二次創作小説(紙ほか)

106時間目 雄二と造と腕輪の力〜反則ギリギリごめんなさい〜 ( No.24 )
日時: 2015/07/25 21:43
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)

明久Side


『プレイボール!』

主審を務める寺本先生の声がグラウンドに響き渡り試合が始まる。実際に野球をするのは召喚獣だけど(まあ、造だけは本当に召喚獣になっているけどね)召喚獣を扱うのにはどうしても自身の召喚獣の側にいた方がいい為、必然的に召喚獣と同じポジションに僕らも立っている。不思議と野球をしているような気分になるね。

「しゃーっす!試獣召喚(サモン)っ!」

Eクラスのトップバッターがまさに体育会系の挨拶をしてくる。さて、戦力的にはどんなものやら?


≪Eクラス 園村俊哉 古典 117点≫
         VS
≪Fクラス 吉井明久 古典  91点≫


ふむふむ……こんな感じか。以前の僕ならちょっと苦しかったかもしれないけど、瑞希や美波、造たちとの勉強会を行ってきた今の僕なら何とか対処出来そうだね。あ、そうそう。ちなみに今回の試合で使う教科は一回が古典・二回が化学・三回が英語で・四回数学・五回に保健体育と言う感じだ。

早速召喚獣にボールを持たせ、キャッチャーである雄二の指示を待つ。まあ、変化球が使えないので、実質コースと球の速さの指示くらいだろうけど。

と、何をしているのかそのキャッチャーの雄二は『設定(セット)』と呟いている。周りに聞こえないような小さな声だったけど、僕らはアイコンタクトや口の動きだけで会話する技術があるからすぐにわかる……それにしても何を言っているんだろう?

《雄二何してんのさ?てか、早くコースとかの指示をしてよ》

中々サインを出さないし、一先ずアイコンタクトをする事に。

《ああ、ワリィな。ちょいと、な。……コースはここだ》

と、雄二の召喚獣のミットが示す場所を見る。何々……

《って、ど真ん中?いきなり大丈夫なの?》
《ああ、大丈夫だ。向こうも慣れない召喚獣を使っての一球目だぞ?様子見するハズだ》
《あ、なるほどね!》

そう言う事なら真ん中に投げるって指示も納得かな。よしよし、ならちょっと力を抜いた緩い球を投げてみようかな。ストライクを貰えるなら、なるべく後々に力を温存しておきたいし。

《じゃあ行くよ雄二》
《おう。来い明久》

雄二の指示通りのコースにボールを投げる。せぇ……のっ!


キンッ


…………ゑ!?ちょっ!?


『ホームラ————《させませんっ!》……え?』


ゴォッ!  パスッ


≪Fクラス 月野造 古典 384点 →Fクラス 月野造 古典 334点≫


『あ、アウトです!アウトッ!』

甲高い音をたて青空へと消えて行きそうだったボールは、造が自身の点を消費することで使用可能な風を起こす能力のグローブ(いつもなら箒だけど)で竜巻を起こし、その吸い込みで見事に捕ってくれた。た、助かった……


にしても…………


「ちゃんと指示しろ、ボケ雄二っ!」
「ちゃんと投げろや、バカ明久っ!」

この野郎、全然言った通りになってないじゃないかっ!何が“大丈夫だ”だよ!造がいなかったら危なかっただろうにっ!

《ハァ……ハァ……い、いきなりですか。ちょっとビックリしましたね》
「つ、造!?大丈夫かの!?」
《あはは……平気ですよ。心配してくれてありがとですヒデさん》
「う、うむ……それにしてもあやつら、いくらなんでも運動部の面子相手にど真ん中のスローボールを投げるなぞ何を考えておるじゃ……?」

106時間目 雄二と造と腕輪の力〜反則ギリギリごめんなさい〜 ( No.25 )
日時: 2015/07/25 21:23
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)

初回からいきなりピンチになるところだった……ワンアウトで2番バッターが現れる。さて、と……

《雄二……キサマ次ミスったら脛バットを叩きこんでやるよ》
《てめぇこそだ明久……次ミスったら尻バットを喰らわしてやる》

サインを確認して、2番バッターに第一球を————


キンッ


————見事に打たれ、打球は大きく伸びて……


『ホームラ————《ま、まだまだああああああああああああっ!》……』


ゴォッ!  パスッ


≪Fクラス 月野造 古典 334点 →Fクラス 月野造 古典 275点≫


『え、えっと……アウトです』

……またしても造に助けられた。と言うか、だ。

「「ベンチ!バット寄こせ————ッ!!」」

それぞれがベンチに向かってバットを要求する。またもやピンチなんて……このバカはどこまで使えないバカなのだろうか!

《ぜぇ……ぜぇ……》
「つ、造!?お主無茶しすぎじゃぞ!?休むのじゃ!」
《あ、あはは……平気、ですよ……?》
「造……全く、あやつらは……!」

造がいなきゃ初回から2点も捕られていた。本当にあのバカは造に迷惑をかけていると言う自覚は無いのだろうかっ!?

『ええい、バカ共が!もうお前らには任せておけねえ!』
『造ちゃんを無茶させ過ぎなんだよ!バカが!』
『いや、そもそも吉井と坂本に任せた俺達がバカだった!』
『だな!こうなりゃここから先は俺が投げる!ピッチャー交代だ吉井!』
『なら俺が捕ろう!キャッチャー交代だ坂本!』


キンッ


《ら、らすとおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?》


ゴォッ!  パスッ


≪Fクラス 月野造 古典 275点 →Fクラス 月野造 古典 201点≫


『スリーアウト!チェンジ!』


ふっ…………け、結果オーライかな……?

「……初回から、めちゃくちゃ危なかったよね?」
「……まあ、な」

造がいなきゃ、すでに3点は取られていたこの状況……あ、危なかった。いやマジで。ある意味大活躍の造はと言うと……

《…………ちょ、ちょっと疲れました……》
「造、ホレ!水じゃ。ゆっくり飲むのじゃぞ……」
《た、助かりますヒデさん……》

結構疲労困憊って感じで、秀吉に介抱されていた。ゴメンよ造……あと、秀吉?

「……次に造をこんな目に遭わせたら……お主ら、本気でどうなるかわかっておるの?」

…………その本気の威圧感(プレッシャー)は止めてください。怖いです。

一先ずベンチに皆で集まって作戦会議をする事に。と、そこにEクラス代表の中林さんが慌ててやってきた。

「ちょ、ちょっと!?何よさっきのは!?いくらなんでも反則何じゃないの!?」

ん?反則?……あ、もしかして造が風を起こしてボールを捕ったあの荒技のことかな?確かに野球とはかけ離れた行為だし、文句の一つもあるのは仕方ないかもね。とりあえず弁解しようとすると……

「おいおい。それは言いがかりだぞ?これは召喚獣を使った野球大会だ。腕輪の使用や、召喚獣の特性を利用した攻防は原則認められている」
「ぐ……で、でも!」
「これでも学園長や審判共には事前に確認済みだ。不満があるなら学園長に通しな。それとも何か?」
「な、何よ……?」

と、雄二が物凄く悪人面でこう言った。

「———アンタはあそこでへばっている造のやったことが、反則になるとでも?もしアンタがそう言うなら……造はとんだくたびれ儲けだな」
「っ!ひ、卑怯な……!」

造を尊敬しているであろう中林さんに向かって非常に効果的な煽り方をする卑怯で卑劣なこの男。うん、そうだね中林さん。味方の僕でさえそう思うよ。

「言っとくが、造のアレは点数消費型だ。てなわけでこっちだけメリットがあるわけじゃねえんだ。それはわかっておいて欲しい」
「うぅ…………で、でもそれは……」

それでも納得がいかないのか、中林さんが雄二に突っかかろうとすると……

106時間目 雄二と造と腕輪の力〜反則ギリギリごめんなさい〜 ( No.26 )
日時: 2015/07/25 21:26
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)

《あ、あのぅ……中林さん。やっぱりコレちょっと反則気味ですし、納得いきませんよね……?》
「えっ!?せ、先輩!?」

ふらふらの状態で造が会話に参加してきた。体力的に大丈夫なのかな造……?

《ホントごめんなさい……自分もやっぱり普通にやった方がいいですよね?今度からちゃんと————》
「い、いいえ!大丈夫です!先輩はお気になさらないでください!」

それだけ言うと、またきちんと礼をして中林さんはEクラスのベンチに戻っていった。どうやら造のお陰でさっきのプレイは反則にならずに済みそうだね。これで一回の表は何とかなった。色々とホント助かったよ造。

《え、えっと……良いのでしょうか?》
「くくくっ、良いんだよ。向こうさんが大丈夫って言ってんだ。それに俺らは別にルール違反をしているわけでもないしな」

……そして心底思った。雄二は本当に根が外道なんだと。


造Side


皆さんの没収品を賭けた召喚野球大会。一回戦はEクラスとの戦いです。現在二回表ですが流石に運動部さんたちが集るクラスとの戦いだけあって、中々一筋縄ではいかない様子。


【Eクラス VS Fクラス
   2 ——  2 】

一回の攻撃はアキさんとゆーさんが2点を入れてくれましたが、二回に入りEクラスの皆さんはホームランは自分の風で捕られてしまうとわかっているが故にEクラス持ち前の運動センスを魅せ、ヒットやバントで攻めてられてあっという間に同点の2点を入れられました。流石部活生の多いクラス、敵ながらとても上手いですね。


キンッ パスッ!


『スリーアウト!チェンジ!』

とりあえず少しでも高く上がったボールは、風を起こして何とか捕球します。うぅ……結構苦戦しますねこれ。

「ふぅ……中々手強いね、Eクラスは」
「ああ……正直最初は舐めてたぜ。こりゃ、ちょっと流れを変えて貰うかな。なぁ造よ」

ベンチに戻り攻撃の準備に取り掛かっていると、ゆーさんがこちらを見てニヤリとしています。こ、これって……この合図ってまさか———

《……ゆーさん?まさかとは思いますが……》
「おう!造……こっからがホントのサプライズだってことをEクラスにわからせてやりな!」

や、やっぱりですか……正直、コレはさっきの自分のプレイより更に反則ギリギリのプレイだと思うのですがね……

「ホレ!造がトップバッターだろ?アイツらに目に物見せてやんな!」

と、ゆーさんは自分の背中を押して送り出します。し、知りませんよ?どうなっても……とりあえずはバッターボックスに向かうことに。

『???ねえ雄二?造に言っていたサプライズって?』
『フッ……まあ見てな。Eクラスの連中を動揺させてやるから』
『動揺ねぇ?まあどうでもいいけど、造はさっきから風を起こしてボールを捕っていたせいで、今あんまり点がないよ。大丈夫なの?』
『あぅ……すみません明久君。私のフォローを月野君にしてもらったから……』
『あ、いや。瑞希のせいじゃないって。僕もガンガン打たれたし』
『お前ら安心しな。寧ろ造の点が削られているってとこが今回の作戦のミソだしな』

『『???』』

審判の先生に頭を下げて、バットを構えます。ピッチャーは……うぅ、中林さんですね。正直彼女には本当に申し訳ないのですが……


≪Eクラス 中林宏美 化学 115点≫
         VS
≪Fクラス 月野造  化学  89点≫


……確か自分の化学の点は400点台だったのですが、大分さっきの守備で点が無くなっていますね。姫路さんの方へいったボールを無茶して捕ろうとしたりしたツケがきましたか。

106時間目 雄二と造と腕輪の力〜反則ギリギリごめんなさい〜 ( No.27 )
日時: 2015/07/25 21:55
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)

「点数が減っている今なら、確実に先輩に勝負できますっ!先輩には悪いですが、ここは抑えさせて貰いますよ!」

自分の点を見てここは勝負と考えたのでしょう、中林さんはそう言って召喚獣にボールを投げてさせます。

『ストライクッ!』

……ふむ、宣言通り勝負してきましたね。今の自分なら簡単にアウトが取れると判断なさったんでしょう。今の自分なら、ね?

続く二球目も真っすぐに投げてきました。……敬遠はなさそうですね。

『ストライク、ツー!』

チラリとゆーさんの方を見ると————すでに準備は良いようです。アイコンタクトで『次に仕掛ける。やっちまいな!』って合図を送ってきました。ほ、ホントに知りませんからね?

「それじゃ……これで終わらせてあげます先輩っ!」

そして中林さんが、三振の為にボールを投げてきます。……先に心の中で謝ります。中林さん、ゴメンなさいです。

『よっしゃっ!造、思いっきり行きな!再設定(リセット)っ!』

『『『…………え?』』』


キィイイイイイイイイイイイン! ポンッ!


≪Eクラス 中林宏美 化学 115点≫
         VS
≪Fクラス 月野造  化学  89点 →Fクラス 月野造  化学 422点≫

「んなっ!?な、何で……点が戻って……!?ま、待って!待ってくださ———っ!?」

と、ゆーさんの一言で突如“消費していた点数が最初の点数に戻りました”。急な変化に動揺した中林さんの使役する召喚獣から放られたボールは……まさに絶好球。


キンッ


『ほ、ホームラ———ン!』


【Eクラス VS Fクラス
   2 ——  3 】


……甲高い音と共に、打球は青空に消えて行きました。や、やり過ぎでしたかね?ホームへと還り、皆さんが唖然としているベンチへと戻ります。

「よしよし、良くやってくれたな造」
《正真正銘の騙し討ちですし、気が気でないですよ……》
「勝てば正義だ、気にすんな!」

ゆーさんが頭をガシガシと撫でます。全く……本当にゆーさんは奇想天外な作戦を考える人なんですから。

「て、点数が回復した!?雄二、造!何をやったのさ!?」
「そ、そうよ!何がどうなっているワケ!?」

と、そこで皆さんが我に返り、自分とゆーさんに詰め寄ります。うーん、自分が何かしたわけではないのですがね?

《あー……ゆーさん、説明お願いしますね》
「ん?ああ、そうだな……簡単なことだ。俺の腕輪を使ったのさ」
「え?坂本君の腕輪ですか?でも坂本君は化学は400点を超えていないので腕輪は……」
「いや姫路、そっちの腕輪じゃない。明久と造に“白銀の腕輪”があるように……俺には“黒金の腕輪”があるだろ?」

「「「あっ…………」」」

「思い出したか?肝試しの時の賞品の腕輪の事を。ま、能力はまだお前らに見せていなかったがな」

そう言って腕につけていた三年生との肝試し大会の際賞品として贈られた黒金の腕輪を皆さんに見せるゆーさん。中々使わなかった為、皆さん結構お忘れでしたでしょう。ゆーさん自身も使う機会がなかったそうなので仕方がないでしょうが。

「そ、それでその腕輪ってが出来るの?」
「そうだな……この黒金の腕輪の能力は、場の状態を覚え込ませればキーワード一つでその状態を再現させる能力。簡単に言えば場にいる召喚獣の点数の再設定、つまり点数をも回復出来る代物だ。どんなに点が減っていても、戦闘不能にさえならなきゃ元通りの能力ってことだな」

そう、この腕輪のお陰でさっき消費して100点未満に落ちていた点数も、最初の点数の400点台に元通り。お陰で楽にホームランが出来ました。

106時間目 雄二と造と腕輪の力〜反則ギリギリごめんなさい〜 ( No.28 )
日時: 2015/07/25 21:53
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)

「場の状態を覚え込ませて……元に戻す……?どういうこと?」
「わかりにくいか?身近な例でいうとゲームのセーブとリセットって思えばいい。ゲームをセーブしておけば、どんなに敵が強くてやられそうになってもリセットボタンを押すとセーブ地点に戻るだろ。アレと一緒だ」

ゆーさんがアキさんにわかりやすいようにゲームの話で例えます。その話で理解したアキさんは先ほど以上に驚いてゆーさんにこう尋ねます。

「ええ!?それって無敵じゃないの!?」
《あ、いいえ。それがどうやらデメリットも多いようなんです》
「その通りだ。何せ普通だったら場の全ての、つまり“相手側の召喚獣の点も”回復させちまう。あらかじめ『設定(セット)』のキーワードを使わなきゃ再設定は出来ないし、おまけに一度使えばフィールドを張りなおさない限りもう一度は使えない。結構原理がややこしい上に面倒な手間をとるものだな」

正直に言うとこの腕輪は中々使いどころが難しいもの。腕輪の所有者であるゆーさんですら諸刃の剣だと仰っていましたね。使うタイミングを誤ると、フィールドを別のところで張りなおさなきゃ使えない腕輪です。おまけに間違って相手の召喚獣も回復させたらとんでもない事になるでしょうし。

「ん?じゃあ何でここで使ったの?Eクラスの人たちも回復させたら危なくない?」

と、アキさんがゆーさんにそんな質問をします。まあ、確かにいつもの試召戦争ならそうでしょが……

「おいおい、明久。良く考えてみろよ?これは試召戦争のような“相手の点数を減らして倒す”ものじゃなく“召喚獣を使った唯の野球”だろ?」
「あ……」
「お前も気づいたな。そうだ、造の召喚獣のもともとの特性のような“自身の点を使用して風を起こす”能力でもない限り、そうそうに相手も自分も点数の消費は無い。ここでは造の消費した点数のみが回復出来るって寸法だ」

ついでに言うと、ゆーさんの持つ黒金の腕輪の欠点である”一度使えばフィールドを張りなおさない限りもう一度は使えない”と言う設定も、“各試合に於いて、同種の科目を別イニングで再び用いる事を認めない”というルールでカバーしてあります。

つまり、一回が終わると別の教科になるわけですし、フィールドも張りなおされ再び腕輪が使えると言う仕組みです。本当にゆーさんは先を見通しているんですね。まさかルール設定の中に、こんなことまで考えているなんて……

《だからゆーさんは先にこう言ってたんですよ。『守備で思いっきり点数使って守ってくれ。そうすりゃ相手も造が攻撃する時、造の点数が減っている事に油断して造と勝負するだろうからな』って》

「「「…………(ズルイ)」」」

「はははっ!上手く行って何よりだな!……おっと、また中林が抗議に来たな」

と、そこにやはりさっきの事で抗議に来た中林さんが。いや、本当にすみませんです……

「ちょ、ちょっと!?流石に今回のは無しでしょ!?折角減っていた点数が元に戻るなんて、召喚獣を使った野球であっても認められないわよ!?」
「ふっ……なーに言ってやがる。中林、お前はちゃんとルールを読んだか?」
「る、ルールを……?一応一通りは読んだけどそれが?」
「ならちゃんと書いてあるぜ?“腕輪の使用は認める。ただし他人の召喚獣の点を故意に削る目的に使用した場合は、反則としてそのものを退場させる”ってな!」
「んな!?あ、アンタ……そこまで考えて!?」
「今更変更は出来ねえはずだ!教師どももそれがわかっているからな!」

…………どうしてでしょうか?ゆーさんが物凄く悪い人に見えますよ……?

「これも作戦の内だ。悔しいならお前もとっとと何か策を考えな!」
「…………い、いいわよ!私たちは私たちで、全力でアンタたちを打ち破るから!」

そう言って中林さんは戻っていきました。うぅ……すみませんです。

「よしよし……造のお陰で流れはこっちにある!このままのペースで行くぞっ!野郎どもっ!目指すは俺らの戦友《エロ本》の奪還だっ!わかってんな!」

「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」

一点のアドバンテージを得た事により、再びFクラスが燃え上がります。それにしても本当に……

《何だかEクラスの方々に申し訳ない気がします……なんせそう言う本の為に、ゆーさんの全力で潰されようとしているんですし》
「確かにの……今度再び謝罪にでも行くしかあるまいの」

密かにヒデさんと共に溜息をつきます。本当にこのFクラスの皆さんは欲望に忠実なんですからね……






……その後科目数学の3回は島田さんがきっちり抑えました。それでも向こうには体育で負けられない意地があるのか4回表で執念の1点を取り返すも、最終回表はアキさんとゆーさんの見事なコンビネーションに抑えられて、最後の科目の保健体育でこーさんがきっちりと1点を入れてFクラスの勝利となりました。

「うぅ……なんか、納得いかないわ……こ、今度は絶対に負けないんだから吉井に坂本ッ!」
「いや……雄二はともかく何で僕、中林さんに目を付けられてるの!?」

一回戦終了後の中林さんの悔しそうな顔が忘れられません。本当にごめんなさい、中林さんにEクラスの皆さん。今度きちんと謝罪に行きますね……

「はっはっは!やっぱ野球は騙し騙されが付き物だな!」

……ゆーさん、どうもゆーさんの野球のイメージ変わっている気がするのですが……?とにもかくにも召喚野球大会一回戦:Eクラスとの戦いは、Fクラスの作戦(?)勝利で幕を下ろしました。

「吉井……坂本……アイツらほんっと覚えておきなさいよ……!」

…………何だかとんでもないクラス間の亀裂を残して。