二次創作小説(紙ほか)

Re: HoneyWorks〜告白実行委員会〜【復活宣言!】 ( No.123 )
日時: 2015/10/31 00:50
名前: cinnamon (ID: A8fB1cHq)
プロフ:



その日の昼食休憩も、蒼太は天の宮街道へと足を運んでいた。
あの日、早坂あかりに出会ってから毎日欠かさず、ここへ来るようにしているのだ。
自分のあかりへの気持ちが『恋』による現象だと分かった以上、蒼太はもうじっとしてはいられなかった。

(もう一度会って、今度は会話を繋げて、とにかく仲を深めて…って、あれ?
そもそもまず、会うのってどうすればいいんだ?でも、あの竹やぶで出会ったんだから、竹やぶに行けば会える確率は高い訳だし…しかしだ、早坂さんは天の宮街道も知らなかったってことは、この都の民ではなさそうだな…なら、別の都からの貴族とか?)

一人で悶々と考えを発展させていると、足元から突然、カコンッ、と乾いた木の音が響いた。
のろのろとした動きで足元を見やると、自分の足元から素早く転がり出す縦長の物体をとらえた。
同時に蒼太は真っ青な顔でそれに向かって駆け出す。

(どうしよう、この間の宴でもらったばっかりの扇子がぁぁぁ!止まれ、頼む、頼むから止まってぇぇ!)

しかし、蒼太が慌てて全力で切り出して間もなく、それは動きを止めた。
それを見て、蒼太は安心と同時に疑問を感じた。

ここはそこまで急ではないものの、扇子が転がるには充分な下り坂になっている。蒼太は過去にも、こうして物を落として、危うく三厘の道を走り続けるような目に遭ったことがあるから、それは間違いないと言える。

扇子を拾って顔を上げた蒼太は、初めて周りの状態に気付いた。そして、扇子がこんなにもあっさりと止まった理由も同時に察した。


辺りは、人で埋め尽くされていたのだ。


ここはこの都で一番広く、商店も多いと日本中でも有名な街道だが、今は自慢の大通りは人で埋め尽くされて人一人として向こう側に行けない状態だ。
生まれも育ちもこの都である蒼太ですら、初めて見た光景に、蒼太はただただ呆然とするしかなかった。

(いやいやいや、こんなに人集りが出来るって、そうそうないし!絶対理由があるよね。うん、そうだ、落ち着け蒼太!)

自分で自分に言い聞かせ、冷静な目で周りを見るように身体に暗示をかける。
そうしたからか、蒼太は人集りをつくっている人々が皆、興奮状態にあること、そして、人集りの人は男性の割合がかなり多いことに気付いた。
ここまで分かれば、人集りの理由は一つしかない。


(そんなに綺麗な人がいるのかな)


蒼太は、好奇心が先立って、人集りの中を見ようと、人々の中をすり抜けていく。
しかし、後から思えば既にこの時にやめておけば良かったのだ。
何故なら__


「え…は、早坂、さん…?」


太陽の光に照らされてますます輝く、まるで濃い紫にも感じられる、艶やかな黒髪。
瞳は、パッチリと大きく、藤の花のように美しい紫色。
瑞々しい桃色の唇に、粉雪のごとくサラサラとしていた肌_



蒼太が、探し求めてやまなかった人物が、今まさに目の前にいた。
ただ、あの時と違って、たくさんの人々に(それも男に)囲まれて。