二次創作小説(紙ほか)
- 129時間目 放課後ショッピング〜スーパーは辺境魔境〜後編 ( No.246 )
- 日時: 2016/01/29 20:48
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
明久Side
……あれ?何だか今不細工でにくったらしい一人の友人(=バカ)からはすっごく失礼な事を言いたい放題言われて、いつも気苦労の絶えない一人の友人(=マスコット)からはそのバカと同じ扱いをされたような気がするんだけど……気のせい、かな?
「ん?どうかしたのアキ?」
「明久君?何かありましたか?」
「あ、ううん。何でもないよ。んじゃ早速選んじゃおっか」
と、美波と瑞希がどうかしたのかと、不思議そうな顔をしつつ僕の顔を覗き込む。おっと、いけないいけない。折角造に———
『効率が良いように“分かれて”お買い物しましょう。アキさんと姫路さん島田さんはお野菜をお願いしますね。……そうそう。自分は美味しいもの食べたいですし、材料もじっくり選びたいわけでして。多分“時間がかかる”と思います。アキさんたちも“ゆっくり楽しんで”選ぶと良いですよー♪』
———てな具合で、気を遣って貰って美波と瑞希の三人で買い物兼デート(?)をする事になったのにボーっとしてちゃ勿体ないよね。折角だし三人で楽しまないと!あ、ちなみに造。お礼に後でお菓子買ってあげるから楽しみにしててね!(ちょっ、アキさーん!? 何かそれ子供の扱いな気がするんですが!?……ま、まあそれはそれとして甘いものなら喜んでいただきますが……by造)
さて、買い物は買い物でちゃんとやっとかないとね。まずは籠を持って三人で今日使う野菜の調達のために野菜コーナーに立ち寄る事に。ちなみに美波と瑞希は僕の両サイドで僕の腕に抱き付いて楽しそうにしている。お陰でスーパーの中にいるお客さん(主に男性)の視線がちょっぴり痛い。経験上これって多分世の男性たちのちょっとした妬みの視線だとは思うけど、まぁいつものFFF団の妬みと殺意と物理攻撃交じりの視線に比べれば大したことないね。
さあ今日は大人数の夕食になるけど何を作ろうか。雄二や造たちにお肉を買って貰っているし、折角ならお肉に合う料理を作りたいんだけど……
「明久君美波ちゃん。今日は茄子がお買い得みたいですよ」
「へー、茄子か……うん、いいね。二人とも茄子は食べられる?」
「はいっ!大好きですよ」
「ウチも葉月も大丈夫よ♪」
そんな風に楽しそうに答える瑞希と美波。そっかそっか。だったら季節もちょうど旬で食べ頃だし、二人とも好物でおまけに安いなら是非とも茄子を買っておこう。揚げ茄子の煮浸しやピーマンとひき肉と一緒に炒めたりと、それはそれは色々と使えそうだからね。
「あ、ところで明久君に美波ちゃん。知っていますか?」
「んー?いきなりどうかしたの瑞希?」
「瑞希、何を知っているって?」
と、三人で茄子を選ぶ為に野菜コーナーの茄子が売られている所に向かっていると、突然瑞希がそんな事を言い出す。ハテ?一体何だろ?
「えっと……“秋茄子は嫁に食わすな”って諺(ことわざ)があるんですけど」
「はぁ?何よそれ?何で嫁は茄子食べちゃいけないのよ?」
「ああ、それは聞いた事があるかも」
日本の諺にはちょっと疎い美波が知らないのも無理はないけど、確かその諺はお姑さんが“秋茄子は美味しいから憎らしい嫁に食べさせるのは勿体ない”ってのが語源らしい。それにしても随分と失礼な諺だよね。ひょっとして遠慮深い瑞希の事だし『私は居候の身ですし、食べちゃいけないんじゃないでしょうか』なんて思っているんだろうか。全く、そんな事全然気にしなくていいのにね。
「瑞希、そんな諺なんて気にしなくていいって。どうせ古臭い考えなんだしさ」
「そ、そうですよね!私たちが気にする必要何て無いんですよね!私と美波ちゃんが頑張ればいいだけなんですから!」
「うん。そうだよ、気にせずに二人が頑張れば———うん?」
…………あれ?何を頑張るの?気のせいかな、話が根本的に噛み合ってないような気がするんだけど……?あ、ひょっとしてこれも瑞希の事だ。その茄子を使って何か料理を作る気なんじゃ……ヤバい。それだけは何としても阻止しておこう。何を作られるかわかったものじゃないし。
「???よくわかんないけど二人とも。茄子のコーナーに着いたわよ」
そんな茄子の話をしつつ、話題の茄子のコーナーに辿り着く僕ら。瑞希の言葉はちょっと引っかかったけど、まずは買い物から先にしなきゃね。本日お買い得品って出てるだけあって中々いい値段みたいだ。折角だし美味しそうなものを選ぼうかな。
- 129時間目 放課後ショッピング〜スーパーは辺境魔境〜後編 ( No.247 )
- 日時: 2016/01/29 20:51
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
「イラっしゃイ、イラッしゃイ!ヤスいヨ、ヤスいヨ!」
そこに店員さんがやってきて、威勢の良い呼びこみを始めた。……何かどこかで聞いたような声と訛りの外人さんな気がするけど気のせいかな?
「今日ハ野菜がお買イ得!特にコの———」
と、急に呼び込みの声が止まる。そしてその店員さんは茄子を手に取りジッと見つめて、一瞬首を傾げたようなポーズをとってから———
「コの、なンカ、こう紫色の棒ミタイなヤツ!美味しイよー!ヨく熟シて蜜もタップリで甘くて美味しイヨ!」
「「…………」」
———そんな奇妙な呼び込みに戻る。なん……だと……?店員さんのトンデモ発言に思わず美波と二人で顔を見合わせて絶句してしまう。(ちなみに瑞希は何故か今日のお昼のように頬を染めてボーっとしている模様)あれって一応、なす……だよね?
色や形的にはアレは一応世間一般的に言うと茄子なんだとは思うけど……僕の記憶が間違ってないなら、少なくとも蜜がたっぷりで甘いものは茄子じゃないと思うんだ。どうしよう、もしかして僕の知ってる茄子と違うのかな?
「ね、ねえアキ?……もしかして日本の茄子って甘いの?」
「いや、そんなハズはない……と、思うけど。てか一応あれ茄子だよね?何故か甘くて蜜たっぷりらしいけど」
「何か新しい品種か何かかしら……?」
「オッと!ソコのモテモテのお兄サン!コノ……紫色のナニかはイかがですか!」
ゲッ、しまった。そんな風に思わずまじまじと見てしまってたせいで、呼び込みの店員さんに目をつけられてしまったみたいだ。どうしよう……普段から奇人変人に囲まれている僕だからわかるけど、この店員さんからは変人の気配を感じる。こういう時はあまり関わらないうちに早めに逃げ出さないとね。
「さァさァ!紫棒はイカがですかお兄サン!安イでスヨ!熟しテまスヨ!甘いデすヨ!」
「すいません。ちょっとは高くても良いんで、出来れば熟してなくて甘くないのをください」
何せその店員さんが勧めてきた不自然に熟してて甘い匂いで柔らかいのは、間違い無く腐っているハズだし。
「イヤイヤ、遠慮スるコトはアリマせんヨお兄サン!このパープルバーは甘い部分ガ美味しイのデスかラ!ソレに、エェト……“サンチチョクソウ”っテ書いてアリますかラ!カロリーたくサんで、栄養控エ目でス!他ニもデスね———」
僕の話など全然聞かずに、次々とツッコミどころ満載のデタラメな説明を始める店員さん。困ったなぁ……これは長くなりそうだ。仕方ない、ここは———
「(あー……美波。悪いけど瑞希を連れて先に他のもの買って来て貰える?どうにも長くなりそうだし)」
「(そうみたいね……わかったわ。先に別のを見てくるわね。アキも終わったらちゃんと来てね)ってことで瑞希、ほら先に別の食材を買いに行きましょう」
「えっ?あ、はいっ!折角ですしスタミナがつくものを買いましょうねっ!秋茄子の為にもっ!(ボソッ)赤ちゃんの為にもっ!」
「そうね———へ?赤ちゃん?」
「山芋とかニンニクとかオクラとかも良いと聞きますし……頑張らなきゃですね!」
「……さっきから何の話してるのよ瑞希?山芋とかも食べたいってこと?」
うん、一先ず二人には他の買い物をやって貰っておこう。あんまり足止めされると遅くなりそうだし、造や雄二たちもそろそろ買い物が終わってるかもしれないからね。
「———なドなド、昔かラ愛サレている食べ物なノでス!更にハ……エっト?」
「(二人とも今だよ!行って!)」
「(あ、うん。ありがとアキ!じゃあ先に行ってくるわね)」
「(じゃ、美波に瑞希、買い物頼んだよー!)」
一瞬の隙を見逃さずに、店員さんの目を盗んでこっそりと二人を逃がす。やれやれ、いつものアイコンタクト会話術と逃走技術がこんな所でも役に立つなんて全く世も末だなぁ。
『やれやれね。ああ、ところで瑞希。さっきの諺の意味って結局何なの?茄子と嫁がどうのこうのってヤツ』
『あ、それはですね美波ちゃん!茄子には種子が少ないので———』
- 129時間目 放課後ショッピング〜スーパーは辺境魔境〜後編 ( No.248 )
- 日時: 2016/01/29 21:07
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
店員さんに気付かれること無く、二人とも無事にこの場を離れて貰う。よしよし、上手くいったみたいだ。二人との買い物の時間が削られるのは少々残念だけど、二人がこの変な人に絡まれる事よりもマシだし仕方ないかな。
「———ソうデス!最初ニこノ野菜ガ作らレたのハ、八年前ノ北極でしテ———」
にしても……うぅ、まだ続くのかこの店員さんの話は……無駄に長いし色々ツッコみたくなる変な話だなぁ。とりあえず未だにペラペラと説明を続ける店員さんを前に、面倒だし適度にその話を聞き流しつつ考え事をする事に。えっと、夕飯の食材の他には何か必要な物はあったかな……?
「アー……、とコロでお兄サン……」
キッチンペーパーはまだあるし、ティッシュに歯ブラシとかも問題なし。ああ、そうだ。強いて言えば、足りないのは掃除で使って残りが少なくなってきた———
「ココだケの話、こノ野菜っテ、ナンテ名前でショウか……?」
「———トイレ用洗剤かな……」
「Oh!ソウでスか!アリがとうゴザいます!」
「ん?」
と、気がつくと店員さんが手を握ってお礼を言ってきた。よくわからないけど、どうやらようやく説明が終わったみたいだ。
「じゃあ、これ一つ貰いますね。んじゃどうもです」
「マイどアりがトうゴザイまス!」
説明が終わったなら茄子(らしきもの)を一袋手にとって、さっさとこの場を立ち去ることに。正直この人に下手に関わるとロクでもない事になりそうだからね。触らぬ神になんとやらだ。
『今日ハなんト、トイレ用洗剤ガ大安売り!ヨク熟しテ甘いトイレ用洗剤がお買イ得だヨ!今日のデザートはトイレ用洗剤デ決まリ!』
案の定僕が離れてからすぐに、さっきの店員さんがこれまた奇妙且つ不気味な呼び込みを響かせていた。何だ?新商品に食用トイレ用洗剤でも出たのだろうか?
「え、えーっと……あの店員さんって一体何を売っているのでしょうかね……?」
「何故にトイレ用洗剤の売り文句がデザート何じゃ……?」
「…………意味がわからない」
「俺もわからんが……このスーパーにはこれからはあまり利用しない方が良いかもしれんな。あの母親が何を買うかわかったもんじゃないぞ」
と、そんな僕と同じようにあの店員さんの呼び込みを聞いて戦慄している友人たちを発見。うん、君らのツッコミは正しいと思うよ。
「造に雄二たちお疲れ。そっちは買い物済んだの?」
「え、えぇ。一応こっちは買い終わりましたよ。それでアキさんたちは———って、あれ?姫路さんと島田さんの姿が見えませんけど……」
「あ、うん。ちょうどさっきまで僕ら、あの変な店員さんに絡まれてたからさ。店員さんの対応は僕が担当して、逃がした二人には別の買い物を頼んだんだ」
「ほう、明久にしちゃ利口な行動だな。んじゃ姫路たちを探してとっとと明久の家に行くとすっか。ホレ、外の天気がちょいと悪いからな」
雄二につられて外を見ると、なるほど確かに何だか今にも大雨が降ってきそうな天気だ。これはちょっと急いで帰った方が良いみたいだね。と言うわけでさっさと買い物を済ませることに。まずは二人と合流しなきゃね。
「そうじゃな。ならば早う姫路たちと合流するとしよう。して明久よ、二人はどこにおるのじゃ?」
「ん?ええっと確か……ああ、瑞希が“秋茄子の為にもスタミナのあるものを買いますね”って言ってたから、多分そう言う食材のところじゃないかな?そういや山芋とかニンニクとかオクラとかがどうとかとも言ってた気もするね」
「…………茄子?」
「うん茄子。みんな茄子は食べられるよね?」
「……?あのぅアキさん?茄子は美味しいですし好き嫌い的な意味では大丈夫なのですが、何で秋茄子の為にスタミナのあるものを買う必要があるんですか?」
瑞希たちを探していると、造がそんな事を聞いてくる。……あれ?そう言われてみればどうして瑞希はそんな事言いだしたんだろ?
「そう言えば何でだろうね。そもそも瑞希、“秋茄子は嫁に食わすな”って諺を出した時も様子がちょっと変だったんだよね」
「「…………は?」」
その僕の言葉に雄二と造は何かを察したように一瞬固まってしまう。あれ?どうしたんだろ二人とも?雄二は苦笑いをしながら僕を相変わらずバカにしたようなイヤミったらしい目で見てるし、造は造で何だか顔を赤く染めつつ口をパクパク開けている。んー?何か僕変な事言ったっけ?
「ん?どうかしたの雄二に造?」
「な、何じゃ造よ!?お主顔が限界まで真っ赤じゃぞ!?」
「あ、あー……秋茄子ってそう言う……事ですか。そして姫路さんはがんばる……スタミナのつく食材……あー……」
「…………造どうした?」
「あ、あぅ……その、アキさん。えっと、多分その意味はですね……あのぅ……ぐぅ。ゆ、ゆーさぁん、説明お願いします……」
何だかちょっぴり涙目で、真っ赤になりつつ雄二にバトンタッチする造。造が一体どうしたのかはよくわかんないけど、流石はFクラスのマスコットキャラだ。何だか無性に保護欲をかき立てられるのは、葉月ちゃんといい勝負だと思う。
「へいへい、っと。さて明久よ。お前の事だから恐らく一部の意味しか知らんかったみてぇだが“秋茄子は嫁に食わすな”って諺はな」
「ん?諺は何さ?」
「———“茄子には種子が少ないので、子種が少なくなるから嫁には食わすな”という意味もあってだな」
「へえ〜、そうなんだ。雄二は物知りなんだね」
「お前が物を知らな過ぎるだけだがな」
「そっかそっか…………what?」
「あ、あぅうう……」
……あり?今、何かとんでもない意味を聞いちゃったような?そして造が真っ赤なわけがだんだん理解出来始めた気がするような?
「だからな、“秋茄子は、種子がないので子宝に恵まれなくなる”って意味もあるってこった」
「へ、へー……そ、ソウナンダー?」
「そうだな。それにしても“何のことかはさっぱりだが”お前の話を聞く限り姫路は島田と共に秋茄子食っても大丈夫なくらい“頑張る”そうだな」
「…………ソウラシイネー」
「ちなみに山芋・ニンニク・オクラは精の付く食べ物の代表と言われているそうだな。さて明久よ、もう一度言うが“何を頑張るのか”俺には皆目見当もつかんが……くくっ、頑張れよ」
…………この雄二の笑いを押し殺した顔を今すぐにでもぶん殴りたいのは山々だけど、それよりも何よりもとりあえずは。
「み、瑞希に美波!?今どこにいるのぉ!?」
ちょっと二人に色々とお話しなきゃいけないことが出来た気がするし、急いで二人を探すことに。ま、まさかあの諺にそんな意味もあったとは……何故だか学校にいなくても、日頃の勉強不足を反省した放課後となった。