二次創作小説(紙ほか)

134時間目 トンデモ奇策は〜Fクラスの華〜 ( No.267 )
日時: 2016/03/04 20:40
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

造Side


———現在時刻10時23分、攻略に要した時間は約50分と言ったところですか。何とかゆーさんの言った目標時間内にEクラスを攻略できましたね。

「瑞希、月野。二人ともお疲れ。やっぱりウチらが加勢する必要なかったわね」
「うむ、見事な勝利じゃ。雄二の声も聞こえておったがこれから戦後処理に入るのじゃろう?」
「美波ちゃんも木下君もお疲れ様です。美波ちゃんたちがちゃんと守ってくれたから上手くいきましたよ」
「その通りですね。さて、では午後の件もありますし時間も惜しいです。ヒデさんの言う通り、そろそろ戦後処理に入りましょうか中林さん」
「…………はい、先輩」

仮に中林さんに逃げられた時の為に備えて、念のために3階の踊り場で控えてもらっていたヒデさんと島田さんと合流し、お互いを称えあいつつゆーさんに頼まれた通り戦後処理に入ることに。

「……負けたんですね、私たち」
「そうなりますね。そう言えばEクラスは初めての試召戦争でしたよね。どうですか感想は」
「……最悪の気分です……何が……いけなかったんでしょうか」
「う、うーん……色んな意味で準備不足・経験不足って感じですかね」

がっくりと項垂れる中林さん。打倒Fクラス、打倒ゆーさんやアキさんを豪語していた彼女なだけに、相当落ち込んでいますね。Eクラスの戦い方を評価すると……彼女たちは召喚獣での戦い以前に、対Fクラスの対策をほとんど練れていない印象でした。ゆーさんたちがどこに向かうのか予測もせず、ゆーさんたちをただ闇雲に追っているだけ。さっきみたいに少し冷静になれば所々で回り込んだり待ち伏せしたりとできたでしょうに。

「と言うかのう。ずっと気になっておったが、お主ら教師も連れて来ずに試召戦争をどう戦うつもりだったのかの?」
「えっ……あっ……」
「……やはり気づいておらんかったのかEクラスよ」

おまけにヒデさんの言う通り、試召戦争中であるにも拘らず立会人の先生を連れてきていないと言う致命的なミスもしていた様子。仮に、ですが。ゆーさんたちに追いついた場合はどうする気だったのやら……?まあ、Eクラスの皆さんはこれが2学年最初の試召戦争ですし、やはり勝手がわかっていなかったようですしこればかりは無理もありませんかね。

「こ、この手で坂本と吉井と倒せるチャンスだったはずなのに……」
「……えっと、中林さん?試召戦争が終わったのでアドバイスしますね。(アキさんへの恨みの内容は一体何なのか分かりませんが)貴女がゆーさんを怒るのも無理はないと思います。ですが、試召戦争中は出来る限りクラス代表が前に出ちゃダメですよ。勿論私怨に囚われちゃダメ、勝てるものも勝てませんからね」
「うっ……そ、それはそうかもしれませんけど……」

中林さん自身が攻め込んできたことも良くありません。特殊な場合を除いたらやはりクラス代表はおいそれと召喚獣を召喚するべきではありませんし、それ以上に代表が表に立って突撃するなど鴨が葱を背負って来るようなもの……試召戦争のタブー中のタブーです。

「で、ですが先輩……っ!坂本はあんなに前線に立っていますよね!?おかしくないですか!?」
「……え、えっと。それはゆーさんが特別と言いますか」

…………え?中林さんの言う通り、うちのゆーさんは結構表に立って破天荒な突撃もしているって?ま、まあそこは定石通りな作戦だけで勝てるほど試召戦争は甘くないですし、思い切りの良さと奇想天外な作戦こそFクラスの華ですから。

「な、納得いきません……と言うか、何一つ何が起こっているのか分かりません……」
「そうでしょうね。うーん、少しだけなら何が起こったのか説明しましょうか」

未だに何が起きたのか、なぜ負けたのか、Eクラスの仲間たちはいつ戦死したのか———何一つ理解できずに混乱している中林さんとEクラスの皆さん。では折角ですし、肝心のゆーさんの立てたFクラスの作戦の内容説明に入りましょうか。Eクラス戦が始まる前に、我らが策士ゆーさんは自分たちにこんな作戦を授けてくれました。

134時間目 トンデモ奇策は〜Fクラスの華〜 ( No.268 )
日時: 2016/03/04 20:43
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

『———つーわけで、恐らく中林は日頃の恨みを晴らすため率先して俺らを討ち取りに来るだろう。そんで俺らが逃げ出せば釣られて奴が追って来るのもほぼ間違いない。そしてそんな奴が代表の脳筋クラスだ、守るべき代表が俺らを追うなら必然的にクラス全員で追ってくるハズだろう』
『ゆーさんの言い方は物凄く悪いですが……まあ、そうでしょうね。そこをこっそり後ろに回り込んでいた自分たちがバックアタックを仕掛けて、気づかれないように少しずつEクラスの生徒さんを討ち取っていくってことですね』

Eクラスの皆さんは立会人の先生を確保できていませんでしたが、その点こちらには立会人の先生を連れてこなくてもいつでもどこでも代理召喚出来る自分の白金の腕輪があります。この腕輪を起点とした基本的な流れはこうですね。

①ゆーさんたちが中林さんたちを挑発しつつ自身を囮に引きつける
②怒ったEクラスがゆーさんたちを討ち取ろうと全力でゆーさんたちを追いかける
③その間ゆーさんたちが通るルートに自分たちが先回りして待機
④ある程度Eクラスを分断させやれると判断すれば後方を走るEクラスの生徒に対して自分が召喚フィールドを展開
⑤姫路さんと自分の全体攻撃+討ち損じた生徒を島田さんとヒデさんが討ち取る

以下この1〜5の流れをEクラスの戦力の大半を削るまで繰り返します。ちなみに他のFクラスの皆さんにも基本3人一組で行動してもらい、Eクラスの人たちと出会い次第3人で戦ってもらい自分たちのアシストを行ってもらいます。多少点数の差があっても3対1なら十分に戦えるはずですからね。

『そうだ。今日に至るまで散々俺と明久に挑発されて『えっ!?僕中林さんに何かしたっけ!?』怒りで俺らしか見えてない中林の奴は絶対に後ろの連中の異変に気付かない。まさか俺らを追い詰めているつもりが、知らん間に追い込まれていることになっているなんざ夢にも思わんだろうさ』
『ああ、なるほどの。お主この戦争が始まる前から妙なくらいに中林をしつこく挑発しておるなと思っておったが、その挑発も一つの狙いじゃったのか』
『…………怒りで前しか見えなくなるってことか』

こうしてこっそりと勝負を挑んでEクラスの生徒の数を少しずつ減らしていった自分たち。そして大半を削り終えたら……詰めに入ります。

『おうよ。ああいうタイプは扱いやすくて助かるな。んで、お前らがある程度連中を倒したと判断したら俺らは迷わず旧校舎2階へ向かい、中林たちを誘い込んで“そこから飛び降りる”。いくら体育会系とは言えそんなデタラメな度胸と身体能力は奴らにはない。で、階段を使って下に降りようにも旧校舎の階段は今朝鉄人が連絡した通り使えないから必然的に踵を返して渡り廊下を通って新校舎の階段を使わざる負えなくなる———そしてそこが奴らの墓場になる』

……この作戦を聞いたとき、正直本気で止めようと思いましたがね。何で2階から飛び降りることが作戦の一部に組み込まれているのやら……ま、まあゆーさんたちなら2階程度の高さならどうってことないと当の本人たちから太鼓判を押されたので、渋々了承はしましたが。

あ、ちなみにゆーさんが言った“連絡”とは今朝西村先生がHRで話してくださっていたものの一つですね。


———HR:西村先生の連絡———


『後は他の連絡だな。旧校舎の1、2階の踊り場にある水道だが、本日から配管工事を行うため周辺の手洗い場及び水飲み場は使用できない。それに伴い業者が入るのに邪魔にならないよう旧校舎の1階と2階を繋ぐ階段も使用不可だ。朝来た時のように、遠回りになるが渡り廊下先の新校舎の階段を使う様にしておくこと』


旧校舎の階段が使えないと連絡を受けたとき、ゆーさんが何か企んでいると思いましたが、こういう事でしたか。場の全てを利用したゆーさんの策、お見事です。そしてゆーさんの描いた最後の詰めのシナリオは以下の通りですね。

2階窓から飛び降りて逃げだしたゆーさんたちを追いかけたい中林さんたちは、旧校舎側の階段を使えず、勿論ゆーさんたちのように飛び降りるわけにはいきませんので先ほど通った渡り廊下を通って新校舎の階段を使い1階に戻る必要があります。

ですが彼女たちが踵を返してみると、付いて来ていたはずのクラスメイト達はほとんど戦死しており、おまけに渡り廊下には召喚フィールドを張った自分と姫路さんが戦闘準備万端でお出迎え。万が一旧校舎の階段を上って3階に逃げ込もうとしても、ヒデさんと島田さんが階段の踊り場で待機していますから、逃げ場が無くなった彼女たちは勝負を挑まざるを得ません。

『中林はさぞ驚くだろうな。気づいたときには中林の周りに近衛兵以外の味方はいないことになるわけだ。そんでもって最後の止めは全体攻撃の練習を兼ねて造・姫路が渡り廊下で奴らをまとめて戦死させろ。念のため逃げられないように3階4階の階段の踊り場は秀吉と島田がお前らの得意科目の教師を連れて回り込んで封鎖しておくこと。これが俺のEクラス戦のシナリオだ。単純な策だがお前らがちゃんと試召戦争を行う上で、それぞれの役割をわかっているかが問われてくる。来たるAクラス戦の模擬戦と思って死ぬ気で戦え、以上!』

これがゆーさんの対Eクラス戦の作戦でした。正直傍から見ればかなり破天荒で無茶で無理のある作戦でしょうが、全員の能力を鑑みて練られたゆーさんらしい———そうFクラスらしい作戦でしたね。目標タイムも縮められましたし、自分や姫路さん達の働きは合格点ってところでしょうか。まあ、それはともかくとして。

134時間目 トンデモ奇策は〜Fクラスの華〜 ( No.269 )
日時: 2016/03/04 20:46
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

「さて、説明も終わったところで早速戦後交渉に行きましょうか。本来なら下位クラスが敗北した場合クラスの設備が1段階下がるわけですが……一学期のB・D戦の戦後処理の話は聞いていますよね?その時のように自分たちはEクラスに条件を聞いていただけるなら勝敗無しの決着として終了させてもいいと考えています」
「それは……やっぱりFクラスがいつか戦う予定のAクラス戦で手伝えってことですか?」

校内中で一学期のFクラスの活躍(?)が広まっていますから、Fクラスがどんな行動をするのかはEクラスの皆さんも、中林さんもわかっているようです。中林さんの言葉に自分はコクリと頷いて続けます。

「はい、端的に言えばそうなりますね。まだ詳しい条件はゆーさんからは聞いていませんが、少なくともクラスの設備のランクが下がるよりも良い条件になるはずと聞いています。それで、どうしますか?」
「悪いことは言わぬ。雄二とてそこまで非道な条件は出さぬ———と思うからの、呑んでくれるとありがたい」
「う……でも……うーん……」

ブツブツと苦々しい表情で呟いて悩む中林さん。体育祭:召喚野球から始まり先ほどまでも嫌と言うほど挑発されていた彼女の事です。きっと心の中ではゆーさんの条件に従うのは絶対に嫌だと思っているはずでしょう。

「どうかしら中林。そりゃアンタも嫌なものは嫌だろうけどさ」
「あの!……坂本君には出来るだけ無理のない条件を出してもらえるように私たちも説得しますから、受けて頂けませんか……?」
「…………」

ただ……しばらく考えていたようですが、クラス代表の立場でもある彼女は悔しそうな表情で———

「……わかりました。設備のランクが下がるよりはいいと思います。駄々捏ねて条件を呑まないなんて頑張ってくれたEクラスの皆に悪いですし……条件、呑ませていただきます」
「ありがとうございます、中林さん。条件は後日付けさせていただきます。では……Eクラスの皆さん、試召戦争ありがとうございました!」

「「「ありがとうございました!」」」

———交渉成立ですね。4人でほっと一息ついて、Eクラスの皆さんにお礼を言いつつDクラス戦も控えていますので自分たちのFクラスに戻ることに。ふぅ……何とか午前中はクリア、ですね。次も頑張らなくては。












『……でも、“情報通りなら”絶対勝てるハズだったのに……だからこそDクラスより先に……倒される前に勝負を挑んだのに……どうなってるのよあいつら……』


〜攻撃部隊(造・秀吉・瑞希・美波)帰還中〜


「案外何とかなるものですね。自分1時間でEクラス全員を戦死させろ、なんて流石に無理があるかなって思っていましたが」
「うむ。まあ雄二とて無茶な作戦は立てても、不可能な作戦は立てぬじゃろうからの。ワシらの能力を測った上で策を練っておるのじゃろう」

Fクラスに戻りつつ、4人でのんきに先ほどのEクラス戦を振り返りながら帰還します。

「それにしても瑞希、大丈夫?アキたちみたいにずっと走っていたわけじゃないけど結構走らされたじゃない?」
「そうですね……かなりハードだったと思いますが、体力的に大丈夫ですか姫路さん?」
「えへへ♪大丈夫ですよ美波ちゃん、それに月野君!秘密にしてましたが……実は私、最近体力をつけるためにジョギング始めたんです」
「えっ?そうなの?初耳よそれ」
「はい、秘密にしてましたから。朝学校に来る前に少しずつやっているんです。ね、木下君」
「うむ、最近朝によく姫路とジョギングコースで会うのじゃ。頑張っておるぞ姫路は」
「おおっ!良いですね。頑張っているじゃないですか姫路さん!ふむ、自分も何か運動始めましょうかね」
「あ、でしたら皆さんで週一にでもジョギングをしませんか?明久君や坂本君たちも誘って」

こんな感じの談笑をしていると、我らがFクラスの教室が見えてきました。中にいるゆーさんたちのことです、今頃午後からのDクラス戦の作戦会議を行っているんでしょうね。自分たちも急いで作戦会議に参加しませんとね。

「目標時間も記録更新できてたし、結構良い感じで行っているわよねウチら」
「はい!新しくなった召喚獣の武器も、かなり扱えるようになりました!次もバッチリです!」
「うむ、実に頼りになる台詞じゃな姫路よ。ワシらも負けず、精進するとしようか」
「ですね。ではこの勢いのまま午後からのDクラス戦も自分たちの勝利に向けて———」

『嘗めてんのかテメェらは!?一体何だこのマヌケなEクラス戦の結果は!?1年からやり直せやバカ者共がっ!』

「「「「…………えっ?」」」」

———そう、自分たちが意気揚々とFクラスに入ろうとした矢先。廊下まで響いてくるゆーさんの殺気に満ちた怒号が聞こえてきました。え……?な、何ですか一体……?