二次創作小説(紙ほか)
- 116時間目 応援・平手・翔子の涙〜すれ違いの決勝前〜 ( No.67 )
- 日時: 2015/08/16 21:15
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
造Side
『これより、一年生各クラスによる、応援合戦を行います。一年生の生徒は———』
グラウンドにアナウンスが響き渡ります。昼休み明けの最初の競技は、皆さん楽しみにしている応援合戦です。色とりどりの衣装を身に包んで、一年生の皆さんは音楽に合わせて、思い思いの演技を魅せてくれます。それにしても懐かしいですね、もう2年前になりますが自分もあんな風に一生懸命踊ってましたっけ。
そんな一年生たちを微笑ましく眺めつつ、自分らも次に来る出番を待ちつつ準備に取り掛かっています。
「学ランなんて久しぶりだなぁ……中学校以来だよ」
「なんだ。明久も中学は学ランだったのか」
「…………同じく」
「ワシもじゃな」
「あ、自分もです。もう3年も前になりますがね」
「へぇ〜。秀吉と造はセーラー服だったんだね」
「「アキさん(明久)?会話がまるで繋がっていませんよ(おらんぞ)」」
アキさんに全力でツッコみつつも衣装を手に取り、和気藹々と着換えながら話をします。と、そこにチアガールの衣装を手にした島田さんがこっちにやってきました。随分と困った様子で、自分とヒデさんの方へと来ましたが……これはまさか……
「ねぇ木下、月野」
「「嫌です(じゃ)」」
「う……まだ何も言ってないのに……」
いえいえ。その持っている服で大体言いたいことはわかっていますよ。どうせあれでしょう?チアを一緒にやってくれってことでしょう?嫌ですよ。悪いですが、ここは譲れません。
「そんなこと言わないで。ほら、この衣装もかなり可愛いわよ?」
「可愛いから嫌なんですってば」
「その通りじゃな。何度頼まれようと、ワシらはチアガールなぞやらん。こちらの応援団をやるのじゃ」
「ええ。何せ自分とヒデさんは、正真正銘立派な男子ですからね」
「(立派な……男子?何の事かしら?)でも応援団は人数余ってるじゃない。こっちは人数が足りなくて困ってるの。だから、ね?人助けってことでお願いっ!」
…………ぐぅ、人助けって言われると辛いのですが……それでもダメです。
「???美波、どうしてそこまで秀吉と造にチアやらせたいの?一応この二人って戸籍上は男なのにさ」
「「戸籍も何も、正真正銘男ですよ(じゃぞ)!?」」
アキさん、後で説教ですからね。ま、まあそれは一旦置いておくとして、確かにアキさんの言う通りどうして島田さんはそこまで自分らに拘るのやら?気になって聞いてみると、島田さんは黙って遠くを指差します。えっと……?
『あ。美波ちゃん。早く着替えないと時間が無くなっちゃいますよー』
と、そこにはチアガールの衣装に着替えた姫路さんが。……ああ、なるほどそう言うことですか。つまり……
「あの子と二人で踊るのは、色々と辛いのよ!?わかる!?あの子の“アレ”って物凄く揺れるのよ!?跳ねるのよ!?暴れるのよ!?」
「「「「「(…………胸、か)」」」」」
確かにお二人だけで踊るとなると、否が応でもその胸部を比べられちゃうのは当然。だからこそ当たり前ですが胸の無い自分やヒデさんと踊って欲しいというわけですか。まあ、そういう意味では確かにお辛いでしょうが、女装となるとやっぱり嫌です。全力で拒否します。そう断固としてお断りですね。
「あー……確かに瑞希と並んで二人で踊ってたら、色々と比べられちゃうのか」
「うぅ……そうなの。あの子すっごく張り切って一生懸命飛び回るのよ!?そんなことはないって分かってはいるケド、もう隣にいるウチへの嫌がらせとしか思えないのよ!」
「んー……でもさ?別にそんなこと気にしなくても、美波は十分魅力的だと思うけど?」
「っ!もう!あ、アキったらっ……!」
と、さらりと島田さんを赤くするアキさんの殺し文句。わー、どうしましょう。何だか今ならお砂糖吐けそうですよ?相変わらずなアキさんたちですね。あ、ちなみに皆さんも同じような反応をしてます。
「で、でもそれとこれとは別問題よ!お願い木下、月野!一緒にチアガールをやって!」
「お断りですね」
「絶対に嫌じゃ」
「けど学ランの上に無理してサラシを巻くくらいなら素直にチアをやって方が良くないかしら」
「あ、あれはお主らが巻かなければ教育委員会に訴えられると言うから……」
「自分たちは仕方なくサラシを巻いているんですよ……あれ?と言いますか島田さん。どの道自分じゃそのチア服は着れないような……?」
「え……?あ、そっかしまったサイズが……そう言われればそうかも」
- 116時間目 応援・平手・翔子の涙〜すれ違いの決勝前〜 ( No.68 )
- 日時: 2015/08/16 21:19
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
よくよく見るとサイズがちょっと(?)合っていません。まあそりゃそうですよね。特注か優姉さんたちが作りでもしない限り、自分に合った服なんて用意できないでしょう。……べ、別に背の低い事なんか悔しくないですからね!?
「でも待って、アンタの妹の文ちゃんってチア服着てたわよね。身長同じくらいだしあれは借りれないの?」
「……あー、無理だと思います。色んな意味で」
何せ文さんのアレは、文さんご自身が創造して創った“データの服”です。……文さんのことですしちょっと調整すれば行けるかもしれませんが。
「くっ……なら仕方ないわね。ここは木下だけで我慢するしか……」
「待つのじゃ島田よ。ワシも着らぬと言っておるじゃろうに」
とりあえず何とか島田さんは自分は諦めてくださった様ですが、ヒデさんにターゲットを絞ったようですね。ヒデさん、島田さんの説得頑張ってください。
「あらら……美波も大変だね」
「そうですね……って、アキさん?何だか少しだけ顔色が悪くないですか?大丈夫です?」
自分の横でヒデさんと島田さんの問答を見ているアキさんは、何だかお昼に会った時よりも若干顔色が悪い気がします。どうしたんでしょうか?ひょっとして体調悪いとかでしょうか?
「ん、そう?……あー、多分瑞希のお弁当の“当たり”を食べたからだと思う。油断してたら思わぬトラップがあったよ」
体調が悪いとかそんなレベルじゃなかった件について。よ、よくぞ生き残ってくれました。
「……まあ、安心してよ。耐性が出来てたせいか何とか帰還出来たし、問題ないよ」
「「「…………あー」」」
この場にいる姫路さんの殺人料理被害者の会全員納得。なるほど耐性が……って言うか、やっぱり姫路さんのお料理ってとことん油断ならないんですね……
「あ、お弁当で思い出したけど……雄二にムッツリーニ。貴様らよくも逃げてくれたな……?」
「逃げたとは心外な。俺はただ次の教師戦に備えて策を練っていただけだ。別に“こう言う時、姫路は必ずお手製の弁当を持ってくる”とは思っていなかったぞ」
「…………俺は工藤に呼び出されて」
あ、やっぱりこーさんは工藤さんとご飯を食べてたんですね。ふふっ♪最近本当に仲が良いようで何よりですね♪
「ってことは、ゆーさんは霧島さんとご飯食べたんですね♪」
「ん?いや、俺は一人で食ったんだがな」
「「「…………え?一人で?」」」
あら?意外ですね。霧島さんの性格からして、こう言う時は絶対ゆーさんと一緒にご飯を食べると思ったんですが……?
「何だお前らそんな意外そうな顔は。まあ、アイツも別に始終俺と一緒ってわけじゃねえし、そう言う時も偶にはあるんだろ」
「「「…………うーん?」」」
それはそうですが、何だか霧島さんらしくない気がします。普段もクラスが違ってあまり一緒にお弁当が食べられない分、こういう時はゆーさんと(半ば強制的にでも)一緒にお弁当を食べるのが彼女らしいと言いますか……何か用事でもあったのでしょうかね?
「???あの?明久君。美波ちゃんは木下君に何をお願いしているんですか?」
と、こちらにやってきた姫路さんが、島田さんとヒデさんのやり取りに首を傾げつつアキさんに尋ねてきました。えっと……
『なんでそんなに嫌がるの?こんなに可愛いのに』
『可愛いから嫌なのじゃ!ワシは男なのじゃから、可愛いのは着ないのじゃ!』
『ああ、そう言うこと。それなら……えっとね、木下。これ、後で月野にも教えてあげようと思ってたんだけど……ここだけの話ね———』
『む?なんじゃ?』
『———実は、チアリーダーの衣装って……すごく男らしいのよ?』
『ほう?さてはお主、ワシと造を明久レベルのバカじゃと思っておるじゃろ?』
……何て言ったらいいのでしょうね?
「あー……美波が秀吉にチアガールをやってみないかって誘ってる最中なんだ」
「???チアガールを、ですか……どうしてでしょうね?」
「あはは……きっと女子の数が少ないからだよ」
「あ、そういうことでしたら———明久君もアキちゃんに」
「待った瑞希!?どうしてもう一着チア衣装を取り出してジッと僕のほうを見るの!?」
……ひ、姫路さんが物凄く良い笑顔でチア衣装をアキさんに渡そうとしていますね。どうして姫路さんや優姉さんたちは、男子にそう言う格好をさせたがるのでしょうかね……
「ははっ!良かったじゃないか明久。俺も女子が少ないのを心配してたんだ。これで少しは見栄えも良くなるだろうな!」
「…………売り上げも伸びる」
「あ!でしたら坂本君と土屋君も良かったら……」
「…………(ブンブンブン)!?」
「待て姫路。何故チア服を取り出して俺らを見る?」
「それに月野君はどうして学ラン何かを———」
「だから自分は男ですって!?これで合っているんですよ姫路さん!?」
どうしましょう……ひょっとしてこの学園には、男の子を女の子にさせたがる呪いでもあるのでしょうか?このままではツッコミきれませんよ……
- 116時間目 応援・平手・翔子の涙〜すれ違いの決勝前〜 ( No.69 )
- 日時: 2015/08/16 21:28
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
「そ、それはそうと瑞希。応援の練習すごく頑張ってるらしいね」
「あ、いえ。それほどでもないですよ?」
「…………あまり無理はするな」
「そうだぞ、あんなもの俺らの没収品のかかった召喚野球に比べれば適当でいいんだしな」
そんな感じで暴走気味の姫路さんからご自身に妙な白羽の矢が立ってしまわぬよう、必死に話題を変えようとする皆さん。
「あー、そうですね。無茶して身体を傷つけないようにしてくださいね。アキさんも島田さんもとても心配していますし」
「ちょっ!?つ、造っ!?」
姫路さんにそう教えてあげると、アキさんが物凄く焦った顔で自分のその言葉を遮ろうとします。HAHAHA!今更ですし、別に恥ずかしがる事ないでしょうに。
「それに応援合戦はあくまで余興で体育祭の点数とは関係ないしな」
「あ、はい。なるべく無理はしないようにはします。けど——」
「けど?何かな瑞希?」
「私は私の出来る事で役に立ちたいって、そう思って」
「「「「…………おお」」」」
へぇ……?何だか姫路さんって、前と良い意味で印象が変わりましたね。以前よりもとても前向きになっている気がします。心なしかそんな彼女の心の変化にアキさんも誇らしそうですね。
「明久君。私、応援頑張りますからっ!応援の応援、してもらえますか?」
「うん!勿論だよ!精一杯瑞希の応援の応援をしてあげるね!」
「良かったです!では早速————これを着てくださいね!きっと私も美波ちゃんも応援に力が入ると思いますので!」
「HAHAHA!瑞希は冗談が上手いなぁ!」
そう満面の笑みでアキさんにチア服を渡そうとする姫路さん……ま、まあ別の意味でも前向きになっている気がしますがこれも立派な(?)成長ってことでここはひとつ。とりあえず姫路さんのチア服攻撃(?)からどう逃げ出すべきか全員で考えていると……
「…………」
「あれ……?霧島さん?」
……何だか一瞬誰かわからなくなるくらい、物凄く落ち込んでいる霧島さんがとぼとぼと歩いているのが目に映りました。ど、どうしたんでしょう?霧島さん、何だか随分元気がないですね……?
「ん?ホントだな。おい翔子。どうかしたのか?」
「……あ……雄二……」
何だかゆーさんが話しかけても霧島さんは上の空。とてもじゃないですが、いつもの凛々しい霧島さんの姿はそこにはありません。
「……野球、負けちゃった」
「ああ。そうらしいな。だが安心しな、一応仇は討ったぞ」
と、ゆーさんはニッと笑いかけますが……それでも霧島さんの表情は戻りませんね。
「……でも、私の没収品返してもらえない……」
「没収品?ああ、あれか。ったくお前な……」
「……結婚式まで、大事に保管しておくつもりだったのに……」
「バカ言うな。あんなもん、没収されてなくても見つけたら俺がかわりに捨ててやる」
「…………え……?」
……むう。何だか嫌な空気ですね。何でしょうか……何かおかしいような?ゆーさんと霧島さんの会話、噛み合っていない感じじゃ?霧島さんの表情も何か困惑したものに変わっていますし……
「いや。『…………え……?』じゃないだろ。あんな物没収された程度でそこまでショックを受けるなって」
「…………あんな物、って……」
「そうやってつまらない物を没収されたくらいで凹むなってこと————」
そのゆーさんの一言に、霧島さんは目をカッと開き……
「…………っ!!」
———パシンッ!
……乾いた平手の音が響き渡りました。
「「「「……っ!?」」」」
「…………な、に……?」
「……つまらない物なんかじゃ、ない……!」
ゆーさんを叩いた霧島さんは目に涙を溜め、唇を噛んでいます。何か良くわかりませんが、霧島さんの表情から見て、何やらただ事ではない事は確かです。
「雄二にだけは、そんな事言って欲しくなかった!」
頭に響くような大きな声を上げ、霧島さんはこちらに背を向け走り出してしまいました。……あまりの唐突な出来事に、自分を含め当事者のゆーさん、そしてアキさんこーさん姫路さんは固まってしまいます。
「「「「「…………」」」」」
彼女が立ち去りようやく動けるようになった自分たち。思わずアキさんゆーさん、姫路さんこーさんと顔を見合わせます。一体どう言うことでしょう……?
「わ、私、ちょっと翔子ちゃんのところへ行ってきます!」
そんな中姫路さんが真っ先に我に返り、霧島さんを追って行きます。……そ、そうですね。まずは状況を確認に行きませんと。
「じ、自分もちょっと様子を見てきま「待て……造……」———ゆーさん?」
と、駆けだす前にゆーさんも我を取り戻したのか、自分の肩を掴んで制止させます。ゆ、ゆーさん……?
- 116時間目 応援・平手・翔子の涙〜すれ違いの決勝前〜 ( No.70 )
- 日時: 2015/08/24 22:02
- 名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)
「…………お前まで、行く必要ねえよ……子の……ヤツ……!」
まるで地の底から響いてくるような———そんな低い声。そして……
「翔子のヤツ……!な・に・が『つまらない物なんかじゃない!』だ!俺本人が同意していない婚姻届なんか、つまらない物以外の何物でもないじゃねえか!俺にだけは言われたくないだと!俺だから言うんじゃねえか!こっちは何も承諾してないんだぞ!悪く言うのは当然だろうが!」
霧島さんも何だかゆーさんに怒っていたみたいですが……こっちも烈火の如く怒りを露わにします。これは……ダメだ、ちょっと手が付けられませんね……
「造っ!翔子の事なんざ気にかけるんじゃねえぞ!明久、ムッツリーニ。お前らもだっ!いいなっ!」
そう言って、ゆーさんは獣のような雰囲気のまま、もうすぐ応援合戦が始まると言うのに2−Fの待機場所に戻ってしまいました。これは重症ですね……ゆーさんをこれ以上刺激するわけにもいきませんし、姫路さんに続いて霧島さんを追うことのできないこの状況。とりあえずアキさんこーさんと集まって緊急会議開始です。
「どう思います?二人とも」
「どうって……まあ確かに、霧島さんにとっては大事でも、同意した覚えのない婚姻届とかであそこまで怒られても困るよね?」
「…………雄二の言い分もわからなくはない」
「……あの、本当にそうでしょうか?」
「え?いやだってそうでしょ造?ちょっとだけ怒るならともかく引っぱたくのは流石にね」
「…………普通はな」
「……お二人ともよく考えてみてください。そもそもですよ、霧島さんが婚姻届くらいであそこまで取り乱すと思いますか?本当に必要なら———そんなものまたすぐに作れば良いだけでしょ。それこそ霧島さんならすぐに用意できますよ」
「「あれ……?」」
そう。ただ婚姻届を没収されただけでは、霧島さんの行動を説明できません。彼女が大好きなゆーさんを引っぱたくですって?そんなの……それこそとんでもないミスをゆーさんがしてしまったと考えるのが普通ではないかと。
「それにですね、流石に書類物は没収品に含まれないと思うんです。大体仮に何かの間違いで本当に没収されたのが婚姻届だったとしても“すみません、没収品の中に誤って大事な書類が中に入ってました”って先生方に言えば済む問題じゃないでしょうか」
「そう……だよね。確かにそうだ」
「まあこれはあくまで自分の推測ですし、今回皆さんも知っての通り厳しめの持ち物検査でしたからそう言う言い訳は通らなかった可能性もありますので間違った推測なのかもしれませんが……」
「…………だが、造の言う通り婚姻届が没収されたにしては何かおかしい」
「そうだね……でも、だったら一体霧島さんって何を没収されたんだろ?」
「「「…………うーん」」」
どれだけ三人で頭を捻っても手元に情報が何もない以上推測くらいしか出来ません。弱りました……これから大事な教師戦だと言うのに、2−Fの要であるゆーさんがあんな感じでは————
雲行きが怪しくなりつつある召喚野球大会決勝。不安だけが募るこの状況で、このままで何とかなるんでしょうか……?
———同時刻の翔子———
『(グスッ)…………雄二の……バカ……』
『……あら?どうかしました?大丈夫ですか?』
《んにゅ? 大丈夫ー? 泣いて いるのー?》
『……え?』
《痛い のー? だったら サクヤに 痛いの 治して もらおー!》
『こらこらダメですよ文さん。こういう時はまずはどうしたのか事情を聞かないとね。……はい、ハンカチをどうぞ。———ああ、思い出しました。貴女確か二学年の学年主席の霧島さん、でしたっけ?』
『……いつかの、先輩と……造……?』
《ツクル? 違う よー? 文は 文 だよー!》
〜シリアスブレイカーな余談〜
「仕方ないわね、じゃあこうしましょう木下!ウチが学ランを着るから、アンタがチア服を」
「それはワシにとって何の解決にもなっておらぬのじゃが!?」
「って、まだやってたんですか島田さん……」
もうすぐ応援合戦が始まると言うのに、島田さんはヒデさんにまだ諦めずに交渉(?)していたようです。まあ、コンプレックスを刺激される痛みやその気持ちはわからなくもないですが、やっぱり自分やヒデさんがチアをやるなんてどう考えてもおかしいわけでして。我慢して姫路さんと二人で踊って頂くしか……
「あ、わかったそういう事ね……木下、アンタやっぱり月野にも出てほしいって言いたいんでしょ?いいわ、ちゃんと月野にも付きあわせるからやりましょう!」
「ちょっ!?じ、自分のこと諦めてくれたんじゃなかったんですか!?」
またもや島田さんは自分もターゲットに入れる始末。ですから絶対に出ませんってば。
「島田よ……いい加減にするのじゃ。ワシらは絶対に踊らぬからの」
「申し訳ありませんが無理なものは無理ですので。では、そろそろ始まるので準備しましょ———」
そう言って、二人で立ち去ろうとすると———
ガシッ!
「———まあ待てやお二人さん。ここは美波っちの言うことを聞いてやんなよ。それとも何かい?お前ら二人は可愛い女の子のお願い一つ聞けないような“小さい男”なのかい?なあ、造にヒデっちよ」
———立ち去ろうとする自分とヒデさんの肩を力強く捕まえる一人の女性の姿が。…………この……声……は……っ!
「女の子のちょっとしたお願いを聞けないような男は、もう男じゃねぇと思うんだがねぇ?ま・さ・か、造たちはそんなヘタレな男じゃぁねえよなぁ?」
振り解こうと必死に抵抗するも全く抵抗できない自分とヒデさん。さ、最悪です……よりにもよってこんな時にこの人に捕まるとは……っ!?そうこの人、いいえこの変態淑女———
「「サクヤさん(日高先生)……何故ここに」」
「美波っち!後は任せな〜♪アタシがちゃんとコイツらの着付けしておくからね♪」
「あ、はい!ありがとうございます、先生!」
「おっし!んじゃまずは保健室で着替えるか!……さあ行くぞ二人とも!」
「「ヒィ!?離して下さい(離すのじゃ)!?い、嫌あああああああああああ!?」」
———サクヤさんの肩に担がれて、拉致られる自分とヒデさん。どれだけ暴れようともサクヤさんの拘束から逃れられるわけもなく、抵抗虚しく保健室にて強制的にメイクアップさせられた自分たちはと言いますと。
その日の応援合戦。姫路さんと島田さんの横で、チア姿でなければ勿論学ランでもない———サクヤさんと優姉さん曰く、ながーいうさ耳+まーるい尻尾のせくちーバニーガールの格好をした自分とヒデさんが虚ろな目でボンボンを持って踊っている(踊らされている?)光景が見られたとか。
「…………バニーガール?HAHAHA!違いますよ?断じて認めません。もう一度言います。バニーガールなんかじゃないです……」
「ははっ……造よ、ワシはもう疲れてしもうた……バニーにちなんで今ならワシ、4階くらいからぴょんと跳べそうじゃぞい」
「自分もあいきゃんふらーい出来そうです……」
「「ははは…………ハァ」」
まあ、悲しいことではありますが、自分たちの登場に観客席が大いに沸いたとかなんとか。それと同時にあまりに刺激的過ぎて(※優姉さん談)観客の三分の二は鼻血を出して倒れたとのこと。後でこーさんが呟いていましたが、その時の写真は飛ぶように売れてムッツリ商会なるものの売り上げは、過去の最高記録を塗り替えられかけたとかなんとか。売るこーさんもこーさんですが、買う人も買う人ですよ……もうやだこの変態たち……