二次創作小説(紙ほか)
- Re: HoneyWorks〜告白実行委員会〜【 リク募集中!】 ( No.66 )
- 日時: 2015/09/21 21:10
- 名前: cinnamon (ID: 76LSjzh0)
♪♪♪~
ダメなとこも知ってるよ
嫌いな食べ物ももちろん!
好きな人だって知ってる
この先 ずっとずっと
隣で 笑顔にさせるよ
(三角ジェラシー)
*・゜゜・*:.。..。.:**:.。. .。.:*・゜゜・*
(雛は次か…)
歌い終わり、ヘッドフォンを外した虎太郎は、未だ賑やかに談笑している雛を見る。
その笑顔は相変わらずで、その場を照らす太陽のような笑顔に、虎太郎も自然と笑みがこぼれる。
(やっぱ、雛は笑ってんのが一番だな!)
『アイツ』こと、綾瀬恋雪のことではよく泣くようになったが、雛は泣いた後にはいつだって、その笑顔を振りまく。
自分の想いを伝えようとした雛は、きっと自分の想いが届かないことを前提に、告白を決意したのだろう。
結果は最悪だったが、雛は涙と共にそれを乗り越え、前に進んでいく。
そこにどんなに涙があったとしても___
(ほんと、雛も泣き虫に戻ったよなー…)
夏休み前のあの日も、それ以外も。
雛を笑顔にするのは、いつだって自分なのだから。
(だから俺は、まだ告白はしないんだよ)
やっと見つけた、雛の中の自分の居場所。
見つけるのには、随分と時間がかかったけれど。
歌うことで、虎太郎はずっと目を逸らしていた自分も見つけた。
(でもやっぱなんか俺って、頼れねータイプだなー…)
夏休み前のあの日以来、自分から逃げずに向き合い続けて分かったことは、ただ一つ。
『想いを伝えない』ことが一番だということだ。
周りから見ればただの意気地なしにしか見えないかもしれないが、雛の笑顔を守るなら、それが一番だと気付いてしまったのだ。
後悔しないようにと、想いを先に伝えようとして失敗した雛。
自分から逃げずにいようとして、結局辿り着いた果てに情けなさを覚える虎太郎。
あまりにも違いすぎて、自分で決めた道だと分かっていても、どうしても自分自身に頼りなさを感じてしまう。そもそも、ここで迷っている時点で、結果、自分から逃げていることになっているのではないかと不安になる。
(けど、やっぱ俺は、サンドバックに徹しるのが一番いいんだよな!)
自分にいつか自信が持てて、雛の中の自分が今と少し変わったその時まで、今は想い出のアルバムを胸の内にとどめておくだけにする。
虎太郎は、どこか吹っ切れたような表情で、マイクの前から動いた。
それから程なくして、雛の元気で明るい歌声が聞こえてきた。
♪♪♪~
いつか好きになる 気づいた
あと何回?ねぇ目が合えば
カウントダウン 止まって
認めたら 認めちゃったら
隠す声が 震えちゃうんだ
今 好きになる
(今好きになる。)
*・゜゜・*:.。..。.:*・・*:.。. .。.:*・゜゜・*
ついに来てしまった。
歌い終わった雛が、至極嬉しそうな顔をして駆け寄ってくる。
「美桜ちゃん!次ですよー!」
「うん、ありがとう。雛ちゃんもお疲れ様〜」
「ありがとうございます♪美桜ちゃんも頑張ってくださいね!」
「……うん」
予想外に、声が暗くなり美桜は慌てる。
雛は、そんなことには気づいていないように、夏樹の元へと駆け出す。
だが、美桜は気付いてしまった。
雛も一瞬、形の良い眉を寄せて、悲しそうな顔をしたことに。
元気に駆け出していった雛の背中を見送り、美桜はマイクの前へと足を進める。
曲決めにギリギリまで難航していたから、こんなにも遅くなってしまった。
(でも……この二曲を見た時は、びっくりしたなぁ…)
『初恋の絵本』と『未来図』___
自分の想いが素直に書かれたその紙を見つけた時、美桜は不覚にも泣きそうになった。
今までの自分と、未来図に描かれた自分。
自分の未来に想いを馳せて、過去の自分に語りかけて。
美桜は何かを振り切るように、ヘッドフォンに手をかけた。
♪♪♪~
残り10cmの勇気があったなら
今日が変わってたのかな
もっと私 単純バカで素直なら
掴んでた はずなの!
(初恋の絵本)
*・゜゜・*:.。..。.:**:.。. .。.:*・゜゜・*
(こんなことなら、始めにやっとけば良かったよなー…)
レコーディングの指示席である回転椅子に座って、全員の歌をじっくり聞けたのら良かったけれど。
まさか自分が最後になるなんて。
(いや、でも最後の方が良いかも)
おかげで美桜の歌声も、一言も聞き逃すことなく聴けた。
それに、何よりも自身の心の準備に、存分な時間をかけられたことが大きい。
(まぁ、今歌うのはこれだけだし、変に身構える必要ねぇんだけどな)
春樹が選んだのは、『初恋の絵本-another story-』と『さよなら両片想い』だ。
実は、聖奈に頼み込んで、さよなら両片想いは既に歌っている。
(今はまだ、言う時じゃねぇからな)
アメリカに留学したい___
気の置けない幼なじみ達に打ち明けることも、ままならない状態だというのに、美桜に打ち明けるとなると、どうしても怖くなる。
(今はまだ、知らなくていいよ)
心の中で、友人達に語りかけ、春樹はマイクの前に立つ。
せめて、せめて旅立つ前に、想いを歌に乗せて、言葉にしたい。
きっと自分は、最後の最後まで想いを言わないだろうから。
今、君に届かなくてもいい。
(言葉にすることに、意味があるんだよな)
♪♪♪~
残り10cmの勇気があったなら
今日が変えられたんだろ?
もっと想い 誤魔化さず伝えたなら
届いてた はずだろ?
(初恋の絵本-another story-)
それぞれの決意が密かに込められた歌声は、今、曲の余韻と共に終わった。
窓から見える空は、春樹達の決意を包み込むように大きな夕陽が、空を濃い茜色に染めていた。