二次創作小説(紙ほか)
- 149時間目 ( No.310 )
- 日時: 2016/03/11 21:44
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
———数十分前:Cクラス———
『———何ですって……!?先輩を倒すどころか、こちらの被害が拡大している!?』
『は、はい!妙な体術を使ってこちらの武器を奪い、攻撃できなくなった私たちの精鋭がどんどん倒されています!現在わかっているだけでも12人以上戦死!今もかなりの数倒されている模様!』
『Fクラスの盾たちはどうしたの!?あいつらを使えば……』
『ダメです代表!あいつらすぐに月野にフィールド外に投げ飛ばされる上、身軽に、そして接近戦が可能になった月野に対しては盾としてはまるで使えませんっ!』
『むしろ盾どころか、わらわらと召喚されているせいで奴らが非常に邪魔でこちらの防御も回避もままならない状況です!』
『やられた……!そう言えば噂だけど聞いたことがあるわ……清涼祭の時に暴漢たちがFクラスの生徒を攫ったとかいう事件があったそうだけど、それを月野先輩や坂本君たちが制圧したって噂……そうか、先輩って元々戦闘力が高い上に自身が召喚獣として動ける……だからそんな器用な真似が……!?』
『だ、代表!また5人の戦死者が出ました!こ、このままでは……』
『……っ!そんな……こんな事って……!』
『あ、あの代表、少しお話が……』
『……えっ?』
造Side
《———よし、次っ!》
「と、止まらない……あの子止まらないわっ!?なんでこうもあっさりこっちがやられちゃうの!?」
「ついさっきまでこっちが追い詰めていたのにどうして……!?」
ちぎっては投げちぎっては投げ———とはいきませんが、接近戦が可能となってからは一時間前とは大きく変わり大体いい感じでCクラスの皆さんを倒せていますね。流石に無傷で戦えるほど甘くはありませんが、それでもダメージを最小に抑えられています。……ここまで上手くいっているのは今現在の主に二つの理由が原因でしょうね。
「えいっ!このぉ!……当たってよっ!?なんで……なんで当たんなのよ!」
「ちょ、ちょっと!?私を巻き添えにしないでよ!?」
「しょ、しょうがないでしょ!?あたしそんなに操作上手くないし……」
一つ、Cクラスの皆さんが召喚獣の扱いに慣れていない事。二年生になりCクラスの皆さんは正式な試召戦争は今回を除くと一学期のAクラス戦の一度だけしかやっていません。どうも皆さん戦い方にぎこちなさを感じます。普段から召喚慣れしている上に自身の身で戦える自分と戦うとなると戦闘経験値の差が出てくるのも仕方のない事でしょう。
「くそっ……これ使いにくいっ!」
「きゃっ!?あ、危ないでしょ!?わたしまで戦死させる気!?ちゃんと使ってよ!?」
「しかたねーだろ!?武器が新しくなっている分慣れてないから戦うの難しいんだよ!?」
二つ、召喚獣の扱いだけでなく武器の扱いにも慣れていない事。学園長の計らいで期末試験後に召喚獣の装備の新調が行われたお陰で、普段から使い慣れていた武器よりもリーチの違いなどが原因で相当戦闘がし辛いようです。自分から見てみると目の前の召喚獣たちは構え・武器の持たせ方・使い方———どれもどこかチグハグで隙だらけ。そんな相手から武装解除をすることは、サクヤさんから幼い頃から護身術を教わってきた自分にとってはそう難しいものではありません。
《そう言う意味では……今回このタイミングで攻めてきてくれたのはラッキーでしたかね。感謝しますよCクラスの皆さん》
「何の話よ!?」
「くそっ……俺ら嘗められてるな……」
多分この二つの条件が無かったら、こうも上手くいかなかったでしょうからね。貴重な緊張感のある良い実戦経験を積むことが出来て感謝ですよ。そう考えながら戦っていると先ほどまでは20人近くいたCクラスの生徒さんも、夢中で戦っていたせいか気が付けばもう2、3人くらいしか残っていませんね。
「も、もう後がないぞ……!こうなりゃせめて一撃でも———」
《借りますね、その武器》
「———ああっ!?」
「「か、河瀬君っ!」」
《Fクラス 月野造 物理 132点》
VS
《Cクラス 河瀬雅人 物理 DEAD》
ダメ押しで一人の召喚獣を打ち倒し、残ったのは二人のCクラスの生徒さんと自分を妨害しているFクラスの皆さんだけ。……よし、そろそろ頃合いでしょうかね。
「よくも!みんなの敵討たせてもらいますっ!」
「だ、駄目だよすみれちゃん!?一人で飛び出しても———」
《飛んで火にいる何とやら……セイッ!》
最後の二人のうちの一人が、ヤケになったまま自身の召喚獣を自分に向かって飛び出させます。その攻撃を避け、後ろに回り込んで腕を極めて武器の日本刀を手放させてから地面に押し倒す自分。……OK、ちょうどいいですし少しこの状況を利用させてもらいましょうか。
「そ、そんなっ!」
「ああ、すみれちゃん!?ま、待ってて今助けるっ!Fクラス、援護して!」
『『『了解っス!今行きま———』』』
《全員動かないでくださいっ!動けば彼女、戦死することになりますよ!》
「「っ……!」」
『『『なっ……!?』』』
取り押さえてから彼女の召喚獣の武器である日本刀を召喚獣の首元に付きつけ、ほんの少しでも力を入れれば戦死になるギリギリのところで日本刀を止めつつ、この場にいる皆さんに向けて大声でそのように警告します。怯ませるように大声で叫んだこともあってか、その警告に皆さん思わずその場で固まってしました。よしよし、良い感じ良い感じです。
《ありがとうございますね、少し話があるので皆さんそのまま動かないように。勿論こちらの召喚獣の召喚者である———えっと、新野さん?ですよね。貴女も動いちゃダメですからね》
「くっ……さっさと戦死させなさいっ!京子ちゃんも私に構わずこの子倒しちゃって!」
《こらこら、Cクラスも戦力的に余裕がなくなっているんですよ。今貴女が戦死したら困るのはCクラスの皆さんの方でしょう、動かない方が賢明ですよ。そこの貴女も変な行動をとらないように》
「わ、わかりました……すみれちゃん戦死させたくないですし……」
「うぅ……ゴメン、京子ちゃん。それに代表……」
……どうでもいいですが、何だかこれ自分が悪役っぽいですね。そ、そりゃあ確かに人質取っているわけですし傍から見れば悪役そのものですが。……ま、まあここは今回の騒動はCクラスに一杯食わされたわけですしお相子ってことで許してもらいましょう。気を取り直して、もう一人残ったCクラスの女生徒さんに話しかけることに。
《さて、そこの貴女———新沼さん?でしたよね。ちょっと取引しませんか?》
「!?な、なんですか……?」
《このままではこちらの新野さんが戦死することになるわけですが……取引しませんか?こちらの要求を呑んでいただけるなら、彼女は解放します。これ以上戦死者を増やして戦力を減らしたくなければ———そこっ!動かないっ!》
『『『ぐっ!?』』』
と、こっそりと近づこうとしていたFクラスの皆さんにもう一度大声で警告します。やれやれ、油断も隙も無いんですから。
《Fクラスの皆さんも動いちゃダメですからね。下手に動いたらこちらの新野さんを戦死させることになっちゃいますから。同盟しているCクラスの生徒さんを見放すのは出来ませんよね》
『『『っ……!な、なんて悪い子なんだ……!?造ちゃん!お父さんはそんな娘に育てた覚えはありませんっ!?』』』
《育てられた覚えもなければ、自分の父は貴方方ではありませんよ!?》
と言いますか、悪い“子”とか“娘”って……この騒動が終わったら、皆さんまとめて説教ですからね……今はそんなことに構っている暇がないので無視しますが。
「と、取引ってどういうことですか?」
《あ、応じてくれます?》
「すみれちゃん解放してくれるなら……で、でも内容次第ですからね!?」
《ありがとうです。では早速その取引の内容なのですが……えっとですね。実はうちの代表からそちらの代表である小山さんに“ある手紙”を渡してほしいと頼まれていまして。そこで取引ですが———》
- 149時間目 ( No.311 )
- 日時: 2016/03/11 21:45
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
———冒頭に戻ってCクラス———
『あ、あの代表、少しお話が……』
『……えっ?あ、貴女討伐部隊の新沼さん!?良かった……無事だったのね』
『いいえ、違うんです……ごめんなさい代表……』
『?違うって、何がかしら?』
『その……すみれちゃん人質に取られちゃって……すみれちゃんを戦死させないことを条件に月野君と取引してここに戻ってきました。勝手なことをしてごめんなさい……』
『取引……?それってどんなことか教えてもらえるかしら?』
『はい、月野君に“条件はですね、これを小山さんに渡してください。うちの代表からの手紙です”と言われて……この手紙を預かったんです』
『ああ、なるほど。つまりはメッセンジャーになったってことね。いいえ大丈夫よ、貴方が無事で何よりだわ。その手紙、見せてもらえるかしら』
『は、はい!これです!どうぞ!』
『ありがと。さて———』
〜メッセージ確認中:しばらくお待ちください〜
『……なるほど、そう来たか』
『代表、その手紙には一体何と?』
『要約するとこんな感じかな。“お互いがかなり消費しているし時間も時間だから、お昼休憩を取らないか”———つまりは一時休戦の申し込むのようね』
『一時休戦……ですか』
『ええ、こうも書いてあるわ。“勿論Fクラスの暴れている連中は一時休戦中も関係なく俺たちを殺すために勝手に動くだろうし、Fクラスは現在補充室を使用不可だ。そう言う意味ではこっちはともかくCクラスにデメリットは無いと思う。もし承諾してくれるなら承諾した時点から一時間の休憩を取らせてほしい。それと、別にこっちが補充できないからと言ってCクラスの点数補充にケチをつけるつもりはない。一時休戦中だろうといつでも自由に補充をやってもらって構わない”———だそうよ』
『……普通に考えれば、こちらに非常に有利な条件ですね。ですが……』
『あの坂本君の事だし、十中八九何かしらの作戦がありそうよね。……でもこれは……うーん』
『どうする?個人的には嫌な予感するし受けたくないんだが』
『で、でも向こうほどじゃないけど私たちも動きっぱなしで休憩も欲しいかなって……』
『そうそう。それに単純に坂本君たちも休みたいんじゃないの?坂本君・吉井君・月野君って朝から今までほとんど休みなしの動きっぱなしでヘロヘロだろうし』
『いやだからこそ奴らが疲れている今、倒しておくべきじゃないのか?これ絶対何かの罠だと思うし』
『代表、どうしますか?』
『……受けましょう、この申し込み。このまま続けても勢いに乗った月野先輩に残りの全員が倒されかねないわ。この一時間はこっちも体力を回復しつつ……次の手を打ちましょう。英語等の科目を中心に先輩の現在点数が低い科目を全員で補充!その科目の先生も立会人として確保しておきなさい!いくら接近戦でも戦えるようになったと言っても、先輩の元々の点数が低い状態で戦えばこちらにも勝機があるわ!休戦が終わり次第、仕掛けるわよ!』
『『『了解です小山代表!』』』
『それと……新沼さん。悪いんだけどこの申し込みを受けるにあたって、一つ条件があると先輩に伝えてきてくれないかな』
『はい、勿論大丈夫です!それで、一体何と伝えればいいんですか?』
『それはね———』
造Side
《———条件は、休戦終了後どの場所からゆーさん……もというちの代表が試召戦争を再開するのかを先に公開しておいてほしい、ですか。了解です。新校舎屋上にて開始すると小山さんに伝えておいてください》
「……わかりました、そのように代表に伝えますね。では今から一時間、休戦と言うことでお願いします。それでその、すみれちゃんを……」
《了解ですよ。新野さんの召喚獣は解放します。新野さん、すみませんでした》
交渉成立ですね。ほっと胸を撫で下ろしながら、周囲を警戒しつつ新野さんを解放します。相手クラスの生徒さんに言う言葉ではありませんが、新野さんお疲れ様でした。
「きょ、京子ちゃんごめんね……私が捕まったせいで……」
「ううん、大丈夫。代表も無事で良かったって言ってたし」
《では、お二人とも申し訳ありませんでしたね。今は休戦と言うことでこの辺で失礼します!》
『『『ああっ!?待つんだ造ちゃんっ!逃がさないよ!』』』
《いえいえ、逃げさせてもらいますよ!……おっと、ついでに解除(キャンセル)!》
メッセンジャーとなってくれた新沼さんと人質にしてしまった新野さんに頭を下げて、取り囲んでいたFクラスを振り切りながら一度フィールドを解除して召喚獣化を解きます。そのままちょこまかと現在進行形でFクラスの皆さんと交戦中のアキさんゆーさんの元まで全力疾走する自分。そして———
「(お待たせしましたお二人とも!交渉、成立しました!)」
「(お疲れ造!んじゃ雄二、今だよ!)」
「(うっし、よくやったな造!逃げる準備を!これが最後だ、ムッツリーニから貰った道具全部使うぞ明久!)」
『『『つ、造ちゃん!?ま、まさか……あの包囲網を突破したの———』』』
ボンッ! カッ!! パァンッ!!!
『『『ぐぁあああああああああああ!?ま、またぁあああああああああ!?』』』
———自分が到着すると同時に三人でアイコンタクト。そのままアキさんとゆーさんはこーさんが託してくれた閃光弾・けむり玉・爆竹etc.を作戦が上手くいった祝砲とでも言いたげに、派手に盛大に惜しみなく使い切ります。これでまた暴走中の皆さんを一時行動不能にして、その間に自分はと言うと、こっそりと皆さんに聞こえないようにあるキーワードを呟きます。
『ち、ちくしょう……またアイツら卑怯な真似をやったな……』
『あ、慌てるな!ゲッホゲッホ!?……い、急いで取り囲め!』
『い、いいか!絶対に通すな!蟻んこ一匹通すんじゃねぇぞ!』
モクモクとけむり玉の煙が充満する中、それでも懸命に自分たちの身体で円を作って取り囲もうとする皆さん。
《アキさん、ゆーさん。煙幕が晴れる前に戻ります、しっかり掴まっていてくださいね》
「うん、よろしく造!それにしても……見てよ二人とも!はははっ!随分頑張るね、FFF団」
「くくくっ!こりゃ滑稽だな!俺らがすでにそこにはいないって言うのに必死でガードしてやがる。そこでしばらくジッとしてやがれってんだ」
そんな皆さんを“上空で”眺めながら悠々と隠し部屋の出入り口へと向かう自分たち。そう、こっそり呟いたのはいつもの「起動(アウェイクン)科目、現代国語」というキーワード。そして持っててよかった金の腕輪の能力【飛翔】の能力で空から逃げた自分たちです。ゆーさんの言っていた通り、現代国語を温存しておいて正解でしたね。
そのまま見つからないようにこっそりと隠し部屋の出入り口———今回は最初に使った体育倉庫にある隠し扉に向かいます。念のため、三人で何度か周囲を伺った後は急いで体育倉庫の中に入り、隠し扉のロックを大急ぎで外してそして———
「「《———終わったぁああああああ!!!》」」
なだれ込むように隠し部屋に入ると、そう三人で魂からの叫び声を上げながらそのままバタンと仰向けに倒れる自分たち。もうしばらくは動けそうにありませんね。身体はぐったりヘロヘロ状態、こりゃ明日は筋肉痛確定でしょうね……ですが……ですが!
「はぁ……はぁ……っしゃあ!よくやったぁ造ぅ!やっぱしちゃんと決めてくれやがったな!これが終わったら何でも好きなモン(明久の金で)食わせてやるぜ!」
「信じてはいたけど……ホント凄いよ造っ!まさかあの状態から逆転してくるなんて!今度皆で美味しいもの(雄二のおごりで)食べに行こう!」
《あ、ありがとうございますっ!皆さんが、一か八かのこんな賭けを信じてくれたお陰ですよっ!》
最も厳しい勝負を乗り切って、無事に生還できたこと・作戦が上手くいった事・一時間と言うインターバルを得たことに三人で仰向けのまま喜び合います。良かった……本当に良かった……!