二次創作小説(紙ほか)
- Re: HoneyWorks〜告白実行委員会〜【復活宣言!】 ( No.228 )
- 日時: 2016/10/16 14:18
- 名前: cinnamon (ID: zRrBF4EL)
ではでは、シンデレラの続きを(^^;
「また舞踏会、か……」
国の中央に位置する宮殿の一角にある、広めのガーデンで瀬戸口優は長いため息をついた。空を仰げば、か細く孤独な三日月が雲の間で弱々しく光っていた。
(………昔は一人で月見ることはあんまりなかったよな………)
まだ優が幼かった頃。
横にはいつも幼馴染の春輝や蒼太、そして夏樹がいた。
毎日毎日四人で遊んで、自由に、無邪気に暮らしていた。
そんな幸せは、急に消えた。
『………行きましょう、優………』
そう、優の母親は数年前に小さな村に住む男と駆け落ちし、行方不明となっていた王女だったのだ。
王女が見つかったと世間に知れ、見つかってしまった以上、王女は宮殿に戻らなければならない。そうなれば、優の居場所も自動的に決まってしまう。
自分は、もう今まで通りに遊べない。
四人と、夏樹と話すことも、一緒に笑いあうことも、声を聞くことも出来ない。
あの時の母親の声が、脳裏に焼き付いたまま、なかなか離れてくれない。家族全員で宮殿に住むときっぱりと言い切った母親の顔は、見たこともない厳しさと気品に溢れ、確かに『王女』そのものだった。
「…………夏樹」
呼んでも、声なんて届かない。
頭では分かっているけれど、それでも声に出してしまう。別れたのは恋など知らない無邪気な子供の頃だったのに、気づけばこんなにも夏樹を想っている自分がいる。
(もし今、夏樹に会えたなら)
そう考えかけて、思考を止める。
自分が夏樹に会えることなんて、現実的にあり得ない。第一、夏樹は一般人で、優は王子。
夏樹のことを考えるたびに、大きすぎる身分の差が優の前に立ちはだかる。数年前に駆け落ちした母親も、こんな身分の差に苦しめられたのだろうか。
三日月が雲に隠れたタイミングで、上の方から鐘の音が響く。その音で優は、日付の変わったことを理解した。
今日は舞踏会だ。
優の婚約者を決めるための。
二人が出会うまで、あと一日を切った。