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二次創作小説(紙ほか)
- Re: HoneyWorks〜告白実行委員会〜【復活宣言!】 ( No.166 )
- 日時: 2016/01/25 18:00
- 名前: cinnamon (ID: j/F88EhV)
今はギリギリ更新出来そう!なのでします!
穏やかな、春。
事件も何もない、心の底から安心出来る、春。
春輝はいつものように木に登って空を見上げていた。
(今日もいたな…あの子)
山に溶け込むように建っている一軒の家に、あの子は住んでいる。自分と家族以外に、唯一この森に住んでいる、1人の少女とお婆さん。
ふわふわとした動きに合わせて楽しげに揺れる、柔らかそうな茶髪。
レースの付いた、女の子らしいけれど上品で控えめな洋服。
全てがこの世の何よりも可愛いのだけれど、その中でも一番春輝の心を掴んで離さなかったのは…
(俺も、そろそろ見てるだけなんて終わりにしたいから…)
今日こそ。今日こそは。
春輝の目下をウキウキと歩いている彼女に、自分の存在を知ってもらうのだ。
(この姿は隠さねぇとな…)
今までどんなに優しい人に会っても、自分の真の姿を見て、恐怖で逃げていった。そして、その度に人に姿を見せることを諦めてきた。
自分が初めて、恋心を抱いた人にまで逃げられてしまっては、今度こそ確実に春輝の心は崩れてしまうだろう。
(いつかはばれるんだろうけど…それでも、俺は構わない)
今のように、ただ眺めているだけが安全なのは、春輝にだって分かっている。
それでも、今までずっと暖めてきたこの想いが、もうこれ以上待つことを許さなかった。
「…行くか」
大きく頭を振って立ち上がった春輝の頭には、さっきまで無かった『耳』があった。
数々の動物を食い、人間からも動物からも恐れられている、狼の耳が。
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