチャンスが来れば、倒れてる召喚獣に目がけて一撃を加えられますからね。

《みみっちいですけど……これ繰り返せばチャンスが———セイッ!》

「「ああっ!?またっ!」」

《早速チャンス到来っ!喰らいなさいっ!》

そんなことを考えていた矢先、二体の召喚獣が自分の目の前で同時に倒れおまけにそれぞれの武器までも転んだ弾みで落としてしまいます。よしっ!これなら防御も回避も出来ないハズ。さっきの小さな風の刃ではなく100点分キッチリ使った風の刃を生み出してその二体の召喚獣目がけて放ちます。これで二人倒せる……と、その絶好のタイミングで———

『そこまでだ造ちゃん!』
『坂本は殺れなかったが、造ちゃんは戦死できる!さあ尋常に勝負だよ!』
《んなっ!?む、武藤くんと君島くん!?》

———どういうわけか、その倒れたCクラスの二人の前にゆーさんたちと戦っていたFクラス所属の武藤くんと君島くんが召喚獣を引き連れて現れます。な、何でこんな時にっ……!?

143時間目 ( No.297 )
日時: 2016/03/11 21:23
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

「そ、そこのアンタら!ちょうどいいわこっちに来なさい!」
「坂本君倒せないならせめて私たちの盾になりなさいよ!」

『『へ?———って!?攻撃の真っ最中!?や、止めてくれ!?補習室は極力行きたくないのに!?』』

《武藤くんと君島くんの召喚獣を盾に……!》

咄嗟に武藤くんと君島くんの召喚獣を盾にして攻撃を免れようとするCクラスのお二人。マズ……イ!?このままじゃ彼らまで倒してしま———!?


———ザンッ!


《Fクラス 月野造  地学 262点 → Fクラス 月野造  地学 155点》
                 VS
《Fクラス 武藤啓太 地学  61点 → Fクラス 武藤啓太 地学  9点》
                 &
《Fクラス 君島博  地学  54点 → Fクラス 君島博  地学  4点》


『『《あ、危なかった……!》』』

あと一歩で倒しかけはしましたが、何とか途中で無理やり風の刃の軌道を変えることに成功した自分。よ、良かった……“作戦上”彼らを倒してしまうと後々困ります。点数も大きく消費してしまいましたしCクラスのあの二人を倒せなかったのは残念ですが、ここは仕方ないですね。思わず自分も、それから戦死しかかった二人もホッと息を吐きます。ホント良かったぁ……

『し、Cクラスの皆さん!俺らはやっぱり坂本抹殺に向かいますね!』
『け、健闘を祈ってますね!それじゃあ失礼しまーすっ!』

あと一歩で戦死という状態でしたし、そそくさとフィールドに出てもう一度ゆーさんを倒しに行く武藤くんと君島くんの二人。良かった……退避してくれるならこちらとしても助かりますね。

「ああもう!何しに来たのよあのバカたち!?」
「まあ、あの子の点数消費してくれたし一応盾としては使えたから大目には見るが……」
「……あれ?ねえ、ちょっと待って。何であの子邪魔になるはずのFクラスのあいつら戦死させないのかしら……?」
「そ、そうよね。助かったけど……あの子からしたら暴走してるあのバカたち倒しちゃっても問題ないはずなのに」
「わからん……わからんがチャンスだ!この隙に畳み込め!」
《うわっ!?……さ、流石にしんどいですねコレ》

そして再び始まる戦闘。とにかく振り回される武器を極力鍔迫り合いにならぬようギリギリで回避して、隙を伺いながらチャンスを待ちます。どうしても躱せなかったり危険と判断すれば吹き飛ばしの能力でフィールド外へ飛ばして仕切り直し。

「ちぃ、吉井並にちょこまかと回避して……」
「今倒されてくれるなら痛くないように倒してあげるわよ月野君!だから大人しくなさい!」
《む、無茶言わないでくださいねっ!?》

……最初にゆーさんが複数人と戦う場合の危険さを説明してくれましたが、今になってわかります。確かにゆーさんの仰る通りですね。味方がいない状態では3人でも大変なのに4、5人相手にするはかなり一苦労。攻撃のタイミング、前後左右だけでなく死角からも向かって来る敵の対処にその他諸々を考えるのは骨が折れますね。

それでも何とか2、3人を戦死させて補習室送りにさせながら、止めどない攻撃の雨を必死の思いで避けつつ待つこと約10分———


pipipipipi!


「「《———っ!》」」


自分・アキさん・ゆーさんの腕に付けていた腕時計のアラームが鳴り響きます。そのアラームと共に必死の攻防を繰り広げていた自分たち3人全員がアイコンタクト開始。

《(ゆーさん、時間です!)》
「(よし!よく耐えてくれたな造。明久、やれ!)」
「(了解、いくよ!目を瞑って二人とも!)」

ゆーさんのアイコンタクトの合図にアキさんがこーさんが託してくれた閃光弾を地面に叩きつけ、3人で次に来るであろう眩い光に備えて目を瞑ります。


———カッ!


「「「うわっ!?」」」

『『『ぐあっ!?』』』

「———今だ!Fクラス坂本雄二!試召戦争開始から一時間経ったので、試召戦争のルールに則りこれより10分間代表の位置非公開可能時間を使わせてもらう!」

まともに閃光弾の閃光を見てしまったC・Fクラスの皆さんが怯んでいる隙に、ゆーさんが高らかにそのように宣言。宣言が終わったら今度は自分の番です。グラウンドに残った点数を消費してプチ竜巻を起こす自分。周囲はたちまち土煙に覆われてしまいます。自分たちの姿をその土煙で隠しながらダメ押しで一発残りの点数ギリギリを使いCクラスの生徒さんの召喚獣がいるであろう場所に攻撃を放ってから———

《ゆーさん、お願いします!》
「おうよ!再設定(リセット)!」


キィイイイイイイイン!ポン!


《Fクラス 月野造 地学 7点 → Fクラス 月野造 地学 387点》


———忘れずにゆーさんの黒金の腕輪の能力の再設定(リセット)で点数を元に戻します。そして未だに視力が回復しきっていない皆さんを横目に———


ピッピッピッ……ガチャ!


———古びている今はもう使われていない焼却炉に偽装した隠し扉のロックを外して勢いよく中に飛び込み扉を閉める自分たち。……緊張した面持ちで、その隠し扉越しに周囲の様子を聞いてみると。

『あ、あの三人の姿が見当たりませんっ!?』
『ど、どこ行ったんだ!?』
『探せっ!まだ近くにいるハズだ!見つけたらすぐに皆殺しだぞ!』

悔しがる声、焦る声、アキさんゆーさんに対する恨みつらみを呟く声などが聞こえてきます。これはつまり———

「「《…………セーフ》」」

———そう、これはつまり無事に撒けたということのようですね。第一ラウンドこれにて終了。よ、良かった何とか乗り切りましたね……

「「《はぁ……疲れたぁ……》」」

144時間目 ( No.298 )
日時: 2016/03/11 21:26
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

造Side

Cクラス及び造反したFクラスとの試召戦争。最初の一時間はどうなることかと思いましたが、自分とアキさんゆーさん三人疲れは見えるものの何とか無事に乗り切れました。

「「《ぜぇ……ぜぇ……ぜぇ……》」」

「よくやったのお主ら!ほれ、水じゃ!」

隠し部屋に入ると、良く冷えた飲料水を持ってヒデさんがすぐに出迎えてくれました。良かった……ヒデさんも無事のようですね。

《あ、ありがとです……ヒデさん……》
「ひ、秀吉もお疲れ……雄二、これインターバルは……?」
「ハァ……約9分ちょい……だな。鉄人の地獄の持久走を思う出すハードさだぜ畜生め」
《そ、それでも……何とかなりましたね……今のうちに、息を整えたりしましょうか。おっと、解除(キャンセル)》

一旦召喚獣状態から元に戻り、座り込んでヒデさんから頂いた飲料水で水分補給を行うと少しは楽になりました。お水がこんなに美味しく感じるとは……まあ、あと数分もしたら同じように戦いの場に逆戻りなんですけどねー……正直しんどいですが頑張らなければ。

ああ、そうそう。少し補足しておきましょう。クラス代表には試召戦争中に皆さんに適用される基本ルールだけでなくクラス代表ならではの特別のルールがいくつか設けられています。その特別ルールの一つに“試召戦争中はクラス代表はどこにいるのか位置を公開しなければならない”と言うものがありまして。これが特に今回自分たちを苦しめているルールなのですが、このルールには実は補充のルールも備わっています。それは代表が戦争中のクラスに対して宣言さえすれば“一時間に10分はトイレ休憩等の理由を使って代表の場所を公開しなくてもいい”良いと言う補充ルールです。

まあ、それも結局10分経ったらまた次の一時間は代表の場所を公開する必要がありますが、10分でも休めればこうやって息を整えたり作戦会議に当てられますからね。そう、つまり一時間戦って10分休憩、また一時間戦って10分休憩といったサイクルでCクラスと戦うわけです。その間に自分がCクラスの皆さんを全滅させるor代表の小山さんを倒せばFクラスの勝ち。自分がミスをしてゆーさんを討ち取られればCクラスの勝ち、わかりやすいですね。

「ふぅ……少しは落ち着いたなお前ら。早速で悪いが状況整理だ。造、さっきの一時間で大体何人倒した?」

あっという間に飲料水を飲み干してから、すぐさま状況整理に入るゆーさん。貴重な時間です。出来るだけ有効に使わねばね。自分とアキさんも同じように一気に飲料水を飲み干して状況整理に加わります。

「えーっと、14人……と思いましたが、すみません。手応え的に最後多分仕留めきれなかったと思うので、10〜11人くらいですかね」
「ふむ、なら少なくともCクラスの5分の1はやれたったことだな」
「はい……悔しいですが思った以上に倒せていませんね」
「いやいや、一人で10人以上は十分すぎると思うんだけど造」
「いえ……限られた時間や状況下ですしもう少し倒しておくべきでした。やっぱりまだまだ足りませんよ。もう少しペース上げていきたいところなんですが中々難しいですね」

やはりいつもとは勝手が違い、補充室が使えないのはかなりのハンデですね。自由に補充が出来ないのは勿論、自分の武器の特性も相まって点数配分を考えて戦う必要があります。こちらには幸運なことに点数回復の手段としてゆーさんの黒金の腕輪もありますが、その特性上一つのフィールドには張りなおさない限り一回だけしか使えないので、結局1、2人倒してはすぐに移動と言うヒット&アウェーな戦術をせざるを得ず思った以上に戦果が振るいませんね。

「それと……さっきゆーさんを討ち取ろうとFクラスの皆さんまで召喚獣を出してきましたよね。仮に、ですが……さっきみたいに仮に敵味方入り混じって襲われたらかなり厄介なことになりますね」
「……それされたら一番面倒だな。小山の奴のことだ、次のラウンドで仕掛けかねん。俺たちの予想通り異端審問会の連中Cクラスと連合組んでやがったしな……ったく連中味方だと使えんが敵になるとこうもうっとおしいとはな」
「個人的には一思いに戦死させて地獄の補習室送りにしてほしいけど、“作戦上”は戦死させちゃマズいんだったよね。なんて厄介な……」

今後の戦力を温存するためにも、そして今回の作戦の“本当の”目的の為にも極力Fクラスの皆さんを戦死させるわけにはいきません。今のところはそのような状況になったらCクラスの召喚獣は確実に仕留めて、Fクラスの召喚獣はフィールドの外に吹き飛ばして消す方法しかありません。そんな切り替え非常に難しいですし骨が折れそうですよねー……まあ、嫌でも次辺りそうせざるを得ない状況になりそうな予感がありますが。

「とにかく造、さっきも言ったが無理せずに一人一人でいいから確実に倒していってくれ。一応今のペースでも十分倒せているんだしな」
「了解です。焦ったり慢心することには特に注意しておきますね」
「頼んだぜ。さて、それで秀吉。そっちはどんな具合だ」
「うむ……一応協力して貰えるそうじゃ。例の二人にはタイミングも伝えてある。しかしすまぬ雄二よ。お主の言った通り少し渋られての、貴重な交渉カードを切らざるを得なかったのじゃ。例の二つのこちらのアドバンテージを使ってしもうた」

と、申し訳なさそうにゆーさんに謝るヒデさん。いえいえそれでいいんですよ。

「安心しろ秀吉。どの道そのカードは早めに切っておくべきものだったしな。これで次は向こうもこっちも憂いなくやれるからな」
「グッジョブですよヒデさん!引き続きよろしくお願いしますね」
「任されたぞい。お主もしっかりの」

そう言ってヒデさんと拳をコツンと合わせてお互いを奮い立たせます。今回の作戦の要は自分とヒデさんの二人です。お互いの健闘を祈りましょう。

「ところでゆーさんとアキさんは大丈夫ですか?一時間ずっとFクラスの皆さんと戦いっぱなしでしたけど……」
「おう、最初のように狭くて逃げ場のない教室ならいざ知らず自由に戦えるなら何とでもなるさ」
「ハンデだったこのワイヤー付手錠にも慣れてきたからね、平気だよ」
「お二人とも。頼もしいですけど、無理はなさらずに。何せ皆さん色々危険な武器を持っていますし……」

木刀程度ならまだ可愛いもの。Fクラスの皆さんは一体どこから用意してきたのかわからない、とっても危ない武器を手にしてアキさんたちを襲っていますからね……ホントうちのクラスってある意味凄いですよね……素手で対処できているアキさんたちもアキさんたちで凄いですけど。

「まあ、問題があるとすれば完全に言葉も理性も失った連中を相手するのが骨だってことと……」
「他の連中も、いくら倒しても倒してもキリがないってことだけどね……どいつもこいつも床に沈んだはずなのにものの数秒ですぐ立ち上がってくるんだよね」

ハァ……と苦虫を噛み潰したような顔をする二人。ゆーさんの言った葉も理性も失った連中というのはアキさんたちへの怒りのゲージが最大値を振り切って大変な状態になったクラスメイトさんたちの事。遠目でしかまだ見ていませんが、何かどす黒いオーラを纏って頭をかくん、かくんと揺らしながらアキさんたちを探していたのを見た気がします。あれはこわい。

そんなタガが外れた一部のクラスメイトは置いておくとしても、他のクラスメイトの皆さんもとても厄介です。アキさんの言う様に何度アキさんとゆーさんが全力で叩きのめそうとも、数秒もしないうちに立ち上がってアキさんたちを襲い掛かっていました。

「あれはまるでゾンビだよ……そう言えば今更だけど肝試しの時って僕ら以外のFクラスの男子全員確かオカルト召喚獣はゾンビだったよね。悪い意味であの召喚獣に負けず劣らずな召喚者たちってことだね」
「そんなこともあったな。あれはホント本質をよーく捉えてあるなオイ」
「ぞんびの本質……?え、えーっと。何度倒されても蘇る不屈の闘志的な———」

「「「いや、間違いなく腐った根性としつこい執念って意味だろ(だね)(じゃな)」」」

「あー……」

納得しては申し訳ない気もしますが、正直今の状況では否定もできませんね……

144時間目 ( No.299 )
日時: 2016/03/11 21:26
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

「まあ、それはともかくだ。まず理性を失ってる連中は無理に対処する必要はない。相手にせずにとっとと撒くだけだ。理性がないからあの連中には統率がとれていないからな。逃げるだけなら何も問題ない」
「で、ゾンビのようにうっとおしいFFF団はどうすんの?」
「どうもこうもねぇ。それこそそれは“秀吉”にかかってるんだ。俺らはただ秀吉が上手くやってくれるまで何とか耐えるほかねぇだろ」
「だよねー……ゴメンね秀吉。悪いけど僕らが倒されちゃう前にお願いするよ」
「むぅ、責任重大じゃな。まあ善処しようかの」
「ヒデさんファイト、ですよ!」

結局は全員が全員の役割を作戦通りに頑張るしか道は無いのですよね。苦しくても辛くても割に合わなくても、これも全て勝つためです。

「さてと。正直言うともうちょっと休みたいところだけど……雄二に造。そろそろ時間がヤバイみたいだ。準備は良い?」
「…………出る、なら……次……4番出口……使え。今なら……連中の、気配……ない……から……」

時間を計ってくれていたアキさんと、まだ回復しきっていないながらも必死で自分たちの為に外の気配を探っていたこーさんが自分たちにそう声をかけます。さてさて、非常に短いインターバルでしたが、第二ラウンドの始まりですかね。

「おう、俺は準備OKだ。状況整理も終わったし今のところこの調子で乗り切るしかねぇしな」
「ですね。あ、気配探ってくれてありがとうですこーさん。こーさんはもう少し休んでいてください。では———行きましょうアキさんゆーさん!」

「「っしゃあ!」」

「気を付けるのじゃぞ。お主らが出ていったらしばらくして別の出入り口からワシも出るからの」
「…………いって、こい……」

お二人に激励を貰ってから隠し部屋から勢いよく飛び出す自分、アキさん、ゆーさんの三人。

「おらっ!出てこいやこそこそと面倒な小細工仕掛けるしか能のないバカ共が!」
「吉井明久、坂本雄二、月野造参上ッ!僕ら三人はここにいるよ!倒せるなら倒してみなよ!」
「さぁ、勝負です皆さんっ!」

隠し部屋から出ると、学園中に響き渡るような声と共に注意を引きつけます。こうすることでヒデさんが別の出入り口から出やすくなり、加えて代表の位置をCクラスに公開したことにもなります。これでルールを破らずに済みますからね。

『っ!奴らが現れた!食堂の裏にいやがるぞ!』
『ヤロッ!?どっから出てきやがった!?』
『とにかく追え!逃がすな!100m11秒台は全員奴らを追うんだ!残りは回り込むのとCクラスに奴らの位置情報を伝えてこい!』

自分たちの声に反応して、早速Fクラスの皆さんが現れます。今回はある意味敵ではありますがFクラスの皆さんの機動力には感心してしまいますね。と、無駄に感心しながらも第二ラウンドの始まり始まり。さぁて、負けませんよ皆さんっ!

各々がやれること、やるべきことをやり遂げてこの厄介な状況に打ち勝とうとしています。逆境なんて毎度の事ですし、それこそ自分たち“いつものメンバー”にとっては些細な事。ですからきっと彼女たちも———頑張ってくださいね二人とも、ここにいるアキさんも頑張っていますからね。そう思いながら、腕輪を装着して手を掲げてフィールドを展開します。

「ゆーさん、アキさん。準備は良いですね!起動(アウェイクン)!科目:現代社会!」


———同時刻:補充試験室———


美波Side


「———先生、終わりました。採点をお願いします」
「わ、私も終わりました!よろしくお願いします!」
「はい、わかりました。では採点までは30分ほどかかりますので。しばらく待っていてくださいね」

Cクラスとの試召戦争が始まっているにも拘らず、ここ補充試験室に閉じ込められたウチら。ホントはさっさとこの場から脱出したいところだけど、瑞希の案に従って脱出より先に補充試験を受けることを選んだウチ。たった今二つ目の補充試験を終えたウチらは、30分の祭典時間を利用して少し脳を休めることに。

「これで二科目分は補充できたわね。どう?瑞希。疲れてない?」
「はい、平気です美波ちゃん!次もドンと来い、ですよ!」
「あら、それは頼もしいわね。採点結果期待してるわよ♪」

そう言って頼もしくウチにそう言ってくれる瑞希。うんうん、良い表情じゃないの。

『———あのクソ共、食堂裏から出てきたそうだ!』
『今までどこにいやがったんだ……!ああ忌々しいぜあの二人』
『造ちゃんを洗脳して操り人形にしてるんだったな……これは正義のFFF団の名のもとに滅する必要がある!そうですよねCクラスの皆さん!』
『……知らないわよそんなこと。と言うかアンタらね、そんな変な戯言なんてどうでもいいからちゃんと私たちの代表の言う通りに動きなさいよ?』
『作戦の事を忘れて暴走したら許さんからな。あくまで最優先するのは俺たちCクラスの勝利であって、坂本の抹殺なんてとんでもないことはせめて戦争が終わってからやれ。いいな?』
『なるほど、つまりは先に吉井やどこかに隠れていやがるムッツリーニを先に始末しろってことですね!』

『『(何もわかってないなFクラスは……)』』

「「……っ!」」

と、瑞希と少し談笑していると廊下からそんな不穏な声が聞こえてきた。

「……今の、多分C・Fクラスの会話よね。それにまた騒がしくなってきたってことは———きっとアキたちが頑張っているんでしょうね。少なくとも今は無事ってことだろうし」
「はい……明久君、それに皆さんも。痛い思いとかしていないといいのですけど……」

廊下に耳を傾えてみると、忙しく動く物音とアキたちの名を呼びながら罵倒する声も聞こえてくる。バリケードされていて外の様子が見れないから今どんな状況なのかわからないけれど、少なくともアキたちは捕まっていないようね。

「予想通りCクラスの皆さんと手を組んでいるみたいですね。つまり……明久君たち5人とCクラスFクラスとの試召戦争ってことなんですね……」
「そうなるわね……全く、造反だなんてやってくれたわね須川たち」

……正直言うと、今すぐこの扉とバリケードを壊してでもアキたちを助けに行きたい。多分瑞希も同じ気持ちでしょうね。……でもきっと今は駄目。必ずチャンスは訪れるハズ。そのチャンスの時にしっかり動ける為にも、ウチらはアキたちの無事を信じて出来ることをちゃんとしておくべきなのよね。

「……とにかく今は補充試験に集中しなきゃね。休憩終わり!ウチ、次に受ける予定の補充試験の復習するわね」
「はい。私もそうしますね美波ちゃん。二人で頑張りましょう!」

改めて気合いを入れて、次に受ける予定の科目のノートと教科書を開いて少しでも点が取れるようにと復習を開始するウチら。さて、ウチらを閉じ込めた須川たちとCクラス……ウチらをこれで行動不能にしたと思い込んでいるようだけど———Fクラス、いえウチらいつものメンバーの底力、見せてやろうじゃないの!さあこれからが勝負よ!

145時間目 ( No.300 )
日時: 2016/03/11 21:29
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

———Cクラス———


『……急に姿が消えたと思ったら、今度は消えた場所とは全く別の場所から現れた?』
『はい、クラス代表の位置非公開可能時間をギリギリまで使って坂本と吉井、そして月野が姿を現しました』
『グラウンドで姿を消したと思ったら、今度は食堂裏付近から現れたそうです代表』
『妙ね。あのC・Fクラスの包囲網の中どうやって抜け出してそんな場所から現れられるのかしら』
『代表の言われた通り、月野もいますし空から逃亡する可能性があると考えて上空も勿論警戒していましたが、どうやら別の方法を使われたようでして……』
『……どこに隠れているのか知らないけど、演劇部の木下君がまだ姿が確認できていなかったわよね。ひょっとしたら木下君が坂本君と吉井君を他クラスの生徒に変装させている可能性があるわ。まあ、あの二人は手錠で繋がれているし手元を見れば変装してるってすぐわかると思うから、次逃げられたと思っても焦らずにまずは周囲をしっかり見て怪しそうな連中の手元を確認してちょうだい』
『了解です。ところで代表。木下と、同じく未だに姿を確認できていない土屋はどうしますか?』
『……そうね。土屋君の方は行動不能になっているってFクラスの連中が言ってたし、木下君自体はそう戦力にはならないわ。一応見かけたら余裕があれば余計な事させないためにも戦死させるつもりでいてね。と言っても基本的にはFクラスの連中に任せて大丈夫でしょう』
『わかりました。では残る問題と言えば———』
『そうね、残りの問題。私たちCクラスの最大の障害と言えば月野先輩ね……だけど恐れることは無いわ。先輩の弱点はさっき説明した通りよ。それとさっきまでの戦い方を見るに、月野先輩は———Fクラスの連中を戦死させたくないみたいね。大方今後の為に戦力を温存したいからでしょうけど……それを利用しましょう。だから例の作戦でいってちょうだいね。さぁ———次で仕留める気でいくわよ!』

『『『はい代表っ!』』』


造Side


……おかしい、ここにきて明らかにC・Fクラスの動きが変わった……っ!?

『『ちぃっ!造から離されっ———!?』』

『『『オラァ!よそ見してんじゃねぇぞ異端者共がァ!!!』』』

ゆーさんに黒金の腕輪を使ってもらうためにも、さっきまでは出来る限り召喚フィールド内でC・Fクラスを対処してもらっていましたが、ここに来てゆーさんとアキさんたちがフィールドの外に追い込まれるような形でFクラスの皆さんから攻撃され始めます。そのせいで自分と二人の距離がどんどん離され始めました。

《ゆーさん、アキさん今行きま———》
「待ちなさい月野君。どこに行こうと言うのかしら?悪いけど逃がさないわよ」
「坂本たちと合流したいんだろうが……そうはいかない。俺たちと戦って貰わないとな」
「まあ、どの道あなた自身があたしたちに勝負を挑んだんだし、フィールドの外には出られないでしょう?ゆっくり楽しみましょうね小さい先輩さん」
《……くっ、行かせないってことですか。と言うか誰が小さいですか誰が!?———って、危なっ!?》

出来る限りゆーさんたちに近づきたい自分の前には、Cクラスの皆さんが立ちはだかります。えぇい、こっちもですか……!将を射んとする者はまず馬を射よとでも言いたいのか、相手はさっきまでの一時間とは戦法が大きく変化しました。積極的にクラス代表であるゆーさんを狙おうと必死だった先ほどまでとは違い、これは完全に自分を狙っている戦いとなっています。

「やっぱりね!代表の言う通り、距離を詰めればそこまで怖くないわ!」
「接近戦になればいくら月野の点数が高くても勝てるぞ!」
「無理にあの子本体を倒すんじゃなくていいからね!どうせ回避されちゃうのはわかってるし。狙うのは———」

「「「———狙うのは、あの厄介な箒!」」」

《やはり狙いは……武器破壊……っ!?さ、させませんよ!これでもくら———「Fクラス、前に出なさいっ!」———んなっ!?》
『イエス、マム!さあ、撃てるものなら撃ってくるんだ造ちゃん!俺を戦死させたくないんだろう?』

更に厄介なことに、自分の持つ“二つの弱点”を見事に付かれます。おまけにどうやらFクラスの皆さんを攻撃したくないことが見抜かれているようで、Cクラスの皆さんを攻撃しようと必ずその射線上にFクラスの召喚獣が立ちはだかります。

「いいわよ!今みたいに箒を構えられたらあの子の射線に入っちゃダメだからね!」
「ヤバいと感じたら常にFクラスの連中を盾にしろ!思った通り攻撃できないぞ!」
「このまま一気に戦死させましょう!行くわよ皆、それとFクラス!」
《(囲まれたら本気でマズい……だったら)———これで、どうですっ!?》


———ブンッ! ゴオッ!


「「「うわっ!?」」」


《Fクラス 月野造 現代社会 243点 → Fクラス 月野造 現代社会 184点》


周囲を完全に囲まれる前に、クラスメイトを巻き込まないためにも攻撃ではなく吹き飛ばしを行って周りの召喚獣たちをフィールドの外に飛ばし無理やり場を仕切り直すしか手がないこの状況。ただいたずらに時間と点数が消費されてしまいます。

「ちっ、やっぱりそう来るか……だがその吹き飛ばしは何度も使えないだろ!もう一丁行くぜ、試獣———」
《こ、こっちだって……負けていられません!いっけぇ!》
「———召喚(サモン)!って、しまっ!?」


《Fクラス 月野造 現代社会 184点 → Fクラス 月野造 現代社会 75点》
                   vs
《Cクラス 太田廉 現代社会 168点 → Cクラス 太田廉 現代社会  0点》


「ああもう!ダメじゃないの!あれほど先にFクラスの連中に召喚させてから召喚しなさいって代表に言われたでしょ!?」
「す、スマン……補習室行ってくる」

それでも仕切り直され、再び召喚獣を召喚した隙をついて何とかこれで2人戦死させられましたが……これじゃあジリ貧ですね。

「やっぱり隙があればやられちゃうね。あの小っちゃい先輩油断ならないや……焦らず落ち着いてFクラスを盾にしながら召喚しようね」
「追い詰めているのはこっちだからね。さあ、Fクラス。さっさと召喚して」
『了解っス!試獣召喚(サモン)っ!』


《Fクラス 堀田喜一 現代社会 54点》


『さぁ撃てるものなら撃て造ちゃん!俺を戦死させても良いならな!』
《ぐっ……ほ、堀田くんを戦死させるわけには……》
「いいわよFクラス、そのまま私たちが召喚し終わるまで盾になってなさい。じゃあいきましょう試獣召喚(サモン)っ!」
「盾としてはかなり優秀よねFクラス。それじゃあたしも試獣召喚(サモン)っ!」

うぅ……困りましたね。堀田くんの召喚獣がガードしてるせいで速攻がかけられません……こんな作戦を指示しているんです、小山さんにさっきの一時間で完全に自分がFクラスの皆さんを戦死させたくないのがバレちゃってますねコレ。

145時間目 ( No.301 )
日時: 2016/03/11 21:30
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

「その調子。次こんなことあったら同じように対応してねそこのFクラス。頼んだわよ」
『はははっ!女子に頼られるとか俺生まれて初めてじゃね!?すげぇぞ、俺今最高に輝いてるぅ!俺もしかしてカッコイイ!?いや、もしかしなくても俺超カッコイイ!』

「「「(輝いているっていうか……実質私たちの体の良い人質兼ただの盾だけどね。自分の身を人質にしてカッコつけるなんて……自分の所属クラスのハズのFクラスの皆さん足引っ張りまくりで正直カッコ悪いわ……)」」」

自分の目の前で自身の召喚獣を盾にしてCクラスの皆さんの召喚のサポートをする堀田くん。彼の召喚獣に遮られている間に、先ほど吹き飛ばしたCクラスの皆さんの召喚獣が再び召喚されてしまいました。

《ゆーさんは……間に合いませんか》

状況が状況ですし、すでに点数が100点を切ってしまいました。レッドゾーンに入っている状態ではまともに戦えません。本来ならば今すぐにでも点数を回復したい所ですが……ゆーさんとアキさんと随分離されてしまっています。ゆーさんの黒金の腕輪はフィールド内にいないと使用できませんし……おまけにこっちも再び囲まれて身動きが取れない状況です。これは、やむを得ないですかね……

《こうなったら———解除(キャンセル)っ!》


ボンッ!


「「「なっ!?」」」

点数回復は間に合わないと判断し、張っていた現代社会のフィールドをかき消します。正直勿体ないとは思いますが、ここで倒れるわけにはいきません。悔しいですが、現代社会は捨てましょう。

「そして再び———起動(アウェイクン)っ!科目、現代国語!」


キィイイイイイイイン! ボンッ!


フィールドが消滅すると同時に、自分を取り囲んでいた召喚獣も消えていきます。完全に消え去ったことを確認すると、今度は現代国語のフィールドで起動。ただし今回はフィールドを地面に張るのではなく自身に纏わせて、400点オーバーから使用できる金の腕輪の能力【飛翔】を使ってC・Fクラスの皆さんの頭上を越えます。

「ちょ、ちょっと待ちなさい!それズルイわよっ!?」
「て、敵前逃亡よ月野君!」
《残念でしょうが、フィールドが張られていないなら敵前逃亡にはなりません!それでは失礼しますねっ!》

召喚フィールドが張っている状態なら間違いなく敵前逃亡になりますが、今は一度自分がフィールドを消したのでルール違反にはなりません。改めて自分がフィールドを張り直すか先生方に召喚許可を貰わない限り戦闘は出来ませんからね。正直腕輪の能力頼みの反則ギリギリの力技ですが、申し訳ないと思いつつも手段を選んでいられるほど余裕があるわけではありませんからね。

《(ゆーさん、ごめんなさい!勝手に離脱してしまいました……それに現代社会が……)》
「(わかってる!寧ろ良い状況判断だから気にすんな!それより……明久!)」
「(了解、このままいくよ!造、後は頼んだからね!)」

Fクラスの皆さんに囲まれているアキさんゆーさんの真上へと飛び、そのようにアイコンタクトをする自分たち。

『『『死ねぇ!吉井に坂本ォ!』』』

その直後、Fクラスの皆さんが武器を手にアキさん達に襲い掛かっています。ですがその攻撃が届く前に———


ボフッ!


『『『っ〜〜〜〜〜〜!?ぐっぅ!?』』』


———アキさんがこーさんから貰っていた逃走用の道具の一つ、けむり玉を地面に叩きつけたちまち周囲は真っ白な煙に覆われます。自分がこーさんを助ける時に使ったチョークの粉の簡易的なものではなく、こーさんが所有している正式な(?)けむり玉です。効果範囲も持続時間も比ではありません。

『く、くそっ!?また目が……』
『ゲッホゲッホ!?———の、喉いでぇ!?』
『は、鼻がツーンって……うぇえ……』

《———よし、アキさんゆーさん逃げますよ!掴まって!》

「「頼んだ造!」」

まともに吸い込んだFクラスの皆さんの喉と目と鼻を刺激して怯ませることに成功。その間にアキさんとゆーさんを真上から救助して、周囲にC・Fクラスの皆さんがいないと思われる付近の生け垣に急いで飛び込みます。もう召喚獣状態から戻る時間も無いでしょうし、そのままの状態で息を整えることに。

《ハァ……ハァ……》
「だ、大丈夫造?」
《へ、へーきです……それより、急ぎましょう》
「ああ。辛いだろうが仕方ない、対策会議すっぞ」

すぐに見つかるでしょうが、極力時間をかけるために生け垣で息を潜めつつそのまま緊急のプチ対策会議の開始です。褒めちゃダメですがCクラスの皆さん———いえ、小山さんは随分考えられている策を色々と講じてきましたね……

「やってくれたな小山の奴……上手く暴走しているはずのFクラスのバカ共をコントロールしてやがる。統率のとれたバカ程面倒なものはねぇな畜生」
「雄二と僕を常にフィールドから追い出すようにFFF団の連中を壁として使ってきたよね。唯の壁じゃなくて僕らを滅するために攻撃しかけてくるうっとおしい壁だけど」

まあ、Cクラスの皆さんの立場で考えてみれば対策は簡単なことですよね。何度も回復されてしまう自分とゆーさんの白金黒金の腕輪のコンボはどちらかを潰しさえすれば回復できません。今回は嫉妬の怒りに燃えるFクラスの約半数の皆さんを自分とゆーさんを遮る壁として使い分断させ、点数回復させないようにしていました。

145時間目 ( No.302 )
日時: 2016/03/11 21:30
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

《ゆーさんがフィールド内にいなければ黒金の腕輪の再設定(リセット)が使えませんからね……》
「向こうさん回復手段のなくなった造を確実に潰しにかかってるな。黒金の腕輪が使えない=回復出来ない以上、造としては勝負を避けたいだろうが、俺を戦死させるわけにはいかないから造はどうあっても勝負を挑まざるを得ない……間違いなくさっきまでの一時間とは戦術が変わったな。逃げ回るのに長けた俺らを必死に追いかけて倒しにかかるより、現状最もCクラスにとって厄介な造を先に仕留めた方が都合がいいと判断したんだろう」

ゆーさんさえフィールドから追い出せば回復も出来ないのに点数をバンバン使わなければ戦えない自分との勝負に持ち込めますからね。時間が経てば経つほど自分にとっては勝ち目のない戦いをせざるを得ません。先ほどのように隙を見て攻撃して、後は回復できない科目を捨ててフィールドを解除して逃走するしか道がない状況です。

《あと一つ気になったんですけど、C・F両クラスで単独で行動する人が減りましたよね》
「さっきも言ったが見事に統制されていたな。ただ暴れているだけなら対処も楽だったFクラスが厄介な戦闘集団となってやがる。改めて有能な司令塔がいるとここまで動きが違うんだと実感しちまうな」
「FFF団の半分は僕らに、残りの半分はCクラスと一緒になって召喚獣召喚して造を戦死させようとしてたよね」
「あのバカ共喜んで盾になってやがったな……ったく、みっともねぇというか情けねぇというか……」

アキさんゆーさんを倒す為……亡き者にするためならば戦死しても構わないとでも言いたげに率先してCクラスの盾となっていたFクラスの皆さん。先ほどの堀田くんの行動何かがいい例ですね。

「Cクラスの奴らはCクラスの奴らで、単独で行動すれば造に絶対倒されるって最初の一時間で理解したようだな。必ずCクラス3〜4人、Fクラス1人以上の4〜5人のグループで行動してやがった。あれも小山の策なんだろうな」
「召喚獣を召喚するときは、造に召喚直後を狙った速攻をされないようにFクラスの召喚獣を先に出させて盾にしてから召喚してたよね。あれ絶対造が皆を戦死させたくないってバレているってことだよね」
《ですよね……うぅ、アレのせいで上手く戦えません。恐らくFクラスの皆さんを戦死させたくない“本当の理由”については悟られてはいないと思います。思いますが……何にせよ、こんなに早くから戦死させたくないことがバレちゃったのはかなり苦しいですね……》

身を挺して敵クラスを守る味方の生徒の行動で、自分は上手く戦えません。本来なら倒しても問題ないと思われるかもしてませんが……作戦上倒したら色々厄介ですから戦死させられないんですよね……

《厄介ですよね……更に厄介なことに自分の特性、弱点その他諸々完全に見抜かれてそこを攻められている点でしょうか。これだけしんどい試召戦争は久しぶりですよ》
「えっと、造の弱点っていうとつまり———」
《言わずもがな、武器である箒に耐久力が無いことと、接近戦に非常に弱いことですね》

そう、武器である箒の特性上非常に“接近戦”に弱い自分。例えば一学期のAクラス戦・優姉さんとの戦いや清涼祭・常村ことツネとの戦いでもその弱点を見事に突かれていましたっけ。

《この箒、耐久性に難ありですからまともに鍔迫り合いできませんし……そもそも点数消費しないと攻撃力0ですからね。それと点数を使って風を起こす能力ですが、これ至近距離だと自分を巻き込んじゃう上に武器である箒も壊れてしまいかねないので使えないんです》
「えっと、確か余裕を見て3mくらいが通常の間合い。1m以上近づかれるとその点数消費で風を起こす能力は使えないんだったっけ」
《はいです。1m以上近づかれると自分も巻き込まれて自爆しちゃいますのでまともに戦えません……前々からどうにかしなきゃとは思っていましたが、自分ホントに接近戦に弱いですよね……》
「造の場合能力が強力な反面、消費は激しいし戦闘条件は厳しいからな。役割としては完全に後衛、中〜遠距離で撃っては下がって回復を繰り返したり敵を牽制したりするサポート役が本来のスタイルだろうし」

召喚技術にも成績的にも、アキさんや姫路さん達のようにFクラスの主戦力とカウントされたり、校内アンケートでは試召戦争中で最も戦いたくないランキング上位に上げられてはいるもののその実ゆーさんの言う通り自分の本来の役割は後衛・サポート役です。この間自分は一対多数戦が得意であるとゆーさんが評価してくれましたが、それはあくまで味方がいる前提の話。基本は点数使い切りの戦い方ですし自分は完全に中〜遠距離タイプですから、味方がいない状況で点数が尽きれば逃げるしか道がないわけでして。

《自分の戦闘スタイルもかなり研究されているようですね……さっきの皆さん、完全に自分との戦い方と攻略方法を小山さんに教えられているようでしたね》
「さっきも言ったけど速攻を仕掛けられて遠距離からの召喚始めを狙われないように、Fクラスの連中に先に召喚させる策をとってたもんね」
《はい。それに一度撃ちだされた場合ほぼ防御不可の風の刃の対処もちゃんとしていました。自分が攻撃しようと箒を構えると、すぐに自分と一直線上にならないように予め横に回避しつつ自分との距離を詰めていましたね。接近戦に移っても焦らずに、無理に自分を狙うわけでもなく武器破壊を狙うあたりかなりシミュレーションされた動きに思えます》
「左右に動いて致命傷は避けつつ前進して間合いを詰める、武器の箒さえ破壊すれば手も足も出なくなる———造と戦う上での基本戦術だな。小山の奴、造の事尊敬しているだけあって造対策に抜かりは無いようだな」

それに小山さんは小暮さんの後輩。彼女に随分と鍛えられていますからね……自分の弱点対策はほぼ完璧だって思わなきゃならないかもです……

「で、雄二。ここまで対策されちゃったわけだけどどうする?何か新しい策は無いの?」
《このまま次も同じことされたら、現代社会が使えなくなったようにまた他の科目が使用不可になっちゃうますよね》
「……悔しいが今のところ何も思いつかねぇ。だから元々の作戦通り時間を稼ぎつつとりあえず動き回るしかねぇな。長時間隠れることが出来ない以上走り回りながら何か策を考える。“秀吉が上手くやってくれているなら”Fクラスの連中に関しては、時間を稼げば稼ぐだけ少しは楽になるはずだしな」
「見つからないようにできないなら、見つかっても追いつかれないようにするってことだね。まあ、今はそれしかないね」
「と言うわけで、造。悪いがここはとにかく逃げの一手だ。逃げまくって時間を稼ぎ囲まれたりどうしてもって時だけフィールドを出して対応してくれ。Cクラスに無理に勝負を挑む必要はないからな」
《はい、わかりました》

……正直、少しでもCクラスの皆さんを倒しておきたいですが、今はそんな余裕ないですからね。ゆーさんや自分たちが何か妙案が思いつくまではひたすら逃げて時間を稼ぐほかないでしょう。

「相当しんどい戦いになるだろが……やるっきゃねぇ。良いな明久、造!」
「へいへい、まあ結局こうなるわけだね」
《了解ですゆーさん。ならば早速———》

『『『いたぞ、奴らだ!!!ブチのめせェ!!!』』』

「「《いつも通り、鬼ごっこの時間だな(だね)(ですね)!》」」

———捕まれば即終わり、地獄の鬼ごっこの開始となります。とは言え自分もアキさんもゆーさんも、常日頃から追いかけられるのは慣れっこです。さぁ、命がけの鬼ごっこのスタートですよ!

146時間目 ( No.303 )
日時: 2016/03/11 21:35
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

造Side


《———もう点数も無いですし、一人だけでも倒せましたからもう十分ですね……ズルっぽいですがすみませんね!解除(キャンセル)っ!》


ボンッ!


「「「ああっ!またぁ!?」」」

「それでは、失礼しますねCクラスの皆さんっ!」

Cクラスとの試召戦争。Fクラスの皆さんの“Fクラスの変”と言う名の造反。この二重苦に反則ギリギリの力技で何とか対処する自分。一度フィールドをかき消せばもう一度フィールドを張られ勝負を挑まれなければ敵前逃亡にならないと言うルールの穴を利用して、倒される前にさっさと全力疾走で撤退します。

「……と言っても、そう何度も使えませんけどね。これ使うってことはその科目を捨てるってことと同じことですし」
「俺の黒金の腕輪が使えれば良いんだがな……奴らもそれだけは阻止しようと俺と明久をフィールド外に押し出してきやがる」
「せめてこのワイヤー付の手錠さえなければ、少しの間なら僕がFFF団相手にしている隙に雄二が点数回復出来るんだけどね……」

そう恨めしそうに繋がれた手錠を睨むアキさんとゆーさんと合流して、再び逃走開始します。こんな具合に足止めされてどうしても逃げきれなければ勝負に応じ、大勢に囲まれどうしようもなくなればフィールドを解除して逃走の繰り返しを行い時間が来るのを待ちます。

『『『死ねやボケェがああああああああ!!!』』』

「それにしても今更だけどさ……クラスメイト40人以上にここまで死ねだの殺すだの言われる人って普通いないんじゃないかなぁ……」
「まあ、良くも悪くもどいつもこいつも欲望に忠実だからな。何せ学園一のバカがいるクラスだぜ。俺らのクラスはよ」
「学園一のバカ……ああ、それって雄二の事か。確かにそうだね」
「謙遜するな明久。キングオブバカとはお前の事だ」

「「〜〜〜〜〜〜っ!!(ゲシゲシッ!!)」」

「お二人とも喧嘩してる暇ありませんよ!?来てます!皆さんすぐそこまで来てますっ!?」

『『『油断したなテメェら!余所見してんじゃ———』』』

「「———これは油断じゃなくて、余裕だがな(だけどね)。オラァ!!」」

『『『———ゴフゥ!?』』』

「お、お二人ともお見事……」
「まあ、ただ暴走している連中相手ならこんなもんだ」
「いくら怖い武器持ってても、唯怒りに任せて振り回してるだけなら簡単に対処できるからねー」

ちなみに言うまでもありませんが、アキさん達はCクラスの皆さんだけでなく徒党を組んだ殺意に満ち溢れるクラスメイトさん達を迎え撃たねばなりません。にも拘らずこれだけ余裕を持って喧嘩しながらも迫りくる暴力・暴行を避けていなして防御して見事に対処しちゃう辺り二人とも流石と言いますか。












……まあ、とは言え———

『アハハァ、吉井クンと坂本クン。見ぃつけたぁー……殺っちゃってイい?いイんだよネー?面倒だから二人まとめて殺っちゃっていいよネー?一人で逝くのは寂しいもんネー』
『■■■■……■■■■■……■■■■、■■■■■■■■』
『殺滅倒酷虐罵蹴殴折刺斬叩———』

「「「っ!?」」」

———とは言え、そんな頼もしいアキさんゆーさんでも対処できない人たちもいるわけでして。ゆらゆらと、まるで幽鬼のような足取りで言葉すら失いかけているクラスメイト(?)が前方から現れます。周りの声が全く聞こえていないようで、完全に生気も正気も失った表情の皆さん。恐らく……いいえ間違いなく彼らの目的はただ一つ、アキさん達を滅することだけ考え行動しているのでしょう。

「明久、造!引き返すぞ!アイツらはマジでヤバイ!」
「言われなくてもわかってるよ!命大事に、だね!」
「こ、こっちですアキさん、ゆーさん!」

アキさんゆーさんを抹殺することしか頭にないため、文字通り周りが見えていないあの集団。それは当然アキさんとゆーさんと一緒にいる自分の存在すら見えていないようで、さっきもお二人の巻き添えを受けて危うく殺されかけた自分。あの集団だけはどうしようもありませんね……

『いたぞ!吉井に坂本だ!』
『急いで囲んでCクラスに位置を伝えろ!その間も攻撃の手は緩めるなよ!』

「月野君、今度こそ倒させてもらうわよ!」
「もうそんなに戦える科目も残っていないハズだ!全員で倒しに行くぞ!」

「「「……っ!こっちももう追いつかれた……!」」」

ちぃ、最悪ですね……前門の虎後門の狼とはまさにこのこと。前方のあの集団とはまともにやり合えないと判断して慌てて引き返すと、今度はC・F連合軍が後方からお出迎え。くっ……挟まれた……!?もうあまり残った科目もありませんのに……

「し、仕方ありません。ゆーさん、回復の暇は無いかもしれませんがフィールドを張るので一応黒金の腕輪の準備お願いします」
「……そうだな。なるべく俺もフィールド外に押し出されないように善処する。頼んだぞ造」
「点数回復の為にも何とか雄二だけでもフィールド内にいてもらわないといけないよね……僕もやれるだけFFF団の足止めしてみるよ」
「よろしくです二人とも、では腕輪を使ってフィールドを———」

……とは言えこのままでは挟み撃ちにされてしまいます。いつものように泣く泣く腕輪を使ってフィールドを形成しようと白金の腕輪を掲げたその時。


pipipipipi!


「「「———っ!(グッドタイミング!時間になったぁっ!)」」」

———最高のタイミングで設定していた三人の腕時計のアラームが鳴り響きます。

「ならば、起動(アウェイクン)!科目、現代国語!」


キィイイイイイイイン! ボンッ!


「コホン、Fクラス坂本雄二!試召戦争再開から一時間経ったことにより、もう一度10分間の代表の位置非公開可能時間を使わせてもらうぞ!」
「ああっ!き、気を付けて!またどこかに隠れる気よ!?」
「ちゃんと坂本君たちがどこに逃げ込むかを見逃さないでね皆!」
《ゆーさん、アキさん!皆さんを撒きましょう!掴まってください!》

息も絶え絶えで割と絶体絶命ではありましたが、ようやく待ちに待った1時間が経過。召喚獣化してそのアラームを止めながら例の如く二人の手を取ると、金の腕輪の能力【飛翔】を使いながら裏庭にあるごみ収集場へと向かうことに。こっちの方が走るより早いですし、それに何より———

『待てや貴様らァ!逃がさんぞォ!』
『逃げられると思うなやクソ共ォ!』
『俺らの嫉妬の深さ、思い知れェ!』

《(は、速いですねFクラスの皆さんは)》
「(追ってきたか。なら明久、連中に造反された恨みも込めて思い切りやれ)」
「(そうだね、先にやったのはFFF団だからね。少しは痛い目見せなきゃね)———と言うわけで、てい」


———ポイッ! カッ!


『『『ハッ!また閃光弾なんだろ!バカの一つ覚えとはこのことだな吉井ィ!そんなもん目を瞑れば効かねぇんだよ、わかったかバカの吉痛っでぇええええええええええ!?』』』

「うんうん、少なくともこんな単純な手に引っかかる君たちはその僕以下ってことなんだねー」

———それに、空を飛んでいればまきびしを踏まずに済みますからね。四方八方から追って来るFクラスの皆さんに、アキさんが2つのこーさんから頂いたものを周囲に投げつけます。一つはこの騒動が始まってからずっとお世話になっている閃光弾。そしてもう一つは……忍者さんが使ったとされるまきびしです。

『い、痛ぇ……!あ、あのクソ共ォ……!』
『あ、足に……!さ、刺さった!なんか刺さったぁ!?』
『や、ヤロォ……これムッツリーニのまきびしか、なんて卑劣な……!』

146時間目 ( No.304 )
日時: 2016/03/11 21:36
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

閃光弾にばかり気を取られ、目を瞑ったまま突進してきたFクラスの皆さんの足にまきびしが容赦なく突き刺さります。足元注意とはこのことですね。これでかなり時間が稼げるはず。痛い思いさせたくはなかったですが、今は心の中で謝りつつ目的の場所に向かいます。

「よし……明久、誰がどこで見ているかわからん。念のためだ、けむり玉用意!」
「合点承知。いくよ!」

Fクラス、Cクラスの皆さんを撒いて、そのまま裏庭に入る自分。念のためけむり玉を一つ使って視界を遮り、ごみ収集場の一番奥に隠してある隠し扉に辿り着くと皆さんが復活してこの場所に来る前に急いでロックを解除。そして———

『ま、また消えた……!?』
『こ、この辺りに逃げ込んだハズだ!死ぬ気で探せっ!』
『見つけ出したらブチコロだからな!』
『……やっぱりおかしい。何で一瞬で姿を隠せるの……?何か特殊な方法を使っているとしか……』
『とにかくこのことを代表に報告しよう。それと、何人かはこの周囲をしばらく調べておいてくれ!』
『わかったわ!』

———かなり際どい所でしたが、何とか第二ラウンドを辛くも耐えきった自分たち。

「「《しんど、かった……》」」

「お、おお!待っておったぞお主ら!無事じゃったか!」
「…………おつ、かれ……」

倒れ込むように隠し部屋に入ると、先に戻っていたヒデさんが自分たちを介抱してくれます。奥にはかなり苦しそうなこーさんも自分たちにそう言ってくれます。

《ヒデさんも、こーさんも……無事で、何よりです……ハァ……ハァ……》
「し、しんどかった……流石に疲れたよちくしょう……」
「こ、これ終わったら……アイツらマジでぶちのめす」
「ホレ、水じゃ。これを飲んで落ち着くと良い。それとちょっとしたのバランス栄養食もあるぞい」
「ありがと……秀吉……」
《か、感謝です……おっと、元に戻りませんとね……解除(キャンセル)……》
「早速で、悪いが……状況整理いくぞ……」

寝そべりつつヒデさんから三度飲料水や軽めのバランス栄養食を受け取って、すぐさま状況整理を始めるゆーさん。インターバルは先ほどと同じように10分間。休む暇がありませんね……

「……はぁ……さ、さっきも言いましたが、C・F両クラスとも動きがかなり良くなってますね……さっきの時間で戦死できたのはわずか5名。それでいて現代社会・生物・地学・古典の4科目がほぼ使用不可になっちゃいましたし……」
「Fクラスのバカ共はともかく、小山の奴随分と俺らを……特に造を分析していやがったな」
「あの着物先輩の後輩だったよね小山さん……そりゃこれくらいはやるよね」
「そういや造の天敵だったなあの先輩は。それは一旦置いておくとして———造、今残っているまともに戦闘できそうな科目は何だ」
「えっと……先ほど4つ使えなくなった科目が出来た上、本来なら自分も姫路さんや島田さんと一緒に前回のD・Eクラス戦で消費した分補充試験を受けるハズでしたので……100点切っていない何とか戦えそうな科目は———」


現代国語:461点 物理:278点 日本史:345点 世界史:351点


「———この4科目ですかね。ああ、一応総合科目も含めると5科目になりますが……総合科目って使っちゃうと使った点数を全教科数で割った点数で万遍なく減るので、今は使えないって言っていいでしょう。結局まともに戦えるのはこの4科目だけでしょうね」
「……なるほどな。造、わかっているとは思うが現国だけはギリギリまで戦闘で使うな」
「は?なんでさ雄二。一番点数が取れている科目でしょ?使わなきゃ勿体ないじゃないか」
「バカかお前。……あっ、すまん。言うまでもなくお前はバカだったな明久。いやすまんすまん」
「ぶっ飛ばずぞ雄二」

こんな状況にも拘わらずまだまだ余裕そうに仲良く喧嘩するアキさんとゆーさん。そんなお二人を見て、ちょっと笑ってしまう自分とヒデさんです。

「お主らは相変わらずじゃな。まあ、そこがお主ららしいがの」
「ふふっ、まあまあアキさん落ち着いて。ゆーさん、わかっています。【飛翔】が使えなくなったら詰み、ですものね」
「その通り。移動・かく乱・緊急避難・その他諸々において造の金の腕輪の能力【飛翔】は命がけの鬼ごっこをやっている俺たちの生命線であり最後の切り札だ。これが使える現代国語を落とされたら実質俺たちの敗北と言っても差支えないだろう」

ゆーさんの言う通りC・Fクラスとの鬼ごっこ状態の試召戦争において、この能力は非常に有効です。さっきもこの【飛翔】のお陰でピンチを脱したわけですし……つまりむやみやたらに戦闘で使って点数を消費して400点切ってしまえば使用不可になってしまうため、戦闘で使わないほうが良いってことですね。

「いつもならいくつか他の科目も400点オーバーしている科目もありましたが、残念ながらこの前のD・Eクラス戦で結構点が削られてるので現代国語しか【飛翔】が使えないんですよね……ですからもし戦闘で現代国語を使う時は……残り教科を使い切ってしまった時になるでしょうね」
「うげっ……ってことは造、まともに戦えるのは後3科目なの!?ね、ねえ造。やっぱり僕も戦った方が良くないかな……?」
「ダメです。最初に説明した通り、万が一アキさんが戦死したらアキさんとその手錠で繋がれているゆーさんまで補習室前まで連れていかれることになります。そして補習室前で動けなくなったゆーさんは逃げることが出来ずにCクラスの皆さんから勝負を挑まれ、Fクラスの皆さんからは袋叩きにされちゃいますよ」
「そうなりゃ俺らの敗北になっちまうからな。悔しいが、戦闘に関しては造に任せるしかねぇんだ。それくらいお前もわかってるだろうが」
「そ、そりゃわかっているけど……このままじゃ造が……」

アキさんのお気持ちは貰っておくとして、とにかく残った3科目をどのように活かすか、どのように戦うべきか。これが勝負の分かれ目になってくるでしょうね。

「……?何じゃ、その話振りじゃとどうにもお主ら苦戦しておるようじゃが何かあったのかの?」
「はい……小山さんの策だと思うのですが、かなり戦術を変えてきてですね。只今絶賛苦戦中です」
「どうも代表の雄二は後に回して、Cクラスの人たちは造を倒すことに専念してるっぽいんだよ」
「Fクラスの連中もかなり統制されているからな。俺や明久には“武闘派”なFクラスの連中を当てさせ、造には“なるべく点の取れていない”盾となるFクラスの連中を当ててCクラスに有利なように攻めてきやがった。勿論黒金の腕輪による点数回復をさせないように造と俺・明久を分断させることが狙いだろうな」
「武闘派……おお、そうじゃ。それで思い出したのじゃが……例の作戦を行いながらワシもムッツリーニ程ではないが情報収集をしておっての」

「「「情報収集を?」」」

と、ヒデさんがそう言って手書きのルーズリーフを自分たちに見せてくれます。そこには自分たちを除いたクラスメイト達の名前が書かれてあり、それぞれ3つのグループにわかれています。

146時間目 ( No.305 )
日時: 2016/03/11 21:36
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

「うむ。どうやらFクラスは現在主に3つのグループになって動いておるようじゃ。一つは須川たち率いる“C・F連合軍”と呼ばれるグループ。お主らの話を聞くに、Cクラスと共に召喚獣を召喚し、造を妨害しあわよくば戦死させようとしておる連中がこやつらじゃろうな」

召喚獣を召喚しCクラスの盾となったり、自分を取り囲んだりと自分が満足に戦えない理由の一つとして動いているグループですね。さっきはこのグループの働きによりほとんどCクラスとまともに戦うことができませんでした。

「次に横溝や福村率いる、雄二の言葉を借りるなら“武闘派軍団”と呼ばれるグループ。こやつらはあらゆる手段で雄二や明久、それにムッツリーニを抹殺すべく動いておるそうじゃ。ちなみに補充試験室でバリケードを作って姫路と島田を監視しておるのもこのグループの一部だそうじゃ」

なるほど、その逞しくも恐ろしい肉体を使ってアキさん・ゆーさんへの攻撃と同時に、自分とアキさんゆーさんを分断させて黒金の腕輪で点数回復をさせないようにしているのも恐らく彼らなのでしょうね。

「そして最後に……こやつらが最も厄介なのじゃが。明久や雄二たちへの憎しみで完全に理性を失っておる狂戦士達(バーサーカーズ)と呼ばれるグループ。まあ正確に言うと、こやつらはグループとは言えぬか。味方の声すら聞こえておらず制御不能のようで本能のみで動いておるが、その分完全にリミッターが外れておっての。とてつもない動きと力で明久たちを抹殺しようとしておる」

言うなれば暴走した清水や清水父じゃ、とのヒデさんの例えにこの場にいる全員が納得してしまいます。実際に目の当たりにしている分その恐ろしさはわかっていましたが……“作戦的な意味でも”本当に厄介ですよねその集団。

「造がワシに託してくれた“本当の策”もこの連中には聞かぬからのう……まだ武器を持った武闘派連中の方が話は出来る分マシじゃな」
「ただでさえいつも話聞かないのに、今日は嫉妬で狂ってそれ以上に聞かないってことか。どうするの雄二?」
「仕方ないから今はそいつらは無視で良いぞ秀吉。お前はそいつらと主犯格以外を予定通りに頼んだ。さて……状況は大体わかったな。当面の厄介な問題は二つか……」
「一つは自分がこれからどうやって戦うか、ですね」

自分の武器の箒の弱点は、点数を消費しなければ攻撃力がゼロなこと・鍔迫り合いすら碌にできない一撃でもまともに喰らったら即大破してしまうほど脆いこと・更に自分自身を巻き込む恐れがあるため近距離不向きであること———つまりは接近戦が弱点です。それを利用してFクラスの皆さんを盾にして自分に接近して戦うCクラスの皆さん。ホント、小山さん良く自分との戦い方を研究してますね。

「それともう一つの問題は……そろそろこの場所の存在に気付かれる可能性があるってところですかね」
「だな、向こうは俺たちが何らかの特殊な方法を使ってどこかに潜んでいるって勘づき始めている頃だろう。俺たちが消えた場所をCクラスの2,3人が調べてやがったのがその証拠だ」

本来はサクヤさんや優姉さんたちを撒くために作ったこの隠し部屋と外の隠し扉。彼女たちにさえ見つからないように偽装しているのでそう簡単には見つけられないハズです。とは言え5か所ある出入り口のうち、今通った出入り口を含め3つはすでに抑えられていると考えておくべきでしょう。ゆーさんの言った通りどうやって自分たちが消えたのか疑問に思い、自分たちが消えた付近に何人かC・Fクラスの生徒さんが待機しているハズ。仮にその場所から出てしまったら、この隠し部屋の存在に気付かれてしまいます。

「つまり……せいぜい後一回しかこの隠し部屋に逃げ込めないってことですね……ここからが正念場ですか」
「ああ、そうなる。さて造……この場所を使えるのが実質ラスト一回となった以上、次の一時間でCクラスの小山にお前が“コレ”を渡すほかないわけだが……いけるか?」

そう言ってゆーさんが懐から手紙を取り出します。……そうですよね、状況的にもこれを次で渡せなければ……

「大丈夫なの造?さっきと同じことされて回復が間に合わなくなって、残りの科目も使い切ったら造は……そうでなくても武器の特性上、その箒が折られちゃったら点数が残っていても丸腰で戦わないといけないんでしょ」
「作戦上、次で小山と交渉に入る必要があるのじゃろう?その時までにCクラスをある程度追い詰めなければならぬとお主が言っておったが……このままではかなり厳しいと思うのじゃが」

心配そうに自分にそのように尋ねる皆さん。確かにハッキリ言ってかなり厳しいこの状況。たった一つだけ、この状況を利用しつつ戦う方法が無くは無いのですが……

「……一つ、やってみたいことがあります。正直今の今まで危険すぎたことと、本当にこれが可能なのかわからなかったので試したことがありませんでしたが……」
「ふむ、何か策があるのじゃな?造よ」

ヒデさんの言葉に、はいと答えるも……正直全く自信がありません。もし上手くいかなければ自分は戦死し、ここまで頑張ってきた作戦も水の泡。こんなぶっつけ本番一か八かの賭けを果たして皆さんが認めてくれるのか……

自分の考えているその策を恐る恐る皆さんに尋ねようとすると———

「おっし、なら任せた造。んじゃこの手紙は託しておくな」
「なーんだ、造にちゃんと策があるのなら問題ないね」
「うむ。ならばワシらも造に応えねばな」
「えっ……?」

———と、何もまだ言っていないにも関わらず、どういうわけか何か納得したようにゆーさんは自分にその手紙を渡してそのまま次に出る予定の出入り口に向かいます。そのゆーさんの後をアキさん達も続いて向かいますが……え、ちょっと……?ど、どうして……?

「あ、あの皆さん!?自分はまだ何も———」
「言うな造。その顔見ればわかるさ。どんなことやる気か知らんが成功するかわからん賭けなんだろ?」
「自信持ちなよ。大丈夫だって、絶対上手くいくって信じてるよ。僕らは負けないさ」
「ここまで来たら前だけを見て進むだけじゃ。お主もワシらも出来ることを全力でやるだけじゃからの」
「っ!」

……信頼、ですかね。三人ともそう笑い合いながら自分に託してくれます。……なんですか、なんなんですか皆さん……全く、そんなことを笑顔で言っちゃうなんて反則ですよ?……ちょっぴり泣いちゃうかと思ったじゃないですか……あ、ヤバい。ホントに涙出てきそう……何故だか昔を、“一年前”を思い出しちゃいそうです……本当にいつも恵まれていますよね自分……温かい友人に。

「そもそも今回のFクラスの連中の騒動の原因は、バカなことにハーレム空間築いてFFF団挑発したバカ久にあるんだぜ造。気にすんな、失敗しても明久のせいにすりゃ良いんだからな」
「まあ例えダメでも霧島さんとイチャイチャしすぎてクラス一つまとめられない代表失格のアホ雄二の首を手土産に、FFF団と交渉すればいいんだよ造。安心すると良いよ!」


ゴスゴスゴスッ!×2


「こやつらもこう言っておるのじゃ。造は造に出来る全力を尽くすだけで良いと思うぞい。そもそもワシは造を信じておるからこそ、造の策に乗ったわけじゃしな」
「…………そろ、そろ時間……造なりに、頑張るといい……そこのバカふたりも……バカやってないで……さっさといってこい」
「……はい、です!」
「お?もう時間か早いな畜生」
「うへぇ……まだ回復しきっていないのにね。まあ仕方ない。それじゃあ造。準備は良い?」

息も絶え絶えであるにも拘らず時間を見ていてくれたこーさんも自分を信じて送り出してくれます。こんな自分を、無条件で信じてくれた皆さんに精一杯の感謝を。信じてくれたからには死ぬ気で結果を出すだけです。

「———はいっ!月野造、準備万端っ!いつでも行けますっ!皆さん、勝ちに行きますよ!」

「「「「応っ!」」」」

ほんとうに、ありがとう皆さん……そう心の中でもう一度呟いて、隠し部屋から飛び出す自分とアキさんゆーさん。さあ、ここからが正念場。このラウンドで上手く戦えるか戦えないかで、勝負は決まると言っていいでしょう。覚悟は決まりました。第三ラウンド開始ですっ!

147時間目 ( No.306 )
日時: 2016/03/11 21:39
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

———Cクラス———


『———で、どうかしら調子は』
『いい感じです代表。代表の推察通り月野はFクラスの連中を攻撃できないようです。あの連中を盾として召喚させてから明らかに月野から戦死させられた人数が激減しました』
『最初の一時間は11名戦死させられ17名がかなり点数を削られましたが、さっきの一時間は戦死者5名に負傷者4名です。Fクラスの連中を使って坂本たちと月野を分断させて腕輪を使わせないことも非常に効果的だったようですね』
『そう。良かったわ、作戦は間違ってなかったってわけね。盾にされても先輩に構わず倒しに来られたらマズいからさっきの一時間は4〜5名程度のグループに分かれて試してみたけど———そうと分かれば遠慮は無用。説明した通りここで月野先輩を倒しましょう。20名先輩討伐に当てて残りの人たちは補充試験を行うのと念のための近衛兵としてここCクラスで私と一緒に待機しておいて。勿論戦術はさっきまでの一時間通りにね』
『わかりました。ところで……さっきの一時間は月野のフィールドをかき消して逃走されることが多々ありましたが、その対策をいかがいたしましょう代表』
『それについては任せてちょうだい、策は考えてあるから。すでに手も打ってあるし』

『『『おお、流石です代表!』』』

『あ、月野や坂本たちがどうやって出たり入ったり姿を隠しているのかについてまだわかっていませんがそっちはいかがいたしましょう?』
『……確かにそっちはまだ判明していないけど、こうも見つからないとなるとこれは予め逃走経路として何か作っていた可能性が高いわ。流石にそうなると今日一日かけて探したところで見つかりっこないと思うの。だからそれよりも———ここで月野先輩、及び坂本君たちを倒しに行きましょう。そうすればそんな謎なんてどうでもよくなるからね』
『そう……ですよね。確かに、いつまでたっても見つからない・わからない逃走方法を見つけるよりもシンプルでわかりやすいです。わかりました代表』
『さて……そろそろ10分経つわね。代表の位置非公開可能時間も終わるわ。全員持ち場について!先輩たちが現れたら、勝負を決めにいきましょう!』

『『『了解!勝ちに行きますっ!』』』


造Side


『今度は職員室裏付近から……!?ああもう!ごみ収集場で姿が消えてどうしてそんな場所から出てこれるのよ!?』
『代表の言った通りそれを考えるのは後にしよう!数で押して月野をここで叩くぞ!』
『吉井……キサマまたナメた真似してくれやがったなオラァ……!』
『坂本……今度こそ貴様の息の根を止めてやる、覚悟しやがれェ!』

隠し部屋から出てすぐに、C・Fクラスに見つかる自分たち。遠目で見ると自分を仕留めに来ているのか、さっき以上に人数を連れてやってきているようですね。

「当たり前だが奴ら俺たちを休ませないつもりだな。CクラスもFクラスの連中も早速来やがった。で、どうするんだ造?」
「……ゆーさん、アキさん。動きやすいように一旦別れましょう。唯の推測ですがCクラスの皆さんはここで一気に自分を仕留めに来るはずです。戦力の大部分を自分を戦死させるために当ててくると思います。漁夫の利でゆーさんまで倒されては終わりですし、Cクラスの皆さんは自分に任せてください」
「つまり俺らはFFF団を何とかすればいいってことか。まあ、大体はさっきと同じだな。それで、黒金の腕輪の設定・再設定はいいのか?」
「はい。点数回復にこだわってしまった事が先ほどの間違いでしたから。とりあえず試してみたかったことを試してみようと思います。ゆーさんたちは自分を気にせず存分に戦ってください」
「わかったよ。でももしもの時は呼んでね。僕らもその時は腹をくくってCクラスと戦うから」
「念のため見える範囲でFFF団と対峙しておく。明久の言う様にヤバいと思ったらすぐに呼んでくれ。じゃあ造、後は頼んだ」
「お互い頑張りましょうアキさん、ゆーさん。健闘を祈ります」

「「造もな(ね)!」」

向かって来る大勢のCクラスと数名のFクラスの生徒さんは自分が、武器を手にしながら呪詛を唱えて襲って来るFクラスの大勢はアキさんとゆーさんが相手をすることに。それぞれ二手に分かれてアキさん達は少し離れた広い中庭に、自分は向かって来る皆さんの方へと覚悟を決めて立ちはだかります。

「どうやら観念したみたいね、キミには随分手間取らされたわ」
「一人で私たち相手に随分頑張ったみたいだけど、悪いね月野君。ここで倒させてもらうわ」
「確か月野には吉井のようにフィードバックがあるんだったな。戦うならせめて痛みが長引かないように楽に倒してやる。もし戦死するのが嫌だったらここは黙って引いてくれ。その場合は———」

『———ああ。俺たちが坂本たちを抹殺するまで造ちゃんを保護してあげよう。もし大人しく俺たちに捕まるのならお菓子もあげるよ』
『もし我々の言うことを聞かないのであれば、心苦しいがここで戦死して貰わねばならない』

予想通り小山さんは自分を戦死させるために、ここで戦力の大部分を集中させてきましたね。見た感じざっと20人くらいですか……そしてやはりと言うべきか、自分対策にCクラスの生徒さん二人に一人は盾となるべきFクラスのクラスメイトがくっついていますね。第二ラウンドで苦戦した時と同じ戦術で来ましたか……周囲を皆さんに囲まれてそんなことを言われる自分。ですが———

「———起動(アウェイクン)科目、物理!」


キィイイイイイイイン ボンッ!


《Fクラス 月野造 物理 278点》

「「「……引かない、か」」」

《……ごめんなさい、そうもいかないんです。友人たちがピンチなのに自分だけ助かるなんてお断りですよ。それにここまで来たからには……負けられませんのでっ!Fクラス月野造!この場にいるCクラス全員に勝負を挑みますっ!》

白金の腕輪で物理のフィールドを展開。そのままこの場にいるCクラスの皆さんに勝負を挑みます。ここで引くですって?冗談じゃありません。ここは———戦って勝ちに行くに決まっているでしょう!

「見かけによらず強情ね、いいわ。勝負しましょうか!」
「さあ、Fクラス。召喚して俺たちの盾になれ」
「Fクラスが召喚したらあたしたちも召喚しましょう」

『『『了解っス!試獣召喚(サモン)っ!』』』

「「「Fクラスが召喚し終わったら……こっちも試獣召喚(サモン)っ!」」」

先にFクラスの皆さんが召喚して、その身を挺してCクラスの召喚を守ります。盾にされては攻撃できませんので速攻は出来ませんね。そのまま両クラスの召喚獣に四方を囲まれる自分。

《では、参りますっ!》

「「「こっちも、勝負っ!」」」

……さて、とりあえずはギリギリまで戦ってみて、頃合いを見てやってみたいことをやるとしましょうか。“あの戦法”は奥の手・最後の切り札ですし。それまではさっきのように何とか隙を作って一人でも多く倒さねばね。気合いを入れつつ襲い掛かってきた召喚獣を迎え撃つべく箒を構えます。


秀吉Side


「———ふぅ。これであと20人くらいじゃろうか」

リストにチェックを入れつつ嘆息するワシ。わかっておるつもりじゃったが、やはりこれは中々に骨の折れる役割じゃのう。精神的にも技術的にもかなりしんどいものじゃ。失敗すればこの試召戦争に負けかねんから普段の稽古や本番以上に気を張りつつやり遂げねばならぬしの。

「次は……この三人は最後にするとして、後は例の手におえん連中と今表に出ておる連中も後回し。ならば残りの人数やメンツを考えると……そろそろ一階のあやつらを何とかせねばならぬか」

まあ、泣き言を言っておる暇はないがの。造や明久、雄二にムッツリーニ。それに姫路や島田たちも恐らく頑張っておるじゃろうし。そう自身に言い聞かせ、再び作戦の為に動き出そうとした矢先———

『———この辺か?木下を見たと言う報告があったのは』
『見つけたら……い、イロイロ好きにしていいんだよな!?』
『ぐふふ……秀吉ィ、今行くからねぇ……待っててねぇ……』

「……っ!」

———すぐ近くの曲がり角から、そんなワシを探しておるようなFクラスの連中の声が聞こえてきおった……

147時間目 ( No.307 )
日時: 2016/03/11 21:39
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

造Side


「でりゃぁ!」
《あっぶな……ですが、チャンス———》
『させないよ造ちゃん!』
《———は、やっぱり早々こないですよね……》

迫る白刃をすんでの所でかわしつつ、その攻撃をしてきた召喚獣の狙いを定めて箒を構える自分。ですがすぐにFクラスの皆さんがその射線上に飛び出して来てインターセプトしてきます。……悔しいですがやはり、このままの戦い方では遅かれ早かれやられちゃいますね。


《Fクラス 月野造 物理 167点》


悔しいことにこのフィールドを張ってから10分も立っておらず、おまけに自分からは全く攻撃出来ていないのにすでに100点近くC・Fクラスの皆さんのヒット&アウェイで削られてしまっています。さっきまでの一時間以上に動きが洗練されてますね……

「いい加減、楽になったらどうかな?フィードバックって結構痛いんでしょ?かなり苦しんでるように見えるよ」
「正直何だか小さい子虐めているみたいで心苦しいんだ。もう一度言うが降参して大人しくしておいてくれないか?」
「もしここにいる何人かのFクラスの変な人たち『『えっ!?変な人たち!?』』に捕まるのが生理的に嫌なら、Cクラスで身柄拘束しても良いよ。大丈夫、代表もキミのこと気に入ってるみたいだしお菓子とか用意してもてなしてくれると思うし。それにここまでやったなら誰も君を責めたりしないって」

周りをたくさんの召喚獣に囲まれながら、そんな提案をしてくれるCクラスの皆さん。正直言うと、確かにフィードバックは辛いですし何のしがらみも無いならとても魅力的な提案ではあるのですが……

《……みなさん、随分余裕ですね。窮鼠猫を噛むって諺、知りませんか?》
「あらら、強情な先輩さんだこと」

ここまでやってアキさんゆーさんを裏切れるわけありません。無茶で無謀で無理難題なこの策に付き合ってくれた皆さんですからね……!

「まあ余裕というか、もう勝利を確信してるからだけどね。月野君が降参してくれるように、一つ君たちにとって悪いニュースを教えてあげるね」
《悪いニュース、ですって?》
「うん。さっきFクラスから伝令があったの。その伝令によるとね———君たちのメンバーの一人、“木下君を捕えた”そうだよ」
《っ!ヒデさんを、捕えた……!?》
「そうだ。何やら“Aクラスの教室付近でこそこそ何かやっているところを”捕えたそうだ」

ヒデさんを……Aクラス付近で捕えた……?そう、ですか……

「何を企んでいたのか知らないけど……その様子だと君たちにとって木下君は秘密兵器だったのかな?もしかしてこっそりと代表を討ち取ってもらう予定だったとか?」
「まあ、代表はそう言うことも見越して近衛兵置いているから何も問題ないがな。何にせよ木下を捕えられたのは残念だったな」
《……何のことかわかりませんね。それに、それを聞いたからって別に戦意喪失するわけないじゃないですか。ヒデさんの事は残念ですが、それとこれとは別問題です。負けませんよ自分は》
「そっか、降参してくれないなら仕方ないね———いくわよ皆!」

そして再び始まる休むことなき攻撃の嵐。なるべく鍔迫り合いにならないように、そして致命傷だけは避けながらも隙を伺います。伺いますが……これだけ統制された動きに加え何度もシミュレーションされたであろう計算されたCクラスの皆さんの動きに隙などありません。

耳元でブンッとCクラスの召喚獣の武器が空を切る音が聞こえ、装備であるローブが少し切れ味ある武器に掠り、どうしても躱せずに思わず武器の耐久力皆無の箒でいなすなど———徐々に危うい場面が増えてきました。それもそうですよね、こちらは動きっぱなしの上フィードバックがあるので点数はまだ幾分かあっても体力的にかなりいっぱいいっぱいですし……ああ、マズい……おまけに、何だかちょっと眠気が……これ、少しフィールドに長くい過ぎましたか……?

「よし、隙ありっ!」
《っ!?ま、ずいっ!?》

と、そんな自分の一瞬の隙を見逃すCクラスではなく。真正面から上段で振り下ろされた武器に対応が遅れ、回避できずに思わず箒で受け止める自分。何度も言いますがこの武器である箒、前のアキさんの武器であった木刀以上に耐久性は無く。したがって———


バキィ……


———そしてとうとう訪れる最悪の展開。頼みの綱の自分の武器である箒が、その一撃をまともに受けて、鈍い嫌な音を立てて破壊されてしまいました……

《箒が……!》
「やった!やったぞ!あの厄介な武器を壊せた!」
「ナイスよ!これであの子はもう手も足も出ないわ!」
「こらこら、まだ油断しちゃダメよ。最後まで代表の言った通りに動かなきゃね。準備は出来てる?」
「勿論。ちゃんと先生2人呼んでおいたわ」

やはり普通に戦うのは無理がありましたか……結局一度も攻撃できずに武器を失い、取り囲まれてジリジリと壁際に追い詰められる自分。

《くっ……こうなったら、》
「おっと、無駄よ。先に言っておくけど月野君、武器を元に戻すのは勿論さっきみたいにフィールドを解除して逃げようったってそうはいかないわよ」
「竹中先生、もしも月野がフィールドを解除したらすぐに古典フィールドを展開してください」
「そのフィールドを干渉させようとするならその時はすかさず布施先生、化学フィールドをお願いします」

どうやらCクラスの生徒さんの後ろには古典の竹中先生と化学の布施先生が待機しているようです。なるほど……自分がさっきまでの一時間で使った、フィールドを解除して離脱する緊急避難の対策ってわけですか。敵ながらこれは上手い。ここでこのままフィールドを解除しようとしても、解除した瞬間あちらに有利なフィールドを張り直され干渉を起こして逃げようとしても次のフィールドを展開と言うことですね。

「……わかりました。正直一教師としては傍から見ればいじめのようですし、月野君一人にここまでやるのはどうかとは思いますが……」
「ルール的には一応問題はありませんので……すみませんが納得してください月野君」
《やはり緊急回避の対策はちゃんとされていましたね。はは……先生方は、お気になさらず》

待機されている古典と化学は点数が削られてまともに戦闘できない科目です。壊された自分の武器である箒を今すぐにでも直したいところですが、これを直すにはフィールドを一度解除して再び召喚されなければなりません。今のフィールドを解除した途端古典か化学のフィールドを展開されるでしょうね。逃げることも敵わず最後の足掻きさえさせて貰えないってことですか。これはまた随分徹底していますね。多分小山さんの策でしょうが、どうやらとことん自分を倒す気のようですね。

『さあ造ちゃん、大人しく投降するんだ』
『我々は造ちゃんに危害を加えるつもりは一切ない……やましい気持ちも多分ない』
『少し愛でたりするかもしれんが、誤差の範囲だしな』

まあ、フィールド解除して緊急避難する以前に、こうもCクラスの皆さんやここで手をワキワキとさせて近づいてくるFクラスの皆さんに囲まれたら逃げ出す前にすぐに拘束されちゃうでしょうけど。

「やめんかFクラス。気持ち悪い」
「月野君怯えてるでしょうが」
「やっぱこいつ等に任すのはこの子がかわいそうだ。無難に戦死させて補習室で待機してもらっておこう」

……さぁて、絶体絶命とはこのことですね。ここまで徹底的に対策をされれば逆に清々しいものですね、お陰でかえって気が楽になりました。いいでしょう……分が悪い賭けも悪くないです!どうせ倒されるのなら、何もしないよりもマシですからね……“アレ”試してみますか!

「さあ、これで終わりだ。せめて楽に戦死できるように一撃で決めてやるからな」

そう言って長刀を携えた召喚獣を使役して、Cクラスの生徒さんが一人自分の前に一歩前進します。もうすでに攻撃手段がないとわかっている為かFクラスの召喚獣を盾にはしていません。……やれやれ、随分と余裕ですね。

「それじゃあ……これで、ゲームオーバーだっ!」
《……勝負っ!》

そう言って彼の召喚獣が、武器も戦友も退路もない自分に止めをさしにかかります。その研ぎ澄まされた刃は無防備な自分に迫り———彼の宣言通り……


ザンッ!


———そう宣言通り一撃で。その刃は召喚獣の身体を切り裂いて、情け容赦なく戦死させます……

148時間目 ( No.308 )
日時: 2016/03/11 21:40
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

明久Side


『———あんな可愛い造ちゃんを洗脳して意のままに操りこき使ったばかりか、自分たちの身が危ないとわかった途端見捨てるとはな吉井に坂本、それからこそこそ隠れていやがるムッツリーニ』
『許さん……許さんぞ……姫路や島田、霧島や工藤にも造ちゃんと同じように洗脳したんだろうなぁ……その洗脳術を俺にこっそり教えてから往生せいや』
『貴様らのようなリア充と言う名の異教徒を生かしておいては、この世が腐る。おまけにあんなに造ちゃんを痛めつけるとは神が許しても俺たちが許さん。正義の名のもとここで潔く死ぬんだな貴様ら』

一体全体どの口が正義とか言うんだろうか。そもそも造があれだけ大変な思いをしなきゃならないのは君たちのせいだろうに。そんなことを考えつつ、雄二と二人で造の張ったフィールドの外で武器を手にしたFFF団の連中に取り囲まれる。

「ハッ!冗談じゃない。テメェらに殺されるくらいなら自害する方がマシだな。まあ、テメェら程度にやられるほどやわではないがな」
「君たちこそ覚悟しておきなよ。この試召戦争が終わったらこっちだって容赦しないからね」
『随分と強気だな。そんな貴様らにバッドニュースを教えてやろうか』

「「バッドニュース?」」

そうやけに自信満々にこのFクラスの造反、“Fクラスの変”の首謀者の一人である須川君が僕らにこんなことを言いだす。

『今の今まで所在不明だった秀吉だが……さっき連絡があってな、俺たちFクラスが捕えさせてもらった』
『Aクラス付近をウロウロしていたそうだから、追い詰められてAクラスに助けを求める気だったか?ハッ!詰めが甘いんだよ坂本ォ!』

「「な……!?」」

秀吉が……Aクラス付近で捕まった……!?なら、それは多分———

『秀吉は捕えた。後はどこかで卑劣に隠れているムッツリーニを見つけて始末する。それとお前たちに洗脳されている様子の造ちゃんや姫路たちは、後日俺たちが立派に更生させてやるから、お前たちは後腐れなく死ぬんだな』
『その造ちゃんもどうやら限界のようだな。あそこを見てみろ吉井に坂本』
『今まさにCクラスに倒されかかっているようだな。痛い思いしてしまうことになるし、出来れば投降してくれると良いが』
『心苦しいが抵抗するようであれば、洗脳されている以上一旦戦死させるしかないからな』
『かわいそうに。キサマらに何をされたかしらんが、か弱く可愛い造ちゃんもキサマらなんぞ裏切れば楽になれると言うのに……』

色んな意味で更生が必要なのは君らだろうとまた心の中で考えつつ、奴らが指差す先を見てみると……武器である箒を破壊され、四方八方C・F連合軍に取り囲まれている造の姿が見えてきた。そしてFFF団の言う通り今まさにCクラスの人にやられそうになっているようだ……ああ、確かにこれは造のピンチだ。ピンチだけど———

『あそこまで追い詰められたんだ。そのうち造ちゃんもお前たちを見放して降参するかもな。Fクラスの敗北にはなるが痛い思いするよりマシだ。そうなったら滑稽だな、お前たちは可憐で儚い造ちゃんにさえ見捨てられたと言うことに———』
「———やれやれ、半年近く造と一緒のクラスにいるのに君たちなーんにもわかってないんだね」
『……何だと?』

———あの真剣な、そして迷いなき目つきを見れば大丈夫。きっと大丈夫のハズだ。

「ねえ雄二、須川君たち曰く造ってか弱いだってさ。どう思う?笑っちゃうよね」
「ほー?あの造がか弱いねぇ?そういや可憐で儚いとも聞こえたな。全くこりゃお笑い草だな。どうも俺らが知っている造と須川たちが言う造とは何か違っているようだ。造は……あれで俺らに次いで強いと言うのに」
「だよねー!FFF団程度じゃ束になっても敵わないよねー」
『そりゃそうだ。寧ろ貴様ら以上に強いこともわかっているが?何せ貴様ら何かよりずっと点数も高い上に試召戦争でもかなりの戦闘力を———』

「「そういうことじゃないだな。これが」」

『あ?……ハッ!何を意味不明な事を言っているんだ異端者共が。さてはわけのわからないことを言ってこの場から逃げる気だな。させんぞ吉井に坂本』

いやいやいや。清涼祭の時のあの出来事を知らないようだし、やっぱり須川君たちは造の事を良くわかっていないみたいだね。造ってああ見えて……結構凄いというのに。あの時の出来事を見せてやりたくなるよ。あの造をか弱いとか言っている須川君たちの反応が見てみたいや。

「おまけに裏切る?見放す?それに……降参してFクラスの敗北だと?明久の言う通りお前らは一体今まで造の何を見てきたんだ?」
「優しいしいい子だし、可愛いのは勿論だろうさ。それとツッコんでくれたり空気和ませてくれたりと色々やってくれる。それは君たちもわかっているようだけど———造ってそれだけじゃないでしょ」
『吉井、坂本。お前たちは何が言いたい』
「頭の回転も中々良いし、仲間がピンチになればいつでも助けてくれる。あと翔子のストッパーになってくれることもあるな。だが……それだけじゃない。造の本質はきっと俺や明久と何も変わらないだろうさ」

そう言いながらふと、この無茶な作戦を提案した時の造の言葉を思い出す僕と雄二。


『……皆さんがそんな根性無しだとは思いませんでしたよ……っ!』

『勝たなきゃいけないんでしょう!?勝ちたいんでしょう!?……負けられないんでしょう!?……勝つ気が無いのならさっさと帰ってくださいよっ!自分は一人でも戦いますからね!?』

『今日まで頑張ってきたことを無駄にするんですか!?諦められるんですか!?そうじゃないでしょう……っ!勝ちましょうよ、絶対。ここで立ち止まる自分たちじゃないでしょう?試召戦争、諦めるんですか?諦められるんですか?』


———そう、造の根底にあるものは、その可愛い笑顔の奥にある本質は……きっと僕らと同じものだろう。

『『『貴様ら異端者と造ちゃんの本質が変わらんだと……?一体何のことだ!?』』』

やれやれ、この事すら本当にわかっていないのかな須川君たちは。ああ見えて造は———

「「僕(俺)らと同じく……頑固で負けず嫌いなんだよ、造は」」

造は決して諦めない。最後まで勝つために動くはずだ。策があると言っていたしSOSは無い以上助けはいらないって僕も雄二もわかっている。ならばその造を信じて僕らに出来ることをやるだけだっ!そう言って僕と雄二も造に後れを取らないように、須川君たちに向かって拳を突き出した。

148時間目 ( No.309 )
日時: 2016/03/11 21:41
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

造Side


武器である箒を破壊され、逃げ場もなくなった自分。アキさんゆーさんもFクラスの皆さんに囲まれて、自分も自分でC・Fクラスの皆さんに取り囲まれているこの状況。どうにもこうにも、傍から見たら絶体絶命ですねこりゃ。

「それじゃあ……これで、ゲームオーバーだっ!」
《……勝負っ!》

そう言ってCクラスの生徒さんの召喚獣が、武器も戦友も退路もない自分に止めをさしにかかります。その武器である研ぎ澄まされた刃は無防備な自分に迫り———彼の宣言通り……


ザンッ!


———そう宣言通り一撃で。その刃は召喚獣の身体を切り裂いて、情け容赦なく戦死させます……






《Fクラス 月野造  物理 144点》
        VS
《Cクラス 吉岡創路 物理 DEAD》


「「「…………は?」」」

———まあ、その刃に切り裂かれたのは“襲い掛かってきた彼の召喚獣自身の身体”なんですけどね。よし……よしっ!上手くいったっ……!まずは一人戦死!ゲームオーバーですって?いいえ、窮鼠猫を噛ませて頂きましたよ!ここからがゲームスタートです!

「え、え?な……なん、で俺……戦死して……?え?あ、あの子は倒れてなくて、攻撃したはずの俺が戦死して……え?え?」
「ちょ、ちょっと!?今何があったの!?」
「切りかかったと思ったのに……なんでこっちがやられているのよ!?」

勝利を確信していたのでしょう。油断して状況をよく見ていなかったC・Fクラスの皆さんは混乱の極みに。辺り一帯が騒めき始めます。

「や、ヤロッ……!これでも喰らえっ!」

味方がいつの間にか戦死して、慌てたのでしょう。一人のCクラスの生徒さんが今度こそ自分に止めをさすべく、襲い掛かってきました。さて……この人の召喚獣の“武器”は斧ですか。だったら———

「くっ、そっ!当たれェ!」
《(ボソッ)確かこういう場合は……紙一重で、かわしつつ……》

左右に斧をめいいっぱい、力強くブンブンと振り回す召喚獣をバックステップでギリギリでかわします。その召喚獣を使役している大野くん……でしたっけ?あまりに当たらないことに苛立ち焦れた大野くんは……

「んのヤロォ!いい加減、倒れろっ!」
《(ボソッ)隙を作らせてから……》

思い切り、自分に向けて思い切り召喚獣に斧を振り下ろさせます。その攻撃も最小の動きで避け勢いの付きすぎたその斧は、ザクッと地面に突き刺さり突き刺さったところで———今度はこちらが間合いをすぐに詰め、彼の召喚獣の後ろに回り込んでそして———


ザシュッ!


《Fクラス 月野造 物理 141点》
        VS
《Cクラス 大野透 物理 DEAD》


「お、俺が……この俺が戦死……!?な、何をしたんだ!?」
「ま、まただとっ!?くぅ、一体全体どうなっていやがんだっ!?」

———これで二人目も戦死。更にもう一人わけもわからず自分に飛びかかってきました。次の“武器”は……ナイフ、いや小太刀?まあ、どっちでもいいですけどね。

「セイッ!ダアッ!……こんのぉ!」
《(ボソッ)あの人曰く、ナイフ使いと対峙した時は……突きの時一直線上にならないように身体をずらしつつ……》

先ほど同様紙一重で攻撃をかわしつつ隙を伺います。焦って攻撃が単調になったところで思い切って懐に入り込み、突き出されたナイフを持つ手に———正確にはその手首に今度は手刀を打ち込みます。

「ああっ!?ぶ、武器がっ!」

手首にダメージを受けた召喚獣は思わずその武器を手放してしまいます。その瞬間、手放された武器をパッと空中で掴み取り、自分とは逆に無手になり怯んでいる召喚獣を……

《っはっ!》


《Fクラス 月野造  物理 140点》
        VS
《Cクラス 野々村充 物理 DEAD》


逆にこちらがスパッとその喉元を切り裂きます。よし、これで三人目っ!

「わ、わかった……!あいつ……“俺たちの召喚獣の武器を、自分の武器として”使っていやがる!?」

流石に三度目ですし、どうやらこのカラクリに気付かれたみたいですね。おまけに元々の召喚獣の武器も、その召喚獣が戦死して姿が消えると同時に消え去って再び自分は無手状態になってしまいます。ですが……これなら、いけるっ!

《……護身術レベルのものですし、本来はあまり実戦向きではありませんが何とか上手くいきましたね。鍛えてくれたサクヤさんに感謝です》

ではここでネタ晴らしのお時間です。最初に倒した長刀を持った吉岡くんの召喚獣をどう倒したのか。召喚獣の手首を捻らせて長刀を手放したところでその長刀を拝借。そのままその長刀を使って切り裂いただけ。二人目の斧を持った大野くんの召喚獣をどう倒したのか。その武器である斧を地面に突き刺さらせた上で、彼の召喚獣に足払いをして体勢を崩させてそのまま突き刺さった斧目がけて倒れさせただけ。

それはとっても簡単な事、武器が無いなら……“相手の武器を利用するまで”ですよ。

「っ……!Fクラス、何をボーっとしてるのよ!?」
「さっさとアンタたちも行きなさい!私たちのサポートをするのがあなたたちの役割でしょ!」

『は、はいっ!今すぐにやりますので!……造ちゃん、そこまでだ!』
『オイタが過ぎるよ造ちゃん!お尻ぺんぺんしちゃうからね!』

今度はFクラスの二人が自分に向かってきます。さて……こっちも上手くいけばいいですか……息をすうっと吐いて気合いを入れ直し、対処に入ります。まずは自分を捕まえようと伸ばしてきた一人の召喚獣の手を避けながら逆に掴み取り———

《逆らわず、勢いを利用して……投げるっ!》
『な、何ィ!?』
《もう一人も……足を引っかけて、後は後ろから軽く押すだけで———》
『ふぃ、フィールド外にっ!?』

突進してきたその勢いを殺さず、流れに逆らわず相手の力を利用して一体はくるんと召喚獣を投げ飛ばしもう一体は押し出して、お互いの点数を消費することなくフィールドの外へ。……よし、これもOK!

《先生、確認ですが……今のは別に敵前逃亡になりませんよね?自分の意思でフィールド外に出たわけではありませんので》
「え、ええ……自分でフィールドの外に出るならともかく、こういう場合はかなりギリギリですがルール的には……一応大丈夫だと思います」
《それは良かった♪では……何の問題もありませんね。さあ、どんどん来なさい!》
「か、数の上ではこっちが上だよ!みんな、月野君に一斉攻撃しよう!」
「わ、わかった!いくぞ!Fクラスの連中も月野をどうにかしろっ!」

『『『い、イエッサー!!!』』』

そう言って飛びかかってきた皆さんを、柳のようにしなやかに演舞にも似た動きで翻弄します。もしもの時の為にサクヤさんに昔から教え込まれた合気に近いこの護身術と武装解除術が、まさかこんな時に役立つなんてね……

「なんなの……一体なんなのよアレ!?相手の武器を奪い取って戦う!?そのくせ味方は戦死させずにフィールド外に飛ばす!?」
「そんなのアリかよ……!?こんなの見たことも聞いたことも無いぞ!?何をどうしたらこんな珍妙な事が出来んだよ!?」

この戦法は恐らく学園トップクラスの召喚技術を持つアキさんや先生方にも出来ないもの。何故ならこれはフィードバックだけでなく……“触覚を持っている”ことと“召喚獣と同じ目線で戦える”と言う特性を活かした戦法だから。そう、相手の召喚獣の重心や関節がどの程度まで動きどのように打ち込めば倒れるのかを“召喚獣として体感できる” ……今の今まで接近戦で足を引っ張っていた自分が悩んで編み出した自分だけの戦法です。

一度ふぅっと深呼吸した後、焦り始めた皆さんの前で一礼をしながらクスリと笑って再び構えを取る自分。

《感謝しますね、皆さん。失敗した時のリスクがあまりに大きかったので、今までは実戦はおろか模擬戦ですら試すことが出来なかったのですが———》

さて。一応戦える状態になったとは言え、この場にはまだCクラスの生徒さんは15人以上。妨害するFクラスの生徒さんもフィールド外に投げ飛ばしてもすぐまた召喚して戻ってくる為、結局自分が不利であることには変わりありません。ですが……

《———お陰で一つの弱点を克服できました。ゆーさんも喜んでくれるでしょうね、これならば後のAクラス戦でも戦術の幅が広がって更に戦えそうですから。そのお礼と言っては何ですが……さあ来なさい。まとめて相手してあげますよっ!》

今度はこっちの番ですね。やられっぱなしでは面白くありませんし……反撃の狼煙、上げさせてもらいましょうか……!

149時間目 ( No.310 )
日時: 2016/03/11 21:44
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

———数十分前:Cクラス———


『———何ですって……!?先輩を倒すどころか、こちらの被害が拡大している!?』
『は、はい!妙な体術を使ってこちらの武器を奪い、攻撃できなくなった私たちの精鋭がどんどん倒されています!現在わかっているだけでも12人以上戦死!今もかなりの数倒されている模様!』
『Fクラスの盾たちはどうしたの!?あいつらを使えば……』
『ダメです代表!あいつらすぐに月野にフィールド外に投げ飛ばされる上、身軽に、そして接近戦が可能になった月野に対しては盾としてはまるで使えませんっ!』
『むしろ盾どころか、わらわらと召喚されているせいで奴らが非常に邪魔でこちらの防御も回避もままならない状況です!』
『やられた……!そう言えば噂だけど聞いたことがあるわ……清涼祭の時に暴漢たちがFクラスの生徒を攫ったとかいう事件があったそうだけど、それを月野先輩や坂本君たちが制圧したって噂……そうか、先輩って元々戦闘力が高い上に自身が召喚獣として動ける……だからそんな器用な真似が……!?』
『だ、代表!また5人の戦死者が出ました!こ、このままでは……』
『……っ!そんな……こんな事って……!』
『あ、あの代表、少しお話が……』
『……えっ?』


造Side


《———よし、次っ!》
「と、止まらない……あの子止まらないわっ!?なんでこうもあっさりこっちがやられちゃうの!?」
「ついさっきまでこっちが追い詰めていたのにどうして……!?」

ちぎっては投げちぎっては投げ———とはいきませんが、接近戦が可能となってからは一時間前とは大きく変わり大体いい感じでCクラスの皆さんを倒せていますね。流石に無傷で戦えるほど甘くはありませんが、それでもダメージを最小に抑えられています。……ここまで上手くいっているのは今現在の主に二つの理由が原因でしょうね。

「えいっ!このぉ!……当たってよっ!?なんで……なんで当たんなのよ!」
「ちょ、ちょっと!?私を巻き添えにしないでよ!?」
「しょ、しょうがないでしょ!?あたしそんなに操作上手くないし……」

一つ、Cクラスの皆さんが召喚獣の扱いに慣れていない事。二年生になりCクラスの皆さんは正式な試召戦争は今回を除くと一学期のAクラス戦の一度だけしかやっていません。どうも皆さん戦い方にぎこちなさを感じます。普段から召喚慣れしている上に自身の身で戦える自分と戦うとなると戦闘経験値の差が出てくるのも仕方のない事でしょう。

「くそっ……これ使いにくいっ!」
「きゃっ!?あ、危ないでしょ!?わたしまで戦死させる気!?ちゃんと使ってよ!?」
「しかたねーだろ!?武器が新しくなっている分慣れてないから戦うの難しいんだよ!?」

二つ、召喚獣の扱いだけでなく武器の扱いにも慣れていない事。学園長の計らいで期末試験後に召喚獣の装備の新調が行われたお陰で、普段から使い慣れていた武器よりもリーチの違いなどが原因で相当戦闘がし辛いようです。自分から見てみると目の前の召喚獣たちは構え・武器の持たせ方・使い方———どれもどこかチグハグで隙だらけ。そんな相手から武装解除をすることは、サクヤさんから幼い頃から護身術を教わってきた自分にとってはそう難しいものではありません。

《そう言う意味では……今回このタイミングで攻めてきてくれたのはラッキーでしたかね。感謝しますよCクラスの皆さん》
「何の話よ!?」
「くそっ……俺ら嘗められてるな……」

多分この二つの条件が無かったら、こうも上手くいかなかったでしょうからね。貴重な緊張感のある良い実戦経験を積むことが出来て感謝ですよ。そう考えながら戦っていると先ほどまでは20人近くいたCクラスの生徒さんも、夢中で戦っていたせいか気が付けばもう2、3人くらいしか残っていませんね。

「も、もう後がないぞ……!こうなりゃせめて一撃でも———」
《借りますね、その武器》
「———ああっ!?」

「「か、河瀬君っ!」」


《Fクラス 月野造  物理 132点》
        VS
《Cクラス 河瀬雅人 物理 DEAD》


ダメ押しで一人の召喚獣を打ち倒し、残ったのは二人のCクラスの生徒さんと自分を妨害しているFクラスの皆さんだけ。……よし、そろそろ頃合いでしょうかね。

「よくも!みんなの敵討たせてもらいますっ!」
「だ、駄目だよすみれちゃん!?一人で飛び出しても———」
《飛んで火にいる何とやら……セイッ!》

最後の二人のうちの一人が、ヤケになったまま自身の召喚獣を自分に向かって飛び出させます。その攻撃を避け、後ろに回り込んで腕を極めて武器の日本刀を手放させてから地面に押し倒す自分。……OK、ちょうどいいですし少しこの状況を利用させてもらいましょうか。

「そ、そんなっ!」
「ああ、すみれちゃん!?ま、待ってて今助けるっ!Fクラス、援護して!」

『『『了解っス!今行きま———』』』

《全員動かないでくださいっ!動けば彼女、戦死することになりますよ!》

「「っ……!」」

『『『なっ……!?』』』

取り押さえてから彼女の召喚獣の武器である日本刀を召喚獣の首元に付きつけ、ほんの少しでも力を入れれば戦死になるギリギリのところで日本刀を止めつつ、この場にいる皆さんに向けて大声でそのように警告します。怯ませるように大声で叫んだこともあってか、その警告に皆さん思わずその場で固まってしました。よしよし、良い感じ良い感じです。

《ありがとうございますね、少し話があるので皆さんそのまま動かないように。勿論こちらの召喚獣の召喚者である———えっと、新野さん?ですよね。貴女も動いちゃダメですからね》
「くっ……さっさと戦死させなさいっ!京子ちゃんも私に構わずこの子倒しちゃって!」
《こらこら、Cクラスも戦力的に余裕がなくなっているんですよ。今貴女が戦死したら困るのはCクラスの皆さんの方でしょう、動かない方が賢明ですよ。そこの貴女も変な行動をとらないように》
「わ、わかりました……すみれちゃん戦死させたくないですし……」
「うぅ……ゴメン、京子ちゃん。それに代表……」

……どうでもいいですが、何だかこれ自分が悪役っぽいですね。そ、そりゃあ確かに人質取っているわけですし傍から見れば悪役そのものですが。……ま、まあここは今回の騒動はCクラスに一杯食わされたわけですしお相子ってことで許してもらいましょう。気を取り直して、もう一人残ったCクラスの女生徒さんに話しかけることに。

《さて、そこの貴女———新沼さん?でしたよね。ちょっと取引しませんか?》
「!?な、なんですか……?」
《このままではこちらの新野さんが戦死することになるわけですが……取引しませんか?こちらの要求を呑んでいただけるなら、彼女は解放します。これ以上戦死者を増やして戦力を減らしたくなければ———そこっ!動かないっ!》

『『『ぐっ!?』』』

と、こっそりと近づこうとしていたFクラスの皆さんにもう一度大声で警告します。やれやれ、油断も隙も無いんですから。

《Fクラスの皆さんも動いちゃダメですからね。下手に動いたらこちらの新野さんを戦死させることになっちゃいますから。同盟しているCクラスの生徒さんを見放すのは出来ませんよね》

『『『っ……!な、なんて悪い子なんだ……!?造ちゃん!お父さんはそんな娘に育てた覚えはありませんっ!?』』』

《育てられた覚えもなければ、自分の父は貴方方ではありませんよ!?》

と言いますか、悪い“子”とか“娘”って……この騒動が終わったら、皆さんまとめて説教ですからね……今はそんなことに構っている暇がないので無視しますが。

「と、取引ってどういうことですか?」
《あ、応じてくれます?》
「すみれちゃん解放してくれるなら……で、でも内容次第ですからね!?」
《ありがとうです。では早速その取引の内容なのですが……えっとですね。実はうちの代表からそちらの代表である小山さんに“ある手紙”を渡してほしいと頼まれていまして。そこで取引ですが———》

149時間目 ( No.311 )
日時: 2016/03/11 21:45
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

———冒頭に戻ってCクラス———


『あ、あの代表、少しお話が……』
『……えっ?あ、貴女討伐部隊の新沼さん!?良かった……無事だったのね』
『いいえ、違うんです……ごめんなさい代表……』
『?違うって、何がかしら?』
『その……すみれちゃん人質に取られちゃって……すみれちゃんを戦死させないことを条件に月野君と取引してここに戻ってきました。勝手なことをしてごめんなさい……』
『取引……?それってどんなことか教えてもらえるかしら?』
『はい、月野君に“条件はですね、これを小山さんに渡してください。うちの代表からの手紙です”と言われて……この手紙を預かったんです』
『ああ、なるほど。つまりはメッセンジャーになったってことね。いいえ大丈夫よ、貴方が無事で何よりだわ。その手紙、見せてもらえるかしら』
『は、はい!これです!どうぞ!』
『ありがと。さて———』


〜メッセージ確認中:しばらくお待ちください〜


『……なるほど、そう来たか』
『代表、その手紙には一体何と?』
『要約するとこんな感じかな。“お互いがかなり消費しているし時間も時間だから、お昼休憩を取らないか”———つまりは一時休戦の申し込むのようね』
『一時休戦……ですか』
『ええ、こうも書いてあるわ。“勿論Fクラスの暴れている連中は一時休戦中も関係なく俺たちを殺すために勝手に動くだろうし、Fクラスは現在補充室を使用不可だ。そう言う意味ではこっちはともかくCクラスにデメリットは無いと思う。もし承諾してくれるなら承諾した時点から一時間の休憩を取らせてほしい。それと、別にこっちが補充できないからと言ってCクラスの点数補充にケチをつけるつもりはない。一時休戦中だろうといつでも自由に補充をやってもらって構わない”———だそうよ』
『……普通に考えれば、こちらに非常に有利な条件ですね。ですが……』
『あの坂本君の事だし、十中八九何かしらの作戦がありそうよね。……でもこれは……うーん』
『どうする?個人的には嫌な予感するし受けたくないんだが』
『で、でも向こうほどじゃないけど私たちも動きっぱなしで休憩も欲しいかなって……』
『そうそう。それに単純に坂本君たちも休みたいんじゃないの?坂本君・吉井君・月野君って朝から今までほとんど休みなしの動きっぱなしでヘロヘロだろうし』
『いやだからこそ奴らが疲れている今、倒しておくべきじゃないのか?これ絶対何かの罠だと思うし』
『代表、どうしますか?』
『……受けましょう、この申し込み。このまま続けても勢いに乗った月野先輩に残りの全員が倒されかねないわ。この一時間はこっちも体力を回復しつつ……次の手を打ちましょう。英語等の科目を中心に先輩の現在点数が低い科目を全員で補充!その科目の先生も立会人として確保しておきなさい!いくら接近戦でも戦えるようになったと言っても、先輩の元々の点数が低い状態で戦えばこちらにも勝機があるわ!休戦が終わり次第、仕掛けるわよ!』

『『『了解です小山代表!』』』

『それと……新沼さん。悪いんだけどこの申し込みを受けるにあたって、一つ条件があると先輩に伝えてきてくれないかな』
『はい、勿論大丈夫です!それで、一体何と伝えればいいんですか?』
『それはね———』


造Side


《———条件は、休戦終了後どの場所からゆーさん……もというちの代表が試召戦争を再開するのかを先に公開しておいてほしい、ですか。了解です。新校舎屋上にて開始すると小山さんに伝えておいてください》
「……わかりました、そのように代表に伝えますね。では今から一時間、休戦と言うことでお願いします。それでその、すみれちゃんを……」
《了解ですよ。新野さんの召喚獣は解放します。新野さん、すみませんでした》

交渉成立ですね。ほっと胸を撫で下ろしながら、周囲を警戒しつつ新野さんを解放します。相手クラスの生徒さんに言う言葉ではありませんが、新野さんお疲れ様でした。

「きょ、京子ちゃんごめんね……私が捕まったせいで……」
「ううん、大丈夫。代表も無事で良かったって言ってたし」
《では、お二人とも申し訳ありませんでしたね。今は休戦と言うことでこの辺で失礼します!》

『『『ああっ!?待つんだ造ちゃんっ!逃がさないよ!』』』

《いえいえ、逃げさせてもらいますよ!……おっと、ついでに解除(キャンセル)!》

メッセンジャーとなってくれた新沼さんと人質にしてしまった新野さんに頭を下げて、取り囲んでいたFクラスを振り切りながら一度フィールドを解除して召喚獣化を解きます。そのままちょこまかと現在進行形でFクラスの皆さんと交戦中のアキさんゆーさんの元まで全力疾走する自分。そして———

「(お待たせしましたお二人とも!交渉、成立しました!)」
「(お疲れ造!んじゃ雄二、今だよ!)」
「(うっし、よくやったな造!逃げる準備を!これが最後だ、ムッツリーニから貰った道具全部使うぞ明久!)」

『『『つ、造ちゃん!?ま、まさか……あの包囲網を突破したの———』』』


ボンッ! カッ!! パァンッ!!!


『『『ぐぁあああああああああああ!?ま、またぁあああああああああ!?』』』

———自分が到着すると同時に三人でアイコンタクト。そのままアキさんとゆーさんはこーさんが託してくれた閃光弾・けむり玉・爆竹etc.を作戦が上手くいった祝砲とでも言いたげに、派手に盛大に惜しみなく使い切ります。これでまた暴走中の皆さんを一時行動不能にして、その間に自分はと言うと、こっそりと皆さんに聞こえないようにあるキーワードを呟きます。

『ち、ちくしょう……またアイツら卑怯な真似をやったな……』
『あ、慌てるな!ゲッホゲッホ!?……い、急いで取り囲め!』
『い、いいか!絶対に通すな!蟻んこ一匹通すんじゃねぇぞ!』

モクモクとけむり玉の煙が充満する中、それでも懸命に自分たちの身体で円を作って取り囲もうとする皆さん。

《アキさん、ゆーさん。煙幕が晴れる前に戻ります、しっかり掴まっていてくださいね》
「うん、よろしく造!それにしても……見てよ二人とも!はははっ!随分頑張るね、FFF団」
「くくくっ!こりゃ滑稽だな!俺らがすでにそこにはいないって言うのに必死でガードしてやがる。そこでしばらくジッとしてやがれってんだ」

そんな皆さんを“上空で”眺めながら悠々と隠し部屋の出入り口へと向かう自分たち。そう、こっそり呟いたのはいつもの「起動(アウェイクン)科目、現代国語」というキーワード。そして持っててよかった金の腕輪の能力【飛翔】の能力で空から逃げた自分たちです。ゆーさんの言っていた通り、現代国語を温存しておいて正解でしたね。

そのまま見つからないようにこっそりと隠し部屋の出入り口———今回は最初に使った体育倉庫にある隠し扉に向かいます。念のため、三人で何度か周囲を伺った後は急いで体育倉庫の中に入り、隠し扉のロックを大急ぎで外してそして———

「「《———終わったぁああああああ!!!》」」

なだれ込むように隠し部屋に入ると、そう三人で魂からの叫び声を上げながらそのままバタンと仰向けに倒れる自分たち。もうしばらくは動けそうにありませんね。身体はぐったりヘロヘロ状態、こりゃ明日は筋肉痛確定でしょうね……ですが……ですが!

「はぁ……はぁ……っしゃあ!よくやったぁ造ぅ!やっぱしちゃんと決めてくれやがったな!これが終わったら何でも好きなモン(明久の金で)食わせてやるぜ!」
「信じてはいたけど……ホント凄いよ造っ!まさかあの状態から逆転してくるなんて!今度皆で美味しいもの(雄二のおごりで)食べに行こう!」
《あ、ありがとうございますっ!皆さんが、一か八かのこんな賭けを信じてくれたお陰ですよっ!》

最も厳しい勝負を乗り切って、無事に生還できたこと・作戦が上手くいった事・一時間と言うインターバルを得たことに三人で仰向けのまま喜び合います。良かった……本当に良かった……!

150時間目 ( No.312 )
日時: 2016/03/11 21:48
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

造Side


「…………おつ、かれ……なんと、か……無事みたい……だな……」
《こーさん!ああ、良かったこーさんも無事で。大丈夫ですか?》
「…………俺は、まだ、まだ……平気、だ。それより……今のうち……に、秀吉の用意してた……水、飲んでおけ……」
「おう、サンキュー」
「命の水だね……ちょっとでも回復しとかなきゃね」
《ありがとうですこーさん。なら……解除(キャンセル)!》

C・F連合軍に追い詰められて、後がない土壇場で起死回生の一手を決め何とか作戦通りに約一時間の一時休戦期間を得た自分たち。流石に疲れて3分ばかり仰向けに倒れていましたが、ソファで横になっているこーさんに声をかけられたところで気合いで起き上がり(ちなみに自分は召喚獣化を解いて)ヒデさんが前もって用意してくれていた飲料水を飲みながら、作戦会議に移ることに。

「ふぅ……生き返るな。さて、それじゃあ造が作ってくれたこの一時間を無駄にしないように有効に使うとするか」
「そだね、ある意味でここからが“本当の勝負”なんだし」
「わかっています。まずは現在の戦況分析から入りましょう」

そう長々としのぎ切ったことを喜んでいる暇もありませんからね。すぐさま頭を切り替えて次の作戦に移らねば。

「まずは秀吉の件だ。FFF団曰く確か“秀吉を捕えた”と言ってやがったな」
「うん、言ってたね。“Aクラス付近を”コソコソとしていたところを、とかどうのこうのって」
「Aクラス付近……と言うことはつまり———」

「「「———そう言う事か(ですか)」」」

……三人でコクリと頷きます。なら多分“そう言う事”なのでしょう。

「で、ムッツリーニはどうだ?見た目かなりグロッキーだがあと少しはもつか?」
「とても辛そうですよこーさん……本当に平気ですか?」
「…………なめ、るな……これくらいで……俺は、くたばらん……」
「もう少しの辛抱だし、耐えるんだよムッツリーニ」

鼻血の出し過ぎによる貧血+暴行を受けたことでダウン一歩手前のこーさんですが、ソファで横になりながらも気丈にそう言ってくれます。見た感じ相当危険な状態ですが、本人曰くあと30分くらいなら大丈夫とのこと。こーさんも頑張って……

「さてと、なら今のところはほぼ作戦通りだな。造のお陰で残りのCクラスの連中は最初の一時間で11人、次の一時間で5人、そしてさっきの時間で18人の計34人戦死した。残りは代表の小山入れて16人か」
「秀吉の作戦も多分良い所まで行ってたはずだよね」
「なら、やはり作戦通り次で決めに行きますかゆーさん」

……なるほど、いよいよ次が勝負の時のようですね。どちらのクラスも休戦明けに勝負を決めに来ることになるはず。気合いを入れねばね。

「おう、そのつもりでいく予定だ。となると最後に一つだけ問題が残っているな」
「一つだけ問題……?え、それって何だっけ?」
「おいおい忘れんなよ、一番面倒な奴らが残っているだろ」
「面倒な奴ら……ああ、そっか。それってあの狂戦士達(バーサーカーズ)の事だよね雄二」
「あー……そう言えば残っていましたね、一番厄介な問題が」

あまりに厄介過ぎて放置していた問題があることを思い出す自分たち。アキさんやゆーさんへの嫉妬のゲージが臨界点を超えた結果、理性と言語を引き換えに得た超絶パワーでアキさん達を抹殺しようと校内をうろついているいわゆる狂戦士達(バーサーカーズ)と呼ばれるクラスメイトたちだけはどうにもならないと言うことで、さっきまでヒデさんもゆーさんもお手上げで放置していたんですよねー……

「今の今までは面倒過ぎて放置していたが、一時間後の“詰め”の為にも奴らは放っておくわけにはいかんだろう。考えたくはないが、放置したままじゃ下手をすりゃ奴らの存在が最悪の結果を招きかねんぞ」
「けどどうするのさ雄二、例えムッツリーニが回復して僕らの手錠を外してくれても……」
「ああ、明久。お前が懸念している通り正直奴らと戦うのは俺と明久とムッツリーニの三人がかりでもちょいと厳しいな。万全の状態のムッツリーニでさえあの連中を相手にするのはかなり骨だろう。今回はただでさえムッツリーニは弱っているしな」
「おまけに風の檻をぶち壊しちゃう方々ですからね。元々は一応捕縛用の能力ですのに全然効かないですし、どうなっているんでしょうね皆さん……」
「造、アイツらは今に限って言えば人間として考えるな。暴走中のあいつらは猛獣以上のパワーと猛獣以下の知能を兼ね備えている化けもんだからな」

そうそう。余談ですが道すがら一度試しに点数を消費して風の檻で捕えて動きを止めようと試みたのですが……どういうわけか清水さんや清水さんのお父さん———とまではいかないものの、ものの数秒で檻を破られてしまうと言う結果に終わりました。どうもこの捕縛用の能力、暴走している方々を捕えるのにあまり役に立っていませんね……本来なら野生の熊でさえ簡単に封じ込められるハズなのに……

「……とりあえず自分も彼らを止める方法を考えておきますが、先に姫路さんと島田さんに会ってきますね。作戦の説明も必要でしょうしずっと閉じ込められて現在の状況は勿論、アキさんの無事も知りたくてたまらないと思いますので」
「おう、頼んだ造。俺らは“例の約束”があるし、まだここで待機しておく。その間に俺らも奴らを止める方法を考えておくな」
「…………気を、付けて……な。まだ何人か……校内……うろついている、はず……だし」
「ゴメンね、二人を頼んだよ造。……あ、そうだ!ちょっと待って造!」
「はい?どうしましたアキさん?」
「……その、さ。出来ればでいいんだけど、一つお願いがあるんだ。二人ともお腹空いているかもしれないし———」

と、隠し部屋から出る前にアキさんに呼び止められて、一つ頼みごとをされる自分。その内容は———ふふっ♪なるほど、アキさんらしいものですね。


明久Side


「くくっ……明久、中々やるなぁオイ」
「……何さ雄二。その憎ったらしい笑い顔はさ」
「———“お腹すいているかもしれないし、教室にある僕の鞄の中から二人分のお弁当と水筒を瑞希と美波に渡してくれないかな”……だとよ」
「……それが何さ。そしてその忌々しい顔は何さ」
「いいや?明久にしては随分と気が利くなと思っただけだ。いよっ!ハーレム男!爆ぜろ!」
「ええぃ、黙れ雄二。キサマこれ以上言うつもりならこっちにだって考えがあるからね」
「あ?言うつもりなら何だ?キレるってか?いいぜ、暇だし相手してやる」
「そんな必要はないよ。もしこれ以上余計なこと言うなら———これが終わったらすぐさま霧島さんに、雄二が“毎日お前が作ったみそ汁が飲みたい”って言ってたって伝えてあげるから覚悟しておくように」
「……すまんかった。マジですまんかった」

造に二人を任せて“約束”の時間までこの場で待機をする僕と雄二とムッツリーニ。こんな他愛のない話をしながら、少しでも体力を回復させる。秀吉が上手くやってくれていたなら、そろそろのハズだけど……

「それにしても……どうすんの雄二」
「何がだ明久」
「今暴走している狂戦士達(バーサーカーズ)のことどうするのかってのもあるけど……この造の作戦が上手くいったとしても、これから先もFFF団が暴走しない保証はないと思うんだけど」
「…………たし、かに……いつ……また、アイツらが……裏切るか……」

150時間目 ( No.313 )
日時: 2016/03/11 21:49
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

あれだけ造や秀吉が必死になって頑張ってくれたんだ、きっとこの作戦は上手くいくって信じてる。でもAクラス戦も控えている僕らは、クラス全員団結しなければあのAクラスに勝てるものも勝てないって思う。雄二もそれはわかっているようで、僕とムッツリーニの言葉にコクリと頷く。

「わかっている。狂戦士達(バーサーカーズ)の対処法は今もまだ考え中だが、この試召戦争が終わってからのFFF団の制御法はもうすでに考えてある。今回の決着が着き次第実行に移す予定だ」

ふむ、なるほど。どうやらコイツもただ闇雲に追われたり戦ったりしているわけじゃなかったようだ。腐っても元神童、何だかんだで地味に頼りになるね。

「そっか。まあ、ちゃんと考えてあるなら任せるよ。じゃあ後はこの場を切り抜けるためにもあの狂戦士(バーサーカーズ)を何とかする作戦を練ることと、例の約束まで———」


ガタンッ!


「「「っ……!?」」」

そんな話をしていると、突然まだ使っていない最後の出入り口から物音が。僕ら三人に緊張が走る。ピピーッ!っとロックが外される音とガシャンッ!と隠し扉が開く音が聞こえる。

「「「……誰だ!」」」

と、言いながら侵入者に声をかけながら身構えたのと同時に、僕らの前に“Fクラスにはいない女生徒”が一人飛び込んできた……!

「見つけたっ!こんなところにいたっ!」
「き、キミは……!」
「お前……!」
「…………っ!」


———補充試験室(生徒指導室)———


造Side


《———お待たせしましたお二人とも!……それに先生も。ホントに待たせちゃって申し訳ありません!》

一度こっそりとFクラスに侵入して、アキさんのお弁当等を回収してから最初と同じように天井裏を伝って姫路さんと島田さん(+福原先生)が監禁されている補充試験室である生徒指導室に戻ってきた自分。

「月野!……良かった、あれから随分戻ってこないから心配してたけど、アンタも無事だったのね」
「月野君、お疲れ様です!……それでその、いきなりで申し訳ありませんが、明久君たちは……?」

するすると天井裏から降りながら、召喚獣状態を解除した自分に心配そうに駆け寄るお二人。少し疲れた表情に見えますが無事で何よりですね。

「ええ、大丈夫。アキさん達も勿論元気いっぱいですよ。———はい、これアキさんがお二人に渡してほしいと自分に託してくれたアキさん特製のお弁当です。“一緒に食べられなくてゴメンね、僕は大丈夫だよ”って伝えてほしいともアキさんが言ってました」
「これアキの……!そう、元気なら良かったわ。それに助かるわ月野。アキのお弁当ならウチらもすぐに元気になれるわ!」
「助かります月野君。私たち補充試験をさっきまで4科目ほど受けててお腹ペコペコだったんですよ」

……!補充試験を4科目もですか!良かった、姫路さん達自分の意図をちゃんと組んでくれていたようですね。これなら作戦もより確実性が増してきました。そうか、お二人はお二人の戦いをやっていてくれたんですね。感謝感謝です。

「ナイスですお二人とも!きっとお二人ともちゃんとやってくれるって信じてました。ではお昼を食べながら状況整理と……“これからの作戦”について説明したいと思います。では———おっとその前に、福原先生」
「え?あ、はい。どうしました?」
「うちのクラスの生徒さんが先生まで閉じ込めちゃって本当にすみません。もう少しの辛抱ですので。……それとこれ、一応自分のお弁当です。量が多いので、先生も良かったら一緒に食べませんか?」
「へ……?あー、そうですね。ではお言葉に甘えさせて頂きましょう」
「どうぞどうぞ。では———いただきます」

「「「いただきます」」」

てなわけで、少し遅めのお昼兼作戦の説明に入ることに。


〜お昼&造状況・作戦説明中〜


「———と、言うわけです。今のところ一応一つの問題を除けば作戦通りに進んでいると思います」
「……何というか、アンタら朝から今まで随分無理してたみたいね。無茶をしないで……と言いたいけど、そうも言えないのが正直辛いわ。まあ、その分今度何か奢るからね」
「月野君、これが終わったら明久君たちや皆さんと一緒にケーキバイキングにでも行きましょう。皆さんの分は私たち奢りますので」

全体の状況と休戦終了後の作戦をお昼を食べながら一通り説明すると、お二人は気の毒そうに自分たちを気遣ってくれます。いえいえ、辛いのは皆さん一緒ですしそうお気になさらずに。

「ですからある程度はヒデさんが何とかしてくださったハズですから、残りの問題は一つだけだと思います」
「残りの問題……それっていわゆる“狂戦士達(バーサーカーズ)”と呼ばれるFクラスの皆さんをどうするのか、ですか?」
「はいです。困りましたよね……」

そう、残る問題は十数人ほどいる暴走中の彼らの対処をどうするか。先ほどFクラスにこっそり侵入した時もゆらりゆらりと声にならぬ声をあげてアキさん達を探して校内を徘徊していました。アキさん・ゆーさん・こーさんが見つかればきっとリミッターが吹っ切れた身体能力でアキさん達をコロコロするまで止まらないでしょう。

厄介なのは言葉がまるで通じないことと、あの万全の状態のこーさんですら一対一ならともかくあの人数を相手に太刀打ちできるか危ういとされる戦闘能力ですね。こうなった以上一度物理的に止めて、正気に戻ってもらう他ありませんが……

「恐らく仮にこーさんが回復して、アキさん達が繋がれている手錠を開錠して3人で戦ったとしても……その方々を止めるのは難しいだろうとアキさん達が仰っていまして」
「こ、困りましたね……明久君たちもとても強いですけど、それ以上って……」

この先の作戦、彼らが暴走しっぱなしでは成功する確率がガクッと下がります、例えばサクヤさんや西村先生なら彼らを止めることが出来るでしょうが、サクヤさんは只今海外。西村先生は戦死者の補習監督で動けません。まあ、そもそも先生が一方のクラスの生徒に手を貸すのはルール違反になりかねませんから二人に頼むのは無理ですがね。さて、本当にどうしようかと考え始めた矢先———

「……ならOK。いけるわね」

「「……えっ?」」

———黙って自分の話を聞いていた島田さんが、そう言ってすっと立ち上がります。その眼は活き活きと、そしてただならぬ闘気を全身に纏わせて。

「し、島田さん……?あ、あの……」
「月野、今までよく頑張ってくれたわね。後は作戦再開までしばらく休んでいなさい。瑞希、アンタは月野の作戦通りここから出たら指定の場所に行っておいて。残りの問題は———ウチに任せなさい」
「み、美波ちゃん?美波ちゃんはどうするんですか……?」
「……ふ、ふふふっ……ウチ?ウチはね———」

それぞれの思いを胸に。休戦終了時刻が刻一刻と近づいてきます。恐らく……どちらに転んでも休戦終了直後、そう一瞬でこの試召戦争に決着が着く……そんな予感がします。自分たちの執念が勝つか、Cクラスの策略が勝つか———いざ尋常に勝負です!

151時間目 ( No.314 )
日時: 2016/03/11 21:52
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

———休戦終了5分前:Cクラス———


『———さあ、これが最後の作戦会議よ。坂本君吉井君の両名は新校舎屋上で開始するって明言しているわ。だからここにさっき補充した部隊を置きましょう。担当の先生は確保できているかしら?』
『はい、代表!代表に言われた通り、英語R・現代社会・化学・生物・地学・古典の6人の教師を確保しています!』
『よろしい、なら皆は英語R・現代社会・化学の先生を連れて屋上に行ってもらうわ。討伐隊として前戦力を以て坂本君たちを絶対に討ち取ること』

『『『了解ですっ!』』』

『そして念のために点を取れている上位2人は近衛兵として生物・地学・古典の先生と一緒に私に付いて来てちょうだい。考えたくないけれど相手は月野先輩と坂本君の策士二人だし、仮に突破された時のことも考えて屋上から一番離れている位置にある旧校舎一階の空き教室を新しい拠点にするわ』

『『わかりました!代表は必ず守りますっ!』』

『頼もしいわ、ありがとう。……じゃあそろそろ時間ね。みんな———勝つわよ!』

『『『はいっ!』』』


———新校舎屋上前———


須川Side


散々あの異端者共に振り回されてきた我々FFF団。だがついに、ついに追い詰めたぞ……異端審問会の血の盟約に背きし者共———吉井に坂本ォ……っ!

「屋上だな……奴らの墓場はっ!さあ殺るぞお前ら……!武器は持ったか!俺・横溝・福村を筆頭にぶちのめしに行くぞぉ!」
「勿論です須川会長!Cクラスと共に休戦終了直後に突入しますよ!」
「奴らに地獄を見せてやりましょう会長!」

吉井に坂本、それと姿は見えんがムッツリーニ……貴様らの命運もここまでだ。わざわざ逃げ場のない屋上を試召戦争再開場所に選んでしまった貴様らの頭の悪さをあの世で後悔するがいいさ……!そう気合いを入れて、いつものFFF団の正装である覆面と黒ローブを身に着ける我ら正義のFFF団。

『さあ、同士諸君。待たせたな!これより吉井坂本をあの世へと誘い、悲願であった全リア充抹殺作戦“Fクラスの変”の偉大なる一歩を踏み出す時である!さあ続け!』

『『『おー……』』』

『……?何だお前たち。随分と殺る気の無さげな掛け声だな』
『念願の奴らの血祭タイムだぞ、もっと喜んでいいのにどうしたんだ同士諸君』
『あのバカ共は自分から逃げ場のない屋上を絞首台に選んだんだ、遠慮なく殺ってやろうぜ!』

『『『…………』』』

何なんだ一体。使命に燃える我々三人と違い、他の審問員はヤケにノリが悪い。まあ、いいさ。大方未だに奴らがのさばっている事ではらわたが煮えくり返って暴走寸前ってところだろう、気持ちは非常にわかる。審問員たちの集中を乱さぬようにこれ以上は話しかけてやらないようにしておくか。きっと異端者共を見ればすぐに殺る気スイッチが入るだろうからな。そんな中、同盟している十数人のCクラスの協力者たちが屋上の扉の前までやってきた。

「今来たぞFクラス。状況はどうなっている?」
『はっ!吉井、坂本の両名は宣言通りこの扉の向こうにいる模様!屋上には奴ら異端者の他に別クラスの一般生徒男1人女2人がいますがご安心ください!あのバカたちを殺るには全く支障がない様子です!』
「…………」

と、横溝がCクラスにそのように報告すると何故か顔をしかめるCクラスの同盟者たち。ん?なんだ?

「……待てよ。Fクラス代表たちはともかく月野はどうした。まさか屋上にはいないのか?」
『へ?……あ、ああそう言えばいませんね。ですが造ちゃんがいないなら逆にチャンスっすよ!』
『そうそう!造ちゃん巻き込んで怪我させる必要もないし、これで奴らを守るものは何もないと言う事!一緒にストレス発散も兼ねて思いっきり殺っちゃいましょう!』

そう、造ちゃんがいないなら好都合と言うもの。グロいシーンを見せることも無く異端者共を仕留める時に誤って怪我をさせることも無い。巻き込まないで良いならば、思う存分奴らをボコボコに出来るからな!Cクラスも憎き吉井と坂本を心置きなく殺れるってものだろう。

「(ボソッ)アホか……何で俺らまで坂本たちを抹殺することになってんだよ」
「(ボソッ)小山代表の言う通り、あれだけ頑張ってたFクラス代表もあの小っちゃい子もホントかわいそうだわ……」
「(ボソッ)つーかこいつ等やっぱバカだな……月野がいないってことは何らかの策を取られているってことだろうに」
「(ボソッ)D・Eクラス戦の時のように、月野君背後から私たちを一網打尽にする気かもしれないね」
「(ボソッ)ならこのワラワラしているFクラスの連中を壁として私たちの後ろに置いてかない?」
「(ボソッ)良い案だ、こいつ等でも壁にはなるだろうからな。この人数だし寧ろこのまま屋上に出てもこいつ等が邪魔でまともに戦えない可能性だってある。数人は前線で俺らの盾にして、他は月野に後ろを取られないようにバリケードとして使うか」

横溝に引き続き俺と福村もCクラスにそのように報告するが、何故か顔を見合わせて何やら相談している。異端者を抹殺するのに何か問題でもあるのだろうか?

「あー、コホン。少し相談なんだが……えっと、お前は須川だったな。あとそこの二人の……えっと?」
『ん?横溝と福村のことだろうか?』
「ああ、横溝に福村ね……えっと、この三人と俺たちCクラスで代表である坂本を討ち取ろうと思う」
「その間、念には念を入れて残りのFクラスの皆で逃げ道を塞ぎつつ誰も屋上に上がれないように屋上の外で私たちの後ろを守ってほしいの。ダメかしら?」
『えっ……?し、しかしそれは……』

そのように同盟しているCクラスに提案されるが……それでは坂本達を直接自分たちの手でぶちのめしたいであろう我らFFF団の同志たちが悔しがらないだろうか。

『それで構いませんよCクラスの皆さんっ!』
『ぜひそうしてください!俺たちは外にいますので!』
『では須川———会長。あとはごゆっくり!』
『へっ……?お、お前たち……それでいいのか?』

『『『ええ!後は全て、会長たちに任せますから!!!』』』

……俺のその予想とは裏腹に、さっさと後ろに下がるFFF団同士諸君。む、むぅ……譲ってくれるのはありがたいが、随分惜しいことをするものだ。折角の異端者狩りの絶好の機会だって言うのに。

『まあ、彼らの分まで俺たちがあの異端者共を完膚なきまでに叩きのめせばいいんだがな』
『ですね、会長。武器も持ちましたしこちらの準備はOKです』
『いつでも殺れますよ会長!』
「それじゃあ、そろそろ時間だ。Cクラスの皆、ついでにFクラス。後一分で休戦終了だ。時間になったら全員で屋上に乗り込んで一気に勝負に出るからな!」
「先生方も、屋上に入ったらすぐにフィールド展開をよろしくです!」

いよいよ審判の時のようだ。屋上の扉の前にて腕に付けている時計をじっと見つめ我ら正義の異端審問会は勿論、Cクラスや付いて来ている教師も緊張しながら息を呑んで今か今かと休戦終了の時を待つ。

時計を見ながら何故かふと俺は、二年になってからのあいつ等のやってきたことが思い出してきた。

……ある時は吉井がラブレターを二通も貰っていた。

……ある時は吉井に坂本にムッツリーニがバスの中で女子といちゃついていた。

……またある時は弁当を作ってもらっていたし、二人三脚で女子と楽しんでいやがった。

……キスもハグもその他諸々も経験済み、今回に至っては同棲生活という禁忌まで犯していると来た。

———判決。吉井・坂本・ムッツリーニ、拷問してから死刑。思い出すだけではらわたが煮えくり返る気分になってくる。アイツらがいるから俺がモテない……神や仏が許そうとも、俺たちFFF団が許さん。やはりこの全リア充抹殺計画“Fクラスの変”は何が何でも達成せねばならぬようだな。そんな決意を新たにしていると、再開時刻がすぐそこまで来ている———残り……5秒……3秒……1……


ピピピッ!


『『『さあ異端者狩りの時間だゴラァ!!!』』

時計のアラームを止めながら、屋上に続く扉をバンッ!と思い切り蹴り開ける。これまでの恨み、我らの恨み全てはテメェらにぶつけるためのものっ!さぁ、テメェらの命、貰い受けるぞ吉井に坂本ォ!

151時間目 ( No.315 )
日時: 2016/03/11 21:52
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

———同時刻:旧校舎空き教室———


小山Side


Fクラスとの試召戦争再開まであと少し。念のため坂本君たちが休戦終了後に試召戦争再開すると公言している新校舎から一番遠い旧校舎一階の空き教室を新しい拠点として、近衛兵を二人と3人の監督役の先生を連れてきた私。

「———では先生。気が早いかもしれませんが召喚フィールドをお願いしてもいいですか?」
「はい分かりました。では古典のフィールドを展開しますね」

更に念には念を入れて先輩が来る前に先輩がかなり消費している科目の先生にフィールドを展開して待機しておくことに。補充試験もギリギリまでやったしFクラスの生贄兼盾も用意している……これでやれることは全部やったわね。

「(ボソッ)ホントはこんな事しちゃいけないかもしれないけど……ごめんなさい先輩たち。何が何でも今回だけは勝たなきゃいけないんです……」

……今更ながら今回のこれ、ホントならかなりギリギリセーフな策だったわ。Fクラスのバカたちが坂本君や吉井君を抹殺したい、協力してほしいと相談された時に思いついた今回の策。Fクラスを使いD・Eクラスに試召戦争を促したり、先輩たちの内部からの妨害を行ったりと色々やったわね。

「?代表、何か仰いましたか?」
「ううん、何でもないわ。ちょっと疲れたなって思ってね。ゴメンね、代表がこんな弱音を吐くようなこと言っちゃいけないのに」
「いえいえ。代表今回の作戦が始まってからずっと動きっぱなしで指示出しっぱなしだったじゃないですか。お疲れなのもわかりますよ。弱音くらいドンドン俺たちにぶつけてください!」
「私たちは全力で代表をサポートしますし守りますからね!ですから絶対Fクラスに勝ちましょう!」
「そう……ね。負けられないわね……ありがとうね」

……そう、負けられない。クラス代表として……そして“アイツ”の為にも……今回だけは絶対に負けられない……

「さて……後は試召戦争再開して、Fクラスがどう動くかだけど……」
「そうそう、ちなみに代表。我々が勝てる確率はどのくらいですか?」
「うーん……90%くらい……かしら?」
「おお!凄く高いじゃないですか!」

うーん……個人的には10%で負けるってことを気にしてほしいんだけどなぁ……

「本来なら100%勝てるようにしてたんだけどね……流石に先輩たちは一筋縄ではいかないわよね。残り10%が正直怖いわ……気持ちで負けるつもりはないけど何だかとても嫌な予感がするのよ」

一応屋上にも先輩が消費している科目の先生3人を呼んでいるし、あの人数相手ではいくら接近戦が出来るようになったからって流石の先輩でも満足に戦えないと思うし……隙を見て坂本君を討ち取れれば勝てると思うんだけど……何故かしら。やれることはやったはずなのに、あと数秒で試召戦争が再開されるからか、不安感が拭い去らない。悪い予感が的中しなきゃいいんだけど……

「きっと大丈夫ですって!屋上はすでに我々の完璧な布陣で構成されています!」
「そうですよ!何も代表が不安になることはありません!試召戦争が再開されたら、きっとすぐにでも私たちCクラスの勝利宣言が聞こえて———」












《———それはどうでしょうかね。その作戦、どうも屋上にばかり気を取られていませんか?》

「「「っ!?」」」

《こんにちは、小山さんにCクラスのお二人さん。待ってましたよ》

と、どうしたことか掃除ロッカーの中からそんな声が聞こえてきたかと思うと……バンッとそのロッカーの扉を開けて私たちの目の前に飛び出してくる一つの小さな影が現れた。


———再び新校舎屋上———


須川Side


「……いよぅ、須川。随分と勝手な事やってくれたじゃねぇか」
「……覚悟はできているんだよね、須川君たちは」

俺・横溝・福村の異端審問会トップ層が屋上になだれ込むと、腕を組んで額に青筋を立てている忌々しき異端者代表である吉井と坂本が出迎える。

『この絶体絶命の状況で、随分とまあ余裕じゃねぇかクソ共が』
『勝手な事をやってくれた?覚悟はできているか?それはこちらの台詞だ異端者共よ。モテない男たちに見せつけるように女子を誑かした罪、最早死すら生温い』
『間違ってもここから飛び降りるような真似だけはするなよ。そんな楽にあの世にいかれては我々の気が収まらん。キッチリ拷問して輪廻すら絶ってやるからな』

数俊遅れてから、Cクラスの同盟者諸君も屋上へと入ってくる。そして何故かそのままボソリと坂本と吉井に話しかける同盟者たち。

「(ボソッ)その……正直悪いねFクラス代表さんに吉井君」
「(ボソッ)利用した俺たちが言うのも何だけど、こんなクズ発言するコイツらで追い詰めるようなことしてホントに申し訳ないわな……」
「ん?ああ、Cクラスは気にすんな。元はと言えばこれはFクラスのゴタゴタが派生した結果だしな。寧ろこの状況を見事に利用してここまで俺らを追い詰めたのは素直に感心するぜ」
「うんうん、悪いのはこの暴走しているFクラスだし、気にしないでよ。このバカたち統率して僕らを追い詰める作戦なんて目茶苦茶スゴイと思うしさ」

……?何の話をしているのやら。まあいいさ、そんなことはどうでもいい。重要なのは———

『そうだ、重要なのは貴様らがここで果てる。ただそれだけだ』
『さあ、大人しく審判されるんだな。まあ、安心しろ。お前たちは一人じゃないさ、二人仲良くあの世逝きだからなぁ!』
『その手錠で繋がれたまま、二人寄り添って死ぬがいい!』

そう言って武器を構えると、異端者二人は物凄く嫌そうな顔をする。

「うげ……冗談じゃないよ。なんでこんなアホ雄二と寄り添わなきゃいけないのさ。気持ちが悪いじゃないか」
「その通りだな、冗談じゃない。何故俺がこんなバカ久と一緒にくたばらなきゃならんのだ。吐き気がする」
「何だと雄二!」
「やるか明久!」

俺たちに囲まれているにも拘らず、そんな漫才めいた事をやりながら喧嘩をするバカふたり。えぇい……どこまでも嘗め腐りやがって……!

『気色悪い夫婦漫才は他所でやったらどうだ。まあ、そうやって繋がれたまま地獄でも一緒に過ごすんだな』

「「何が夫婦漫才だゴラァ!冗談じゃない!だったら———」」

と、そう言って二人は手首に手をかけると———

「「———こんなもの、外すだけだ」」


ガチャン!


『『『…………は?』』』

…………どういう……ことだ……!?吉井と坂本はとてつもなく悪い笑顔をしたまま、今の今までこいつ等二人をつないでいたワイヤー付手錠が、この二人の手首から離れ、重力に従ったまま床に落ちていった……

151時間目 ( No.316 )
日時: 2016/03/11 21:53
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

———再び旧校舎空き教室———


小山Side


《こんにちは、小山さんにCクラスのお二人さん。待ってましたよ》

ロッカーの中から飛び出してきたのは……やはりと言うべきか、Fクラスの……

「……月野、先輩」
《どうもです皆さん。ゆーさんの予想的中で何よりですよ》
「つ、月野だと!?!?」
「さ、坂本君を守りに屋上に行っているはずじゃ……!?」

そう、召喚獣化している月野造先輩だった。そうよね、やっぱり来るわよね……私たちCクラス最大の障害だもの。それにしてもわざわざロッカーの中に隠れていたってことは……やはりこれは私たちがここに来るとわかっていたのかしら……

「先輩、待っていたってことは私たちの考えを読んでいたってことになりますよね。何故この場所がわかったんですか?」
《……警戒心が非常に強くここまで慎重に策を練ってた小山さんのことです。屋上でゆーさんたちが試召戦争再開すると言えば、用心して必ず一番新校舎屋上から遠いこの旧校舎の空き教室に来てくれるハズだとゆーさんが予想してたんです。……見事にビンゴでしたね》

適度に間合いを取りながら、にっこり笑ってそう言う先輩。……なるほど、流石ね坂本君。休戦終了後に屋上で再開するって宣言は、私たちをここにおびき寄せる罠だったってことなのかしら。けれども———甘いわ!

「この場所を読んでいたことは見事です———ですが!近衛兵っ!」
「はいっ!Cクラス榎田克彦、Fクラス月野に古典で勝負を挑みます!」
「任せてください!同じくCクラス横尾知恵、Fクラスの月野君に古典の勝負を挑みます!」

「「試獣召喚(サモン)っ!」」


《Fクラス 月野造  古典  31点》
        VS
《Cクラス 榎田克彦 古典 158点》
        &
《Cクラス 横尾知恵 古典 142点》


やっぱり早めに先生に頼んで召喚フィールドを展開してもらっておいて正解だったわね。古典は先輩が私たちとの戦いで消費している科目。これで少なくとも一撃で倒されることもないし……後は時間になるまで耐えればいいだけ。

「大方坂本君を倒される前に、私を討ち取ろうと考えていたのでしょうがそうはいきません」
「月野、何もお前を倒せるなんて思っては無いさ。悔しいが戦闘技術はそっちが上だってことくらい前の時間で分かってる。俺らが束になってもお前には敵わないだろう。だが———時間稼ぎをするなら話は別だ」
「これで坂本君たちを守るものはいないよ!皆が坂本君を討ち取るまで守りに入った戦いをすればいいだけだからね!」

この二人に勝負を挑まれた以上、先輩は私を討ち取るにはこの二人を倒さないといけない。けれどもこの先輩の残りの点数では遠距離から攻撃しても一撃では倒せないし、接近戦を挑まれても守りに入った戦いになれば二対一でこちらに分があるわ。後は先輩と言うFクラス最大の盾を失った坂本君たちを屋上に行った皆が討ち取れば———私たちCクラスの勝利よ。

「その点数では二人相手にするのは困難。先輩がこの近衛兵たちと戦っている間に、屋上のCクラスの皆が坂本君を討ち取ってくれます。それと……悪いですが科目変更もさせませんからね」

例え先輩が自身に有利なフィールドを白金の腕輪で張ろうとこの古典フィールドを干渉させようとしても、予め来てもらっていた3人の先生がいれば恐れることは無いわ。干渉を起こされてもすぐにまた別の先輩の消費している科目のフィールドに書き換えるだけだから。

《……なるほど、本当に素晴らしい作戦です。確かにこの点数差では二人を相手に戦うのは厳しいです。おまけに時間稼ぎするつもりで守りに入られては倒すのにとても時間がかかるでしょうね。このままじゃ二人を相手にしている間に屋上のゆーさんたちが討ち取られるでしょうね》
「そう言うことです。計算を誤りましたね先輩。まあ、もう一人誰か戦える人がいればまた違う結果になったかもしれませんが」
《……ふふっ、そうですね。ところで小山さん———












———貴女が仰る通り、“自分と共に戦えるもう一人の人物”が実を言うと存在するって言ったらどう思います?》
「…………は、い?」

な、何を……?先輩は何を言っているの?もう一人戦える人がいる……?そんなはず無いわよね……?だって、Fクラスの今の状況はと言うと———

「……先輩が何を言っているのかわかりませんね。坂本君・吉井君は屋上、土屋君は血の流し過ぎで動けないし木下君も捕えられている。姫路さんと島田さんも補充試験室で身動きがとれない。勿論他のFクラスが先輩に手を貸すはずがない———この状況では誰も加勢には来れませんよ」
《いえいえ、実はいるんですよ……ではお願いしますね!》

と、不敵な笑みを浮かべたまま先輩は廊下に向かってそう叫ぶように合図をする。……で、出まかせよね……?だって誰も他にFクラスに戦える人なんていないハズ———

「———ええ、任されたわ。アタシがそっちの横尾さんを倒すわね」
《了解ですよ。では自分は榎田くんを倒します》

「「「「「「…………は?」」」」」」

———そう言って現れたのは……やっぱり私の予想通りFクラスの生徒ではなく。でも予想の範疇を超えた人物だった。

「…………Aクラスの……き、木下優子……?」
「こんにちは小山さん、ご機嫌いかがかしら。悪いとは思うけど———アタシ、造くんと一緒に戦わせてもらうわね」

そう、それは私と同じ女子の制服を着た2-Aクラスの優等生である、Fクラス木下君の姉の木下優子の姿だった。ちょ、ちょっと待ちなさい……?月野先輩の言っていたもう一人戦える人って……まさか木下優子の事!?一緒に戦わせてもらうって……!?何をバカみたいな事言ってるの!?

「な、何を言っているのよ……いくら貴女がFクラスと仲が良いからって、今はFクラスとCクラスの試召戦争中よ。Aクラスの貴女が私たちに勝負を挑んだ段階であなたは補習室送りになるわよ。一体全体何を考えてるのよ」
「アタシが補習室送りになる?あら、そっちこそ何を言っているのかしらね。……まあいいわ。先生、アタシ木下がCクラス横尾さんに勝負を挑みますね」
「えっ?……で、ですが木下さん。小山さんの言う通りですよ。ルール上Aクラスの貴女はこのC・Fクラスの試召戦争に手を出したら自動的に貴女は補習室に———」
「“Aクラス”ですって?先生まで一体何を言っているんですか?」

……何よ?月野先輩や木下君を愛ですぎて、とうとうおかしくなったのかしら?それともまさかとは思うけど自分はFクラスに在籍しているって言うんじゃないでしょうね?

「はぁ……あのね。だからAクラスの木下さんは召喚したら駄目ってことなの。わかるかしら?」
「……なるほど、そうね。確かに“Aクラスの木下優子”は召喚したら駄目かもしれないわね———“じゃが”な、それは本当に“ワシ”が“姉上”だったらの話じゃぞ小山よ」

「「「「「「…………えっ?」」」」」」

152時間目 ( No.317 )
日時: 2016/03/11 21:56
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

———新校舎屋上———


明久Side


『気色悪い夫婦漫才は他所でやったらどうだ。まあ、そうやって繋がれたまま地獄でも一緒に過ごすんだな』

「「何が夫婦漫才だゴラァ!冗談じゃない!だったら———こんなもの、外すだけだ」」


ガチャン!


『『『…………は?』』』

Cクラスとの試召戦争もいよいよ大詰め。今の今まで僕と雄二を繋いでいたワイヤー付手錠を外して、C・Fクラスの皆と対峙する僕ら。ようやくこの厄介な手錠と雄二のアホから解放されたよ畜生め、あーすっきりした。

『な、なぜ貴様らその手錠が外せるんだ!?』
『それはそう簡単に外せる代物じゃねぇんだぞ!?何しやがった貴様ら!?』
『鍵はすでにスペアも含め全て処分しているはずだろ!?一体全体どうなってんだ!?』

……あ、やっぱりか。僕らの予想通り解放する気なんて微塵もないだろうから鍵は捨ててるだろうって思ってたけど……ホントに捨ててたんだね。何と言うか容赦ないと言うか徹底していると言うか意地が悪いと言うか……

「ま、大方予想通りだったな。鍵なんてアテにしてねぇよバカ共め」
「そうそう。僕らには鍵なんて必要ないからね」

僕らには鍵が無くてもこじ開けることが出来る、最高峰の忍がバックに付いているわけだしさ。そうだよね———

『そんなはずがあるか!そのワイヤー付手錠は特注品なんだぞ!テメェらのような素人如きが簡単に外せるはずがないだろが!?』
『一体どんな小細工しやがった!?これを外せるのはアイツ……そう、ムッツリーニくらいのハズだ!』
『だが奴は俺らのトラップにより死にかけて———』
「…………俺が、どうかしたのか?」

『『『……は?』』』

須川君たちがムッツリーニの名を出した瞬間、“変装”を解く屋上にいた男子生徒が一人。保健体育の帝王で盗聴盗撮のエキスパート、現代に生きるムッツリ忍者である……そう、その名も———ムッツリーニだ。

『『『……む、ムッツリーニだと……!?』』』

「君たちの言う通りだよ。鍵も無い状態でこれが外せる人なんて———ムッツリーニくらいさ」
「どんな小細工をしやがった、だと?何も小細工なんてしてねぇよ。ムッツリーニに外してもらっただけだからな」
「…………鍵の開錠など朝飯前」

そう豪語するだけあって、“回復した途端”一瞬で鍵を外してくれたムッツリーニ。まあ、ありがたいと言えばありがたいけど、一人の友人として君は一体どこでこんな技術を習得しているのか正直知りたいような知りたくないような複雑な気持ちになるよムッツリーニ。

『ま、待て待て待て!?な、何でムッツリーニが生きてる!?』
『少なくとも一歩も動けない程の瀕死のハズだっただろうが!?』
『てか、変装だと……!?や、ヤロウ、なんて汚い真似を!?』

色々と事情を知らない須川君たちはムッツリーニの出現に慌てふためく。そりゃそうだ、何せこのムッツリーニはさっきまで虫の息だったわけだし。 “彼女”の処置があと数分遅れていたら、確かにムッツリーニはそのまま鼻血の出し過ぎによる出血多量と言う情けない死に方で天に召されていただろうからね。僕らは元よりムッツリーニはちゃんと“彼女”に感謝しなきゃならないね。

「やれやれ……それ僕らが答える義理あるの?」
「その無い頭で一生考えてみるんだな」
「…………まあ、一生かかってもわからんだろうがな。それと———」

「「「———お前たちだけには汚いって言われるのは心外だ」」」

『『『ぐっ……』』』

ムッツリーニが生きていたことに悔しそうにしているFFF団の三人は無視するとして、今度は現在進行形で試召戦争中の相手であるCクラスの人たちと対峙する僕ら。

「さぁて、ワリィな待たせちまって」
「じゃあCクラスの人たち、やろうか」
「…………いざ尋常に勝負」
「ほう……どういうことかよくわからないけど、土屋が復活したんだな」
「これで坂本君、吉井君、土屋君、そして姿が見えない月野君の4人対私たちCクラスってことになるのね。いいわ、勝負よ!」

そう言って臨戦態勢に入ろうとするCクラス。ムッツリーニが戦力として復活しても関係ないと言わんばかりに全員その眼は勝利を確信しているようだ。確かに保健体育のフィールドじゃないなら、ムッツリーニもそこまでの脅威ではないからそんな風に強気になるのもわかるけどね。それにしても———いいのかなぁCクラスの人たちは。

「ああ、そうだ。ついでに言っておかなきゃならないことがあったんだ。“姿が見えない月野君”って言ってたけど……その造が今どこにいるか知ってる?」

「「「……月野が、今どこにいるか?」」」

「随分とまぁ余裕に見えるが……お前たちの代表を放っておいていいのか?下手すりゃ大変なことになると思うんだがな」
「…………良い事を教えてやる。造が今いる場所は———旧校舎一階だ」

「「「…………っ!」」」

その言葉に、Cクラスの人たちが一瞬怯む様子が見て取れた。ほうほうなるほど。ちょっと僕ら3人で鎌をかけてみたんだけど、この反応なら雄二の予想通りCクラス代表の小山さんが次の拠点としたのは旧校舎一階なんだね。

「……そう来たか。なるほど、確かにそれは大変だ———だが、残念だったな」
「ちょっとびっくりね。君たち代表の位置を読んでたんだ。でもね、こっちだって代表の位置がバレることも月野君が単騎で代表を仕留めることも想定済みよ!」

けれどそこは上位クラスのCクラス。一瞬怯みはしたものの、すぐさま気を取りなおして僕たちにそう気丈に振る舞う。

「こっちも良い事を教えてやるよFクラス。うちの代表はな、こういう事態に備えて近衛兵と月野が現段階で最も消費している科目の教師を3人、立会人として連れていって行っているんだ」
「いくら接近戦が可能になった月野君だろうと、一人では近衛兵が二人もいる状況で点数が低い科目の勝負になればそう容易く代表を討ち取ることはできないわ!」
「それにそうとわかればこっちのものよ!月野君より先に私たちが坂本君を討ち取ればいいんだから!土屋君が加わったところで、私たちとの戦力差がそう易々と埋められると思わない事ね!寧ろ最大戦力の月野君を手放したこと、後悔させてあげるわ!」

むむむ、このCクラスの対応力……どうやら彼らの言う通り一応僕らが囮になって、造が小山さんを討ち取りに行く今回のような場合の対処法もシミュレーションしているようだ。うーん、今更ながらやっぱりやるなぁCクラスは。

「いいわね、先生がフィールドを張ったら、坂本君に勝負を挑んでからすぐに召喚するわよ」
「近衛兵がいるとは言え、イレギュラーな月野相手だしな。代表の為にも速攻で終わらせような」

そう言って身構えて僕らに勝負を挑もうとするCクラス。……さて、なら僕らもやりますか。Cクラスの人たちが見えない位置で“小さく合図をする”僕ら。さあ、頼んだよ……

「ふむふむ、流石だなぁ。確かにこの人数相手だと、造もいないこの状況では僕やムッツリーニだけじゃ雄二を守れずに僕ら負けちゃうね。僕ら三人だけではCクラスを相手にどうしようもないね」
「わかっているようね。と言うわけで先生、召喚許可をお願いしますっ!」
「わかりました。では現代社会の———」

そう、僕と雄二とムッツリーニだけじゃどうしようもない。まともにやり合ってもすぐに全員討たれてしまうだろう。だから———












「このままじゃどうしようもないから後は“瑞希”にお任せするね」
「はいっ!わかりました、後は任せてくださいね明久君っ!」

———後は適任者に任せよう。さあ待たせたね“瑞希”!

「「「…………は、い?」」」

「———召喚許可を承認します」
「召喚許可が出たので、Fクラス姫路瑞希!この場にいるCクラス全員に現代社会で勝負を挑みますっ!試獣召喚(サモン)ですっ!」

ムッツリーニの時と同様に、屋上にいた女子生徒が“変装”を解く。その正体は僕らFクラス最大戦力にして僕の大事な人の一人である———瑞希こと姫路瑞希だ。瑞希の登場でここにいるCクラス全員が怯んだ隙に、勝負を挑まれるより先にこっちがCクラスに勝負を挑む。よっしゃあ!計画通りッ!


《Fクラス 姫路瑞希 現代社会 603点》


瑞希の唱えたキーワードと共に現れたのは驚異的な点数を引き下げた瑞希の召喚獣。勿論腕には400点オーバーから使用可能な金の腕輪が装着されている。

152時間目 ( No.318 )
日時: 2016/03/11 21:57
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

「くくっ!油断したなCクラス。さてどうするんだ?姫路に勝負を挑まれた以上、試召戦争のルールに従いお前らは俺を討ち取る前に全員召喚獣を召喚して姫路と戦わなければ敵前逃亡扱いになって戦死になるぞ」
「ですが……ごめんなさい。もし戦死したくないのであれば、召喚獣を召喚した後はこの場から全員一歩も動かないでください。勿論召喚獣の操作も無しです。こちらはすでに金の腕輪の能力である【熱線】を打つ準備は整っていますから下手な真似をすると皆さん全員戦死ですからね」
「そう言う事。悪いけど瑞希の言うことはちゃんと聞いておいたほうが良いよ。今の瑞希なら召喚された瞬間に全員を補習室送りに出来るからね。多分5秒も持たずに皆まとめて戦死しちゃうだろうしさ」
「…………点数を見れば姫路にこの場の誰も勝てないことは一目瞭然。何せ補充する時間はたっぷりあったからな」

瑞希が召喚しただけでさっきとは逆に完全に僕らが優勢になる。恐らく沢山準備もシミュレーションもしてきたであろうCクラスも、瑞希がこの場に来るということは流石に想定外だったようだ。

「なんっ……なん、で姫路さんが……!?」
「どうなってんのよ!?Fクラス、アンタらちゃんと姫路さん達を監視してたんじゃなかったの!?」
「補充試験室で監禁しているって言ったよなぁ!?何やってんだよ!?何でこんな、こんなところに姫路さんがいるんだよ……!?」
『そ、そんなの俺らが知りたいですよ!?』
『監視していた奴ら今何してんだ!?』
『姫路さんが外に出たなら何かしらの連絡があるはずだ……何故それがないのに……!?』
「皆さんもう一度言います、動かないでください。まずCクラスの皆さんは大人しく召喚獣を出してそのまま待機してください。もし一人でも不穏な動きを見せたと判断した場合……申し訳ありませんが全員戦死させますからね」

「「「うっ……」」」

Cクラスも須川君たちも混乱の渦の中に捕えられたまま止めとばかりに、瑞希が念を押しながら召喚獣を前に出して警告してくれる。これではCクラスの人たちは身動き取れないだろう。

「よし、良くやってくれた姫路。これでCクラスの主要部隊の無力化は成功だな」
「…………GJ」
「お疲れ瑞希、すっごいねその点数!それにその啖呵もめちゃくちゃカッコイイよ!」
「そ、そうですか?えへへ……明久君に褒められちゃいました♪」

褒められて嬉しそうにしている瑞希の頭を撫でつつもこっそり抜け出そうとするようなCクラスの人がいないか注意深く監視する。これで残るは近衛兵二人に代表の小山さん一人となったね。さあ、こっちは足止め完了だ。後は……“造たち二人”に任せるからね!


造Side


Cクラスとの試召戦争、防衛戦、そしてFクラスの暴動……その全てに決着を付けるべく、小山さんを追い詰めようとする二人。一人は勿論自分こと月野造。そしてもう一人は———

「はぁ……あのね。だからAクラスの木下さんは召喚したら駄目ってことなの。わかるかしら?」
「……なるほど、そうね。確かに“Aクラスの木下優子”は召喚したら駄目かもしれないわね———“じゃが”な、それは本当に“ワシ”が“姉上”だったらの話じゃぞ小山よ」

「「「「「「…………えっ?」」」」」」

「“Fクラス木下秀吉”!Cクラス横尾に勝負を挑む!試獣召喚(サモン)じゃっ!」


ポンッ!


《Fクラス 月野造  古典  31点》
        &
《Fクラス 木下秀吉 古典 125点》
        VS
《Cクラス 榎田克彦 古典 158点》
        &
《Cクラス 横尾知恵 古典 142点》


———もう一人は、“優姉さんの制服を着た”自分の友人にして“Fクラス”のヒデさんこと“木下秀吉くん”です。

《よし、“ヒデさん”!いきますよ!》
「うむ!速攻じゃな!」
「んな!?こ、こいつAクラスの木下優子じゃなくて……Fクラスの木下秀吉の方だとぉ!?」
「ちょ、ちょっと待っ———」

「《遅いっ!》」

ヒデさんを優姉さんと思い込んでいた近衛兵である榎田くんと横尾さんのお二人は完全に不意を打たれて対応が遅れます。そんな二人の隙を狙ってヒデさんの召喚獣は日本刀を手に居合い一閃。自分は先ほど同様に相手の武装解除と武器奪取を行います。そして———


ザシュッ! ドスッ!


《Fクラス 月野造  古典  31点》
        &
《Fクラス 木下秀吉 古典 125点》
        VS
《Cクラス 榎田克彦 古典 DEAD》
        &
《Cクラス 横尾知恵 古典 DEAD》

———これは当たり前のことですが、召喚者本人たちの対応が遅れれば当然その使役されている召喚獣も反応が鈍くなり……横尾さんの召喚獣はヒデさんの召喚獣に真っ二つにされ、榎田くんの召喚獣は奪い取った彼の武器であるトンファーによる殴打で自分に倒され両召喚獣ともあっけなく戦死。二対一ならこうもいかなかったでしょうが、一対一なら自分が有利です。そして自分やアキさんとまではいかないものの、ヒデさんも召喚獣の操作技術は幾度となく様々なトラブルに巻き込まれ多くの経験を積まれたお陰か学年でかなり上位に入ります。ですから自分たち二人、慌てふためく相手を倒すくらい朝飯前って奴ですよ。

「ふ、二人ともっ!?」
「……ごめん、なさい代表……」
「なん、で……どうしてこんな……」
《ふぃー……何とかなりましたね。ナイスですヒデさん♪お待ちしていましたよ!》
「うむ、お主もやるではないか。接近戦が出来るようになったようじゃな。見事なものじゃ」

ヒデさんと二人笑顔でそうお互い応えつつも、二人で小山さんに詰め寄ります。さて……随分と手こずりましたが———これでチェックメイトですね。

《さてと。では逃げられてはこれまでの作戦が水の泡ですし、念のために宣言しておきましょうかね。Fクラス月野造、今度はCクラス代表小山さんに勝負を挑みます》
「そうじゃの、最後まで気を抜けぬからな。同じくFクラス木下秀吉。Cクラス小山に勝負を挑むぞい」
「何で……何で……?あ、あなたは木下秀吉の方で……で、でも貴方はさっきの時間、Fクラスに捕まったって……聞いてたのに……なん、で……?」

これでルールに則って彼女は自分たちの勝負に応じるために召喚獣を召喚しなければならなくなります。例え二対一で、且つ勝ち目がない勝負であろうと。

《すみません、これも作戦でしたので。それと、屋上からクラスメイトさんが助太刀に来てくれることを期待しているかもしれませんが……今頃向こうも“姫路さん”によって制圧されているはずです》
「ひ、姫路さん……!?え、待ってください!?か、彼女も補充室で捕えられているはずでしょう!?」
「残念じゃろうが造の言う通り、ちょうど今も姫路が屋上にいるCクラスの精鋭たちを足止めしておるはずじゃぞ小山よ。何ならそこの補充試験室兼姫路たちの監禁部屋を覗いてみると良い。すでにもぬけの殻じゃからの」
「そんな……!?なにが、何が起きているのよ……どうなってるのよコレ!?」

何が起きているのか、どうなっているのかですか……色々と大変でしたし説明するのは長くなるでしょうが……まあしいて一言で言うならば———

「《———Fクラスの勝利ってことですかね(じゃな)》」


———二学年試召戦争———
〜Cクラス対Fクラス:Fクラス勝利〜

153時間目 ( No.319 )
日時: 2016/03/11 21:59
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

造Side


自分たち7人対Cクラス+Fクラス連合軍の試召戦争。どちらも死力を尽くして戦った結果は……最後の最後で自分たちの奇策が決まり辛くも自分たちの勝利となりました。

「なんでよ……どうしてなのよ……確かに嫌な予感してたわよ……で、でもここまで準備して、常に最悪のケースを想定した対策をして、おまけに反則ギリギリのFクラスをも使ったのに……それなのになんで……なんで……」

自分とヒデさんに召喚獣を倒されて、ガックリと項垂れて震える声でこれ以上ないくらい悔しそうにそう呟く小山さん。

「むぅ……利用されたとはいえ、今回の件はFFF団の暴走が発端じゃし……Cクラスには悪いことをしたのう。造よ、時間もあることじゃし折角じゃ。何が起きたのくらい説明しても良いのではないかの?」
「んー……それもそうですね。では小山さんさえ良ければゆーさんがこちらに来るまでちょっと説明しましょうか」
「……おねがい、します」

怒涛の展開に情報処理が追いついていない様子の小山さん。確かにヒデさんの言う通りです。この騒ぎの協力者ではあっても、小山さんやCクラスの皆さんがFクラスの内輪揉めに巻き込まれたのも事実。内輪揉めで迷惑をかけたことですしFクラスの一生徒として、少なくともクラス代表である彼女には何が起こったのか説明する義務はあるでしょうからね。

「では……順を追って説明しましょうか、今回の“本当の作戦”の内容をね」


〜造回想中〜


———隠し部屋———


『お主、ワシでは力不足と言いたいのかの?確かにお主や明久たちに比べると戦闘技術も無ければ点も取れておらぬが、ワシだって———』
『す、すみませんヒデさん!?違う、違うんです!説明し忘れてたんです!今の作戦はあくまでも“この場を切り抜ける”為の作戦なんです!』
『……む?』
『例えですね、さっきの自分の作戦通りに事が進んでCクラスに勝てたとしても、今回の“根本的な問題”は一切解決できません。そうでしょう?』
『あー、確かにこのままじゃこれから先もこういう事が度々起こりうるだろうな』
『造が言いたいことって……あのバカ共をどうするかが問題ってことだよね』

その通り、本当に大切なのは目先のCクラス戦ではなく暴走している“Fクラス”を立て直すことです。

『だからこそ今から説明する“本当の作戦”は……ヒデさん。貴方に全てがかかっています』
『…………は?』
『断言しましょう、ヒデさん。今回自分やアキさん、ゆーさんやこーさん以上に作戦の要となるのは———ヒデさん、貴方です』
『……詳しく話を聞かせてもらおうかの』
『はい。説明した通り、表向き自分はアキさんとゆーさんを護りながら、ルールに則りCクラスに姿を見せつつ校内を逃げ回り好機とあらばCクラスと対峙します———が自分の本当の役割は“陽動”です。一応やれるだけCクラスの皆さんを討ち取るつもりですが、自分一人でCクラス全員を討ち取るのはいくらなんでも無茶ですからね』

まあ、当然ですがCクラスとの試召戦争にも勝たなきゃならないので出来るだけ倒していきたいとは思いますが……多分倒せて半分ちょいくらいでしょうね。Cクラス50人全員を敵にまわして全員を倒せるなんて思いあがるつもりはありませんので。

『まあ……造がいくら強いからって一人で50人を倒すのは流石にね』
『一応全員倒す気持ちでいく予定ですけど、自分一人では無理がありますからね。とにかく自分、そしてアキさんゆーさんは目立つように派手に暴れてCクラス及びFクラスの注意を引き、ヒデさんが裏で動きやすいようにするのが狙いというわけですね』
『ふむ、俺らが陽動になるのは分かった。で、その間秀吉にどう動いてもらうつもりだ造?』
『はい、ここからが一番重要なんですが……その間ヒデさんにやってもらいたいことは……』
『やってもらいたいことは、何じゃ?』
『決まっています、今回の騒動の“根本的な問題の解決”です。そのためにはまず最初の一時間で、とある二人にの生徒さんに協力して貰えるようにAクラスに行ってもらいたいんです』

とにかく今は猫の手も借りたいですし、今回のこの策にはAクラスのあのお二人の力が必要不可欠ですからね。承諾してくれるかは……正直ヒデさんの交渉にかかっているんですが……

『Aクラスに……?まあ、確かに協力を求めるならワシらの友人も多いAクラスに頼むのはわかるが……誰に頼めばよいのかの?』
『それは———優姉さんと工藤さんです』


〜造回想終了〜


「まず優先的にやっておきたかったのは、“こーさんの治療をしてくれる役”及び“ヒデさんが試召戦争中自由に動き回れるための影武者役”の確保でした」
「そこで造が目を付けたのが、ワシらに友好的で且つその役割に適しておるAクラスにおる姉上と工藤の存在じゃ。虫の息であったムッツリーニさえ回復出来れば、ムッツリーニも戦線復帰でき、更に“明久と雄二の動きを制限している手錠の開錠”が出来るじゃろう。そしてそれは……他ならぬ工藤が適任なのじゃよ」

最近こーさんの(鼻血の)治療を引き受けて手慣れている彼女ならば、何気に難しい輸血作業も確実に行いこーさんを回復してくれますからね。何よりこーさんがピンチと聞けば必ず助けてくれると踏んでいました。と言うわけで恐らく瀕死だったこーさんも昼休み中に———


———昼休み:隠し部屋———


『見つけたっ!こんなところにいたっ!』
『き、キミは……!』
『お前……!』
『…………っ!』
『待たせてゴメンねこーたくん、それに吉井君に坂本君も。Fクラスの人にここの存在がバレないように移動してたら遅くなっちゃった……とにかくすぐにこーたくんの治療を始めるね!血液パックもこーたくんの荷物もちゃんと持ってきたから安心していいよ!』

『『『工藤(さん)!待ってた(よ)!』』』


「———と、まあこんな感じできっとこーさんは工藤さんに回復してもらっているはずです」
「そしてワシは姉上と制服を交換するだけで“木下優子として”自由に校内を行き来することが出来る。これ以降Cクラスがワシを討ち取ろと模索したりFFF団に追われることなく密かに計画を実行できると言うわけじゃ」
「現にヒデさんは今の今まで“木下優子”として校内を堂々と行ったり来たりとしていたのに、誰も入れ替わっているなんて気づいていませんでしたからねー」
「ま、まさか……!じゃ、じゃあまさかFクラスの連中が捕まえたって言ってたのは———」
「うむ、“ワシの振りをした姉上”じゃろうな。姉上は見事にワシの身代わりになってくれたと言うわけじゃ」

双子ならではのシンプル且つ強力な一手。実際に一度クラス交換をしてほとんどの人にバレることが無かったヒデさんと優姉さんならば、制服を交換するだけで入れ替わっていることに誰も気づきません。ちなみに優姉さんも今頃無事に解放されている事でしょう。……後でちゃんとお礼を言っておかないといけませんね。

「で、でも待ってください!それはありえないわ!あの二人は先輩たちと仲が良いのはわかります、ですがいくら仲が良いからってそう簡単に手を貸してくれるなんて思えません!特に木下姉は先輩たちの言った通りなら、木下君の身代わりになるために授業すら抜け出して先輩たちの作戦に手を貸したことになります!仮にも優等生な彼女がそんな事するなんて思えないわ!?」
「うむ、確かにお主の言う通りじゃよ。ワシも最初に交渉に行ったときは随分と渋られてのう。『助けたいのは山々だけど、試召戦争に関して一方のクラスに手を貸すのはフェアじゃない』と言っておっての」
「だったらどうして!?」
「それはですね、優姉さんたちには本当に悪いと思っていますが……もうこれしかないと判断して“切り札”を切らせてもらったんですよ」


〜秀吉回想中〜


———Aクラス———


コンコンコン


『はーい?どちらさま———んん?あ、あれ?キミもしかして……?』
『突然の訪問済まぬ。じゃが緊急事態じゃ。悪いがこの教室のとある二人に話をさせてほしいのじゃが』
『あらら、やっぱり木下君だ。どしたの?変装なんかして。それに今確かCクラスとの試召戦争中じゃなかったっけ?まあいいか、入っていいよ。———代表、それに優子。木下君が来たんだけどー』
『……木下が?』
『ん?秀吉じゃないの。どうしたのアンタ』


〜秀吉説明&交渉中〜

153時間目 ( No.320 )
日時: 2016/03/11 22:00
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

あまりのんびりもしていられん。現段階のC・Fクラスの試召戦争で何が起こっているのかを掻い摘んで説明し、造の要求通り工藤と姉上に交渉を持ちかけるワシ。

『……雄二が、それに他の皆も大変……!?』
『こーたくんが……(鼻血の出し過ぎで)瀕死の状態!?』
『吉井君が今にも殺されかかっているだって!?』
『造くんたちが追い回されてるって……そう、そんなことが……やけに騒がしいと思ったら……』

ワシの掻い摘んだ説明でもすぐに理解する姉上たち。流石はAクラスじゃな、頭の回転が速くて助かるのう。……それにしても呼んではおらぬのに、何故か久保まで話を聞いておることをツッコむべきなのかは判断に迷うのう。ま、まあそれほど明久が心配なのじゃろう。あまり深くはツッコむまいて。

『それで……どうじゃ姉上に工藤よ。手を貸してはくれぬじゃろうか?』
『勿論!今すぐにでもボクらが———』
『———駄目よ秀吉、それに愛子。これだけは駄目、いくら可愛い弟たちの頼み事でも試召戦争関連で他クラスに手を貸すのは良くない事だもの』

と、普段から造たち関係で暴走しておるとは思えぬほど冷静に拒否する姉上。むぅ、やはり一筋縄ではいかぬか……

『優子!そう言わずに助けてあげようよ!今回は事情が事情だし……それにこーたくんたち本当にピンチなんだよ!?』
『……優子、私からもお願い。雄二たち助けてあげて。先生にはちゃんと説明するから』
『木下さん、僕からもお願いするよ。この試召戦争かなり特殊なケースのようだ。ただの内部抗争ならともかく吉井君たちの命に関わるレベルの暴走なんだろう?僕たちも黙っておくわけにはいかないと思うのだが』

工藤・霧島・久保の三人も手伝う様に頼むが、姉上は断固として断ると言った姿勢を崩さぬように首を横に振る。

『愛子に代表、それに久保君まで……あのね、気持ちはわかるわ。でもやっぱり駄目なものは駄目でしょう。そもそも今は一応自習時間とはいえ授業中なのよ?……アタシだってホントは造くんも秀吉も、それに他の皆も助けてあげたいのよ……悔しいけどわかってよ……』

『『『そんな……』』』

……悔しいが確かに姉上の言う通りじゃ。この作戦上、姉上には授業を抜け出して動いてもらわねばならなくなる。そうでなくともワシの制服を着てFFF団に捕まってもらわねばならぬとなると……うむ、確かに嫌じゃのう。

……仕方ない。出し惜しみは無しじゃ、ここは雄二たちに言われておった“切り札”を使う他無いようじゃな。

『……やはり、そうなるのじゃな。仕方ない……ならば“切り札”を使わせてもらうぞい。(ボソッ)姉上よ、お主ワシと“クラス交換”をした時の約束を覚えておるか?お主こう言っておったぞ———“代わりにもしアンタが今後何かしら困ったことがあれば出来る範囲で手助けしてあげるってば”との』(バカな自分は召喚獣?〜夏休み編〜番外編:アタシと見栄と弟たち〜クラス交換パニック〜前編参照)
『お……なるほどそう来たのね』
『それと工藤は……海でムッツリーニに助けられたことがあったじゃろう?』(バカな自分は召喚獣?〜夏休み編〜番外編:夏と海とお祭りと〜水着に浴衣の夏の想い出〜その④参照)
『んー?ああ、うん。そだねー』

この二人には以前ワシやムッツリーニに借りがあったからの。正直こういうことを使うなんぞ男らしくないのじゃが、今はそんなことも言っておれぬ。明久たちを救うため、造の言う通り必ず勝つため、今回ばかりは卑怯にも卑劣にもなろう。

『……こういうことを言うと卑怯と言われるかもしれぬが、緊急事態でなりふり構っておれぬ。二人ともその時の“借り”を返すと思って協力してほしいのじゃ。この提案を受け入れてくれるならワシらはAクラスと今後試召戦争を行う際、これをネタにAクラスを脅すような真似はせぬ。……どうじゃ?』
『乗った!ボクは断然OKだよ!うんうん、仕方ないよねー!借りは返さなきゃいけないよねー!ねえ優子!』
『…………はぁ、わかった。わかったわよ……直接Cクラスを試召戦争でどうこうするのは無し、あくまでアタシたちは土屋君とアンタのサポートをするだけ。これでいいわね』

その切り札を前に元々乗り気だった工藤は勿論の事、姉上も渋々協力してくれると宣言。ふぅ……助かったのう。これが済んだら改めて礼をするとしようかの。

『うむ、助かるぞい。……すまぬな工藤に姉上よ』
『いやいや、ボクこそこーたくんがピンチだって教えてくれて助かってるよ』
『ま、アタシも本音を言うとホッとしてるわ。これでアンタら造くんたちを助ける口実が出来たわけだからね』
『……木下、なんなら私も』
『僕も何か手伝わせてくれ木下君』

姉上たちに続いて雄二が心配であろう霧島と、明久(と造)が心配であろう久保も協力させてほしいと言って来る。うーむ……それ自体は嬉しい事なのじゃが……

『いや、気持ちはありがたいが霧島と久保は駄目じゃ。学年主席と次席が動いてはCクラスに勘付かれる恐れがあるから二人は駄目だと造や雄二に釘を刺されておってのう』
『……確かに、そうかも』
『そうか……すまない協力できなくて』

そう言うと残念そうに引き下がるこの二人。む、むう……こうもがっかりされるとこちらが申し訳なくなるのう……何かこの二人にも手伝えることがあれば———おお、そうじゃそうじゃ。

『……否、一つあるかの。二人にはCクラスがここに来ても何もなかったと演技してほしいのじゃ。例え色々聞かれても平静を装って何もなかったと言ってほしい。頼めるかの?』
『……わかった、そうする。木下……雄二をお願い』
『木下君、頼んだよ。吉井君たちを守ってくれ』
『うむ任せよ。すまぬの、本来なら関わりないお主らまでワシらのクラスのいざこざに巻き込んでしもうて……さて、姉上に工藤よ。それで作戦の詳しい内容説明に入りたいのじゃが———』


〜秀吉回想終了〜

153時間目 ( No.321 )
日時: 2016/03/11 22:00
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

「———と、まあそんな具合に最初の一時間は造や明久たちが表でお主らCクラスと戦っている間に、裏ではワシがAクラスで味方を得ることとC・Fクラスの状況分析をやることを造に頼まれたと言うわけじゃな」
「工藤さんは昼休みにこーさんの回復を。そして優姉さんはヒデさんと制服を入れ替えて影武者としてFクラスにワザと捕まってもらい、以後ヒデさんが校内を自由に動き回れる様にしてもらったんです」
「そう言う事が……!で、ですがそれでもたった二人味方に引き入れたくらいではどうにもならないハズでしょう!?そう、例えば……姫路さんをどうやって補充試験室から解放したと言うんですか!?」

確かに優姉さんたち二人を味方に引き入れたところで状況がそう好転するわけではありません。そもそも優姉さんたちを下手にCクラス戦に関わらせた場合ルール違反になってしまう恐れもあるでしょうし。

「もしかしてAクラスに補充試験室を監視していたFクラス連中を戦死させでもした?いいえ、それでは試召戦争のルール上、試召戦争にFクラスに手を出したとして木下姉たちが逆に補習室送りになります!どう考えても姫路さんを解放するなんてことできなかったはずでしょう!?一体先輩たちは何をしたと言うんですか!?」
「小山さんの疑問は尤もです。鍵をかけられ、バリケードまで作られた上にFクラスの監視までされている補充室。その中にいる姫路さん達を助けるにはFクラスの監視をどうにかしなければなりません」
「じゃが例えばお主の言う通り、姉上たちが実力行使に出た場合Cクラスとの試召戦争中なのにFクラスの戦力に手を出したと言うことでルールにより姉上が補習室送りになるじゃろうな」
「だったらどうやって姫路さんを屋上まで!?も、もしや未だにわからないことに一つの最初に先輩が使ったルートでも使ったという……」
「いや、それじゃないのう。なーに、ネタがわかれば単純じゃぞ小山。それはの———」

ですから……その交渉が終わった次の一時間からがヒデさんの“本当の戦い”の幕開けでした。


———新校舎屋上———


明久Side


Cクラスの主戦力を瑞希が足止めしてから数分後、このCクラスとの試召戦争の決着が付いたと先生が教えに来てくれた。緊張しながらもどうなったかを聞いた僕らの耳に届いたのは———

「Cクラス対Fクラスの試召戦争は……Cクラス代表小山さんの召喚獣の戦死により、Fクラスの勝利となりました」

———僕らFクラスの大逆転勝利と言う内容。めちゃくちゃ色々あっただけに、思わずこの場にいるいつものメンバー全員でガッツポーズをする。良かった、ホントに良かった……ナイスだよ造に秀吉!

「いよっしゃ!よくやった造に秀吉っ!無事決めてくれたようで何よりだぜ!」
「…………あの二人は今日のMVP」
「やったね瑞希!僕らの勝利だよ!」
「はいっ!明久君たちもお疲れ様でした!」

いやホント一時はどうなることかと思ったけど、何とか造たちが上手い事やってくれたようだ。ムッツリーニの言う通り、今日のMVPは造と秀吉だろう。後で2人には雄二のポケットマネーで美味しいものを奢ってあげなきゃね。

「……そんな、私たちの……まけ……?」
「……こんなことになるなら、戦死覚悟で姫路さんに突っ込むべきだった……補習室送りにビビって何やってんだよ俺は……」
「……代表すみません、守れなくて……折角あんなに頑張ってくれてたのに……」

勝ったクラスがあるなら、当然負けたクラスもある。その先生の決着の内容を聞きガックリと肩を落としその場に座り込んで呆けるCクラスの人たち。造や雄二たち曰くCクラスは今日の今日まで僕らと戦うために念入りに計画を練っていただろうとのこと。各々の動き方・僕らへの対応方法は勿論、色々最低な理由で暴走するFFF団と手を組むと言う屈辱を甘んじて受けた彼ら。それでもなお勝てなかったんだ……余計なお世話だとは思うけど、少しだけ同情してしまう。

「Cクラスは残念だったろうが……悪いが俺らも負けられないんでね。さて———これでCクラスとの同盟も意味をなさなくなっちまったようだが……どうするんだ?須川とそこの二人」

とは言え今はCクラスに気を取られている暇は無いか。雄二のその言葉と共に、僕もムッツリーニも瑞希も“彼女”もとある3人をじぃっと睨みつける。試召戦争は僕らの勝ちだけど、まだ僕らにはやるべきことが残っているからね。そうだよね……須川君横溝君福村君?さっきも言ったけど……覚悟はできているんだよね、君たちは。

『ぐっ……な、嘗めるな邪教徒共が!貴様らは未だこの逃げ場のない屋上にいることを忘れるんじゃねーぞ!』
『その通り、例えCクラスが倒されようと関係ない!俺たちは自由に動けるんだからな異端者共!』
『さあ行くぞFFF団!こんなふざけた坂本や吉井、ムッツリーニをブチのめし“Fクラスの変”を果たそう!』

形勢が段々と僕らに有利になってきたことに、流石に危機感を覚え始めたのだろう。大慌てで屋上の外で待機しているであろうFクラスの皆を呼ぶ須川君たち。まあそれもそうか。何せ同盟していたCクラスは造と秀吉の手によって倒され、ムッツリーニは須川君たちが知らない間に工藤さんのお陰で回復している。更にそのムッツリーニに僕と雄二に取り付けられた動きを制限していた手錠も開錠されているのだから。つい先ほどまでの余裕そうな表情から一変して少し怯えのも無理はない。ならさっきまでの仕返しって言うのも何だけど……更に怯えてもらうとしようかな。

『……ああ、そうだな。その通りだ』
『マジでふざけた奴らだよお前らは』
『全く死ぬほど頭にくる野郎共だぜ』

須川君たちのそんな言葉に同意しつつ、怒気の籠った声でFクラスの皆が扉の向こうでこう続ける。












『『『———異端者名……須川に横溝に福村ァ……!』』』

『『『…………え?』』』

須川君たちの期待とは裏腹に、屋上の扉の向こうで須川君たちに恨み節のFクラスの皆。Fクラスの思わぬ発言に、完全に固まってしまう須川君たち。よしよし、流石秀吉。“こっちも”どうやら上手くやってくれたようだね。

『な、何を言っているんだ同士諸君……?わ、我々の敵は坂本や吉井———』
『ザッケンナゴラァ!なーにが敵は坂本や吉井だよ須川ァ!』
『お、おいおいおい?急にどうしたんだお前たち……?』
『どうしただぁ?それはこっちの台詞だ横溝!テメェ最初から俺たちを騙しやがって……この裏切り者共!』
『落ち着きたまえ!何があったのか知らんがこの異端者共を抹殺するチャンスなんだぞ!』
『異端者はお前らだろが福村!散々造ちゃん追い回して虐めやがったことや姫路さんや島田を監禁したこと、あと一応坂本たちをどつき回したこと……この行いは神が許しても俺らが許さんっ!』

おいちょい待ち。造を追い回したのも瑞希たちを監禁したのも、僕らをどつき回したのも君ら大半がやったんだけど———というツッコミはここでは敢えてしないことにする。気が立っている彼らを下手に刺激しない方が良さげだし、こういうことは割と今更感があるからね。

「よし、お前たちここはもういい。とりあえず鉄人たちにキレられる前に一階のバリケードを取っ払え。それとすぐに監禁していた木下姉も解放するんだ。ちゃんと謝っておくんだぞ」
『おうよ!任せておきな坂本!』
「後は教室で待機しておけ、戻り次第時間が許す限り補充試験を行う予定だ。少しでも点を取れるように復習でもしておけ。いいな?」
『了解だ、じゃあまた後でな。———よし、お前たち急いで戻るぞ!』

『『『応っ!!!』』』

今までと比べると明らかに様子が違うFFF団。彼らを率いていた須川君たちに呪詛を吐きながら、あろうことかさっきまで殺そうと追い立てていた雄二の指示を的確に聞き従う。いやぁ本当に秀吉はよくやってくれたよね。そして扉越しにFFF団が階段を降りてそれぞれ教室に戻ったり一階に行ったり木下さんを解放しに行った音を聞きながら僕らは思う。———本当にFFF団は単純だな、と。

『『『ど、どういうことだこれは……!?』』』

154時間目 ( No.322 )
日時: 2016/03/11 22:02
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

———旧校舎一階空き教室———


造Side


「だったらどうやって姫路さんを屋上まで!?も、もしや未だにわからないことに一つの最初に先輩が使ったルートでも使ったという……」
「いや、それじゃないのう。なーに、ネタがわかれば単純じゃぞ小山。それはの———」

姫路さんが補充試験室からどうやって脱出したのかわからない小山さん。自分とヒデさんに涙交じりに説明を求めてきました。うーむ、これはそう難しく考えなくてもいいのですがね。小山さんの問いにヒデさんがさらりと答えてくれます。

「———それは、主犯格である須川・横溝・福村の三人。及び言葉の通じなくなった狂戦士達(バーサーカーズ)以外のFクラス生徒を……“交渉”して“ワシらの仲間に引き入れた”ただそれだけのことじゃ」
「……なん、ですって……!?」

そう、何も難しい事ではなく考えてみればとても簡単。密室な上唯一の扉の前にはバリケード付きで監視している人がいる時どうやって外に出るべきか。別に推理物のようなトリックなんて必要ありません。“監視役を味方に引き入れれば、顔パスで通してくれる”のですから。

「ですからCクラス、及び須川君たちが自分とアキさんゆーさんに気を取られている間に……ヒデさんがFクラスの大半を説得して味方にしてくれた、ただそれだけの事です」
「は、はぁ!?そ、そんな説明では納得できるわけないでしょう!?どう考えてもあれほどまでに暴走していたFクラスを木下君一人で御することなんか出来っこないわ!一体どんなカラクリが……!?」
「うむ、ここからが造がワシに授けた真の策の本領発揮なのじゃ。ワシとボイスレコーダー一つさえあれば、それだけであやつらを制御できるのじゃ」
「木下君と……ボイスレコーダー……?」
「まずはこれを聞いてみるとよい、小山よ」

そう言ってヒデさんは持っていたボイスレコーダーを再生させます。その中から聞こえてきたのは———


ピッ!


〜以下ボイスレコーダーの会話〜


『須川クン今日もかっこいいわー♪こんなにカッコイイ人と付き合えるなんてあたしって幸せものねっ!』←女子Aの声
『HAHAHA!いやぁ……モテる男は辛いなぁ!俺も君みたいな綺麗な子と付き合えるなんて超幸せだよ』←須川の声
『それにしても良いのですか?私たちと付き合っているって見つかったら……怖いクラスメイトさんがいるって言ってませんでしたか?横溝さん』←女子Bの声
『いいのいいの!バレやしないって!俺らのクラスにさぁ、ちょうどいい隠れ蓑的な奴らがいてねぇ』←横溝の声
『そうそう!そいつらにクラスの怒りの矛先向けてりゃ、俺らが君たちみたいなカワイイ女の子と付き合ってるなんてだーれも気づかないんだよ。連中バカばっかりだからねー』←福村の声
『やーん、悪い人だー♪福村くん素敵ー♪』←女子Cの声


ピッ!


———聞こえてきたのは須川くん・横溝くん・福村くんの三人の声と知らない女子三人の声がするそんな会話。

「……何ですかこれ」
「聞いての通り、須川たちのような声がする会話じゃな」
「……まさかこれを?」
「はいです。この会話をFクラスの皆さんに聞いてもらいました。そしたら皆さんあっという間に自分たちに協力してくれましたよ」

まあ、そもそもの発端がクラスメイトたちの嫉妬が原因でしたからね。こんな会話を聞かされて、おまけに交渉したのはヒデさんです。Fクラスの皆さんを味方に取り入れる交渉が上手くいかないハズがありません。と、そんな中このボイスレコーダーの会話を聞いた小山さんはワナワナと肩を震わせて、まるで怒鳴るように声を荒げてしまいます。

「なんっ……何なんですかこれはっ!?」
「いや、じゃから聞いての通り———」
「そっちじゃなくて、こんなっ!こんな先輩たちに都合の良いこんな会話を……短時間で用意できるわけ、無いじゃないですか!?どうやって……どうなっていると言うのですか!?」

まあ、確かにそうでしょうね。こんな会話、予め用意でもしていなければ手に入れることは出来ないでしょう。いいえ、それ以前にこんなピンポイントに今回の首謀者たち三人のこのような際どい会話を手に入れることなど実質不可能でしょうから。

「そりゃそうじゃな。お主の言う通り、こんな都合の良い会話をすぐに用意できるわけなかろうて」
「ですね。実際こんな会話……“この世に存在するわけない”ものですからねー」
「ワシが“作った”ものじゃしな」
「この世に存在するわけがない会話……?作った……?…………んなっ!?ま、まさか!?」

そのキーワードにハッとする小山さん。彼女も気が付いたようですね。

「そのまさかじゃよ小山。“一人六役”のワシの“声帯模写”じゃ。なーに、このくらい朝飯前じゃぞ。ボイスレコーダー越しじゃと若干声色が違っても違和感はないしの。ああ、ちなみにこのボイスレコーダーは工藤から借りたものじゃよ」
「あとはこの会話をFクラスの皆さんに聞かせて、ヒデさんが“木下優子”として交渉するだけでした」


〜秀吉回想中〜


『———ふぅ。これであと20人くらいじゃろうか』

リストにチェックを入れつつ嘆息するワシ。わかっておるつもりじゃったが、やはりこれは中々に骨の折れる役割じゃのう。精神的にも技術的にもかなりしんどいものじゃ。失敗すればこの試召戦争に負けかねんから普段の稽古や本番以上に気を張りつつやり遂げねばならぬしの。

『次は……この三人は最後にするとして、後は例の手におえん連中と今表に出ておる連中も後回し。ならば残りの人数やメンツを考えると……そろそろ一階のあやつらを何とかせねばならぬか』

まあ、泣き言を言っておる暇はないがの。造や明久、雄二にムッツリーニ。それに姫路や島田たちも恐らく頑張っておるじゃろうし。そう自身に言い聞かせ、再び作戦の為に動き出そうとした矢先———

『———この辺か?木下を見たと言う報告があったのは』
『見つけたら……い、イロイロ好きにしていいんだよな!?』
『ぐふふ……秀吉ィ、今行くからねぇ……待っててねぇ……』

『……っ!』

———すぐ近くの曲がり角から、そんなワシを探しておるようなFクラスの連中の声が聞こえてきおった……もう来よったのか、全く油断も隙も無いのう。さて気合いを入れて“姉上”を演じなければの。

『『『さぁ!大人しく捕まるんだ秀……よ……し……?』』』

『……何よアンタら。アタシに何か用かしら?』
『あ、あれ……?女子の制服に……この言葉遣い……そして“アタシ”……?』
『も、もしかして……秀吉のお姉さんの方の木下優子さん……?』
『す、すんません……間違えました。も、戻るぞお前ら』

曲がり角から飛び出してくるFクラスのこやつらをそのように騙すワシ。よし、双子なだけあって制服を交換しただけでこやつらもワシを姉上と認識してくれたようじゃな。

『ちょっと待ちなさい。アンタら確かFクラスよね?』

『『『へ?あ、はい』』』

“ワシを姉上だと勘違いをしてしまったと思い込んだ”気まずそうにワシの前からそそくさと退散しようとするこやつらを止めるワシ。ちょうどいい、こやつらも交渉しておくとしようかの。

『秀吉から話は聞いたわ、何でもアンタら試召戦争中なのに暴動を起こして造くんたちを追い回しているそうじゃないの』
『うっ……そ、それに関しては仕方のない事なんですよ!』
『す、須川会長の偉大なる革命“Fクラスの変”の為、造ちゃんや秀吉には捕まってもらわねばならないのです』
『悪いとは思っていますが……ちゃんと坂本や吉井たちを始末したら解放するのでここはどうか見逃して頂きたく……!』
『知らないわよそんなこと。それよりアンタたちに会ったらこれを聞かせてほしいってうちの秀吉から言伝されているんだけどいいかしら』

『『『秀吉から……?』』』

『これよ。何でもこの試召戦争を左右しかねない重大な事実が録音されているとか言ってたわ。とりあえず再生するわね』


〜例のボイスレコーダー再生中〜

154時間目 ( No.323 )
日時: 2016/03/11 22:03
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

『———だそうよ』
『お、おのれ須川ァ……』
『横溝……俺らを裏切ってやがったのか……!?』
『福村のヤロウ……こうなりゃ吉井たちと一緒に奴らも血祭に———』
『ハァ……何というか……アンタら情けないわね』

『『『は!?』』』

これでいい感じで怒りは須川たちの方向にも向いてきたのう。さて、ならばもうひと押ししてやるとするかの。

『さっきも言ったけど、アンタら試召戦争そっちのけで造くんや秀吉、それに代表である坂本君たちを追い回しているのよね?』
『そうですが……それが何故我々が情けないという話に……?』
『情けないにも程あるわよ。アンタらは一学期あと一歩のところまでアタシ達Aクラスを追い詰めたのよ?そんなアンタらだからアタシたちは高く評価していたのに……』

『『『……』』』

『勝てる見込みのあるアタシ達Aクラス戦を目前に、些細な嫉妬で暴走してそのチャンスを棒に振るの?正直……かっこ悪いわよアンタたち。ああそうか———だからアンタたちは“モテない”のね』

『『『…………ぐふっ』』』

モテないと言う単語がこやつらの胸を刺す。この騒動、色々と理由はあろうが突き詰めればこやつらがモテず明久や雄二やムッツリーニたちがモテると言う事実に原因があるからの。だからこそそこさえ取っ払いさえすればきっと何とかなるはずじゃ。現に———

『あーあ、Fクラスならアタシ達といい勝負できると期待してたのにガッカリよ。まあこんな“モテない”クラスメイトたち抱えているなら坂本君たちも勝てるわけないか。とは言えそんな“モテない”アンタ達でも、そう例えばアンタたち最低クラスのFクラスがアタシ達最高クラスのAクラスに勝つなんてことがあれば———“モテまくる”でしょうにね』

『『『…………っ!?』』』

———うむ、やはりこやつらこういう話題に喰らい付いてきたの。

『そ、その……木下さん。それはつまり……お、俺たちでも……Aクラスに勝てれば……モテる、と?』
『さあね。でも考えてみなさい。アンタたちが今必死で追い回している吉井君に坂本君、土屋君の事を』
『吉井に坂本に土屋を……?』
『吉井君は造くんと一緒に一学期清涼祭の召喚大会で優勝しているでしょ。それに坂本君も同じように夏課外の時のオカルト召喚獣の肝試しで優勝したわね。土屋君だって一学期のアタシ達との試召戦争でFクラスなのにAクラスの愛子に勝っているわ。その三人はその栄誉がモテるきっかけになったんじゃないの?』

『『『…………た、確かに!?あんなバカ共でも勝てれば……モテている……!』』』

……まあ、姫路と島田、霧島や工藤は勝てたからあやつらを好きになったと言うわけではないのじゃがの。そこは言わぬようにしておくか。

『アンタらだって、本来戦うはずだったAクラス戦で活躍出来れば目立ってモテることになったでしょうにね。ああ情けない情けない』

『『『…………』』』

さあここまでやったのじゃ。少しばかり言い過ぎたやもしれぬが……これで、どうじゃ?












『———坂本達に手を貸そう!』
『このCクラス、そしてAクラスを倒してモテモテになるのだ!』
『さぁ、今すぐ須川たちを血祭りにあげて俺らも目立とうぜ!』

……作戦成功じゃな。こやつらが単純で何よりじゃ。

『そう、好きにすることね。ああ、もしアンタ達が協力してくれるならワシの言う通りに動いてほしいと秀吉から頼まれているけど、一応聞いておく?』

『『『是非ともお願いしますっ!』』』


〜秀吉回想終了〜


「———と、こんな感じでFクラスを交渉……いや懐柔をしたと言うわけじゃよ。良くも悪くも単純で影響されやすいあやつららしいじゃろ。ちなみにここでも姉上と入れ替わっている利点が出てきておるのじゃ。騒動の真っただ中におるFクラスのワシがこのように懐柔するよりも、他所のクラスであるAクラスの女子“木下優子”がこのように懐柔した方があやつらも懐柔しやすいと思わぬか?」
「女の子に“こうすればモテるんじゃないの”と言われれば、即実践するのが自分たちFクラスのクラスメイトさん達ですからね。ああ、あと一応このボイスレコーダーの会話は皆さんを落ち着かせるための嘘だったと報告はしておきますので、今度は須川君たちが追いかけられるってことは無いようにしておく予定です」
「…………」

ヒデさんのその話に、口をパクパクと開きまるで“Fクラスはこんな手に引っ掛かったの……?”とでも言いたげな小山さん。ま、まあ元々女の子にモテたいが為に暴走しちゃうクラスですからねー……

「ちなみに小山よ、一体何のために面倒で割に合わぬとも造がFクラスに戦死者が出ぬように必死で戦っておったと思う?」
「そ、それはAクラス戦を前に戦力を余計に減らすわけにはいかないからでしょ……?」
「それも勿論ある。じゃがな、それだけではないのじゃ。戦死すれば補習室送りとなり、鉄人による地獄の補習を受けねばならぬことになるのはわかるかの?」
「……え、ええ」
「もし仮に暴走していた状態で補習室行きになれば、更にアキさんとゆーさんとこーさんへの不満が募ってしまいますでしょう?“よくも俺たちをこんな補習室に詰め込みやがって”ってな感じでね。次の戦争に尾を引かないようにするためにも、少なくともヒデさんがFクラスの皆さんを説得するまでは絶対に戦死者を出すわけにはいかなかったんです」
「……だから、先輩は裏切ったはずのFクラスの連中を倒さなかった……」
「その通り。今回の作戦の最重要事項はFクラスの持ち直しですからね」

だからCクラスの皆さんとギリギリの接戦の中でFクラスの皆さんを盾にされても戦死者を出さずに戦ったわけですからね。

「そ、それにしたって姫路さんは一体いつの間に補充試験室から脱出したんですか!?我々Cクラスの監視の目もある中で、彼女が出る暇なんてどこにも無かったはずです!」
「そのための休戦協定ですよ小山さん。……用心深く念入りに、そして先を見越して作戦を立てていた貴女のことです。きっと次に繋がるようにと、休戦終了までの一時間を補充試験に当ててくると思っていました」
「じゃがの、それこそが雄二の罠だったのじゃよ。Cクラスの全員で補充試験をするために、お主は姫路と島田のおる補充試験室の監視をFクラスの任せてしまったじゃろ」
「……その時には……補充試験室の監視役であるFクラスの生徒の説得を、すでに終えていた……!?」
「はいです。Cクラスの皆さんが補充に入った瞬間、こっそりとバリケードを解き鍵を開け姫路さん達を解放していました」
「その後バレぬようバリケードを戻し、姫路たちをワシが他の生徒として“変装”させてお主らCクラスの油断を誘ったと言うわけじゃ」

あとは現状の通りです。ヒデさんの手で“変装”した姫路さん達はゆーさんとアキさん達を守りつつCクラスの皆さんの動きを封じるために一足先に屋上で待機。そしてヒデさんは“優姉さん”として現れて小山さんたちの意表を突き自分と一緒に彼女を追い詰めます。

「これで説明はすべて終えましたね。そうそう小山さん……確か須川くんたち曰く今回のこの暴動って本能寺の変に見立てて“Fクラスの変”と呼ばれていましたよね。それになぞると大方織田信長がゆーさん、明智光秀が須川くんたちってことになるのでしょうね」
「そ、それが……何か……?」
「だったら面白いと思いませんか?だってその“本能寺の変に見立てた明智光秀役の須川くんたちの企てたFクラスの変”を“織田信長役であるゆーさんの臣下である秀吉と言う名の生徒”が打ち破ったんですもの」
「……」
「本能寺の変———もといFクラスの変ここに破れたり、じゃな」

この自分の作戦はヒデさんを捕えたと勘違いしてしまったC・Fクラスの皆さんの死角を突く一手。そう、何度も言いますが今回の作戦、自分やアキさんゆーさんはただの“陽動”。作戦の要は間違いなくヒデさんでした。持ち前の演技力は勿論の事、一人六役の声帯模写に自身だけではなく他人をも化けさせるメイクによる変装技術。更には巧みにFクラスの皆さんを味方に取り入れたその話術———ヒデさんの持つ一見すると試召戦争では意味をなさないと思われたヒデさんの長所が逆転の一手となったのです。

「ねぇ小山さん。貴女ひょっとして……自分やゆーさんたちにばかり気を取られてヒデさん対策を怠ったんじゃないですか?」
「……っ!?」


『———ところで代表。木下と、同じく未だに姿を確認できていない土屋はどうしますか?』
『……そうね。土屋君の方は行動不能になっているってFクラスの連中が言ってたし、木下君自体はそう戦力にはならないわ。一応見かけたら余裕があれば余計な事させないためにも戦死させるつもりでいてね。と言っても基本的にはFクラスの連中に任せて大丈夫でしょう』


どうやら図星のようですね。何か思い当たることがあるようで、あからさまにしまったと言う表情の小山さん。やれやれ駄目ですよ、試召戦争では誰もが脅威に成り得ると言うのに慢心しちゃいましたか?

「———ヒデさんは自分たちの立派な主戦力です。ヒデさんがこの学園で必死に磨いてきたものを……嘗めないでくださいね」

155時間目 ( No.324 )
日時: 2016/03/11 22:06
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

明久Side


「よし、お前たちここはもういい。とりあえず鉄人たちにキレられる前に一階のバリケードを取っ払え。それとすぐに監禁していた木下姉も解放するんだ。ちゃんと謝っておくんだぞ」
『おうよ!任せておきな坂本!』
「後は教室で待機しておけ、戻り次第時間が許す限り補充試験を行う予定だ。少しでも点を取れるように復習でもしてろ。いいな?」
『了解だ、じゃあまた後でな。———よし、お前たち急いで戻るぞ!』

『『『応っ!!!』』』

今までと比べると明らかに様子が違うFFF団。彼らを率いていた須川君たちに呪詛を吐きながら、あろうことかさっきまで殺そうと追い立てていた雄二の指示を的確に聞き従う。いやぁ本当に秀吉はよくやってくれたよね。そして扉越しにFFF団が階段を降りてそれぞれ教室に戻ったり一階に行ったり木下さんを解放しに行った音を聞きながら僕らは思う。———本当にFFF団は単純だな、と。

『『『ど、どういうことだこれは……!?』』』

『な、何故だ!?何故坂本なんかの言うことを聞く!?一体どうしたと言うのだFFF団っ!』

頼りにしていたFFF団があっさりと寝返って、自信満々だった須川君たちは一変大混乱に。今日は散々豪い目に遭わされたんだし、ちょっぴりすっきりするね。んじゃ、折角だしアレを聞かせてあげようかな。

「まあまあ須川君たち。多分とある会話を聞いてみればその理由もすぐにわかると思うよ」
「だな、おいムッツリーニ。このバカ3人に聞かせてやりな」
「…………了解、再生」


〜例のボイスレコーダー再生中〜


『『『何だコレ!?』』』

秀吉渾身の力作であるこのボイスレコーダーに入った会話を須川君たちにも聞かせてあげることに。さっき以上に慄いている様子が見て取れる。それにしてもホント秀吉は凄いよね。時間がないから一発録りだったのに一人六役を見事に演じてた上、話聞かないFFF団を懐柔してくれたわけだし。

『いつだ、いつの会話だこれは!?』
『と言うかいつこんなものを……!?と、盗聴かムッツリーニ!?』
『ま、待て落ち着け福村に横溝!?そもそもこんな会話心当たりなんて———』

……今更だけど、色々殺されかけたとは言えこんなねつ造会話を使うのは流石に須川君たちに悪い気がしなくもない。こんなんでも須川君たちも僕らFクラスの貴重な戦力なわけだし、後でちゃんとこの誤解を解いて———

『———心当たりなんて……な、無くもないが……』

『『う、うむ……こういう事もあったような……無かったような……』』

「「「(やっぱ心当たりあるんかい……)」」」

———前言撤回、解く必要なさそうだ。どうやら誤解でも何でも無いらしい。一応疑われる可能性もあったからムッツリーニが予め仕入れていた情報を元に秀吉が作った会話だから、そりゃこれも心当たりあるのだろうけどさ。

『『『だがこれは明らかにおかしい!この会話の中の彼女たち———否、これまで告白してきた女の子から……OKを貰ったことなど一度たりとも無いんだぞ!?』』』

「それ自分で言ってて悲しくならない!?」

彼らの心からのモテたいという想いが伝わる叫びが屋上に木霊する。そしてその叫びに思わずツッコミを入れてしまう僕。血の涙流してまで、学園全体に聞こえそうなくらい大声で言わなくてもいいんじゃ……

「ま、モテねぇからこそこんなバカみたいな反乱起こしやがったわけだしな。さてと、んじゃ俺はそろそろ造と秀吉、それから小山と少し話してからFクラスに戻るな。今すぐにでもあのバカ共に補充試験の指示しなきゃならねぇ」
「ん、了解。それじゃあそっちは任せた。でもってこの場は任せてよ雄二」
「…………俺らも後から行く」
「坂本君、そっちはよろしくお願いしますね」
「おうよ、任された。お前らご苦労さんだったな」

今日の反乱のお陰で予定とか完全に狂わされたわけだし、戦力もかなり削れているからね。Aクラス戦を控えていることだし雄二が早速行動開始しようとしている。どうでもいいけどコイツ普段はクラス代表の仕事は造とかに任せているくらいダラけることの達人の癖に、こういう大事な場面ではキッチリ動くんだよね……雄二は普段からもっとしっかりすべきだと思うんだけど。

『ま、待てや貴様ら!』
『か、勝手に終わらせんなバカ共!』
「ん?」

と、屋上から出ようとした雄二の前に須川君たちが立ちはだかる。わかっちゃいたけどまったくしつこいね。

「なんだ一体。俺は忙しいから構うな、明久たちに遊んでもらえや須川に横溝に福村」
『ちょ、調子に乗るな異端者共!いくらFFF団を卑劣な手段で懐柔しようとも、こちらには奥の手が残っている!』
「……奥の手?へぇ、それって何かな須川君」

奥の手ねぇ?それはまさかとは思うけど……“アレ”じゃないよね?

『聞いて驚くなよバカめ!そんな小細工など効かない、いやと言うより聞く耳持たない連中がいるんだよぉ!』
「ほー?小細工が効かないねぇ?」
『その通り!貴様らを屠ることだけしか考えられなくなったリミッター解除している貴様ら以上の戦闘力を持つ狂戦士達(バーサーカーズ)がまだ俺らには付いているんだ!』
「へー?狂戦士達(バーサーカーズ)ねぇ?」
『よ、呼ぶからな!今ここに呼ぶからな!余裕ぶっこいてるその顔を歪ませてやる!おぉい皆!異端者吉井たちはここにいるぞぉ!』

そう大声で屋上から叫ぶ須川君たち。ああ、やっぱり奥の手ってそれなんだ……先に言っておくね、ご愁傷さま。そして———そろそろキミの出番だね、お待たせ。

「———へぇ?アキたち以上の戦闘力ですって?それはとても怖いわね」

『『『……えっ?』』』

彼らがその連中を呼ぶと同時に、屋上にいた生徒の一人が瑞希やムッツリーニと同じように秀吉にしてもらっていた変装を解き現れる———さあ、今度はキミに任せるよ“美波”!

『『『……なっ!?き、キサマ……島田!?』』』

「ハロハロー須川に福村、横溝も。さっきから黙って話聞いてたんだけどアンタら随分と元気そうでなによりね。これくらい元気なら———ウチが全力で討ちにいっても死なないわよね……?」

『『『ヒィ!?』』』

これで僕ら全員が揃ったことになる。造や秀吉の活躍で、途中本気で危なかったりもしたけれど全員無事だ。“Fクラスの変”は失敗だね須川君たち。そしてもっと言うなら……あろうことかこの美波をここまで怒らせちゃったことは大失敗だね君たち。

「アンタら随分イロイロやってくれたわね。面白いわ……ウチらのことを散々コケにしてくれちゃってホント面白いわ……今日は無事に帰れるなんて思わない事ね……!」
『お、おい狂戦士達(バーサーカーズ)!早く来るんだ狂戦士達(バーサーカーズ)!吉井たちはここにいるぞぉ!』
『今すぐ来てくれぇ!?し、島田が!島田がヤバイ!?何か黒いオーラ漏れてる……全身から殺気が迸ってるぅ!』
『し、島田ァ!おおお、お前でも流石に狂戦士達(バーサーカーズ)には敵わんぞ!今すぐその殺気と闘気を収めてくれるなら……ゆ、許してやらんこともないぞ!?』

遠目だととっても素敵で可愛い笑顔だけど、よく見れば瞳に光が灯っていないご様子の美波。う、うーん……久しぶりに本気で怒った美波を見たけどすごい迫力だ……そんな彼女の殺気に当てられて、完全に及び腰になってビビっている口だけ強気の須川君たち。どうやら狂戦士達(バーサーカーズ)をここに呼んで美波の相手をしてもらう魂胆のようだ。

「ふーん?それってウチでも敵わない程強い奴らってことかしら?」
『そ、その通り!島田ですら敵わん!だ、だから大人しくしておくんだな!』
「そうなんだ。さっきも言ったけどそれは怖いわね。ところで———












———それってまさかとは思うけど、ウチですら敵わない奴らって……コイツらじゃないわよね?」

『『『……え?』』』

そう言って美波は屋上の隅に隠してあったブルーシートをバッ!っと勢いよく捲る。その中から出てきたものは……

『うぐぅ……か、関節がイデェ……』
『お、俺たちは一体何を……?何でここに……?さっきまで何してたんだ……?』
『し、島田様……ホント反省しましたので……そろそろ許していたたたたたた!?』

……須川君たちが頼りにしていたであろう、Fクラスの狂戦士達(バーサーカーズ)と呼ばれた者たちの成れの果て。ご丁寧に全員が関節を外されロープで縛られているとい見るに堪えない姿になっている辺り流石は美波とムッツリーニだと言わざるを得ない。その痛みのお陰で僕らを追っていた時はあれだけ錯乱していたにもかかわらずちゃんと(?)正気に戻っているようだ。

『『『え……えっ!?ええっ!?』』』

155時間目 ( No.325 )
日時: 2016/03/11 22:07
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

「で?ウチですら敵わない連中はまだかしら?まさかこんな話にならない連中じゃないわよねぇ?」
『そ、その……島田さん、いいえ島田様。まさかこれをやったのは……』
「ウチと土屋よ。まあ……土屋はまだ体力が回復しきっていなかったようだから———“こいつらの大部分”は“ウチがまとめて”やったんだけどね」


〜美波回想中〜


『ですからある程度はヒデさんが何とかしてくださったハズですから、残りの問題は一つだけだと思います』
『残りの問題……それっていわゆる“狂戦士達(バーサーカーズ)”と呼ばれるFクラスの皆さんをどうするのか、ですか?』
『はいです。困りましたよね……恐らく仮にこーさんが回復して、アキさん達が繋がれている手錠を開錠して3人で戦ったとしても……その方々を止めるのは難しいだろうとアキさん達が仰っていまして』
『こ、困りましたね……明久君たちもとても強いですけど、それ以上って……』
『……ならOK。いけるわね』

『『……えっ?』』

『し、島田さん……?あ、あの……』
『月野、今までよく頑張ってくれたわね。後は作戦再開までしばらく休んでいなさい。瑞希、アンタは月野の作戦通りここから出たら指定の場所に行っておいて。残りの問題は———ウチに任せなさい』

———黙って月野の話を聞いてみたけど……うん、それなら大丈夫そうね。そう月野に言って闘気を全身に纏わせながら立ち上がるウチ。

『み、美波ちゃん?美波ちゃんはどうするんですか……?』
『……ふ、ふふふっ……ウチ?ウチはね———バカげた暴走をしているそのバカ達の暴走を止めてやることにするわ』

『『ええっ!?』』

そのウチの発言に目を丸くして慌てふためく瑞希と月野。ん?どうしたのよ二人とも?

『何を慌ててるのよ。アキや土屋たちが敵わないレベルの手におえず暴走している連中を止めなきゃいけないんでしょ?つまりはアレよ、そのアキたち以上に戦える人が止めれば済む話じゃないの。だったらウチの出番ってわけね、そんな奴ら一捻りよ』
『だ、駄目ですよ!?狂戦士達(バーサーカーズ)と呼ばれる方々はホントに危険な方々何ですよ!?自分何度か彼らと接触したのですが、一度危うく殺されかけたんですよ!?』
『み、美波ちゃんが危ない目に遭うのなんて私みたくありません!』

あー……なるほど、そう言う事ね。全く二人とも心配性ねぇ?そんな心配しなくても———

『安心なさい。嘗めてもらっちゃ困るわ……ウチがそんなただただ我を忘れて暴れているだけの連中に後れを取るとでも?冗談じゃない……こんな場所に閉じ込めてくれたこと、大事な試召戦争中に余計な事をしてくれたこと、そしてアキを酷い目に遭わせてくれたこと———その恨み全部まとめておつり付きで仕返ししてやらないとウチが気が済まないもの。そいつらの相手はウチがする、いいわね?』

そう言ってパァンッ!と乾いた音を立たたせ拳と手のひらを打ち合わせるウチ。今回ばかりはちょっと許せないわよね。と言うか最初から許す気も無いわ……!目には目と鼻を、歯には歯と舌をよ……!

『『…………』』

『ん?何よ瑞希に月野?ウチを見てボーっとしちゃってさ』
『……島田さん、すっごくカッコイイです。自分も島田さんのカッコよさ見習いたいくらいです……』
『……わ、私ちょっと美波ちゃんにまで惚れちゃたかもしれません……』
『アンタ達それどういう意味よ!?』


〜美波回想終了〜


「———って感じで、後は補充試験室から出て木下の作ってくれてたリストを使って暴走してる連中を見つけては、全力で叩きのめし関節外してから正気に戻してあげたってこと。理解できたかしら?」

『『『…………』』』

そんな美波の話に絶句する須川君たち。そりゃそうだ、理性を失いあんなに殺気立って僕らを始末しようとしていたおぞましき狂戦士達(バーサーカーズ)が一人の女の子に大部分が潰されたとあれば言葉を失ってしまうのも無理はないと思う。

「それにしても……全く無事にいったとは言え美波も無茶するなぁ。あんまり無茶したら駄目だよ。怪我したら元も子もないでしょ」
「心配してくれてありがとアキ♪でもコイツら随分とあっけなかったわよ。正直幻滅ね……もう少し張り合いがないとウチの気が収まらないわ。ねぇ土屋」
「…………(コクコク)」
「ま、その分の鬱憤は———首謀者のアンタらで晴らすけどね……よくも今まであんな狭い所にウチと瑞希閉じ込めてくれたわね……そしてよくもアキをいじめてくれたわね……!」

『『『…………(ヤバイ、死ぬかもこれ)』』』

再び美波から立ち上る闘気と殺気。ここにきてようやく自分たちの置かれた状況を理解した須川君たちは涙目になってガタガタと震え始める。

「んじゃ、俺はもう行くな。まずは造と秀吉、それから小山と少し話をせんとな」
『さ、坂本クゥン!?は、反省するしもうバカな真似はしないから助けてくれませんかぁ!?』
「HAHAHA!聞こえんなぁ?言っただろ、俺は忙しい。島田たちに遊んでもらえや」
「じゃあ造たちにお疲れって言っておいてね雄二。僕らこの三人の末路見てから戻るから」
「おうよ。後でコイツらがどんな面白い惨劇になったのかちゃんと報告しろよ明久」

そう言って愉悦そうな顔で須川君たちを一瞥してさっさと屋上から去っていった雄二。

『だ、だったら……む、ムッツリーニさん!我々のお宝(エロ本)を贈呈いたしますのでどうかお助けを!』
「…………趣味が合わないだろうしいらん。明久、それから島田に姫路。俺は工藤に礼を言って来る」
「ん、了解。愛子によろしくね」
「はい、愛子ちゃんにありがとうございましたって言っておいてください」
「ムッツリーニ、君も病み上がりなんだしあんまり無理しないようにね」
「…………三人もお疲れ」

ムッツリーニはムッツリーニで彼らの懇願を無視して、どこからか取り出したロープを伝って屋上からするすると降りていく。これで屋上に残ったのは須川君たち三人に僕と瑞希と美波の三人だ。

『く、クソッ……!なんでだよ……!俺たちはただ……ただ異端者共を……!俺らがモテないのは吉井たちバカのせいだって言うのに!何で俺らがこんな恐ろしい目に遭わなきゃならないんだよ!?』
「えー……そ、それは流石に僕に言われても」
『そ、そうだ!全部吉井たちが悪い!なんでお前みたいなバカがモテるんだ!?』
『吉井は勉強も出来ないうえにブサイクで役立たずのバカだろ!?そんなバカがモテるなんておかしい!どんな卑怯なことをしたんだ貴様!』

後がない三人は逆切れ気味にそんな罵倒をしてくる。我が事ながら酷い言われようだ。そこまで言わんでも……と言うかどうしてまた一言ごとに僕の事を必ずバカって呼ぶんだろうか。流石に泣きたくなってちょっぴり文句を言おうと思ったその矢先。

「……一つだけ、言わせてください須川君たち」

「「ん……?瑞希……?」」

『『『姫路さん……?』』』

と、何故だか瑞希が美波と須川君たちに割って入ってそう言って来る。一体何だろうか?

「えっと……その前に明久君。ほんの少しだけ耳を塞いでもらっててもいいですか?」
「へ?僕?耳塞ぐ?……何で?」
「お願いします明久君」

うーん、よくわかんないけど何だか重要そうな話だし、それに瑞希の真剣そうな目を見るとどうにも断れない。ならちょっと彼女の言う通りにしようかな。

「ん、了解。塞いでおくね。あ、でも何かあったらすぐに知らせてね」
「ありがとうございます明久君」
「ねえ瑞希、ウチは?聞いてていいの?」
「あ、大丈夫です。美波ちゃんには一度お話したことありますし」
「……ああ、なるほど。あの話するんだ」

そのまま耳を塞いでしばらく待つことに。一応須川君たちが逃げ出したり錯乱して瑞希や美波に襲い掛かると不味いから目は開けておくけどね。僕が耳を塞ぐと、瑞希は静かに話し始める。

『お待たせしました。言いたかったのはですね———私が好きな人、好きになった人の話です。皆さんは私がどうして……明久君を好きになったのかわからないのですよね』
『あ、ああ……こいつらは一体どんな汚い手を使ったのか———』
『私は……明久君に昔から助けられてきました』
『!?お、幼馴染だっただと……!?そうか坂本然り幼馴染だとポイントが高いのか……!お、おのれ……やはり粛清対象だコイツは!』

……耳塞いでいるから何にも聞こえないけど、なんか変な殺気を感じる。な、何を話しているんだろうか?

『いえ、そこが重要ってわけじゃないのですが……コホン。そう、私はずっと助けられてきました。小学校でも、試召戦争でも、あの肝試しの時でも……いいえ毎日助けられてきたんです』
『そ、そう言う事か……つまりそんなイベントがあったからこいつはモテて……!俺たちにもそんなイベントさえあればモテるのか畜生……!』

さっき以上に殺気を感じる。だから何!?何を皆で話してんの!?今すぐにでも塞いだ耳を解放したいだけど……

155時間目 ( No.326 )
日時: 2016/03/11 22:08
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

『……確かに須川君たちの言う通り、例えば……翔子ちゃんと坂本君のように長い時間をかけて積み重ねてきたものもあるかもしれませんね』
『だろう!こいつらはそう言う機会に恵まれたってことだ……!お、俺らだって長い時間女子と共に過ごす機会さえあればきっとモテて———』
『ですが違います。大事なのはそこじゃありません』

『『『えっ……?』』』

……ん?あれ、なんか空気が変わった……?

『小学校のころ一緒だったのは事実ですが、クラスが一緒だったのは四年生の時だけです。そこから先は高校二年生になるまで交流なんてありませんでした。そう……時間だけが全てじゃないんです』
『そうよね。そう言う話ならウチなんてアキと出会ったのは去年よ』

『『『そう言われれば……そうだが……』』』

うぅん……気になるなぁ。多分関係ない話のはずなのに何故だかむず痒い気持ちになってくる。でも聞いちゃダメだって言ってたし我慢するしかないか。

『だが時間だけじゃないと言うなら、一体あの世界一のバカのどこが良いと言うんだ!?あのバカには汚点しか見当たらないじゃないか!』
『確かに皆さんの仰る通り明久君にも悪い所あると思います……成績は最近急上昇しているとはいえ特段良いってわけじゃありません。それとまだまだ女心がわからないようですし……すぐ他の子たちに好かれちゃいますし……』
『アンタらの言う通り、アキって時々とんでもないバカをやらかしたりもするわ。今でこそちょっとは気遣い上手になったけど、アキって結構直球で失礼な事も言っちゃうことだってあったしさ』
『その通りだ。だからこそ理解できん!奴のどこに惚れたと言うのだ!?』
『悪い所もあれば良い所もいっぱいあるからですよ』
『そう言う事。アンタら知ってる?アキの良い所をさ』

『『『……よ、吉井の良い所?…………そ、存在するのか?』』』

うぉい!?……あ、あれ?何だろうか。今すぐここで須川君たちをぶん殴りたくなる気分になったんだけど……

『明久君の良い所いっぱいありますよ。例えば……試召戦争中の明久君の姿は皆さんも見てきたはずです。明久君は怪我することを躊躇わずにクラスの為、そして……私たちのために全力を尽くしてくれました。そう、他人の為に一生懸命になれるそんな素敵な人なんです』
『窓ガラスを壊す壁を壊す、そのせいで怪我をする———正直褒められるようなことじゃないかもしれないわ。バカにされても仕方のない事かもね。でも、それは全部ウチらの為に一生懸命アキが考えてやったことなのよ。アンタらは試召戦争中そう言う事ちゃんと出来た?今日なんて酷いものだったじゃない。嫉妬して本来の目標も忘れて暴れるだけ暴れて……そんなんでモテると思ってるの?』

『『『うっ……』』』

何か瑞希と美波が言ったと同時に、気まずそうに顔を伏せる須川君たち。

『だからこそ……他人の為に頑張れる心優しい明久君だからこそ、私たちは好きになったんです』
『アンタらさ、そんなにアキがモテて悔しいなら……自分たちがモテたいのなら……せめて試召戦争で活躍してみなさいよ。一生懸命何かに打ち込めるなら———モテるきっかけが作れるかもしれないわよ』

『『『モテるだとぉ!?』』』

と、二人が何か彼らに言い終わると、トントンと僕の肩を叩いて耳を塞ぐのはここまででいいですよと合図してくれる。あ、終わったっぽい?

「明久君、もういいですよ」
「ん、そう?」
「話は付いたわ。で、須川に福村に横溝。アンタらこれからどうするか言ってくれる?」

さて、何を話していたのはわからず仕舞いだけど、須川君たちは一体何と答えるんだろうか。少し緊張しながら彼らの答えを待つと……

『……わかった。確かにそうだ。俺らにはそういう努力が足りなかった』
『試召戦争という大事な戦いにつまらない事をしてしまったな……』
『その……すまなかった吉井。俺、確かに間違っていたのかもしれないな』

…………たった2.3分程度の会話の間に、君たちに何があったんだ。

「そ、そうなんだ……じゃ、じゃあ今後は———」

『『『———ああ、任せろ!試召戦争中は今後嫉妬心に捕らわれず真面目に挑む!それこそがモテる秘訣だしな!』』』

「ね、ねえ瑞希に美波?何話してたの?何でこうもあっさり須川君たち協力的になってるの?」

わからない……いくら彼らが単純だからって、こんなに物わかりが良いはずないのに。そう困惑しながら二人に聞くと。

「「明久君(アキ)のお陰ですかね(かしらね)♪」」

なんて、よくわからない答えと笑顔を送ってくれた。ま、まあよくわからないけれど———色々とピンチの連続だったけれど、これで僕らの対Cクラス試召戦争は何とか無事に幕を……












「———まあ、それはそれとして。アンタらをオシオキしないってことにはならないけどね」

『『『…………What?』』』

幕を下ろすことになるのは、まだ早い。まだだ、まだ終わっていないぞ須川君たちよ。

『え、ちょ……ちょっと待ってください島田様……オシオキ?』
『この流れはアレじゃないですか?ほら、次からは心を入れ替えて頑張ろう!的な……皆で協力して敵を倒そう的な……』
『お、俺たちはもう改心しましたので……ここはオシオキ無しでお願いできたら嬉しいのですけど……』
「何を勝手に綺麗に終わらせようとしているのかしら……アンタらが改心することと———ウチらに色々やってくれたことに対する制裁はまた別問題でしょう……?」

と、まだ終わっていないわよと美波が殺気を剥き出しにして笑い須川君たち三人は固まる。デスヨネー、正直須川君たちはやり過ぎたと思うし美波の言うことは尤もだ。

『『『ひ、姫路さんッ!俺たちもう変な事はしないと約束しますので、どうか島田様を止めて頂けないでしょうか!?』』』

「え?うーんー……そうですね」

ズンズンと近づいてくる美波を目の前にして、瑞希に助けを斯う須川君たち。そんな須川君たちのSOSを聞いた瑞希はほんの少し考えてから———

「言いたいことはちゃんと言えましたし……私も実を言うとですね、美波ちゃんと一緒で明久君虐めてたことは———ちょっと許せないかなーって思ってたんです☆と言うわけで美波ちゃん、お願いしますね」
「うん、なら任せてね瑞希」

『『『姫路さぁん!?』』』

———そうニコニコ笑顔で答える。普段は温厚な彼女も、今日に限って言えば実は相当怒っていたようだ。情け容赦なく須川君たちのSOSを切り捨てる瑞希。なるほどこれが自業自得、そして人を呪わば穴二つということか。うんうん、勉強になるなぁ。

『『『超ナイスガイな吉井クン!もう我々は心を入れ替えたんだ!これからの試召戦争ではきっと我々の力が必要になる!だからどうか助けてくれませんかね!?』』』

もう後がない彼らは僕に土下座までして助けてとお願いしてくる。むぅ、確かにいくら制裁の為とは言えこのままじゃ多分美波の手によって全身の関節は外され骨と言う骨が砕かれてしまう。そうなれば一人でも多く戦える人が必要になるであろう今後のAクラス戦が不利になるかもしれない。そう言う意味では戦力は残しておくべきだろう。

『(吉井……)』
『(吉井……っ)』
『(吉井……っ!)』

彼らのそんな助けを斯う顔を見て、今一度冷静になって考えてみる僕。考えをまとめてから一言。

「…………見捨てても、良いんじゃないかなぁ」

『『『吉井クゥン!?』』』

冷静になって考えれば、さっきも思った通りこの彼らの窮地は嫉妬に狂い大事な試召戦争をボイコットしたばかりか妨害までしてきた結果、つまりは自業自得だもんね。そうでなくてもいつも酷い目に遭わされているわけだし……

「とは言え一応は戦力の一部なんだしさ、美波。悪いんだけど———死ぬ一歩手前で許してあげてね」
「はーい♪もうアキは優しいわねぇ、アンタ達アキの心遣いに感謝することね」

『『『どう考えても許してもらえる対応じゃねぇ!?』』』

そりゃ許されないことしたのは君たちなんだしこればかりは仕方ないだろう。

「んじゃ、瑞希。この制裁を観戦しながら少し休んでしばらくしたら美波と三人で戻ろうね」
「はい、明久君お疲れ様でした。怪我とかありませんか?」
「へーきへーき、問題ないよ」

と言うわけで屋上の隅の狂戦士達(バーサーカーズ)を隠していたブルーシートをレジャーシート代わりにして座って美波の殺戮ショーを観戦することにした僕と瑞希。見たがっていたわけだし、後で雄二にも彼らの末路を聞かせてあげよう。

「んじゃ、そろそろ……覚悟を決めなさいアンタら。うっかり死なないように気を付けなさいな」

『『『ちょ、や……止めてください島田様……い、嫌だ……そ、そこは曲がらな……許し……———ぎゃあああああああああああああああああああああああっ!?』』』

———と言うわけで、これでようやく長かった対Cクラス試召戦争・防衛戦・そしてFクラスの暴動は須川君たちの悲痛な断末魔が屋上に木霊するなか幕を下ろすこととなった。いやはや、みんなお疲れさま。

156時間目 ( No.327 )
日時: 2016/03/11 22:16
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

造Side


「———おう、造に秀吉。ちょいと待たせちまったな。そんでもって良くやってくれた、ありがとな」
「いえいえ、ゆーさんもお疲れ様でした」
「無事に屋上から戻ってこられたところを見ると、須川たちの件は片が付いたようじゃな」
「まあな、今頃きっと屋上は面白いことになってるだろうさ。直で見れないのは残念だがな」

Cクラス対Fクラスの試召戦争は何とか自分たちの勝利で終わりました。その試召戦争で自分たちが一体何をやったのかを小山さんに説明し終えたのとほぼ同時に、かっかっか!と笑いつつ旧校舎一階にやってきた我らが代表にして軍師のゆーさん。良かった、屋上の方も無事に済んだようですね。……彼らが無事だと良いのですけど。

「さてと、だ。よう小山。随分と健闘したようだが残念だったな。俺たちの勝ちだ」
「……そのようね。Fクラスを懐柔して戦うなんて卑怯な作戦だったのにね。……言い忘れてたけど、悪かったわねあんな禁じ手みたいな手段で挑んじゃって」

震える声でそう返す小山さん。

「あ?お前は何言ってんだ、Cクラスの作戦自体は何も悪くねーだろ。そもそも懐柔されるようなあいつらが悪い。そう言う意味じゃ良く策が練られてたと思うぞ。逆に俺は明久にも途中言われたが代表失格かもしれんしな」
「いや、今回は代表とかそれ以前の問題じゃし雄二がどうのこうのの問題ではないと思うがの」
「ですね……ヒデさんが上手にフォローしてくれたお陰で今後はこんなことは無いと思いますが」
「つか、次アイツらがまたつまらん理由で反逆しようものなら次こそ本気でブチのめす」

そうなったら島田以上の地獄を見せてやる、なんて言ってるゆーさん。あ、この目はマズい本気だ……

「おっと、話逸れてるな。ワリィ小山。で、ある意味奴らが迷惑かけたことだし、詫びと言っては何だがどうやってお前たちに勝ったのか気になるなら説明してやってもいいぞ。聞くか?」
「……それはもういいわ。どんな手を使って貴方たちが逆転したのかは、さっき聞いたから」
「そうか、ならそろそろ戦後処理を———」
「……待って。ただ、別の事で一つ聞かせて。坂本君の立場から見た意見を聞きたいんだけど、今回私の何がダメだったと思う?」
「ん?……ふむ、そうだな。さっきも言ったがお前の作戦自体は悪くなかった……それでも負けたのはまず秀吉を嘗めすぎたこと。それから……Fクラス代表の俺が言うのもおかしいが、Fクラスと言う危険要素を作戦に組み込んじまったことだろうな」
「……と言うと?」

小山さんの問いにゆーさんが数秒考えて答えます。ふむふむ、ゆーさん曰く一つ目のCクラスの敗因は自分もさっき言った通りヒデさんの存在を軽視した点。そしてもう一つは……Fクラスを利用した点、ですか。

「秀吉を軽視したことはしゃーない、ダークホースだったしな。だから問題があるとしたらFクラスの扱いだ。よりにもよって簡単に造反したりちょっとしたことに影響されやすいバカの集大成共を安易に使うのは少しマズかっただろう。俺ですら手に余ってるんだぞ、他のクラスが一朝一夕でコントロールできるはずがない」
「あー……なるほど確かに。そのせいで今回大変でしたからね……Cクラスの皆さん自身が振り回されることも考慮しておくべきだったってことですか」
「些細な出来事で裏切ったり寝返ったり手のひらを返したりとあやつらは本当に忙しいやつらじゃからのう……」
「そう言うこった。要するにFクラスの連中に逆に裏切られる可能性を考えていなかったのはマズいってことだよ」

つまりCクラスの皆さんがFクラスの皆さんを簡単に懐柔出来たならば、その逆で簡単にFクラスの皆さんを懐柔されてしまうこともきちんと念頭に置いておく必要があったと言うわけですか。

「とは言えあの連中を使ったからこそ、ここまで俺らは追い詰められたんだ。だからこそ利用するなら利用するで常に奴らの手綱を握っておくべきだっただろうな。例えば裏切り防止に何組かに一人Cクラス生徒を付けておく。不穏な動きがあったなら監視の目を強化したり使えないと判断すれば迷わず勝負を挑んで戦死させる、とかな」
「……なるほどね。もう使えない手でしょうけど、参考になったわ」

ゆーさんの答えに納得したのか、小山さんは大きくため息を吐きそう返します。……あれ?何でしょう、小山さん少し震えている……?気のせい……ですかね?

「それはこっちの台詞でもあるさ。今回のお前たちのお陰で俺もあのバカ共に対し今後どう対応すべきか見えた。Aクラス戦前に不満を爆発させれたのはデカいし、何よりこの試召戦争を経て造や秀吉の運用方法に更にバリエーションが増えることになったからな。今後の良い経験を積ませてもらったぜ、感謝してる」
「Fクラスを使って追い詰めるつもりが、かえって貴方たちを強化させちゃったのね……なんというか皮肉なものね」

確かにAクラス戦前の暴動で良かったですよね……流石にAクラスで同じことが起こったら対処できなかったでしょうし。そう言う意味も含めて今回は非常に良い防衛戦となりましたね。自分もあの戦いの中で苦手としていた接近戦を克服できましたし。

「そう落ち込むな。知っての通り俺らの目標はあくまでAクラス。お前らのクラス設備をどうのこうのするつもりはない。その話を含めて戦後処理に入りたいんだが、良いか?」
「……好きにして。もう何でもいいわ。もう……どうでも……いいわ……」
「?お、おう?そうか、なら———ワリィ造。今日はずっと任せきりだがこれで最後だ。この前のEクラスのように小山と戦後処理をしておいてくれ。俺は今すぐにでもFクラスに戻って補充試験の指示をしておきたい」
「あ、はいです。そちらはお願いしますね。交渉内容はEクラス戦の時と同じ感じで良いですか?」
「ああそれでいい、頼んだぞ。じゃあな小山。ご苦労さん」
「……」

と、もう話すことは無いと言わんばかりに忙しくFクラスに戻るゆーさん。今回の試召戦争でかなり皆さん点数が消費されちゃいましたから、Aクラス戦も間近に控えているわけですし一刻も早く戦力回復をしておきたいのでしょうね。

「すまぬ造よ。戦後処理はワシも抜けて良いかの?姉上と制服を交換しっぱなしじゃし、正直今すぐにでもこの女装を解きたいのじゃ。姉上にも礼を言わねばならぬしの」
「ええ勿論ですよ。あ、自分からも優姉さんに助かりましたありがとうですって言っていたと伝えておいてください。それではヒデさん本当にお疲れ様でした」
「うむ任せよ、お主もお疲れ様じゃったな。ではワシも失礼するぞ小山よ」

ゆーさんに続いて今回のMVPであるヒデさんもこの空き教室を後にします。いやはやヒデさん本当にお疲れ様でした。さて、それじゃあ自分もちゃんと最後までお仕事してからFクラスの戻るとしましょうかね。

「さて、お疲れのところ申し訳ありませんが最後にちゃんと戦後処理を行ってから終わらせることにしましょうね小山さん」
「……」
「ああ、安心してください。さっきゆーさんもちらっと言っていましたが、Aクラス戦で少しばかり手を貸してもらいたいだけです」
「…………」
「ですから自分たちはCクラスのクラス設備をどうにか……する、つもりは」
「…………(ぽろぽろ)」

……え?

「こ、小山……さん……?」
「……す、すみませ……せんぱい……み、ないで……」

え、え?こ、これどういうことです……?何故だか戦後処理に入ろうとした途端、堰を切ったかの如くその小山さんの瞳からは涙が流れ出し始めます。そ、そんなに負けたことが悔しかったのですか……?いや当然悔しくないハズないでしょうし、代表としてクラスの皆さんに申し訳ないって思うのも無理はありませんよね……

「え、えっとその……っ!い、今言った通り自分たちはCクラスのクラス設備をどうのこうのするつもりはありませんし、Cクラスの作戦はとても凄かったって思います!で、ですからそう気に病まずともCクラスの皆さんもわかってくれると思いますので落ち着いてくださ———」
「ちが……う……で、す……」
「———え?」

しどろもどろながら彼女を慰めようと言葉をかけるも、首を横に振って違うと言う小山さん。

「まけたら……あ、アイツ……との……やくそく……わた、し……やくそく……まもれな……」
「小山さん?」
「す、すみま……せ……うぅ……」

負けたら……?アイツとの約束……?それってどういう……思い返せば今回の小山さんからは、どんな手を使おうとも何が何でも勝たねばならないと言う強い意志を感じました。この話しぶりも考慮すると……もしかしてこの試召戦争とはまた別の件で何か複雑な事情アリ……?むぅ……このまま泣いている彼女を放っておけませんし……

「……何やらワケありと見ました。とりあえず小山さん、少し落ち着ける場所に移動しましょうか。ここは人が来ます」
「…………(コクコク)」

ここは一階で近くに職員室もありますし、このままじゃ小山さんの泣いている姿を他の方に見られちゃいます。彼女としてもそんな姿を他の人に見せたくないでしょう。そう考え彼女にハンカチを渡しつつ、ゆっくり落ち着いて話の出来る場所に移動することに。……さて。なるべく誰にも邪魔されず、落ち着いて話が出来る場所を提供してくれそうな人……そして小山さんの悩みを打ち明けても大丈夫そうな人と言えば……

「……ここは彼女に頼みますかね」


〜造&小山移動中〜

156時間目 ( No.328 )
日時: 2016/03/11 22:16
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

———文月学園茶道部:茶室———


「———すみません小暮さん、授業中ですのに突然呼び出してしまって。おまけに部室である茶室まで貸していただくことになって……」
「いえいえ。他ならぬ月野君の頼みで、しかも私の大事な後輩の悩み相談と聞けば黙っていられませんので。そもそもこの時期は自習期間ですから割と暇をしていたんです私」

と、言うわけで。自分が考える最もこういう話に適しているお方……つまりは小暮さんにSOSを出して応援に来てもらうことに。ついでに彼女が所属している茶道部の茶室を貸してもらうことになりました。

「それにしても……ここ結構静かでいいですね。あまり茶室には来る機会がありませんでしたが心休まる落ち着ける良い空気です。周りの音全然聞こえませんし」
「そうでしょう。落ち着いて茶道に集中出来るように防音対策はバッチリです。何をしてもされてもほとんど外には聞こえないですので安心して今度是非茶道部に遊びに来てくださいな月野君」
「小暮さん小暮さん、自分何故か“何をしてもされても防音のお陰で外に助けを呼んでも聞こえないので是非弄られに来てください”と貴女が言っているように聞こえるんですが気のせいでしょうか?」
「気のせいですよ♪」

この目……絶対気のせいじゃない……下手にここに近づけば防音なのを良い事に絶対小暮さんに弄られる……!ま、まあそれは今は置いておくとして。

「そんな漫才めいた話はこの辺にして……少し落ち着きましたか小山さん?」
「……は、はい……見苦しいところ……みせちゃってすみません先輩方」
「見苦しくなんかありません。感情のコントロールとして時には“泣く”という行為は非常に重要だと私は思いますよ。ですからそう気にしないでくださいな」
「……ありがとうございます」

ひとしきりここで泣いてから、ようやく少しだけ話ができるようになった小山さん。

「さて。それで本題ですが……小山さん。もし良かったら……話してみてくれませんか。一体貴方に何があってどうしたのかを」
「一人でため込む方が余計に辛いことになりますからね。勿論私も月野君も他言はしません。全部話す必要はありませんが、少しだけでも話してくださいな」
「もし内容的に自分に話せないのでしたら、小暮さんに話してみてください。その場合はここを出ますのでご安心を」
「…………」

そう自分と小暮さんが小山さんに話すと、静かに少し考えをまとめる小山さん。彼女の邪魔をしないように数分自分と小暮さんも静かに待つと———

「……とてもしょうもない、話です。それでも……大丈夫ですか?聞いて、もらえますか先輩たち……」

「「どうぞどうぞ」」

———意を決したようにポツリポツリと話し始める小山さん。

「……今回は、負けられなかったんです……」
「そうですね。今日の小山さんからは絶対に負けられないという強い意志を感じました」
「……作戦も、情報収集もいっぱいしました……時には小暮先輩にアドバイスも貰って……」
「ええ。Fクラスに勝つためにと、小山さんは沢山私に質問をしてましたね」
「……手段も選ばずに、不満が募ったFクラスを誘導して……反則ギリギリとわかっていながらもあの連中を利用して挑みました……」
「いいえ、あれはお見事でしたよ。ルール違反ってわけでもないですし周りの全てを使って勝ちに行く姿勢、とても素晴らしいと思います」

そこまで話すと一度呼吸を整えて、いよいよ本題に入る小山さん。

「……アイツとの、約束だったんです……」
「アイツ……それってどなたです?」
「約束……どういった約束ですか?」
「…………最初は……もう、俺たち別れようって……言われ、たんです……」

「「……はい?」」

話すたびに彼女の瞳から引っ込んでいた涙が再び流れ出します。わ、別れよう……ですと?それってまさか……

「で、も……急だったし……ぜんぜん納得……できなくて……アイツにくいさがって……!そしたら……チャンス、くれて……わ……わた……わた、しがFクラス戦で……勝てたら……その話、なしにして……くれるって……アイツ、言って……くれたのに……」

「「……」」

「ま……まけ、たから……別れ、られる……わたし……“恭二”に……フラれて……うぅ……」

そこまで言い切るともう我慢できなかったのでしょう。先ほどと同じように、いいえそれ以上に大粒の涙が零れ落ちその場に座り込んで嗚咽を上げる小山さん。小暮さんと二人で、そんな彼女の背中をポンポンと優しく撫でてしばらく落ち着くまで待つことに。……ごめんなさい、小山さん。お辛いことを話させちゃいましたね。


———10分後———


「では小暮さん、何から何まで頼んで申し訳ありませんが……彼女をお願いします」
「ええ月野君、こちらは任せてくださいね。さあ、行きましょうね小山さん」
「…………(こくこく)」

小山さんが落ち着くのをしばし待ってから、まだ少しばかり辛そうな彼女を小暮さんに託して二人と別れた自分。ゆーさんたちを待たせていますし本当ならすぐにFクラスに戻りたいところですが……あんな話を聞かされたんです。まずは小山さんの件を解決しなければね。そう思い“2-Bクラス”に足を運ぼうと階段を上がろうとした矢先———

「よう小学生、相変わらず憎たらしいなお前」
「……誰が小学生ですか誰が」

———2-Bクラスに行く手間が省けましたね。ある意味会いたくない、でも会わねばならない相手が階段の踊り場で立っていました。

「一応今授業中でしょ?いいんですかこんな場所にいて———ねぇ、根本くん」
「サボりだサボり。授業なんかより大事なものがあるからな。ま、それはそうと……Cクラスに勝ったそうじゃないか」

———そう……彼こそは自分たちFクラスと何かと因縁があり、間接的に今回小山さんを泣かせた男。2-Bクラス代表の……根本恭二くんです。

「……そんなことはもうどうでもいいです。それよりも……小山さんから話を聞きました。それで?貴方は結局何がしたいんですか」
「……何がしたいかだと?……さてな、何がしたいんだろうな俺は」

これまでの事を考えると、小山さんから別れ話を申し出るならまだわかります。ですが……わかりませんね、何故逆に根本くんから別れ話を持ちかけるのですか。しかもFクラスに勝てたらその話は無しにするなんて妙な約束をしたのか本当にわかりません。根本くんのいる階段の踊り場に自分も立ちそう問いかけるも変な回答をする根本くん。

「まあ、それは一旦置いておくとして、だ。Cクラスに勝つには勝ったが、友香の策でかなりFクラスは戦力が低下しているようじゃないか」
「……まあ、そうかもしれませんね」
「だったら大変だなぁオイ。一応今日と明日は補充試験は受けられるだろうが———明後日に他のクラスから宣戦布告でもされりゃFクラスは一たまりも無いんじゃないのか?なぁ小学生」
「…………何が言いたいんですか」

……まさか根本くんこの状況を作り出すために、わざと小山さんに発破をかけた……?いや、ですがそれにしてはえらく回りくどい気が……彼の意図を探るべく、慎重に話を促します。

「だから例えばそう、明後日に……俺たちBクラスがFクラスに宣戦布告でもしたら、前回俺らに勝ったFクラスと言えど準備と戦力不足で今日のCクラス戦以上に厳しい戦いを強いられるかもしれねぇなって言ってるんだよ小学生」
「……そうですね。確かに疲労しているFクラスがBクラスに今攻め込まれでもしたら非常に苦しいことになるでしょうね。それで?」
「何簡単な事だ、だからこそこの状況を利用させてもらおうって考えているのさ……アンタと取引をしたいんだ“月野先輩”。頼む、俺のいう事を聞いてほしい」
「えっ?」

…………ど、どういう事……?急に小学生呼びから月野先輩呼びになったかと思うと、頭を下げる根本くん。な、何ごと……?

「もしも俺の頼みをアンタが聞いてくれるなら、俺たちBクラスはアンタ達FクラスがAクラス戦を終えるまではFクラスと戦わないと約束する。だから———その代わりにどうか俺の頼みを聞いてくれ月野先輩。勿論、友香の件の真意も話す。頼むこの通りだ」
「……むぅ……は、話くらいは……聞いてもいいですけど……」

予想外の行動に若干混乱しつつも根本くんに話すよう促します。そして彼の口から出てきた交渉内容とは———


〜根本交渉中〜

156時間目 ( No.329 )
日時: 2016/03/11 22:17
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

「———と言うわけだ」
「…………そういう、ことですか……」

らしくないと言えばらしくない、でも何となくこの人らしいと言えばこの人らしい話の内容に色々納得してしまった自分。あー……そう言う意図があったんですか。こう言っては怒られるかもしれませんがこの手の話の面倒くささ、“ゆーさんのソレ”に似ているのかも……?

「それで……どうだ、先輩。考えてくれないか?」
「……OK。わかりました、なら3つ条件があります」

彼の意図がわかったからこそ、自分も交渉に入ります。

「3つもか……まあいい、言ってみてくれ」
「一つ目は勿論、貴方の言った通りAクラス戦が終わるまではFクラスと戦わないって約束してください」

一つ目の条件に“Aクラス戦終了までFクラスに宣戦布告しないこと”を付ける自分、このまま彼を放置して明後日Fクラスに宣戦布告されたらまたAクラス戦が遠のきますからね。……ゆーさんごめんなさい。本来ならゆーさんに相談すべき案件でしょうが、小山さん関連の話もあるので相談できませんし。

「それはわかっている。それで、残りの2つの条件は?」
「二つ目は……貴方のその意図を、どうか彼女に———小山さんにちゃんと伝えてあげること。出来れば明日までに……と言うか今すぐにです」
「…………それ、やっぱやらないとダメか?」
「女の子泣かせる人の頼み事なんか受ける気ありませんので」

二つ目の条件は小山さんを安心させてあげること。元々根本くんとはこの話をしに来たわけですし、さっきの話聞いたら尚の事ちゃんと意図を伝えるべきでしょうからね。全く……この人うちのクラスの代表さんと変なところで似ているんですから……

「……わかった。正直それはその時まで待っていて欲しかったんだが……約束する。で、最後の条件は?」
「それで三つめはですね……自分、小学生ってあだ名は勿論嫌いです。ですが……」
「ん?」
「同級生に“先輩”って呼ばれるのもホントはむず痒くて嫌なので……“月野”でいいです」
「……わかった、なら交渉成立だな“月野”」
「では明日の放課後から始めるとしましょうか」

と、そんな感じで人知れず交渉を行った自分と根本くん。やれやれ……どうしてこうなったのやら。まさか因縁深いこの根本くんとこんな交渉をすることになるなんて世の中何が起こるかわかりませんねホント。……ただ明日から大変になりそうですし今まで彼から色々された思い出でちょっぴり複雑な気持ちになりつつも、小山さんの件は何とかなりそうでホッとする自分。


———同時刻:3-Aクラス———


『タダイマー!あータノシかった!』
『ああ、やっと戻って来た……全く私を騙しておいて今までどこに行っていたのですか貴方は。学園長先生もカンカンでしたよ?監督不十分ということで私まで怒られましたし』
『ウヘー……ダマシたのバレちゃったカ。ネエ、それよりタカシロ!あのヒトの名前ナンテいうかシッテる?』
『あの人……?』
『ショウカンジュウになるヒト!』
『ああ、月野嬢のことですか。彼女は月野造と言う名前ですよ』
『ツクル……かぁ、ウン!イイネ!かっこいいヨ!オイラきにいっちゃったヨ!タカシロ、あのヒトにしようヨ!』
『……もしかして、月野嬢を例の件に?』
『ウン!なんでもツクルと“あのふたり”ってシリアイみたいだし……イロイロとチョウドいいカラネ!』


———そんなこんなで人知れず交わされた密約。おまけに一部始終をこっそり見ていた者。錯綜する人間関係とそれぞれの想いが交差しながらも、ようやくFクラス対C・D・Eの3クラスによる試召戦争と“Fクラスの変”は終わりを告げることになりました。

156時間目 ( No.330 )
日時: 2016/03/11 22:18
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

———翌日———


「おはようございますヒデさん、昨日はお疲れ様でしたね」
「おお、造よおはようじゃ。お主も昨日は大変じゃったのう」

Cクラスとの試召戦争が終わったその翌日。眠い目を擦らせてまた寒さが増してきた通学路を歩いているとヒデさんと合流する自分。いやはやホント昨日はお疲れ様でしたヒデさん。

「ホントお互い大変でしたよね……自分、昨日は流石に疲れて家に辿り着いたらそのまま眠っちゃってましたよ。と言うか今も眠いです……」
「ワシも似たようなものじゃ。造や明久たちの様に走り回ったわけでないが、それでもまだ少し疲労が残っておる感じじゃよ」

今回は自分とヒデさんが中心になって戦いましたからね。学園中走り回ったこととフィールド内に思った以上に長い時間留まり戦ったせいで、フィードバックからくる疲労による眠気が帰るころには自分を襲うことになっちゃいましたし。

「ですがヒデさんに自分、それから姫路さんや島田さん達の頑張り。優姉さんたちのサポートのお陰で防衛戦が何とかなって何よりですよ。あ、優姉さんにお礼言ってくれました?」
「うむ。“気にしないで欲しい。借りを返しただけだし、これで思う存分アンタ達と戦えるってもんよ”と姉上は言ってたぞい」
「アンタ達と戦える……ですか。そうですね、次こそ念願のAクラス戦……ようやくここまで来ましたねヒデさん」
「じゃな。そう考えるとワシらの昨日の……いいや、今日までの頑張りも意味あるものじゃろうな」

そう言って二人でニィッと笑いながら下駄箱で上履きに履き替えます。

「Fクラスの皆さんもヒデさんと姫路さん達の説得のお陰で、もう嫉妬に駆られて暴れないって約束してくれましたからね。後は———」
「———Aクラスに勝つだけじゃな。一学期初めからここまで長かったが……絶対に勝とうの造よ」
「はいっ!自分たちFクラスの力で勝ちましょうね!」

そんな決意表明をヒデさんと行っていると、自分たちの教室であるFクラスに辿り着きます。さて、造反されたとは言え昨日は昨日で今日は今日。心機一転して全員が協力してAクラスに勝つためにも元気のいい挨拶で皆さんと心を打ち解けねばね。

「「(ガラッ!)おはよう———」」

そう考えながら勢いよく教室の扉を開けると、そこは———












『『『ヒャッハー!!!異端者共は滅却だァー!!!』』』

『『『また一段と寒くなったよなぁ?温めてやるぜ吉井、坂本、ムッツリーニ……我々の怨嗟の炎でなぁ!』』』

『『『そぉら!燃え上がれ燃え上がれ異端者共!』』』

「「「あっじぃ!?ちょ、また火ぃ付いてる!シャレにならんくらい火ぃ付いてる!?」」」」

「「……は?」」

———何このデジャヴ。教室に入った自分とヒデさんの目に映ったのは、この前の様にアキさんゆーさん、そして新たにこーさんを縛り上げ燃やし続けるFクラスの皆さんでした。え、えっ……ちょ?あ、あれぇ……?な、何で……?嫉妬に駆られて暴れないって約束はどこに……?

『む……?おお、造ちゃんに秀吉じゃないか。おはよう、今日も二人とも可愛らしくて何よりだ』
『昨日は本当に申し訳なかった……我々も反省したよ』
『次からは心を入れ替え、必ずモテる為———もといクラスの為に頑張るからね!』

「「…………」」

と、唖然としている自分たちに気付いたのか、島田さんにやられたのでしょう身体中包帯だらけの姿でありながらFクラスの皆さんを仕切っている須川くんたちが話しかけてきます。いえ、あの……心を入れ替えているならこんな事にはならないのでは……?自分とヒデさんが困惑している間も、せっせと薪をくべて火力を上げアキさん達を燃やし続ける皆さん———ってちょっとぉ!?

「な、何やっているんですか皆さん!?火まで付けてアキさん達を焼くなんて!?」
「ちゃ、ちゃんとお主ら約束したであろうが!?もう嫉妬に駆られることなく真面目に明久たちとも協力すると言ったのは何だったのじゃ!?」

脳の処理が追いついていませんでしたが、このままではまたアキさん達が上手に焼かれてしまいます。気合いで脳のフリーズを解除してツッコミを入れる自分たち。

『はは!勿論さ造ちゃんに秀吉。我々は成長したんだ。さっきも言ったが俺たちは必ずやAクラスを倒しモテモテになる!そのためなら憎っくき吉井たちとも協力すると約束するよ』

「「この状況でその台詞はおかしいでしょ(おかしいじゃろ)!?」」

協力する相手を燃やしますか普通!?おかしい、自分の知っている成長とも協力とも何もかもが違う……

『おっと勘違いしないでくれたまえお嬢さんたち。確かに我々は協力するとは言ったが———』

「「(お嬢さんって……)い、言ったが?」」

『『『———試召戦争で、協力すると言っただけさ!!!』』』

「「……」」

へり……くつ……っ!それ、屁理屈ですよねっ!?

『ぶっちゃけこいつらが羨ましい恨めしい憎たらしいことには変わりないからね!』
『試召戦争中は造反なんてしない……が、日常生活の中では別だ!』
『その通り、我ら正義のFFF団!異端者共は滅せねばならないからな!』

「「…………」」

ほ、ほんとに……ほんとにこのクラスは……

「「「隙ありぃ!散ッ!」」」

『っ!か、会長たち大変です!奴ら縛られていた縄を焼き切って逃げ出しました!』
『何ィ!?追え、逃がすな!必ずあのバカ共を血祭りにあげるんだFFF団!さぁ、行くぞお前ら———異端者狩りの時間だァ!』

『『『了解です会長!異端者共に死を!』』』

「「「ええぃ、しつこいFFF団!」」」

「「……………………」」

再び思考が停止した自分たちを置いて逃げ出すアキさん達に追う須川くんたち。……これ、この前とまるっきり一緒の展開なのですが……

「ひ、ヒデさん……これ、大丈夫ですよね……?次のAクラス戦……大丈夫です、よね?」
「……一応、試召戦争中は暴走せぬと言っておるからの……ま、まあFFF団も多少は成長しておる……と信じたいのう」

「「……はぁ」」

「では、いつも通り行きましょうかヒデさん」
「うむ、鉄人たちに目を付けられて、暴れた罰として試召戦争を無しにでもされては敵わぬからの」

若干の不安は抱えつつも、結局いつも通りでどこか安心もしてしまう我らFクラス。ヒデさんと溜息を吐きながらも、苦笑いをし西村先生たちに怒られる前に彼らの暴走を止めにFクラスを飛び出して彼らを追うことになりました。ホント、良くも悪くも飽きることのないクラスですよね……そこが面白いのですが、ね。