二次創作小説(紙ほか)

146時間目 ( No.303 )
日時: 2016/03/11 21:35
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

造Side


《———もう点数も無いですし、一人だけでも倒せましたからもう十分ですね……ズルっぽいですがすみませんね!解除(キャンセル)っ!》


ボンッ!


「「「ああっ!またぁ!?」」」

「それでは、失礼しますねCクラスの皆さんっ!」

Cクラスとの試召戦争。Fクラスの皆さんの“Fクラスの変”と言う名の造反。この二重苦に反則ギリギリの力技で何とか対処する自分。一度フィールドをかき消せばもう一度フィールドを張られ勝負を挑まれなければ敵前逃亡にならないと言うルールの穴を利用して、倒される前にさっさと全力疾走で撤退します。

「……と言っても、そう何度も使えませんけどね。これ使うってことはその科目を捨てるってことと同じことですし」
「俺の黒金の腕輪が使えれば良いんだがな……奴らもそれだけは阻止しようと俺と明久をフィールド外に押し出してきやがる」
「せめてこのワイヤー付の手錠さえなければ、少しの間なら僕がFFF団相手にしている隙に雄二が点数回復出来るんだけどね……」

そう恨めしそうに繋がれた手錠を睨むアキさんとゆーさんと合流して、再び逃走開始します。こんな具合に足止めされてどうしても逃げきれなければ勝負に応じ、大勢に囲まれどうしようもなくなればフィールドを解除して逃走の繰り返しを行い時間が来るのを待ちます。

『『『死ねやボケェがああああああああ!!!』』』

「それにしても今更だけどさ……クラスメイト40人以上にここまで死ねだの殺すだの言われる人って普通いないんじゃないかなぁ……」
「まあ、良くも悪くもどいつもこいつも欲望に忠実だからな。何せ学園一のバカがいるクラスだぜ。俺らのクラスはよ」
「学園一のバカ……ああ、それって雄二の事か。確かにそうだね」
「謙遜するな明久。キングオブバカとはお前の事だ」

「「〜〜〜〜〜〜っ!!(ゲシゲシッ!!)」」

「お二人とも喧嘩してる暇ありませんよ!?来てます!皆さんすぐそこまで来てますっ!?」

『『『油断したなテメェら!余所見してんじゃ———』』』

「「———これは油断じゃなくて、余裕だがな(だけどね)。オラァ!!」」

『『『———ゴフゥ!?』』』

「お、お二人ともお見事……」
「まあ、ただ暴走している連中相手ならこんなもんだ」
「いくら怖い武器持ってても、唯怒りに任せて振り回してるだけなら簡単に対処できるからねー」

ちなみに言うまでもありませんが、アキさん達はCクラスの皆さんだけでなく徒党を組んだ殺意に満ち溢れるクラスメイトさん達を迎え撃たねばなりません。にも拘らずこれだけ余裕を持って喧嘩しながらも迫りくる暴力・暴行を避けていなして防御して見事に対処しちゃう辺り二人とも流石と言いますか。












……まあ、とは言え———

『アハハァ、吉井クンと坂本クン。見ぃつけたぁー……殺っちゃってイい?いイんだよネー?面倒だから二人まとめて殺っちゃっていいよネー?一人で逝くのは寂しいもんネー』
『■■■■……■■■■■……■■■■、■■■■■■■■』
『殺滅倒酷虐罵蹴殴折刺斬叩———』

「「「っ!?」」」

———とは言え、そんな頼もしいアキさんゆーさんでも対処できない人たちもいるわけでして。ゆらゆらと、まるで幽鬼のような足取りで言葉すら失いかけているクラスメイト(?)が前方から現れます。周りの声が全く聞こえていないようで、完全に生気も正気も失った表情の皆さん。恐らく……いいえ間違いなく彼らの目的はただ一つ、アキさん達を滅することだけ考え行動しているのでしょう。

「明久、造!引き返すぞ!アイツらはマジでヤバイ!」
「言われなくてもわかってるよ!命大事に、だね!」
「こ、こっちですアキさん、ゆーさん!」

アキさんゆーさんを抹殺することしか頭にないため、文字通り周りが見えていないあの集団。それは当然アキさんとゆーさんと一緒にいる自分の存在すら見えていないようで、さっきもお二人の巻き添えを受けて危うく殺されかけた自分。あの集団だけはどうしようもありませんね……

『いたぞ!吉井に坂本だ!』
『急いで囲んでCクラスに位置を伝えろ!その間も攻撃の手は緩めるなよ!』

「月野君、今度こそ倒させてもらうわよ!」
「もうそんなに戦える科目も残っていないハズだ!全員で倒しに行くぞ!」

「「「……っ!こっちももう追いつかれた……!」」」

ちぃ、最悪ですね……前門の虎後門の狼とはまさにこのこと。前方のあの集団とはまともにやり合えないと判断して慌てて引き返すと、今度はC・F連合軍が後方からお出迎え。くっ……挟まれた……!?もうあまり残った科目もありませんのに……

「し、仕方ありません。ゆーさん、回復の暇は無いかもしれませんがフィールドを張るので一応黒金の腕輪の準備お願いします」
「……そうだな。なるべく俺もフィールド外に押し出されないように善処する。頼んだぞ造」
「点数回復の為にも何とか雄二だけでもフィールド内にいてもらわないといけないよね……僕もやれるだけFFF団の足止めしてみるよ」
「よろしくです二人とも、では腕輪を使ってフィールドを———」

……とは言えこのままでは挟み撃ちにされてしまいます。いつものように泣く泣く腕輪を使ってフィールドを形成しようと白金の腕輪を掲げたその時。


pipipipipi!


「「「———っ!(グッドタイミング!時間になったぁっ!)」」」

———最高のタイミングで設定していた三人の腕時計のアラームが鳴り響きます。

「ならば、起動(アウェイクン)!科目、現代国語!」


キィイイイイイイイン! ボンッ!


「コホン、Fクラス坂本雄二!試召戦争再開から一時間経ったことにより、もう一度10分間の代表の位置非公開可能時間を使わせてもらうぞ!」
「ああっ!き、気を付けて!またどこかに隠れる気よ!?」
「ちゃんと坂本君たちがどこに逃げ込むかを見逃さないでね皆!」
《ゆーさん、アキさん!皆さんを撒きましょう!掴まってください!》

息も絶え絶えで割と絶体絶命ではありましたが、ようやく待ちに待った1時間が経過。召喚獣化してそのアラームを止めながら例の如く二人の手を取ると、金の腕輪の能力【飛翔】を使いながら裏庭にあるごみ収集場へと向かうことに。こっちの方が走るより早いですし、それに何より———

『待てや貴様らァ!逃がさんぞォ!』
『逃げられると思うなやクソ共ォ!』
『俺らの嫉妬の深さ、思い知れェ!』

《(は、速いですねFクラスの皆さんは)》
「(追ってきたか。なら明久、連中に造反された恨みも込めて思い切りやれ)」
「(そうだね、先にやったのはFFF団だからね。少しは痛い目見せなきゃね)———と言うわけで、てい」


———ポイッ! カッ!


『『『ハッ!また閃光弾なんだろ!バカの一つ覚えとはこのことだな吉井ィ!そんなもん目を瞑れば効かねぇんだよ、わかったかバカの吉痛っでぇええええええええええ!?』』』

「うんうん、少なくともこんな単純な手に引っかかる君たちはその僕以下ってことなんだねー」

———それに、空を飛んでいればまきびしを踏まずに済みますからね。四方八方から追って来るFクラスの皆さんに、アキさんが2つのこーさんから頂いたものを周囲に投げつけます。一つはこの騒動が始まってからずっとお世話になっている閃光弾。そしてもう一つは……忍者さんが使ったとされるまきびしです。

『い、痛ぇ……!あ、あのクソ共ォ……!』
『あ、足に……!さ、刺さった!なんか刺さったぁ!?』
『や、ヤロォ……これムッツリーニのまきびしか、なんて卑劣な……!』

146時間目 ( No.304 )
日時: 2016/03/11 21:36
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

閃光弾にばかり気を取られ、目を瞑ったまま突進してきたFクラスの皆さんの足にまきびしが容赦なく突き刺さります。足元注意とはこのことですね。これでかなり時間が稼げるはず。痛い思いさせたくはなかったですが、今は心の中で謝りつつ目的の場所に向かいます。

「よし……明久、誰がどこで見ているかわからん。念のためだ、けむり玉用意!」
「合点承知。いくよ!」

Fクラス、Cクラスの皆さんを撒いて、そのまま裏庭に入る自分。念のためけむり玉を一つ使って視界を遮り、ごみ収集場の一番奥に隠してある隠し扉に辿り着くと皆さんが復活してこの場所に来る前に急いでロックを解除。そして———

『ま、また消えた……!?』
『こ、この辺りに逃げ込んだハズだ!死ぬ気で探せっ!』
『見つけ出したらブチコロだからな!』
『……やっぱりおかしい。何で一瞬で姿を隠せるの……?何か特殊な方法を使っているとしか……』
『とにかくこのことを代表に報告しよう。それと、何人かはこの周囲をしばらく調べておいてくれ!』
『わかったわ!』

———かなり際どい所でしたが、何とか第二ラウンドを辛くも耐えきった自分たち。

「「《しんど、かった……》」」

「お、おお!待っておったぞお主ら!無事じゃったか!」
「…………おつ、かれ……」

倒れ込むように隠し部屋に入ると、先に戻っていたヒデさんが自分たちを介抱してくれます。奥にはかなり苦しそうなこーさんも自分たちにそう言ってくれます。

《ヒデさんも、こーさんも……無事で、何よりです……ハァ……ハァ……》
「し、しんどかった……流石に疲れたよちくしょう……」
「こ、これ終わったら……アイツらマジでぶちのめす」
「ホレ、水じゃ。これを飲んで落ち着くと良い。それとちょっとしたのバランス栄養食もあるぞい」
「ありがと……秀吉……」
《か、感謝です……おっと、元に戻りませんとね……解除(キャンセル)……》
「早速で、悪いが……状況整理いくぞ……」

寝そべりつつヒデさんから三度飲料水や軽めのバランス栄養食を受け取って、すぐさま状況整理を始めるゆーさん。インターバルは先ほどと同じように10分間。休む暇がありませんね……

「……はぁ……さ、さっきも言いましたが、C・F両クラスとも動きがかなり良くなってますね……さっきの時間で戦死できたのはわずか5名。それでいて現代社会・生物・地学・古典の4科目がほぼ使用不可になっちゃいましたし……」
「Fクラスのバカ共はともかく、小山の奴随分と俺らを……特に造を分析していやがったな」
「あの着物先輩の後輩だったよね小山さん……そりゃこれくらいはやるよね」
「そういや造の天敵だったなあの先輩は。それは一旦置いておくとして———造、今残っているまともに戦闘できそうな科目は何だ」
「えっと……先ほど4つ使えなくなった科目が出来た上、本来なら自分も姫路さんや島田さんと一緒に前回のD・Eクラス戦で消費した分補充試験を受けるハズでしたので……100点切っていない何とか戦えそうな科目は———」


現代国語:461点 物理:278点 日本史:345点 世界史:351点


「———この4科目ですかね。ああ、一応総合科目も含めると5科目になりますが……総合科目って使っちゃうと使った点数を全教科数で割った点数で万遍なく減るので、今は使えないって言っていいでしょう。結局まともに戦えるのはこの4科目だけでしょうね」
「……なるほどな。造、わかっているとは思うが現国だけはギリギリまで戦闘で使うな」
「は?なんでさ雄二。一番点数が取れている科目でしょ?使わなきゃ勿体ないじゃないか」
「バカかお前。……あっ、すまん。言うまでもなくお前はバカだったな明久。いやすまんすまん」
「ぶっ飛ばずぞ雄二」

こんな状況にも拘わらずまだまだ余裕そうに仲良く喧嘩するアキさんとゆーさん。そんなお二人を見て、ちょっと笑ってしまう自分とヒデさんです。

「お主らは相変わらずじゃな。まあ、そこがお主ららしいがの」
「ふふっ、まあまあアキさん落ち着いて。ゆーさん、わかっています。【飛翔】が使えなくなったら詰み、ですものね」
「その通り。移動・かく乱・緊急避難・その他諸々において造の金の腕輪の能力【飛翔】は命がけの鬼ごっこをやっている俺たちの生命線であり最後の切り札だ。これが使える現代国語を落とされたら実質俺たちの敗北と言っても差支えないだろう」

ゆーさんの言う通りC・Fクラスとの鬼ごっこ状態の試召戦争において、この能力は非常に有効です。さっきもこの【飛翔】のお陰でピンチを脱したわけですし……つまりむやみやたらに戦闘で使って点数を消費して400点切ってしまえば使用不可になってしまうため、戦闘で使わないほうが良いってことですね。

「いつもならいくつか他の科目も400点オーバーしている科目もありましたが、残念ながらこの前のD・Eクラス戦で結構点が削られてるので現代国語しか【飛翔】が使えないんですよね……ですからもし戦闘で現代国語を使う時は……残り教科を使い切ってしまった時になるでしょうね」
「うげっ……ってことは造、まともに戦えるのは後3科目なの!?ね、ねえ造。やっぱり僕も戦った方が良くないかな……?」
「ダメです。最初に説明した通り、万が一アキさんが戦死したらアキさんとその手錠で繋がれているゆーさんまで補習室前まで連れていかれることになります。そして補習室前で動けなくなったゆーさんは逃げることが出来ずにCクラスの皆さんから勝負を挑まれ、Fクラスの皆さんからは袋叩きにされちゃいますよ」
「そうなりゃ俺らの敗北になっちまうからな。悔しいが、戦闘に関しては造に任せるしかねぇんだ。それくらいお前もわかってるだろうが」
「そ、そりゃわかっているけど……このままじゃ造が……」

アキさんのお気持ちは貰っておくとして、とにかく残った3科目をどのように活かすか、どのように戦うべきか。これが勝負の分かれ目になってくるでしょうね。

「……?何じゃ、その話振りじゃとどうにもお主ら苦戦しておるようじゃが何かあったのかの?」
「はい……小山さんの策だと思うのですが、かなり戦術を変えてきてですね。只今絶賛苦戦中です」
「どうも代表の雄二は後に回して、Cクラスの人たちは造を倒すことに専念してるっぽいんだよ」
「Fクラスの連中もかなり統制されているからな。俺や明久には“武闘派”なFクラスの連中を当てさせ、造には“なるべく点の取れていない”盾となるFクラスの連中を当ててCクラスに有利なように攻めてきやがった。勿論黒金の腕輪による点数回復をさせないように造と俺・明久を分断させることが狙いだろうな」
「武闘派……おお、そうじゃ。それで思い出したのじゃが……例の作戦を行いながらワシもムッツリーニ程ではないが情報収集をしておっての」

「「「情報収集を?」」」

と、ヒデさんがそう言って手書きのルーズリーフを自分たちに見せてくれます。そこには自分たちを除いたクラスメイト達の名前が書かれてあり、それぞれ3つのグループにわかれています。

146時間目 ( No.305 )
日時: 2016/03/11 21:36
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

「うむ。どうやらFクラスは現在主に3つのグループになって動いておるようじゃ。一つは須川たち率いる“C・F連合軍”と呼ばれるグループ。お主らの話を聞くに、Cクラスと共に召喚獣を召喚し、造を妨害しあわよくば戦死させようとしておる連中がこやつらじゃろうな」

召喚獣を召喚しCクラスの盾となったり、自分を取り囲んだりと自分が満足に戦えない理由の一つとして動いているグループですね。さっきはこのグループの働きによりほとんどCクラスとまともに戦うことができませんでした。

「次に横溝や福村率いる、雄二の言葉を借りるなら“武闘派軍団”と呼ばれるグループ。こやつらはあらゆる手段で雄二や明久、それにムッツリーニを抹殺すべく動いておるそうじゃ。ちなみに補充試験室でバリケードを作って姫路と島田を監視しておるのもこのグループの一部だそうじゃ」

なるほど、その逞しくも恐ろしい肉体を使ってアキさん・ゆーさんへの攻撃と同時に、自分とアキさんゆーさんを分断させて黒金の腕輪で点数回復をさせないようにしているのも恐らく彼らなのでしょうね。

「そして最後に……こやつらが最も厄介なのじゃが。明久や雄二たちへの憎しみで完全に理性を失っておる狂戦士達(バーサーカーズ)と呼ばれるグループ。まあ正確に言うと、こやつらはグループとは言えぬか。味方の声すら聞こえておらず制御不能のようで本能のみで動いておるが、その分完全にリミッターが外れておっての。とてつもない動きと力で明久たちを抹殺しようとしておる」

言うなれば暴走した清水や清水父じゃ、とのヒデさんの例えにこの場にいる全員が納得してしまいます。実際に目の当たりにしている分その恐ろしさはわかっていましたが……“作戦的な意味でも”本当に厄介ですよねその集団。

「造がワシに託してくれた“本当の策”もこの連中には聞かぬからのう……まだ武器を持った武闘派連中の方が話は出来る分マシじゃな」
「ただでさえいつも話聞かないのに、今日は嫉妬で狂ってそれ以上に聞かないってことか。どうするの雄二?」
「仕方ないから今はそいつらは無視で良いぞ秀吉。お前はそいつらと主犯格以外を予定通りに頼んだ。さて……状況は大体わかったな。当面の厄介な問題は二つか……」
「一つは自分がこれからどうやって戦うか、ですね」

自分の武器の箒の弱点は、点数を消費しなければ攻撃力がゼロなこと・鍔迫り合いすら碌にできない一撃でもまともに喰らったら即大破してしまうほど脆いこと・更に自分自身を巻き込む恐れがあるため近距離不向きであること———つまりは接近戦が弱点です。それを利用してFクラスの皆さんを盾にして自分に接近して戦うCクラスの皆さん。ホント、小山さん良く自分との戦い方を研究してますね。

「それともう一つの問題は……そろそろこの場所の存在に気付かれる可能性があるってところですかね」
「だな、向こうは俺たちが何らかの特殊な方法を使ってどこかに潜んでいるって勘づき始めている頃だろう。俺たちが消えた場所をCクラスの2,3人が調べてやがったのがその証拠だ」

本来はサクヤさんや優姉さんたちを撒くために作ったこの隠し部屋と外の隠し扉。彼女たちにさえ見つからないように偽装しているのでそう簡単には見つけられないハズです。とは言え5か所ある出入り口のうち、今通った出入り口を含め3つはすでに抑えられていると考えておくべきでしょう。ゆーさんの言った通りどうやって自分たちが消えたのか疑問に思い、自分たちが消えた付近に何人かC・Fクラスの生徒さんが待機しているハズ。仮にその場所から出てしまったら、この隠し部屋の存在に気付かれてしまいます。

「つまり……せいぜい後一回しかこの隠し部屋に逃げ込めないってことですね……ここからが正念場ですか」
「ああ、そうなる。さて造……この場所を使えるのが実質ラスト一回となった以上、次の一時間でCクラスの小山にお前が“コレ”を渡すほかないわけだが……いけるか?」

そう言ってゆーさんが懐から手紙を取り出します。……そうですよね、状況的にもこれを次で渡せなければ……

「大丈夫なの造?さっきと同じことされて回復が間に合わなくなって、残りの科目も使い切ったら造は……そうでなくても武器の特性上、その箒が折られちゃったら点数が残っていても丸腰で戦わないといけないんでしょ」
「作戦上、次で小山と交渉に入る必要があるのじゃろう?その時までにCクラスをある程度追い詰めなければならぬとお主が言っておったが……このままではかなり厳しいと思うのじゃが」

心配そうに自分にそのように尋ねる皆さん。確かにハッキリ言ってかなり厳しいこの状況。たった一つだけ、この状況を利用しつつ戦う方法が無くは無いのですが……

「……一つ、やってみたいことがあります。正直今の今まで危険すぎたことと、本当にこれが可能なのかわからなかったので試したことがありませんでしたが……」
「ふむ、何か策があるのじゃな?造よ」

ヒデさんの言葉に、はいと答えるも……正直全く自信がありません。もし上手くいかなければ自分は戦死し、ここまで頑張ってきた作戦も水の泡。こんなぶっつけ本番一か八かの賭けを果たして皆さんが認めてくれるのか……

自分の考えているその策を恐る恐る皆さんに尋ねようとすると———

「おっし、なら任せた造。んじゃこの手紙は託しておくな」
「なーんだ、造にちゃんと策があるのなら問題ないね」
「うむ。ならばワシらも造に応えねばな」
「えっ……?」

———と、何もまだ言っていないにも関わらず、どういうわけか何か納得したようにゆーさんは自分にその手紙を渡してそのまま次に出る予定の出入り口に向かいます。そのゆーさんの後をアキさん達も続いて向かいますが……え、ちょっと……?ど、どうして……?

「あ、あの皆さん!?自分はまだ何も———」
「言うな造。その顔見ればわかるさ。どんなことやる気か知らんが成功するかわからん賭けなんだろ?」
「自信持ちなよ。大丈夫だって、絶対上手くいくって信じてるよ。僕らは負けないさ」
「ここまで来たら前だけを見て進むだけじゃ。お主もワシらも出来ることを全力でやるだけじゃからの」
「っ!」

……信頼、ですかね。三人ともそう笑い合いながら自分に託してくれます。……なんですか、なんなんですか皆さん……全く、そんなことを笑顔で言っちゃうなんて反則ですよ?……ちょっぴり泣いちゃうかと思ったじゃないですか……あ、ヤバい。ホントに涙出てきそう……何故だか昔を、“一年前”を思い出しちゃいそうです……本当にいつも恵まれていますよね自分……温かい友人に。

「そもそも今回のFクラスの連中の騒動の原因は、バカなことにハーレム空間築いてFFF団挑発したバカ久にあるんだぜ造。気にすんな、失敗しても明久のせいにすりゃ良いんだからな」
「まあ例えダメでも霧島さんとイチャイチャしすぎてクラス一つまとめられない代表失格のアホ雄二の首を手土産に、FFF団と交渉すればいいんだよ造。安心すると良いよ!」


ゴスゴスゴスッ!×2


「こやつらもこう言っておるのじゃ。造は造に出来る全力を尽くすだけで良いと思うぞい。そもそもワシは造を信じておるからこそ、造の策に乗ったわけじゃしな」
「…………そろ、そろ時間……造なりに、頑張るといい……そこのバカふたりも……バカやってないで……さっさといってこい」
「……はい、です!」
「お?もう時間か早いな畜生」
「うへぇ……まだ回復しきっていないのにね。まあ仕方ない。それじゃあ造。準備は良い?」

息も絶え絶えであるにも拘らず時間を見ていてくれたこーさんも自分を信じて送り出してくれます。こんな自分を、無条件で信じてくれた皆さんに精一杯の感謝を。信じてくれたからには死ぬ気で結果を出すだけです。

「———はいっ!月野造、準備万端っ!いつでも行けますっ!皆さん、勝ちに行きますよ!」

「「「「応っ!」」」」

ほんとうに、ありがとう皆さん……そう心の中でもう一度呟いて、隠し部屋から飛び出す自分とアキさんゆーさん。さあ、ここからが正念場。このラウンドで上手く戦えるか戦えないかで、勝負は決まると言っていいでしょう。覚悟は決まりました。第三ラウンド開始ですっ!