二次創作小説(紙ほか)
- 131時間目 やっとお披露目新生装備〜期待は裏切られるもの〜 ( No.256 )
- 日時: 2016/02/12 21:07
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
造Side
「さて、戦術の確認を終えたところで……もう一つの要件を済ましてからメシにするか」
「もう一つ?何だっけ雄二」
「ああ、そうでしたね。召喚獣の装備の仕様変更確認をするんでしたっけ」
いよいよ来週に控えた試召戦争解禁に伴い、一通りの今後の試召戦争の戦い方の説明を終えたゆーさんがそう切り出しました。
「仕様変更……?あ、ああ!そう言えばそんなこともあったね。何だか随分と時間がかかって忘れてたよ僕」
「あのババァが期末試験時に提案した奴だな。試召戦争再開を遅らせる代わりに召喚獣の装備のリセットを行うっていう代替案。この場にいる全員がそれぞれ期末では良い結果を残したからな。今後のことを考えても確認しておきたい。お前らも装備変更は少しは楽しみにしてただろ?」
「システムのメンテナンスはすでに終わっていると学園長から聞いていますからね。今回はオカルト召喚獣にならずに正常に召喚できると思いますよ」
以前も説明しましたが、これはシステムのメンテナンスついでの召喚獣の装備———武器・防具のレベルのリセット……つまりこの前あった期末試験で良い点数を取ればそれだけ装備が上がると言う特別措置のこと。夏休みに入る前にも確認しようとした矢先にオカルト召喚獣騒動と肝試し大会になっちゃって有耶無耶になっていましたが、いよいよ試召戦争解禁と共に新しくなった召喚獣を拝見できますね。
ちなみに自分も本来は性質上基本的な装備の変更は無いものの、それでは面白くないだろうからとデザインの変更はされていると学園長から聞いていますし結構楽しみにしていました。
「ホントはお昼に皆で召喚出来れば良かったんだけどね。雄二と一緒に鉄人に頼みに行ったのに僕ら問答無用で駄目出しされたんだ。……あの鉄ゴリラめ、真摯に頼んだのに拒否る上に馬鹿力で僕らの手を粉砕しかけるし……」
「鉄人に頼もうとした俺らがバカだったな……ぜってぇ二度とあの鉄ゴリラには頼まないようにすっぞ」
「いえ、お二人の頼み方では間違いなく西村せんせじゃなくても怒りますって」
教師をファーストネームで呼んで頼むのは未だしも、(アキさんたちにそのつもりはなかったようですが)ちょっぴりバカにしたような頼み方では誰でも召喚許可なんてしたがらないかと思いますよ。
「全く、鉄人なんかに頼むなんてまさに骨折り損だったな。そんなことしなくても俺らの陣営に教師連中より話の分かる奴がいると言うのに。———と言うわけで、造。早速代理召喚頼む」
「はーい。……とは言え、散々色んな場所で召喚獣に成っている自分が言うのも何ですが、これ先生方にバレたら説教モノですよね……大丈夫、でしょうかね?」
「「「大丈夫、バレなきゃ問題ない」」」
「清々しき助言、どうもありがとうございます皆さん」
ゆーさん、アキさん、こーさんのその言葉に推されて自分の持っている代理召喚型の白金の腕輪を準備します。これもちゃんとメンテナンスされているのでちゃんと起動出来るハズ。さてさて、久しぶりにいきますか。
「あ、あはは……ですが私もちょっと楽しみでした。どんな風に変わっているのでしょうか」
「ウチは前みたいにぬりかべが出ないことを祈るわ、切実に」
「ワシの召喚獣、カッコよくなっておると良いのじゃが」
「…………楽しみ」
「それでは念のためにちょっとテーブルとか椅子とか机を端に移動させて、スペースを開けてから召喚しましょうか」
心配はしていませんが、アキさんの召喚獣と自分には物理干渉がありますからね。壊しちゃう恐れのあるものは先に移動させて召喚してみましょうか。
「?バカなお兄ちゃんたち、どうしてテーブルとかを隅に置くですか?」
「んー?ああ、ちょっとね。お兄ちゃんたちは召喚獣を出してみようかなって思ってたところなんだ。テーブルも椅子も邪魔になるといけないし壊れちゃうのも困るからね」
「わぁ!今までは離れたところでしか見たことありませんでしたし、葉月召喚獣を見てみたいです!」
「召喚獣……姉さんは海で造くんが召喚獣に成ったところを見ただけですね。楽しそうですしアキくん造くん、それに皆さん。良ければ私にも見せてくれませんか?」
テーブル等を移動させていると、葉月さんと玲さんが期待した目でそうお願いしてきます。あはは♪確かに召喚獣を間近で見るのは面白いでしょうからね。そんな彼女たちの期待に応えてあげましょうか。
「では、科目ですが……まあ無難に総合科目でいいですかゆーさん?」
「おう。んじゃ頼んだぞ造」
「OKです。それじゃあ……いきますっ!起動(アウェイクン)科目:総合っ!」
「「「「「「そして———試獣召喚(サモン)っ!」」」」」」
キィイイイイイイイイイイイン ボンッ!
自分の代理召喚型の腕輪の発動キーである起動(アウェイクン)のキーワードを口にしたと同時に皆さんで一斉に掛け声を上げます。お馴染みの起動音と召喚音と共にそれぞれの足元からは幾何学上の紋様が現れ、自分を含めた召喚獣たちが姿を現します。さてさて……
「わぁ……綺麗な鎧です!何だか凛々しくなった気がします」
「ランスに鎧……ウチは人形劇の時みたいな騎士ってところかしら。良かったわ……盾代わりにまな板とかじゃなくて、ホントによかったわ……」
「ほら、見てよ雄二に造。学ランの裏地に龍が描いてあるよ」
「見てみろよ明久に造。俺は虎だぜ」
《いやぁ、お二人は男らしくてカッコイイじゃないですか。自分の恰好なんて見てくださいよ、いっぱいフリルが付きましたよフリル》
「刀に羽織り……まるで新撰組といった体じゃな。強そうで嬉しいのう」
「…………上忍にレベルアップといったところか」
うんうん、良いですね。皆さん中々に装備が強化(レベルアップ)しているようです———
「「《って、ちょっと待ったっ!?》」」
「「「「???」」」」
おかしい。ごく一部のメンバーの強化が何かおかしい……
「OKちょいと待とうか。瑞希に美波、キミたちは召喚獣がどう変わったか説明してくれるかな?」
「え、えっと……私のは前より鎧がしっかりして、武器も長くて大きなものになりました」
「ウチは……軍服から騎士鎧になって、サーベルからランスに変わったみたいね」
《素晴らしい。お二人とも順当に強化されてますね。ではヒデさんとこーさん、お二人はどのように変わりました?》
「ワシは長刀(なぎなた)使いから新撰組になったようじゃな」
「…………下忍から上忍に出世した」
「うっし、お前らも良い感じで強化されてて嬉しい限りだ。さて本題に移ろうか。俺と明久の強化はどうなっている」
「「「武器が鉄パイプになって、それから学ランの裏地に……刺繍が入った(みたいです)」」」
「「お か し い だ ろ !?」」
《ヒデさん、自分のはどうなってます?》
「むぅ……その、何じゃ。普段の衣装にフリルが万遍なく追加されておるのう。武器である箒も心なしか可愛らしくデザインされておるような……?」
《お か し い で し ょ !?》
精一杯の自分・ゆーさん・アキさんの悲痛な叫びが木霊します。フリル?フリルってどういうこと!?他の皆さんと明らかに強化しているところが違うっ!?アキさんたちは何だか田舎のちょっとした不良スタイルですし、自分は自分でどこぞの魔法少女に更に近づいたような恰好。戦闘に関係ない所を無駄に強化されても困るのですがね!?あ、あかん……ツッコミどころが多すぎて、頭痛くなってきた……
- 131時間目 やっとお披露目新生装備〜期待は裏切られるもの〜 ( No.257 )
- 日時: 2016/02/12 21:09
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
「ま、まあ明久に雄二は普通の品行方正な生徒に比べるならば、確かに不良のようなものじゃしな……召喚システムもそこをピックアップしてしもうたのかもな」
「…………造もその容姿には、そのカッコが一番合う(カシャカシャ)」
何気ない友人たちの一言が辛い。そしてこーさん、そのカメラは帰る時までに没収させていただきますからね。
「あ、明久君かっこいいですよ!以前よりももっともっと強そうに見えますし、私たちはちゃんとわかっていますからね!」
「そ、そうよアキ!ちゃんと武器も強度が増しているしきっと成績が上がった頑張りが出てきてる証拠よ!」
「あ、ありがと二人とも……て、鉄パイプ+刺繍入り学ランスタイルの不良の恰好だけどね……点数は上がっても人間的に成長していないって召喚システムに言われているみたいで納得いかないや……ははは……」
アキさんが想い人二人に必死に慰められている間に、こっそりゆーさんとアイコンタクト。
「(造、まさかとは思うがこれはアレか?召喚システム《文》から俺や明久は不良のように見られているってことなのか……?)」
《(……それを言うなら、自分は未だに文さんから女の子として見られているってことですか……?)》
これって……学園長が(嫌がらせ目的で)故意に設定していないのであれば———文さんの深層心理が自分を女の子として、アキさんゆーさんを不良少年またはチンピラとして認識しているってことですよねコレ……文さん、次会うときはまた色々教育しないといけないようですね……
「バカなお兄ちゃんたちの召喚獣かっこいいです!」
「これはまた凄いですね。アキくんらしいと言えばアキくんらしい恰好ですし造くんも良く似合っていますよ」
「「《…………はぁ》」」
唯一の救いはギャラリーのお二人を楽しませたことでしょうか……?ちょっぴり期待していただけに、何だか理不尽なイメージを押し付けられたような自分とアキさんとゆーさんの三人で、黄昏ながら今はただご飯が炊き上がるのをボーッと眺めることとなりました。
〜夕食中〜
「———ま、まあ考えようによっては俺も明久も装備自体はレベルアップ(?)してる……ハズだ。俺はメリケンサックから鉄パイプに変わったしな!」
「ぼ、僕だって木刀から鉄パイプだからね!強度と攻撃力は間違いなく上がったはずだよね!これで今まで仕留めきれなかった相手とも戦えて、多少の鍔迫り合いでもそう簡単に折れることはないはずだもん!」
「「…………いや、でも鉄パイプに刺繍入り学ランの不良……はぁ……」」
「お二人は一応装備のランクアップはしていますが、自分のは何一つ変わっていませんよね……変って意味で変わってはいますが……フリル増し増しの可愛さアップって……はぁ……」
「ホレ、一旦切り替えるのじゃ三人とも。下手に装備のランクが下がっておるわけでもないじゃろうて」
「…………戦う上では問題ない。学園の顧客たちの需要的な意味でも問題ない」
「こーさん、今すぐカメラを出しなさい。写真売る気ですか?絶対売る気ですよね?」
アキさんたち特製の夕食を美味しく頂きながらも、未だに納得のいっていない三人で愚痴を言い合います。まあ自分たち以外は順当にランクアップしてることを喜ぶべきだとは思うのですがね。
「?どうしてバカなお兄ちゃんたちはがっかりしてるです?バカなお兄ちゃんたちの召喚獣バカっぽくてかっこよかったです!」
「アキくんらしいおバカさがよく表現された召喚獣でしたね。造くんは可愛さが増していましたし、先輩に後でカメラで撮影して送ってあげましょう」
「は、葉月?それ以上言うとお兄ちゃんたちの心が砕けちゃうからその辺にしてあげなさい」
「あ、玲さん。明久君と月野君の目がすっごく虚ろなのでもうその辺にしてあげてください」
やめてください、これ以上自分たちの心の傷を増やさないでください。折角の美味しいご飯のはずなのに、涙でちょっぴりしょっぱく感じてしまいます。ええぃ……今日はもう忘れることにしましょう。おかわりと自分アキさんゆーさんの三人で宣言し、やけ食い開始。この理不尽さ、食べて忘れてやりましょう。
あ、そうそうちなみに今日の献立は———
豚肉と牛肉の肉巻きおにぎり
鶏肉と白菜の塩鍋
揚げ茄子とニンニクの醤油漬け
山芋とオクラの和え物
玉ねぎとアスパラガスの玉子炒め
———と、料理上手なアキさんこーさんが中心となって作ってくれた美味しい夕食です。相変わらず見事な出来栄えに感心してしまいます。自分たちだけでなく、皆さんもおかわりをしているところからもわかる通り、ホントに美味しいですねー♪
…………え?なんかやけに精の付く食べものが多めな気がするって?それはその食材を買った二人(=姫路さん&島田さん)にでも言ってください。
「ふぃ……食った食った」
「ご馳走様でした。いやはや、ホントに美味しかったですよ」
「うむ。流石料理上手な二人の料理じゃな」
「…………お粗末様」
「そう言ってもらえると作った甲斐があるね。んじゃ僕お茶淹れてくるから皆はテレビでも見ててよ」
あっという間にあれだけあった夕食を完食して、一息つく自分たち。そんなアキさんの言葉に甘えて、テレビのスイッチを入れさせてもらうことに。さて、今の時間は何が放送されてますかねー?
『それでは、次のニュースです。海外で起きている国際空港の大規模なストについて現地の中西記者がお送りします』
「あ、これって……」
「え、何かしら瑞希?……あ、このニュースもしかして」
「アキくん、音量を」
「んー?……ああ、このニュースね。わかってる、ちょい待ち———よし、これで良し」
皆さんでボーっとチャンネルをコロコロ変えながらテレビを見ているとそんなニュースキャスターの声が響いてきました。玲さんに指示されたアキさんが音量を上げ自分たちにも聞こえるようにしてくれます。自分たちも関係ない話ではないので、緩んでいた頭をシャキッとさせ静かにニュースを聞くことに。
『中西さん、ストの様子はどうですか?』
『はい、こちらは現地の中西です。先日勃発したスト騒ぎは、労働者側と経営者側の労働条件の見解に依然として大きな隔たりがあり、未だ鎮静化の気配は見られないようです』
「ふむ。さすがにまだ飛行機は飛ばないようですね。これはやはり皆さんのご両親も当分は帰ってこれないかもしれませんね」
「そうみたいですね……」
「二人とも、早く帰ってくれるといいんだけどね。ね、葉月」
「はいです……」
「大丈夫でしょうかね……正直自分不安ですよ」
ジッとテレビを見つめてそのように呟く家族がちょうどこの話題のストに巻き込まれた当事者の自分たち。
「瑞希のお父さん・お母さんに美波と葉月ちゃんのお父さん・お母さん。それから造のお母さんとか日高先生たちがまだ向こうにいるんだよね。きっと皆のご両親、絶対皆の事心配してるよね」
「でしょうね。まあ、ウチと葉月は両親がよく海外出張してるし、こういうことも偶にあるから慣れてはいる分そこまで心配されてないかもしれないけどね」
「お姉ちゃんがいつも一緒にいてくれたから平気です!今はバカなお兄ちゃんとかきれいなお姉ちゃんとか玲お姉ちゃんと一緒だからもっと平気です!心配しなくていいよって電話で話しました!」
ああそうか、島田さん姉妹は帰国子女ですしこう言ったことも体験したことがあるのでしょうね。そう言った意味では自分や姫路さんと比べるととても落ち着いています。
- 131時間目 やっとお披露目新生装備〜期待は裏切られるもの〜 ( No.258 )
- 日時: 2016/02/12 21:11
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
「じゃがやはり心配じゃな。暴動に巻き込まれる心配は今のところないとはいえ、こう何日も帰ってこれぬのは不安になるじゃろて。のう姫路に造よ」
「はい……」
「ですね……」
島田さん姉妹とは対照的に、自分と姫路さんはちょっぴり不安顔。正直心配で心配で……
「———お母さん、あっちで観光が楽しすぎて『日本に帰りたくない』とか言い出さないといいんですが」
「自分の母も、全力で観光してるでしょうしこのままずっとここにいる、なんて言わなきゃいいんですが」
「「心配するところ、そっち!?」」
ポツリと呟く自分と姫路さんにツッコミを入れるアキさんとヒデさん。いえ、普通はもっと別のところを心配すべきなのはわかっていますが……姫路さんのお母さんはともかく自分の母は、ちょっとアレな母ですから……蒼兄さんたち大丈夫かなぁ……
「ああ……そういや造のところのおふくろさんも、ちょいと元気もんのおふくろさんだったな。……(ボソッ)俺の家のおふくろといい勝負が出来るレベルの———おまけに姫路のとこも結構アレなのか」
「…………苦労してる。母親はやはりどの家も最強か」
こーさんや、自分たちと同じく母親関係で苦労しているゆーさんが複雑な表情をする自分たちをねぎらってくれます。どこの家庭も母は偉大と言うわけですねー……
「ですが、本当に治安の良い観光地で良かったですね。退屈することもないでしょうし」
「お恥ずかしい限りです……普通なら、きっと空港で待っていたりホテルでジッとしているはずですのに」
「自分の母もですよ……これ見よがしに遊ぶ口実が出来たと全力で蒼兄さんたちを振り回して遊んでいるとか電話で聞きました」
話を聞く分に、何だか姫路さんのお母さんと自分の母、気が合いそうで怖いですね……あっちで意気投合していないでしょうね……
「とはいえその逆で、過保護に心配されるのも困りますがね。その母と違って、サクヤさんはこれでもかと言うくらいメチャクチャ取り乱していましたし」
「先輩は造くんが大事ですからね。実を言うと私のところにも電話がありました。“頼む……造に何かあったら玲っちも手助けしてやってくれぇ……”と」
「……ほんっとに、申し訳ありません玲さん。サクヤさん心配しすぎでしょ……」
全く心配せずに遊んでいる母親もいる一方、育ての親のような人であるサクヤさんはかなりまいっているようでして。蒼兄さんにこれ以上待たされるなら空港をジャックし兼ねませんとシャレにならない冗談を電話で伝えられました。母以上に不安ですよ……
「ま、不安になっても仕方ないし瑞希も造ももっとポジティブに考えていいんじゃないかな」
「そうよ。ご両親帰れないのは不安でしょうけど、こう言っちゃなんだけどこのストのお陰でウチらアキのお家で過ごせるわけじゃない」
「葉月、バカなお兄ちゃんたちと一緒で嬉しいですっ!」
「うむ。造も心配せずとも、そっちには蒼殿も一緒であると言うておったじゃろ?ならば安心じゃろうて」
「…………あの逞しい執事軍団も一緒らしいしな」
そのように自分たちを励ます皆さん。そうですよね、悩んだところでこればっかりは自分たちの手で何とか出来る問題ではありませんからね。のんびり楽しく待つしかないでしょう。
「とは言え試召戦争的な意味では、これもあまり楽観的に考えられない問題かもな」
「「「「「「へ……?試召戦争……?」」」」」」
そんな中微妙な顔で、このストのニュースを睨んでいるゆーさん。え?どうして試召戦争……?
「その様子じゃ、お前ら全員考えてもいなかったようだな。今朝の出来事を思い出してみろ。明久の同棲が判明した途端、FFF団が大暴れしただろが」
「あー、あったねそんなこと。でもそれと試召戦争と何の関係があるのさ?」
「ちょいと考えればわかるだろ。いくらストが終わるまでとは言え、一つ屋根の下こんな頭悪くて甲斐性無しのバカと「何さり気に僕をバカにしてんのさ雄二!?」クラスの数少ない女子が一緒に暮らすんだぞ、普段ちょっと女子と話しただけで審問会開く連中がこの事実を見過ごせると思うか?クラス内の士気に影響がないわけないだろが」
「あっ!?そ、そう言えば確かに……つまりアレですか?下手すると試召戦争が始まっても暴れられる可能性があると……」
「下手しなくても長引けばアウトだな」
きっと今回は姫路さんと島田さんの為ですと説明すればわかってくれると思いますが、それでも納得いかないと考えちょっと暴走しちゃうのがうちのFクラスクオリティ。ストが長引くのに比例してアキさんたちの同棲生活が長引けば、不満が出る可能性も否定できません。そして大事な試召戦争の士気に影響が及ぶのだって十分に考えられますね。
「うぇ、言われてみれば確かに。当事者の僕が言うのもアレだけどFFF団の事だし絶対に審問会開催されるレベルの案件だよねこれ」
「むぅ……そう考えると、確かに今後が少し不安じゃな」
「…………嫉妬は人を醜く強くするしな」
「そう言うこった。このスト、姫路や島田たちの為には勿論、試召戦争の為にも早めに解決してもらいたい問題だな。ついでに言うなら、“……私もストの間だけでも良いから同棲したい”なんて翔子が言い出さないためにもな……」
あ、ああ……霧島さんならそう言うかもしれませんね。ですが確かにゆーさんの言う通り、出来るだけ早く解決してもらいたいものですね。そのゆーさんの言葉に、自分たちもゆーさんが見ているニュースを改めて眺めることに。
『利用客の多くは周辺のホテルに滞在し空港の機能の回復を待つようですが、一部では満室で宿を取ることが出来ず、空港で夜を明かしている人の姿も見られます』
画面の奥ではスト状態の空港内の様子が映され、関係者の皆さんや疲れた様子の観光客たちの映像が流れてきました。中には相当怒っているのかカウンターに詰め寄っている人も———
……って、アレ?なんか、どこかで見たことがあるような人がいるような……?ちょっと気になって目を凝らしてみると。
『その中には日本人の姿も見受けられました。何でも海外出張や観光で子どもたちを日本に残してしまったそうで、一刻も早く日本に帰りたいと毎日空港に詰め寄る人も———』
バンッ!
『一体、いつになったら、帰れるんだいっ!?飛ばない飛行機に、何の価値があるって言うんだいっ!?』
……………………っ!?カウンターをバンッ!と叩く音と共に割れんばかりの張りつめた声がカメラ越しから聞こえてきました。テレビの前の自分たちだけでなく、近くにいた記者さんも。そして周りの皆さんも思わず耳を塞いでしまう大音量。え、え……?うそ……こ、この声はまさかっ……!?
『———し、失礼しました。えー……ど、どうやらその日本人の利用者がちょうど今抗議に来ているようですね』
『サク姉さん落ち着いてください……ホラ、周りの皆さんもビックリされてますし』
『未だに、飛行機が飛ばないことの方が、ビックリだよ、アタシはっ!?うぅ……造ぅ……こうなりゃマジで海渡って———』
『サク姉さん、それだけはどうかご勘弁を。サク姉さんなら余裕で出来そうですが、色々問題になると思いますので』
『あはは、相変わらずサクちゃん心配性ねー?心配しなくてもつーちゃんなら多分へーきよへーき』
『そうですよ〜、きっと向こうは向こうで楽しくやっていますよ〜。うちの瑞希ちゃんも今頃は抱き枕の彼と一緒に楽しくしてると思いますし〜。と言うわけで月野ちゃん、それに島田ちゃんも。みんなで一緒にお土産買いに行きましょう。おかしな柄のパンツとか〜』
『えっ!?は、はあ……美波と葉月、そんなもので喜んでくれるのでしょうか……?』
『ええ、きっと喜んでくれますよ〜。島田ちゃんのとこは娘さんがお二人でしたっけ〜?うちは一人娘なんですけどね〜』
『待つんだ母さん、やはりどう考えても娘のお土産にパンツはどうかと思うんだが……』
『いいわねー姫路ちゃん♪島田ちゃんは何買うー?あ、サクちゃんも一緒に行くわよー』
『いや待てよ……動いていないだけで飛行機自体はあるんだよな……?なら———(ピー)してでも奪い取って一刻も早く帰国を』
『サク姉さんホント落ち着いてください……その発言はアウトすぎます。とりあえず執事隊の皆さん、今すぐサク姉さんを止めましょう』
『は、離せお前たちっ!?アタシは今すぐにでも帰国して造に会いに———』
ブチィッ! ←自分と姫路さんが、問答無用でテレビのスイッチを切る音
「……え、えっと。瑞希に造?今のは———」
「「———なにもみえませんでした。なにもきこえませんでした。いいですねみなさん?」」
「「「「「は、はい……」」」」」
何やら妙な映像が見えたように気もしましたが、間違いなく幻覚ですね。姫路さんと二人で盛大にため息を吐きつつ思います。…………出来るだけ早く、なんて甘いこと言いません。今すぐ、早急に解決してもらいたい問題ですねこりゃ……蒼兄さん、執事&お手伝いの皆さん。母さんとサクヤさんを何とか頼みます……