二次創作小説(紙ほか)
- Re: HoneyWorks〜告白実行委員会〜 ( No.40 )
- 日時: 2015/08/29 00:39
- 名前: cinnamon (ID: 76LSjzh0)
夏樹達が到着して間も無く、最後の二人がやって来た。
「あっ、恋雪くん!おはよ〜」
「あ、榎本さん、おはようございます!あ…もしかして僕、最後ですか?すみません!」
「全然大丈夫〜!私達も今来たばっかりだしね!」
「そうですか?なら良いんですが…」
夏樹と恋雪が親しげに話す中、今回の保護者役である明智咲の方も盛り上がる。
「ったく咲兄、来んの遅い!なんかあったのかよ〜」
「お前達の管理も、結構面倒なんだぞ?」
「そうだよ〜春樹くん、今日は明智先生にはお世話になるんだから、ね?」
美桜の柔らかな声に怒りを遮られ、春樹はますます決まり悪くなる。
咲はそれをしっかり見ながら、
「まぁお前達の管理してるのは、いつもだけどな」
と正しい意見を言っておく。
それには流石に春樹も言い返す。
「はぁ?いっつも人に雑用頼んで飴舐めてんのはどこの誰なんだよ?」
「だってお前、いっつも俺にくっついてるだろ?」
「くっついてねーよ!」
美桜はそれ以上止めに入らず、その光景を微笑ましそうに眺めていた。
咲は、春樹とのやり取りを適当に終わらせ、人数確認をし始める。
「よし、寝坊してる奴はいないな」
「先生、寝坊した人ならここに…」
「あー!すぐ余計なこと言うー!優は黙ってて!」
へいへい、と苦笑しながら返事をし、優は咲に「続けて下さい」と言う。
咲も、夏樹と優の掛け合いに構うこと無く進める。
「んじゃ行きますか。あ、昼飯はテレビ局の近くの店で食うから」
「私のオススメ店だよ〜♪」
「わぁ、聖奈ちゃんのオススメかぁ〜楽しみ〜!」
「うんうん、モデルさんのオススメなら間違いないもんね〜」
あかりと美桜がワクワクとした面持ちで楽しそうに話していると、咲から爆弾発言が飛び出る。
「あ、人数多いし、二人ずつの行動で頼む。綾瀬は俺とな。さっきの話、まだ途中だろ」
「はい!」
「恋雪くん、さっきの話って?」
「あぁ、受験内容の事で、明智先生からお話があって…ここに来るまでに少し話していたんです」
「そっかぁ〜じゃ、また後で!」
「はい!」
「二人ペアかぁ〜なっちゃんは瀬戸口君とで決定だね〜!」
「ちょっ、あかり…!そんなはっきりと…」
「ほらほらなっちゃん、行って来て?」
「…うん」
あかりの明るさと、美桜の優しい言葉に励まされ、夏樹は少し離れて待つ優の元へ向かう。
「…雛、行くぞ」
「あっ、待ってよ虎太郎ー!」
(誰も一緒に行く、なんて言ってないのに。まぁ、虎太郎以外に行く人がいないのは事実だけど…)
雛は一瞬不服そうな顔をしたものの、黙って虎太郎の横を歩く。
毎日のように見る幼馴染の横顔は、ちょっと逞しい男の子の顔に見えた。
(…なーんて、虎太郎には絶対言わないけど)
榎本家と瀬戸口家がそれぞれペアで先に行き、残された者も意を決して行動する。
「あか…早坂さん、行きませんか?」
「うん!早く聖奈ちゃんオススメのお店に行きたいな〜♪」
「…もうお腹減ったの?」
「んー、ちょっとだけ♪」
小首を傾げながら笑顔で見上げてくるそのポーズは、この前の寝癖事件に続いて、破壊力が強すぎた。
(あぁぁぁぁ…僕は今、人生で一番幸せだーーーっ!可愛すぎるよ、あかりーーーーん!)
蒼太が喜びの余韻に浸っている中、春樹も行動しようとしていた。
(流石もちた、あれでも決める時は決めるよな)
普段の大人しさから一転し、ここぞと言う時の行動力は、春樹も尊敬したくなる程だ。
自分は、普段は行動する癖に、大事な時に身体がまるで動かない。
(しっかし、咲兄が作ったチャンスを無駄にする訳にもいかねぇし。ここは一肌脱ぎますか)
「なぁー濱中、お前、成海と行ってくんね?」
「あ、あぁ…ええで、春樹は美桜さんと行くんやろ?」
「まぁな、じゃ、頼む…?」
濱中の態度に疑問を感じつつも、ここは行かせてもらうことにする。
(恋って言うのは、時には狼みたいに凶暴に、周りを考えずに動くもんなんだよ)
蒼太が好きな映画の台詞を心で呟きながら、濱中に謝り、そして美桜に向き直る。
「んじゃ、行こうぜ美桜」
「…うん」
小さな返事でも、春樹の心には、水面に水が落ちたように、じわじわと波紋が広がっていく。
__喜び、という名の波紋が__
最後に取り残された聖奈は、それぞれのペアが繰り広げるシチュエーションに感動しながらも自分がこの先どうするか、緊張が走る。
どことなく堅い聖奈の表情を見て、翠が口を開く。
「…んじゃ、い、行こうか…」
「…う、うん。あ、みんなテレビ局の場所分からないよね…」
「ほんなら一番前行こか?」
「うん、そうしてもらえるとありがたいです…」
翠は聖奈に笑いかけ、先を歩く。
その笑顔に、聖奈が鼓動をますます早くしたのは言うまでもない。
(って、いやいや、今はこのドキドキを溜めておかないと…!)
聖奈がわざわざ大勢をテレビ局に呼んだ真意は、
未だに誰も知らぬこと。