二次創作小説(紙ほか)

Re: HoneyWorks〜告白実行委員会〜 ( No.22 )
日時: 2015/08/13 01:09
名前: cinnamon (ID: 76LSjzh0)



「で、つまり、その作戦…は、成海さんの考えなんだね」

あかりの説明をひとしきり聞き終えた蒼太が、納得した面持ちで、一言発する。
あかりは頷き、タルトタタンを口にする。

実は、あの時映画研究部で、限定メニューのタルトタタンの名を口にしたのは、蒼太を説得する為の口実であって、食べる気はなかったのだったが、苺のロールケーキは、あかりが思っていたよりも小さく、早々と食べ終わってしまったのだ。
蒼太との話もまだまだ終わりそうにないので、あかりは今日だけ、と自分に言い聞かせて、二個目のケーキを食べることにしたのだった。

(このタルトタタン、シナモン(私じゃないよ!?by作者)が効いてて美味しいなぁ…望月君もこの味好きかな?)

蒼太は、先ほどから進んでいるのはアイスティーばかりで、自身の頼んだシヨートケーキは、一向に減る様子がない。
それなりに大きいからかもしれないが、あかりはもっと別の理由があるように思う。

(きっと、味に飽きちゃったんだろうな…私もよくあるもん)

小さい頃から甘党だったあかりは、この時期になるとよくソフトクリームを頬張っていた。
甘く冷たいソフトクリームは、食べているうちに味の感覚がなくなっていたのを思い出す。
あかりは、その度にコーンの部分をかじり、必死に、甘い味を見失わないようにしていた。

(望月君はいやかな…半分こ、なんて)

しかし、自分は、何故、今ここに蒼太といるのか。
何故あの時、自分は蒼太だけを指名したのか。

そう考えれば、あかりの胸はまた締め付けられる。

蒼太の気持ちを考えて、ここで身を引くのか。
自分の気持ちを、とりあえず伝えるのか。

あかりが迷ったのは、一瞬だった。

「望月君!」
「は、はい!…って早坂さん、どうしたの?」

(もう、もうダメだよ。自分の気持ちを隠してばかりいたら)

あかりは自分に言い聞かせる。
今までは、人見知りな性格もあってか、なかなか人に自分の気持ちを伝えて、押し通すことがなかった。

(でも、私、なっちゃんと美桜ちゃんに、たくさん理想をもらったよね。だから…!)

やっと見つけられた自分の理想は、自分で実現させるものだ。
あかりは、意を決して口を開く。

「このタルトタタン、半分こしない?結構大人の味で、美味しいよ!」

蒼太は、一瞬、瞳に動揺の色を見せる。
しかし、すぐにそれを振り切り、優しい笑顔で応える。

「はい!あ、なら、そのショートケーキも、半分こ、しませんか?」

優しい笑顔と言葉に、あかりは不思議な胸の高鳴りを感じる。
この高鳴りは、きっと、あかりの親友たちも、何度も感じているはずだ。
目の前の笑顔を見て、あかりは心でそっと呟く。


(私は今、青春してる)