二次創作小説(紙ほか)

156時間目 ( No.327 )
日時: 2016/03/11 22:16
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

造Side


「———おう、造に秀吉。ちょいと待たせちまったな。そんでもって良くやってくれた、ありがとな」
「いえいえ、ゆーさんもお疲れ様でした」
「無事に屋上から戻ってこられたところを見ると、須川たちの件は片が付いたようじゃな」
「まあな、今頃きっと屋上は面白いことになってるだろうさ。直で見れないのは残念だがな」

Cクラス対Fクラスの試召戦争は何とか自分たちの勝利で終わりました。その試召戦争で自分たちが一体何をやったのかを小山さんに説明し終えたのとほぼ同時に、かっかっか!と笑いつつ旧校舎一階にやってきた我らが代表にして軍師のゆーさん。良かった、屋上の方も無事に済んだようですね。……彼らが無事だと良いのですけど。

「さてと、だ。よう小山。随分と健闘したようだが残念だったな。俺たちの勝ちだ」
「……そのようね。Fクラスを懐柔して戦うなんて卑怯な作戦だったのにね。……言い忘れてたけど、悪かったわねあんな禁じ手みたいな手段で挑んじゃって」

震える声でそう返す小山さん。

「あ?お前は何言ってんだ、Cクラスの作戦自体は何も悪くねーだろ。そもそも懐柔されるようなあいつらが悪い。そう言う意味じゃ良く策が練られてたと思うぞ。逆に俺は明久にも途中言われたが代表失格かもしれんしな」
「いや、今回は代表とかそれ以前の問題じゃし雄二がどうのこうのの問題ではないと思うがの」
「ですね……ヒデさんが上手にフォローしてくれたお陰で今後はこんなことは無いと思いますが」
「つか、次アイツらがまたつまらん理由で反逆しようものなら次こそ本気でブチのめす」

そうなったら島田以上の地獄を見せてやる、なんて言ってるゆーさん。あ、この目はマズい本気だ……

「おっと、話逸れてるな。ワリィ小山。で、ある意味奴らが迷惑かけたことだし、詫びと言っては何だがどうやってお前たちに勝ったのか気になるなら説明してやってもいいぞ。聞くか?」
「……それはもういいわ。どんな手を使って貴方たちが逆転したのかは、さっき聞いたから」
「そうか、ならそろそろ戦後処理を———」
「……待って。ただ、別の事で一つ聞かせて。坂本君の立場から見た意見を聞きたいんだけど、今回私の何がダメだったと思う?」
「ん?……ふむ、そうだな。さっきも言ったがお前の作戦自体は悪くなかった……それでも負けたのはまず秀吉を嘗めすぎたこと。それから……Fクラス代表の俺が言うのもおかしいが、Fクラスと言う危険要素を作戦に組み込んじまったことだろうな」
「……と言うと?」

小山さんの問いにゆーさんが数秒考えて答えます。ふむふむ、ゆーさん曰く一つ目のCクラスの敗因は自分もさっき言った通りヒデさんの存在を軽視した点。そしてもう一つは……Fクラスを利用した点、ですか。

「秀吉を軽視したことはしゃーない、ダークホースだったしな。だから問題があるとしたらFクラスの扱いだ。よりにもよって簡単に造反したりちょっとしたことに影響されやすいバカの集大成共を安易に使うのは少しマズかっただろう。俺ですら手に余ってるんだぞ、他のクラスが一朝一夕でコントロールできるはずがない」
「あー……なるほど確かに。そのせいで今回大変でしたからね……Cクラスの皆さん自身が振り回されることも考慮しておくべきだったってことですか」
「些細な出来事で裏切ったり寝返ったり手のひらを返したりとあやつらは本当に忙しいやつらじゃからのう……」
「そう言うこった。要するにFクラスの連中に逆に裏切られる可能性を考えていなかったのはマズいってことだよ」

つまりCクラスの皆さんがFクラスの皆さんを簡単に懐柔出来たならば、その逆で簡単にFクラスの皆さんを懐柔されてしまうこともきちんと念頭に置いておく必要があったと言うわけですか。

「とは言えあの連中を使ったからこそ、ここまで俺らは追い詰められたんだ。だからこそ利用するなら利用するで常に奴らの手綱を握っておくべきだっただろうな。例えば裏切り防止に何組かに一人Cクラス生徒を付けておく。不穏な動きがあったなら監視の目を強化したり使えないと判断すれば迷わず勝負を挑んで戦死させる、とかな」
「……なるほどね。もう使えない手でしょうけど、参考になったわ」

ゆーさんの答えに納得したのか、小山さんは大きくため息を吐きそう返します。……あれ?何でしょう、小山さん少し震えている……?気のせい……ですかね?

「それはこっちの台詞でもあるさ。今回のお前たちのお陰で俺もあのバカ共に対し今後どう対応すべきか見えた。Aクラス戦前に不満を爆発させれたのはデカいし、何よりこの試召戦争を経て造や秀吉の運用方法に更にバリエーションが増えることになったからな。今後の良い経験を積ませてもらったぜ、感謝してる」
「Fクラスを使って追い詰めるつもりが、かえって貴方たちを強化させちゃったのね……なんというか皮肉なものね」

確かにAクラス戦前の暴動で良かったですよね……流石にAクラスで同じことが起こったら対処できなかったでしょうし。そう言う意味も含めて今回は非常に良い防衛戦となりましたね。自分もあの戦いの中で苦手としていた接近戦を克服できましたし。

「そう落ち込むな。知っての通り俺らの目標はあくまでAクラス。お前らのクラス設備をどうのこうのするつもりはない。その話を含めて戦後処理に入りたいんだが、良いか?」
「……好きにして。もう何でもいいわ。もう……どうでも……いいわ……」
「?お、おう?そうか、なら———ワリィ造。今日はずっと任せきりだがこれで最後だ。この前のEクラスのように小山と戦後処理をしておいてくれ。俺は今すぐにでもFクラスに戻って補充試験の指示をしておきたい」
「あ、はいです。そちらはお願いしますね。交渉内容はEクラス戦の時と同じ感じで良いですか?」
「ああそれでいい、頼んだぞ。じゃあな小山。ご苦労さん」
「……」

と、もう話すことは無いと言わんばかりに忙しくFクラスに戻るゆーさん。今回の試召戦争でかなり皆さん点数が消費されちゃいましたから、Aクラス戦も間近に控えているわけですし一刻も早く戦力回復をしておきたいのでしょうね。

「すまぬ造よ。戦後処理はワシも抜けて良いかの?姉上と制服を交換しっぱなしじゃし、正直今すぐにでもこの女装を解きたいのじゃ。姉上にも礼を言わねばならぬしの」
「ええ勿論ですよ。あ、自分からも優姉さんに助かりましたありがとうですって言っていたと伝えておいてください。それではヒデさん本当にお疲れ様でした」
「うむ任せよ、お主もお疲れ様じゃったな。ではワシも失礼するぞ小山よ」

ゆーさんに続いて今回のMVPであるヒデさんもこの空き教室を後にします。いやはやヒデさん本当にお疲れ様でした。さて、それじゃあ自分もちゃんと最後までお仕事してからFクラスの戻るとしましょうかね。

「さて、お疲れのところ申し訳ありませんが最後にちゃんと戦後処理を行ってから終わらせることにしましょうね小山さん」
「……」
「ああ、安心してください。さっきゆーさんもちらっと言っていましたが、Aクラス戦で少しばかり手を貸してもらいたいだけです」
「…………」
「ですから自分たちはCクラスのクラス設備をどうにか……する、つもりは」
「…………(ぽろぽろ)」

……え?

「こ、小山……さん……?」
「……す、すみませ……せんぱい……み、ないで……」

え、え?こ、これどういうことです……?何故だか戦後処理に入ろうとした途端、堰を切ったかの如くその小山さんの瞳からは涙が流れ出し始めます。そ、そんなに負けたことが悔しかったのですか……?いや当然悔しくないハズないでしょうし、代表としてクラスの皆さんに申し訳ないって思うのも無理はありませんよね……

「え、えっとその……っ!い、今言った通り自分たちはCクラスのクラス設備をどうのこうのするつもりはありませんし、Cクラスの作戦はとても凄かったって思います!で、ですからそう気に病まずともCクラスの皆さんもわかってくれると思いますので落ち着いてくださ———」
「ちが……う……で、す……」
「———え?」

しどろもどろながら彼女を慰めようと言葉をかけるも、首を横に振って違うと言う小山さん。

「まけたら……あ、アイツ……との……やくそく……わた、し……やくそく……まもれな……」
「小山さん?」
「す、すみま……せ……うぅ……」

負けたら……?アイツとの約束……?それってどういう……思い返せば今回の小山さんからは、どんな手を使おうとも何が何でも勝たねばならないと言う強い意志を感じました。この話しぶりも考慮すると……もしかしてこの試召戦争とはまた別の件で何か複雑な事情アリ……?むぅ……このまま泣いている彼女を放っておけませんし……

「……何やらワケありと見ました。とりあえず小山さん、少し落ち着ける場所に移動しましょうか。ここは人が来ます」
「…………(コクコク)」

ここは一階で近くに職員室もありますし、このままじゃ小山さんの泣いている姿を他の方に見られちゃいます。彼女としてもそんな姿を他の人に見せたくないでしょう。そう考え彼女にハンカチを渡しつつ、ゆっくり落ち着いて話の出来る場所に移動することに。……さて。なるべく誰にも邪魔されず、落ち着いて話が出来る場所を提供してくれそうな人……そして小山さんの悩みを打ち明けても大丈夫そうな人と言えば……

「……ここは彼女に頼みますかね」


〜造&小山移動中〜

156時間目 ( No.328 )
日時: 2016/03/11 22:16
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

———文月学園茶道部:茶室———


「———すみません小暮さん、授業中ですのに突然呼び出してしまって。おまけに部室である茶室まで貸していただくことになって……」
「いえいえ。他ならぬ月野君の頼みで、しかも私の大事な後輩の悩み相談と聞けば黙っていられませんので。そもそもこの時期は自習期間ですから割と暇をしていたんです私」

と、言うわけで。自分が考える最もこういう話に適しているお方……つまりは小暮さんにSOSを出して応援に来てもらうことに。ついでに彼女が所属している茶道部の茶室を貸してもらうことになりました。

「それにしても……ここ結構静かでいいですね。あまり茶室には来る機会がありませんでしたが心休まる落ち着ける良い空気です。周りの音全然聞こえませんし」
「そうでしょう。落ち着いて茶道に集中出来るように防音対策はバッチリです。何をしてもされてもほとんど外には聞こえないですので安心して今度是非茶道部に遊びに来てくださいな月野君」
「小暮さん小暮さん、自分何故か“何をしてもされても防音のお陰で外に助けを呼んでも聞こえないので是非弄られに来てください”と貴女が言っているように聞こえるんですが気のせいでしょうか?」
「気のせいですよ♪」

この目……絶対気のせいじゃない……下手にここに近づけば防音なのを良い事に絶対小暮さんに弄られる……!ま、まあそれは今は置いておくとして。

「そんな漫才めいた話はこの辺にして……少し落ち着きましたか小山さん?」
「……は、はい……見苦しいところ……みせちゃってすみません先輩方」
「見苦しくなんかありません。感情のコントロールとして時には“泣く”という行為は非常に重要だと私は思いますよ。ですからそう気にしないでくださいな」
「……ありがとうございます」

ひとしきりここで泣いてから、ようやく少しだけ話ができるようになった小山さん。

「さて。それで本題ですが……小山さん。もし良かったら……話してみてくれませんか。一体貴方に何があってどうしたのかを」
「一人でため込む方が余計に辛いことになりますからね。勿論私も月野君も他言はしません。全部話す必要はありませんが、少しだけでも話してくださいな」
「もし内容的に自分に話せないのでしたら、小暮さんに話してみてください。その場合はここを出ますのでご安心を」
「…………」

そう自分と小暮さんが小山さんに話すと、静かに少し考えをまとめる小山さん。彼女の邪魔をしないように数分自分と小暮さんも静かに待つと———

「……とてもしょうもない、話です。それでも……大丈夫ですか?聞いて、もらえますか先輩たち……」

「「どうぞどうぞ」」

———意を決したようにポツリポツリと話し始める小山さん。

「……今回は、負けられなかったんです……」
「そうですね。今日の小山さんからは絶対に負けられないという強い意志を感じました」
「……作戦も、情報収集もいっぱいしました……時には小暮先輩にアドバイスも貰って……」
「ええ。Fクラスに勝つためにと、小山さんは沢山私に質問をしてましたね」
「……手段も選ばずに、不満が募ったFクラスを誘導して……反則ギリギリとわかっていながらもあの連中を利用して挑みました……」
「いいえ、あれはお見事でしたよ。ルール違反ってわけでもないですし周りの全てを使って勝ちに行く姿勢、とても素晴らしいと思います」

そこまで話すと一度呼吸を整えて、いよいよ本題に入る小山さん。

「……アイツとの、約束だったんです……」
「アイツ……それってどなたです?」
「約束……どういった約束ですか?」
「…………最初は……もう、俺たち別れようって……言われ、たんです……」

「「……はい?」」

話すたびに彼女の瞳から引っ込んでいた涙が再び流れ出します。わ、別れよう……ですと?それってまさか……

「で、も……急だったし……ぜんぜん納得……できなくて……アイツにくいさがって……!そしたら……チャンス、くれて……わ……わた……わた、しがFクラス戦で……勝てたら……その話、なしにして……くれるって……アイツ、言って……くれたのに……」

「「……」」

「ま……まけ、たから……別れ、られる……わたし……“恭二”に……フラれて……うぅ……」

そこまで言い切るともう我慢できなかったのでしょう。先ほどと同じように、いいえそれ以上に大粒の涙が零れ落ちその場に座り込んで嗚咽を上げる小山さん。小暮さんと二人で、そんな彼女の背中をポンポンと優しく撫でてしばらく落ち着くまで待つことに。……ごめんなさい、小山さん。お辛いことを話させちゃいましたね。


———10分後———


「では小暮さん、何から何まで頼んで申し訳ありませんが……彼女をお願いします」
「ええ月野君、こちらは任せてくださいね。さあ、行きましょうね小山さん」
「…………(こくこく)」

小山さんが落ち着くのをしばし待ってから、まだ少しばかり辛そうな彼女を小暮さんに託して二人と別れた自分。ゆーさんたちを待たせていますし本当ならすぐにFクラスに戻りたいところですが……あんな話を聞かされたんです。まずは小山さんの件を解決しなければね。そう思い“2-Bクラス”に足を運ぼうと階段を上がろうとした矢先———

「よう小学生、相変わらず憎たらしいなお前」
「……誰が小学生ですか誰が」

———2-Bクラスに行く手間が省けましたね。ある意味会いたくない、でも会わねばならない相手が階段の踊り場で立っていました。

「一応今授業中でしょ?いいんですかこんな場所にいて———ねぇ、根本くん」
「サボりだサボり。授業なんかより大事なものがあるからな。ま、それはそうと……Cクラスに勝ったそうじゃないか」

———そう……彼こそは自分たちFクラスと何かと因縁があり、間接的に今回小山さんを泣かせた男。2-Bクラス代表の……根本恭二くんです。

「……そんなことはもうどうでもいいです。それよりも……小山さんから話を聞きました。それで?貴方は結局何がしたいんですか」
「……何がしたいかだと?……さてな、何がしたいんだろうな俺は」

これまでの事を考えると、小山さんから別れ話を申し出るならまだわかります。ですが……わかりませんね、何故逆に根本くんから別れ話を持ちかけるのですか。しかもFクラスに勝てたらその話は無しにするなんて妙な約束をしたのか本当にわかりません。根本くんのいる階段の踊り場に自分も立ちそう問いかけるも変な回答をする根本くん。

「まあ、それは一旦置いておくとして、だ。Cクラスに勝つには勝ったが、友香の策でかなりFクラスは戦力が低下しているようじゃないか」
「……まあ、そうかもしれませんね」
「だったら大変だなぁオイ。一応今日と明日は補充試験は受けられるだろうが———明後日に他のクラスから宣戦布告でもされりゃFクラスは一たまりも無いんじゃないのか?なぁ小学生」
「…………何が言いたいんですか」

……まさか根本くんこの状況を作り出すために、わざと小山さんに発破をかけた……?いや、ですがそれにしてはえらく回りくどい気が……彼の意図を探るべく、慎重に話を促します。

「だから例えばそう、明後日に……俺たちBクラスがFクラスに宣戦布告でもしたら、前回俺らに勝ったFクラスと言えど準備と戦力不足で今日のCクラス戦以上に厳しい戦いを強いられるかもしれねぇなって言ってるんだよ小学生」
「……そうですね。確かに疲労しているFクラスがBクラスに今攻め込まれでもしたら非常に苦しいことになるでしょうね。それで?」
「何簡単な事だ、だからこそこの状況を利用させてもらおうって考えているのさ……アンタと取引をしたいんだ“月野先輩”。頼む、俺のいう事を聞いてほしい」
「えっ?」

…………ど、どういう事……?急に小学生呼びから月野先輩呼びになったかと思うと、頭を下げる根本くん。な、何ごと……?

「もしも俺の頼みをアンタが聞いてくれるなら、俺たちBクラスはアンタ達FクラスがAクラス戦を終えるまではFクラスと戦わないと約束する。だから———その代わりにどうか俺の頼みを聞いてくれ月野先輩。勿論、友香の件の真意も話す。頼むこの通りだ」
「……むぅ……は、話くらいは……聞いてもいいですけど……」

予想外の行動に若干混乱しつつも根本くんに話すよう促します。そして彼の口から出てきた交渉内容とは———


〜根本交渉中〜

156時間目 ( No.329 )
日時: 2016/03/11 22:17
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

「———と言うわけだ」
「…………そういう、ことですか……」

らしくないと言えばらしくない、でも何となくこの人らしいと言えばこの人らしい話の内容に色々納得してしまった自分。あー……そう言う意図があったんですか。こう言っては怒られるかもしれませんがこの手の話の面倒くささ、“ゆーさんのソレ”に似ているのかも……?

「それで……どうだ、先輩。考えてくれないか?」
「……OK。わかりました、なら3つ条件があります」

彼の意図がわかったからこそ、自分も交渉に入ります。

「3つもか……まあいい、言ってみてくれ」
「一つ目は勿論、貴方の言った通りAクラス戦が終わるまではFクラスと戦わないって約束してください」

一つ目の条件に“Aクラス戦終了までFクラスに宣戦布告しないこと”を付ける自分、このまま彼を放置して明後日Fクラスに宣戦布告されたらまたAクラス戦が遠のきますからね。……ゆーさんごめんなさい。本来ならゆーさんに相談すべき案件でしょうが、小山さん関連の話もあるので相談できませんし。

「それはわかっている。それで、残りの2つの条件は?」
「二つ目は……貴方のその意図を、どうか彼女に———小山さんにちゃんと伝えてあげること。出来れば明日までに……と言うか今すぐにです」
「…………それ、やっぱやらないとダメか?」
「女の子泣かせる人の頼み事なんか受ける気ありませんので」

二つ目の条件は小山さんを安心させてあげること。元々根本くんとはこの話をしに来たわけですし、さっきの話聞いたら尚の事ちゃんと意図を伝えるべきでしょうからね。全く……この人うちのクラスの代表さんと変なところで似ているんですから……

「……わかった。正直それはその時まで待っていて欲しかったんだが……約束する。で、最後の条件は?」
「それで三つめはですね……自分、小学生ってあだ名は勿論嫌いです。ですが……」
「ん?」
「同級生に“先輩”って呼ばれるのもホントはむず痒くて嫌なので……“月野”でいいです」
「……わかった、なら交渉成立だな“月野”」
「では明日の放課後から始めるとしましょうか」

と、そんな感じで人知れず交渉を行った自分と根本くん。やれやれ……どうしてこうなったのやら。まさか因縁深いこの根本くんとこんな交渉をすることになるなんて世の中何が起こるかわかりませんねホント。……ただ明日から大変になりそうですし今まで彼から色々された思い出でちょっぴり複雑な気持ちになりつつも、小山さんの件は何とかなりそうでホッとする自分。


———同時刻:3-Aクラス———


『タダイマー!あータノシかった!』
『ああ、やっと戻って来た……全く私を騙しておいて今までどこに行っていたのですか貴方は。学園長先生もカンカンでしたよ?監督不十分ということで私まで怒られましたし』
『ウヘー……ダマシたのバレちゃったカ。ネエ、それよりタカシロ!あのヒトの名前ナンテいうかシッテる?』
『あの人……?』
『ショウカンジュウになるヒト!』
『ああ、月野嬢のことですか。彼女は月野造と言う名前ですよ』
『ツクル……かぁ、ウン!イイネ!かっこいいヨ!オイラきにいっちゃったヨ!タカシロ、あのヒトにしようヨ!』
『……もしかして、月野嬢を例の件に?』
『ウン!なんでもツクルと“あのふたり”ってシリアイみたいだし……イロイロとチョウドいいカラネ!』


———そんなこんなで人知れず交わされた密約。おまけに一部始終をこっそり見ていた者。錯綜する人間関係とそれぞれの想いが交差しながらも、ようやくFクラス対C・D・Eの3クラスによる試召戦争と“Fクラスの変”は終わりを告げることになりました。

156時間目 ( No.330 )
日時: 2016/03/11 22:18
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)

———翌日———


「おはようございますヒデさん、昨日はお疲れ様でしたね」
「おお、造よおはようじゃ。お主も昨日は大変じゃったのう」

Cクラスとの試召戦争が終わったその翌日。眠い目を擦らせてまた寒さが増してきた通学路を歩いているとヒデさんと合流する自分。いやはやホント昨日はお疲れ様でしたヒデさん。

「ホントお互い大変でしたよね……自分、昨日は流石に疲れて家に辿り着いたらそのまま眠っちゃってましたよ。と言うか今も眠いです……」
「ワシも似たようなものじゃ。造や明久たちの様に走り回ったわけでないが、それでもまだ少し疲労が残っておる感じじゃよ」

今回は自分とヒデさんが中心になって戦いましたからね。学園中走り回ったこととフィールド内に思った以上に長い時間留まり戦ったせいで、フィードバックからくる疲労による眠気が帰るころには自分を襲うことになっちゃいましたし。

「ですがヒデさんに自分、それから姫路さんや島田さん達の頑張り。優姉さんたちのサポートのお陰で防衛戦が何とかなって何よりですよ。あ、優姉さんにお礼言ってくれました?」
「うむ。“気にしないで欲しい。借りを返しただけだし、これで思う存分アンタ達と戦えるってもんよ”と姉上は言ってたぞい」
「アンタ達と戦える……ですか。そうですね、次こそ念願のAクラス戦……ようやくここまで来ましたねヒデさん」
「じゃな。そう考えるとワシらの昨日の……いいや、今日までの頑張りも意味あるものじゃろうな」

そう言って二人でニィッと笑いながら下駄箱で上履きに履き替えます。

「Fクラスの皆さんもヒデさんと姫路さん達の説得のお陰で、もう嫉妬に駆られて暴れないって約束してくれましたからね。後は———」
「———Aクラスに勝つだけじゃな。一学期初めからここまで長かったが……絶対に勝とうの造よ」
「はいっ!自分たちFクラスの力で勝ちましょうね!」

そんな決意表明をヒデさんと行っていると、自分たちの教室であるFクラスに辿り着きます。さて、造反されたとは言え昨日は昨日で今日は今日。心機一転して全員が協力してAクラスに勝つためにも元気のいい挨拶で皆さんと心を打ち解けねばね。

「「(ガラッ!)おはよう———」」

そう考えながら勢いよく教室の扉を開けると、そこは———












『『『ヒャッハー!!!異端者共は滅却だァー!!!』』』

『『『また一段と寒くなったよなぁ?温めてやるぜ吉井、坂本、ムッツリーニ……我々の怨嗟の炎でなぁ!』』』

『『『そぉら!燃え上がれ燃え上がれ異端者共!』』』

「「「あっじぃ!?ちょ、また火ぃ付いてる!シャレにならんくらい火ぃ付いてる!?」」」」

「「……は?」」

———何このデジャヴ。教室に入った自分とヒデさんの目に映ったのは、この前の様にアキさんゆーさん、そして新たにこーさんを縛り上げ燃やし続けるFクラスの皆さんでした。え、えっ……ちょ?あ、あれぇ……?な、何で……?嫉妬に駆られて暴れないって約束はどこに……?

『む……?おお、造ちゃんに秀吉じゃないか。おはよう、今日も二人とも可愛らしくて何よりだ』
『昨日は本当に申し訳なかった……我々も反省したよ』
『次からは心を入れ替え、必ずモテる為———もといクラスの為に頑張るからね!』

「「…………」」

と、唖然としている自分たちに気付いたのか、島田さんにやられたのでしょう身体中包帯だらけの姿でありながらFクラスの皆さんを仕切っている須川くんたちが話しかけてきます。いえ、あの……心を入れ替えているならこんな事にはならないのでは……?自分とヒデさんが困惑している間も、せっせと薪をくべて火力を上げアキさん達を燃やし続ける皆さん———ってちょっとぉ!?

「な、何やっているんですか皆さん!?火まで付けてアキさん達を焼くなんて!?」
「ちゃ、ちゃんとお主ら約束したであろうが!?もう嫉妬に駆られることなく真面目に明久たちとも協力すると言ったのは何だったのじゃ!?」

脳の処理が追いついていませんでしたが、このままではまたアキさん達が上手に焼かれてしまいます。気合いで脳のフリーズを解除してツッコミを入れる自分たち。

『はは!勿論さ造ちゃんに秀吉。我々は成長したんだ。さっきも言ったが俺たちは必ずやAクラスを倒しモテモテになる!そのためなら憎っくき吉井たちとも協力すると約束するよ』

「「この状況でその台詞はおかしいでしょ(おかしいじゃろ)!?」」

協力する相手を燃やしますか普通!?おかしい、自分の知っている成長とも協力とも何もかもが違う……

『おっと勘違いしないでくれたまえお嬢さんたち。確かに我々は協力するとは言ったが———』

「「(お嬢さんって……)い、言ったが?」」

『『『———試召戦争で、協力すると言っただけさ!!!』』』

「「……」」

へり……くつ……っ!それ、屁理屈ですよねっ!?

『ぶっちゃけこいつらが羨ましい恨めしい憎たらしいことには変わりないからね!』
『試召戦争中は造反なんてしない……が、日常生活の中では別だ!』
『その通り、我ら正義のFFF団!異端者共は滅せねばならないからな!』

「「…………」」

ほ、ほんとに……ほんとにこのクラスは……

「「「隙ありぃ!散ッ!」」」

『っ!か、会長たち大変です!奴ら縛られていた縄を焼き切って逃げ出しました!』
『何ィ!?追え、逃がすな!必ずあのバカ共を血祭りにあげるんだFFF団!さぁ、行くぞお前ら———異端者狩りの時間だァ!』

『『『了解です会長!異端者共に死を!』』』

「「「ええぃ、しつこいFFF団!」」」

「「……………………」」

再び思考が停止した自分たちを置いて逃げ出すアキさん達に追う須川くんたち。……これ、この前とまるっきり一緒の展開なのですが……

「ひ、ヒデさん……これ、大丈夫ですよね……?次のAクラス戦……大丈夫です、よね?」
「……一応、試召戦争中は暴走せぬと言っておるからの……ま、まあFFF団も多少は成長しておる……と信じたいのう」

「「……はぁ」」

「では、いつも通り行きましょうかヒデさん」
「うむ、鉄人たちに目を付けられて、暴れた罰として試召戦争を無しにでもされては敵わぬからの」

若干の不安は抱えつつも、結局いつも通りでどこか安心もしてしまう我らFクラス。ヒデさんと溜息を吐きながらも、苦笑いをし西村先生たちに怒られる前に彼らの暴走を止めにFクラスを飛び出して彼らを追うことになりました。ホント、良くも悪くも飽きることのないクラスですよね……そこが面白いのですが、ね。