二次創作小説(紙ほか)
- 110時間目 僕らとチアと召喚野球〜須川君自重しろ〜 ( No.41 )
- 日時: 2015/08/02 21:16
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
造Side
一先ず文さんを一旦グラウンドの隅に連れて来て、どういう経緯でこんな事をしているか尋ねます。話を聞くに文さん曰く—————
今日は休みではないのに全員校内にいなくて不思議に思った。
↓
何か良くわからないけど、外で皆が集まってワイワイしている。
↓
調べたらこれは『体育祭』と言う行事で、ツクルも勿論参加している。
↓
だったらツクルに何かしてあげたい!でも文は何をすればいいのだろうと思う。
↓
再び調べると、こういう場合は応援してあげると喜んで貰える。
↓
どう言えばサクヤが言っていた!『応援にはこの服が一番さね!ついでに造にも着せたいねぇ!』と。
—————ってな感じですね。サクヤさんは文さんに何を吹き込んですか……帰ってちょっと説教しましょうそうしましょう。あ、そうそう。ちなみに文さんは今日はホログラムの身体ではなく、どうやらアキさんや自分と同じような原理で実体化しているようです。何でもその方が応援している感じがするってことだそうで……
「と言いますか応援、ですか。その為にそんな恰好を……」
《うん♪ どう? 文は 似合う かなー?》
「えっと……似合う……と思いますよ?」
《むー! 何だか 歯切れが 悪いー》
…………いや、だって文さんの容姿を誉める=自分の容姿を誉めることと同じですもん。なまじ自分の身体データを基に生まれた文さんですし、自分と文さんが同じ顔で同じ体型(ただし胸は違いますが)。言うならば鑑見て“自分ってチア服似合いますよね〜♪”って言っているのと同じですし。
「それよりちゃんと学園長に許可は取ったんですよね?じゃなきゃ今頃学園長お怒りでしょうし」
《…… …… …… そうそう! 文ね アオイと 仲良く なったの〜♪》
「文さーん?その間はなんですかー?取っていませんね?許可絶対取ってませんね?」
ああ……これじゃ学園長がまた、頭を痛めることでしょうね。って、そう言えば何で文さんと小暮さんが?
「文さん、ところで小暮さんと随分親しげでしたが、彼女とは一体どう言う関係ですか……?」
「ああ、それはちょうど月野君を妹さん———いえ、文さんが探していたので折角なので私がここに案内をしたんですよ」
《そなのー アオイが 文を 連れて 来てくれた のー♪ 文の 新しい お友達ー!》
「あらあら♪ありがとうね、文さん。嬉しいわ♪」
「小暮さん?随分ナチュラルに会話に入りますね……いつの間に……?」
いつの間にいたのか全く分かりませんでしたが、自分の真横に立って会話に参加するニコニコ顔の小暮さん。いえ、もう驚きませんよ……小暮さんの行動には色んな意味で慣れましたし……
「そうそう、文さん。私、月野君とちょっとお話ししなければならないんです。申し訳ございませんが、先に応援席で応援の準備なさっててください。私もすぐに参りますので」
《あっ そうだった ネー! それじゃ ツクル 頑張ってー♪ 文も アオイも 応援してる よー!》
と、文さんは元気に手を振って応援席へと向かいます。やれやれ……文さんも相変わらずやりたい放題ですね。悪い子ではないのでその辺は安心してますが。
- 110時間目 僕らとチアと召喚野球〜須川君自重しろ〜 ( No.42 )
- 日時: 2015/08/02 21:18
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
「———ふふっ♪妹さん可愛らしい方ですね。わざわざ月野君の為に応援に来るなんて」
「あ、あはは……ん?あれ?妹?文さんが?」
「あら?違うのですか?文さん確か《文と ツクルは 家族なのー♪ 文は 年下 だけどー》って言ってましたが?」
あっ、なるほど。文さんそう言う風な説明をしたんですね。以前ちょっと色々あった時『文さんは自分の家族ですから♪』って文さんに言ったんですよね。良く覚えていましたね?
……あ、でもナイスアイディアかも。下手に文さんの事を説明するよりも、皆さんには妹だって言っておけば説明不要でしょうし。
「えっと……まあ、大体そんな感じですね。それとありがとうございます。文さんを連れて来てくださって」
「いえいえ♪月野君にそっくりの方が、ちょっと不安そうにうろうろしてましたから。黙っていられずについ声をかけたのですよ。それにしても最初は驚きましたよ。月野君がチアガールの姿でうろうろしているかと♪」
「……絶対驚いてませんでしょう?うぅ……何か皆さんにとんでもない勘違いをされた気がします」
「ふふふっ♪『月野造特集:今度はチアガール!勝利の女神は自分です♪』的な号外が翌日張り出されたりですか?」
「……ありそうで怖いです。何とか皆さんに説明しませんとね……」
「あらあら♪本当に月野君は皆さんに好かれていますね」
そんな感じで、ちょっぴり小暮さんと談笑。おお、何だか一年前を思い出しますね。懐かしいなぁ……
「あ、ところで小暮さん。小暮さんは召喚野球には参加しないんですか?チア姿ですが……それに何故かタカさんも見当たりませんが……?」
こちらにとっては非常に有難いことですが、何故か三年生のメンバー表の中には最大戦力の小暮さんと髙城くん———タカさんのお二人の名前がありません。チア服を着て応援する気満々のご様子の小暮さんとこの場に姿を見せないタカさんは一体どうして……?
「ああ、それはですね。髙城君は海外のお客様の対応です。今頃体育館で学園長と一緒に校内で召喚獣のデモンストレーションをしているはずです。この後は学園とシステムを見学するとか」
「ああ、なるほど。タカさんも大変ですよね———って、ちょっと待ってください?タカさん一人でそれやっているんですか……?」
普通、こういう場合のタカさんは“ボロ”を出さぬよう小暮さんと一緒になって行動するはず。まして大事な場面では余計なことを言ったりやったりせぬようにと必ずと言っていいほど小暮さんがタカさんをコントロールしていたような……?ならばこそ何故小暮さんはここにチア姿で……?
「あの……小暮さん学園長に呼ばれたりしていませんか?ひょっとして“人手が欲しいし、あのバカがボロ出さないようにアンタも来てくれ”って言われてませんか……?」
「流石月野君、よくお分かりですね♪はい、学園長先生に髙城君にも付いて来てほしいとお願いされましたが、大事な用事があると全力でお断りしてきましたの」
…………タカさん、学園長。がんばれ、超がんばれ。
「い、いいのですか……?タカさん泣きますよ?それに大事な用事って……それとチア服の何の関係が……?」
「とても大事な用事ですよ?文さんと一緒に月野君を応援しなきゃいけないじゃないですか♪」
「それが理由!?」
…………タカさん、学園長。あなた方は今泣いていいです。
「ふふっ♪安心してください。まあ、半分冗談です。デモンストレーション自体はさっき私も手伝って終わりました。あとはただの見学の案内役だけですし、いつまでも私が一緒では彼も成長しませんので置いて行ってしまいました」
「あー……まあ確かに一理はありそうですが。あれ?ですがこちらの方は良いのですか?自分たちからしてみれば助かる話ですが、小暮さん召喚野球に出ないなんて……」
タカさんには成長のため頑張ってもらうことにして、わざわざ抜け出してきたならどうして小暮さんは召喚野球に参加していないのでしょう?このお方に出られたら今の自分たちでは対処できなくなるのは間違いないですからね。不思議に思って尋ねると。
「いいのですよ、先ほども言いましたがデモンストレーションを兼ねて体育館で召喚獣同士の戦闘だけでなく召喚野球もやりましたし。正直言うと一戦やれれば十分楽しめました。後はまだやっていない方々に楽しんでもらえればいいですし」
なるほど……ベンチにいたり体育祭の競技に参加していた皆さんに譲ったってことですね。
「そして何より……月野君にこのチア姿見て貰いたかったですし♪月野君、応援しているので頑張ってくださいね♪」
「は、はあ……?あ、言いそびれていましたがチア服似合ってますよ小暮さん。とても綺麗で似合いますし」
「あら♪それは光栄です。月野君も着てみます?」
「全力でお断りです。それはともかく自分を応援って……それって3−Aの皆さんに申し訳ないのですが……?」
「ふふっ♪誰を応援するかは自由でしてよ?まあその分、3−Aには———応援席からちょっと助言はするでしょうが♪」
HAHAHA!その小暮さんのちょっとの助言が一番怖い。か、勝てるといいのですが……
「ふふふっ♪まあ、良い試合になる事を楽しみにしてますよ。……その、頑張ってくださいね月野君」
「その言葉、ちゃんと3−Aの皆さんにも送ってあげてくださいね?ですが……ありがとうございます。出来る限り頑張りますね」
「ええ……本当に、頑張ってください♪」
とりあえずそろそろ始まるので自分はベンチに、小暮さんは何か良いことがあったのか、楽しそうに応援席に向かいます。さてさて、この試合はどうなる事やら。
- 110時間目 僕らとチアと召喚野球〜須川君自重しろ〜 ( No.43 )
- 日時: 2015/08/02 21:41
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
明久Side
『———トライッ。バッターアウッ!』
審判のコールが響き、一番バッターの美波が戻ってくる。うーむ、流石三年生のAクラスだけあって球の速度・コントロールと共に申し分ないね。
「ごめん。あれは打てないわ……」
「気にするな島田。点数差が点数差だ」
「美波、とりあえずまだ始まったばかりだし落ち着いて一回は様子見しよう」
《ですね……まだ全然目が慣れていませんもん》
なんせ僕らは勿論初戦のEクラスに比べても、点数でも操作技術でも相手の方が一枚も二枚も上手だ。まずは少しでもボールに慣れることから始めないとね。寧ろこの回の科目は化学なんだけど、それが得意教科でもないにもかかわらず必死に喰らいつきフルカウントまで持ちこんだ美波は十分賞賛に値するだろう。
あ、そうそうちなみに今回の勝負での打順と守備位置は—————
———VS3−Aクラス 守備位置・打順表———
1番 サード 島田美波
2番 ショート 須川亮
3番 ピッチャー 吉井明久
4番 キャッチャー 坂本雄二
5番 ライト 姫路瑞希
6番 セカンド 土屋康太(ムッツリーニ)
7番 レフト 君島博
8番 ファースト 福村幸平
9番 センター 月野造
ベンチ 横溝浩二 木下秀吉
—————ってな感じだ。雄二曰く今回の作戦で重要なのは、雄二がどのタイミングで腕輪を使うかと瑞希の抑え。そして何よりその瑞希の球をきっちり捕る事が出来る造にかかっているらしい。守備は二人に、特にフィードバックによる疲れが懸念される造に任せっきりになる分、僕らでなるべく一点でも取らなきゃね。造の負担を減らす為に打順が回りにくい9番に置いたのはその為だってさ。
あ、ちなみに何で最初から瑞希と造をピッチャーとキャッチャーにしないかだけど、瑞希に少しでも野球に慣れて貰う為に、そして2回は科目が英語だから造がまだ出せない為だそうだ。まあ、造の英語はちょっとアレだから仕方ないね。一回と二回はそれまで何とか僕と雄二で抑えられるよう頑張ろう。
『っしゃあ!やってやるぜっ!試獣召喚(サモン)っ!』
美波に続き、2番打者の須川君がやけに気合いを入れて召喚を開始しバッターボックスへと入る。さてさて、戦力差はどんな感じで……
≪Aクラス 夏川俊平 化学 244点≫
VS
≪Fクラス 須川亮 化学 59点≫
うん、須川君はともかく流石は三年のAクラスだね。中々に高い点だ。あっちの方は夏川って先輩がピッチャーで常村って先輩がキャッチャーのバッテリーを組んでいる。あの先輩たちとは何かと因縁があるね。色んな意味で。戦力差もはっきりしてるしこりゃ攻略は中々厳しそうだ。
『ほう?随分気合い入ってんな。……俺も全力で相手するぞ!』
マウンドに立つ坊主頭の夏川先輩が、楽しそうに須川君に言ってくる。何だかこの先輩(と常村先輩)って最初に会った時と比べると、良い意味で本当に印象が変わったなって思う。
- 110時間目 僕らとチアと召喚野球〜須川君自重しろ〜 ( No.44 )
- 日時: 2015/08/03 00:30
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
そんなことを考えていると早速先輩の召喚獣が投球の構えを取り、大きく振りかぶり力を込めてボールを放る。
『ットライ!』
瞬きする間に、ボールはミットへと吸い込まれていった。くっ……やっぱり早いね。須川君もまるで目を皿のようにして真剣に見ていたけど、どうやら見逃したようだ。
先輩は満足そうにニッと笑い、続く二球目をまたまた際どいコースに投げてきた。
『ットライ!ツー』
これも見逃し2ストライク。……どうしたんだろう?何だか須川君、ボールと言うより別の何かを狙っているみたいだけど……?
『さあ!そろそろ手を出さないとまずいぞ?打てるなら打ってこいっ!』
先輩が須川君にそう言ってくるけど……須川君は黙って、それでも何かを見て分析しているようだ。これは……もしや一回の攻撃を犠牲に相手の弱点でも見定めようとしているのだろうか。
立て続けに3球目を先輩はさっきと同じモーションで————さっきよりも遅いボールを投げてきた。こ、これってチェンジアップ!?ここに来てこんなことまでするなんてっ!?これじゃ間が外されて……
『っ!見えたっ!予想通りっ!!』
『何っ!?』
ええっ!?“見えた”だって!?おまけに“予想通り”って……!?ま、まさかこのチェンジアップを狙っていたのか須川君!?やるな須川君っ!見なおしたぞ!そしてその宣言通り、遅めのボールを狙い澄ましバットを振り切———
———らず、見逃した。うん、見事に見逃し三振だね☆っておい!?須川キサマっ!?見えたんじゃなかったのかっ!?
『え、えっと。ストライッ!バッターアウッ!』
『…………び、ビビったぞ……?』
『…………み、見えたんじゃなかったのか?』
これには審判も、それからボールを放った夏川先輩とコースを指示していたであろう常村先輩も呆然としている。てか、拍子抜けしてるね……
「(ちょ、ちょっと須川君!何が〝見えた”だよ!?何で打たないのさ!?)」
何やらアウトになったのにやけに興奮しながら2−Fクラスのベンチに戻ってくる須川君に、弁解を求めて小声で話しかけてみる。そんな須川君はちょっと気持ち悪い笑みを浮かべたまま僕にこう返してくれる。
「(フッ、吉井。お前にも良い情報を教えてやろう。アレを見ろ)」
と、須川君は観客席の方を指差す。良い情報、ね?それは有難いけど、それにしては何で観客席なんかを?野球と何の関係があるんだろうか?とりあえず僕も釣られて指差された場所を見てみると、
《フレー フレー ツ・ク・ル♪ ガンバレ ガンバレ ツ・ク・ル♪》
『ふふっ♪月野君、ついでに皆さんも頑張ってくださいねー』
チアガール二人が楽しそうに飛んだり跳ねたりして(主に造を)応援している姿が。ん?いや、あれって確か……
「(えっと……造の妹さんの文ちゃんと、着物の先輩だね。でもあの二人がどうかしたの?何か彼女たちが重要な情報を握っているとか?)」
「(ああ……とてつもない情報だ。いいか吉井?さっきの俺の打席でちゃんと確認したんだが、あの二人———)」
と、須川君が一呼吸間を開けてから……
「(あの二人————俺の予想通り、妹ちゃんは“ピンク”で先輩の方は“黒”だった……っ!)」
「(…………)」
そうか……必死に何かを見定めようとしていたのは“パンチラ”狙いか……君は一体何を観察しているんだい?いや、まあ多少気持ちはわかるけど。一先ず須川君は無視することにして、僕はバッターボックス入る事に。全く……ちょっとは自重しないとダメじゃないか!(←エロ本の為に野球をやっているバカの心の台詞)
『かっ、会長っ!どうでしたか!?』
『お、俺らの理想郷はどんな感じで……?』
『……お前ら、アレは凄かったぞ……方や可愛らしい文字通りの“桃色”の桃源郷、方や大人のセクシーさ際立つ“黒”だったっ!』
『『『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』』』
『……こやつらはどこまでバカなのじゃ……?』
『本当にバカだな……野球に参加していない先輩の色香に引っかかってどうするんだ。とりあえず後でシメるの確定だな』
《こ、困りましたね。味方を応援してくれるハズの文さんが、逆に皆さんの集中力を下げているとは……》
『そうね……こんなので本当に勝てるのかしら?』
『あ、あはは……』
『…………エロは自重すべき』
『その台詞をムッツリーニに言わせたら終わりじゃのう……』
…………いつものメンバー以外のFクラスの連中は、どうやらあの着物の先輩と文ちゃんに完全に堕とされてて使い物になりそうにないね……というか、キミたちはそれで良いの?この会話って3年生の先輩たちとか先生たちに聞かれているんだけど。みんなのFクラスを見る白い目がとても辛いや……これは折角回復しつつあったFクラスの評価が下がっていくことだろう。
「あー……吉井だったか?お前のところのクラスって、その何と言うか……個性的だな?」
「あー……吉井君。私も文月に来る前も結構長いとこ教師として勤めてきましたが、その……こんなに面白いクラスは見た事がありませんよ?」
「えっと……色々とすみませんでした。先輩に先生」
キャッチャーをしていた常村先輩と、審判の先生が引きながらも言葉を選んで頑張って僕をフォローしてくれたのが地味に嬉しかった。