二次創作小説(紙ほか)
- 136時間目 ( No.273 )
- 日時: 2016/03/11 20:45
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
平賀Side
「———報告します平賀代表!情報通り奴ら主力7人で攻め込んでいます!」
「現在40名の兵を渡り廊下に配置。拮抗しているようですが、奴らはEクラス戦で消費している分、こちらが有利です!」
ついに始まった試召戦争。俺らにとってはリベンジマッチである因縁のFクラス戦。前々から少しずつ準備して戦力や戦略を立てていたことに加え、午前中にEクラスとの防衛戦をやらざるを得なかったFクラスとの戦いはこちらが非常に有利な状況になっている。
『スピード勝負ってことと逃げ道を塞がれたら終わりってことで何とか速攻で渡り廊下と階段を抑えられたのは良いけどさ…………雄二ぃ!?なんかめちゃくちゃ敵の数多くない!?』
『そんな当たり前の文句言うなバカ久っ!数の上では7倍以上向こうに人数いることくらいわかってただろが!文句言う暇あるなら二重召喚でもして数増やせや!』
『こんな四方八方敵だらけの状況で集中力がいる二重召喚による二体同時使役なんて出来るわけないでしょ!?そんなこと言う暇があるなら雄二も召喚して戦えばいいじゃないか!』
『おいそれと代表が召喚できるか!もしもの時までギリギリまで召喚しないとあれほど言ってただろうに、聞いてないのかお前と言うバカは!?』
…………と、こんな感じの会話が聞こえてくるな。残念ながら奴らの言う通り新校舎の階段と渡り廊下は試召戦争開始時に機動力が抜群過ぎるあいつらに抑えられた。この二か所をこちらが先に抑えられればもっと楽に攻略できたが……そこは仕方ない。その代り、階段から先の俺がいる俺たちのクラスのあるDクラスに繋がる廊下までは攻めきれていないようだ。その理由と言うのも———
『くっ……フィールドが数学とはの……これでは明久たちに加勢できぬ……』
『この科目ウチの得意科目だって言うのにさっきのEクラス戦で使っちゃってるからあまり余裕が……』
『わ、私もEクラス戦で金の腕輪の能力使っちゃって数学の点数があまり……』
『…………保健体育以外は辛い』
《み、皆さんもう少し耐えてください!この5人を倒したらすぐにフィールドを書き換え———うわっ!?……ちぃ、接近戦はやっぱり辛いですね……》
———俺たちの作戦が効いているからだな。奴らの成績データ並びに戦闘データをクラスメイト全員に叩き込んである。それこそ奴らが得意とする科目や苦手とする科目、更にそれぞれの召喚獣や本人たちの特性、戦闘の癖や行動パターンに至るまで全てな。特に攻撃の中心となっている姫路と月野の戦い方は徹底的に研究しておいた。Fクラスと戦うシミュレーションをFクラスに負けてから今日に至るまでずっとやってきた甲斐が出てきたわけだ。
それに加えて午前のEクラス戦で奴らの使った科目は確認済み。どの科目が回復に間に合っていないのかの情報は“すでに俺たちに筒抜けだぞ”Fクラスよ。後は先にその科目の教師を確保しておいて廊下に配置しておくだけでこいつらの怒涛の進撃もそう苦も無く止められている。
「まあ、それも清水さんや玉野さんが奴らのいない間にFクラスに仕掛けてくれた盗聴器による情報あってのことだけどな」
「……ま、卑劣な手は不本意ではありますがDクラスの生徒として勝たねばなりませんので。それもこれもDクラスの為です!」
「私も一人のDクラス生徒として、卑怯だとは思うけど勝たなきゃならないからね。Dクラスの為にね!」
近衛兵として俺の横にいる清水さんと玉野さんはもっともらしいことを言う。少々ネタ晴らしをすると、この二人には奴らが午前中Eクラスと戦っている隙にFクラスに侵入し教室内に盗聴器を仕掛けてもらっている。そのお陰で現在奴らは7人で戦わざるを得ないこと、そしてかなりの科目がEクラス戦で消費されていることが判明した。
消費されているの科目は点数消費が大きい順に【数学・英語W・英語R・物理・日本史・地学】らしい。だからこそ奴らの回復が間に合っていない科目の教師を中心に立会人を確保して勝負に挑んでいる俺たち。奴らは消費した科目で勝負をしなければならないと言うわけだ。
…………どうしてこの二人が反則スレスレの行為をやってくれているかって?……このFクラス戦が始まる前に、モチベーションを上げるため“勝ったら戦後処理でFクラスの気になる相手(清水→美波 玉野→アキちゃん(決して吉井に非ず))を自由にしていい”とクラス全員に言ったら率先してやってくれた。……この勝負、勝ったらとりあえずその二人には謝っておこう。すまない島田と吉井(と言うかアキちゃん?)
「まあ、それでも40人以上導入してやっと互角とは……Fクラスはやはり強いな……」
「ですね、流石は私たちのライバルクラスです」
「人数はこちらが有利。科目も奴らが消費している科目中心に攻めているにも拘らず、7人で戦えていますからね……つくづく恐ろしい連中ですよ」
「向こうには聡明で凛々しくお強く、それでいてお美しいお姉さまがいらっしゃいますから当たり前です」
「アキちゃんも可愛いからね」
…………最後の二人の妙な発言は置いておくとして。話によれば今戦っている7人以外の他のFクラスの連中は———今回“自主的に役に立たない”ハズだから、実質Fクラスは7人で戦っているのに等しい。だと言うのにここまでやるとは流石だ。姫路さんや月野の戦力は勿論、坂本の奇策や他の連中の予想も出来ない行動が恐ろしい。だが、俺らだって負けていられない!前回負けてから今日に至るまで戦力アップを頑張って行ってきた。奴らの行動パターンも完全に把握済み。負ける要素なんてない、ここで勝って雪辱を果たすっ!
「代表!英語担当の先生も無事に確保できました!すぐに行けます!」
「よしっ!まずは姫路さんか月野を倒すんだ!あの二人が攻撃の中心。二人のうちどちらかを倒せば一気に攻め込みやすくなる!」
『っ!?雄二ヤバイっ!Dクラスが英語の先生を連れてきてるよっ!』
『ちっ、英語だと……今すぐ造を下がらせろ!造がやられたらこの均衡が崩れちまう!秀吉、島田!造を守れっ!』
『わかっておる!』
『了解よ!』
俺たちの行動にいち早く反応して、坂本が月野を下がらせると同時に木下と島田を月野の前に立たせて盾になる。だが、そうはさせんぞ坂本!
「待機部隊!坂本達と月野・木下・島田の三人を分断させろ!」
「「「了解です!」」」
『何ぃ!?……つ、造!秀吉!島田っ!』
《ゆ、ゆーさぁんっ!?》
ここでもう一つの作戦に移る。渡り廊下と階段の攻防に参加せず待機してもらっていた待機部隊を呼び出して、月野たち三人を召喚獣で鍔迫り合いをさせたまま渡り廊下の先、つまりは旧校舎側へと押し込める。よしっ!これで月野と姫路の分断に成功したな。
「待機部隊っ!そのまま科目を英語に変えてその三人を倒すんだ!その三人はもう戦う力は残っていない!倒したらこっちで坂本討伐隊に合流するんだ!」
「「「わかっています代表!」」」
そんな頼もしいことを言いつつ、科目英語の教師立会いの下で召喚獣を召喚しているであろう声が聞こえてくる。そっちは任せたぞ待機部隊……!
「こちらも攻撃の手を緩めるな!逃がすな!数で押せ!反撃させるな!攻め続けるんだ!」
『あんにゃろっ……!ひ、姫路行けるか!?』
『む、無理です!?この科目は回復していませんっ!?』
『…………数が多すぎる、逃げるべきか……?』
『こ、こうなったら二重召喚で……いや、流石にこうも囲まれちゃ二体を同時に使役するのはやっぱり無理が……』
- 136時間目 ( No.274 )
- 日時: 2016/03/11 20:46
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
俺がそんな指令を飛ばすと、案の定月野たちと分断された焦りが出てきているのか坂本たちの慌てた声が聞こえてくる。よし、ここが腕の見せ所だ!すぐに訪れるであろうその時まで、追撃部隊に檄を飛ばしていると———
『木下秀吉・月野造・島田美波、3人とも戦死!お前らは補習室行きだ!』
『……む、無念じゃ……すまぬ雄二、皆の衆……』
《そ、そんな……!?こんなところで……自分たちの負けなんて……!?》
『くっ……ここまで、なの……?』
———鉄人の大きな声と共に、月野たちが項垂れたような声が俺たちの耳に届いた。よしっ!待ちに待ったこの瞬間が来たっ!姫路さんか月野のどちらかさえ落とせば後はこの数で全力で攻め込むだけだ!
『クソッ!?造や秀吉たちがやられただと……!?さ、作戦中止!一旦引くぞお前ら!』
『ちぃ……わ、わかったよ雄二!瑞希、こっちに!』
『は、はい……』
『…………一階に逃げ込むべき』
今まで拮抗していた階段と渡り廊下内の攻防。だが今の鉄人の声を聞いて本格的に撤退を始める坂本達。姿は遠くて見えないが、待機部隊が月野たちを倒してくれたんだろう。これは……またとないチャンスだ!
「よし、畳みかけろ!姫路さんさえ動けなくすれば、後は坂本を討ち取るだけで終わる!全勢力を追撃部隊に回すんだ!」
勝てるかもしれない……いいや、絶対に勝てる!そう俺は確信して階段を降りて逃げていく奴らの息の根を止めるため、俺の側を守る近衛兵をも追撃部隊として動員して向かわせる。月野と言うFクラス二大戦力の一人にして厄介な白金の腕輪持ちを倒せたのは非常に大きい。後は主力である姫路さんを討ってゆっくり坂本を倒しにに行くか、そのまま問答無用で坂本に挑んでこの試召戦争を終わらせるもの悪くない。
万が一に備え俺はこの場に残り、俺以外のDクラスの生徒ほぼ全員に坂本達を追いかけてもらう。クラス代表として前線に出られないから、下に行った追撃部隊と渡り廊下の外へ押し込んだ待機部隊が現在どんな状況かよくわからない。わからないが———今のところ完璧に事が運んでいる上、全ての状況が俺たちに有利だと言っている。つまりほぼ間違いなく俺らの勝利と言えるだろう。勝った……あのFクラスに!宿敵Fクラスに俺たちは勝ったんだ……!勝利を確信し、思わず笑みを浮かべてしまう俺。
《———なんて。まさか勝ったとは思っていませんよね、Dクラス代表さん。……甘いですっ!Fクラス月野造、Dクラス代表平賀くんに勝負を挑みます!》
「……へ?」
「油断したのう平賀。お主、確か前回の試召戦争でも最後の最後で慢心し姫路の存在を知らずに負けたであろうに。まあ、これも勝負じゃし悪く思わぬようにの。同じくFクラス木下秀吉、平賀に勝負を挑む。試獣召喚(サモン)じゃ!」
「今回も詰めが甘かったようね、近衛兵はそう簡単に手放すものじゃないわ。まあ後悔してももう遅いけど。ウチも平賀に勝負を挑むわ。試獣召喚(サモン)!」
《Fクラス 月野造 現代社会 416点》
&
《Fクラス 木下秀吉 現代社会 124点》
&
《Fクラス 島田美波 現代社会 117点》
「な……なん、で……?え、お前ら全員戦死って鉄人が……?え?てか、一体どこから……!?」
…………どういう……ことだ……!?勝利を確信し笑みを浮かべた瞬間、突然俺の真後ろから声が聞こえたと思ったら“先ほど戦死したはずの”月野と木下、島田の3人が召喚獣を召喚して俺に勝負を挑んでいる。い、いや待ておかしい!?こういう展開に備え、極力後ろを取られないように常に壁を背にしていた。なのにいつ、どうやってこいつら俺の後ろを取った……!?
《どこからって……“窓から”ですよ。随分と自分たちの事を研究されていたようですが、ちょっぴり詰めが甘かったようですね。過去の戦歴・戦術データをもう少し考察しておくべきでした》
「一学期のBクラス戦の途中、そしてクラス代表の根本を倒した時と同じ戦法じゃからの」
「まあ、流石にちょっぴり危ないショートカットだったけどね。誤って3階から落ちるのはシャレにならないでしょうし」
窓……Bクラス戦……っ!?やられた……!こいつらどんな方法を使ったかわからないが、3階の旧校舎側の窓の外から新校舎側の窓へと侵入して後ろを取ったのかっ!?だ、だがそれ以前にコイツらはすでに戦死していたはず、どうしてこんなところで俺と対峙できる……!?
「それと……ウチらが戦死?何の事かしらね月野?」
《何のことでしょうねー島田さん?ねえ、ヒデさんはわかります?》
「うむ、わからぬ。わからぬが……ああ、しかし平賀よ。もしやお主この声を———『木下秀吉・月野造・島田美波、3人とも戦死!お前らは補習室行きだ!』———そう、この声を鉄人の声と勘違いしてしまったのではないかのう?」
「……っ!?て、鉄人の、声!?」
な、何だこれは……木下が鉄人の声を……ま、まさかこれって……!?
「せ、声帯模写!?や、ヤバイっ!?み、皆急いで戻ってくれ!?」
嵌められたっ!?だんだん状況がわかってきたが、これは本気でマズい……!今すぐ兵を戻して態勢を———
キィイイイイイイン———キュボッ!
『『『ぎゃあああああああああああああああああああ!?』』』
———と、俺が慌てて兵を戻すため大声で叫んだのと同時に、妙な音と共にクラスメイトの断末魔が響き渡る。お、おい……何だ今の音……?めちゃくちゃ嫌な予感しかしないんだが……
「……い、今の音は……?」
「ん、多分瑞希の召喚獣の金の腕輪の能力【熱線】ね」
「それとお主らDクラスのクラスメイトの断末魔じゃろうな」
《と言うわけでですねー、平賀くんの期待しておる増援部隊は……残念ながら引いたと見せかけて攻撃準備万端だった姫路さんに全員やられたと思います」
『Dクラス、37名戦死!戦死者は補習だ!』
……今度は本物の鉄人の声が廊下から聞こえてくる。……つ、つまりこれは……
《さて……わかっていますよね?召喚フィールド内で勝負を挑まれたら———召喚に応じて勝負しなければならないと言うことを》
「それでどうするのかしら平賀?ウチら三人相手に……勝てると思う?」
「言っておくが……ワシらは油断はせぬ。全力で仕留めに行くからの。それでは平賀よ———召喚して敗けるか、召喚せずに敗北を認めるか。どっちが良いか言ってくれぬか」
…………守ってくれる近衛兵もおらず。と言うか、俺以外のDクラス全員が戦死。校内でもトップクラスの召喚技術と絶望的な点数を持つ月野を筆頭としたこの3人対俺一人。つまり……どうやっても、俺らの……負け……なのか……
———二学年試召戦争———
〜Dクラス対Fクラス:Fクラス勝利〜