二次創作小説(紙ほか)
- 彼と彼女とある日の出来事〜明久と瑞希編〜中編 ( No.359 )
- 日時: 2016/03/25 21:12
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
明久Side
何とか瑞希&姉さんの必殺料理人コンビを説得し、無事に昼食を終えた僕は……今現在瑞希と一緒に市内のショッピングモールへと来ていた。
「それで瑞希、何を買うのかな?」
午前中に掃除もやり終えたし、後は夕方まで美波と葉月ちゃんの連絡を待つだけと言うことで暇をしていた僕は、昼食後何やらちょっとした買い物があると言って外に出かけようとしていた瑞希の荷物持ちを買って出たんだけど……肝心の何を買うのか聞いていなかったね。と言うわけでモールの入り口でそう尋ねる僕。
「えっ!?え、えーっと……ちょっと服を買おうかなって思ってまして。た、大した荷物にならないので荷物持ちもしなくていいんですよ明久君」
「良いって良いって。どうせ夕方までやることもなかったしどんどん使っちゃってよ」
「(ボソッ)いえ……これから買うものはちょっと明久君に持たれると恥ずかしいものと言いますか……」
「ん?恥ずかしい?何が?」
「コホン!わ、私の買い物はともかく、明久君こそ良いんですか?何か用事があるって行く前に言ってましたけど」
「あ、うん。用事って言っても僕のは大したものじゃないから後で適当に行ってくるよ」
当たり障りのないことを言ってお茶を濁す僕。瑞希について来たのは勿論彼女の荷物持ちが最優先事項ではあるけれど実はもう一つ隠れた目的がある。そう———新作ゲームの購入だ。最近は姉さんの監視が厳しすぎてずっと我慢してきたけれど、そろそろ我慢も限界。話題の新作なんだし、なんとしても手に入れたいわけで。
「あ、でしたら明久君のお買い物が先で構いませんよ。何でしたらついて行きますし」
「えっ!?」
それは困る、すごく困る。ゲームの事は姉さんは勿論なるべくなら瑞希にもバレないようにしておきたい。素直で良い子で嘘が苦手な瑞希だからうっかり姉さんの卑劣な誘導尋問に引っかかってゲームの事がバレる恐れがあるからね……
「い、いやホラ!ぼ、僕のは……本当に楽しくも無ければつまらない用事だし!」
「いえ、私の方こそ大した用事ではないんです。ですからどこだろうといくらでもお付き合いしますよ」
「いいや、瑞希の用事の方が大事だって!」
「いいえ、明久君の用事の方が大事です!」
遠慮深くて優しい瑞希は気を遣って僕を優先に考えてくれているようだけど、どうしようこのままじゃゲーム買いに来たってバレてしまう……こ、こうなったら———
「み、瑞希……今から行くところはキミにとっては刺激が強すぎるんだよ」
「???刺激、ですか……?それってどういう……?」
「なんたって———目的はエロ本を買いに来たんだからねっ!」
「…………え、ええっ!?」
———肉を切らせて骨を断つ。この際僕の名誉が失墜しようともこの程度のことはなんてことは無い。と言うか、以前姉さんのせいで瑞希と美波に僕の宝物(エロ本)を所持しているってバレてるしこの前の持ち物検査でも持って来ている事は最早周知の事実。今更取り繕っても後の祭りだし。そんな僕の決死の覚悟を込めた一言に、目を白黒させて驚く瑞希。よしよし。これで付いて行く、なんて言わないハズだ。
「さ、さあ瑞希!それでも一緒に付いてくるというのかな!」
「行きますっ!それが本当なら、私も一緒に選んであげますからっ!」
「…………なんですとぉ!?」
お、おかしい。さっきより余計にやる気になってる……っ!?こういう時って普通引いたりするんじゃないの!?ま、待って……このままじゃ僕は同級生の女の子と一緒にエロ本を選ぶなんて恐ろしき体験をすることに……!?予想の斜め上の反応されて驚かそうとした僕の方が混乱してきたぞ……っ!?
「(ボソッ)こ、今後の為にも……是が非でも明久君の趣味嗜好は知っておくべきですし……美波ちゃんもきっと知りたいって思っているはずです———と言うわけで、ど、ドンとこいですっ!」
「ぐっ……い、良いのかな瑞希っ!すっっごい……ハードなものを買うつもりだったんだよ?」
し、仕方ない……こうなりゃ我慢比べだ。あまり瑞希を怖がらせるのも申し訳ないけど背に腹は代えられない。ビビらせて付いてこさせないようにしよう。
「す、すっごいハード……!?そ、それって一体……せ、説明してみてくださいっ!」
「説明しなきゃいけないの!?」
何という羞恥プレイ。神様、アンタは僕を試しているとでもいうのか。そ、そうかこれはきっと念願の新作ゲームの為の試練。こうなったらやってやろうじゃないか!
「きょ、今日買うのは(ピー)が(ドゴーン)で(ズキューン)する(ザッパーン)なやつなんだ!」
「ぴ、(ピー)が(ドゴーン)で(ズキューン)する(ザッパーン)ですか!?あ、明久君ってそう言う趣味だったんですっ!?」
流石にこれは効いたようで、顔を真っ赤にして動揺する瑞希。よしよし、このまま畳みかけよう!
「ふふん!それだけじゃないんだよ瑞希!他にも(放送事故)や(検閲削除)や(自主規制)なんてものも買うつもりなのさ!」
「は、はぅ……あぅう……」
僕の止めの発言にさっきまでの勢いはすっかりなくなり小動物チックに可愛らしくオロオロする瑞希。うーん……ちょっと脅かしすぎたかな?まあ、でもこれで一緒に行くなんてことは言わないハズ。心置きなく新作ゲームを買いに行けるね。
…………なんて思っていたら、不意に背中から声をかけられる。
「君たち、高校生かい?ちょっとこっちで保護者の方と学校の連絡先を———」
「さぁて買い物に行こうね!向こうには一体何があるんだろうね!」
「え、わわっ!?あ、明久君!?」
「君たちっ!待ちなさいっ!」
僕のちょっと(?)過激な発言を聞いていたのはどうやら瑞希だけではなかったらしい。大慌てで瑞希をお姫さま抱っこして猛ダッシュする僕と追いかける警備員のおじさん。捕まったら最後、姉さんや鉄人を呼び出されその二人に物理的な折檻&長時間の説教をされてしまうだろう。
『……あ、あれ?今の……アキさん……?』
『む?何じゃ造。どうかしたのかの?』
『い、いえ……気のせい、だと思います……多分』
『なになに?何か気になることでもあったの造くん』
『いやその、女性をお姫さま抱っこしたまま警備員さんに追いかけられている男性がいたんですけど……』
『何じゃそれは……?』
『ず、随分変わった人ね。お客さん……かしら?』
『あ、あはは……何だったんでしょうねー(ボソッ)その人アキさんに似てたような気がしたんですけど……言わない方が良さそうですね』
〜明久逃走中:しばらくお待ちください〜
FFF団に鍛えられた逃げ足を武器に逃走すること数分、途中で警備員のおじさんは僕らを見失ったようで、振り向いたら姿は無くなっていた。
「やれやれ……危うく補導されるところだった。ゴメンね瑞希、急にこんなことして」
「あ……いえ、その……とても……うれし……かったので……またいつでもお願いしたいなーって……」
もう追いかけられる心配はなさそうだし、抱えていた瑞希を降ろしてあげると何かごにょごにょ言っている。
「ん?」
「な、何でもありませんっ!そ、それより……明久君。さっきのことですけど……」
「え、さっき……?さっきのことっていうと……あ」
あ、ああ……ゲームを買いに来たことを誤魔化すために言ったエロ本を買いに来たって話かな。どうやらさっきの僕の発言を真に受けてしまった瑞希はちょっぴり涙目になっている。どうやらさすがにやり過ぎたみたいだ……すっごい罪悪感。
「さっきの話、本当ですか……?(ボソッ)私も美波ちゃんも普通が良いので……そう言う趣味は……できればで良いので持たないでくれると……」
「あの、ゴメン瑞希。さっきの全部嘘なんだ。ホント大した用事じゃないんだよ」
「えっ?嘘……ですか?」
よくよく考えたらこれからしばらく瑞希も美波も葉月ちゃんも同棲するわけだし、こんなケダモノと一緒に住むなんて不安にさせるのはマズい。我ながら変な言い訳しなきゃよかったと反省しながら本当の事を話すことに。
「で、でしたらどうしてそんな嘘を……?」
「……その、ごめんなさい。実はゲームをこっそり買いに行こうとしてました」
「え?ゲーム、ですか?」
「うん。今日ちょうど新作の発売日なんだ。それで……瑞希経由で姉さんにバレるとマズいと思って変な言い訳しました」
「な、なんだぁ……そうだったんですか。安心しました」
今の説明でどうやら安心したようで、ホッと胸を撫で下ろす瑞希。
「その一応確認しておきますけど……と言うことは、明久君の趣味ってああいうのではないんです……よね?」
「あ、当たり前だよ!僕は至ってノーマル!超普通だからね!?」
……今更だけど、我が事ながらもう少しマシな言い訳を考えられなかったのだろうか。冷静に考えたらゲームを買うことを誤魔化すためにエロ本を買うって言う何てそっちの方がアウトだよ……お陰で瑞希に変に思われてしまったじゃないか。恨むよ僕の残念頭脳……
- 彼と彼女とある日の出来事〜明久と瑞希編〜中編 ( No.360 )
- 日時: 2016/03/25 21:13
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
「そ、それなら良かったです!普通が一番ですよねっ!———(ボソッ)ま、まあ明久君が望むなら……私も美波ちゃんもイロイロ頑張る予定ですけど———コホン、じゃあ誤解ってわかりましたし、早速ゲーム屋さん行きますか?」
「あ、それはホント後ででいいんだよ。いつでも買えるわけだしゲーム買うだけなら5分もかからないと思うし」
「私の用事からでいいんですか?」
「うん。確か瑞希は服を見て回りたいんだったよね?だったら二階に行こう。服飾品とかって二階にあるし。終わったらすぐにゲーム屋にも行けるし」
「そう……ですね。私もとりあえず二階に上がるのは賛成です」
このショッピングモールは一階がフードコートやスポーツ用品店、それに生鮮食品売り場があり、二階には書籍やゲームなどのお店がある。瑞希が行きたがっていた服飾品を扱っているのは二階だし、どの道僕が行く予定のゲーム屋も二階にある。と言うわけでまずは二階に行ってみることに。正面のエスカレーターに乗り二階へと上がる。
「あ……明久君、明久君」
「ん?どしたの瑞希」
「その、お買い物の前にちょっと遊びませんか?」
早速瑞希の行きたがってる服屋にでも行こうとした矢先、瑞希が僕の袖をくいくいっと引いてゲームで遊ぶアミューズメントエリアを指差しそう言う。
「わ、ちょっと意外かも。瑞希って普段ああいうので遊ぶの?」
「いえ、いつもは……と言うかほとんど遊んだことなんてないんですけど……ダメ、ですか?」
そう可愛らしくもじもじとお願いする瑞希。そんなお願いを断る選択肢など勿論存在しない。
「いいよいいよ!こちらこそ喜んで。時間もまだまだあるし遊ぼっか」
「あ、ありがとうございます♪じゃあ行きましょう!」
「うんオッケー———っとと。そう急がなくても」
「ふふっ、ダメです。一日には限りがありますからね」
楽しそうな瑞希に腕を引かれてアミューズメントエリアに足を踏み入れる僕。クレーンゲームやガンシューティング、メダルゲームに格闘ゲームなどなど……豊富なゲームが揃っているね。
「えーっとまずは……あ……この人形可愛い……」
「ん?どれどれ?」
何で遊ぼうかときょろきょろしていた瑞希は、一台のクレーンゲームの前で足を止めた。瑞希の視線の先には真っ白なウサギの携帯ストラップ。二頭身にデフォルメされ、なんだか猫とウサギの合いの子みたいだね。うんうん、確かにこりゃ可愛い。……けど、クレーンゲームかぁ。
「私、やってみますねっ!」
「あ、ちょい待ち」
と、僕が止める間もなく百円玉を迷わず投入する瑞希。そのまま慎重にボタンを押してクレーンを動かすけれど……
「「あ……あれ……?」」
けれど、そのクレーンのアームはどういうわけか狙っていたストラップとは二つ離れたパンダのストラップを掴む。お、おお……?これはもしや……
ゴト、ゴトンッ!
なんて音を立ててそのまま取り出し口からストラップが落ちてきた。こりゃ驚いた、景品はバッチリゲットだね。
「……え、えっと。あうぅ……」
「凄いじゃないか。一発で成功なんて」
普通こういうクレーンゲームはちょっとコツがいる。アームの強さや配置位置、掴む場所の調整とか結構難しいはずなのに最初の一回だけで賞品がとれるのは中々凄い。…………狙いはともかく。
「うー……明久君、わかってて言ってますよね。ホントは別の欲しかったのに……二つも隣の取っちゃいました……」
「まあまあ。こういうクレーンゲームってお金全部使っても取れなかった、なんて良く聞く話だし一発成功は純粋に凄い事だよ。そのパンダもパンダで中々可愛いし良いんじゃないかな?」
「そう……ですか?ま、まあちょっぴり残念ですけどあんまり遊びすぎてお金が無くなっちゃうのも困りますし、今日はこの子で我慢しますね」
「もし今度やるなら僕もアドバイスするよ。その時は頑張ろ。んじゃ次は何をやる?」
誰が言ったかクレーンゲームは貯金箱。遊ぶだけならまだしもこの後買い物を控えている瑞希(と一応僕)がこれ以上どっぷり嵌って一文無しになるのもマズいしクレーンゲームはこの辺にしておくことに。さて、何をやろうかな。シューティングゲームとかなら協力プレイとかできそうだけどあんまし瑞希の好みじゃなさそうだし……
「そうですね……じゃあ、何でもいいので一度明久君と勝負してみたいです」
「へ?僕と勝負?」
と、何をやろうかとゲームを吟味していた僕に、瑞希がポツリとそんなことを言ってきた。勝負?はて、どうしてまた瑞希はそんなことを?
「あ、その。ダメならいいんですけど……」
「いや、ダメじゃないよ。折角来たんだし色々やってみようよ。と言うわけで、勝負だよ瑞希っ!」
こんなにもいっぱいゲームがあるわけだし、こういう場所にあまり来ないと言っていた瑞希もきっと楽しみたいんだろう。そういう僕も瑞希と一緒にこんなことが出来る日が来るなんて思ってなかったし……存分に楽しもうかな。
「あ、ありがとございますっ!私、頑張りますねっ!」
「うん!手加減はしないからね!」
「はいっ!望むところです。私もぜーったい負けませんからね」
「じゃあどれで勝負しようか。やってみたいものあるかな?」
「えーっと、そうですね。勝負できるものと言うと———」
パッと目に付くのはエアホッケーとか格ゲーあたりだけど、エアホッケーみたいな身体動かす系は瑞希に無理させちゃうかもしれないし、格ゲーは初心者の瑞希はよくわからないかもしれない。他に何かちょうど良いものは……
「あ、明久君。あれはどうですか?」
「どれどれ?おお、いいじゃない」
瑞希が指差したのは早押しクイズゲーム。うん、あれなら大きく身体を動かすわけでもないし難しい操作を必要とするものでもない。一番ちょうどいいゲームかもしれないね。
「なら早速やろうか。ふふん、瑞希。僕が意外と雑学に詳しいってところ見せてあげるよ」
「ふふっ、知識なら負けませんよ明久君」
そんな軽口を楽しく言い合いながら椅子に座って、それぞれ百円玉を入れて筐体のスタートボタンを押す。名前の入力の後にはクイズのジャンル選択があった。
「好きなジャンルを選べるんですね。私は……“社会”にしますね」
「んー……なら僕は“スポーツ”にするね。よし、じゃあスタートだ」
ジャンル選択を終えてボタンを押すと、いよいよ問題が始まる。
『第一問:社会』
最初は瑞希の選んだ社会の問題か……まあ、多少なりとも僕も最近は勉強している(と言うかさせられている)し、瑞希の得意分野とは言え案外僕でも簡単に答えられる問題かも。なんて思いながらゲームの筐体から聞こえてくる問題の読み上げる声に耳を傾けると———
『日本がラッコ・オットセイ保護国際条約を締結したのは何年か。西暦で答えなさい』
ハッハッハ!———わかるかそんなもん。
「えっと、確か1911年でしたっけ」
「そしてなんでわかるの!?」
瑞希が数字を打ち込むと、見事画面には“正解!”の文字が出てくる。これで一点リードされたか。と言うか今更だけど瑞希の知識の幅ってめちゃくちゃ凄くない……?それと何かこのクイズ難しすぎないだろうか……これ勝つどころか付いていける気が全くしないんだけど……
『第二問:スポーツ』
若干慄きながらも二問目に備えることに。二問目は僕が選んだジャンルのスポーツだけど、さっきの問題を見るに相当難しめの問題が出てくるハズ。気合いを入れ直し再び筐体から聞こえてくる問題を読み上げる声に耳を傾けると———
『サッカーで唯一手を使っても良いポジションは?』
ハッハッハ!———さっきの問題との難易度の落差激しすぎない!?何でこっちはこんなに簡単なんだよ!?
- 彼と彼女とある日の出来事〜明久と瑞希編〜中編 ( No.361 )
- 日時: 2016/03/25 21:14
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: 4.tSAP96)
「え、ええっと……キャッチャー、でしたっけ……?」
とは言え解答者の知識の落差も激しかったようで。うん、これなら何とか僕も勝つ見込みはあるようだ。
「キャッチャーは野球の捕手のことだね。キーパーが答えだよ」
そう言いながら“キーパー”と打ち込むと、今度は僕の方に点数が入って同点となった。
「むむむ……やりますね明久君。でも負けませんから」
「こっちこそ、さあ次の問題行くよ瑞希」
そんな感じでしばらくお互いに得意ジャンルでしか得点できない一進一退の攻防が続いて、同点で迎えた最後の問題。ジャンルは……最後の問題だけあってどうやらランダムに選択されるようだね。ここまで来たからには勝たせてもらおう。そう意気込みながら筐体の読み上げる問題に耳傾けていたその時。
「ねえ明久君」
「うん?」
「こういうの、なんだかデートみたいで楽しいですね♪」
「んなっ!?」
突然瑞希がそんなことを言いだした。
「動揺しましたね、明久君。隙ありですよ」
思わず立ち上がってしまった僕を横目に、その隙をついて問題に答える瑞希。その結果は正解で、これで瑞希の勝ちで僕の負けになってしまった。
「これで私の勝ちですね、明久君」
「ぐぅ、まさかこんな方法で動揺させるなんて……」
瑞希がこういう手を使うとは全く思っていなかった。完全に油断してたよ……
「ふふっ、動揺する方が悪いんですよー」
「うぅ……い、意識しないようにしてたのに……」
「えっ?い、意識しないようにって……」
荷物持ちに来たとは言え、瑞希とお買い物なんてシチュエーション意識しちゃうと絶対僕はギクシャクしてしまう。なるべくその……で、デートみたいだって意識しないようにと心掛けていたのに、なんて的確に動揺させるんだ……完敗だよ。
「(ボソッ)それはつまり明久君も意識してくれてたんですね。なら、なおさら嬉しいです♪」
「おお、何だかめちゃくちゃ嬉しそうだね」
「はいっ!とっても嬉しいです!」
勝ったことが余程嬉しかったのだろう、ご機嫌になっている瑞希にこっちまで癒されていたその時。
「(——————っっ!!?)」
僕の第六感が何者かの気配を感じ取った。姿は見えない、けれど僕にはわかる……伝わってくる。幾度となく危機を切り抜けてきた勘が、僕に教えてくれる。これは、この気配は———
「(敵(バカ)の気配……っ!)」
恐らくはFクラスの誰か……雄二か須川君、福村君なんて線も考えられる。何にせよ僕と瑞希がこんなところにいると連中に知られたらどうなるかなんて考えるまでもない。最悪の場合僕らの同棲生活のことも知られたらと思うと……
「あれ?明久君、どうかしましたか?」
「うん、瑞希。ちょっとこっちに」
「へ?あ、はい」
とにかくまずは隠れよう。瑞希の手を引いて敵(バカ)の気配とは逆の方向へ歩き出すことに。しばらく歩くとその先には幕がある何かのゲーム機が。よし、とりあえずこれなら外には顔が見えないハズ。
「あ……このゲームって」
ゲーム機の中に入ると、瑞希が何か小さく声を上げる。一方の僕はと言うとさっきの気配の主に気付かれていないかと外の様子をうかがっていた。
「(……おかしい。さっきの敵(バカ)の気配、こっちに近づくどころか逆に離れていった感じがする?)」
僕が気づいたということは向こうも僕の気配に気づいている可能性が高い。あまり考えたくはないけれど瑞希を連れていたところが見られていたかもしれない。だと言うのに僕を追って来ないなんて……何故だ?それともさっきの気配は僕の気のせいだった?
「まあ、いいか。とりあえず当面の身の危険はなさそうだし。ゴメンゴメン瑞希、巻き込んじゃって———瑞希?」
警戒を解いて瑞希に向き直る僕。その瑞希はと言うと、やけに真剣な目でゲーム機に向かっている。
「えっと……12月21日のA型で……はい。次は明久君の番ですよ」
「???」
いつの間にかお金を入れてこのゲームをやっていた瑞希に促されて画面の前に立つ僕。そこには『誕生日と血液型を入力してください』って表示されているけど……ああ、なるほどこれ占いのゲーム機か。
「んじゃ10月18日の、血液型は———」
とりあえず言われるがまま誕生日と血液型を入力する僕。そういやこんな占いとかするの僕初めてかも。
『最後に、二人一緒に中央の水晶に触れてください』
画面の表示に従って中央の水晶に手を乗せる僕ら。ちなみに瑞希はめちゃくちゃ緊張した面持ちで水晶に手を当てている。……いや瑞希、何事も一生懸命なのはキミの素敵なところではあるけれど、ゲームなんだしそこまで真剣にならなくても……
『結果をプリントアウトします』
しばらく待つと、取り出し口からレシートっぽい紙が印刷されて出てきた。瑞希はそれを受け取ると脇目もふらずに中身を確認する。
「瑞希、どうだった?なんか良い事書いてあった?」
「…………」
「?もしもーし、瑞希聞こえてる?」
僕の声が耳に入らないくらい一心不乱に読んでいる瑞希。うーむ、結果は知りたいけど僕の場所からじゃ読めないなぁ。仕方がないから待つこと数分、読み終えた瑞希は顔を上げると———
「♪♪♪」
さっき以上に、いやと言うか今まで見たことがないってくらいに上機嫌に笑みを浮かべている。
「ふむふむ、その様子だと良い事書かれてたみたいだね瑞希、良かったじゃない」
「はいっ!とっても!それに、書いてあったことだけじゃなくて明久君がこういうゲームを私と一緒にやろうとしてくれたことが一番嬉しいんです♪」
……ん?あ、いや僕はただ妙な気配から逃れるためにここに逃げ込んだだけで———と言おうとしたけど、瑞希がこんなにも嬉しそうなんだし言うのは無粋か。何にせよ喜んでくれたのは嬉しいし。
「あ、それと明久君。これ貰っちゃってもいいですか?」
「へ?あ、うん。それは良いんだけど———」
「ありがとうございます。大切にしますね。それじゃあそろそろお買い物に行きましょうか」
「あ、ちょ!ちょっと待って瑞希」
そう言って、結果がプリントされた紙を丁寧に畳み大事そうに財布の中に仕舞いつつ、さっきとは逆に僕を引っ張る瑞希。いや、それは構わないんだけどさ———僕、占いの結果は勿論何についての占いかすら教えてもらってないんだけどなぁ……
「あまり遅くなって玲さんに心配かけたくありませんし、美波ちゃんたちから連絡がくるかもしれませんからねっ!」
「……まあいっか。あーうん。そうだね。あんまりのんびりもしれられないね。じゃあ行こうか———ところで瑞希」
「はい?」
「ちょっとしか遊べなかったけどさ、楽しかったかな?」
「はいっ!最高でしたっ!」
……ま、占いの内容何てどうでもいいか。だって———こんなにも楽しそうな瑞希の零れんばかりの笑顔を見せられちゃ、そんな事なんてささいなことだろうからね。