二次創作小説(紙ほか)

113時間目 お弁当は説教の後で〜叱ることも大切です〜 ( No.53 )
日時: 2015/08/09 21:08
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)

造Side


あの惨劇の試合が終わり、ようやく昼休みに突入。本来なら今は楽しいお昼の時間ですが————

「……文さん。まずはそこに座りなさい」
《…… …… …… ツクル やっぱり 怒って るー?》
「……とにかく座りなさい。そして、どうしてこんなことをしたか説明しなさい」

まずはきちんと文さんを叱らねばなりません。今回の件は流石の自分も見逃せませんからね。そう言うわけで人気のないところで文さんを呼び出すことにします。まあ、人に聞かれたくない内容ですし、叱っているところを見られたくもないですからね。

《…… …… …… だって ツクルだけ 痛いの 不公平 だもん!》
「……そう来ましたか」

……大体そんなことだろうなと、思っていましたよ。どうにも文さんは自分の事を第一に考えてしまうところがありますからね……

《だったら みんな ツクルの 痛い思い 公平に わけないと!》
「……それは公平とは言いませんよ。と言うよりも一方的な押し付けです。“公平に”と言っている文さん自体、偏った見方しかできてないじゃないですか。ねえ、文さん。文さんは……デッドボールを自分が受けたから、ナツに仕返ししようと思ったんですよね」

恐らくですが途中のナツのデッドボール、そのせいで自分が苦しむ姿を見てしまい腹を立ててこんな行動に出たのでしょう。……学園長の仰るように、確かに文さんを監視も付けずに外へ出すのは少々危険という言い分も強ち間違いではないかもしれませんね。

《…… …… …… うん》
「……やっぱりですか。では逆に聞きますが、自分がデッドボールをやってしまったらどうですか?同じように文さんは自分に仕返ししますか?」
《しない! ツクルは 絶対 わざと ヒトを 傷つけ ないもん!》
「……ではそれと今回の件、一体何が違いますか?ナツも勿論、人を傷つけようとしてデッドボールを出したわけではないですよ?」

……どうやらまだ文さんには、自分と文さん自身の世界しか見えていない節がありますね。これはあまり良い傾向ではないです。

《…… …… …… でも!》
「ナツだって自分に悪意をもっていたわけではないでしょう?最初のデッドボールは明らかに事故でした。ですが……文さんがやったことは、明確に相手を傷つけようとする悪意がありましたよね?」
《…… …… …… 文は ただ ツクルを 傷つけた 罰を 与えようと!》

……っ!なんてことを言うんですかこの子はっ!?

「文さんっ!あなたは一体何なのですか!少しシステムが動かせる程度で、神様にでもなったつもりですか!罰を与える?その罰とは何ですか?無意味に引っ掻き回すことが罰を与えることになるとでも思っているのですか!?」

正直叱るのは好きではありませんし、あんまり厳しい事言いたくないんですが……まあ、ここはちゃんと言うべきところですからね。心を鬼にしても文さんに教えることは教えませんとね。文さんにはもっと大きく育って欲しいですから……たとえ、自分がここからいなくなったとしても。

「ちょっと考えればわかるでしょう!どうして自分の痛みを気遣う優しさがあるのでしたら、その優しさを他の方にも向けないのですか!あなたはナツ達が倒れている姿を見て、何とも思わなかったのですか!?」
《でも 文は ツクルが 大事で!》

自分のそんな説教に食い下がる文さん。……ええ、そうですね。確かに文さんにとっては自分———月野造と言う存在は大事でしょうね。文さんにとって自分は“誕生させてしまった存在であり生まれた意義そのもの”なんですし。ですが……

113時間目 お弁当は説教の後で〜叱ることも大切です〜 ( No.54 )
日時: 2015/08/09 21:13
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)

「……あのね、文さん。文さんが自分の事を大切に想ってくれることはとても嬉しいです。ですが文さん、あなたが自分の事を大切に想うことと同じように、ナツやツネたちのことを大切に想ってくれている人だっているんですよ?その人たちが悲しむかもしれないと考えなかったのですか?現に自分は悲しいです、友人たちがあんな目に合ってしまって……それも“自分が原因”だなんてね」
《…… …… ……》

……まあ、これは自分や学園長にも責任があります。文さんが誕生して今に至るまで約一年足らず。彼女はある意味まだまだ赤ん坊のような子。なまじ知識やシステムを掌握するほどの知能がある分、自分たち以外の他者とのコミュニケーションを取らせていなかったのも事実。まあ、取れる立場ではなかったですからね……

「今回は流石にやり過ぎです。悪ふざけにしては程があります。文さんは遊び半分でやったわけではないとはわかっていますが、それでもやっちゃいけない事をやってしまった事は文さん自身わかっていますね?」
《…… …… …… うん ゴメン なさい ツクル》

流石に堪えたのか、しょぼんと自分に小さな声で謝る文さん。……やれやれ、ですね。

「……違いますよ文さん。ごめんなさいを言う相手は自分ではないでしょう?……とりあえずナツ達に————は、文さんが謝っても何故謝られるのか意味がわからないでしょうから、後で保健室に行ってお見舞いついでにそれとなく謝りに行きましょう。その後、ちゃんと学園長に謝りに行きますよ?いいですね?」
《…… …… …… うん》

……よしよし、大体こんな感じですかね。自分が言うのはここまでにしておきましょう。甘いと言われるかもしれませんが、これ以上は言わないでおきましょう。あんまりしつこく叱っても逆効果でしょうし。それに……ここから先は何が悪かったのかを文さん自身が考え、そして反省しなくてはならないことです。1から10まで教えるだけでは意味無いでしょうし。

「……自分が言いたいことは一通り言いました。文さん、あなたがやったことはしっかりと反省すべきです。いいですね?」
《反省 する ちょっと やり過ぎた》
「そうですね。そこはきちんと反省してください。……ですが文さん」

……さてさて、叱った後にはちゃんとフォローもしませんとね。何も文さんはただ暴走していたわけではありませんもの。……本当はとっても優しい子だってわかっているから————

《??? ですが 何ー?》
「ですが……どんな形であれ、自分を心配してくれた事はとても嬉しいです。心配してくれてありがとうね、文さん」
《! ツクル♪ うん どういたし ましてー!》

そう言うとしゅんとした表情から一転、満面の笑みを浮かべる文さん。ホントはもう少し叱るべきかもしれませんが……曇った顔よりその笑顔の方が似合いますからね。

「ふふっ♪ではまずは保健室に言ってナツ達のお見舞いに行きましょう。その後学園長のところに謝りに行きますよ」
《…… …… …… ばーちゃん とこも 行かなきゃ ダメ?》
「こーら。そこは文さんの自業自得ですよ?そもそも今回学園長に出かける断りを入れてきてなかったでしょうに」
《…… …… …… 何で わかった のー?》
「そりゃわかりますよ全く……まあ、ちゃんと謝った後は皆さんのところに戻ってお昼ご飯ですよ」
《あ! そーだった♪ わかったー! ゴハン 楽しみー!》
「って、こらこら文さん?まずきちんと謝る事が先ですからね」

そう言うわけで、とりあえずは二人でナツたちのいる保健室にお見舞いに行く事にしました。それまではお昼はお預けですかね。






…………あれ?と言いますか今更ですが……文さんってご飯食べられるんですっけ?ま、まあ自分が大丈夫なんですし文さんも食べられる……のかな?

113時間目 お弁当は説教の後で〜叱ることも大切です〜 ( No.55 )
日時: 2015/08/09 21:36
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)

康太Side


午前の壮絶な死闘が終わり、只今休息の為の昼休み。いつもなら明久や雄二たちと一緒になって弁当でも食べているハズなんだが……

「え、えっと。はい!こーたくん!お、お弁当どうぞ……」
「…………俺にか?」

昼休みが始まる前に、工藤に急に呼び出された俺なのだが……どうやらコイツは弁当を作ってきてくれたらしい。そう言えば夏休み中に、俺は一応コイツの料理の特訓に付き合ってやったが『上手になったら、手料理を食べて欲しい』って約束していたことをふと思い出す。

「い、一応頑張ってみたんだけど……その、さ?食べてくれるかな?」
「…………食べる。今日は弁当持ってきていなかったから助かる」
「あ、ありがとう、こーたくん♪」

とりあえず気まずくなる前に工藤から弁当を貰う事にする。と言うか、礼を言うのはこっちなのだが。……それにしてもここが他の連中と離れているところで良かった。こんなことバレたらとりあえずFFF団が抹殺行動に出るだろう。

それは一旦置いておき、工藤から受け取った弁当のふたを開ける。その中身は———

「…………ほう。これは中々」
「あ、あはは……口に合うかわかんないけど、どうぞ召し上がれ、カナ?」

———中から出てきたものはおにぎりに卵焼き。それから照り焼きハンバーグにきんぴらごぼうなどなど。オーソドックスながら一生懸命作った様子が良くわかる。夏から料理の勉強を始めたにしては、中々な出来栄えだな。

「…………頂く」
「ど、どうぞ……ちょっと焦げてるかもだけど」

そう言う工藤の顔は明らかに緊張している。気持ちは分かるが夏の間しっかり鍛えてやったし、コイツ自身の努力もあってかなり上達しているハズだ。そう心配する必要はないだろうに。そんなことを思いつつ静かにまずは卵焼きに手を伸ばす。一口パクリと頬張ると……うむ。

「…………甘みもちょうどいい。もう大体作れるようになったようだな。美味いぞ」
「そ、そう?えへへ♪まあ、こーたくんと言う名の先生の腕が良かったからね〜♪それじゃあどんどん食べちゃってよ!」

これは美味いな。それもかなり。素直にそう感想を伝えると、照れ隠しをしながらそんな事を言いつつもこっそりガッツポーズする工藤。先ほどの緊張していた顔から、いつものような明るく、本当に嬉しそうな顔に戻っているな。

「…………遠慮なく頂く。工藤も立って見てるだけじゃなくて食べろ」
「あ、うん。そだね〜♪んじゃ、いただきまーす!」

そう言って、工藤も俺の隣で弁当箱を開ける。…………ん?これは……見た感じ俺と同じ弁当の中身だろうが……何か違和感がある気がする。何だか少し焦げている……?

「…………(じー)」
「っ!?あ、あの……え、えっとさ、こーたくん?ちょっとこっちはあんまり見ないで欲しいカナー……なんて」

工藤の弁当箱をじっと見ていると、工藤が恥ずかしそうに言ってくる。この反応、そしてこの弁当の中身……なるほど、これはつまり———

113時間目 お弁当は説教の後で〜叱ることも大切です〜 ( No.56 )
日時: 2015/08/09 21:27
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)

「…………そっちは調理に失敗したものか」
「たはは……正解。まあそう言うことだよ。大丈夫、こーたくんの方は綺麗なもの詰めてあるから安心してね♪」

どうやら見た目的に焦げていたり形が崩れているものが工藤の方に、そして工藤の言った通り綺麗に仕上がっているものは俺の方に詰めてあるようだ。全く、コイツはそんなこと気にしていたのか……よし、ならば。

「…………いただき(ヒョイ パクッ!)」
「って!?ちょ、ちょっと!?何でよりにもよってこっちまで食べるのさこーたくん!?」

隙を見て工藤曰く”失敗した”ものも食べてみることに。ふむふむ、これは……

「…………これはちょっと焼き時間が長かったな」
「うぅ……ダメだってば。だから失敗したって言ったじゃない」

良いところを見せたかったのだろう。そんな思惑をあっさりと破られて、少し工藤はガッカリした表情になる。まあ確かに成功した方に比べると、やはり焼き加減がもう一歩だったり調味料の分量がまだまだなようだが……

「…………だが、美味い。ちゃんと頑張って作ってある」
「……もうっ!こーたくんなんか知らないっ!」

真っ赤になってふくれた顔を見せる工藤。やれやれ、たった1、2週間でここまで出来るようになれれば上出来だろうに。実際工藤は教えがいがあったからな。ここまで上達してくれた事はその、少し……少し誇らしい。

「こ、こっちじゃなくて綺麗な方も食べてよ!上手に出来たとこ食べて貰わないと意味ないしさ!」
「…………なら工藤もこっちも食べろ。折角上手く出来ているなら、お前も食べないと」
「むむむ……こーたくんってやっぱり頑固だー!……まあ、それも良いけど……さ」

そうして工藤と共に交互に二つの弁当を分けて食べる事になった。折角上手く出来たものと失敗したものを分けて詰んだのに、結局両方を食べられた工藤には悪いが、見た目はどうであれ正直どちらもかなり美味かった事だけは言っておく。……多分、料理に一番大事なものが入っている証拠だろう。

「…………ただ、もう少し修業は必要そうだがな」
「うぅ……そこはちょっと悔しいな。……そうだね、こうなったら……絶対にこーたくんがあっと驚くくらい料理上手になってやるんだからね!覚悟しておくよーに!」

……悔しいと言っているわりには、何故か物凄く楽しそうだがな?まあ、そう言う俺も満更ではないか。いつものメンバーで食べるのも良いが、工藤と一緒に食べるのも……まあ、悪くはない。

「あっ……ところでさ、今更だけど良かったの?こーたくん本当なら吉井君たちとご飯食べる予定だったんじゃないのカナ?」
「…………まあ、本当ならな」
「あらら……ゴメンね?無理言って付き合って貰ってさ」
「…………いや、寧ろ助かった」

申し訳なさそうな工藤だが……とんでもない、お前は俺の救世主だと心の中でつぶやく。そう、本当ならあいつ等に付き合わされて……地獄を見ていただろうから。

「???助かった?」
「…………ああ。命拾いした。感謝する」
「何それ?こーたくんって時々よくわかんないよね〜♪」

わからなくていいぞ……体育祭のようなイベントがあれば———必ずとあるクラスメイトの殺人料理が姿を現すという事実はな。悪いな……明久に島田。一応祈っておくが、生き残れよ。