二次創作小説(紙ほか)

115時間目 小暮先輩には〜姉上すら敵わぬようじゃ〜 ( No.63 )
日時: 2015/08/15 21:14
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)

秀吉Side


「「「…………」」」

午前の競技・召喚野球大会が終わりを告げ、ようやくワシらは昼休みに入った。本来なら、すぐにでも造たちと弁当を食べる予定じゃったが……何やら造とその妹君の文が少々やらねばならぬ事があるらしく、ワシらで昼食の準備をやる事に。その事に関しては特に問題はないのじゃが……

「……その、何じゃ。造たち遅いのう。のう、姉上に先輩よ」
「…………そうね。でももうすぐ来るわよ」
「ふふっ、そうですね。ああ、弟さん?何でしたら先に召し上がっててくださいな。お姉さんもお先にどうぞ」
「…………いいえ。アタシは造くんたちが戻ってくるまで待ちますよ。先輩こそ先に食べてていいですよ?」
「あらあら♪お姉さんが待つのでしたら、私も待ちますね」

…………物凄く気まずいのう。そう、どう言うわけかここには姉上とワシの他にあの3−Aの智将であり、造曰くある意味最凶のお方:小暮先輩がワシらと腰を下ろしておる。何でも造の妹君に誘われたそうじゃが……

「遠慮しないでさっさと食べててください先輩。何だか申し訳ないですし。と言いますか、わざわざ待つ必要は先輩には無いでしょう?」
「うふふ、そうでもないんですよ。私、月野君たちが来ないと食欲が湧きませんの。ですからお姉さんと同じく月野君たちを待っているのですし」

ふむ……どうも姉上はこの先輩に対して敵意を剥き出しにしておるの。そう言えばあのオカルト召喚獣でこの先輩と相対した以降『あの先輩は……アタシ苦手かも』と姉上が言うておったからの。弱みをあまり見せぬ姉上がこうも明確に“苦手”と言うなぞ珍しいものじゃ……

「先輩、出来ればそのお姉さんって言う呼び方は止めていただけませんか?と言いますか、どうして先輩はそんな風にアタシを呼ぶんですか?」
「あらあら?ふふふっ♪すみませんね。月野君が貴女の事を『優姉さん』といつも呼んでいるので、どうやらあだ名がうつってしまったようですね」

……まあそれとは対照的に先輩の方は始終にこにこ笑って、いくら姉上が鋭い視線で睨んでも、いくら姉上が踏み込んでものらりくらりとかわしておるようじゃが。本当に珍しいのう。姉上が手玉に取られるなぞ……

「ぐっ……先輩、それは遠回しに『貴女は先輩である月野君に“優姉さん”と呼んで貰っているじゃないですか』って言っているように聞こえますけど?」
「あらあら、そう言うつもりではなかったんですよ。許して下さい、お義姉さん」
「今完全にお義姉さんって言いましたよね!?と言いますか誰が義姉ですか!?」

…………この先輩は本当に侮れんようじゃの。まさか姉上にツッコミを入れさせるとは。と言うか、久しぶりに姉上のツッコミを見た気がするぞい……?

「まあまあ、これもちょっとした渾名みたいなものですよ。……あらあら、見てください。月野君たちがいらしたようですよ。お二人ともー!こちらですよー!」

姉上の渾身のツッコミもやはり軽くいなし、先輩はやってきた造たちに楽しそうに手を振る。た、助かった……正直これ以上気まずい雰囲気はワシには耐えられそうにないからのう。

115時間目 小暮先輩には〜姉上すら敵わぬようじゃ〜 ( No.64 )
日時: 2015/08/15 21:19
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)

《お待た せー♪ それ じゃあ ゴハン 食べよー!》
「すみません皆さん、遅くなりましたね」

「「ううん(いいえ)♪全然待っていないわよ(いませんよ)」」

……さっきまでのいがみ合い(正確には姉上の一方的な絡み合いかの?)から一転、見事にハモる姉上に先輩。姉上は認めむやもしれぬが、案外この二人は似ているのやもしれぬの。まあ、これはワシの勘じゃが……この先輩も造のことを————

「ヒデさんもお待たせしました。さあ、食べましょうね♪」
「うむ!流石に腹が減り過ぎて困っておった所じゃからな♪頂くとするかの!」

まあ、そう言うワシも人の事は言えんか……と言うか、この場にいる全員が造を大事に思うておるからのう。

「(ボソッ)造は罪な男じゃ……」
「???はい?何か言いましたか?ヒデさん?」
「いや、何でもないぞい。それより早く食べるとするかの!」
「あ、はいです♪流石にそろそろ燃料切れですからね〜♪」
《文も 食べて みたいー!》

造(と文)は、そう言ってにこにこと笑顔で弁当を取りだす。先輩や姉上の、————ワシの気持ちを全くわかっておらぬ純真な笑顔じゃな……本当に、造は罪な男じゃの。そんなどうでも良い事を想いつつワシも弁当を取り出しようやく昼食を頂く事に。

「造くん、これ良かったら食べて♪」
「はい、月野君♪私のもどうぞ。文さんもね♪」

全員で“いただきます”と言い終わると同時に、姉上と先輩が造にそれぞれの弁当のおかずを造に渡そうとする。……まあ、先ほどのやり取りでこうなる事は大体読めておったがの。ある意味これは修羅場じゃな……

「ありがとうです。……うん♪どちらも美味しいですね〜♪」

「「ふふっ♪それは良かった(です)」」

まあ、修羅場にならぬのは造の持つ場を和ませる空気のお陰じゃな。こやつと一緒におると、皆が毒気が抜かれるようじゃし。さっきまでの重たい空気は完全に払拭されたようじゃな。食事の際はやはり楽しく食べるに尽きるのう。こっそりホッと胸を撫で下ろすことに。

「ほら、秀吉。アンタも食べなさいな。文ちゃんも良かったらどうかしら?」
「はい文さん、弟さん。私のもどうぞ♪」
「おお、助かるぞい。ではワシも頂くとするかの」
《おー! ありが とー♪ うん! オイシイ ねー♪》

おっと、ワシも折角じゃし頂くとするかの。……それにしても先輩の方も姉上の方も手作りの弁当のようじゃな。姉上、朝早く何かしておると思ったがこれを作っていたのか。あれだけ姉上は料理が苦手だったはずなのに良くやるのう……ワシも、少しは料理を覚えてみるかの?

「(あ、文さんってやっぱり普通にご飯食べられるんですね)文さん、良かったですね」
《うん! オイシイ ねー! 文 生まれて 初めて ゴハン 食べたー!》

「「「…………?生まれて初めて?」」」

……?妙な言い方をするのう?それではまるで、文はこれまでご飯を食べた事が無いように聞こえるぞい?姉上や先輩もワシと同じように首を傾げる。そして兄である造は、その文の発言に何故だか青い顔に。

115時間目 小暮先輩には〜姉上すら敵わぬようじゃ〜 ( No.65 )
日時: 2015/08/15 22:42
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)

「っ!?(しまった、これはマズい……!?)い、いや!?文さんは“こんなに美味しいご飯は生まれて初めて”って言いたいんですよ!ね、ねえ文さん!?」
《あっ …… …… …… そう なのー♪ とっても 美味しい よー!》

なるほど、そう言う事じゃったか。確かにこの先輩の弁当のおかずはとても美味じゃの。姉上のも夏までは料理が苦手だった割には中々によくできておるようじゃしの。

「…………ふむなるほど。それは光栄ですね。私も頑張って作ってきた甲斐があるというものです。あ、ところで文さん?文さんのお好きな食べ物は何でしょう?」
「ぐっ!?(な、なんて答えにくい質問するんですか小暮さぁん……!?)」
《…… …… …… うーん あっ! ツクルが 好きな もの 全部!》
「(よし、文さんナイス回答!)そうなんですよ。文さん自分の好きなもの大好きですよねー」
「なるほど。つまり文ちゃんは甘いものが好きってことね」
「えっ!?」

うむ、造の好きなものと言えば間違いなくそうなるじゃろうな。

「あ、あの……優姉さん?どうして自分の好きなもの=甘いものってなるんですか?いや、確かに甘いもの好きですが……」
「まあ、造は甘いものに関しては譲らぬことろがあるしのう。その辺は否定できんじゃろ?」
「……い、いや……そこまでアレじゃない……ハズですよ?」
《??? ツクル 甘いもの 大好き だよねー?》
「…………ま、まあ……好きか嫌いかって言ったら……大好きですよ」

「「「ふふっ♪」」」

このような感じで全員談笑しつつ昼食を食べる。それにしてもいつもは明久や雄二たちと食べる昼食じゃが、このメンバーで食べるのは本当に新鮮じゃのう。まあ明久は姫路と島田。ムッツリーニは工藤。雄二は霧島と楽しく食べておるじゃろうし邪魔するのも悪いからの。若干明久と島田が(生命的な意味で)無事か心配じゃがの……


〜少年(?)少女+召喚システム:昼食&談笑中〜


「それにしても月野君と弟さん。次は召喚野球の決勝ですよね、私たちに勝ったんですし是非とも頑張ってくださいな」
「ああ、そう言えばそうだったわね……それにしても、造くんに秀吉?アンタたち良くこの先輩たちに勝てたわよね」

全員一通り食べ終わり、造の作ったアップルパイ(相変わらず見事な出来栄えじゃ)を食べていると、姉上たちがそんなことを言ってきた。うーむ、召喚野球……のう……

「アタシも代表も愛子も、それから久保君もかしら?没収品が懸かってたし、全力でやったのに全く歯が立たなかったのよね。それがまさかアンタたちが勝つなんて……ホント凄いわね」
「あ、あはは……えっと、あれは勝てたと言いますか……」
「う、うーむ……結果的に不戦勝……なのかの……?」
「……は?不戦勝?どう言うことよ?」

……まあ、ちょっとしたトラブルがあったからの。思わず造と二人で表情を暗くする。あの先輩二人に、それと3−Aの先輩方にはワシらがどうこうしたわけでもないし事故ではあるとは言えあのような勝ち方をしてしまい正直申し訳ない。落ち着いたら頭を下げにでも行こうかの。ああ、ちなみにその肝心の3−A所属の小暮先輩はと言うと————

115時間目 小暮先輩には〜姉上すら敵わぬようじゃ〜 ( No.66 )
日時: 2015/08/15 21:34
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)

《うー 文 反省 しないと いけない ねー … … … ナツカワ ツネムラ あと よく知らないヒト(=須川) ごめんな さいー》
「文さん大丈夫ですよ。夏川君たちはもう大丈夫だと言ってましたし。文さんが反省なさっているなら夏川君たちも月野君も許してくれるでしょうし♪」
《うん …… …… …… ナツカワと ツネムラ 大丈夫って 言ってた》
「夏川君たちがそう言っているならきっと大丈夫ですよ。今度から気をつけましょうね、文さん」
《わかったー!》

————特に負けた事を気にした様子もなく、文の頭を撫でながらそんなことを言っておる。この先輩はいつも落ち着いておるのう。……それにしても文と先輩は何の話をしておるのじゃろうか?まあ話を聞く分に、もう解決しておるようじゃし特に気にする事ではないかの?

「ふーん、不戦勝ねえ?まあ不戦勝でも勝ちは勝ちだし、折角ここまできたなら頑張りなさいな」
「そうですね。先生方とどう戦うのか、楽しみにしていますよ♪」
《二人とも ガンバ! ガンバ!》
「うむ。まあ、折角じゃ!ワシも持っていかれた私物を取り戻せるよう頑張ってみるかの!」
「そですね、頑張りましょう!自分も取り戻したいものありますし」

「「《……取り戻したいもの?それって?》」」

3人が口を揃えて聞いてくる。ああ、忘れておったが造も何か持って行かれたと言っておったの。何じゃったかの……あまり覚えてはおらぬが、確か何かの花の種と写真立てじゃったか?

「ふふっ、まあ気にしないでください。ちょっとしたものですよ。でも優姉さんは残念でしたね。何か大切なものでも没収されたんですか?」
「ええ!折角造くんと秀吉の為に作ったコスプ————コホン、洋服と先生方に渡すつもりだった夏の想い出(主に造&秀吉のコスプレ集)が大量に詰まった写真がね」

「「ああ、それは本当に持ってかれて良かったですね(のう)♪」」

この瞬間、ワシは造と心の底から持ち物検査に感謝をしてしもうた。と言うか、姉上は何を学校に持ってきておるのじゃ……

「ちなみに高橋先生たちも泣いていたわ……ホント残念ね」
「……ホント、優姉さんも先生方も残念ですよね色んな意味で……おっと、もうすぐ昼休みも終わりますし戻らないと間に合わなくなりますね」

と、造が時計を指差すと確かに時計は昼休みの終わりを告げようとしていた。もうそろそろ戻らねばならんようじゃな。造の一言で全員が立ち上がる。

「ん、それもそうね。それじゃこの辺で解散しますか」
《美味し かったー! ミンナ ありがとー! ご馳走さま でしたー♪》
「ふふふっ♪お粗末さまです。そうそう、月野君と弟さんは待機場所が反対方向ですので、もう戻らないと午後の競技に間に合いませんよ。私と文さんとお義姉さんで後片付けをしておきますので、先に戻っててくださいな」
「あ、いいんですか?……では、申し訳ありませんがよろしくお願いしますね。———それと文さん。文さんは小暮さんか優姉さんの側にいてくださいね。そして何かあったら自分か西村せんせか学園長のところに行く事。いいですね?」
《はーい! ツクル 文 良い子に してる ねー♪》
「宜しい、良い返事です。では申し訳ありませんが小暮さん、それから優姉さん。文さんをよろしくお願いしますね。では皆さんまた後で」
「うむ。それでは、ワシらはこの辺で失礼するぞい。また後での」

そんなわけで先輩たちのご厚意に甘えて、ワシらは待機場所へ戻る事に。それにしても……

『———ところで先輩?……やっぱりさっきからアタシのこと“お義姉さん”って言ってますよね!?だからその呼び方は止めてください!』
『あらあら♪それは気のせいですよ、義姉さん♪』
『どんどんフランクになってる!?ど、どう言われようと造くんはお嫁にやりませんからねっ!』
『義姉さん、そう堅い事言わずに仲良くしましょう。私これからも掃除も洗濯も料理ももっと精進しますので。義姉さんの理想の嫁になってみせますので!』
『嫁ぐ気満々!?アタシは姑か何かですか!?それに“義姉”呼びは止めてくださいっ!?』
《おー! ユーコ アオイの お姉ちゃん なのー? 文も お姉ちゃん 欲しいー!》
『あら、それはそれはとても良いことを聞きました。それでしたら文さん、良ければ今日から私が文さんのお義姉さんに————』
『だ、ダメですっ!?絶対ダメっ!先輩、させませんからね!?それと文ちゃんも何言ってるかわかっているの!?』

……何故か姉上と先輩の関係が、姑と嫁のように見えたのはワシの気のせいじゃろうか?まあ、それ以前に何か根本的なものが違う気もするが。

「……姉上に苦手な人がいるとはのう……」
「ん?何か言いましたか、ヒデさん?」
「……何でもないぞい。ホレ、急ぐとしよう」
「そうですね。次は確か応援合戦でしたっけ?楽しみですね〜」

そんな姉上たちの様子も一切わかっていなさげな造は、のんきにそして楽しそうに鼻歌交じりにワシの隣を走る。こやつは普段は頭が回るのに恋愛事に関しては明久並みにわかっておらぬからの……まあ、それでこそ造らしいがの。