二次創作小説(紙ほか)
- 召喚実験シリーズ:〜みんなの子どもシミュレーション〜その⑥ ( No.348 )
- 日時: 2016/03/18 21:15
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
造Side
《うー……なんか釈然としませんが……とりあえず何もなかったと言うことにしておきますね》
自分の身体の特性上、小暮さんに自分との子ども召喚獣を召喚された時から解除されるまでの記憶が全くありません……ですが覚えていないのに何だか屈辱を受けた気分ですし、何があったのか非常に気になるのですが……どなたに聞いても知らないの一点張り。ええぃ、どうせ覚えていないんです!何もなかったことにしましょうかねっ!……いえ、ホントはかなり気になるのですが。
「ふふふっ、この実験はとても楽しいですね。あ、そう言えば皆さんは全員ご自身の子ども召喚獣を試してみたのですか?」
《えっと……いいえ、確かまだアキさんと———》
「あっ!そうでしたっ!それが聞いてくださいよ葵先輩!明久君酷いんですっ!おとなしくしてくれないんですよ!?」
「そうなんですよ!アキったらすぐに逃げ出そうとしてウチと瑞希の子どもを作ってくれないんですっ!」
《———と言うわけで、アキさんと姫路さん・島田さん達の召喚がまだですかね》
小暮さんがそう尋ねると姫路さんと島田さんが小暮さんに泣きつくように愚痴を言います。……今更ですが、最近霧島さんも含めやけに姫路さん達って小暮さんに妙に懐いてますが一体何があったのやら?
「あらら、それは悲しいですね。……吉井君、瑞希さんも美波さんも楽しみにしているようですし少しだけでも召喚してあげて良いのでは?別に何か減るものでも無いでしょうに」
「え、いやその先輩……ぼ、僕にも事情と言うものがあってですね」
「事情って一体何の事情ですか明久君っ!」
「坂本とは子ども作れてウチらとは作れない事情って何よアキ!?」
「待って!一応念を押して言っとくけど雄二とのアレは望んでやったわけじゃないからねっ!?」
そうツッコみながら後ずさりするアキさんと、今度こそはとアキさんと召喚しようとアキさんを追い詰める姫路さん達。
「……雄二、しよ」
「やらんわ!って、待て待て待て!?翔子お前これで何度目だ!?お前だけ召喚し過ぎだろうが!」
「……大丈夫、後一回だけって約束するから。それで終わりにするからお願い。大事なこと忘れてたの」
「…………本当に後一回で終わりにするだろうな?ま、まあそれなら———待て。大事なことを忘れてた?何のことだそりゃ?」
「……写真撮るのを忘れてた。撮ってからお義母さんとかお母さんとかお父さん達に二人目出来たって報告しないといけなかったのにうっかりしてた」
「…………や、ヤバイ……こいつ本気の目をしてやがる……っ!本気で既成事実作る気だ……っ!し、死んでも御免だバカ野郎!?」
ゆーさんと霧島さんもアキさん達と同じように追い詰められ追い込んでいるご様子。と言うか霧島さん……まさかとは思いますが、それは自分を一人目として報告したわけではないでしょうね……?
「うーん……それにしてもこーたくん。子どもが出来るってことはさー」
「…………?何だ工藤」
「それってさ、当然と言えば当然だけど“その前の過程”を経ているってことだよね。つまりはコンピューターはボクとこーたくんの“あんなこととかこんなこと”を予想して———」
「…………だからどうしたと言うんだ工藤(ボタボタボタ)」
「わわっ!?こ、こーたくん鼻血鼻血!もー!すぐ興奮しちゃうんだから」
「…………誰の……せいだと(ボタボタボタボタ)」
あっちの方では工藤さんの発言にこーさんが鼻血を大量に流している模様。…………あ、それはいつも通りですから放っておきましょうかね。
「ふふふっ、本当に楽しいですね。さて……折角の機会です。もう一度試してみるのもいいかもしれませんね。ねぇ月野お父さん———もとい月野君♪」
《っ!?ななな、何を仰いますやら小暮さん?》
「せ、先輩っ!させませんよ!秀吉っ!造くんをガードしなさいっ!最悪アンタが造くんの子どもを産みなさいな!アンタが造くんの子どもを産めば先輩は産めないハズだし!」
「あ、姉上っ!?語弊のある発言は止めぬか!?それではワシが造の子を産むように聞こえるじゃろが!?」
「あら、今度は月野君と弟さんが召喚するのですか?うーん……仕方ありませんね。なら余り者同士———私と義姉さんが召喚することにしましょうか」
「どうしてそうなるのですかっ!?い、嫌ですっ!だ、だったらアタシは造くんか秀吉と召喚を———」
こちらもこちらで小暮さんが絶好調。活き活きとした表情で楽しそうに自分と優姉さんとヒデさんをからかい始めます。
「諦めてください明久君!」
「もう誰も助けになんか来ないんだからね!」
「……雄二、やろう」
「ふふふっ、さて月野君・義姉さん・弟さん。覚悟は宜しいですね♪」
「「「「《や、やめて———っ!!!!!》」」」」
この場にいる全員が自身の事で手一杯となり他の人を助ける余裕なんてありません。抵抗らしい抵抗も出来ず壁際に追い詰められて、本当に後がないこの状況。まさに絶体絶命、これでいよいよ年貢の納め時か……!?と、諦めかけたその時。
「さぁて、こんなもんで十分かねぇ。んじゃ解除(キャンセル)」
キィイイイイイイイイイイン ボンッ!
「「「「えっ?」」」」
突然学園長がそう言って、召喚フィールドを取り消します。ついでにフィールドが無くなったことで自分の召喚獣化した身体も元に戻りました。……助かった……?
「が、学園長先生!?お願いです、あと少しだけ待ってくださいっ!」
「ウチからもお願いしますっ!ま、まだウチら全然召喚してませんよ!?」
「……せめて後一回、後一回だけお願いします」
「その気持ちはありがたいがね、データはもう十分すぎるくらい集まったからねぇ」
「「「でもっ!」」」
「それとも何だい?まさかとは思うが他の私的な理由で召喚獣を呼ぶ気なのかい?それはいただけないねぇ」
「「「うっ……いえ、それは……」」」
「よし、ならこれで終いさね。時間もだいぶ遅いしそろそろ下校の準備をすることだね」
「「「はい……」」」
意外な事に助け舟を出してくれた学園長。その学園長の言葉に、渋々と引き下がる女性陣。
- 召喚実験シリーズ:〜みんなの子どもシミュレーション〜その⑥ ( No.349 )
- 日時: 2016/03/18 21:16
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
「え、終わり……?い、いいの……?し、信じられないけど……これってババァ長———もとい学園長が助けてくれたってこと……?」
「まさか天変地異の前触れじゃねぇだろうな……?まあ、正直助かったが。感謝せんでもないぞババァ」
「皆さんお疲れ様でしたね。……って、あれ?こーさん……?こーさんっ!?大丈夫ですか!?」
「…………(ぐったり)」
「あわわ……こ、こーたくんまた貧血で倒れてる!?ご、ゴメンからかいすぎたね。と言うわけでボクはこーたくん保健室に連れていくから!」
「うむ、工藤頼んだぞい。後でムッツリーニの鞄は保健室に届けておくからの」
「アタシも愛子の鞄後で持ってきてあげるから、安心して土屋君の介抱お願いね愛子」
「う、うんありがと!それじゃあね!」
長かった実験もこれで終わりと言うことで、大きくホッと溜息を吐きながらアキさん達も集まってきました。ついでにこーさん&工藤さんはいつもの如く保健室に直行。やれやれ本当に疲れちゃいましたね……それにしても。
「そう言えばずっと気になっていたことがあるのですがアキさんにゆーさん、落ち着きましたし聞いても良いですか?」
「「ん?何だ(かな)造?」」
「何だかお二人って今回妙にこの実験を嫌がっていましたよね。暴走の件や最初の同性同士の子ども召喚獣の召喚の件を差し引いても、いつも以上に嫌そうでしたし必死に抵抗していたように感じたんですが……それってどうしてなんですか?」
「む、そうじゃな。ワシも少し気になっておったぞい。お主らがあそこまで召喚に抵抗したのは何故なのじゃ?」
「そ、それは……その……」
「ぐっ……い、いいだろ理由なんて別に……」
その問いに言葉が詰まるお二人。そんな自分とヒデさんの質問に、島田さんたちも乗ってきます。
「そうよアキ……あんなに嫌がらなくてもいいじゃない……ちょっと悲しくなるわよ。何でそこまで嫌がるのよ……」
「私もショックでした明久君……私たちとの子ども、そこまで見たくないんですか……?」
「……雄二も、酷い。ちょっと傷つく」
「「…………」」
その自分たちと女性陣の質問に沈黙を貫くアキさん達。一体全体どうしたというんですかお二人とも?
「ああ、なるほどねぇ。……ジャリガキ共、一つ良い事を教えておいてやるよ」
「学園長?」
黙っているアキさん達を代弁するかのように、どういうわけか少し含み笑いをしながら機材をまとめた学園長がFクラスの扉の取っ手に手をかけてこのように続けます。
「子どもっていうのはね、遺伝子情報だけで出来やしないよ。環境や育て方、様々な要素があって大きくなるってもんさ」
「???え、ええ。そうですがそれがどうしたんですか?」
「おや、ここまで言ってもわからないかい月野。だからね———」
そこでニヤリと笑うと、学園長はアキさんとゆーさんに向かって一言。
「———だから、未来の事が先にわかってつまらない、なんてことはないから安心しな」
「「な…………っ!?」」
「きひひ!なーに慌ててやがんだい吉井に坂本。アタシはただ子どもの人格形成についての一般論を述べただけだと言うのにねぇ。ま、ともあれご苦労さんだったねジャリガキ共、後日食券程度のモノ恵んでやるから感謝することさね」
という一言を告げると、さっさと機材をもって学園長室に戻っていきました。そして後に残ったのはその学園長の言葉に明らかに動揺している少し顔が赤いアキさん達。……ん?つまりそれはどういう事です?
「え、えっと……?学園長は何が言いたかったんでしょうかね?」
「さてのう?ワシもようわからぬ。一体どういう意味じゃろうな」
「先にわかってつまらない……?どういうことかしら?」
「あらあら、月野君たちは今の学園長の話を聞いてもまだわかりませんか?」
「え?もしかして小暮さんはその意味がわかったんですか?」
「ええ勿論」
よくわからずに首をかしげる自分たちの中、ただ一人納得した表情の小暮さん。そんなわかっていそうな彼女にその意味を尋ねてみると。
「つまり学園長先生はですね、吉井君や坂本君がここまで抵抗したのは……もしかしたら誕生するかもしれないご自身とその相手方との子どもを先に見てしまうと今後の楽しみが半減してしまうと考えているから———と言いたかったのですよ」
「「き、着物先輩っ!?違いますからねっ!?」」
まだ学園長やアキさん達の意図がわかっていなかった自分たちに小暮さんが笑顔でそのように補足してくれます。えっと……?今後の楽しみが半減……?楽しみが……あ、ああっ!?そ、そういう事!?わ、わかった……要するにアキさん達が考えていた事って、将来ご自身とそのパートナー達の子どもが出来るかもしれないのに今見たらその時の感動が薄れるということなんですか……!
「あー……そう考えれば確かにお二人が最初から嫌がってたのも理解できますね」
「そうじゃな、そりゃこやつらも必死にもなるのう。普段はアレじゃがこやつらは何だかんだで根は純情のようじゃしの」
「ってことらしいわよ、瑞希に美波に代表。良かったじゃないの、これってつまり吉井君と坂本君に意識されてるって証拠だし」
「ふふふっ、とても微笑ましい限りですねー瑞希さん美波さん翔子さん♪」
「え、えっと……明久君……そ、その……え、えへへ♪」
「ア、アキってばそんなこと考えてたんだ……べ、別にあんなのは占いみたいなものだから、そこまで気にしなくて良かったのに……か、可愛いわねアキ」
「……雄二は照れ屋さん」
小暮さんの説明にさっきまで不満げだった姫路さん達も、少し嬉しそうにそしてアキさん達を微笑ましそうに見つめてそう言う始末。そしてその話題の中心のアキさん達はと言うと———
「「ご、誤解だぁあああああああああああああああああああああああ!!あ、あんのクソババァああああああああああああああああ!?」」
———気恥ずかしさを払拭するかのごとく校内に響き渡る雄たけびを上げてしまいましたとさ。そんなアキさん&ゆーさんの心からの叫びと共に、この子ども召喚獣実験は幕を下ろすこととなりました。
- 召喚実験シリーズ:〜みんなの子どもシミュレーション〜その⑥ ( No.350 )
- 日時: 2016/03/18 21:17
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
〜実験終了から10分後〜
「———あら、月野君。またお会いできて嬉しいですよ、お疲れ様です」
「ん……?あ、小暮さん。お疲れ様です」
子どもシミュレーション召喚獣の実験を終えてからしばらくして、一人トコトコ歩いているとバッタリ小暮さんとまた出会った自分。
「珍しいですね、まだお帰りになっていなかったのですか。普段はいつもの皆さんと一緒に下校している時間なのでは?」
「ええ、他の皆さんは用事があるとか何とかで今日はバラバラなんですよ。アキさんとゆーさんは……その、学園長に報復してくるとか何とかでどこかへ行っちゃいまして。ヒデさんはいつものように部活ですし、こーさんは工藤さんに介抱されているので保健室ですね」
ヒデさん達はともかくアキさんとゆーさんは止めた方が良かったのでしょうが、止める間もなくすぐさま行ってしまいましたからね……ちょっぴり心配ではありますが……ま、まぁそこまで危険な事は流石にしない……と思いたいです。
「そう言えば瑞希さん達もさっきの子ども召喚獣をテーマにプチ女子会をすると仰っていましたね。なるほど、それでお一人なんですね。では月野君は今日はそのままお帰りですか?」
「あ、いえ。そう言う自分も用事と言いますか約束がありましてね。まだ少し学園に残るつもりですが……あ、そうだ。ねぇ小暮さん?小暮さんこそそのままお帰りになられるのですか?忙しかったりします?」
「私ですか?いいえ、今日は部活もありませんし受験勉強の息抜きに少しウロウロしても良いかなと思ってはいますが……それが何か?」
よしよし、それは好都合。なら折角ですから———
「ならちょうど良かった。実はですね……今日はあの文さんと会う日なんですよ。もし小暮さんが良いなら……一緒に文さんに会いに行きませんか?」
「あら、あらあら文さんとですか♪ええ勿論。ここのところ全然会う機会がありませんでしたし、月野君さえ良ければこちらこそお願いしたいところですよ」
「良かった、助かります。文さんもきっと喜んでくれますよ。では行きましょうか、案内しますね」
「よろしくお願いしますね月野君」
———今日は召喚システムの頭脳である文さんとお話する日と約束をしていましたし、彼女の友人と言ってくれた小暮さんも一緒に来てもらいましょう。数少ない文さんの正体を知っている小暮さんになら彼女と合わせても何の問題ありませんからね。と言うわけで小暮さんを文さんのいるシステムサーバー室まで案内することに。
「ふふっ、今日は色々とツイていますね私。月野君との子どもが作れたうえに文さんとも会えるなんて」
「うっ……ね、ねぇ小暮さん。もう一度聞きますが、自分と小暮さんで召喚した召喚獣って一体どんな子だったと言うのですか……?」
システムサーバー室に向かいながら、暇つぶしがてら先ほどの続きの話をする自分たち。どんな召喚獣が誕生したのか気になりますねホント……
「それはもうとても面白い子でしたよ月野君。ああ、今更ながら動画を取っておくべきでしたね……それだけは口惜しいです。月野君もどんな召喚獣が誕生したのか気になっているようですからね」
「……そこまで言われると知りたいような知りたくないような複雑な気分になりますよ……」
小暮さんの言う面白いは……愉悦的な意味の面白さでしょうからね。もしかしなくても小暮さんに似た子が召喚されてたってことじゃ……?
「あらあら、そんな顔しないでくださいな。ちょっとからかいすぎましたか?安心してください月野君。さっき学園長も言ってましたよね。環境や育て方、様々な要素があって大きくなると」
「あー、そんなこと言ってましたね」
「ええ。ですから月野君なら私のような捻くれている子どもになる前に、しっかり育ててくれると思いますよ」
いや、別に小暮さんは捻くれているわけではないでしょうに……人より少しだけお茶目ではありますが。
「それにですね。どうもさっきの私と月野君の召喚獣は私のデータに偏り過ぎていた感じでしたし、仮に……そう、その……仮に、月野君と私の間に子どもが出来たとしてもさっきのような子だけじゃなくて……月野君に似た子もちゃんと産む———いえ、産まれる……と思いますよ」
「……そ、そうです……よね」
…………なぜ、でしょうかね。少し気恥ずかしくなってしまう自分。心なしか余裕そうだった小暮さんも珍しく言いよどんでしまっているような……?
「こ、コホン。え、えっと……さ、さっきの召喚獣がどんな子かは自分にはわかりませんが、では自分に似た子になるならどんな子になるのでしょうかねー?」
「月野君に似た子……ですか。そうですね、それなら多分———」
「ん……?あ、話の途中ですがすみません小暮さん。ちょうど着きましたよ。ここです、今開けるので少し待っててくださいね」
「あら、もう着いたんですか。なるほど、ここが文さんのいる部屋ですか」
話に夢中になっていましたが、いつの間にやらシステムサーバー室に辿り着いていた自分たち。一旦話を中断して学園長に頂いているカードキーを差し込んでからパスワードを入力。しばらくするといかにも頑丈そうな扉がゆっくりと開きそこから———
《ツクル 待ってた ヨー!》
「うわっ!?び、ビックリした……」
《もー! 遅い ヨー! 文 待ちくたびれ たー!》
———文字通り自分に向かって飛びかかってそのまま抱き付いてくる召喚システムの頭脳である文さんの姿が。件の実験で予定していた時刻より少し遅れたせいか、ちょっぴりふくれっ面なご様子ですね。
「わ、わかりました。わかりましたから落ち着いて文さん。お待たせして悪かったと思っていますが、とりあえず抱き付くのは止めましょう。あんまり子どもっぽい事しちゃうと小暮さんに笑われちゃいますよ?」
「ふふっ、こんにちは文さん、相変わらずお元気そうで何よりです。文さんは本当に月野君が大好きなんですね」
《んー? あー! ヤッター! アオイも 一緒 だー! こんにち はー! 来て くれて 嬉しい ヨー!》
そのふくれっ面も、小暮さんを連れてきてあげたことで満面の笑みに変わります。自分から離れ、今度は小暮さんに抱き付く文さん。良かった……小暮さんに付いて来てもらって正解でしたね。
「あらあら♪文さんは嬉しいことを言ってくれますね。…………ああ、そうだ。月野君」
「はい?どうしました小暮さん?」
ふと思い出したように、文さんの頭を撫でながら小暮さんが自分に向かってこう続けてきます。
「さっきの話の続きになるんですがね。仮に……月野君に似た子どもが産まれるとしたらって話していたじゃないですか」
「あ、ああ。そうでしたね。それがどうしました?」
「もし産まれるとしたら———それはきっと文さんのような子が産まれるのではないかな、なんて思ったんですよ」
「…………おお、なるほど」
文さんみたいな子……確かにそうかもしれませんね。自分を元にして生まれた文さんは当然のことながら自分に似ているところもありますし、小暮さんに言われると何だかすんなり納得してしまいます。そうか……文さんみたいな子か……
「うん……良いですね。そうなったら楽しいでしょうね」
「きっとそうなりますよ。そしてきっとお父さんが素晴らしく良いお方ですから優しくてお茶目で一生懸命な子になるでしょうね」
「いや素晴らしいかはわかりませんが……もしも子どもが出来たなら文さんみたいに元気で良い子に育ってほしいですね。そしたら毎日が退屈しない楽しい日々になりそうです」
《んー? ナニ ナニー? なんの 話を してる のー?》
「ああ、えっとですね。実はさっきまで自分たちは学園長の設定した新しい召喚獣の実験をやっていたんですよ」
「二人で一緒に召喚してその二人の子どもをシミュレーションするという召喚獣だそうです。それ関連のお話ですよ文さん」
《おー! アレ かー! ばーちゃん 最近 頑張って 設定 ヤッテタ やつ ダヨネー! 二人の 情報を 合体 するのー!》
今度は自分の方にじゃれに来た文さんをよしよしと撫でながら膝の上に乗せ、さっきまでの実験についても話すことに。なるほど、子どもが出来たらこんな感じになりそうですね。そんな感じで小暮さんと一緒に最終下校時間ギリギリまで文さんと世間話で盛り上がった放課後となりました。
「(ボソッ)……ええ。きっとあなたは良いお父さんになりますよ、“造お父さん”♪」
《んー? アオイ どった のー? 何だか にこにこ 笑って るー?》
「あれ?小暮さん、今自分を呼びませんでしたか?」
「いえ、気のせいですよ。それより文さんは知らないでしょうし月野君は覚えていなかったみたいですから、さっきの実験の詳しいお話をしてあげますね。文さん、それに月野君♪」