二次創作小説(紙ほか)

111時間目 真剣勝負でも〜事故は起こるさ〜 ( No.45 )
日時: 2015/08/07 21:20
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)

明久Side


『ストライッ!バッターアウッ!チェンジッ!』

「ふぅ……当然だろうけど、予想してたよりしんどいね……」

僕たち2−F対先輩たち3−Aの召喚野球対決は、今何とか2回の裏を終えた。得点は【1 — 1】1回の表で2アウトながら、何とか雄二と僕の連携で一点はもぎ取ったんだけど……

「ゴメン皆……一点入れられた」
《いえ、アキさんのせいじゃないですよ。自分も止められませんでしたし》
「そうじゃの……まさかあの難しい球を狙ってホームランを打たれるとは思っておらんかったからの。明久が気に病む必要はないじゃろ」
「…………あの4番、点数も凄かった」

1回は何とか三者凡退に抑えられたんだけど……2回の裏のしょっぱなに4番の先輩(確か金田一って先輩)にホームランを打たれた。確かに点数差も凄かったけど、まさか外しのボール球を打たれるとはね。

「安心しろ明久。これが満塁のピンチだったら不味かったが、寧ろ1点で済んだんだ。その後持ち直して上手く対処出来たんだから序盤としてはいい流れだ」
「そう?……にしても、やっぱり3年生は手強いよね。まだ2回が終わったばかりなのに、完全に僕の投げるコースが読まれているみたいに打たれてたし」

1回の三者凡退が嘘みたいにガンガン打たれてたからね……まあ、満塁になるピンチはあったもののそこは雄二の的確な指示と造のカバーで何とか抑えられたけど。

《あー……それに関しては多分アキさんの言う通りこちらの手の内は読まれていると考えていいと思います》
「へ?や、やっぱり読まれてるの?」
《あはは……ほら、あちらで応援している小暮さん———つまり着物の先輩いるじゃないですか》

苦笑気味に造が指差す先には、造の妹ちゃんと例の先輩の姿が。そんな造に気が付いたのか二人とも嬉しそうに造に手を振っているけど……あの先輩がどうしたんだろう?

《えーっと、ですね。彼女どうやらアキさんたちのサインと球種を1回である程度読み切ったみたいでして……対処法とどう動けばいいかを応援席から紙飛行機飛ばして指示してますよ》

「「「「はぁっ!?」」」」

《見ててください———ほら、あんな風に》

慌ててもう一度見てみるとルーズリーフに何やら書いて、書き終えると今度は紙飛行機にして文ちゃんに渡している着物先輩の姿が。い、一体何を……?

『文さん、また紙飛行機作ったので、飛ばしゲームしましょうね♪三年生のいる場所にどっちが一番近くに飛ばせるか勝負ですよ』
《ウン! 文 負けない ヨー!》

そうして二人が紙飛行機を飛ばす先には、三年生の先輩たちのベンチ。よく見ると届いた紙飛行機を開いて先輩たちが何やら指示を出しているようだ。な、なんだこれ……

《——と、まああんな具合に小暮さんがお茶目にそして遊び心たっぷりに、三年生に指示出しているというわけでして》
「う、嘘ぉ!?と言うかそもそもたった1回の攻撃でサインとか傾向とかわかるものなの!?」
《そこはまあ……小暮さんですし》
「マジかよ……ちぃ、やっぱりあの先輩は油断ならねえな」

いや、油断してなくても勝てる気がしないんだけど……?何で野球に参加していない先輩にここまで苦しませられるのだろうか。戦友たちは色気にやられて使い物にならないし、確かに僕の投げるコースも球種も見破られていた。造の言う通りあの先輩ってある意味最強なのかもしれないね。

「だがまあ、次からは姫路と造のバッテリーだ。急には流れは読めんだろうし、こっからが腕の見せ所だな」
《おっと、そでしたね……では、その前に一点稼いでおきましょう》

そんなことを言いながら、造はトコトコとネクストバッターボックスに入る。幸いにも3回の科目は造が最も得意とする現代国語。造ならここで一発決めてくれるだろう。……何でも造曰く現国なら点は十分且つ風の能力がある以上、例え敬遠されても敬遠球ごとバックスクリーンに叩き込めるそうだ。何それ凄い。

『ストライッ!バッターアウッ!』

8番の福村君が三振(って言っても、須川君同様にあの着物先輩と文ちゃんに見惚れていただけっぽいけど)でツーアウト。ここは流れをこっちに持って来て貰う為にも、造に一点入れてもらおう。

111時間目 真剣勝負でも〜事故は起こるさ〜 ( No.46 )
日時: 2015/08/07 20:57
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)

『あら♪文さん、待ちに待った月野君の出番のようですよ』
《ホント だー♪ ツクル ガンバ! ガンバ♪》
『ふふふ♪頑張ってくださいね〜♪』

応援席で応援している文ちゃんと着物先輩が造の出番により一層力を込めて応援している。……にしても、あの先輩は自分のクラスは応援しなくていいのかな?いや、一応作戦は指示しているらしいし、応援は自由だろうけど。

造もそれに気が付いているみたいで苦笑いをしながらバッターボックスに入る。さてさて、得点差は一体———


≪Aクラス 夏川俊平 現代国語 236点≫
         VS
≪Fクラス 月野造  現代国語 582点≫


———あれれ〜?おかしいなぁ?あの先輩の点数って低いわけじゃないし、かなりの実力があるはずなんだけど……点数差2倍以上ってどういうことなの……?

「……改めて思うけど、造が味方で良かったよね」
「……だな。もし造が何も問題なく3年生として俺らと拳を交える事があったと思うと……」
「……もう手が付けられんかったじゃろうな。英語以外は」
「…………圧倒的戦力」
「……い、いや。保健体育限定ならムッツリーニも人の事言えないけどさ」

正直言って僕がもし造と戦う事があったら、間違いなく撤退をせざるを得ないだろう。点数的に教師たちや保健体育でムッツリーニを相手にしなきゃならないのと同じわけだし。この様子じゃ向こうの先輩たちも戦意を喪失して———あれ?

《よろしくです、ツネ・ナツ》
『月野か……ふむ。お前の事だ、間違いなく敬遠しても召喚獣の能力使ってそのまま打ってくるだろうな』
『ここは敢えて勝負だな。速球且つ重い球なら、その点でもそう易々とは打てないはずだ』
《たはは……読まれてますね。ちゃんと目で追えないと打てませんからね》

……凄い。どうやら先輩たちは冷静に造を抑えようとしているみたいだ。敬遠を打ってくるってところも読んでいるみたいだし。

造も先輩たちも真剣そうな顔で……まずは第一球————


バシィ!


『————ス、ストライッ!』

…………は、速い!?なんて速球を……流石の造も追いつけなかったようだ。今まで投げていた球に比べても、最高速度みたいだ。続く二球目。先輩の召喚獣は大きく振りかぶり渾身の力で投げ込む。これは……


バシィ!


『ボールッ!』

さっきと同じく目に負えないほどの速球で投げてきた。まあ、これはボールだからいいんだけど。

「……どうやら向こうさん、フォアボールになってでも力負けしないボールを投げるつもりだな」
「???どう言うこと雄二?」
「まあ、簡単なことだ。さっき先輩二人が言っていたように造のあの点数且つ、能力が付加されたバットならどこ投げても、敬遠球さえ打たれちまうだろ?生半可なボールじゃホームランにされちまう。だったら造本人が目で追えないボール、且つ重いボールを投げるしかねえ。この際コントロールや力配分は無視してやがるな。……見てみろ」

と、雄二がキャッチャー(確か常村先輩)を指差す。どれどれ?

『ボールッ!』


≪Aクラス 常村勇作 現国 225点 →Aクラス 常村勇作 現国 203点≫


「あれ?捕り損なってもいないのに……点が減った?」
「あれだけの剛速球且つ、点数もそれなりにあるんだ。そりゃ持ち点も減るだろうさ」
「む?じゃがそれならワシらにとっては有利になるのではないか?」
「そうでもないさ。投手ならいざ知らず捕球側は基本的に戦死にだけ気を付ければいいんだ。多分だが向こうさんの考えとしては『三振になれば儲け物。ここは月野を歩かせてでも、打たせないように』って感じだろう」
「…………あの点数差なら、それが一番正しいかもな」

111時間目 真剣勝負でも〜事故は起こるさ〜 ( No.47 )
日時: 2015/08/07 21:02
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)

そうか、下手に投げて一点を取られるより全力で投げて打たせないようにした方がいいってことだね。敬遠球を投げれば打たれるってことも想定済みみたいだ。塁に誰もいないわけだし別にフォアボールになってもホームランよりずっとマシ。少なくとも次でアウトにすれば良いわけか。むむむ……中々力技なようで考えてあるね。

『ボールッ!』

気がつけば1ストライク3ボール。出来れば単発でも打って一点を貰いたいけど、ここは造は歩くしかないのかな?そんなことを考えていると、先輩の召喚獣が力強く5球目を……

『あっ……!?』


ゴスッ!


『あ……デ、デッドボール!一塁へ』

《痛っ〜〜〜〜〜〜〜!?にゅおぉおおおおお……っ!》
『わ、ワリィ月野!?召喚獣を力ませ過ぎた!?』
『お、おい……大丈夫か?メチャクチャ良い音したんだが』
《ぷ、プロ野球選手って……大変な職業なんですね……おおぅ、地味に効きました……》

『月野君!……かなり痛そうですね。平気……ではないようですね』
《! ツクル!? 大丈夫!?》

……造の左手にジャストミートさせた。あー……アレは痛い……僕と造にはフィードバックがあるからね。おまけにさっき雄二が言った通り、先輩は全力投球しているからその威力は半端ないものだろう。

≪Fクラス 月野造 現国 582点 →Fクラス 月野造 現国 425点≫

流石に200点越えしている召喚獣が放つボールをノーガードで受けただけあって、150点以上点が削られていた。僕や造の場合フィードバックもさることながら、召喚獣の点数が自身の体力にも直結するからあれは辛い。僕の感覚的に言うといきなりあれだけの点数が減らされると100メートルを一気に駆け抜けた疲労感が来る感じだって言えば伝わるかな。

「って言うか……半分は僕らのせいでもあるけど、造って今までも結構散々な目に遭ってるよね」
「ああ……生まれながらのトラブル吸引機っぽいしな。後でなんか奢ってやるか」
「それより治療の方が先じゃろな……この場合は疲労の方じゃからどうこうできるものでもないがの」
「アキもそうだけど……フィードバックって大変なのね」
「そうですね……月野君大丈夫でしょうか?」
「…………何か甘いものでも用意しておこう」

皆の心配をよそに、涙目で蹲っていた造がようやく起き出す。まだ多少痛そうだけどもう良いのかな……?

《痛ぅ……も、もう大丈夫です。気にしないでください。一塁行きますね?》
『すまんな……そういや月野にはフィードバックがあるんだったな』
《いえいえ。こればかりは事故ですし。別にどうってことないので平気ですよ。気にしないでくださいね》

まあそれでも戦死したわけじゃないし、問題は無さそうなので造は笑顔で(痛みで顔がちょっと引きつってたけど)一塁へ。造はホントに頑張ってるよね……造が塁に出てくれたんだ。僕らもここは一点でも入れないとね……!

『ああ……良かったです。月野君平気みたいですね、文さん』
《…… …… …… うん》
『あら?文さんどうしたのですか?少し顔色が悪いように見えますよ。それに一体どちらに……?』
《…… …… …… チョット 公平に 設定 し直してくる ねー》
『……?何の設定ですか?』
《アオイは 文の 分も 応援 してて ねー! 文 すぐに 戻る からー♪》

111時間目 真剣勝負でも〜事故は起こるさ〜 ( No.48 )
日時: 2015/08/07 21:09
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)

造Side


『スリーアウッ!チェンジッ!』

うーん……塁に出たは良いものの、結局点を入れられませんでしたね。打順が戻って一番の島田さんが粘ってフォアボールで塁に出てくれたのですが……須川くんがその、ちょっと小暮さんと文さん(のパンチラ?)に気を取られてスリーアウト。中々チャンスをものに出来ませんね。

「造、お前デッドボールで痛めた手は大丈夫なのか?」
《あ、はいです。まあ、普通に野球やっているのと同じようなものですし、平気ですよ。……それと点数もこの回が現代国語なだけに、まだまだ余裕があります。ですからそろそろオッケーです♪》

そう……そろそろ作戦が開始出来そうです。ゆーさんもそれをわかってか、ニッと笑い……

「そりゃ何よりだ。うっし!んじゃそろそろ作戦通り姫路がピッチャーで造がキャッチャーで行くぞ!こっから先は3年に一点もやらん!姫路と造だけに任せるんじゃなく、お前らもちゃんと死ぬ気で守れっ!いいなっ!」

『『『応っ!』』』

「返事だけじゃなくて本気でやれよ?……特に須川、君島、福村!お前らさっきみたいなチャンスをむざむざ潰すようなバカやったら……全力でぶちのめすからそのつもりでやれっ!いいなっ!」

「「「俺らが何をしたっ!?」」」

い、いやー……まあ、小暮さんの意図せぬ誘惑に引っかかったりとかでしょうかね?まあ、小暮さんが魅力的な事と、須川くんたちの思春期が原因ですから仕方のないこと……ですかね?何せ彼らの原動力はちょっぴり過激な成年指定の本の回収なのですから。

「お前ら自覚ねえのかよ!?と、とにかく真面目にやれ!以上だっ!……姫路、造。このバカ共が迷惑かけるかもしれんがとにかく頼んだ」
《了解です。頑張りましょうね姫路さん》
「は、はいっ!ががが、頑張りましゅっ!?」

噛んだ……あらら……姫路さん随分緊張しているようですね。大丈夫かな?

《姫路さん大丈夫ですよ。リラックスしてください》
「そうだぞ姫路。俺らは出来る限りフォローする。何なら最初のバッターは歩かせていい」
「は、はいっ!歩きゃせましゅ!?」
「(こりゃ重症か?ふむ……だったら)おい姫路。明久たちのとこに行ってちょいと話して来い」
「はいっ!……はい?えと、どうして明久君と美波ちゃんのところにですか?」
《(ああ、なるほど……)ふふっ♪アキさんたちなら良いアドバイスをくれると思いますよ。行ってみてはどうでしょうか?》
「あ!そ、そうですよね!ちょっと行ってきましゅ!」

そう言って姫路さんは三度噛みながらも、アキさんたちのところに向かいます。まあ、アキさんたちなら姫路さんを落ち着かせられるでしょうし、何より姫路さんのやる気UPに繋がるでしょうし♪あんな具合に……ね。

『大丈夫だって。僕らがちゃんとフォローするよ』
『そうね。だから瑞希は思いっきりやってきなさい。ここで決めれたらカッコいいわよ♪』
『カッコいい……はいっ!頑張りますね!』
『うんうん、その意気その意気!よし……美波、瑞希。手挙げて』
『???手を……ですか?』
『あ、そう言うことね?ほら、瑞希もこんな感じで手を挙げなさい』
『はい……こうですか?』


パシン!×3


『え?……あ、ああ!ハイタッチですね!』
『そゆこと。瑞希頑張ってね!』
『背中は任せなさい、思いっきりね!』
『はいっ!姫路瑞希、頑張りますっ!』

……うんうん、良かったです。姫路さんもこれなら行けそうですね〜

「やれやれ……アイツらはホントに似た者同士なんだな。んじゃ造、守備や姫路のコントロール等はお前に任せたぞ」
《はいです。守備ではもう三年生には一点たりともあげませんよ♪その代わり攻撃はゆーさんたちに任せてますからね》
「フッ……愚問だな」

そう言ってゆーさんが守備位置へ向かって行きました。—————さて、ここからがホントの勝負ですよ♪覚悟しててくださいね!3−Aの皆さん♪












《…… …… …… ふふ♪ ホント 覚悟 してて ねー♪》
『あら文さんお帰りなさい。一体どちらへ向かわれていたのですか?』
《ふふふ♪ 内緒 だよー♪ でも すぐに わかる かもー♪》
『あらあら、それは楽しみですね』
《うん! 文も 楽しみー♪ ネー アオイ! やっぱり こう言うのは 公平に しなきゃ いけない ヨネー!》
『……公平?』