二次創作小説(紙ほか)

114時間目 普通のおにぎりが〜こんなに美味しいなんて〜 ( No.59 )
日時: 2015/08/14 21:10
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)

明久Side


「それにしても、ババァ長もしっかりして欲しいよね。まーたシステムの異常とか暴走だなんてね」
「そうね……須川はともかく倒れちゃった先輩たち、大丈夫かしらね?」
「あの、明久君、美波ちゃん……」

2−F対3−Aの試合が僕らの勝利と言う形で終わり、折角の楽しいお昼の時間が来ているんだけれども、僕らは爽快感を得られずにいた。何せあんな事があったんだ。素直に決勝進出を喜ぶ前にあんな目に遭ってしまったあの先輩達に哀悼の意を捧げよう。にしてもあのババァ、やっぱりシステムに踊らされている気がする。

「一応学園長の話だと、今は召喚システムは正常に作動しているそうよ。これで次からは安心よね、瑞希♪」
「え、ええ。安心ですね。……あ、それでですね二人とも……」
「あ、そう言えば決勝って先生たちと戦うんだよね?雄二のヤツどんな策を練るんだろうね?ねえ、瑞希?」
「そ、そうですね。私は策を練るなんてこと、向いていないので何とも言えませんね。そ、それより二人とも……」

そう、次はいよいよ教師との戦いだ。いつもの恨みを晴らし、(瑞希&美波の写っている)写真と戦友《エロ本》たちを取り戻すチャンス。必ずや勝って見せるっ!

「泣いても笑っても次でウチらの没収品が取り戻せるかかかってるわけだし、気合い入れなきゃならないわね」
「その通りだね。それじゃあ次が一番重要な戦いになるし、早めに雄二に対教師共の作戦でも聞きに行って————」
「あのっ!二人ともっ!」

「「…………はい」」

美波と二人で必死に現実から目を背けていたけど、やっぱり逃げ切れないらしい。僕と美波は今にも泣き出さんばかりの表情で、瑞希に返事をした。

「実は私、お弁当を作ってきたんですけど……」

瑞希は大きな包みを差し出す。うん、わかっていたよ?瑞希はこう言う大事なイベントには、必ずお手製の料理を持ってくることくらい……ね?ただそう、認めたくなかったんだ。

「あ、あはは……瑞希は本当に尽くすタイプよね(アキ、どうしましょう?もう逃げられなさそうよ?)」
「そ、そうだね!瑞希はいいお嫁さんになるよ!(マズイね。いつもの生贄(ゆうじ)共がいないし)」
「も、もう♪美波ちゃんも明久君も誉めすぎですよ♪……はい、どうぞです♪」

瑞希と話をしつつ、美波とアイコンタクトで会話する。ホントに参った……造や秀吉たちが無事に避難できているのは良かったけど……雄二とムッツリーニ(生贄共)はどこ行った!?さては先にこうなることを察知して逃げやがったな!?

この場から逃げ出した奴らに呪詛を呟きながら、僕と美波が二人で死の恐怖を恐れている中、瑞希は持っていた包みをほどき中身を取り出す。……って、あれ?

「あら?ねえ瑞希、なんだか今日は量が少ないんじゃない?」
「あ、それ僕も思った。いつもはこの倍はあったよね?」

そう、そこにあるのは普通の重箱一つと、二回りくらい小さな箱が一つ。ちなみに中身は俵の形に握られた、たくさんの小さなおにぎりみたいだ。

「あ、はい。実は、また失敗しちゃったんです。本当はこれの他にちゃんとおかずを作っていたんですけどね……」

そう苦笑いをしつつ、瑞希は僕らにそのおにぎりを差し出し————

「さあ、二人とも。召し上がれ♪」

最高の笑顔で、最凶最悪の兵器を渡そうとしてきた。……その笑顔、とっても可愛いのにとっても怖い。本気でどうしよう……正直まだ死にたくないけど、こうなったら美波だけでも逃がすしか……っ!

「あ、あのさ!僕飲み物買うの忘れちゃっててね!?それでその……美波、悪いけど買ってきてくれないかな?」
「っ!?(ちょっ!?ちょっとアキ!?まさかウチを逃がす気じゃ……!?)」
「ダメかな美波?(美波……避難ついでに日高先生を呼んでて貰うと嬉しいかな。大丈夫、いくらなんでも即死は回避するから)」

まあ、とりあえず美波だけでもこの場を逃げて貰うとしよう。安心してよ?何とかなるって……多分。そう、美波にアイコンタクトを送ろうとすると……


バシッ!


「痛っ!?だ、誰だっ!?……って、え?」
「ちょっと!何、お姉様を使い走りのように扱おうとしているのですか!恥を知りなさい恥を!」

急に誰かに後頭部を叩かれる感触と共に僕を叱責するような声が木霊する。……って、この声は!

「「「美春(清水さん)!?」」」

114時間目 普通のおにぎりが〜こんなに美味しいなんて〜 ( No.60 )
日時: 2015/08/14 21:29
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)

何故か再び清水さんが仁王立ちで僕の背後にいた。あ、4人5脚ではその……イロイロありがとう清水さん。大分イイ思いができたもんね———なんて心の中で呟く。それにしても不思議だ。FFF団に見つからないように2−Fクラスの待機場所から随分と離れたところにいると言うのに、清水さんはどうやってここを見つけてきたのだろうか……まあ、美波いるところに清水さん在りだし、その辺は考えるだけ無駄かな?

「全く……これだから男は気が利かないのです!ましてはお姉様をそのように扱うなど言語道断っ!……その点美春はちゃんと気が利けますわ♪さあ、お姉様!こちらの紅茶をどうぞです♪」

と、持っていた水筒に紅茶を注ぎ美波に渡す清水さん。その迅速な行動は賞賛に値するね。ただ気が利くって言っているケド、今回は完全に裏目に出ている事を彼女は知らない……困った、これじゃ美波を逃がせない……どうしたものか。

「あ、清水さん。清水さんもどうですか?」
「あら?宜しいのですか?では、お言葉に甘えて」

「「あ゛!?」」

と、僕らが止める間もなく、清水さんがおにぎりを一つ口に放り込んだ。し、しまった!?こんなことなら大人しく僕が食べておけばよかった!?早くも犠牲者が出るなんて———

…………って、あり?

「ふむ。普通のおにぎりですが、美味しいですわね。感謝しますわ、姫路さん」
「そうですか。良かったですっ」

「「…………???」」

予想に反して、清水さんに体調等の異常は見られない。これは一体どう言うこと……清水さん、食べても無事って……?ホントに何ともないの?

「え、えっと……瑞希?このおにぎり、どうやって作ったの?」

流石に清水さんが人外レベルに強い子だって言っても、お腹の中まで異常なレベルってことは無いだろうから、おにぎりに秘密があるんだよね?それとなく瑞希に尋ねてみることに。一体どんな秘密が……?

「特に何もしてないですよ?炊いてあったご飯に、お塩を振ってから俵型に握って、海苔を巻いただけです。まあ本当ならおにぎりが普通な分、おかずを特別製にしていたんですけど、ね」

…………と、言う事は。それはつまり———

「「いただきます、瑞希♪」」

このおにぎりは、瑞希が一生懸命作ってくれた(初めてまともに食べられる)ご馳走だってことだ!そうとわかれば、何も遠慮することはないっ!美波と二人で一口食べてみると———

「「お、美味しい……!」」

とても、そうとても美味しかった……!どうしてだろう。本当に塩と海苔だけの普通のおにぎりなのに、こんなにも美味しく感じられるなんて!僕は今本気で感動しているよ……!

「どんどん食べちゃってくださいね!……すみません、おにぎりだけじゃ物足りないかもしれませんが」
「あ、そういうことなら……瑞希、おかずが足らないって言ってたわよね?だったら良かったら皆でウチの作ったお弁当食べない?」

と、おにぎりを幸せそうに食べていた美波が自分のバスケットを開ける。中身は色とりどりのサンドイッチのようだ。余っているスペースにはから揚げ、ウインナー、卵焼きなどどれも美味しそうなものがたくさんあって凄い!

「美波も凄いね!これ凄くおいしそうだよ!」
「ホントですね!私ももっと頑張らないといけませんね!」

瑞希、頑張る君の姿はとても魅力的だけど、できれば頑張る方向性だけは間違えないでほしい。僕らの命がかかってるわけだし、ホント切実に思う。

114時間目 普通のおにぎりが〜こんなに美味しいなんて〜 ( No.61 )
日時: 2015/08/14 21:22
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)

「素晴らしいですわ!お姉様っ♪……全く、そこの男に食べさせるのは勿体ないくらいに。吉井!とりあえず貴方はお姉様に全力で感謝しなさいな!」
「全くもってその通りだね、二人ともホントにありがとう!」

と、清水さんが言ってくるけど、正直本当に感謝しなきゃいけないくらいご馳走だ。ホント僕は幸せ者だなぁ〜

「さて。お姉様、こちらの紅茶はご自由にお飲み下さいませ。それでは美春はこの辺で失礼し————」
「は?何言ってんのよ美春。アンタお昼食べないの?」
「…………はい?」

と、水筒を置いて立ち去ろうとする清水さんを美波が止める。止められた清水さんは、心底不思議そうな顔で美波を見ているね。

「え、えっと……お姉様?それはまさかとは思いますが……美春も一緒にお昼を共にしてよいと言うことで……宜しいのですか?」
「はぁ?当たり前でしょ。別に誰も食べちゃいけないって言ってないわよ。ねえ、アキ、瑞希」
「そだね。清水さんさえ良ければ、一緒に食べようよ」
「そうですよ!三人じゃ食べきれそうにないですし、清水さんもいかがでしょう?」

まあ、形はどうあれ清水さんは美波の事大切に想っているし、本音を言えばきっと清水さんは美波と一緒にお昼を食べたいに決まっているだろうからね。瑞希と一緒になって美波に頷く僕。

「そ、それではっ!?い、頂いてもよよよ宜しいのでしょうか!?」
「だから良いって言ってるでしょ。ホラ、アンタも食べなさいな」
「あ、ありがたき幸せ……」
「いや、美春……そこで土下座されても困るんだけど……」

————そう言うわけで、急遽四人でお弁当を食べる事になった。うんうん♪やっぱり皆で食べるとまた、美味しく感じるよね。今日は本当に珍しいメンバーでだけど。

「それにしても唐揚げをおかずにおにぎり食べられるなんて……!本当に今日は贅沢だね!塩だけのお昼に比べたらもう天と地の差だよ!」
「…………は!?塩だけのお昼!?あ、貴方は一体どんな生活を送っているのですの!?」
「ダメよアキ。そんな食生活をまだ続けるようだったら、玲さんに報告しちゃうわよ?」
「そうですね♪明久君はお姉さんの玲さんには頭が上がらないですもんね」
「ほう?それは良い事を聞きましたわ。この男は姉に弱い、っと」
「ちょっと!?清水さんは一体何をメモってんの!?止めて!?」

雑談をしつつ楽しくお昼を過ごすことに。ある意味凄いなー……清水さんとまともに会話する日が来るとは思わなかったよ。そんなことを考えつつ、飲み物を取ろうとすると————

「……あれ?もう無くなっちゃった?」
「あらら。まあ、四人で飲んでたからね」

————すでに水筒の紅茶は空になっていた。ちょっと飲みすぎたかな?そうか……だったら。

「ねえ三人とも?好みの飲みものって何かな?」
「へ?……えっと、ウチはレモネードかしら?」
「私は……紅茶でしょうか?」

ふむふむ、なるほどね。レモネードに紅茶か。そう言えば良く二人とも飲んでたね。

「そっかそっか。……それで、清水さんは?」
「……何ですの?いきなり」
「いーからいーから。とりあえず言ってみてよ」
「……強いて言えばコーヒーです。微糖の」
「オッケー。んじゃ待ってて。すぐに買ってくるから」

「「「……え?買ってくるって?」」」

「美味しいご馳走と紅茶のお礼!まあ、すぐに戻ってくるよ!」

多分瑞希たちのことだし『そんなの悪い』って言うだろうから、有無を言わさず飲み物を買いに行くことにする。

『明久君ったら……そんなこと気にしなくてもいいですのに』
『ま、その辺はアキらしいわね♪』
『……ふん。まあ、多少はマシってところですか』

あんなに美味しいお昼のお礼が安いジュースの奢りだなんてケチくさいけど、何もしないより良いだろうからね。待たせちゃ悪いし急いで自販機に向かう事にしよう!






…………ただこの時は、まさかこの離れている数分の間に大変な事になっていようとは夢にも思わなかったけど。


〜明久移動中〜

114時間目 普通のおにぎりが〜こんなに美味しいなんて〜 ( No.62 )
日時: 2015/08/14 21:42
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)

「———あや?アキさんじゃないですか」
「あ、造と……妹の文ちゃんだっけ?」
《おー! アキヒサ だー♪》

自販機のある購買傍の近くまで行くと、造とその妹の文ちゃんが二人仲良く歩いていた。そう言えばこの二人ってお昼はどうしてたんだろ?

「やっほ、二人とも。ねえ造たちってもうご飯食べたの?てか今までどこ行ってたのさ?」
「んー、ちょっと文さんと一緒に行くところがありまして。あ、ちなみにご飯はまだですよ?ヒデさんや優姉さんたちと食べる予定です」
《あと アオイとも 一緒に ご飯 食べるー!》

ああ、秀吉がいなかったのはそう言うことか。ってことはムッツリーニも雄二も、それぞれが工藤さんと霧島さんと一緒にご飯食べているんだろうな。まあ、今回は瑞希の殺人レシピは出現しないだろうし、寧ろムッツリーニや雄二はいない方が助かるね。瑞希や美波のご馳走を勝手に食べられることを心配しなくていいし。

「そう言うアキさんはどうしたんですか?そんなに急いで」
「あ、うん。ちょっと瑞希たちに飲み物奢ろうかと思ってさ。瑞希たち僕にお弁当作ってくれてさ、そのお礼にね」
「へー、そうなんですn———はいぃ!?姫路さんのお弁当……ですと!?あ、アキさん!?まさか一人で命を賭けて食する気ですか!?バカな考えは止めてくださいっ!それでしたら自分も行きましょうか!?」

と、瑞希たちのお弁当と言うワードを聞いた造は青い顔でそんなことを言ってくる。あはは……やっぱり造は優しいね。逃げた雄二やムッツリーニはとりあえずこの子の爪の垢を煎じて飲めばいいのに。と言うか、とりあえずあのバカ二人は後で〆ることにしよう。

「あはは。いやいや大丈夫だよ。今回は何も特別なものは入れていない普通のおにぎりだってさ」
「……ほ、本当ですか?良かったです。てか、姫路さんも普通の料理って作れたんですね……」
「……だよね……今日一番驚いたかもしれないよ」

その分今日のお昼は本当にご馳走だけどね。……やっぱり普通の料理が一番美味しいってことかな?

《ツクル 早く ゴハン 食べよー?》
「おっと、そうでした。では大丈夫ならここで失礼しますね。アキさんは姫路さん&島田さんとごゆっくり♪」
「うん。それじゃーね。……おっと、僕も早く行かないとね」

とりあえず二人と分かれて、再び小走りで購買へと向かうことに。三人を待たせるのは悪いからね、っと。


〜明久帰還中〜


「み、美春っ!しっかり美春っ!?」
「しあわ……せ、です……わ……」

そして飲み物を買ってから、三人のところに戻ると……何故か僕の目の前に地獄のような、当の本人にとっては天国のような光景が広がっていた。

「……何コレ?」
「美春っ!?しっかりなさい!とにかく意識を保つのよ!」
「……嗚呼……美春は今、天国に……いるのです、ね。天使様が見えます……わ」
「天国!?ダメよっ!そ、そっち逝っちゃダメだって!?」
「お姉様の……腕の中で……逝けるなんて、本望……我が人生一片の悔い……無し(ガクッ)」
「美春ううううううううううううううううううううううううう!?」

清水さんが美波の腕の中で、今まさに天に召されようとしていた。何だかわからないけどこれはマズイ。僕の生存本能がさっきからエマージェンシーコールを起こしている。

「あ、明久君お帰りなさい♪」
「た、ただいま……はい紅茶どうぞ」
「ありがとうございます!すみません、わざわざ」

一先ず瑞希に買ってきた紅茶を渡し、美波と清水さんの元にそれとなく駆け寄る。

「はい、美波もお待たせ。レモネードだよ(……何があったの美波?清水さんはどうしてこうなったの?)」
「あ、ありがとね、アキ(わかんない。見た感じ、美春はただおにぎりを食べただけだと思うけど)」

……おにぎり?で、でも確かこのおにぎりは普通の味なハズじゃ……?いや、だが清水さんがこうなっている以上、何か仕込んである可能性が高くなった。何だ?一体何がどうなっているんだろうか?

「み、瑞希?ところでさ、このおにぎりって———何か特別な仕込みでもしたのかな?」
「えっと、あまり時間がなくて、ほとんど何もできなかったんですけど……」
「ですけど……?」

そうしてはにかみながら瑞希はこう続ける。

「二つくらい、特別な具を入れておいたんです。残っていた材料で。本当は全部に入れるつもりだったんですけど、中和に失敗してお弁当箱が溶けたせいで二つだけしか———」
「へー、そっかー……そっかぁ……」

…………OK原因発覚。トラップが仕掛けられていたと言うわけか。これは事情を知らない清水さんには悪い事をしてしまったね……と言うか瑞希、今キミ“中和”って言わなかった?……それは流石に僕の耳がおかしくなったからだと思いたいんですけどぉっ!?






その後、美波と瑞希に食べさせるわけにはいかないし、死ぬ気で(いや、本気で死ぬかと思ったけど)全てのおにぎりを食べきった僕。多少走馬灯は見えかけたけど……姉さんの料理も食べる機会が増えてきたし最近耐性が出来始めているお陰で、何とか現世に踏みとどまれたけどね。

「……今日の教訓。“油断した時が、一番危ない”かな?」
「……そうね。とりあえず美春を保健室に連れて行きましょう」

美波と二人でこっそり溜息。いつか瑞希にちゃんと料理を教えられたらいいんだけど……そんな儚い願いを馳せつつ、僕らは倒れた清水さんを保健室に運んで行くことになった。