二次創作小説(紙ほか)
- 153時間目 ( No.319 )
- 日時: 2016/03/11 21:59
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
造Side
自分たち7人対Cクラス+Fクラス連合軍の試召戦争。どちらも死力を尽くして戦った結果は……最後の最後で自分たちの奇策が決まり辛くも自分たちの勝利となりました。
「なんでよ……どうしてなのよ……確かに嫌な予感してたわよ……で、でもここまで準備して、常に最悪のケースを想定した対策をして、おまけに反則ギリギリのFクラスをも使ったのに……それなのになんで……なんで……」
自分とヒデさんに召喚獣を倒されて、ガックリと項垂れて震える声でこれ以上ないくらい悔しそうにそう呟く小山さん。
「むぅ……利用されたとはいえ、今回の件はFFF団の暴走が発端じゃし……Cクラスには悪いことをしたのう。造よ、時間もあることじゃし折角じゃ。何が起きたのくらい説明しても良いのではないかの?」
「んー……それもそうですね。では小山さんさえ良ければゆーさんがこちらに来るまでちょっと説明しましょうか」
「……おねがい、します」
怒涛の展開に情報処理が追いついていない様子の小山さん。確かにヒデさんの言う通りです。この騒ぎの協力者ではあっても、小山さんやCクラスの皆さんがFクラスの内輪揉めに巻き込まれたのも事実。内輪揉めで迷惑をかけたことですしFクラスの一生徒として、少なくともクラス代表である彼女には何が起こったのか説明する義務はあるでしょうからね。
「では……順を追って説明しましょうか、今回の“本当の作戦”の内容をね」
〜造回想中〜
———隠し部屋———
『お主、ワシでは力不足と言いたいのかの?確かにお主や明久たちに比べると戦闘技術も無ければ点も取れておらぬが、ワシだって———』
『す、すみませんヒデさん!?違う、違うんです!説明し忘れてたんです!今の作戦はあくまでも“この場を切り抜ける”為の作戦なんです!』
『……む?』
『例えですね、さっきの自分の作戦通りに事が進んでCクラスに勝てたとしても、今回の“根本的な問題”は一切解決できません。そうでしょう?』
『あー、確かにこのままじゃこれから先もこういう事が度々起こりうるだろうな』
『造が言いたいことって……あのバカ共をどうするかが問題ってことだよね』
その通り、本当に大切なのは目先のCクラス戦ではなく暴走している“Fクラス”を立て直すことです。
『だからこそ今から説明する“本当の作戦”は……ヒデさん。貴方に全てがかかっています』
『…………は?』
『断言しましょう、ヒデさん。今回自分やアキさん、ゆーさんやこーさん以上に作戦の要となるのは———ヒデさん、貴方です』
『……詳しく話を聞かせてもらおうかの』
『はい。説明した通り、表向き自分はアキさんとゆーさんを護りながら、ルールに則りCクラスに姿を見せつつ校内を逃げ回り好機とあらばCクラスと対峙します———が自分の本当の役割は“陽動”です。一応やれるだけCクラスの皆さんを討ち取るつもりですが、自分一人でCクラス全員を討ち取るのはいくらなんでも無茶ですからね』
まあ、当然ですがCクラスとの試召戦争にも勝たなきゃならないので出来るだけ倒していきたいとは思いますが……多分倒せて半分ちょいくらいでしょうね。Cクラス50人全員を敵にまわして全員を倒せるなんて思いあがるつもりはありませんので。
『まあ……造がいくら強いからって一人で50人を倒すのは流石にね』
『一応全員倒す気持ちでいく予定ですけど、自分一人では無理がありますからね。とにかく自分、そしてアキさんゆーさんは目立つように派手に暴れてCクラス及びFクラスの注意を引き、ヒデさんが裏で動きやすいようにするのが狙いというわけですね』
『ふむ、俺らが陽動になるのは分かった。で、その間秀吉にどう動いてもらうつもりだ造?』
『はい、ここからが一番重要なんですが……その間ヒデさんにやってもらいたいことは……』
『やってもらいたいことは、何じゃ?』
『決まっています、今回の騒動の“根本的な問題の解決”です。そのためにはまず最初の一時間で、とある二人にの生徒さんに協力して貰えるようにAクラスに行ってもらいたいんです』
とにかく今は猫の手も借りたいですし、今回のこの策にはAクラスのあのお二人の力が必要不可欠ですからね。承諾してくれるかは……正直ヒデさんの交渉にかかっているんですが……
『Aクラスに……?まあ、確かに協力を求めるならワシらの友人も多いAクラスに頼むのはわかるが……誰に頼めばよいのかの?』
『それは———優姉さんと工藤さんです』
〜造回想終了〜
「まず優先的にやっておきたかったのは、“こーさんの治療をしてくれる役”及び“ヒデさんが試召戦争中自由に動き回れるための影武者役”の確保でした」
「そこで造が目を付けたのが、ワシらに友好的で且つその役割に適しておるAクラスにおる姉上と工藤の存在じゃ。虫の息であったムッツリーニさえ回復出来れば、ムッツリーニも戦線復帰でき、更に“明久と雄二の動きを制限している手錠の開錠”が出来るじゃろう。そしてそれは……他ならぬ工藤が適任なのじゃよ」
最近こーさんの(鼻血の)治療を引き受けて手慣れている彼女ならば、何気に難しい輸血作業も確実に行いこーさんを回復してくれますからね。何よりこーさんがピンチと聞けば必ず助けてくれると踏んでいました。と言うわけで恐らく瀕死だったこーさんも昼休み中に———
———昼休み:隠し部屋———
『見つけたっ!こんなところにいたっ!』
『き、キミは……!』
『お前……!』
『…………っ!』
『待たせてゴメンねこーたくん、それに吉井君に坂本君も。Fクラスの人にここの存在がバレないように移動してたら遅くなっちゃった……とにかくすぐにこーたくんの治療を始めるね!血液パックもこーたくんの荷物もちゃんと持ってきたから安心していいよ!』
『『『工藤(さん)!待ってた(よ)!』』』
「———と、まあこんな感じできっとこーさんは工藤さんに回復してもらっているはずです」
「そしてワシは姉上と制服を交換するだけで“木下優子として”自由に校内を行き来することが出来る。これ以降Cクラスがワシを討ち取ろと模索したりFFF団に追われることなく密かに計画を実行できると言うわけじゃ」
「現にヒデさんは今の今まで“木下優子”として校内を堂々と行ったり来たりとしていたのに、誰も入れ替わっているなんて気づいていませんでしたからねー」
「ま、まさか……!じゃ、じゃあまさかFクラスの連中が捕まえたって言ってたのは———」
「うむ、“ワシの振りをした姉上”じゃろうな。姉上は見事にワシの身代わりになってくれたと言うわけじゃ」
双子ならではのシンプル且つ強力な一手。実際に一度クラス交換をしてほとんどの人にバレることが無かったヒデさんと優姉さんならば、制服を交換するだけで入れ替わっていることに誰も気づきません。ちなみに優姉さんも今頃無事に解放されている事でしょう。……後でちゃんとお礼を言っておかないといけませんね。
「で、でも待ってください!それはありえないわ!あの二人は先輩たちと仲が良いのはわかります、ですがいくら仲が良いからってそう簡単に手を貸してくれるなんて思えません!特に木下姉は先輩たちの言った通りなら、木下君の身代わりになるために授業すら抜け出して先輩たちの作戦に手を貸したことになります!仮にも優等生な彼女がそんな事するなんて思えないわ!?」
「うむ、確かにお主の言う通りじゃよ。ワシも最初に交渉に行ったときは随分と渋られてのう。『助けたいのは山々だけど、試召戦争に関して一方のクラスに手を貸すのはフェアじゃない』と言っておっての」
「だったらどうして!?」
「それはですね、優姉さんたちには本当に悪いと思っていますが……もうこれしかないと判断して“切り札”を切らせてもらったんですよ」
〜秀吉回想中〜
———Aクラス———
コンコンコン
『はーい?どちらさま———んん?あ、あれ?キミもしかして……?』
『突然の訪問済まぬ。じゃが緊急事態じゃ。悪いがこの教室のとある二人に話をさせてほしいのじゃが』
『あらら、やっぱり木下君だ。どしたの?変装なんかして。それに今確かCクラスとの試召戦争中じゃなかったっけ?まあいいか、入っていいよ。———代表、それに優子。木下君が来たんだけどー』
『……木下が?』
『ん?秀吉じゃないの。どうしたのアンタ』
〜秀吉説明&交渉中〜
- 153時間目 ( No.320 )
- 日時: 2016/03/11 22:00
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
あまりのんびりもしていられん。現段階のC・Fクラスの試召戦争で何が起こっているのかを掻い摘んで説明し、造の要求通り工藤と姉上に交渉を持ちかけるワシ。
『……雄二が、それに他の皆も大変……!?』
『こーたくんが……(鼻血の出し過ぎで)瀕死の状態!?』
『吉井君が今にも殺されかかっているだって!?』
『造くんたちが追い回されてるって……そう、そんなことが……やけに騒がしいと思ったら……』
ワシの掻い摘んだ説明でもすぐに理解する姉上たち。流石はAクラスじゃな、頭の回転が速くて助かるのう。……それにしても呼んではおらぬのに、何故か久保まで話を聞いておることをツッコむべきなのかは判断に迷うのう。ま、まあそれほど明久が心配なのじゃろう。あまり深くはツッコむまいて。
『それで……どうじゃ姉上に工藤よ。手を貸してはくれぬじゃろうか?』
『勿論!今すぐにでもボクらが———』
『———駄目よ秀吉、それに愛子。これだけは駄目、いくら可愛い弟たちの頼み事でも試召戦争関連で他クラスに手を貸すのは良くない事だもの』
と、普段から造たち関係で暴走しておるとは思えぬほど冷静に拒否する姉上。むぅ、やはり一筋縄ではいかぬか……
『優子!そう言わずに助けてあげようよ!今回は事情が事情だし……それにこーたくんたち本当にピンチなんだよ!?』
『……優子、私からもお願い。雄二たち助けてあげて。先生にはちゃんと説明するから』
『木下さん、僕からもお願いするよ。この試召戦争かなり特殊なケースのようだ。ただの内部抗争ならともかく吉井君たちの命に関わるレベルの暴走なんだろう?僕たちも黙っておくわけにはいかないと思うのだが』
工藤・霧島・久保の三人も手伝う様に頼むが、姉上は断固として断ると言った姿勢を崩さぬように首を横に振る。
『愛子に代表、それに久保君まで……あのね、気持ちはわかるわ。でもやっぱり駄目なものは駄目でしょう。そもそも今は一応自習時間とはいえ授業中なのよ?……アタシだってホントは造くんも秀吉も、それに他の皆も助けてあげたいのよ……悔しいけどわかってよ……』
『『『そんな……』』』
……悔しいが確かに姉上の言う通りじゃ。この作戦上、姉上には授業を抜け出して動いてもらわねばならなくなる。そうでなくともワシの制服を着てFFF団に捕まってもらわねばならぬとなると……うむ、確かに嫌じゃのう。
……仕方ない。出し惜しみは無しじゃ、ここは雄二たちに言われておった“切り札”を使う他無いようじゃな。
『……やはり、そうなるのじゃな。仕方ない……ならば“切り札”を使わせてもらうぞい。(ボソッ)姉上よ、お主ワシと“クラス交換”をした時の約束を覚えておるか?お主こう言っておったぞ———“代わりにもしアンタが今後何かしら困ったことがあれば出来る範囲で手助けしてあげるってば”との』(バカな自分は召喚獣?〜夏休み編〜番外編:アタシと見栄と弟たち〜クラス交換パニック〜前編参照)
『お……なるほどそう来たのね』
『それと工藤は……海でムッツリーニに助けられたことがあったじゃろう?』(バカな自分は召喚獣?〜夏休み編〜番外編:夏と海とお祭りと〜水着に浴衣の夏の想い出〜その④参照)
『んー?ああ、うん。そだねー』
この二人には以前ワシやムッツリーニに借りがあったからの。正直こういうことを使うなんぞ男らしくないのじゃが、今はそんなことも言っておれぬ。明久たちを救うため、造の言う通り必ず勝つため、今回ばかりは卑怯にも卑劣にもなろう。
『……こういうことを言うと卑怯と言われるかもしれぬが、緊急事態でなりふり構っておれぬ。二人ともその時の“借り”を返すと思って協力してほしいのじゃ。この提案を受け入れてくれるならワシらはAクラスと今後試召戦争を行う際、これをネタにAクラスを脅すような真似はせぬ。……どうじゃ?』
『乗った!ボクは断然OKだよ!うんうん、仕方ないよねー!借りは返さなきゃいけないよねー!ねえ優子!』
『…………はぁ、わかった。わかったわよ……直接Cクラスを試召戦争でどうこうするのは無し、あくまでアタシたちは土屋君とアンタのサポートをするだけ。これでいいわね』
その切り札を前に元々乗り気だった工藤は勿論の事、姉上も渋々協力してくれると宣言。ふぅ……助かったのう。これが済んだら改めて礼をするとしようかの。
『うむ、助かるぞい。……すまぬな工藤に姉上よ』
『いやいや、ボクこそこーたくんがピンチだって教えてくれて助かってるよ』
『ま、アタシも本音を言うとホッとしてるわ。これでアンタら造くんたちを助ける口実が出来たわけだからね』
『……木下、なんなら私も』
『僕も何か手伝わせてくれ木下君』
姉上たちに続いて雄二が心配であろう霧島と、明久(と造)が心配であろう久保も協力させてほしいと言って来る。うーむ……それ自体は嬉しい事なのじゃが……
『いや、気持ちはありがたいが霧島と久保は駄目じゃ。学年主席と次席が動いてはCクラスに勘付かれる恐れがあるから二人は駄目だと造や雄二に釘を刺されておってのう』
『……確かに、そうかも』
『そうか……すまない協力できなくて』
そう言うと残念そうに引き下がるこの二人。む、むう……こうもがっかりされるとこちらが申し訳なくなるのう……何かこの二人にも手伝えることがあれば———おお、そうじゃそうじゃ。
『……否、一つあるかの。二人にはCクラスがここに来ても何もなかったと演技してほしいのじゃ。例え色々聞かれても平静を装って何もなかったと言ってほしい。頼めるかの?』
『……わかった、そうする。木下……雄二をお願い』
『木下君、頼んだよ。吉井君たちを守ってくれ』
『うむ任せよ。すまぬの、本来なら関わりないお主らまでワシらのクラスのいざこざに巻き込んでしもうて……さて、姉上に工藤よ。それで作戦の詳しい内容説明に入りたいのじゃが———』
〜秀吉回想終了〜
- 153時間目 ( No.321 )
- 日時: 2016/03/11 22:00
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
「———と、まあそんな具合に最初の一時間は造や明久たちが表でお主らCクラスと戦っている間に、裏ではワシがAクラスで味方を得ることとC・Fクラスの状況分析をやることを造に頼まれたと言うわけじゃな」
「工藤さんは昼休みにこーさんの回復を。そして優姉さんはヒデさんと制服を入れ替えて影武者としてFクラスにワザと捕まってもらい、以後ヒデさんが校内を自由に動き回れる様にしてもらったんです」
「そう言う事が……!で、ですがそれでもたった二人味方に引き入れたくらいではどうにもならないハズでしょう!?そう、例えば……姫路さんをどうやって補充試験室から解放したと言うんですか!?」
確かに優姉さんたち二人を味方に引き入れたところで状況がそう好転するわけではありません。そもそも優姉さんたちを下手にCクラス戦に関わらせた場合ルール違反になってしまう恐れもあるでしょうし。
「もしかしてAクラスに補充試験室を監視していたFクラス連中を戦死させでもした?いいえ、それでは試召戦争のルール上、試召戦争にFクラスに手を出したとして木下姉たちが逆に補習室送りになります!どう考えても姫路さんを解放するなんてことできなかったはずでしょう!?一体先輩たちは何をしたと言うんですか!?」
「小山さんの疑問は尤もです。鍵をかけられ、バリケードまで作られた上にFクラスの監視までされている補充室。その中にいる姫路さん達を助けるにはFクラスの監視をどうにかしなければなりません」
「じゃが例えばお主の言う通り、姉上たちが実力行使に出た場合Cクラスとの試召戦争中なのにFクラスの戦力に手を出したと言うことでルールにより姉上が補習室送りになるじゃろうな」
「だったらどうやって姫路さんを屋上まで!?も、もしや未だにわからないことに一つの最初に先輩が使ったルートでも使ったという……」
「いや、それじゃないのう。なーに、ネタがわかれば単純じゃぞ小山。それはの———」
ですから……その交渉が終わった次の一時間からがヒデさんの“本当の戦い”の幕開けでした。
———新校舎屋上———
明久Side
Cクラスの主戦力を瑞希が足止めしてから数分後、このCクラスとの試召戦争の決着が付いたと先生が教えに来てくれた。緊張しながらもどうなったかを聞いた僕らの耳に届いたのは———
「Cクラス対Fクラスの試召戦争は……Cクラス代表小山さんの召喚獣の戦死により、Fクラスの勝利となりました」
———僕らFクラスの大逆転勝利と言う内容。めちゃくちゃ色々あっただけに、思わずこの場にいるいつものメンバー全員でガッツポーズをする。良かった、ホントに良かった……ナイスだよ造に秀吉!
「いよっしゃ!よくやった造に秀吉っ!無事決めてくれたようで何よりだぜ!」
「…………あの二人は今日のMVP」
「やったね瑞希!僕らの勝利だよ!」
「はいっ!明久君たちもお疲れ様でした!」
いやホント一時はどうなることかと思ったけど、何とか造たちが上手い事やってくれたようだ。ムッツリーニの言う通り、今日のMVPは造と秀吉だろう。後で2人には雄二のポケットマネーで美味しいものを奢ってあげなきゃね。
「……そんな、私たちの……まけ……?」
「……こんなことになるなら、戦死覚悟で姫路さんに突っ込むべきだった……補習室送りにビビって何やってんだよ俺は……」
「……代表すみません、守れなくて……折角あんなに頑張ってくれてたのに……」
勝ったクラスがあるなら、当然負けたクラスもある。その先生の決着の内容を聞きガックリと肩を落としその場に座り込んで呆けるCクラスの人たち。造や雄二たち曰くCクラスは今日の今日まで僕らと戦うために念入りに計画を練っていただろうとのこと。各々の動き方・僕らへの対応方法は勿論、色々最低な理由で暴走するFFF団と手を組むと言う屈辱を甘んじて受けた彼ら。それでもなお勝てなかったんだ……余計なお世話だとは思うけど、少しだけ同情してしまう。
「Cクラスは残念だったろうが……悪いが俺らも負けられないんでね。さて———これでCクラスとの同盟も意味をなさなくなっちまったようだが……どうするんだ?須川とそこの二人」
とは言え今はCクラスに気を取られている暇は無いか。雄二のその言葉と共に、僕もムッツリーニも瑞希も“彼女”もとある3人をじぃっと睨みつける。試召戦争は僕らの勝ちだけど、まだ僕らにはやるべきことが残っているからね。そうだよね……須川君横溝君福村君?さっきも言ったけど……覚悟はできているんだよね、君たちは。
『ぐっ……な、嘗めるな邪教徒共が!貴様らは未だこの逃げ場のない屋上にいることを忘れるんじゃねーぞ!』
『その通り、例えCクラスが倒されようと関係ない!俺たちは自由に動けるんだからな異端者共!』
『さあ行くぞFFF団!こんなふざけた坂本や吉井、ムッツリーニをブチのめし“Fクラスの変”を果たそう!』
形勢が段々と僕らに有利になってきたことに、流石に危機感を覚え始めたのだろう。大慌てで屋上の外で待機しているであろうFクラスの皆を呼ぶ須川君たち。まあそれもそうか。何せ同盟していたCクラスは造と秀吉の手によって倒され、ムッツリーニは須川君たちが知らない間に工藤さんのお陰で回復している。更にそのムッツリーニに僕と雄二に取り付けられた動きを制限していた手錠も開錠されているのだから。つい先ほどまでの余裕そうな表情から一変して少し怯えのも無理はない。ならさっきまでの仕返しって言うのも何だけど……更に怯えてもらうとしようかな。
『……ああ、そうだな。その通りだ』
『マジでふざけた奴らだよお前らは』
『全く死ぬほど頭にくる野郎共だぜ』
須川君たちのそんな言葉に同意しつつ、怒気の籠った声でFクラスの皆が扉の向こうでこう続ける。
『『『———異端者名……須川に横溝に福村ァ……!』』』
『『『…………え?』』』
須川君たちの期待とは裏腹に、屋上の扉の向こうで須川君たちに恨み節のFクラスの皆。Fクラスの思わぬ発言に、完全に固まってしまう須川君たち。よしよし、流石秀吉。“こっちも”どうやら上手くやってくれたようだね。
『な、何を言っているんだ同士諸君……?わ、我々の敵は坂本や吉井———』
『ザッケンナゴラァ!なーにが敵は坂本や吉井だよ須川ァ!』
『お、おいおいおい?急にどうしたんだお前たち……?』
『どうしただぁ?それはこっちの台詞だ横溝!テメェ最初から俺たちを騙しやがって……この裏切り者共!』
『落ち着きたまえ!何があったのか知らんがこの異端者共を抹殺するチャンスなんだぞ!』
『異端者はお前らだろが福村!散々造ちゃん追い回して虐めやがったことや姫路さんや島田を監禁したこと、あと一応坂本たちをどつき回したこと……この行いは神が許しても俺らが許さんっ!』
おいちょい待ち。造を追い回したのも瑞希たちを監禁したのも、僕らをどつき回したのも君ら大半がやったんだけど———というツッコミはここでは敢えてしないことにする。気が立っている彼らを下手に刺激しない方が良さげだし、こういうことは割と今更感があるからね。
「よし、お前たちここはもういい。とりあえず鉄人たちにキレられる前に一階のバリケードを取っ払え。それとすぐに監禁していた木下姉も解放するんだ。ちゃんと謝っておくんだぞ」
『おうよ!任せておきな坂本!』
「後は教室で待機しておけ、戻り次第時間が許す限り補充試験を行う予定だ。少しでも点を取れるように復習でもしておけ。いいな?」
『了解だ、じゃあまた後でな。———よし、お前たち急いで戻るぞ!』
『『『応っ!!!』』』
今までと比べると明らかに様子が違うFFF団。彼らを率いていた須川君たちに呪詛を吐きながら、あろうことかさっきまで殺そうと追い立てていた雄二の指示を的確に聞き従う。いやぁ本当に秀吉はよくやってくれたよね。そして扉越しにFFF団が階段を降りてそれぞれ教室に戻ったり一階に行ったり木下さんを解放しに行った音を聞きながら僕らは思う。———本当にFFF団は単純だな、と。
『『『ど、どういうことだこれは……!?』』』