二次創作小説(紙ほか)

103時間目 僕らとババァと召喚野球?〜大人ってズルイ〜 ( No.8 )
日時: 2015/07/20 15:37
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)

明久Side


「だから、どうしてお前らはそこまで単純なんだ……」

昼休みに正々堂々と没収品を取り返しに職員室を急襲したハズの僕らは、補習室の堅い床に椅子すら使わせて貰うことなく正座され、鉄人の監修の元補習用の問題集をやらされていた。

「クソ、汚ねえ……!俺達のお宝を奪ってボコった挙句、今度は職員室で召喚獣を用意しての待ち伏せとは……!教師の風上にもおけない連中だ……!」
「…………横暴すぎる!」
「全くだよ。男らしく正面から堂々と襲撃に来た僕達を卑劣にも待ち伏せで迎え撃つなんて……!そんなの大人のやる事じゃない……!」

そう。生徒が一丸となって正面から向かって行ったのに、卑怯にも教師たちはそんな僕らに対して召喚獣を使ってまで、待ち伏せをしていた。教師の癖になんて狡いんだろうか。

「まったくお前らは……吉井、坂本、土屋。無駄口をたたく余裕のあるお前等にプレゼントだ」

「「「げっ!?」」」

ドン、と目の前には問題集が追加される。いじめ!?これって教師によるいじめなの!?

「酷い!このチンパンジー、人間じゃないやい!」
「さてはこのチンパンジー、俺たちを家に帰さないつもりだな!?」
「…………チンパンジーは大人しく動物園に戻れ!」
「とりあえず次それ言ったら、更に問題集を追加するから覚悟しておくんだな」

そう言って僕らを睨み返しながら嘆息するチンパンジー。ええぃ遂には脅迫まで……!この脳筋チンパンジーめ、こっちが下手に出ればいい気になって……!

『坂本も吉井もムッツリーニも、皆揃ってバカだな。あんなチンパンジーに逆らうとは』
『全くだ。俺達みたいに大人しくチンパンジーに従っておけばいいものを』
『無駄な抵抗をしているからチンパンジーに目をつけられるんだ』

後そこ、君たち後で覚えておくように。

「そうそうお前ら。お前らは課題の提出がまだだったな。その分追加だ。ちなみにお前らは遅れている分利子をつけよう。一週間遅れるごとに更にもう一冊やってもらうから覚悟しておくんだな」

『『『何ぃ!?ちょっと待て、チンパンジー!何でそこの三バカトリオには無しで、俺らに利子がついているんだっ!?』』』

うん、とりあえず君たちはホント後で覚えておくように。僕はちょっとしか怒ってないけど、赤髪の不良とムッツリ忍者が君らを滅するかもよ☆

「お前ら……言っておくが、この三人でさえ課題はすでに提出しておるぞ?この分ではお前ら三バカ以下と言う事になるが?」

『『『!?なん……だと……!?』』』

その事実に驚愕し珍しい動物にでも会ったかのような反応をするクラスメイト達。はいはい悪かったね、僕らが課題をやっててさ。雄二たちがどうやったかは知らないけど、僕は瑞希や美波とちゃんとやっておいたし。……と言うか、瑞希があんなにスパルタだとは思わなかったよ……美波も苦笑してたし。そのお陰で課題は片付いたけどね?

「ったく……コイツらは全然変わらんな。課題をやってきた三人も、ちっとは変わると思っていたが———残念ながら全く変わっておらんし」
「失礼ですね!僕は日々ちゃんと成長してますよ!変わっていないのはこの二人です!」
「ハッ!夏の暑さでとうとう頭の中身も溶けたのかバカ久よ?お前はどうせ小学生の時から変わらないバカだろが」
「…………俺とコイツらを一緒にしないで欲しい」

「「お前が言うな!ムッツリスケベ!」」

「……もういい。お前らももう一冊追加だ」

「「「っ!?」」」

ドンッ!と更に恐ろしい音を立て僕らの前にさっきより分厚い問題集が置かれる。や、やっぱりこのチンパンジー鬼だ悪魔だクタバレ筋肉ダルマっ!

「おのれ鉄人!絶対に復讐しちゃる……!」
「あの野郎今に見てやがれ……!」
「…………この恨み、忘れない……!」

『月のない夜道には気を付けろってんだ……!』
『見てろ、そのうち靴の中に画鋲を仕込んでやる……!』
『それなら俺は鉄人同性愛者説を学校中に流してやる……!』

「更にもう一冊だな」

『『『『うぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!』』』』

なんという横暴な教師だろう。あ、そうそう。急襲に加わらなかった瑞希と美波、造と秀吉の女子四人はEクラスで一緒に授業を受けているそうだ。そして僕たちFクラス男子四七名全員は補習室で軟禁状態と言う拷問を受けている。唯でさえむさ苦しい集団なのに、女子全員が抜けて監修が鉄人(チンパンジー)ともなれば、僕らのイライラも頂点まで来ていることはもう言わなくても伝わると思う。

103時間目 僕らとババァと召喚野球?〜大人ってズルイ〜 ( No.9 )
日時: 2015/07/19 09:59
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)

「まったく……つくづくお前たちは……体力が有り余っているようだが、そういうものは運動で発散しろ。幸い近々体育祭がある事だしな」

と、鉄人(チンパンジー)は嘆息しながら言ってきた。そう、二学期始まってすぐにあるのが鉄人の言っていた『文月学園体育祭』。何でも“長い休みでたるんだ精神を鍛えなおすため”とか言っていたね。面倒だなぁ……まあ、体育祭はどうでもいいけど、それと同時にあるアレは……ふふふ!見てろよ、鉄人!

「さて。俺はお前たちが暴れた職員室の後始末をしてくる。全員サボらずに課題をやっておくこと。脱走したら……地獄を見せてやる」

そんな不穏当な発言を残して鉄人は出て行った。ご丁寧に鍵までかけてね。……何が〝脱走したら”だろうか。どう考えても監禁態勢が整っているじゃないか。

「まあ……確かに鉄人の言う通りなとこもあるよね、雄二?」
「ああ……もうすぐ体育祭、んでもってアレがある。鉄人の言う通り、“運動”で鬱憤を晴らせる……っ!」
「…………俺らの真の実力を発揮できる」

鉄人が去って行ったところを見計らって、僕も雄二もムッツリーニもそう呟き口元を歪ませる。周りも皆もどうやら僕らの言わんとしている事がわかっているようだ。

「思えばこの5カ月。いや、入学してから1年5カ月。俺たちはこの学校の教師陣に随分酷い目に遭わされてきた」
「…………思えば辛い出来事ばかりだった」
「二学期始まったばかりなのにここで正座させられたり、軟禁されたり、聖典《エロ本》を没収されたり……何だか物凄く最低の扱いだもんね」

この場にいる全員が「うんうん」と大きく頷く。ここにいる同士たちは皆それぞれ辛い経験を乗り越えてきた戦士達だ。舐めさせられてきた辛酸も大差ないだろう。

「だがもうすぐやってくる体育祭。俺達は——この学校の教師たちに復讐する事が出来るんだ!」

雄二がいつもの如く、皆を盛り上げるべく拳を振り上げ立ち上がった。皆も気分が乗ったのかそれに続き立ち上がる。

『応っ!やってやろうじゃねえか!』
『去年は勝手がわからなかったが、今回はそうはいかねえ!』
『あんの鬼教師どもめ!目に物を見せてやる!』

全員の心が一つになる。そう、多かれ少なかれ先生たちを恨む気持ちは皆同じだ。今日の一件もある。もう絶対容赦しない!あんな横暴な行動には、僕ら皆で報復攻撃を試みるしかないだろう。

「いいかお前ら!こんなチャンスはまたとない!今までの学校生活で、罵倒され、虐げられてきたこの鬱憤。この機に晴らさずしていつ晴らす!」
「…………暗殺は任せろ」

『そうだっ!恨みを晴らせ!』
『この機に乗じて仇を討て!』
『ドサクサに紛れてヤツらをを痛めつけろ!』

そうなのだ。こんなチャンスは滅多に来ない。仇敵:鉄人率いる先生たちを、交流試合と言う隠れ蓑を使いあらゆる手段を以って攻撃できる、復讐のチャンスは。

「全員今は牙を遂げ。地に伏し恥辱に耐え、チャンスの為に力を溜めろ。今この時は、真に仇を討つ時期じゃない。鬼教師どもに復讐するべき時は体育祭。親睦競技という名の下に、接触事故を装って復讐を果たす。いいか、俺達の狙いは——」

『『『生徒・教師交流野球だ!!!』』』

全員が声を揃えて拳を掲げる。見てろよ鉄人、ババア、その他恨み連なる教師共……!交流野球にかこつけて、必ず聖典の仇を取ってやるからな……!






『……何でしょう?何だかここにはいないはずの級友たちに向けて無性にツッコミたい気がするんですがヒデさん』
『……あまり気にせんほうが良い。ワシも先ほどからモヤモヤするが、ツッコもうがツッコまないがあやつらは止まらんじゃろうて。それに———どの道結果は変わらぬ気がするからの』

103時間目 僕らとババァと召喚野球?〜大人ってズルイ〜 ( No.10 )
日時: 2015/07/19 10:03
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)

———次の日———


〜連絡事項〜

文月学園体育祭 親睦競技
生徒・教師交流野球

上記の種目に対し本年は実施要項を変更し、競技に“召喚獣を用いる”ものとする。

文月学園学園長 藤堂カヲル


———学園長室———


「「ババァあああああああああああああああああああああああああ!!」」

「!?わわっ!?……あ、アキさんにゆーさん……?お、おはようございます……?」
「なんだいクソジャリ共。朝から騒がしいねぇ」
「あ、造おはよー。そして……“騒がしいねぇ”じゃないですよババァ長!」

何で造がこの妖怪の部屋にいるかはさておき、耳を塞いで顔をしかめる学園長に僕らは掴みかからんばかりの勢いで詰め寄った。折角昨日、聖典を奪われた恨みを交流野球で一気に教師にぶつけようと意気込んでいたというのに……今日学校に来てみればこの仕打ちっ!僕らが怒るのは当然だろう。

「どうして今年から交流野球を召喚獣を使ったものに変えるんですか!?」
「ああ、アキさんたちも通知を見たんですね。凄いですよね〜♪召喚獣で野球なんて中々面白————」
「これだと先生達を痛めつけて復讐できないじゃないですか!」
「アキさん!?何言ってんですか!?何しようとしてたんですか!?」
「……アンタが今言った事がそのまま変更の理由になると思うんだけどねぇ?とりあえずアンタらは邪魔さね。とっとと出て行きな。アタシは忙しいんだよ。そうそう月野、アンタの場合野球仕様に変わるとだね———」

そんな僕の正当な抗議を完全に無視して造に話しかける学園長。邪魔とは失礼なっ!大体造に何を吹き込んでいるんだろうか?まさかまた造を妙な事に巻き込んでいるんじゃ……?

「この野球大会の為に、僕たちがどれだけ故意に見えないラフプレーを練習してきたのか、僕らがどれだけ努力してきたかを学園長は何も知らないから……だからそんな冷酷なことを言えるんですよ!」
「……き、昨日の放課後やけに皆さんが野球の練習を真剣にやっていると思ったら……理由はそれだったんですか……?」
「その努力を別の事に向けな、クソガキ」

そしてそんな僕らのかけがえのない努力を全否定。教育者としてあるまじき行為だ。

「けっ。この変更どうせまた例の如く、試験召喚システムのPRの為だろうが……その肝心のシステムの制御は出来てんのか?また暴走じゃねぇだろうな?」
「ハッ!肝試しや夏休み中ならともかく、今はもう完全に制御してあるさね」
「あはは……《文さん》もその辺はちゃんとわかっているようですからね」

苦笑いしながら可愛らしく呟く造。ん?フミ?はて、何のことだろうか?……それはともかく何でまたそんな面倒な事を……

「安心してくださいアキさん、ゆーさん。今回の召喚獣の野球はですね、完璧に学園長が組み上げたシステムなんですよ。システムをちょっぴり見せてもらいましたがこれがまた面白いものでして。その分現在の召喚システム以上に精巧且つ複雑なプログラムなんですがね」
「月野は良いこと言うねぇ。その通りさ。アンタらバカ二人がどう思っているか知らないけど、野球用に組み替えるってのは並みの労力じゃないんだよ。召喚フィールドの広さの拡張、バットやグローブの設定に、ボールっていう仮想体の構築もしなくちゃいけない。それこそ、完全に制御できなければ実行なんて出来ないさね」
「日本語でお願いします」
「……まあ、バカにはわからん話だろうね」

そう言って無駄に難解な言葉を使って何やらのたまいつつ可愛い生徒をバカにする学園長と言う名のババァ。やっぱりこのババァ、海に沈めようか。

103時間目 僕らとババァと召喚野球?〜大人ってズルイ〜 ( No.11 )
日時: 2015/07/20 15:34
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)

「え、えっと……そうですね。簡単に言えばいつもの武器を使うようなシステムよりも設定が難しいシステムをコントロールできるようになったってこと……でしょうかね」
「なるほどね!」

その点、造の話しはわかりやすくて助かる。なるほど……ふむ。要するに……

「上手く制御できるようになったから、皆に自慢したかったって事だね」
「……あれ?なんか違うような……?」
「——————」

あ、ババァが固まった。

「おいおい、明久。ちっとは気を遣いな。図星突かれてババァが凍りついたじゃねえか」

ほう?図星だったのか。この人ってかなりの歳なのに、子供っぽいとこあるよね。かなりの歳なのに!

「ち、違うさねっ!これはあくまでも一つの教育機関の長として、生徒たちと教師の間に心温まる交流をだね」
「あー、そうだなー。流石だなー」
「凄いですねー。尊敬しちゃいますねー」
「ホント腹立たしいガキどもさねっ!」

そう言うババァも子供っぽいじゃないか。

「なるほど……流石です、学園長!そう言う意味合いもあったんですねっ♪生徒と教師の交流の為に、わざわざ召喚システムを改良するなんて……♪」

そんな中、造唯一人が物凄く感動しているようだ。なんて綺麗な目をしているのだろう。こんな綺麗な目をしている造にこのババァの本音を聞かせるのは忍びないし、ここは造に免じてババァにこれ以上言うのは止めておこう。

「月野、アンタはやっぱりこの二人には関わらん方がいいさね。こんなクソ生意気なガキ共にはねっ!」
「やかましい。毎回思うがアンタこそ造を洗脳してねえだろうな?……それはともかく、そういう事なら野球のルールを白紙に戻す事は可能だよな。なんせ変更の理由がババァの自慢ってだけなんだからな」
「そうだよね。ルールを普通の野球に戻してください学園長」
「却下だね」

「「どうして!?」」

「そこまで人をバカにしておきながらどうして断られないと思えるんだい!?」

なんて酷いんだっ!可愛い生徒の心からの頼みを断るなんて……!

「あー……その、アキさんにゆーさん。お二人とも知っての通りすでに学内にこの事を発表してますし、先ほど言いましたが召喚システムのプログラムもすでに変更済みなんですよ」
「そう言う事さね。今更変更なんて出来ないよ。あと先に言っておくが体育祭実行委員を潰そうとしても無駄だからね」

ちぃ……思わず雄二と共に顔をしかめる。つまりもうすでに実行委員には手を回してあるってことか……

「確かに今から変更って訳にはいかないだろうが、このままじゃ生徒と教師の間にあまりにも差が出ないか?」
「差っていうのは召喚獣の強さの事かい? ハッ、何を言ってんだか」
「でも、雄二の言う通りですよ! 教師チームの点数は物凄く高いじゃないですか! そんなに差をつけられたら勝てる訳が——」
「バカ言ってるんじゃないよ。今回は戦闘じゃなくて野球じゃないか。召喚獣の力だけで勝てるって言うのなら、野球選手はみんなボディービルダーになってるよ」
「でも!」
「ふふふっ♪アキさん、ゆーさん。面白そうだと思いませんか?」

と、必死に抗議する僕らを制し造が僕らに話しかける。

「えっと……どう言うことかな、造?」
「ふふっ♪学園長の言う通り、今回は力だけでは勝てない競技です。これなら今まで手が出せなかった先生方にも勝てる可能性が十分にあるってことです。それこそ西村せんせとか高橋先生とかにも、ね。そういう意味では正々堂々教師と戦い勝てる場が与えられるってことですよ?ワクワクしませんか?」

……う、うーん……まあ、確かに造の言う通り正々堂々と教師どもを負かしたら最高に気分が良いだろうけど……提案してくれた造には悪いけど正直それだけじゃちょっぴりやる気が出ないなぁ。さてどうしたものか……

「ふむ……“正々堂々”か。なるほど…………おいババァ、なら俺達のやる気が出るように賞品を用意してくれないだろうか?」
「へ?雄二?」

と、そんな中突然雄二が妙な提案をしてきた。