二次創作小説(紙ほか)
- 108時間目 天国と地獄の三人四脚〜途中から+1人〜 ( No.33 )
- 日時: 2015/07/31 21:03
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
明久Side
「…………何これ?どう言うこと?いや、どう言う状態?もしかするとここは天国なの?」
見上げると、瑞希と美波が心配そうに僕を見ている。僕の体操服は真っ赤な血に染まり、流れ出る血は今もまだ止まる事がない。一秒で自分でもこれはもうダメなんだと理解できた。
「明久君!しっかり、しっかりしてくださいっ!」
「アキっ!今日高先生を呼ぶから、それまで耐えるのよ!」
二人が必死に僕に呼びかける。ああ……なんて心地良いのだろうか。大切なこの二人に看取られて、こんな気持ちのまま逝けるなんて僕はやっぱり幸せなんだね……
『『『吉井……吉井っ!逝くなっ!逝くんじゃないっ!』』』
クラスメイトも心配そうに僕を見ているようだ。そう、とても心配そうに————
『『『吉井、お前は……お前はちゃんと拷問してから殺らないと、気が収まらねえんだよっ!死ぬなら俺らが地獄に送って殺るっ!だから勝手に逝くんじゃねえええええええええええええええええ!』』』
————包丁に鎌にロープにスタンガンなどを構えて、クラスメイトたちは僕が勝手に天国へ逝くのを心配そうに(悪意と殺気に満ちた目で)見ていた。瑞希と美波がいるこの空間が天国なら、あっちはリアルな地獄にしか見えない。
……ホントに、どうしてこうなったんだろう?
〜こういう状況になる数刻前〜
「えーっと、とりあえず僕は造とムッツリーニの三人組なんだね。宜しく二人とも」
「ふふっ♪はいです、アキさん。よろしくですよ〜」
「…………宜しく」
二人三脚(いや、僕と造とムッツリーニは三人四脚だけど)のペアも無事に(?)決め終わり、あとちょっとで始まるであろう競技の前に三人で打ち合わせをしておく事に。唯でさえ二人三脚は難しいのに、三人四脚ともなればより高度な技術がいるだろうからね。
「木下がウチのペアね。宜しく頼むわ」
「そうじゃな。宜しく頼むぞい」
と、美波と秀吉も練習の為か僕らの側に来ている。その隣には表情を曇らせる瑞希の姿も。
「私は坂本君とペアですか……足を引っ張ちゃわないか心配です」
「ああいや瑞希、その心配はないんじゃないかな?」
だって多分、まともに走れないだろうし足を物理的に引っ張るのは雄二の方だろうから。さっきちらっと雄二とFFF団の様子を見ていたけど、多分アレはすぐには蘇生できないだろう。瑞希と美波と一緒になれなかったのは残念だけど、組合せとしてはこれがベストではないだろうか。【僕&造&ムッツリーニ】【美波&秀吉】【瑞希&死体(雄二)】ってことになるからね。まともな男女ペアになっているかは疑問だけど。
「まあ、瑞希も美波も一緒にはなれなかったけど、頑張ろうね!いい想い出作りの為にもさ」
「うー……そうね、仕方ないし」
「ですね……今回は我慢しましょう」
多少は残念そうな顔をしている二人だけど、今回は流石にくじ運があるし仕方ないね。そこは割りきってもらって、体育祭を楽しんでもらう事にしよう。
『これより、第二学年の二人三脚を行います。二年生の生徒はスタート位置に集合して下さい』
と、そんなことを考えていると、ちょうど集合のアナウンスが響き渡る。そんなわけでしょんぼりしている瑞希と美波をなだめつつ、僕たちは二人三脚のスタート地点へと歩いて行った。
- 108時間目 天国と地獄の三人四脚〜途中から+1人〜 ( No.34 )
- 日時: 2015/07/31 22:11
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
———二人三脚待機場所———
たくさんの参加者が並びざわめくスタート地点。ちなみに僕は三人四脚だから最終走者として出番を待っている。
『位置について! 用意———』
———パァン
乾いたピストルの音が響き、前方に並んでいる走者が一斉に走り出す。僕らが走るのは最後だから、まだまだ出番は先だけど、ここで一つ問題が。
「造とムッツリーニは……まだ戻ってこないのかな……?」
そう。二人三脚が始まってから、僕と共に走る予定の造とムッツリーニが一向に姿を見せない。二人とも『すぐに戻りますので〜』とか『…………俺も』とか言ってたけど、どこに行ったんだろうか?あんまりのんびりしていると、すぐに出番が回ってくるだろうに。
ちょっと心配になって、二人を探すために一旦参加者たちの集団から抜け出そうとすると……
ポンポン ×2
僕の背中を叩く二人分の感覚が。あ、ようやく造たちが戻ってきたんだね。全く、ちょっと遅いよ二人とも?
「造、ムッツリーニ。二人ともどこに行って—————」
とりあえず、二人が遅くなった事に文句を言う為に後ろを振り向くと……
「え、えっと……ゴメン、遅れて……アキ」
「そ、その……私も遅れてしまってすみません、明久君」
「…………美波……瑞希……?」
……何故かもうすぐ出番のハズの美波と瑞希の二人が、顔を赤くして立っていた。え?あれ?な、何で二人がここに?
「えーっと、どしたの二人とも?そろそろ二人三脚始まっちゃうよ?早く戻らないと————」
「あ、あのねアキ……ウチらその……」
「あ、あはは……明久君、あっち見ればわかると思いますよ?」
二人がここにいる事に混乱していると、瑞希が向こうを指差す。よくわからないけど僕も瑞希の指差す方向を向くと……って!?
僕と一緒に走る予定だった造とムッツリーニが手を振っている。造は本来は美波が組む予定だった秀吉と、そしてムッツリーニは瑞希が組む予定だった雄二(の死体)とペアを結んでいるのが見える。……っておい!?
『(やっほーですよ〜アキさん♪)』
『(…………明久、貸し一な)』
二人とも笑顔でそんなアイコンタクトを送っているけど……いやいや、何で君たちがそっちにいるの!?
「美波、瑞希!どう言うこと!?な、何でこんな事に!?」
「えーっと、その……瑞希行きましょうか?」
「そ、そうですね……では————」
「「回想スタートっ!」」
〜以下女子二名の回想〜
『『ハァ……』』
『島田さん、姫路さん。ちょっといいですか?』
『……ん?月野、どうしたのよ?二人三脚始まるわよ?』
『……あれ?土屋くんまで?お二人ともどうしたんですか?』
『ちょっとやることがありまして。ね、こーさん』
『…………ああ。それにしてもお前たち随分落ち込んでるな』
『『うぅ……だって……』』
『あらら……ふふっ♪ねえお二人とも?』
『…………明久と走りたいか?』
『『…………えっ!?』』
『あ、アキと一緒に走れるの!?』
『ど、どう言うことですか!?』
『おぉ……やっぱりアキさんと一緒に走りたいんですね、わかりましたわかりました。……ねえ、島田さん。自分は“ヒデさんと”ペアでしたよね?』
『……え?』
『…………姫路。俺は“雄二と”ペアだったハズ』
『……はい?』
『よくわかりませんが、どうやら間違えて自分三人四脚のくじを引いてしまったようなんですよ』
『『ま、間違えて……?』』
『ええ。間違えて♪自分は“本来お二人が引くはずの”くじを引いてしまったんですよ♪』
『『っ!?』』
『…………俺も間違えた。だから二人とも』
『『…………(ゴクリ)』』
『『自分(俺)のくじと交換しませんか(しないか)?』』
〜回想終了〜
「————って感じなの」
「そ、その……折角でしたので月野君たちのご厚意に甘えることにしたんです」
「あ、あはは……そっか、造たちが……」
つ、つまりそれは……僕らに三人四脚をさせてくれると言うこと……!?あ、あの二人……やってくれたな!ふっ、いいだろう……一週間は君たちの奴隷になる事を許可しようじゃないか!今なら二人の靴も舐められそうだよ!(それは謹んでお断り(です)byムッツリーニ&造)
「えっと……そ、そんなわけでアキ。よ、よりょしくねっ!」
「そ、その……明久君、よ、よりょしきゅお願いしますっ!」
二人とも、すっごく噛んでるよ?全く、可愛らしいなぁ。まあとにかく今の僕がやることは、造とムッツリーニに全力で感謝すること。美波、瑞希と一緒に体育祭を楽しむこと。そして————
「————うん!よろしくね。美波、瑞希!」
「「ええ(はい)!よろしくね(です)♪」」
『『『よろしくね、吉井♪そう……地獄の閻魔様に夜露死苦(ヨロシク)なァ……!』』』
————僕らの番が来るまで、地獄の鬼と化したクラスメイトから何がなんでも生き残ることだっ!いいだろう、かかってこいやっ!この二人との幸せなロードを駆ける為なら、僕は修羅と化そうじゃないかっ!
- 108時間目 天国と地獄の三人四脚〜途中から+1人〜 ( No.35 )
- 日時: 2015/07/31 21:16
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
造Side
「ふふっ♪良かった良かった。アキさん嬉しそうですね」
「やれやれ……何やらムッツリーニと相談しておると思ったら、こんなことを企んでおったのか」
ヒデさんと足に紐を結びながら、ペア替えの真相を暴露します。ふふっ♪折角の体育祭ですもの。アキさんも、それから姫路さんも島田さんも楽しんでもらいたかったいですからね〜♪
「それにしても……造はともかく、よくムッツリーニは雄二とペアになる事を承諾したのう。あやつの事じゃからまた写真を撮る為に、姫路や島田、もしくは不本意じゃが造かワシとペアになることを望むのじゃとばかり思うておったぞ?」
「そうですか?……意外とこーさんも結果的によかったんじゃないかなって思いますよ?」
「む?どういうことかの?」
だって……ねえ?
「こーさんがもしもこれで女子とペアを組んだりしたら———工藤さんがちょっと嫉妬しちゃうかもしれないじゃないですか」
「あー……それはあるかも知れぬの。フッ、何じゃ。それはつまりムッツリーニも意外と工藤を意識しておると言うことかの」
「ふふふっ♪本人は全力で否定しているようですが」
海の一件以来、こーさんと工藤さんがお互い意識しまくっているのは皆さんから見ても、鈍感な自分から見ても丸わかりですもんね〜
「まあ、じゃが造は大変じゃったの。結局何だかんだで、あやつらに振り回されて行ったり来たりと」
「へ?……あ、ヒデさん。そうでもないですよ」
「???何じゃ?また何かあるのかの?」
「だって……そのお陰で———」
「そのお陰で、何じゃ?」
「———そのお陰で、ヒデさんと一緒に二人三脚できますからねー」
「…………っ!?」
そう笑いながらヒデさんに告げる自分。ヒデさんとなら相性良いでしょうし、クラスで一番気の合う友人ですし一緒だと楽しいですからね。
「……造は……ワシと走れて、嬉しいのかの?」
「???ええとても嬉しいですよ。当たり前でしょう?仲良くして貰っているヒデさんと走れるんですからね、嬉しいに決まっているじゃないですか」
「……そうか。嬉しい……のじゃな」
???ヒデさん?大丈夫でしょうか?物凄く顔赤いですよ?
『位置について!用意———』
———パァン
と、スタートの音と共に前方に並んでいたペアが走りだしました。いよいよ自分とヒデさんの番ですね。
「ではヒデさん、頑張りましょうね!」
「……うむ。必ずや勝利をお主に捧ぐからの……」
「えっ!?」
そこまで!?ちょ、ちょっと気合入り過ぎでは!?お、おおぅ……ヒデさんが物凄く燃えてますね……!ちょ、ちょっとカッコいいですね♪ヒデさん、きっと本気で勝ちたいんでしょう。よっし!ここは自分もこれは自分も全力で応えねば!さあ、行きましょう!
『次の組。位置について!』
「じゃあ、行きますよヒデさん!」
「うむ、全力で勝利に向かって突き進むまでじゃ!」
『用意———』
パァン!
大空に鳴り響くピストルの音に合わせ、自分とヒデさんが動きだします。1・2・1・2とお互いリズムよく交互に足を出して、とてもいい滑り出しです。二人三脚で重要なのは相手と呼吸を合わせること。その点自分とヒデさんは普段から(色んな意味で)息が合うので、この競技には敵はいませんと豪語出来ます。そう、自分とヒデさんはそれほどまでに息の合った動きで————
《頑張りなさいな!我が弟たちよ!勝てたらご褒美にお姉ちゃんがハグしてあげるからねっ!》
《負けてもハグするがな!さぁ、行け造にヒデっちぃ!お前らの勝利の女神たちが応援してるからな!》
《《《頑張って!私たちが一生付いてますからねっ!!!》》》
《ちょっと!?先生方に木下さん!?実況をジャックしないでくださいよ!?》
ズザァアアアアアアアアアアア ×2
————息の合った転び方をしてしまいました……あまりに唐突すぎて、思わず顔から行ってしまった自分とヒデさん。あ、あの人たちは何してんですか……!?
《造くん!秀吉!大丈夫!?すぐにお姉ちゃんたちが手当てしてあげるからねっ!》
《ゴールしたらすぐアタシが治療してやるからなっ!ついでにその汚れた服も綺麗なものに変えてやるから安心してな!》
《《《綺麗な……服……♪頑張ってください二人とも!》》》
《ま、マイク返してください先生たち!?実況させてくださ———》
「「…………」」
「あ、姉上も先生方も……何をやっておるのじゃ……」
「き、気にしたら負けですよヒデさん……」
「いや、確かにいつもの事かもしれんが……」
「こうなればやることは決まっています。さっさとゴールして、止めさせましょう……」
「そうじゃの……それが一番の、この状況を打破する手じゃな……」
と、一先ず速攻で立ち上がり、それから最速でグラウンドを駆けて見事にヒデさんと自分は一位を確保しました。ついでに会場の皆さんの笑いも一番に確保してしまいましたがね!?……後で聞いた話ですと、自分ら二人は顔をすりむいた事も重ねて、顔が茹でダコのように赤かったとのこと。
「…………これがホントの赤っ恥ですか」
「…………寧ろ、姉上たちが恥じゃぞい」
ヒデさん共々、何だかとっても疲れる二人三脚でした……精神的な意味で。
- 108時間目 天国と地獄の三人四脚〜途中から+1人〜 ( No.36 )
- 日時: 2015/07/31 21:50
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
明久Side
造たちが(ある意味)散々な目に遭った後、いよいよ僕と瑞希の美波の三人四脚が始まろうとしていた。……ふっ、ふふふ!はっはっはっ!生き残った……生き残ったぞっ!!クラスメイトと言う名の(嫉妬の)鬼共と渡り合い、死線を潜り抜け(本当に死ぬかと思ったけど)何とかこれで競技に出れるっ!
スタートギリギリまでフルボッコにされかかってたけど、この二人と走れるなら僕も命を賭けられるからね!ああ、本当にありがとう造にムッツリーニよ……
「あの……アキ?アンタもう、何だかボロボロだけど大丈夫なの?」
「明久君、もう見るからに満身創痍ですが……本当に平気ですか?」
おっと……なんて優しいんだろう。二人が心配そうに声をかけてくれる。ここは男として余計な心配をかけないようにしなきゃね。
「大丈夫、大丈夫。ほとんど掠り傷だよ♪」
「「そう(ですか)♪安心したわ(しました)」」
『『『安心した。なら……もっと甚振ってもいいのだな……?終わったら地獄の拷問フルコースを忘れるな、吉井ィ……』』』
瑞希と美波のセリフの後に、殺意に満ち溢れるクラスメイト達がそう続けてくれる。君たちは瑞希たちみたいにもう少し僕を心配してくれると嬉しいな。……あ、いやゴメン。ムサい男共に心配させれるのはちょっと勘弁だねHAHAHA! ←勝利者の余裕
『最終走者。準備して』
と、ここでようやく僕らの出番のようだ。よしよし。折角三人で仲良く競技に出れるんだ。どうせなら勝ちに行こう。
「やろう、二人とも。僕らがトップでゴールするんだ!」
「ええ♪任せなさいアキ。全力を尽くすわ」
「私も出来る限り頑張りますね!」
「そうですわね。美春も頑張ります」
そして僕ら“四人”で固唾を呑んでスタートを待つ。さあ、いよいよ勝負だ。
『位置について!用意———』
パァン!
スタートを告げる乾いた音と同時に僕たちは動き出した。打ち合わせ通り、いやそれ以上に息を合わせて足を出して行く。だんだんとペースを上げて行き、もうこれが四人五脚でないような一体感や疾走感が生まれた。
ああ、そうか。こんなにも呼吸が合っていたのか。だから、だからなんだね————
『『『あれ……?何で2−Fクラス(?)は四人で走ってんだ……?』』』
————僕の横で足を縛っているハズの美波が、清水さんにも縛られている事に三人とも走り出すまで気が付かなかったのは。
「「って、清水さん!?」」
「え?あ、あれ?美春!?アンタ何でここにいるのよ!?」
「決まっているじゃないですか!そこの恋敵がお姉様と走るのに、美春が走らないなんておかしいですもの!美春はお姉様と一心同体です!」
凄い理論だ。きっと清水さんの頭の中には、美波に関する独自の理論が在るのだろう。
「ちょっ!?アンタはDクラスでしょう!?ここにいちゃダメって……きゃっ!?な、何してんのアンタああああああああああああ!?」
「ああ、お姉さま……密着しても決して存在を感じさせない、その奥ゆかしいお胸がたまりません……』
「ドサクサに紛れて何処触ってんのよ!?やっ……ちょっ、シャレになってな———ひゃあんっ!?」
「おおおおおおおお姉様!?なんて色っぽいっ!……美春は感激ですわ!」
そして、物凄く過激だ。ヤバいな……鼻の辺りが熱くなってきた。清水さんにヤラレないように美波が必死で抵抗する。そしてその振動は僕にも、そして僕の反対側で縛られている瑞希にも伝わってきた。
「きゃっ!?し、清水さん暴れないで、下さいっ!?あんまり暴れられると……ぶ、ブラが……」
ブラが……どうしたって……!?いかん、本気でいろいろとマズイ。さっきから清水さんが暴れちゃっているせいで(お陰で?)美波と瑞希の……その、胸の感触が直に伝わってくる。このままじゃ僕のこれからの事で学校ではクラスメイトと、家では姉さんと一緒にお話し(と書いて拷問)されてしまう。
「そうよ!美春、あんまりふざけるとウチも怒るわ———ってちょっとぉぉぉっ!今アンタ背中に手を回してホック外さなかった!?」
「ハァ……ハァ……大丈夫です!お姉さまなら固定しなくても何の邪魔にもなりませんから!」
「い、いい加減にしなさいっ!?美春っ!後で覚えておきなさいよ!」
「はい!美春はこの感触一生忘れません!」
「そういうこと言ってるんじゃないわよっ!さわ……るなっ!……ゃんっ!?」
「や、止めてください!?ホントにこれ以上はブラが……っ!ぁんっ!?」
極めつけが、僕の耳元で聞こえてくる色っぽい二人の吐息。……思春期の僕にはちょっと刺激が強すぎるわけで。今ならムッツリーニの普段の気持ちが物凄くわかる。なんなら鼻血の量で勝負してもいいよ。
《ご、ゴール!一着は2−Fクラス(?)の皆さんです……よね?一人多いですが……》
アレだけ暴れておきながら、気がつけば僕らが一着でゴールしていた。皆一心不乱に走ってたからかな……
「はぁ、はぁ、はぁ……。美春、アンタねえ……!」
「お姉さま、素敵でした……」
「“素敵でした”じゃないわよ!?アンタはウチを辱める気!?」
「それでは美春はこの辺で失礼します!またお会いしましょうお姉様♪」
「あ!コラ!待ちなさい!美春————っ!!」
美波に頭を下げて、脱兎の如く駆け出す清水さん。流石だ、あれだけ走ってまだあのスピードを出せるのか……
「全く、あの子は……瑞希、大丈夫?」
「うぅ……私のブラ、また壊れちゃいました……折角良いの買ってたのに」
「……大丈夫じゃなさそうね、アンタの“胸”は……って、アキ?どうしたのよ。さっきから黙っちゃって」
「あれ?そう言えばそうですよね?明久君どうかしたんですか?」
二人が僕に話しかける中、僕は淡々と足の縛りを解く。だってそうしないとそろそろヤバイから……
「???明久く……!?明久君!?」
「ちょ、ちょっとアキ!?何よその血の量は!?明らかにマズイでしょう!?」
「(ドクドクドクドク)ははっ……平気……だよ?」
何とか気合いで足を解き、二人に笑顔を見せる事に。耐えろ、耐えるんだ吉井明久。苦しくても少なくとも逝く時は笑顔で逝かないとね。
「あ……二人とも、最期に一つだけいい?」
「「最期!?縁起でもないわよ(ですよ)!?」」
まあまあ聞いて。これだけは、ふたりに言っておかないとね。
「えっとね……ちょっぴり刺激的過ぎるから———早くブラ付け直してきて……ね(ガクッ)」
「「アキ(明久君)!?しっかり!?」」
……そして今回のお話の冒頭に戻る。その後のことはホントうっすらしか覚えてないけど、鼻血による大量出血とクラスメイトによる親身な拷問でリアルに三途の川でお爺ちゃんとお話ししてきたような気がする。確か『お爺ちゃん。僕二人も大切な人が出来たんだよ?』って話をした気が……まあ、造が日高先生を呼んで来てくれたから何とか現世に戻ってこれたけどね。
ちなみにグラウンドを真っ赤に染め上げたことと、翌日の『学園一のバカ、吉井明久:今度は三股か!?姫路瑞希・島田美波・清水美春との関係に迫るっ!』って言う新聞記事により一躍僕が(更に悪い意味で)有名になったことは言うまでもないだろう。
『吉井くぅん?キミホントいい根性してるねぇ……?コロスゾゴラァ!』
『『『会長に続けェ!クタバレ吉井っ!』』』
『ええぃ、やっぱりこうなるの!?』
『美波ちゃん!私気づいちゃいました!三股ってことは……私たちって学園中の皆さんから明久君と付き合っているって思われているってことですよね!』
『あ、なるほど……!つまりウチらの仲が学園に公認されてるってことね!流石瑞希、だったらこれって悪い気がしないわね!』
『『『『姫路(さん)……島田(さん)……それでいいのか(いいのですか)……?』』』』