二次創作小説(紙ほか)

119時間目 勝利の鍵は〜文さん&小暮さんに在り!?〜 ( No.84 )
日時: 2015/08/28 21:17
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)

造Side


『さぁ皆、今度はこっちの攻撃だよ!そろそろ流れを引き込もう!』

『『『おうっ!』』』






「———とかなんとか前回言ったけど、あっという間に三者凡退だね。薄々わかってはいたけどさ。さぁ皆、またこっちの守備だよ。気持ちを切り替えて頑張ろう……」

「「「おー……」」」

《うぅ……結局塁に出られませんでした……》

これはもう笑うしかありませんよね。先生方の攻撃はあんなにも綺麗に続くのに、こちらはまだ誰一人塁に出ていませんもの……かくいう自分も先ほど消費した点が響いたのか、先生の放つボールに力負けして結局三者凡退。これはそろそろ本気でマズイですね……

二回が終わって三回の表。科目は世界史から物理に変更されています。打順は先ほど隠し球で結局打っていなかった布施先生からスタートしたのですが……布施先生にはヒットを打たれ、2番打者の寺井先生にはセーフティバントを決められてしまい、気が付けばノーアウト一・二塁とまたもやピンチです。おまけに迎えるネクストバッターは……

「宜しくお願いします。そして———今度こそ待っていてくださいね造くんっ!」

またもやこの人、学年主任の高橋先生。正直あの点数を見せつけられては、勝負はしたくないんですが……あ、それと安心してください。全然待ってませんからね高橋先生。寧ろ勝負的な意味では来てほしくないって思ってますからね高橋先生。

《敬遠はしないよね?》
《……当たり前だ》

ゆーさんたちの様子では、ここは勝負に出るようですね。まあ、何せ次は西村先生に大島先生が控えてあるわけですし……ノーアウト満塁の状況にだけはしたくないですから当然と言えば当然ですか。

「今度は上手くやりますね!」

と、高橋先生はバットを短く持ちます。あれは……恐らく当てる事を意識してある構え方ですね。西村先生に大島先生、寺井先生など野球経験者も多い教師チーム。恐らく先生のどなたかにアドバイスを貰ったんでしょう。これはまた厄介な……

《アウトコース 高め 速い球》

ゆーさんは先生の召喚獣から最も離れたコースを指示しています。……何だかゆーさんにしたらちょっと消極的ですね。普段でしたら敢えて裏をかき、インコースを狙うくらいすると思うのですが……?何でしょう、嫌な予感が……

そんなことを思っている間にも、アキさんは全力でボールを放ります。ゆーさんの指示通り、アウトコースに投げられたボールは……

「まぁ、予想通りですね」

「「———っ!何ぃ!?」」

……突如腕を伸ばした高橋先生の召喚獣に、見事に打たれます。くっ……例え野球に関しては初心者でも、頭の良さは随一な高橋先生。やられた……ゆーさんの指示するコースを読んできましたねっ!?

「ま、また来た!?こっちくんなぶるぁあああああああ!?」

高橋先生に打たれたボールはまたもやショートを守っていた須川くんの召喚獣を吹き飛ばし、自分が守るセンター前へと転がってきます。ちぃ……今度こそ完全にやられたっ!?

『『『高橋先生!今度はきちんと一塁から順に回ってください!』』』

「わかっています。同じミスは、二度と犯しません」

教師チームの皆さんの指示を受け、高橋先生の召喚獣はその驚異の点数に比例した恐るべき速度で1、2,3塁ベースを順番に踏んで行きます。マズイですね。あの速さはまさに保健体育のこーさんの召喚獣レベル。これじゃ送球が間に合わなく……












……って、あれ?は、速すぎでは?このままじゃ———

『高橋先生……アウト、です……』
『なぜですか』

———その、一応寺井先生たちも召喚獣を全力で走らせていたはずなのですが……速すぎて前の走者である寺井先生、布施先生の召喚獣を追い越してしまう高橋先生。

『『『…………』』』

119時間目 勝利の鍵は〜文さん&小暮さんに在り!?〜 ( No.85 )
日時: 2015/08/28 21:20
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)

これにはこの場にいる、全ての人間が絶句します。その、再び野球のルール確認をしましょうか。そう……野球のルールの中の一つにですね、“後位の走者がアウトとなっていない前位の走者に先んじた場合、後位の走者がアウトになる”というものがあります。

『とにかく高橋先生。アウトなので戻ってください……』
『納得できません。折角造くんにカッコイイところ見せられると思いましたのに』
『そういうものなので……』

まあ、要するに前のランナーを追い抜いたらアウトになるってことですね。高橋先生は不満そうな目をしつつ、自陣へと戻っていきます。ま、まあこれは高橋先生の点数があまりに高すぎた事による悲劇なんでしょう。このルールは知らないなら仕方のない……事だと思いますし。

《えっと、ホントすみません。タッチアウトです。島田さんお願いします(ヒュッ)》
『え?』
「(パシッ)あ、うん……それじゃ、こっちもアウトです」
『あ』

『…………3アウト、チェンジ』

高橋先生の行動に呆然と立ち尽くす布施先生と寺井先生を、それぞれタッチアウトにさせて一応これで3アウト。審判の先生が物凄く力なく宣言しますね。まあ、このようなトリプルプレーなんて、見たことないですし……

『……まさか月野君関連以外は完璧超人と噂される高橋先生が、あんな凄いことするとは思いませんでしたよ……』
『誰にでも向き不向きってあるんですね……まあ、これで親しみやすくなった……のかなぁ』

布施先生と寺井先生が反応に困る反応をしながらトボトボとベンチに戻ります。お、お二人ともドンマイです……ともあれ、こちらとしては助かりました!何とかこれで凌ぎ切りましたし後はこっちが点を入れられればいいのですが……

「…………ちっ」
《……ゆーさん……》

ゆーさんの機嫌も調子も戻っていないこの状況で、点を入れることは難しそうですね……前回の事もさっきの高橋先生の行動も、普段のゆーさんでしたらすぐに予測して対抗策を練るハズですのに。今回は怒りで全く頭が回っていないようです。

……このままではホントに負けちゃいますね。せめて霧島さんがどうしてあんな行動をしたのかだけでも分かれば良いのですが。と、歯がゆく感じながらもベンチへと戻ろうとした次の瞬間。


ポスッ!


と、音を立て何か柔らかいものが観客席から狙いすましたように自分の方へと飛んできて自分にジャストミート。ふわふわですし痛くもなんともないのですが……何ですこれ?ぬいぐるみ?

《…………!?ってホント何これ!?“自分の”ぬいぐるみ!?》

そう、何故か以前こーさんが作ってきて、そのまま没収し文さんに上げた自分にそっくりの召喚獣サイズのぬいぐるみが飛んできました。いや待って、ホントに何ですかコレ!?慌てて飛んできた方向を振り向くと。

《って、小暮さんに文さん……あの人たちは……》

そう、そこにはさっきまで姿が見えなかった小暮さんと文さんの姿が見えます。なるほど?また彼女たちの悪戯ですね?大方プロ野球選手がホームランを打った後にぬいぐるみを観客席に投げ込むのやつの逆バージョンで遊んでいるのでしょう。これはつまりさっさとホームランを打てってことですか?全く、今はそんな状況じゃありませんのに……と、抗議も兼ねてお二人をジトッと見つめると———

『月野君、お話があります。少々宜しいですか?』
《ツクル コッチに 来て! ハヤク!》

———あれ?二人とも自分を手招きしてる……?おまけに…………何だかわかりませんが、いつもに比べると、二人はとても真剣なご様子。もしかして、何かあったとか?

どの道この回は自分の出番はなさそうですし、少しだけベンチから離れる事に。これは唯の勘なんですが……ひょっとしたら、物凄く大事な何かをお二人は知っているのかも……?


〜造移動中:しばらくお待ちください〜

119時間目 勝利の鍵は〜文さん&小暮さんに在り!?〜 ( No.86 )
日時: 2015/08/28 21:23
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)

《お待たせしました。どうしたんですか?小暮さんに文さん?》

とりあえずこっそりベンチを抜け出して観客席まで走り二人の元に辿り着きます。どうやら二人のいる席は穴場だったらしく、他の応援している皆さんが周りにいないようですね。

「すみません、突然に……ねえ月野君?単刀直入に聞きますが、貴方は霧島さんと坂本君が仲違いしている事は知っていますか?」
《!?え、ええ。その場にいたので勿論知っていますよ?ですが、どうして小暮さんがそれを————》

知っているんですか?と質問しようとする自分に、小暮さんは手を翳して———

「それでは……月野君。月野君は霧島さんが坂本君に怒った本当の理由を知っていますか?」

自分が質問する事も許さず、小暮さんは真剣に自分に問いかけます。今回はかなり真面目な話のようですね。こんなに真剣な小暮さんは久しぶり……こんな時に考えるのもアレですがちょっと凛々しくて良いなって思ったり。

《……すみません、情けない話ですが正直さっぱりなんです。霧島さんの行動には何か違和感があるってことくらいしか……わからないんです》

どう言う経緯かわかりませんが、どうやら小暮さんは霧島さんとゆーさんのことを知っている様子ですね。もしかしたら霧島さんのことを……?

「ふむ。やはりそうでしたか……月野君にしては彼———坂本君に対して何も行動を起こさないので、もしかしたらとは思いましたが。やはり月野君は知らなかったようですね。いえ、この場合は坂本君もこのことを知らなかったとか……?」

納得がいったような顔で小暮さんがしきりに頷いています。やっぱり何か小暮さんは知っているようです。ですが一体何を……?

《あの……一体どう言うことなんですか?小暮さん、何か知っているんじゃ……》
「ええ。ですが、ここからは私に聞くより直接霧島さんの声を聞いた方が早いでしょう———文さん、お願いします」
《……え?》
《わかったー! あのねー ツクル! 文ね アオイと ショーコの 会話 記録 してるよー 今から それ 立体映像で 流す ねー!》
《…………なっ!?ちょ、ちょっと!?(ボソッ)だ、駄目です!文さん何て事しようとしているんですか!?そんなことをしたら———》

文さんが召喚システムだって小暮さんにバレちゃいますよ!?そのように文さんに注意しようとすると———

「ああ、大丈夫ですよ月野君。私、文さんの正体は大体予想ついていますので安心してください」
《…………えっ?》

……小暮さん?今さらりと何かとんでもないこと言いませんでしたか?文さんの正体の、予想がついているですって?え、うそ……?

「それはともかく、文さんお願いしますね」
《うん! 行く よー!》

ま、まあ後で小暮さんにはどう言うことか説明して貰うとして、緊急事態と言うことで黙って従います。どういう原理かわかりませんが文さんが何かの映像を映し出すと、その映像には—————


明久Side


高橋先生の珍プレーのお陰で(?)この回無失点で何とか切り抜けた。何だか正直、塁に出ていた布施先生と寺井先生にはちょっと申し訳ないけど……

「と、とにかく、これでピンチは凌いだ!そろそろ一本出そう!こっちの最初のバッターは」
「お主じゃな、明久」

って、そう言えば僕か。ここは責任重大だ。科目は物理でお世辞にも得意教科と言うわけじゃないけど、何としても皆の期待に応えて———

「期待してるぞ、坂本」
「坂本、お前だけが頼りだ」
「頼む。ホームランをかっ飛ばしてくれ坂本」

———ねぇ、ちょっと?何故に皆僕の次の打者にエールを送るのかな? この回の先頭打者である僕へのエールは?

「ねぇ皆、それは僕に余計なプレッシャーをかけまいという気遣いなんだよね?」

「「「……あー……まぁ、そうだな……一応吉井も…………」」」

「もういいよ!形だけの声援なんていらないよ!?」

畜生……一体何だこの期待の寄せ方の差は……地味に凹むんだぞこれでも。

「あの、明久君。頑張って下さいね!」
「アキ頑張って!ウチらにカッコいいとこ見せてよ♪」

そこに訪れる、二人の女神の癒しのエール。ふん!いいもんね!僕にはこの二人の女神の加護があるからさ!男共のエールより、女の子のエールの方が力が湧くし!

「瑞希、美波……ありがとう!僕頑張ってくるよ!」

「「応援してますね(してるわよ)!」」

「よしっ!この打席を、二人に捧げるね!」

ここが男の見せ所。絶対二人に勝利を捧げる!二人の為ならヒットでもホームランでも打ってやれる気がするぞ!意気揚々と打席に向かい、相手ピッチャーをしっかりと視界の中央に置き————












ズゴス!


『デッドボール!』

119時間目 勝利の鍵は〜文さん&小暮さんに在り!?〜 ( No.87 )
日時: 2015/08/28 21:27
名前: 糖分摂取魔 ◆YpycdMy5QU (ID: Thm8JZxN)

———凄い一発を貰った。い、いきなり失投、だと……?しかも、しかもっ……!

「ぎにゃぁぁああっ!手が!左の手首から先の感覚がぁああっ!」

「「あ、明久君(アキ)!?大丈夫(ですかっ)!?」」

気合いを入れて身を乗り出した結果がコレだよ!?左の手首めっちゃ痛いっ!?何ですっぽ抜けのくせにこんなにも痛すぎるの!?

「す、すいません吉井君……力加減に失敗してしまって……」
「だ、大丈夫……です。うぅ……カッコ悪いところ見せちゃったなぁ……」

いつまでものたうち回っているわけにもいかないので(瑞希と美波に心配もかけられないし)、一塁へとフラフラな状態で向かう事に。てかもうすでに僕の召喚獣死にかけてるんだけど……ま、まあ何とか走れそうではあるから良いさ。それにしてもそっか……さっきから姿が見えないけど、造。君は前の試合でこの痛みに耐えてたんだね……

とは言え、この試合初めてのランナー且つ、ノーアウトという最高の条件だ。ここは次の雄二に期待をしたい所だ。……死んでも言うつもりはないけれど、これでもいつも期待はしてるんだぞ雄二。だからさ……いい加減に切り替えろよな……


≪化学教師 布施文博 物理 269点≫
         VS
≪Fクラス 坂本雄二 物理 188点≫


多少は点数の差はあるけど、それでも雄二の動体視力、運動神経や反射神経を加味すれば十分良い勝負が出来る点数のはずだ。寧ろここで得点を入れなきゃ、今の僕らに他に点を入れられる場面は限りなくゼロに近づいてしまうだろう。雄二が打った瞬間に、僕も走れるように準備しておこう。

「今度は失投しないように気をつけなくては……」

布施先生の召喚獣が投球姿勢を取り、ボールを投げ放つ。おおっ!さっきのデッドボールを気にしてか、コースはど真ん中で球速も普通になっているじゃないか!これは……絶好球だ!

「…………っ」

雄二はその球を見てピクッと動き———そのまま見送る。

『ストライク!』

結果、勿論ストライクカウントが一つ増えた。んん……?あの球を見過ごすなんて、雄二の奴何か策があるのかな?いや、単に間を外されただけ……か?首を傾げているうちに布施先生が二球目を投げる。今度はアウトコース低めの球だ。ギリギリストライクゾーンに入っているけど……雄二はどうする?

「こ……の……っ!」
「なっ!?バカヤロっ!」

さっきと同じように一瞬身体を震わせて、そこから雄二はバットを動かした。動かしたのはいいけど、カツッと半端な音が響いてボールがピッチャー前に転がる。あのバカ、判断に迷ってきちんとバット振らなかったなっ!?それに何だ!その下手くそなバッティングはっ!?お前は初心者じゃないだろっ!

必死になって召喚獣を走らせるも、ピッチャーがボールを拾い二塁へと送球する。くそっ!間に合わ———

『アウト!』

僕の召喚獣が二塁に到達する前にボールが二塁手のグローブに収まる。そして、そのまま二塁手は受け取ったボールを一塁へ向かって投げ———

『アウト!』

打者である雄二もアウトとなり、一気に2アウト。千歳一遇のチャンスは残念ながらものにすることは出来なかった。

「くそぉっ!」

雄二は悔しそうに吠えながらベンチに戻ろうとする。あんにゃろ……別に失敗なら誰にでもあるし、チャンスをものに出来なかった事をとやかく言うつもりはない。でも————今度ばかりはいい加減にして貰わないと迷惑だっ!

「…………ちょっと待ちなよ。雄二、今の気分は?」
「あァ?」
「今の気分はって聞いてんだよ。やる気無いなら補欠と代わりなよ」

話しかけたら凄い目で睨まれる。全然機嫌が直っていないね。でもさ?睨みたいのは僕の方だよバカ野郎。とりあえず、こんな雄二に任せてたら本当にどうにもならない。

「さっきのは何さっ!あんなへっぴり腰で打てるとでも思ったの!?さっきだけじゃない!この試合始まってから不抜けて……正直迷惑なんだよ!」
「んなことは、わかってるっ!」
「いいや何にもわかってないねっ!いい加減切り替えろよ!まださっきの事気にしているのかよっ!」

ベンチにいる皆も先生たちや観客の皆も、『何だ何だ?』と僕らに視線を向ける。事情を知っている美波と秀吉とムッツリーニ、それからバッターボックスにいる瑞希は心配そうに僕らを見ている。皆の手前、正直僕もあんまり言いたくないけど今のコイツにはちゃんと言わなきゃダメだっ!

「霧島さんだって、たまには機嫌が悪いときだってあるだろ!霧島さん本人に何で引っ叩かれたかも聞きもしないで、ただ吠えてるだけじゃ何にもならないじゃないか!」
「……やかましい!何が機嫌が悪い時だ!そんなもんで納得できるかっ!」

と、火に油を注いだが如く、雄二は更に怒りを燃やす。爪が食い込むほどに拳を握りしめて————

「だいたい、どうして俺が、本人の同意もない紙切れ一枚没収された程度で、あそこまで怒られなきゃならんのだ!」

本日何度目かの遠吠えを始めた。コイツ……完全に頭に血が上ってやがる。もういいわかった、こうなったらぶん殴ってでも冷静にさせてやろう。

そう、僕が今まさに拳を固め目の前の暴走寸前のバカを殴りかかろうとした瞬間————


バシャァア!


『『『『…………え?』』』』

「「…………は?」」

突然、何の前触れもなく……その雄二が水浸しになった。これには目の前の僕も見ていた皆も、あれだけ怒り狂っていた雄二でさえも唖然としてしまう。そう何せ————

《……少しはこれで、冷静になりましたか?ゆーさん?》

————そんなことを言いつつ、空になったバケツを片手に造が冷やかな笑顔で立っていたのだから。