二次創作小説(紙ほか)
- 148時間目 ( No.308 )
- 日時: 2016/03/11 21:40
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
明久Side
『———あんな可愛い造ちゃんを洗脳して意のままに操りこき使ったばかりか、自分たちの身が危ないとわかった途端見捨てるとはな吉井に坂本、それからこそこそ隠れていやがるムッツリーニ』
『許さん……許さんぞ……姫路や島田、霧島や工藤にも造ちゃんと同じように洗脳したんだろうなぁ……その洗脳術を俺にこっそり教えてから往生せいや』
『貴様らのようなリア充と言う名の異教徒を生かしておいては、この世が腐る。おまけにあんなに造ちゃんを痛めつけるとは神が許しても俺たちが許さん。正義の名のもとここで潔く死ぬんだな貴様ら』
一体全体どの口が正義とか言うんだろうか。そもそも造があれだけ大変な思いをしなきゃならないのは君たちのせいだろうに。そんなことを考えつつ、雄二と二人で造の張ったフィールドの外で武器を手にしたFFF団の連中に取り囲まれる。
「ハッ!冗談じゃない。テメェらに殺されるくらいなら自害する方がマシだな。まあ、テメェら程度にやられるほどやわではないがな」
「君たちこそ覚悟しておきなよ。この試召戦争が終わったらこっちだって容赦しないからね」
『随分と強気だな。そんな貴様らにバッドニュースを教えてやろうか』
「「バッドニュース?」」
そうやけに自信満々にこのFクラスの造反、“Fクラスの変”の首謀者の一人である須川君が僕らにこんなことを言いだす。
『今の今まで所在不明だった秀吉だが……さっき連絡があってな、俺たちFクラスが捕えさせてもらった』
『Aクラス付近をウロウロしていたそうだから、追い詰められてAクラスに助けを求める気だったか?ハッ!詰めが甘いんだよ坂本ォ!』
「「な……!?」」
秀吉が……Aクラス付近で捕まった……!?なら、それは多分———
『秀吉は捕えた。後はどこかで卑劣に隠れているムッツリーニを見つけて始末する。それとお前たちに洗脳されている様子の造ちゃんや姫路たちは、後日俺たちが立派に更生させてやるから、お前たちは後腐れなく死ぬんだな』
『その造ちゃんもどうやら限界のようだな。あそこを見てみろ吉井に坂本』
『今まさにCクラスに倒されかかっているようだな。痛い思いしてしまうことになるし、出来れば投降してくれると良いが』
『心苦しいが抵抗するようであれば、洗脳されている以上一旦戦死させるしかないからな』
『かわいそうに。キサマらに何をされたかしらんが、か弱く可愛い造ちゃんもキサマらなんぞ裏切れば楽になれると言うのに……』
色んな意味で更生が必要なのは君らだろうとまた心の中で考えつつ、奴らが指差す先を見てみると……武器である箒を破壊され、四方八方C・F連合軍に取り囲まれている造の姿が見えてきた。そしてFFF団の言う通り今まさにCクラスの人にやられそうになっているようだ……ああ、確かにこれは造のピンチだ。ピンチだけど———
『あそこまで追い詰められたんだ。そのうち造ちゃんもお前たちを見放して降参するかもな。Fクラスの敗北にはなるが痛い思いするよりマシだ。そうなったら滑稽だな、お前たちは可憐で儚い造ちゃんにさえ見捨てられたと言うことに———』
「———やれやれ、半年近く造と一緒のクラスにいるのに君たちなーんにもわかってないんだね」
『……何だと?』
———あの真剣な、そして迷いなき目つきを見れば大丈夫。きっと大丈夫のハズだ。
「ねえ雄二、須川君たち曰く造ってか弱いだってさ。どう思う?笑っちゃうよね」
「ほー?あの造がか弱いねぇ?そういや可憐で儚いとも聞こえたな。全くこりゃお笑い草だな。どうも俺らが知っている造と須川たちが言う造とは何か違っているようだ。造は……あれで俺らに次いで強いと言うのに」
「だよねー!FFF団程度じゃ束になっても敵わないよねー」
『そりゃそうだ。寧ろ貴様ら以上に強いこともわかっているが?何せ貴様ら何かよりずっと点数も高い上に試召戦争でもかなりの戦闘力を———』
「「そういうことじゃないだな。これが」」
『あ?……ハッ!何を意味不明な事を言っているんだ異端者共が。さてはわけのわからないことを言ってこの場から逃げる気だな。させんぞ吉井に坂本』
いやいやいや。清涼祭の時のあの出来事を知らないようだし、やっぱり須川君たちは造の事を良くわかっていないみたいだね。造ってああ見えて……結構凄いというのに。あの時の出来事を見せてやりたくなるよ。あの造をか弱いとか言っている須川君たちの反応が見てみたいや。
「おまけに裏切る?見放す?それに……降参してFクラスの敗北だと?明久の言う通りお前らは一体今まで造の何を見てきたんだ?」
「優しいしいい子だし、可愛いのは勿論だろうさ。それとツッコんでくれたり空気和ませてくれたりと色々やってくれる。それは君たちもわかっているようだけど———造ってそれだけじゃないでしょ」
『吉井、坂本。お前たちは何が言いたい』
「頭の回転も中々良いし、仲間がピンチになればいつでも助けてくれる。あと翔子のストッパーになってくれることもあるな。だが……それだけじゃない。造の本質はきっと俺や明久と何も変わらないだろうさ」
そう言いながらふと、この無茶な作戦を提案した時の造の言葉を思い出す僕と雄二。
『……皆さんがそんな根性無しだとは思いませんでしたよ……っ!』
『勝たなきゃいけないんでしょう!?勝ちたいんでしょう!?……負けられないんでしょう!?……勝つ気が無いのならさっさと帰ってくださいよっ!自分は一人でも戦いますからね!?』
『今日まで頑張ってきたことを無駄にするんですか!?諦められるんですか!?そうじゃないでしょう……っ!勝ちましょうよ、絶対。ここで立ち止まる自分たちじゃないでしょう?試召戦争、諦めるんですか?諦められるんですか?』
———そう、造の根底にあるものは、その可愛い笑顔の奥にある本質は……きっと僕らと同じものだろう。
『『『貴様ら異端者と造ちゃんの本質が変わらんだと……?一体何のことだ!?』』』
やれやれ、この事すら本当にわかっていないのかな須川君たちは。ああ見えて造は———
「「僕(俺)らと同じく……頑固で負けず嫌いなんだよ、造は」」
造は決して諦めない。最後まで勝つために動くはずだ。策があると言っていたしSOSは無い以上助けはいらないって僕も雄二もわかっている。ならばその造を信じて僕らに出来ることをやるだけだっ!そう言って僕と雄二も造に後れを取らないように、須川君たちに向かって拳を突き出した。
- 148時間目 ( No.309 )
- 日時: 2016/03/11 21:41
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
造Side
武器である箒を破壊され、逃げ場もなくなった自分。アキさんゆーさんもFクラスの皆さんに囲まれて、自分も自分でC・Fクラスの皆さんに取り囲まれているこの状況。どうにもこうにも、傍から見たら絶体絶命ですねこりゃ。
「それじゃあ……これで、ゲームオーバーだっ!」
《……勝負っ!》
そう言ってCクラスの生徒さんの召喚獣が、武器も戦友も退路もない自分に止めをさしにかかります。その武器である研ぎ澄まされた刃は無防備な自分に迫り———彼の宣言通り……
ザンッ!
———そう宣言通り一撃で。その刃は召喚獣の身体を切り裂いて、情け容赦なく戦死させます……
《Fクラス 月野造 物理 144点》
VS
《Cクラス 吉岡創路 物理 DEAD》
「「「…………は?」」」
———まあ、その刃に切り裂かれたのは“襲い掛かってきた彼の召喚獣自身の身体”なんですけどね。よし……よしっ!上手くいったっ……!まずは一人戦死!ゲームオーバーですって?いいえ、窮鼠猫を噛ませて頂きましたよ!ここからがゲームスタートです!
「え、え?な……なん、で俺……戦死して……?え?あ、あの子は倒れてなくて、攻撃したはずの俺が戦死して……え?え?」
「ちょ、ちょっと!?今何があったの!?」
「切りかかったと思ったのに……なんでこっちがやられているのよ!?」
勝利を確信していたのでしょう。油断して状況をよく見ていなかったC・Fクラスの皆さんは混乱の極みに。辺り一帯が騒めき始めます。
「や、ヤロッ……!これでも喰らえっ!」
味方がいつの間にか戦死して、慌てたのでしょう。一人のCクラスの生徒さんが今度こそ自分に止めをさすべく、襲い掛かってきました。さて……この人の召喚獣の“武器”は斧ですか。だったら———
「くっ、そっ!当たれェ!」
《(ボソッ)確かこういう場合は……紙一重で、かわしつつ……》
左右に斧をめいいっぱい、力強くブンブンと振り回す召喚獣をバックステップでギリギリでかわします。その召喚獣を使役している大野くん……でしたっけ?あまりに当たらないことに苛立ち焦れた大野くんは……
「んのヤロォ!いい加減、倒れろっ!」
《(ボソッ)隙を作らせてから……》
思い切り、自分に向けて思い切り召喚獣に斧を振り下ろさせます。その攻撃も最小の動きで避け勢いの付きすぎたその斧は、ザクッと地面に突き刺さり突き刺さったところで———今度はこちらが間合いをすぐに詰め、彼の召喚獣の後ろに回り込んでそして———
ザシュッ!
《Fクラス 月野造 物理 141点》
VS
《Cクラス 大野透 物理 DEAD》
「お、俺が……この俺が戦死……!?な、何をしたんだ!?」
「ま、まただとっ!?くぅ、一体全体どうなっていやがんだっ!?」
———これで二人目も戦死。更にもう一人わけもわからず自分に飛びかかってきました。次の“武器”は……ナイフ、いや小太刀?まあ、どっちでもいいですけどね。
「セイッ!ダアッ!……こんのぉ!」
《(ボソッ)あの人曰く、ナイフ使いと対峙した時は……突きの時一直線上にならないように身体をずらしつつ……》
先ほど同様紙一重で攻撃をかわしつつ隙を伺います。焦って攻撃が単調になったところで思い切って懐に入り込み、突き出されたナイフを持つ手に———正確にはその手首に今度は手刀を打ち込みます。
「ああっ!?ぶ、武器がっ!」
手首にダメージを受けた召喚獣は思わずその武器を手放してしまいます。その瞬間、手放された武器をパッと空中で掴み取り、自分とは逆に無手になり怯んでいる召喚獣を……
《っはっ!》
《Fクラス 月野造 物理 140点》
VS
《Cクラス 野々村充 物理 DEAD》
逆にこちらがスパッとその喉元を切り裂きます。よし、これで三人目っ!
「わ、わかった……!あいつ……“俺たちの召喚獣の武器を、自分の武器として”使っていやがる!?」
流石に三度目ですし、どうやらこのカラクリに気付かれたみたいですね。おまけに元々の召喚獣の武器も、その召喚獣が戦死して姿が消えると同時に消え去って再び自分は無手状態になってしまいます。ですが……これなら、いけるっ!
《……護身術レベルのものですし、本来はあまり実戦向きではありませんが何とか上手くいきましたね。鍛えてくれたサクヤさんに感謝です》
ではここでネタ晴らしのお時間です。最初に倒した長刀を持った吉岡くんの召喚獣をどう倒したのか。召喚獣の手首を捻らせて長刀を手放したところでその長刀を拝借。そのままその長刀を使って切り裂いただけ。二人目の斧を持った大野くんの召喚獣をどう倒したのか。その武器である斧を地面に突き刺さらせた上で、彼の召喚獣に足払いをして体勢を崩させてそのまま突き刺さった斧目がけて倒れさせただけ。
それはとっても簡単な事、武器が無いなら……“相手の武器を利用するまで”ですよ。
「っ……!Fクラス、何をボーっとしてるのよ!?」
「さっさとアンタたちも行きなさい!私たちのサポートをするのがあなたたちの役割でしょ!」
『は、はいっ!今すぐにやりますので!……造ちゃん、そこまでだ!』
『オイタが過ぎるよ造ちゃん!お尻ぺんぺんしちゃうからね!』
今度はFクラスの二人が自分に向かってきます。さて……こっちも上手くいけばいいですか……息をすうっと吐いて気合いを入れ直し、対処に入ります。まずは自分を捕まえようと伸ばしてきた一人の召喚獣の手を避けながら逆に掴み取り———
《逆らわず、勢いを利用して……投げるっ!》
『な、何ィ!?』
《もう一人も……足を引っかけて、後は後ろから軽く押すだけで———》
『ふぃ、フィールド外にっ!?』
突進してきたその勢いを殺さず、流れに逆らわず相手の力を利用して一体はくるんと召喚獣を投げ飛ばしもう一体は押し出して、お互いの点数を消費することなくフィールドの外へ。……よし、これもOK!
《先生、確認ですが……今のは別に敵前逃亡になりませんよね?自分の意思でフィールド外に出たわけではありませんので》
「え、ええ……自分でフィールドの外に出るならともかく、こういう場合はかなりギリギリですがルール的には……一応大丈夫だと思います」
《それは良かった♪では……何の問題もありませんね。さあ、どんどん来なさい!》
「か、数の上ではこっちが上だよ!みんな、月野君に一斉攻撃しよう!」
「わ、わかった!いくぞ!Fクラスの連中も月野をどうにかしろっ!」
『『『い、イエッサー!!!』』』
そう言って飛びかかってきた皆さんを、柳のようにしなやかに演舞にも似た動きで翻弄します。もしもの時の為にサクヤさんに昔から教え込まれた合気に近いこの護身術と武装解除術が、まさかこんな時に役立つなんてね……
「なんなの……一体なんなのよアレ!?相手の武器を奪い取って戦う!?そのくせ味方は戦死させずにフィールド外に飛ばす!?」
「そんなのアリかよ……!?こんなの見たことも聞いたことも無いぞ!?何をどうしたらこんな珍妙な事が出来んだよ!?」
この戦法は恐らく学園トップクラスの召喚技術を持つアキさんや先生方にも出来ないもの。何故ならこれはフィードバックだけでなく……“触覚を持っている”ことと“召喚獣と同じ目線で戦える”と言う特性を活かした戦法だから。そう、相手の召喚獣の重心や関節がどの程度まで動きどのように打ち込めば倒れるのかを“召喚獣として体感できる” ……今の今まで接近戦で足を引っ張っていた自分が悩んで編み出した自分だけの戦法です。
一度ふぅっと深呼吸した後、焦り始めた皆さんの前で一礼をしながらクスリと笑って再び構えを取る自分。
《感謝しますね、皆さん。失敗した時のリスクがあまりに大きかったので、今までは実戦はおろか模擬戦ですら試すことが出来なかったのですが———》
さて。一応戦える状態になったとは言え、この場にはまだCクラスの生徒さんは15人以上。妨害するFクラスの生徒さんもフィールド外に投げ飛ばしてもすぐまた召喚して戻ってくる為、結局自分が不利であることには変わりありません。ですが……
《———お陰で一つの弱点を克服できました。ゆーさんも喜んでくれるでしょうね、これならば後のAクラス戦でも戦術の幅が広がって更に戦えそうですから。そのお礼と言っては何ですが……さあ来なさい。まとめて相手してあげますよっ!》
今度はこっちの番ですね。やられっぱなしでは面白くありませんし……反撃の狼煙、上げさせてもらいましょうか……!