二次創作小説(紙ほか)

140時間目 ( No.286 )
日時: 2016/03/11 21:08
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

『か、会長!どうするんですか!?逃げられましたよ!?』
『あと……あと一歩だったのに、畜生ォ!』
『あ、慌てるな!今すぐ“彼女”の下に行き次の作戦を教えてもらいに行くぞ!』


明久Side


Cクラス戦がもう少しで始まるって時に、“Fクラスの変”と言うワケのわからないことを言っていたFFF団に造反されリンチされかけた僕と雄二。そんな僕らを助けてくれたのは……連中に捕まったと言われていた僕らの頼れる友人にしてマスコットキャラの造だった。

《ここまで来れば……よし、解除(キャンセル)!》

追手や監視の気配がないことを確認し、体育倉庫の近くで僕らを降ろして召喚獣から元の身体に戻る造。

「ハァ……ハァ……た、助かったぜ造」
「ぜぇ……ぜぇ……あ、ありがとね造」

そうお礼を言いながら息を整える僕と雄二。ホントギリギリだった……あと少し造の救援が遅れていたらと思うとゾッとする。

「いいえ、無事で何よりです。追ってもいないようですし、お二人ともこちらへ」

もう一度誰もいないことを確認して、そのまま体育倉庫の中に入ろうとする造。———って、駄目だよ造!?

「って、待て造。こんな場所じゃダメだ。すぐに奴らに見つけられちまうぞ」
「そうだよ、気を付けないとすぐに袋の鼠だよ!?」

不用心に体育倉庫の中に入ろうとする造を二人で止める。普段から逃げることに特化している僕らだから言えるけど、一見安全そうに見える場所ほど一番危ない。連中もこういう場所を重点的に探し出してくるし、逃げ場のない場所に逃げ込むのは見つかったらゲームオーバーなのだから。

「……大丈夫です。何も言わず付いて来てください。時間もありませんので」
「……何か策があるんだな?」
「わ、わかったよ。とにかく急がないと皆そろそろ追って来るかもしれないもんね」

僕らのそんな懸念をよそに、自信に満ちた表情で中に入るように促す造。そんな造を信じて体育倉庫に3人で入ることに。扉を閉めて、そのまま造は一番奥にある古くて壊れかかっている重そうな跳び箱を“軽々と”横にスライドさせる。その下に敷いてあったマットを捲ると———

「「っ!?か、隠し扉!?」」

一体どんなカラクリか、そこには下に繋がる真新しい扉が現れた。そのまま造はその扉のロックを手慣れた手つきで解除して混乱している僕と雄二を降りるように促す。先に扉を開いて下に降りて、僕らが降り終ったのを確認すると、続いて造が扉をくぐって体育倉庫を元の状態に戻しながら降りてくる。

「ここです。さあアキさんゆーさん、どうぞ中へ」

造に続いて少し警戒しながら中に入るとそこには———

「おお!無事じゃったかお主ら!」
「…………よ、かっ……た……」

「「秀吉にムッツリーニ!?」」

———そこには真上の体育倉庫と同じくらいの空き部屋が広がっていて、驚いている僕らに駆け寄ってくる秀吉とソファーに寝かされている虫の息のムッツリーニの姿があった。


造Side


疲労困憊のアキさんゆーさんの二人に、非常用に取っておいた飲料水を渡すことに。色々聞きたいこともあるでしょうが、まずは落ち着いてもらわねばね。

「———プハッ……ありがと、生き返ったよ」
「サンキューな。さて、落ち着いてきたところで色々と聞きたい。造に秀吉、ここは一体何だ?」

早速状況分析に入ったゆーさんが自分とヒデさんにこの場のことについて尋ねます。まぁ、コレは当然の質問でしょうね。

「あはは……まあ、大体察して頂けると思うのですが」
「うむ、姉上や先生方から逃走できる用に作った、緊急避難用の部屋なのじゃよ。本来ならワシと造と蒼殿たちしか知られてはならぬ場所だったのじゃが」

元々は……もう使われることはないであろう学園長から頂いたちょっとした思い出のある召喚獣の練習場所だったこの部屋。それをサクヤさんにも内緒で夏休みの間に蒼兄さんたちに手伝って貰って改修した自分とヒデさんのオアシスです。まさかこんなことに使うことになろうとは思っていなかったですが……

「出入り口は今入ってきた場所を含めて5つ。蒼兄さん曰くどの出入り口もロックを解除せずに無理やり誰か侵入すればブザーが鳴るようになっているそうです」
「流石にカメラはないのじゃが、出入り口に音を拾えるムッツリーニや清水の持っておるような盗聴器も置いてある。周囲の様子も多少は分かるはずじゃ」
「こりゃすげぇ。是非とも今後は俺にも使わせてもらいたい良い部屋だな。部屋の事は分かった。で、それともう一つ聞きたいんだが———造に秀吉、それとムッツリーニ。お前たちどうやって逃げてきたんだ?」
「あ、それ僕も気になる。須川君たちに造や秀吉は捕まったって言われたし、ムッツリーニはリンチされてるって聞いてたんだけど……」

ああ、それですか。確かに不思議に思われるでしょうね。閉じ込めたはずの福村くんたちも驚いてましたし。

「ワシは造に助けられたクチじゃ。天井裏から降りてきて間一髪ワシを取り囲んでいた連中を吹き飛ばしてくれてのう」

「「……天井裏?」」

「あ、はい。皆さんご存知の通りここ文月学園は召喚システムを学園内全域で使用するために床や天井にケーブルが張り巡らされているんです。そこには召喚獣一体分くらいの隙間がありまして。ですから召喚獣化して補充試験室の天井から逃げ出すことが出来たんです。その後は———」


〜回想:秀吉の場合〜


「な、何じゃお主らは!?何をする気じゃ!?」

もうすぐCクラスとの試召戦争だと言うのに、待機しておった旧校舎の廊下で数人のクラスメイトに取り囲まれ状態になってしまったワシ。何をやっておるのじゃこやつらは!?

『こ、怖がらなくていいよ秀吉ィ……!』
『チョーット閉じ込めるだけだからネー、イタクないからネー!』
『あ、あくまで拘束するだけ!ちょっと胸とか尻とか触っちゃうかもしれないけど拘束するだけだから!』

そう言って手をワキワキとさせながら、何故か興奮気味に気色の悪い表情でワシに迫るこやつら。ええぃ、一体何がどうなって……!?必死に後退して距離を取るも、にじり寄ってくるこやつらに追い詰められ逃げ場がなくなってしまう。

『じゃ、じゃあ俺から行かせてもらうかんな!?』
『こ、拘束するんだし……ろ、ロープ使うんだな!?』
『ひ、秀吉の亀甲縛り……か、カメラ無いかカメラ!?』

鼻血を出しながら何やら意味がわからぬことをブツブツ言いつつ、ロープを持って追い詰めるこやつら。何やら良くわからぬが逃げる方法は……周りを見ると逃げ道は窓だけ……

「(む、無理じゃな……)」

これが柔らかい地面や生け垣がある場所ならともかく、明久や雄二たちのように2階の窓から下がコンクリートで固められている1階に飛び降りるような芸当は残念ながらワシには出来ぬ。とうとう壁を背にして後退することすらできなくなってしまうワシ。

『『『じゃ、じゃあ秀吉……イタダキマス!』』』

「っ……!」

そうして某怪盗三世のようなポーズでワシに向かってダイブしてくるクラスメイトの変態共。くっ……万事休すなのか……!?

《———そんなに縛るのがお好きなら、いっそ皆さんご自身の身体を縛ってみてはどうでしょうかね》
「……!?この声……!」

と、なすすべなくやられそうになるところで、頭上からそんな声がしたかと思うと、天井の板が勢いよく外れそこから降りてくる小さな影が一つ。

《ヒデさん、伏せて!……吹き飛べぇ!》


———ゴォッ!


『『『———うぉ!?な、何だコレ!?身体が動かな……っ!?』』』

言われた通り咄嗟にその場に伏せると、その小さな影から突風が巻き起こりダイブしてきた連中を吹き飛ばしその突風がそのまま連中を包み込み拘束する。これは———風の檻!?こ、この声……それにこの姿にこの能力……!もしや———

「お、お主……!」
《お待たせヒデさん!さぁ、彼らが縛られている間に行きましょう!》
「つ、造か!助かったぞい!」

140時間目 ( No.287 )
日時: 2016/03/11 21:08
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

〜回想:康太の場合〜


「…………雄二からの預かりもの?」
『そうそう、これなんだが』
『何でもムッツリーニに是非読んで貰いたい資料だとか』
「…………わかった」

Cクラス戦の準備の最中、横溝から何かの資料を受け取る俺。資料か……このタイミングの資料言うことはCクラス戦攻略のための資料だろうな。そう考え。何の警戒も無しにその資料を開くと———

「…………(ブハッ)!?」

———とてつもない、過激な……ちょっと工藤似の女優の写真集が俺の目に写るとともに、俺の鼻から大量の血が流れ出ていってしまった……

『かかったな阿呆が!』
『さあクタバレ異端者ムッツリーニ!』
『今死ね、すぐ死ね、骨すら残さんぞ……!』

俺がその場に倒れ伏せた瞬間、どこから取り出したのか武器を手に怒りの形相で俺に暴行を加える横溝率いるこいつ等……ぐっ……な、何がどうなっている……!?

「…………ゴホッ!?ど、どういう、つもり……だ」

致命傷だけは咄嗟にガードしつつ、暴行を受けながら意味不明な行動をとり始めたこいつ等にそう尋ねる。するとこいつ等は更に顔を歪ませてこう返してくる。

『どういうつもりだと!?ふざけんな!それはこっちが言いたいことだっ!』
『ムッツリーニ、キサマ忘れたとは言わせんぞ』
『普段は写真を提供してくれていたから大目に見ていたが、今回ばかりは唯じゃ済まさん!』

「…………なん……の、こと……だ」

『『『Aクラスの工藤とキサマの関係だゴラァ!!!』』』

「…………っ!」

……こ、こいつ等……嫉妬で暴走してるのか。よりにもよってCクラス戦前だと言うのに……

『聞けば夏休みに海で工藤とキスだの、他にも体育祭ではお弁当を作ってもらうだの……羨ましいんじゃこのムッツリスケベの犯罪者めっ!』
『どうせ汚い脅迫でもして付き合うことになったんだろうが……そんな横暴神が許しても我々FFF団が許さんわ畜生が!』
『キサマと、それから同棲生活なんて始めやがった吉井に坂本だけは生かして帰さん!“Fクラスの変”の革命の元、死ぬがよい異端者!』

まず……い……こいつ等本気だ……この話しぶりから察するに、今頃明久たちも殺られているのだろう……今すぐ離脱せねばヤバイが……あのトラップのせいで(鼻)血を流し過ぎた……力が出ない。回避すら碌に出来な……

『さぁ、これで仕舞いだムッツリーニ。さらばだ』
『まあ、いつものムッツリ商会の商品の提供だけは感謝していたぜ』
『その功績をたたえ、キサマのカメラ等はそのデータを含め大事に我々が使わせてもらうから安心して逝きたまえ』

そう言って止めを刺すべく釘バット金属バット鉄パイプ木刀に金棒など撲殺グッズを手にした面々。クソッ……ここまで……なのか……?く、どう……スマン……

『『『それじゃあ……あばよムッツリーニィイイイイイイイイイ!!!』』』

倒れている俺の周りを取り囲み、まるでスイカ割りでもするかのごとくFFF団がそれぞれの武器を振り上げたその瞬間———

《———させません!》

俺たちのいる空き部屋にそんな声が響き渡ったと同時に、何かの紙袋が放り投げられた。それに俺もそれから連中も一瞬注意が向かれる。


スパッ! バフッ!


『『『んな!?———ごほっごほっ!?』』』

その紙袋はどういうわけか空中でスパッと真っ二つになり、中から真っ白な粉のようなものが飛び出してきた。それは瞬く間に空き教室全体に舞散らかって、思い切り吸い込んだ連中は咳込んでいる。

『な、何だコレ!?け、けむり玉!?煙幕!?』
『クソッ!?ま、前が見えねぇ!?』
『ムッツリーニがやったのか!?や、奴は動けないはずだったのに!?』

連中は俺がやったと思っているようだが……勿論血を流し過ぎて指一本動かせない俺の仕業じゃない。一体誰がこんな……それに舞っているこれ、チョークの……粉……?

《ヒデさん、頼みます!》
「うむ、任せるのじゃ造!———ほれ、しっかりせいムッツリーニよ」

混乱する俺に肩を貸してくれるマスクと水泳用のゴーグルを付けた女生徒。———いいや、この声は……秀吉か!ありがたい……助かった……秀吉に連れ出されそのまま空き部屋をこっそり抜けると召喚獣と成っている造が空き部屋の扉を閉めて時間を稼いでくれる。そうか、造があの煙幕で助けてくれたのか……

《これで少しは時間が稼げるはず……ヒデさん!ヒデさんはこーさんを連れて“例の場所”へ!自分は4階のアキさんとゆーさんを助けに行きます!》
「心得た!待っておるからの!」

そう言って箒に跨り4階へと急ごうとする造。間違いなく……明久たちを助けに行く気だな……ならば……

「…………ま、まて……つく、る……」
《?ど、どうしましたこーさん?》
「…………これ、持って行け……閃光弾……地面に叩きつけて……使うもの……」
《っ!助かります!ありがとうですこーさん!》

さっきは血を流し過ぎて動けずに使えなかった手持ちの閃光弾を造に託す。ま、任せたぞ造……


〜回想終了〜

140時間目 ( No.288 )
日時: 2016/03/11 21:09
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

「———と、こんな感じで一階から近い順にヒデさん、こーさんを助けて、最後にアキさんたちをこーさんから貰った閃光弾を使って助けたってワケなんです」

「「なるほど」」

ちなみにこーさんを助ける時に使ったのは、隣の教室の溜まっていたチョークの粉と紙袋。ヒデさんのアイデアだったのですが、紙袋の中にチョークの粉を入れて空き部屋に放り込んでから空中にあるその紙袋を風の刃で切り裂いてチョークをまき散らしました。簡易的な煙幕のようなものですね。

「さて、大体状況がわかったところで———本題に入るぞ」

そう言って眉間に皺を寄せ、低い声をうならせるゆーさん。ええ、わかっています。時間もありませんし急いで策を練らねばね。

「あんのバカ共……こんなタイミングで裏切りやがって……!バカの癖に統制は一丁前にとれてやがったし……くそっ!」
「……やられたよね。妬みや嫉妬の怒りが最高峰に達してたのにいつもは直情的で考え無しな連中が統率のとれた良い動きしてたね」
「…………どう、やら……ずいぶん、案が……練られてる……」

アキさん・ゆーさん・こーさんの三人を亡き者にしようとしていたFクラスの皆さん。そのこと自体はいつもの———いえ、いつもので説明するのも可笑しな話ではありますが———いつものこと。ですがいつもと違うのはその一連の行動が全て計算されているということ。造反するタイミング・人員の配置・トラップや協力者の排除まで何から何まで計算されているようです。

「先を見越してアキさんたちに協力的な自分やヒデさん、姫路さんと島田さんの動きを封じてきましたからね。相当手強いですよコレは」
「あっ!?それで思い出した!?造、瑞希と美波は無事なの!?」

と、慌てて自分に詰め寄るアキさん。そうですよね、アキさんは二人が心配ですよね。

「無事ではあります……ですが、その。補充試験室である生活指導室に監督役の福原先生と一緒に監禁されています。鍵だけでなくバリケードまで張られている上周辺に見張りもいて正面からの救出は難しいですし……さっき言った通り逃げ道は天井裏くらいしか無い上召喚獣サイズで通るのがやっとですからそこも使えません。ですから救出は当分は無理かと……」
「そんな……!」
「……褒めるつもりはないが、上手いな。戦力にもなり俺らの味方でもある4人を封じ、且つ補充試験室を封じることにより、俺らに点数補充をさせないことが狙いか……」

ゆーさんが苦虫を噛み潰したような表情で分析します。そうですね、“彼女”はよく考えていますね……ホントにやられました……

「雄二、上手いって須川たちの策の事?」
「須川たちの策?いいや違うぞ明久。確かにこの暴動の切っ掛けも首謀者も須川たちだろう。だがな、ハッキリ言って奴らにこんな策を思いつくような知能は無い。考えも無しにこんなバカな事やらかす連中だぞ」

と、そう断言するゆーさん。それは流石に言いすぎだとは思いますが……ゆーさんの言いたいことは伝わってきます。

「つまりはゆーさん、それは———この須川くんたちの言う“Fクラスの変”の作戦の立案者、そして協力者がいるってことですね」
「流石に気づいていたようだな造。その通り、十中八九連中のバックに協力者がいるハズだ。そしてその協力者と言えば———」
「……“彼女”ですかね」
「……“ヤツ”だろうな」

「「「……彼女?……ヤツ?」」」












———Cクラス———

『———で?まあこうなるのは分かっていたけど失敗したってことかしら?』
『も、申し訳ない……で、ですが姫路や島田はちゃんと拘束できています!』
『あと少し!そうあと少しで奴らを殺れたんっスよ!?』
『すぐにでも奴らの首を持ってきますからね!』
『ハァ……ならさっさと次の作戦に移りなさいよ。もう向こうは動き出しているかもしれないのよ?』

『『『了解です“小山さん”!すぐさま行ってきます!』』』

『———やれやれね。先輩や坂本君たちも大変よね、こんなバカ共に暴れられちゃって……』
『代表、まだどんな手を使ったのか不明ですが、やはり危惧していた通り月野の仕業です。補充試験室を何かしらの手段で抜け出して、坂本達を連れてどこかへ逃げ出したとのこと』
『現在坂本・月野・吉井・土屋・木下の5名の行方は不明。探しましょうか?』
『まだ大丈夫よ。どうせあのバカたちが必死になって5人を探し出してくれるでしょう。こっちは体力を温存しておきましょう。それに———例え見つからなくても、“ルール上”そろそろ出ざるを得ないでしょうし』
『わかりました。では全Cクラス生徒にそう命じてきます』
『お願いね……さて。すみません月野先輩。こんな手を使うべきでないのは分かっていますが———今回は何としても勝たなきゃならないんです。勝たせて頂きますね……』