二次創作小説(紙ほか)
- 155時間目 ( No.324 )
- 日時: 2016/03/11 22:06
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
明久Side
「よし、お前たちここはもういい。とりあえず鉄人たちにキレられる前に一階のバリケードを取っ払え。それとすぐに監禁していた木下姉も解放するんだ。ちゃんと謝っておくんだぞ」
『おうよ!任せておきな坂本!』
「後は教室で待機しておけ、戻り次第時間が許す限り補充試験を行う予定だ。少しでも点を取れるように復習でもしてろ。いいな?」
『了解だ、じゃあまた後でな。———よし、お前たち急いで戻るぞ!』
『『『応っ!!!』』』
今までと比べると明らかに様子が違うFFF団。彼らを率いていた須川君たちに呪詛を吐きながら、あろうことかさっきまで殺そうと追い立てていた雄二の指示を的確に聞き従う。いやぁ本当に秀吉はよくやってくれたよね。そして扉越しにFFF団が階段を降りてそれぞれ教室に戻ったり一階に行ったり木下さんを解放しに行った音を聞きながら僕らは思う。———本当にFFF団は単純だな、と。
『『『ど、どういうことだこれは……!?』』』
『な、何故だ!?何故坂本なんかの言うことを聞く!?一体どうしたと言うのだFFF団っ!』
頼りにしていたFFF団があっさりと寝返って、自信満々だった須川君たちは一変大混乱に。今日は散々豪い目に遭わされたんだし、ちょっぴりすっきりするね。んじゃ、折角だしアレを聞かせてあげようかな。
「まあまあ須川君たち。多分とある会話を聞いてみればその理由もすぐにわかると思うよ」
「だな、おいムッツリーニ。このバカ3人に聞かせてやりな」
「…………了解、再生」
〜例のボイスレコーダー再生中〜
『『『何だコレ!?』』』
秀吉渾身の力作であるこのボイスレコーダーに入った会話を須川君たちにも聞かせてあげることに。さっき以上に慄いている様子が見て取れる。それにしてもホント秀吉は凄いよね。時間がないから一発録りだったのに一人六役を見事に演じてた上、話聞かないFFF団を懐柔してくれたわけだし。
『いつだ、いつの会話だこれは!?』
『と言うかいつこんなものを……!?と、盗聴かムッツリーニ!?』
『ま、待て落ち着け福村に横溝!?そもそもこんな会話心当たりなんて———』
……今更だけど、色々殺されかけたとは言えこんなねつ造会話を使うのは流石に須川君たちに悪い気がしなくもない。こんなんでも須川君たちも僕らFクラスの貴重な戦力なわけだし、後でちゃんとこの誤解を解いて———
『———心当たりなんて……な、無くもないが……』
『『う、うむ……こういう事もあったような……無かったような……』』
「「「(やっぱ心当たりあるんかい……)」」」
———前言撤回、解く必要なさそうだ。どうやら誤解でも何でも無いらしい。一応疑われる可能性もあったからムッツリーニが予め仕入れていた情報を元に秀吉が作った会話だから、そりゃこれも心当たりあるのだろうけどさ。
『『『だがこれは明らかにおかしい!この会話の中の彼女たち———否、これまで告白してきた女の子から……OKを貰ったことなど一度たりとも無いんだぞ!?』』』
「それ自分で言ってて悲しくならない!?」
彼らの心からのモテたいという想いが伝わる叫びが屋上に木霊する。そしてその叫びに思わずツッコミを入れてしまう僕。血の涙流してまで、学園全体に聞こえそうなくらい大声で言わなくてもいいんじゃ……
「ま、モテねぇからこそこんなバカみたいな反乱起こしやがったわけだしな。さてと、んじゃ俺はそろそろ造と秀吉、それから小山と少し話してからFクラスに戻るな。今すぐにでもあのバカ共に補充試験の指示しなきゃならねぇ」
「ん、了解。それじゃあそっちは任せた。でもってこの場は任せてよ雄二」
「…………俺らも後から行く」
「坂本君、そっちはよろしくお願いしますね」
「おうよ、任された。お前らご苦労さんだったな」
今日の反乱のお陰で予定とか完全に狂わされたわけだし、戦力もかなり削れているからね。Aクラス戦を控えていることだし雄二が早速行動開始しようとしている。どうでもいいけどコイツ普段はクラス代表の仕事は造とかに任せているくらいダラけることの達人の癖に、こういう大事な場面ではキッチリ動くんだよね……雄二は普段からもっとしっかりすべきだと思うんだけど。
『ま、待てや貴様ら!』
『か、勝手に終わらせんなバカ共!』
「ん?」
と、屋上から出ようとした雄二の前に須川君たちが立ちはだかる。わかっちゃいたけどまったくしつこいね。
「なんだ一体。俺は忙しいから構うな、明久たちに遊んでもらえや須川に横溝に福村」
『ちょ、調子に乗るな異端者共!いくらFFF団を卑劣な手段で懐柔しようとも、こちらには奥の手が残っている!』
「……奥の手?へぇ、それって何かな須川君」
奥の手ねぇ?それはまさかとは思うけど……“アレ”じゃないよね?
『聞いて驚くなよバカめ!そんな小細工など効かない、いやと言うより聞く耳持たない連中がいるんだよぉ!』
「ほー?小細工が効かないねぇ?」
『その通り!貴様らを屠ることだけしか考えられなくなったリミッター解除している貴様ら以上の戦闘力を持つ狂戦士達(バーサーカーズ)がまだ俺らには付いているんだ!』
「へー?狂戦士達(バーサーカーズ)ねぇ?」
『よ、呼ぶからな!今ここに呼ぶからな!余裕ぶっこいてるその顔を歪ませてやる!おぉい皆!異端者吉井たちはここにいるぞぉ!』
そう大声で屋上から叫ぶ須川君たち。ああ、やっぱり奥の手ってそれなんだ……先に言っておくね、ご愁傷さま。そして———そろそろキミの出番だね、お待たせ。
「———へぇ?アキたち以上の戦闘力ですって?それはとても怖いわね」
『『『……えっ?』』』
彼らがその連中を呼ぶと同時に、屋上にいた生徒の一人が瑞希やムッツリーニと同じように秀吉にしてもらっていた変装を解き現れる———さあ、今度はキミに任せるよ“美波”!
『『『……なっ!?き、キサマ……島田!?』』』
「ハロハロー須川に福村、横溝も。さっきから黙って話聞いてたんだけどアンタら随分と元気そうでなによりね。これくらい元気なら———ウチが全力で討ちにいっても死なないわよね……?」
『『『ヒィ!?』』』
これで僕ら全員が揃ったことになる。造や秀吉の活躍で、途中本気で危なかったりもしたけれど全員無事だ。“Fクラスの変”は失敗だね須川君たち。そしてもっと言うなら……あろうことかこの美波をここまで怒らせちゃったことは大失敗だね君たち。
「アンタら随分イロイロやってくれたわね。面白いわ……ウチらのことを散々コケにしてくれちゃってホント面白いわ……今日は無事に帰れるなんて思わない事ね……!」
『お、おい狂戦士達(バーサーカーズ)!早く来るんだ狂戦士達(バーサーカーズ)!吉井たちはここにいるぞぉ!』
『今すぐ来てくれぇ!?し、島田が!島田がヤバイ!?何か黒いオーラ漏れてる……全身から殺気が迸ってるぅ!』
『し、島田ァ!おおお、お前でも流石に狂戦士達(バーサーカーズ)には敵わんぞ!今すぐその殺気と闘気を収めてくれるなら……ゆ、許してやらんこともないぞ!?』
遠目だととっても素敵で可愛い笑顔だけど、よく見れば瞳に光が灯っていないご様子の美波。う、うーん……久しぶりに本気で怒った美波を見たけどすごい迫力だ……そんな彼女の殺気に当てられて、完全に及び腰になってビビっている口だけ強気の須川君たち。どうやら狂戦士達(バーサーカーズ)をここに呼んで美波の相手をしてもらう魂胆のようだ。
「ふーん?それってウチでも敵わない程強い奴らってことかしら?」
『そ、その通り!島田ですら敵わん!だ、だから大人しくしておくんだな!』
「そうなんだ。さっきも言ったけどそれは怖いわね。ところで———
———それってまさかとは思うけど、ウチですら敵わない奴らって……コイツらじゃないわよね?」
『『『……え?』』』
そう言って美波は屋上の隅に隠してあったブルーシートをバッ!っと勢いよく捲る。その中から出てきたものは……
『うぐぅ……か、関節がイデェ……』
『お、俺たちは一体何を……?何でここに……?さっきまで何してたんだ……?』
『し、島田様……ホント反省しましたので……そろそろ許していたたたたたた!?』
……須川君たちが頼りにしていたであろう、Fクラスの狂戦士達(バーサーカーズ)と呼ばれた者たちの成れの果て。ご丁寧に全員が関節を外されロープで縛られているとい見るに堪えない姿になっている辺り流石は美波とムッツリーニだと言わざるを得ない。その痛みのお陰で僕らを追っていた時はあれだけ錯乱していたにもかかわらずちゃんと(?)正気に戻っているようだ。
『『『え……えっ!?ええっ!?』』』
- 155時間目 ( No.325 )
- 日時: 2016/03/11 22:07
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
「で?ウチですら敵わない連中はまだかしら?まさかこんな話にならない連中じゃないわよねぇ?」
『そ、その……島田さん、いいえ島田様。まさかこれをやったのは……』
「ウチと土屋よ。まあ……土屋はまだ体力が回復しきっていなかったようだから———“こいつらの大部分”は“ウチがまとめて”やったんだけどね」
〜美波回想中〜
『ですからある程度はヒデさんが何とかしてくださったハズですから、残りの問題は一つだけだと思います』
『残りの問題……それっていわゆる“狂戦士達(バーサーカーズ)”と呼ばれるFクラスの皆さんをどうするのか、ですか?』
『はいです。困りましたよね……恐らく仮にこーさんが回復して、アキさん達が繋がれている手錠を開錠して3人で戦ったとしても……その方々を止めるのは難しいだろうとアキさん達が仰っていまして』
『こ、困りましたね……明久君たちもとても強いですけど、それ以上って……』
『……ならOK。いけるわね』
『『……えっ?』』
『し、島田さん……?あ、あの……』
『月野、今までよく頑張ってくれたわね。後は作戦再開までしばらく休んでいなさい。瑞希、アンタは月野の作戦通りここから出たら指定の場所に行っておいて。残りの問題は———ウチに任せなさい』
———黙って月野の話を聞いてみたけど……うん、それなら大丈夫そうね。そう月野に言って闘気を全身に纏わせながら立ち上がるウチ。
『み、美波ちゃん?美波ちゃんはどうするんですか……?』
『……ふ、ふふふっ……ウチ?ウチはね———バカげた暴走をしているそのバカ達の暴走を止めてやることにするわ』
『『ええっ!?』』
そのウチの発言に目を丸くして慌てふためく瑞希と月野。ん?どうしたのよ二人とも?
『何を慌ててるのよ。アキや土屋たちが敵わないレベルの手におえず暴走している連中を止めなきゃいけないんでしょ?つまりはアレよ、そのアキたち以上に戦える人が止めれば済む話じゃないの。だったらウチの出番ってわけね、そんな奴ら一捻りよ』
『だ、駄目ですよ!?狂戦士達(バーサーカーズ)と呼ばれる方々はホントに危険な方々何ですよ!?自分何度か彼らと接触したのですが、一度危うく殺されかけたんですよ!?』
『み、美波ちゃんが危ない目に遭うのなんて私みたくありません!』
あー……なるほど、そう言う事ね。全く二人とも心配性ねぇ?そんな心配しなくても———
『安心なさい。嘗めてもらっちゃ困るわ……ウチがそんなただただ我を忘れて暴れているだけの連中に後れを取るとでも?冗談じゃない……こんな場所に閉じ込めてくれたこと、大事な試召戦争中に余計な事をしてくれたこと、そしてアキを酷い目に遭わせてくれたこと———その恨み全部まとめておつり付きで仕返ししてやらないとウチが気が済まないもの。そいつらの相手はウチがする、いいわね?』
そう言ってパァンッ!と乾いた音を立たたせ拳と手のひらを打ち合わせるウチ。今回ばかりはちょっと許せないわよね。と言うか最初から許す気も無いわ……!目には目と鼻を、歯には歯と舌をよ……!
『『…………』』
『ん?何よ瑞希に月野?ウチを見てボーっとしちゃってさ』
『……島田さん、すっごくカッコイイです。自分も島田さんのカッコよさ見習いたいくらいです……』
『……わ、私ちょっと美波ちゃんにまで惚れちゃたかもしれません……』
『アンタ達それどういう意味よ!?』
〜美波回想終了〜
「———って感じで、後は補充試験室から出て木下の作ってくれてたリストを使って暴走してる連中を見つけては、全力で叩きのめし関節外してから正気に戻してあげたってこと。理解できたかしら?」
『『『…………』』』
そんな美波の話に絶句する須川君たち。そりゃそうだ、理性を失いあんなに殺気立って僕らを始末しようとしていたおぞましき狂戦士達(バーサーカーズ)が一人の女の子に大部分が潰されたとあれば言葉を失ってしまうのも無理はないと思う。
「それにしても……全く無事にいったとは言え美波も無茶するなぁ。あんまり無茶したら駄目だよ。怪我したら元も子もないでしょ」
「心配してくれてありがとアキ♪でもコイツら随分とあっけなかったわよ。正直幻滅ね……もう少し張り合いがないとウチの気が収まらないわ。ねぇ土屋」
「…………(コクコク)」
「ま、その分の鬱憤は———首謀者のアンタらで晴らすけどね……よくも今まであんな狭い所にウチと瑞希閉じ込めてくれたわね……そしてよくもアキをいじめてくれたわね……!」
『『『…………(ヤバイ、死ぬかもこれ)』』』
再び美波から立ち上る闘気と殺気。ここにきてようやく自分たちの置かれた状況を理解した須川君たちは涙目になってガタガタと震え始める。
「んじゃ、俺はもう行くな。まずは造と秀吉、それから小山と少し話をせんとな」
『さ、坂本クゥン!?は、反省するしもうバカな真似はしないから助けてくれませんかぁ!?』
「HAHAHA!聞こえんなぁ?言っただろ、俺は忙しい。島田たちに遊んでもらえや」
「じゃあ造たちにお疲れって言っておいてね雄二。僕らこの三人の末路見てから戻るから」
「おうよ。後でコイツらがどんな面白い惨劇になったのかちゃんと報告しろよ明久」
そう言って愉悦そうな顔で須川君たちを一瞥してさっさと屋上から去っていった雄二。
『だ、だったら……む、ムッツリーニさん!我々のお宝(エロ本)を贈呈いたしますのでどうかお助けを!』
「…………趣味が合わないだろうしいらん。明久、それから島田に姫路。俺は工藤に礼を言って来る」
「ん、了解。愛子によろしくね」
「はい、愛子ちゃんにありがとうございましたって言っておいてください」
「ムッツリーニ、君も病み上がりなんだしあんまり無理しないようにね」
「…………三人もお疲れ」
ムッツリーニはムッツリーニで彼らの懇願を無視して、どこからか取り出したロープを伝って屋上からするすると降りていく。これで屋上に残ったのは須川君たち三人に僕と瑞希と美波の三人だ。
『く、クソッ……!なんでだよ……!俺たちはただ……ただ異端者共を……!俺らがモテないのは吉井たちバカのせいだって言うのに!何で俺らがこんな恐ろしい目に遭わなきゃならないんだよ!?』
「えー……そ、それは流石に僕に言われても」
『そ、そうだ!全部吉井たちが悪い!なんでお前みたいなバカがモテるんだ!?』
『吉井は勉強も出来ないうえにブサイクで役立たずのバカだろ!?そんなバカがモテるなんておかしい!どんな卑怯なことをしたんだ貴様!』
後がない三人は逆切れ気味にそんな罵倒をしてくる。我が事ながら酷い言われようだ。そこまで言わんでも……と言うかどうしてまた一言ごとに僕の事を必ずバカって呼ぶんだろうか。流石に泣きたくなってちょっぴり文句を言おうと思ったその矢先。
「……一つだけ、言わせてください須川君たち」
「「ん……?瑞希……?」」
『『『姫路さん……?』』』
と、何故だか瑞希が美波と須川君たちに割って入ってそう言って来る。一体何だろうか?
「えっと……その前に明久君。ほんの少しだけ耳を塞いでもらっててもいいですか?」
「へ?僕?耳塞ぐ?……何で?」
「お願いします明久君」
うーん、よくわかんないけど何だか重要そうな話だし、それに瑞希の真剣そうな目を見るとどうにも断れない。ならちょっと彼女の言う通りにしようかな。
「ん、了解。塞いでおくね。あ、でも何かあったらすぐに知らせてね」
「ありがとうございます明久君」
「ねえ瑞希、ウチは?聞いてていいの?」
「あ、大丈夫です。美波ちゃんには一度お話したことありますし」
「……ああ、なるほど。あの話するんだ」
そのまま耳を塞いでしばらく待つことに。一応須川君たちが逃げ出したり錯乱して瑞希や美波に襲い掛かると不味いから目は開けておくけどね。僕が耳を塞ぐと、瑞希は静かに話し始める。
『お待たせしました。言いたかったのはですね———私が好きな人、好きになった人の話です。皆さんは私がどうして……明久君を好きになったのかわからないのですよね』
『あ、ああ……こいつらは一体どんな汚い手を使ったのか———』
『私は……明久君に昔から助けられてきました』
『!?お、幼馴染だっただと……!?そうか坂本然り幼馴染だとポイントが高いのか……!お、おのれ……やはり粛清対象だコイツは!』
……耳塞いでいるから何にも聞こえないけど、なんか変な殺気を感じる。な、何を話しているんだろうか?
『いえ、そこが重要ってわけじゃないのですが……コホン。そう、私はずっと助けられてきました。小学校でも、試召戦争でも、あの肝試しの時でも……いいえ毎日助けられてきたんです』
『そ、そう言う事か……つまりそんなイベントがあったからこいつはモテて……!俺たちにもそんなイベントさえあればモテるのか畜生……!』
さっき以上に殺気を感じる。だから何!?何を皆で話してんの!?今すぐにでも塞いだ耳を解放したいだけど……
- 155時間目 ( No.326 )
- 日時: 2016/03/11 22:08
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
『……確かに須川君たちの言う通り、例えば……翔子ちゃんと坂本君のように長い時間をかけて積み重ねてきたものもあるかもしれませんね』
『だろう!こいつらはそう言う機会に恵まれたってことだ……!お、俺らだって長い時間女子と共に過ごす機会さえあればきっとモテて———』
『ですが違います。大事なのはそこじゃありません』
『『『えっ……?』』』
……ん?あれ、なんか空気が変わった……?
『小学校のころ一緒だったのは事実ですが、クラスが一緒だったのは四年生の時だけです。そこから先は高校二年生になるまで交流なんてありませんでした。そう……時間だけが全てじゃないんです』
『そうよね。そう言う話ならウチなんてアキと出会ったのは去年よ』
『『『そう言われれば……そうだが……』』』
うぅん……気になるなぁ。多分関係ない話のはずなのに何故だかむず痒い気持ちになってくる。でも聞いちゃダメだって言ってたし我慢するしかないか。
『だが時間だけじゃないと言うなら、一体あの世界一のバカのどこが良いと言うんだ!?あのバカには汚点しか見当たらないじゃないか!』
『確かに皆さんの仰る通り明久君にも悪い所あると思います……成績は最近急上昇しているとはいえ特段良いってわけじゃありません。それとまだまだ女心がわからないようですし……すぐ他の子たちに好かれちゃいますし……』
『アンタらの言う通り、アキって時々とんでもないバカをやらかしたりもするわ。今でこそちょっとは気遣い上手になったけど、アキって結構直球で失礼な事も言っちゃうことだってあったしさ』
『その通りだ。だからこそ理解できん!奴のどこに惚れたと言うのだ!?』
『悪い所もあれば良い所もいっぱいあるからですよ』
『そう言う事。アンタら知ってる?アキの良い所をさ』
『『『……よ、吉井の良い所?…………そ、存在するのか?』』』
うぉい!?……あ、あれ?何だろうか。今すぐここで須川君たちをぶん殴りたくなる気分になったんだけど……
『明久君の良い所いっぱいありますよ。例えば……試召戦争中の明久君の姿は皆さんも見てきたはずです。明久君は怪我することを躊躇わずにクラスの為、そして……私たちのために全力を尽くしてくれました。そう、他人の為に一生懸命になれるそんな素敵な人なんです』
『窓ガラスを壊す壁を壊す、そのせいで怪我をする———正直褒められるようなことじゃないかもしれないわ。バカにされても仕方のない事かもね。でも、それは全部ウチらの為に一生懸命アキが考えてやったことなのよ。アンタらは試召戦争中そう言う事ちゃんと出来た?今日なんて酷いものだったじゃない。嫉妬して本来の目標も忘れて暴れるだけ暴れて……そんなんでモテると思ってるの?』
『『『うっ……』』』
何か瑞希と美波が言ったと同時に、気まずそうに顔を伏せる須川君たち。
『だからこそ……他人の為に頑張れる心優しい明久君だからこそ、私たちは好きになったんです』
『アンタらさ、そんなにアキがモテて悔しいなら……自分たちがモテたいのなら……せめて試召戦争で活躍してみなさいよ。一生懸命何かに打ち込めるなら———モテるきっかけが作れるかもしれないわよ』
『『『モテるだとぉ!?』』』
と、二人が何か彼らに言い終わると、トントンと僕の肩を叩いて耳を塞ぐのはここまででいいですよと合図してくれる。あ、終わったっぽい?
「明久君、もういいですよ」
「ん、そう?」
「話は付いたわ。で、須川に福村に横溝。アンタらこれからどうするか言ってくれる?」
さて、何を話していたのはわからず仕舞いだけど、須川君たちは一体何と答えるんだろうか。少し緊張しながら彼らの答えを待つと……
『……わかった。確かにそうだ。俺らにはそういう努力が足りなかった』
『試召戦争という大事な戦いにつまらない事をしてしまったな……』
『その……すまなかった吉井。俺、確かに間違っていたのかもしれないな』
…………たった2.3分程度の会話の間に、君たちに何があったんだ。
「そ、そうなんだ……じゃ、じゃあ今後は———」
『『『———ああ、任せろ!試召戦争中は今後嫉妬心に捕らわれず真面目に挑む!それこそがモテる秘訣だしな!』』』
「ね、ねえ瑞希に美波?何話してたの?何でこうもあっさり須川君たち協力的になってるの?」
わからない……いくら彼らが単純だからって、こんなに物わかりが良いはずないのに。そう困惑しながら二人に聞くと。
「「明久君(アキ)のお陰ですかね(かしらね)♪」」
なんて、よくわからない答えと笑顔を送ってくれた。ま、まあよくわからないけれど———色々とピンチの連続だったけれど、これで僕らの対Cクラス試召戦争は何とか無事に幕を……
「———まあ、それはそれとして。アンタらをオシオキしないってことにはならないけどね」
『『『…………What?』』』
幕を下ろすことになるのは、まだ早い。まだだ、まだ終わっていないぞ須川君たちよ。
『え、ちょ……ちょっと待ってください島田様……オシオキ?』
『この流れはアレじゃないですか?ほら、次からは心を入れ替えて頑張ろう!的な……皆で協力して敵を倒そう的な……』
『お、俺たちはもう改心しましたので……ここはオシオキ無しでお願いできたら嬉しいのですけど……』
「何を勝手に綺麗に終わらせようとしているのかしら……アンタらが改心することと———ウチらに色々やってくれたことに対する制裁はまた別問題でしょう……?」
と、まだ終わっていないわよと美波が殺気を剥き出しにして笑い須川君たち三人は固まる。デスヨネー、正直須川君たちはやり過ぎたと思うし美波の言うことは尤もだ。
『『『ひ、姫路さんッ!俺たちもう変な事はしないと約束しますので、どうか島田様を止めて頂けないでしょうか!?』』』
「え?うーんー……そうですね」
ズンズンと近づいてくる美波を目の前にして、瑞希に助けを斯う須川君たち。そんな須川君たちのSOSを聞いた瑞希はほんの少し考えてから———
「言いたいことはちゃんと言えましたし……私も実を言うとですね、美波ちゃんと一緒で明久君虐めてたことは———ちょっと許せないかなーって思ってたんです☆と言うわけで美波ちゃん、お願いしますね」
「うん、なら任せてね瑞希」
『『『姫路さぁん!?』』』
———そうニコニコ笑顔で答える。普段は温厚な彼女も、今日に限って言えば実は相当怒っていたようだ。情け容赦なく須川君たちのSOSを切り捨てる瑞希。なるほどこれが自業自得、そして人を呪わば穴二つということか。うんうん、勉強になるなぁ。
『『『超ナイスガイな吉井クン!もう我々は心を入れ替えたんだ!これからの試召戦争ではきっと我々の力が必要になる!だからどうか助けてくれませんかね!?』』』
もう後がない彼らは僕に土下座までして助けてとお願いしてくる。むぅ、確かにいくら制裁の為とは言えこのままじゃ多分美波の手によって全身の関節は外され骨と言う骨が砕かれてしまう。そうなれば一人でも多く戦える人が必要になるであろう今後のAクラス戦が不利になるかもしれない。そう言う意味では戦力は残しておくべきだろう。
『(吉井……)』
『(吉井……っ)』
『(吉井……っ!)』
彼らのそんな助けを斯う顔を見て、今一度冷静になって考えてみる僕。考えをまとめてから一言。
「…………見捨てても、良いんじゃないかなぁ」
『『『吉井クゥン!?』』』
冷静になって考えれば、さっきも思った通りこの彼らの窮地は嫉妬に狂い大事な試召戦争をボイコットしたばかりか妨害までしてきた結果、つまりは自業自得だもんね。そうでなくてもいつも酷い目に遭わされているわけだし……
「とは言え一応は戦力の一部なんだしさ、美波。悪いんだけど———死ぬ一歩手前で許してあげてね」
「はーい♪もうアキは優しいわねぇ、アンタ達アキの心遣いに感謝することね」
『『『どう考えても許してもらえる対応じゃねぇ!?』』』
そりゃ許されないことしたのは君たちなんだしこればかりは仕方ないだろう。
「んじゃ、瑞希。この制裁を観戦しながら少し休んでしばらくしたら美波と三人で戻ろうね」
「はい、明久君お疲れ様でした。怪我とかありませんか?」
「へーきへーき、問題ないよ」
と言うわけで屋上の隅の狂戦士達(バーサーカーズ)を隠していたブルーシートをレジャーシート代わりにして座って美波の殺戮ショーを観戦することにした僕と瑞希。見たがっていたわけだし、後で雄二にも彼らの末路を聞かせてあげよう。
「んじゃ、そろそろ……覚悟を決めなさいアンタら。うっかり死なないように気を付けなさいな」
『『『ちょ、や……止めてください島田様……い、嫌だ……そ、そこは曲がらな……許し……———ぎゃあああああああああああああああああああああああっ!?』』』
———と言うわけで、これでようやく長かった対Cクラス試召戦争・防衛戦・そしてFクラスの暴動は須川君たちの悲痛な断末魔が屋上に木霊するなか幕を下ろすこととなった。いやはや、みんなお疲れさま。