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二次創作小説(紙ほか)
- 第1話:救世の媒体(2) ( No.3 )
- 日時: 2015/10/12 15:44
- 名前: Orfevre ◆ONTLfA/kg2 (ID: WqtRIGcg)
日直の仕事を終えると和巳は下校し、街へと出る。何かをしたいわけではない。ただ、何かをしてないと落ち着かない。今のままではだめなのだと、和巳はわかっているのかもしれない。それでも、和巳には何もできずにいるという現実だけがあった。
何かをしなくてはいけないことはわかっても、何をすればいいのか、わからずにできないままでいるというのは誰もが一度は直面する事態だろう。
「(裏切られた希望に、なんですがっているのだろう)」
和巳は今日も何かを訴えるかのように、何かを押し殺すかのように街をさまよっていた。
駅前にたどり着くと、一人の男性が路上ライブを行っている。ギターを片手にラブソングを奏でる青年。道行く人は彼を素通りする。数人がギターケースにチップを投げるくらいであった。和巳はそんな彼を見て、こう毒づく。
「(ふん、さっさと諦めろよ。アンタにプロは無理だ。まじめに働いてる奴等からしたら、アンタなんてダニ同然、素通りされて当然なんだよ)」
和巳がその男の横を素通りしようとすると、和巳に男の声が聞こえた。
「(ダニは貴様の方だろ? 少なくとも、あの男は自分に素直なのだからな)」
「(だ、誰だ!?)」
和巳はあたりを振り返るが、誰もそれらしき人物はいない。気味が悪くなった和巳は寄り道せずに帰宅する。
「おかえりなさい」
帰宅した和巳に聞こえるはずのない声がする。また空耳か、和巳はそう思ったが、キッチンの方で音がする、和巳は恐る恐る、キッチンの方を除くとそこには一人の和巳と同い年くらいの女の子が立っていたのだった。
「はじめまして、和巳さん」
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